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インボイス制度開始で8割超の公認会計士や税理士の業務量が増加!

2024年04月26日(金)

TECH+によると、freeeは2024年4月11日、公認会計士や税理士を対象に実施した、インボイス制度と電子帳簿保存法対応に関するアンケート調査の結果を公表しました。

インボイス制度開始によって80.6%の公認会計士や税理士は業務量が増えたことが明らかになりました。

このレポートは、freeeが2024年2月22日〜3月1日、公認会計士または税理士196人を対象にWEBアンケート方式で実施したインボイス制度と電子帳簿保存法対応に関する調査の結果に基づいています。

インボイス制度対応は業務量に影響をおよぼしたか尋ねると、「20〜39%増えた」が36.2%、「1〜19%増えた」が31.1%、「変わらない」が18.9%「40%以上増えた」が13.3%、「減った」が0.1%の回答となっています。

全体の80.6%がインボイス制度対応で業務量が増えたと回答しました。

インボイス制度対応のために顧問料を値上げしたか質問すると、「行っておらず、検討もしていない」が41.8%、次いで「行ってはいないが、検討している」が32.7%、「行った」が20.9%、「その他」が4.6%となり、インボイス制度対応を目的とした値上げは現状74.5%が行っていませんでした。

インボイス制度対応のために従業員を増員したかという問いには、「行っておらず、検討もしていない」が85.2%、次いで「行ってはいないが、検討している」が12.2%、「行った」が1.5%、「その他」が1%と、従業員増員は行わず現状維持で対応する事務所がほとんどでした。

また、電子帳簿保存法対応は業務量が増えたか聞くと、「変わらない」が46.9%、「1〜19%増えた」が32.1%、「20〜39%増えた」が15.3%、「40%以上増えた」が4.1%、「その他」が1.5%と、電帳法対応で業務量が増えた先は半数を超えることがわかりました。

今後新たに生じる制度対応に不安はあるか尋ねると、「少しある」が41.3%、「大いにある」が24.5%、「ある」が19.4%、「全くない 」12.2%、「その他」が2.6%で、85.2%が将来の制度変更対応に関して不安を感じていることが明らかになりました。

記帳代行を基本的にやっていない弊事務所でも、グダグダの電子帳簿保存法はともかく、インボイスは質問対応を含めて業務量は増加しています。

そして今年は、定額減税で業務量が増えることが明らかです。

個人的には、賃上げと言っている割に、一方で収益を生まないような業務を増やしているので、時間やコストが増加しているのは明らかなので、業務量が増加した事業者や会計事務所に、1人当たりいくらとか税額控除してくれるような仕組みを作ってほしいなぁと思います。

インボイス制度開始で8割超の公認会計士や税理士の業務量が増加していることについて、あなたはどう思われましたか?


公認会計士のマネロン対策が厳格に!

日本経済新聞によると、政府は2024年4月から司法書士や公認会計士に対し、マネーロンダリング(資金洗浄)対策を厳しくするように求める見通しです。

顧客となる企業や個人に、取引目的や職業を確認することを義務付け、疑わしい取引は行政に報告することを課します。

改正犯罪収益移転防止法の施行に伴うもので、対象は司法書士や行政書士、公認会計士、税理士といった士業になります。

これまでは氏名や住居、生年月日など顧客の基本情報を確認する義務が課されていました。

今後は本人確認以外に、取引を行う目的、職業・事業内容も確認します。

法人の場合は、実質的支配者の確認も求めます。

すでに義務化している金融機関と同様の内容を求めることになるのです。

行政書士、公認会計士、税理士には新たに「疑わしい取引」の届け出義務を課します。

顧客から得た収益が犯罪による収益である疑いがあると判断した場合に、所管行政庁に速やかに届け出ることを義務付けます。

200万円を超える取引は、資産や収入の状況も確認します。

公認会計士は顧客の会社設立の手続きを行うことがあります。

例えば、事業実態のないペーパーカンパニーは、資金洗浄に使われる可能性があります。

こうした場合は「疑わしい取引」として届け出対象になることが想定されます。

マネロン対策を強化する背景には、特殊詐欺などが増え、犯罪者の資金源となっている可能性があるからです。

警察庁によると、2022年には特殊詐欺の被害額が8年ぶりに増加し、2023年も11月末時点で2022年を上回る被害額となりました。

クレジットカードの不正利用被害額も2022年には約437億円にのぼり、過去最悪を更新しました。

テロ資金などを警戒する国際社会からの圧力も強まっています。

各国・地域のマネロン対策を調べる国際組織「金融活動作業部会(FATF)」が2021年に公表した第4次審査の結果で、日本は実質的に不合格を意味する「重点フォローアップ国」という評価を受けたのです。

なかでも士業や非金融機関は「マネロン対策への理解が不十分」「その監督当局もリスクベースによる監督を実施していない」など厳しい評価を受けました。

数年後に控える第5次審査では士業・非金融機関への審査が強化される見込みです。

士業の一つである公認会計士を所管する金融庁は、公認会計士と監査法人を対象に改正犯収法施行に伴う実務上の新たな指針を2024年3月末までに示すようです。

指針案によると取引目的や職業などの確認義務の対象業務は、財務に関する相談業務に付随した会社設立の手続き時などになる見通しです。

金融庁は新たな指針をもとにモニタリングも行います。

問題が見つかれば犯収法に基づき報告徴収や是正命令を出すことも視野に入れています。

マネロン対策は預金を扱う大手銀行や地域金融機関にとっても喫緊の課題です。

金融庁が2021年から金融機関にマネロンに関する体制整備を要請していました。

80超の項目を並べて対応を求めており、2024年3月末は対応完了の期限となります。

金融庁や財務局は、各地域でマネロン担当役員を対象としたフォーラムや勉強会を開いて対応を促します。

金融庁は2024年4月以降、指針に関する不備がある金融機関には業務改善命令などの行政処分を出すことも辞さない構えです。

公認会計士も、マネロンに関する対応が必要な時代なんですね。

それだけ、特殊詐欺などが増えているということなんでしょうけど。

公認会計士のマネロン対策が厳格になることについて、あなたはどう思われましたか?


PwCあらたとPwC京都が合併して「PwC Japan有限責任監査法人」へ!

LIMOによると、PwCあらた監査法人(以下「あらた」という)とPwC京都監査法人(以下「京都」という)は、2023年12月1日付で合併すると発表しました。

あらた・京都ともに4大国際会計ファーム・コンサルティングファーム(Big 4)の一つである「PwC(PricewaterhouseCoopers、プライスウォーターハウスクーパース)」のメンバーファームです。

監査法人とは、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明を組織的に行うことを目的として、公認会計士法第34条の2の2第1項によって、公認会計士が共同して設立した法人のことです(公認会計士法第1条の3第3項、第2条第1項)。

一般的には、上場している企業の決算を監査する、公認会計士資格を持つ者が所属する組織と言われます。

実際は、上述の法定監査以外にも、「任意監査」「決算早期化支援」「経理・財務に関する相談業務」「コンサルティング業務」など多くの業務を行っています。

そのため、社員も公認会計士資格者のみで組織されているわけではなく、様々なバックグラウンドを持った者が在籍しています(法律上、公認会計士でない社員の割合は決められています)。

国際会計ファーム・コンサルティングファームとしては大規模グループが存在し、
・Deloitte Touche Tohmatsu(デロイト トウシュ トーマツ)
・EY(Ernst & Young、アーンスト&ヤング)
・KPMG
・PwC(PricewaterhouseCoopers、プライスウォーターハウスクーパース)
の4グループ(順不同)が「Big 4」と呼ばれます。

「Big 4」それぞれのメンバーファームが日本国内にも存在し、4大監査法人と呼ばれており、以下のとおりです。
・有限責任監査法人トーマツ(デロイト)
・EY新日本有限責任監査法人(EY)
・有限責任あずさ監査法人(KPMG)
・PwCあらた有限責任監査法人(PwC)

