事務所通信2012年9月

事務所通信

2012年9月号 『家なき子』

 皆さんは、『家なき子』と聞いて、何を思い浮かべますか。
 安達祐実さんや坂口良子さん主演のテレビドラマを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
 この『家なき子』ということばが、最近、税務においても使われているのです。
 そこで、今回は、『家なき子』について書きたいと思います。

1.小規模宅地の特例
 個人が相続または遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等(被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族)の事業の用に供されていた宅地等(土地または土地の上に存する権利で、建物または構築物の敷地の用に供されているもの。ただし、棚卸資産及びこれに準ずる資産に該当しないものに限る。)または被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」という。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額できます。
 この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。いわゆる「小規模宅地等の特例」です。
 なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。

2.家なき子
 小規模宅地等の特例のうち、特定居住用宅地(相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等)については、240㎡までその評価額が80%減額されます。
 しかしながら、配偶者以外が取得する場合には、一定の要件があります。

 ①   被相続人と同居していた親族で、相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を有している人 
 ②   被相続人と同居していない親族で、被相続人の配偶者または相続開始の直前において被相続人と同居していた一定の親族がいない場合において、被相続人の親族で、相続開始前3年以内に日本国内にある自己または自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがなく、かつ、相続開始の時から相続税の申告期限までその宅地等を有している人 
 ③   被相続人と生計を一にしていた親族で、相続開始の直前から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を有している人 

 上記の②に該当する方を、税務上、「家なき子」と呼んでいるのです。
 よって、田舎の実家にご両親が住んでいて、都会でお子さんが持ち家に住んでいる場合には、小規模宅地等の特例が使えませんので、小規模宅地等の特例を使うためには、早めに持ち家を売却したり、賃貸住宅として貸す必要があります。

3.最後に
 「家なき子」でなくても、以前は、小規模宅地等の特例は使えていました。
 既に対策済みと考えていたものが、税制改正により使えなくなることもありますので、定期的な点検をお薦めします。

2012年9月20日 國村 年

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