事務所通信2013年3月

事務所通信

2013年3月号 『平成25年度税制改正法人税ほか編~』

 平成25年1月24日に、平成25年度税制改正大綱が公表されました。
 基礎控除額の見直し、税率構造の見直し、相続時精算課税制度の適用要件の見直し、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置など相続税・贈与税に関する改正に注目が集まっていますが、法人に関するものも、該当する企業にとっては影響の大きい改正があります。
 そこで、今回は、『平成25年度税制改正~法人税ほか編~』について書きたいと思います。

1.国内設備投資を促進するための税制措置の創設(H25/4~H27/3)
 青色申告書を提出する法人が取得等をした国内の事業の用に供する生産等設備で、その事業年度終了の日において有するものの取得価額の合計額が以下の①及び②の金額を超える場合において、その生産等設備を構成する資産のうち機械装置をその法人の国内にある事業の用に供したときは、その取得価額の30%の特別償却とその取得価額の3%の税額控除との選択適用ができます。
 ただし、税額控除における控除税額は、当期の法人税額の20%が限度です(所得税も同様。)。

 ①   当期の償却費として損金経理した金額 
 ②   前事業年度において取得等をした国内の事業の用に供する生産等設備の取得価額の合計額の110%相当額 

2.企業による雇用・労働分配(給与等支給)を拡大するための税制措置の創設(H25/4~H28/3)
 青色申告書を提出する法人が国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、その法人の雇用者給与等支給増加額(雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額)の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5%以上であるとき(一定の場合に限る。)は、その雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができます。
 ただし、控除税額は、当期の法人税額の10%(中小企業者等は、20%)が限度です(所得税も同様。)。

3.中小企業等の経営改善に向けた設備投資を促進するための税制措置の創設(H25/4~H27/3)
 青色申告書を提出する中小企業等で経営改善に関する指導及び助言を受けたものがその指導及び助言を受けて行う店舗の改修等に伴い器具備品及び建物附属設備の取得等をして指定事業の用に供した場合には、その取得価額の30%の特別償却とその取得価額の7%の税額控除との選択適用ができます。
 ただし、税額控除における控除税額は当期の法人税額の20%が限度で、控除限度超過額は1年間の繰越しができます(所得税も同様。)。

4.試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度(研究開発税制)の見直し
 試験研究費の総額に係る税額控除制度、特別試験研究費の額に係る税額控除制度、繰越税額控除限度超過額に係る税額控除制度、中小企業技術基盤強化税制及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度について、2年間の時限措置として、控除税額の上限を当期の法人税額の30%(現行20%)に引き上げます。
 また、特別試験研究費の範囲に一定の契約に基づき企業間で実施される共同研究に係る試験研究費等を加えます(所得税も同様。)。

5.雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除制度(雇用促進税制)の拡大
 雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除制度(雇用促進税制)について、税額控除限度額を増加雇用者数1人当たり40万円(現行20万円)に引き上げるほか、適用要件の判定の基礎となる雇用者の範囲について所要の措置を講じます(所得税も同様。)。

6.交際費等の損金不算入制度における中小法人に係る損金算入の特例の拡大
 交際費等の損金不算入制度における中小法人に係る損金算入の特例について、定額控除限度額を800万円(現行600万円)に引き上げるとともに、定額控除限度額までの金額の損金不算入措置(現行10%)を廃止します。

7.特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入制度等の制限対象の見直し(支配関係がH25/4~)

  • 特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入制度について、対象となる特定資産の範囲に、特定適格組織再編成等を行った法人がその特定適格組織再編成等の日以前に行われた他の特定適格組織再編成等によりその法人と支配関係がある他の法人から移転を受けた一定の資産を加えます。
  • 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度について、支配関係がある法人間でみなし共同事業要件を満たさない適格合併等が行われた場合において引継ぎが制限される被合併法人等の欠損金及びないものとされる合併法人等の欠損金の範囲に、一定の金額を加えます。

8.土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置
 ここから以下は法人税でありませんが、法人に関するものとして挙げます。
 土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年(平成27年12月31日まで)延長します。

9.不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置
 不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置について、その適用期限を5年延長した上、平成26年4月1日以後に作成される文書に係る税率を最高で6万円引き下げます。

10.金銭または有価証券の受取書(H26/4~)
 金銭または有価証券の受取書(いわゆる領収書)のうち記載された受取金額が5万円未満(現行3万円未満)だと、印紙税が課されません。

11.最後に
 新聞や雑誌などでよく取り上げられている相続税・贈与税を始め、平成25年度税制改正は増税のイメージがあります。
 しかしながら、法人税については減税方向なのです。
 現在、赤字企業が多い中、法人税額がベースとなっているものが多いので使えない企業も多いかもしれませんが、該当する企業にとっては非常にありがたい改正です。
 接待交際費もそれなりに影響はあるでしょう。
 登録免許税印紙税も1件当たりは少額だとしても、合計すると意外と多額になりますので、良い改正だと思われますね。

2013年3月28日 國村 年

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