2023年6月1日、あらたは京都との統合に向けた協議を開始したと公表しています。
ともに同じPwCのメンバーファームであるため、Purposeも共通しています。

また、監査業界では、人的資本や気候変動対策を記載する、サステナビリティ関連開示情報の保証業務(著者注:「経理の状況」に対してと同様に何らかの保証をすること)を担うことが想定されることや、テクノロジーを用いた監査の更なる高度化が求められることなど、監査法人を取り巻く環境が大きく変化することが見込まれています。

両法人の強みを活かすことで、統合して規模を拡大することが高品質の保証サービスを提供できるとしています。

<各社概要>
●PwCあらた有限責任監査法人
・設立:2006年6月1日
・人員:3,006名(2023年6月30日時点)
・売上高:609億8,100万円(2022年7月1日~2023年6月30日)
・主要顧客:トヨタ自動車株式会社(東証プライム、7203)、ソニーグループ株式会社(東証プライム、6758)ほか、トヨタ傘下企業、ソニーグループ傘下企業など

●PwC京都監査法人
・設立:2007年3月19日
・人員:443名(2023年6月30日時点) ・売上高:69億9,000万円(2022年7月1日~2023年6月30日)
・主要顧客:KDDI株式会社(東証プライム、9433)、ニデック(旧:日本電産)(東証プライム、6594)、京セラ株式会社(東証プライム、6971)、任天堂(東証プライム、7974)

京都の主要顧客を見て、驚かれた方もいるのではないでしょうか?
準大手監査法人ながら、多くのグローバル企業の会計検査人を担当しているのです。

2023年12月より、4大監査法人の名称が変更となります。
17年の歴史がある「あらた」の名が消えて、「PwC Japan有限責任監査法人」となります。

僕は、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)の出身ですが、就職活動をしていた頃は、6大監査法人と言われていました。
・太田昭和監査法人(E&Y)
・中央監査法人(C&L)
・監査法人トーマツ(DTT)
・朝日監査法人(AA)
・センチュリー監査法人(KPMG)
・青山監査法人(Pw)
色々とくっついたり、離れたりで提携ファームが変わったり、この中にはカネボウ事件でなくなった監査法人もありますし、今でも名前が残っているのはトーマツだけですね。
『トーマツ』はあまり知られていないのかもしれませんが、実は、監査法人等松・青木・津田・塚田・青木・宇野・月下部事務所の『等松』なのです。
大手監査法人がくっついたり、離れたりするたびに、粉飾の歴史などを思い出しますね。

PwCあらたとPwC京都が合併して「PwC Japan有限責任監査法人」になることについて、あなたはどう思われましたか?


会計監査の現場離れ!

日本経済新聞に東京都立大学大学院の松田千恵子教授が以下のように、書かれています。記録的な猛暑とそれに続く豪雨などで体調を崩した人も多いでしょう。
新型コロナウイルスも相変わらず猛威を振るっています。
しかしながら、感染症法上の分類が「5類」に移行して以来、会食や旅行需要は相当回復してきました。

コーポレートガバナンス(企業統治)の世界でも、社外役員を含む現場視察やオフサイト、監査役員による現場実査などもコロナ前と同様に活発に行われるようになっています。
ただひとつ気になるのは、時たまささやかれる「会計監査のリモート化が戻らない」という点だそうです。

もちろん、多くの会計監査人は真摯に現場で業務を遂行しています。
移動にさしたる障害がなくなった今、リアルでの監査は通常のことでしょう。
しかしながら、コロナ禍で行われていたような、実地棚卸をスマートフォン越しに済ませるといったことも引き続きあるという声を時々耳にするようです。

リモートワークに異を唱えるつもりはありません。
むしろ、適宜活用して生産性を上げることは大事です。
会計など情報を扱う分野は、リモートワークとの親和性も高いでしょう。
ただし、率直に言えば、実地棚卸などを含む会計監査については、当然ながら現場をしっかり見てほしいというのが本音です。

ある監査法人の調査によれば「今後は不正リスクが高まる」と感じている企業の割合は2020年に59%でしたが、22年には64%へと上昇しました。
これまで現場のチェックや対面での状況把握が難しかったため、不正の芽が見えなくなっているのではという不安の表れとも言えるでしょう。

一般に、景気の先行きが不透明になれば、将来への不安や金銭面の困窮、ノルマ達成圧力の増大などにより、不正に走る動機は多くなります。
基本中の基本とも言える、「しっかりと現場を把握すること」の重要性を改めてかみしめるべき時機でしょう。

僕自身は、実地棚卸の本を出していますので、少し前に監査法人の後輩から棚卸の立会はZoomとかで現場でつないでやっていますと聞いて、コロナ禍とはいえ大丈夫なのだろうか?と思いましたが、やはり現場に行って現物を確認することが重要だと思いますね。
過去においても、棚卸を通じた粉飾がたくさんあり、会計監査人が基本的に必ずやらなければならないこととして、実査・立会・確認があるわけですから、実地棚卸の立会は必ず現場に行ってやってほしいですね。

会計監査の現場離れについて、どう思われましたか?


形式的な作業に失望し公認会計士の監査法人離れが進む!

日本経済新聞によると、財務諸表をチェックする会計監査の担い手不足が深刻になっているようです。
監査法人で働く公認会計士の比率は10年で10ポイント下がりました。
上場企業数や監査業務量が増え続けるなか、やりがいに乏しい形式的な作業に失望し、スタートアップやコンサルティング企業に転身する動きが目立っています。
資本市場の門番役を担う監査制度に、空洞化の危機が迫っています。

「お世話になりました」と、監査法人の年度末から初めにあたる6月から7月、大手法人幹部のメールボックスには所属公認会計士から届く離職のあいさつが引きも切らないようです。
「採用するのと同じ規模の人数がやめてしまう」と頭を抱えています。

公認会計士登録者は2023年3月末時点で3万4,436人と10年前から38%増えていますが、監査法人所属の公認会計士は1万3,980人と7%しか増えていません。
10年前に51%だった監査法人所属者比率は41%まで低下しました。

公認会計士は歴史的に流動性の高い職種です。
監査法人内でパートナーと呼ばれる役職者になれるのは同期の1割ほどで、経験を重ねつつ徐々に責任が重くなるピラミッド構造にあります。
入所10年程度で昇格するマネジャー職まで経験を積み、別の道を歩むのがかつての典型でした。

しかしながら、近年は離職する公認会計士が若手スタッフからパートナーまで全職階に広がりました。
「マネジャーまで頑張ろうと思っていたが、1年働くごとに気持ちが変わっていった」と、2021年8月に監査法人を去った20代公認会計士は吐露しています。

なぜなのでしょうか?
まず、「本当に意味があるのかと思う部分まで、全てをしゃくし定規に記録に残す」(30代公認会計士)監査業務への失望が挙げられます。
監査法人を退職した公認会計士約10人への取材で多く聞かれたのが、日本公認会計士協会が監査でやるべき手続きを定めた「監査基準委員会報告書」、通称「カンキホウ」への不満です。
元あずさ監査法人所属の40代独立公認会計士は「(報告書では)形式的で膨大な作業が積み上がっている」と明かしています。

東芝や英カリリオン、独ワイヤーカードなど、世界的に大きな会計不正は絶えず、発覚の度に監査法人に批判の矛先が向きました。
国際的な監査基準の要求事項は上乗せされ、監査法人も所属公認会計士に、規制当局から責められないように実施手続きを監査調書に細かく記録するよう求めたことも形式化に一段と拍車をかけています。

前出の20代公認会計士は「労働時間の概念を取っ払って大量のチェック項目をつぶすことが生きがいなのか、自問した」と話しています。
監査法人トーマツパートナーを経て早稲田大学会計大学院で教える林敬子教授は「(若い公認会計士に)回り道したくないという意識が強まっている」と指摘しています。
成長に寄与しない業務を避ける構図が、監査法人離れの背景にあるようです。

全体の業務が増える一方、近年は若手スタッフの残業時間上限が管理されるため、上司であるマネジャーやシニアスタッフらが「残務を巻き取っていた」(2022年に大手法人を退職した30代公認会計士)。
若手の離脱や働き方改革のしわ寄せが上の階層に波及し、監査現場全体の疲弊が進んでいるようです。

監査法人以外の「活躍のフィールドが広がっている」(日本公認会計士協会の鶴田光夫副会長)ことも要因です。
企業では経理のほか、経営企画や内部監査など引く手あまたです。
スタートアップでは若くして最高財務責任者(CFO)も珍しくありません。

かつては高収入の代表格だった監査法人ですが、一般企業の待遇面は遜色なくなってきています。
監査法人入所後、数年で昇格するシニアスタッフの年収が最低でも600万円程度、10年前後でなれるマネジャーは800万〜1,000万円程度とされます。
他方、会計系の転職エージェントでは内部監査や経理で700万円程度、戦略コンサルだと900万円強が提示されます。

監査法人に公認会計士をつなぎ留めるには、賃上げやデジタルを活用した業務効率化が必要です。
原資となる顧客から受け取る監査報酬の引き上げが欠かせませんが、時間単価はここ10年ほど1万2,000円弱と一向に伸びていません。
日本の上場企業は過去最高水準まで増えているにもかかわらず、顧客企業に危機感が伝わっていないようです。
EY新日本監査法人の片倉正美理事長は「値上げを納得してもらうには、単に監査意見を出すだけでなく付加価値のある知見を提供する必要がある」と語っています。

監査が空洞化して情報の信頼性が欠如すれば市場は効率的に機能しなくなります。
ある会計監査業界の関係者は「中小企業と大企業で同じ情報開示が必要かなど、資本市場システムの全体像を議論すべきだ」と強調しています。
公認会計士の監査法人離れは監査制度の土台を揺るがしかねず、すでに崩壊の瀬戸際にあるのかもしれません。

公認会計士に時間的な余裕を生み出すための監査DX(デジタルトランスフォーメーション)で各法人がしのぎを削っています。
カギを握るのが人工知能(AI)の活用です。

理化学研究所が日本公認会計士協会の協力で実施した2022年発表の調査によると、監査現場の進捗管理や取りまとめなどを担う現場責任者「主査」の各業務はAI活用で10年後に平均35%の時間短縮をもたらす可能性があります。
特に定型的な監査手続きは70%減、監査契約時のリスク評価は42%減と想定効果が大きいようです。

AI監査は実証段階から本格導入へ移行し始めています。
EY新日本監査法人は「リアルタイム監査」などと呼ばれる仕組みの本格展開を開始しました。
企業の統合基幹業務システム(ERP)からの取引データなどの定期的抽出や加工、AI分析による異常検知まで人手を介さず進めます。
足元では10社程度で、3年後までに100社に広げます。

今後は生成AIも広がりそうです。
あずさ監査法人では取引を勘定科目で記録した仕訳データの分析で活用を目指します。
「基礎分析して」と指示すると平均や分散などの統計量を出すとともに「金額が大きい項目の詳細分析をする」など次の行動も推奨するのです。

生成AIは、一見もっともらしいが事実と異なる内容を返す「ハルシネーション(幻覚)」を起こすこともあります。
業務効率化を理由に監査の質を落とさないため、回答をうのみにしないで高度な判断につなげる知見は欠かせません。

<公認会計士>
財務諸表に不正などがないか確認する監査業務を独占的に担います。
イギリスで誕生し、日本では医師、司法試験に並ぶ難関資格とされています。
資格取得には短答式と論文式試験の合格、監査法人勤務など3年以上の実務経験のうえ、修了考査合格が必要になります。
2006年以降の新試験制度から大学卒業などの受験資格要件をなくしました。
直後に試験合格率は2割弱まで上昇しましたが、近年の合格率は1割程度、人数はおよそ1,300〜1,400人で推移しています。
2022年試験合格者の平均年齢は24.4歳と、10年前から2歳下がるなど低年齢化が進んでおり、資格自体の若者の人気は高いようです。
試験合格後に監査法人を経ず、コンサルティング企業に就職を希望する例も増えています。

僕は、約11年監査法人に勤め、そのあと東京の会計事務所に転職し、約4年勤めてから独立開業しましたが、監査法人をやめた理由のうちの大きな一つが、当時、カネボウの粉飾事件があり、金融庁の検査のために行っているのではないかと思われる手続きが増えたことです。
もう16年以上前の話しになりますが、その当時と比べても、格段にそのようなことが増えているんでしょうね。
個人的には、会計監査は、マニュアルも重要かもしれませんが、直観も非常に大事だと思っていますので、マニュアル化やAIは、直観とか経験があまり生かせなくなりますので、自分で考えて仕事がしたい方には、会計監査という仕事は面白くないでしょうね。
かと言って、公認会計士になったからといって、企業の経理やコンサルティングがすぐにできるわけはない(会計監査という仕事は、会社が作った財務諸表などに大きな間違いがないかどうかを確かめる仕事)ということは、雇う側も公認会計士も知っておいた方がよいかと思います。
僕自身、転職活動をするときに、監査法人で会計監査のみしていた人間にセールスポイントはあるのだろうか?と本当に思いましたから。

形式的な作業に失望し公認会計士の監査法人離れが進んでいることについて、あなたはどう思われましたか?


金融庁が専門部署を設置し監査法人を直接監督へ!

日本経済新聞によると、金融庁が監査法人を直接監督する体制を整えます。
2023年度に金融庁内に「監査モニタリング室」を置き、傘下の公認会計士・監査審査会の中に「公認会計士監査検査室」を設置する方向です。

15年ぶりに公認会計士法を改正し、自主規制機関(日本公認会計士協会)だけでなく、金融庁も直接監督・検査できるようにしました。

金融庁が近くまとめる23年度の機構・定員要求に盛り込むそうです。

2022年5月に改正公認会計士法が成立していました。
上場企業の監査を担うにあたって、自主規制団体の日本公認会計士協会による登録を法律で義務付けます。
また、公認会計士・監査審査会の立ち入り検査などにおいて、通常の業務運営体制に加えて新たに有価証券報告書に対する虚偽の監査証明の検証も行えるようになります。

金融庁による監査法人への検査・監督では行政処分を発動するといった監督権限は企画市場局が持ち、検査については公認会計士・監査審査会が担っています。
監査モニタリング室は企画市場局に、公認会計士監査検査室は公認会計士・監査審査会にそれぞれ設置することを想定しているようです。

大手監査法人からそれ以外の監査法人への監査契約のシフトがここ数年、急激に進んでいます。
『監査難民』ということばが使われるほど、監査法人との監査契約が締結できないところも増えています。
当然、大手監査法人と監査レベルが大きく異なる監査法人が、上場企業の監査をしていることがあるのも事実です。
自主規制機関では年間に検査できる件数が限られているようですので、今後、一定のレベルに達していない監査法人の排除が進めばいいですね。

金融庁が専門部署を設置し監査法人を直接監督することについて、どう思われましたか?


あずさ監査法人の公認会計士が法定研修で不正で45人処分!

大手のあずさ監査法人は、先日、所属する公認会計士45人が法律で義務づけられた研修をオンラインで不正に受講していた疑いがあると発表しました。
2つの講座に同時にログインして受講したと偽り、単位認定を受けた可能性があるようです。
あずさ監査法人は公認会計士たちを減給などの懲戒処分にすることを検討中だそうです。
また、高波博之理事長ら役員10人の報酬をカットする方針を決めました。

公認会計士たちが不正に受講していたのは、公認会計士法で義務づけられている「継続的専門研修」(CPE)です。
「職業倫理」「不正リスク対応」などの科目を直近3年間で120単位以上、年20単位以上取得する必要があります。

2020年3月に内部告発があり、過去数年にわたってパソコンのログなどを調べたところ、20代~40代の45人が1台の端末を使って2つのオンライン講義を同時に受講した可能性があることがわかったようです。
あずさ監査法人は最終的な調査を現在進めていますが、対象となる公認会計士の中に「パートナー」と呼ばれる幹部社員も含まれています。

システムに二重ログインができるようになった2014年から、不正受講を繰り返していた公認会計士もいるようです。
あずさ監査法人は2020年5月にシステムを改修し、現在は同時にアクセスできない仕組みに変えています。

CPEは、アメリカのエンロン事件など続発した会計不祥事に対応するため、監査の質向上をめざし、2004年から法律で義務づけられました。
ただし、オンラインで受講したり、学会に出席したりすれば単位取得が認められることもあるため、研修制度そのものが形骸化していた可能性もあります。

先日会見した日本公認会計士協会の手塚正彦会長は「会計士制度の根幹をなす研修を怠ったのは極めて遺憾だ」と語り、協会として他の監査法人にも同様の不正がなかったのか調べる考えのようです。
不正を繰り返し悪質な場合は、金融庁の行政処分を受けて公認会計士の登録を抹消される可能性もあるそうです。

公認会計士の教育や研修をめぐっては2017年、公認会計士試験に合格した補習生12人が実務補習中に提出した論文に、他の文献を引き写す盗用行為が見つかり、大手監査法人から処分を受けたことがあります。
公認会計士としての資質が問われかねない事態が再び起こり、2006年に簡素化され、試験合格者を大量に出すようになった会計士試験のあり方を変えるべきだとの声もあがっているようです。

青山学院大の八田進二名誉教授は「不正を見抜く立場にある会計士としての資質に欠けていると言わざるをえない。試験制度そのものを見直し、マナーや倫理観を兼ね備えるような会計士を育てていく必要がある」と指摘しています。

ちなみに、あずさ監査法人は、旧新日本監査法人(現EY新日本監査法人)から国際会計事務所KPMGと提携する部門が独立し、2004年に旧朝日監査法人と合併して発足した監査法人です。
国内の4大監査法人のひとつで、約3千人の会計士が所属し、約3,600にのぼる企業や学校法人などの監査を手がけています。

同業者として恥ずかしい限りです。
普段、内部統制がどうとか、決算の数値がどうとか言っている監査法人の人間が、このような不正をしているとは、モラルが低すぎますね。
こういう人たちは、会計監査をすべきではないと思いますし、公認会計士をやめるべきだと思います。
社風なども影響しているでしょうから、あずさ監査法人にも責任があるのではないでしょうか。
あずさ監査法人にも会計監査を受けている企業はどう思われるのでしょうか?
コンプライアンスが重要とは監査法人の人間は言っているでしょうから、これをきっかけに契約解除されても仕方ないようなことだと思います。
日本公認会計士協会も、厳しい処分を課して欲しいと思います。

あずさ監査法人の公認会計士が法定研修で不正で45人処分されたことについて、どう思われましたか?


BACK TO THE BASIC!

 今日は、いつもと違った感じです。

 現在、連載もので執筆しているものがあるのですが、来年度も継続の依頼をいただきました。

 2か月ごとに発行されますので、年間6回書くことになるのですが、初回はこれについて書いて欲しいというオーダーをいただきました。

 税務のテクニカルな話しではなく、会計のベーシックな話しでしたので、事務所の本棚から古い本を取り出しました。

 飯野利夫氏の書かれた『財務会計論(三訂版)』です。

 10数年以上前にお亡くなりになっていますが、僕が大学2年生のときに、公認会計士試験のために専門学校にも通い始めて一番最初に買った会計の本なのではないかと思いますので、僕の公認会計士としてのベースになっている本ですね。

 それから25年以上経っていますが、さらっと見たところ、会計の理論は色褪せていないかもしれないですね。

 この本を参考に、来年度は6回の連載を執筆していこうと思います。

 さらっと見ましたが、日頃は目の前の仕訳や税務に対応していることが多いですが、会計のベーシックなことを久しぶりに目にして、スゴく新鮮な気持ちになりました。

 普段もシンプルにものごとを考えるということを念頭に置いて仕事に取り組んでいますが、たまには、こういうベーシックなところに立ち返って、シンプルにものごとを考えるということを改めて考えるというのも良いなぁと感じました。

 ちなみに、櫻井通晴氏の書かれた『原価計算<理論と計算>』や『経営原価計算論(増補版)』も、僕の公認会計士としてのベースになっている本です。


金融庁が清流監査法人を処分!

 金融庁は、清流監査法人に対して処分を行いました。

内容は、以下のとおりです。

 金融庁は、令和元年7月5日、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から、清流監査法人(法人番号8011205001626)に対して行った検査の結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告を受けました。
 同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当監査法人に対して公認会計士法第34条の21第2項に基づき、以下の処分を行いました。

                      記

1.処分の概要
(1)処分の対象
名称:清流監査法人(法人番号8011205001626)
事務所所在地:東京都千代田区

(2)処分の内容
業務改善命令(業務管理体制の改善)

(3)処分理由
別紙のとおり、運営が著しく不当と認められるため。

2.業務改善命令の内容
(1)総括代表社員は、組織的に監査の品質を確保する必要性を十分に認識し、社員の職責の明確化、社員会の機能発揮、社員及び職員の経験に依存した業務運営の改善など、実効性のある品質管理のシステムの構築に向け、当監査法人の業務管理態勢を整備すること。
(2)総括代表社員は、審査会の検査及び日本公認会計士協会の品質管理レビューにおいて指摘された不備の原因を十分に分析したうえで改善策を策定及び実施し、改善状況の適切な検証ができる態勢を整備するとともに、監査契約の新規の締結における十分かつ適切なリスク評価、監査実施者に対する実効性のある教育・訓練、審査担当責任者による批判的かつ適切な審査、実効性のある日常的監視及び定期的な検証を実施できる態勢を整備するなど、当監査法人の品質管理態勢の整備に責任を持って取り組むこと。
(3)現行の監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(固定資産の減損会計における兆候判定、株式移転の会計処理、関連当事者取引に関する検討など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。
(4)上記(1)から(3)に関する業務の改善計画について、令和元年11月末日までに提出し、直ちに実行すること。
(5)上記(4)の報告後、当該計画の実施完了までの間、令和2年4月末日を第1回目とし、以後、6か月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

上記の『別紙』の内容は以下のとおりです。

清流監査法人の運営は、下記のとおり著しく不当なものと認められる。

               記

1 業務管理態勢
 当監査法人は、社員5名、非常勤職員を中心とした監査補助者等により構成されているが、総括代表社員を除く社員は、それぞれの個人事務所等の業務を主としており、当監査法人の業務への関与は低く、総括代表社員が品質管理担当責任者を兼務している。
 また、当監査法人は、設立以来、特定の個人により実質的に支配されている企業グループを主な被監査会社とし、その監査報酬は当監査法人の業務収入の大部分を占めている。
 当監査法人の監査業務は、社員2名がそれぞれ審査又は定期的な検証の専任であることから、総括代表社員を含む3名の社員を中心に実施されている。また、監査補助者は主に非常勤職員で構成され、業務執行社員が主査を担当する監査業務もあるなど監査実施態勢は十分ではない。この点について、総括代表社員は、当監査法人の強みを、経験を積んだ公認会計士を基本に監査チームを編成していることであるとし、社員及び職員のこれまでの経験に依存した運営を継続しており、品質管理態勢を十分に整備する必要性を認識していない。
 このような状況において、当監査法人は、日本公認会計士協会(以下「協会」という。)の平成29年度品質管理レビューにおいて限定事項を付されており、総括代表社員は、限定事項とされた関連当事者取引の不備の根本原因を会計基準や監査の基準の理解不足にあると認識している。
 しかしながら、下記2に記載するとおり、その改善は、チェックリストの整備等の対症療法的な対応であり、知識や能力の向上を各自に委ねており、適切な教育・訓練態勢を構築していない。また、限定事項とされた審査態勢や定期的な検証等の実施態勢の改善を検討していない。
 そのため、下記3に記載するとおり、今回公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)検査で検証対象とした全ての個別監査業務の業務執行社員及び監査補助者において、会計基準及び現行の監査の基準が求める水準の理解が不足している状況、職業的懐疑心が発揮できていない状況がみられ、それらに起因する重要な不備を含む不備が広範かつ多数認められている。
 また、総括代表社員以外の社員は、当監査法人の業務運営を総括代表社員に委ね、重要事項の意思決定に十分に関与していない。そのため、財務諸表等の訂正要否や監査契約の新規の締結の審査などの重要事項が社員会に付議されているにもかかわらず、十分に検討されることなく承認されるなど社員会の機能が発揮されていない。
 このように、総括代表社員においては、法人トップとして組織的に監査の品質を確保するという意識に欠けており、当監査法人の監査業務の現状を踏まえた実効的な品質管理のシステムを構築するためにリーダーシップを発揮していない。また、総括代表社員以外の社員においては、当監査法人の業務運営、品質管理のシステムの整備及び運用を総括代表社員に委ね、これに関与するという意識に乏しく、社員としての職責を十分に果たしていない。

2 品質管理態勢
(前回審査会検査及び品質管理レビューでの指摘事項に対する改善状況)
 総括代表社員は、前回審査会検査及び平成29年度品質管理レビューでの指摘事項を踏まえた対応として、全社員及び職員を対象として品質管理レビュー等の結果報告会を開催し、指摘事項を周知するとともに、指摘事項を反映したチェックリストを作成し、業務執行社員が当該チェックリストを用いて改善状況を確認する等の改善措置を指示している。
 しかしながら、総括代表社員は、社員及び職員が会計基準や監査の基準を十分に理解していないことを個別監査業務における不備の根本原因として認識していたにもかかわらず、法人内での指示やチェックリストは、指摘事項に直接対応する対症療法的な内容にとどまっており、認識していた根本原因に対応したものとしていない。
 また、平成29年度品質管理レビューにおいて、「指示と監督及び監査調書の査閲並びに監査業務の審査、定期的な検証」について限定事項とされているが、これに対する改善は、限定事項の理由とされた関連当事者取引を重点的に確認する等の措置のみにとどまっており、総括代表社員は、審査、定期的な検証等の実施態勢の改善を検討していない。
 このように、いずれの取組も不十分であることから、今回審査会検査で検証した個別監査業務の全てにおいて、これまでの品質管理レビュー等での指摘事項と同様の不備が繰り返されている。

(監査契約の新規の締結及び更新)
 当監査法人は、監査契約の新規の締結及び更新に関する方針及び手続を「監査の品質管理規程」に定めているが、業務執行社員予定者の選任、独立性の確認、リスク評価などについて具体的な実施手続を整備していない。
 また、前回審査会検査において監査契約の新規の締結に伴うリスク評価の不備について指摘を受けているが、今回審査会検査においても監査契約の新規の締結に当たり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況に係る検討が不足しており、また、主要な経営者、監査役等の異動をリスクとして識別していないなど、リスク評価が不十分である。
 さらに、限定事項付き結論となった平成29年度品質管理レビューの結果を会計監査人の選任議案の決定権限を有する監査役等に書面で伝達していない。

(監査実施者の教育・訓練)
 監査実施者の教育・訓練を担当する総括代表社員は、前回審査会検査及び平成29年度品質管理レビューにおいて指摘された不備には、社員及び職員の会計基準及び監査の基準の理解不足に起因するものがあると認識している。このような認識の下、総括代表社員は、自ら出席した協会研修のうち業務上重要と判断した研修資料を社員及び職員へのメール等で共有し、また、専門要員の年間40単位以上の継続的専門研修の履修を確認したとしている。
 しかしながら、今回審査会検査においても、会計基準及び監査の基準の理解不足に起因した不備が多数生じており、当監査法人の教育・訓練は実効性のあるものとなっていない。

(監査業務に係る審査)
 当監査法人は、特定の社員を審査担当責任者として選任し、全ての監査業務の審査を担当させている。
 当該審査担当責任者は、審査で気付いた点を監査チームに伝達するにとどまり、最終的な判断を業務執行社員に委ねていること、監査チームの説明に過度に依存し、監査調書に基づいた客観的な検証が不足していることなどから、今回審査会検査において指摘した重要な不備を指摘できていない。
 このように、平成29年度品質管理レビューにおいて限定事項とされた後も、審査担当責任者は、審査の職責を果たしておらず、当監査法人の審査態勢は十分に機能していない。また、総括代表社員は、限定事項とされた後も、このような審査態勢の改善を検討していない。

(品質管理のシステムの監視)
 当監査法人は、特定の社員を定期的な検証担当責任者として選任し、日常的監視及び監査業務の定期的な検証の全てを担当させている。
 当該定期的な検証担当責任者は、日常的監視において、内部規程の内容を十分に確認しておらず、定期的な検証業務においては、会計上の論点を中心に検証し、監査証拠の適切性及び十分性の観点からの検証が不足している。このようなことから、今回審査会検査において認められた内部規程等の整備及び運用状況に係る不備や個別監査業務の重要な不備を看過しており、定期的な検証担当責任者が実施する、日常的監視及び定期的な検証による品質管理システムの監視は不十分である。また、総括代表社員は、定期的な検証について平成29年度品質管理レビューにおいて限定事項とされた後も、このような実施態勢の改善を検討していない。
 このように、当監査法人の品質管理態勢は、前回審査会検査及び品質管理レビューでの指摘事項に対する改善状況、監査契約の新規の締結及び更新並びに監査業務に係る審査に重要な不備が認められるほか、広範に不備が認められており、著しく不十分である。

3 個別監査業務
 総括代表社員を含む業務執行社員及び監査補助者は、会計基準及び現行の監査の基準が求める水準の理解が不足している。そのため、固定資産の減損会計における兆候判定の誤りや株式移転の会計処理の誤りを見落としている事例、関連当事者取引の開示や連結財務諸表に関する会計基準に従った連結範囲の検討が不足している事例などの重要な不備が認められる。
 また、当監査法人の主な被監査会社は、特定の個人により実質的に支配されており、関連当事者間で多様な取引が行われている状況にあるが、総括代表社員を含む業務執行社員及び監査補助者は、関連当事者取引の検討や会計上の見積りの監査などにおいて、職業的懐疑心が不足している。そのため、当該特定の個人との通例ではない重要な取引を批判的に検討していない事例、工事進行基準の適用における会計上の見積りの検討が不足している事例などの重要な不備が認められる。
 上記のような重要な不備は今回審査会検査で検証対象とした個別監査業務の全てにみられる。そのほか重要な不備ではないものの、被監査会社が作成した情報の信頼性を評価していない事例、経営者が利用する専門家の適性・能力及び客観性の評価が不足している事例、不正リスクを識別している売上高の実証手続が不足している事例、監査報告書日後に実施した手続を監査報告書日前に実施したように監査調書に記載している事例など、不備が広範かつ多数認められる。
 このように、検証した個別監査業務において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不十分なものとなっている。

以上

このような状況の監査法人が、上場企業の会計監査をやっていて良いのでしょうか?
毎年、いくつかの監査法人が処分されていると思いますが、オピニオンショッピング(会計監査を受ける企業が、自社にとって都合の良い監査意見を表明してくれる監査法人や公認会計士を新たに選任すること。)の温床とならないこと祈るばかりです。
市場から退場していただかないといけないところは早めに退場していただかないと思いますし、このようなことがあると、公認会計士業界全体の信頼が失われてしまいますので。

金融庁が清流監査法人を処分したことについて、どう思われましたか?


女子中学生にわいせつな行為をしようとした公認会計士を逮捕!

 先日、公認会計士の男が女子中学生にわいせつな行為をしようとしたとして、警視庁に逮捕されました。

強制わいせつ未遂の疑いで逮捕されたのは、東京都調布市の公認会計士(32)です。
公認会計士は5月12日午後5時ごろ、調布市のマンションで帰宅途中の女子中学生がエレベーターからおりたところ、後ろから抱きついて口を塞ぎ、わいせつな行為をしようとした疑いがもたれています。

警視庁によると、2人に面識はなく、女子中学生が悲鳴をあげたため、公認会計士は非常階段から逃げましたが、防犯カメラの捜査で関与が浮上したようです。
取り調べに対し、公認会計士は「間違いありません」と容疑を認めているということです。

後日、PwCあらた有限責任監査法人が、『当法人の職員の逮捕に関するお詫び』という以下のプレスリリースを行っています。
 昨日PwCあらた有限責任監査法人の職員が逮捕されました。詳細は現在調査中であり、事実関係を確認次第、厳正に対処いたします。皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
                                    2019年5月22日
                              PwCあらた有限責任監査法人

本当にこういったことはやめて欲しいですね。
1人の行為が、所属監査法人、公認会計士業界に多大なる影響を与えてしまいます。
先生と呼ばれることの多い士業には、人格や品位などが必要だと思いますね。
PwCあらた有限責任監査法人のプレスリリースも『皆様』になっていますが、まずは被害者の方やご家族に謝罪すべきであると思いますので、このプレスリリースはどうなんだろうと思いますね。
クライアントに向けてリリースしているのでしょうか?

女子中学生にわいせつな行為をしようとした公認会計士が逮捕されたことについて、どう思われましたか?


イギリスの競争当局が4大監査法人の「業務分離」を報告!

 イギリスの競争当局である競争・市場庁は、先日、イギリス監査業界の改革に関する最終報告書を公表しました。
「ビッグ4」と呼ばれる4大監査法人グループについて、監査とそれ以外の業務を組織内で分離するよう求めるのが柱です。
大手4社の寡占が監査の質を下げていると問題視し、上場する大企業には複数の監査法人による共同監査を義務付けることも提言しました。

イギリス政府は、報告書への見解や対応方針を90日以内に明らかにし、法制化の必要性などを判断するようです。

イギリスでは建設大手カリリオンが2018年1月に経営破綻したのを機に、経営悪化を見抜けなかった外部監査人のKPMGなど大手監査法人への批判が強まりました。
競争・市場庁は、2018年12月、利益相反リスクを減らすため監査とそれ以外の非監査業務を組織内で分けたり、共同監査を導入したりする案を示して意見を募っていました。

最終報告書は、これまでの議論を踏襲しました。
まず大手4グループについて、決算書類が正しいか調べる監査業務と、経営や税務戦略を指南するコンサルティングなどの非監査業務を運営上分離するよう求めました。
グループ内で経営や収益管理などを分け、監査部門は監査に集中すべきだと訴えました。

この背景には利益相反の懸念に加え、高収益な非監査部門の存在が監査部門を資金的にも支え、準大手以下の参入を妨げる一因になっているとの問題意識もあるようです。
政界からは別法人として完全に切り分ける「解体」論も上がっていたようですが、急進的な変更はリスクがあるとして踏み込みませんでした。

ロンドン証券取引所に上場する主要350社を対象に、原則として2つ以上の監査法人による共同監査を義務付けることも提案しました。
イギリスでは主要350社の97%の監査を4大法人が行っています。
寡占を打破するため少なくとも1つは4大監査法人以外とし、準大手以下の参入による競争の活性化を促すようです。

競争・市場庁は声明で「市民の生計や貯蓄、年金は監査が高い基準で行われているかにかかっている」と述べ、改革の必要性を強調しました。
一方で、市場関係者からは実効性に疑問の声も出ているようです。
英金融業界団体ザ・シティーUKは「真の監査の質向上につながる証拠はない」とし、急進的な改革で副作用が出ないよう慎重な実施を求めました。

僕は公認会計士で、もともと監査法人に勤めていた人間ですが、個人的には、独立性の観点からは、一般の方々にとっては、同一クライアントに対して監査以外のサービスを提供しているという状況は監査上大丈夫なのだろうかという疑問は生じると思いますので、同一クライアントに対して監査業務以外のサービス提供はやめた方がよいのではないかと思います。
共同監査については、個人的には、反対です。
日本でもあまり行われていないということは効果がないことの表れだと思いますが、監査法人ごとに監査手続きの進め方などに独自のやり方があると思いますが、共同監査になると、それを見せることになり、独自性がなくなっていく(存在意義がなくなる)と思います。
結局、お互いが手の内を見せないことになると、担当を完全に切り分けるだけになると思いますが、コミュニケーションのなさが粉飾等を見落とす原因となると推測されます。
あとは、監査意見や会計処理についてもそれぞれ独自のものがあるでしょうから、監査法人間の意見の対立・調整という監査の本質ではない無駄な時間が増加する可能性があるように思います。

イギリスの競争当局が4大監査法人の「業務分離」を報告したことについて、どう思われましたか?


東芝の監査法人である新日本監査法人に1兆円請求!

 東芝の不適切会計問題を巡り、株主が会計監査を担った新日本監査法人(東京)に損害賠償を求めた株主代表訴訟で、原告の株主側が請求額を約105億円から1兆円に増額したことがわかったようです。
監査法人を訴えた同種訴訟は珍しく、請求額が1兆円に上るのは異例です。

東芝は、20157月、パソコン部門で利益を水増しするなどの不適切会計があったとする外部の第三者委員会の報告書を公表し、3人の歴代社長が辞任しました。
金融庁は201512月~20161月、不適切会計を見抜けなかったとして、新日本監査法人に一部業務停止や約21億円の課徴金納付を命じ、20169月、大阪府内の株主が約105億円の賠償を求めて東京地裁に提訴しました。

ただし、その約3か月後、アメリカにある東芝の原発子会社ウェスチングハウス(WH)が201512月に買収したアメリカの原発建設企業の資産価値が想定より大幅に低かったことも発覚し、東芝は、アメリカの原子力事業で1兆円超の損失を計上する事態となりました。

原告側が問題視するのは、アメリカでの原発建設の遅れに伴ってWH20122013年度に計上した約1,100億円の損失を東芝がすぐには公表しなかった点です。
東芝は201511月に公表したものの、この時にはWHと原発建設企業が買収に合意していました。

原告側は「WHの損失が早く公表されていれば、株主は原発建設企業の買収を認めなかった。公表しないという東芝の判断を追認した監査法人は損失の責任を負う」として、20191月に請求額を増額しました。
これに対し、新日本監査法人は「企業が何を公表するかは監査法人の監査対象ではない」として請求棄却を求めています。

株主代表訴訟は、提訴時の手数料が一律13,000円で、請求額に応じて上昇する通常の民事訴訟よりも巨額訴訟を起こしやすいとされます。
会社法に詳しい上村達男早稲田大教授は、今回の訴訟について、「会社で生じた損失には多くの要因があり、全てを監査法人に負担させようというのは無理がある」とした上で、「1兆円の請求額は根拠に乏しい」と指摘しています。

一方、原告側代理人の弁護士は「監査法人の責任でどれだけ損害が生じたのかを裁判で明らかにすることは、再発防止のためにも意味がある」と話しているようです。

僕自身、公認会計士というのもあるとは思いますが、上村教授のおっしゃるとおりだと思います、
粉飾も第一義的には、東芝に責任があるということをきちんと認識してほしいですね。
当然、会計監査人に責任がないとは思いませんが、こういうことがどんどん出てくると、最近増えている大手監査法人が監査契約を断るというケースがますます増え、いわゆる『監査難民』となる上場企業が増えるのではないかと思います。
世間一般的に、会計監査人側と投資家側の会計監査に対する『ギャップ』があるのは事実だと思いますが、金融庁とか証券取引所とか日本公認会計士協会などが、地道に取り組んでいかないといけないでしょうね。

東芝の監査法人である新日本監査法人に1兆円請求がなされたことについて、どう思われましたか?


日本公認会計士協会が通年でビジネスカジュアルを実施!

 日本公認会計士協会は、これまで、官庁が提唱する温暖化対策への対応として、夏季期間に会館内で執務する役職員の軽装を実施していました。
しかしながら、今後は、通年で「ビジネスカジュアル」を実施するようです。

役職員のビジネスカジュアルに当たっては、『来館者の方々に対し、失礼とならない服装に努めますので、何卒、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。』とコメントしています。

僕自身も、普段お会いしている方はご存知かと思いますが、監査法人トーマツ時代に、夏場はビジネスカジュアルだったこともありますが、年がら年中、ビジネスカジュアルで、スーツを着るのは年間数日です。

昔は、スーツや靴やネクタイやシャツに結構お金をかけていましたし、スーツが嫌いなわけではないのですが、特に必要もないのではないかと思っています。
クールビズでも、上着を着ず、ネクタイをしない(クールビズにふさわしくないようなシャツ)だけなのは、中途半端さが個人的には大嫌いで、やめた方が良いと思っています。
服装で仕事をするわけではないので、こういった流れがどんどん広がり、ビジネスカジュアルが普通という時代に早くなってほしいですね。

日本公認会計士協会が通年でビジネスカジュアルを実施することについて、どう思われましたか?


監査法人トーマツが罰金2億円を支払い!

 アメリカ証券取引委員会(SEC)は、先日、僕の出身の監査法人トーマツが会計監査の独立性ルールに違反し、200万ドル(約2億2,000万円)の罰金を支払うと発表しました。
トーマツ元幹部は同法人が監査を担当する金融機関の口座に一定基準を上回る金額を預けていました。
「独立性が損なわれた状態」で監査報告書が提出されていた上に、法人内の監督体制も不十分で、今回の処分につながったようです。

SECの発表によると、トーマツの元最高経営責任者(CEO)である天野太道氏が独立性ルールに違反しました。
金融機関名は公表されていませんが、アメリカニューヨーク証券取引所に上場する三菱UFJフィナンシャル・グループとみられます。
三菱UFJフィナンシャル・グループが2015年にSECに提出した資料で、トーマツ幹部の預金残高が限度額を超え、独立性ルールに抵触していたと開示していました。
天野氏、は2015年7月末にトーマツのCEO職を辞任しています。

SECのルールでは会計監査の独立性を保つために、監査法人の幹部や監査チームのスタッフが、監査担当企業の銀行口座に一定水準を超す金額を預けないように求めています。
日本企業の場合、預金保険機構の保険限度額(1千万円)がこの水準に当てはまります。
天野氏は三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の銀行に口座を持ち、預金額が一定期間、1千万円を超えていたとみられます。
この間、三菱UFJフィナンシャル・グループは、トーマツの監査報告書を添付してSECに財務書類を提出していた。

SECによると、天野氏の違反は2014年3月にトーマツ内で発見されましたが、監査先の金融機関に伝達されたのは2015年に入ってからでした。
さらに別の調査によって、トーマツに所属する計88人が「独立性ルール」に違反していたことが判明したそうです。
SECはトーマツの違反発見後の対応のまずさや、ずさんな監督体制を問題視し、今回の重い処分につながったようです。

トーマツは「品質管理態勢への影響はない。今後とも監査品質の向上に最善を尽くす」とコメントしています。

独立性が重要な監査法人のトップがこれでは、処分されて当然のように思います。
僕が勤務していた時から、こういったことはチェックするシステムがありましたが、甘かったんでしょうね。
幹部の方々はたくさん報酬をもらっていらっしゃるでしょうから、忙しくて数か月放置しておくとすぐに超えてしまうのかもしれませんね。
それについては、元々、報酬の振込口座としてクライアントを除くことにしておけば良いかと思いますが。

監査法人トーマツが罰金2億円を支払ったことについて、どう思われましたか?


タクシー運転手を蹴った公認会計士を暴行容疑で逮捕!

 タクシー運転手の男性に暴行を加えたとして、神奈川県警緑署は、先日、暴行容疑で、横浜市緑区長津田町の公認会計士(49)を逮捕したようです。
公認会計者は、「覚えていない」と供述しているそうです。

逮捕容疑は、2019日午前2時5分ごろ、自宅近くの路上に止まったタクシー車内で男性運転手(54)を蹴ったとしています。

神奈川県警緑署によると、公認会計士は東京都千代田区内からタクシーに乗車し、自宅付近にさしかかったため寝ていた公認会計士を男性運転手が起こそうとした際、足蹴りしたそうです。
男性運転手が取り押さえて通報し、駆け付けた同署員に引き渡しました。

こういったことで『公認会計士』の名前が出ることは、残念なことです。
人格なども大事ですね。
おそらく、この方はコンサル会社の執行役員だと思いますが、そもそもこういう方がコンサルをできるのでしょうか?
あとは、公認会計士協会のホームページから検索すると、平成29年度は、継続的専門研修(いわゆるCPE)の履修義務が不履行になっていますね。

タクシー運転手を蹴った公認会計士が暴行容疑で逮捕されたことについて、どう思われましたか?


1億8千万円横領容疑で弁護士を逮捕!

 土地建物管理会社から依頼を受けて弁護士の業務として預かっていた計約18,200万円を着服したとして、大阪地検特捜部は、先日、業務上横領容疑で、大阪弁護士会所属の弁護士(66)を逮捕したようです。
大阪地検特捜部は認否を明らかにしていません。

逮捕容疑は、土地建物管理会社が所有するビルの賃料相当損害金を管理する業務を行っていた20135月~201412月、19回にわたり、同社から預かっていた賃料相当損害金を、預かり金口座から出金して流用したり、自分個人名義の口座に振り込んだりして計約18,200万円を着服したとしています。

弁護士をめぐっては、大阪弁護士会が20183月、預かり金をめぐるトラブルの調査に誠実な回答をしなかったとして、業務停止3か月の懲戒処分にしたと発表していました。

大阪弁護士会によると、弁護士が建物の明け渡しや賃料の支払いをめぐる訴訟の代理人をしていた2012年~2014年、相手方が賃料として預かり金口座に振り込んだうち、約9,200万円の行方が分からなくなったようです。

大阪弁護士会が調査に乗り出したようですが、弁護士は口座の取引明細証明書の一部を黒塗りにして大阪弁護士会に提出し、開示を求めても応じなかったりしたため、懲戒処分を決定したそうです。

毎年何人かこのような弁護士のことが新聞などに出ていますが、専門家としては、悲しくなりますね。
信用で成り立っている専門家ですので、一人の行為が、業界全体の信用失墜につながりますからね。
専門家として、プライドを持って仕事をしてほしいですね。
仕事を頼まれる方も、誰を信じていいのか分からなくなると思いますので。

18千万円横領容疑で弁護士が逮捕されたことについて、どう思われましたか?


公認会計士の継続的専門研修における「会員の研修履修結果の開示」!

 公認会計士は、導入されてかなり経ちますが、継続的専門研修制度(いわゆるCPE制度)は、公認会計士としての使命及び職責を全うし、監査業務等の質的向上を図るため、公認会計士の資質の向上及び公認会計士が環境の変化に適応するための支援を目的とし行われ、会員は所定の単位数の取得を義務付けられています。

日本公認会計士協会の会員の義務達成率は平成29年度では98.8%となっており、大多数の会員が義務を達成し、その資質の向上に役立てています。

この度、公認会計士に業務を依頼する際の参考に資するための情報充実の観点から、会員の研修履修結果が開示されることになりました。

会員の研修履修結果については、公認会計士等検索システムで会員個人を検索していただいた画面で確認することができます。

僕も自分のものを確認してみましたが、開示されるようになっています。
僕自身も、年間に、公認会計士や税理士向けの研修だけでなく、かなりの数の研修を受講していますので、良い試みではないかと思います。
これを見て、この人に仕事を頼もうなどといった考えが働くかどうかは疑問ではありますが。

公認会計士の継続的専門研修における「会員の研修履修結果の開示」について、どう思われましたか?


ユニクロの柳井氏が記念式典で講演し「公認会計士がハンコを押す人になっている」!

 ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、先日、日本公認会計士協会が開催した記念講演で、公認会計士に対して「経営者と経営課題を議論できるパートナーになってもらいたい」と語った。人工知能(AI)の発達などで会計業務が標準化される可能性について言及したうえで、会計知識の経営への活用を参加者らに呼びかけました。

 日本公認会計士協会が東京国際フォーラム(東京・千代田)で開いた「公認会計士制度70周年記念式典及び記念講演」に登壇しました。

柳井氏は、公認会計士が「(監査業務で)ハンコを押す人になっている」と指摘しました。
AIの発達などで「単純な計算や分析は必要がなくなる」との見通しを示したうえで、経営者との協調を呼びかけました。

柳井氏は、また、国内企業の経営力が劣化しているとの持論を展開し、その例として「一番もうかっている半導体の部門を売って時代遅れの重厚長大な部門を残す経営判断はおかしい」と半導体メモリー子会社を売却した東芝を挙げました。

近くで開催されれば行ったのですが、流石に、柳井さんは的をついたことをおっしゃいますね。
日本公認会計士協会は、AIが発達しても、業務に影響がないことをアピールしたいのでしょうが(笑)。
僕が、監査法人にいた頃から、指導はしてはいけないということがあったので、疑問は感じでいました。
本当に、『ハンコを押す人』になっていると思います。
やはり、監査に関すること以外も経営者と協議をして、色々なことに対して発言・指導することによって、存在感が増し、クライアントとの良好な関係が構築されるのではないかと思います。
当然、監査を行う公認会計士に、幅広い知識が要求されます。

ユニクロの柳井氏が記念式典で講演し「公認会計士はハンコを押す人になっている。」と述べられたことについて、どう思われましたか?

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急拡大でひずみが生じた太陽監査法人が業務改善計画を提出!

日本経済新聞によると、太陽監査法人は2024年1月末までに金融庁に業務改善計画を提出します。

ディー・ディー・エス(DDS、2023年8月に上場廃止)に対する監査に重大な不備があり昨年12月に行政処分を受けていました。

企業の監査人交代の受け皿役を積極的に引き受け、大手法人の一角をしのぐ規模まで成長してきた太陽監査法人の拡大路線は方針転換を余儀なくされます。

2023年12月下旬、監査業界に激震が走りました。

「重大な虚偽記載がある財務諸表を虚偽がないと証明した」として、金融庁が太陽に対する処分を公表したためです。

処分内容は2024年1〜3月における新規契約締結の停止や業務改善命令などで、9,595万円の課徴金納付命令も出ました。

監査法人への課徴金納付命令は会計不正があった東芝を担当していた新日本監査法人(現EY新日本監査法人)が2015年12月に受けて以来です。

公認会計士法上の課徴金制度が導入された2008年以降で2例目と、ほぼ例がないのです。

事の発端はDDSの会計不正です。

2022年5月に売上高の過大記載の疑いが発覚しました。

貸倒引当金繰入額の過少計上なども明らかになり、訂正報告書の提出を求められていました。

DDSは2022年8月12日に太陽監査法人の監査意見付きの訂正報告書を提出しました。

しかしながら、当期と前期の繰越利益剰余金の差額が損益計算書の最終損益と整合しないなど多くの虚偽記載があったのです。

実は太陽監査法人は、DDSの訂正報告書のドラフト段階で修正が必要な箇所があることを認識しており、修正が必要な箇所もDDSに伝えていました。

ところが、DDSは修正しないまま提出を強行してしまったのです。

太陽監査法人の石井雅也経営管理本部長は「クライアントへの指導力不足が露呈した」と語っています。

今回の失敗はいくつもの要因が重なっています。

DDSは度重なる不正で経理人材の退職が相次ぎ、正しい財務諸表を作る能力が著しく下がっていました。

また、訂正報告書の提出がこれ以上遅れれば、上場廃止になると焦っていました。

太陽監査法人の担当会計士は「指摘部分は当然修正されるはず」と考え、業務効率化のため事前にレビュー報告書を渡していたのです。

青山学院大学大学院の町田祥弘教授は、太陽監査法人について「中身を確認せずレビュー報告書を事前に渡すなど言語道断だ」と話しています。

金融庁の担当者も「簿記3級程度の基本的部分の見逃しで到底考えられない」と憤っているようです。

太陽監査法人が規模を急拡大させてきたことへのひずみを指摘する声もあるようです。

上場企業監査顧客数は350社と2019年比で6割増えました。

監査業界で太陽は「ビッグ4」と呼ばれる大手に次ぐ「準大手」の位置づけですが、上場企業顧客数だけでみれば大手の一角のPwC Japan(約200社)より多いのです。

ある大手法人の公認会計士は、「公認会計士の負担が増すなか太陽監査法人側の顧客受け入れや従業員の教育体制が十分だったか疑問だ」と話しています。

太陽監査法人がリスクの高い会社の監査の受け皿になっていたという事実もあります。

5〜6年前から企業が会計監査人を大手法人から準大手や中小に交代する動きが加速しています。

金融庁傘下の公認会計士・監査審査会によると2022年度の監査シェアは準大手と中小法人が合計で40%を超えました。

人手不足に悩む大手法人は、不正リスクが高く採算も厳しい中堅中小企業の監査を絞る、実質的な顧客選別を進めてきたのです。

大手法人から切られた企業にとって太陽監査法人は頼れる先で、金融庁などが課題視する「監査難民」問題の緩和に一役買っていました。

DDS事案を教訓に、太陽監査法人は監査や審査体制の見直しを始めました。

顧客のガバナンスリスクに応じた適切な人員配置ができるようにします。

さらに、今後はリスクの高い企業の監査契約にはより慎重になる公算が大きいでしょう。

よって、拡大路線にはブレーキがかかりそうです。

駆け込み寺的な役割を担っていた太陽監査法人が選別を始めれば、国が進める新興企業などの育成に支障がでる可能性が高いです。

しかしながら、DDSのように「上場の意義を理解していない企業が存在しているのも事実」(町田教授)です。

監査インフラが有限である現実を踏まえ、野放図な上場企業増加も見直す必要があるでしょう。

事前にレビュー報告書を渡すというのは完全にアウトですね。

太陽監査法人が駆け込み寺みたいになっていたのは知りませんでしたが、駆け込み寺となる監査法人が今後出てこないことを願いたいですね。

監査法人が会計監査を引き受けないような会社は、何かしらの問題があるということでしょうから、上場にふさわしくない会社ということでしょう。

急拡大でひずみが生じた太陽監査法人が業務改善計画を提出することについて、あなたはどう思われましたか?


金融庁が太陽監査法人に業務停止命令及び担当公認会計士2人も処分!

日本経済新聞によると、金融庁は、先日、準大手の太陽監査法人(東京都港区)に対して契約の新規締結を3か月間停止する業務停止命令を出しました。

財務諸表で多くの虚偽記載をしていたディー・ディー・エスの監査で、注意を怠り虚偽記載がないと証明したのが理由です。

業務停止の期間は2024年1月1日から3月31日までです。

担当した公認会計士2人にも業務停止6か月間の懲戒処分を出しました。

2人の公認会計士は財務書類の間違いが初歩的なものにもかかわらず注意を怠り、適正であると監査証明していました。

さらに、チェックする立場にあった審査担当の社員1人に対しても監査業務の審査に関与することを3か月間禁止する処分を出しました。

この社員は会計士の評価内容を十分に検証しないまま対応を終えていました。

太陽監査法人には、業務管理体制の改善を求める業務改善命令も出した。

2024年1月31日までに業務の改善計画を提出し、直ちに実行することを求めました。

太陽監査法人への行政処分は、処分基準を制定した2005年以降で初めてです。

太陽監査法人は4大監査法人(トーマツ・新日本・あずさ・あらた)に次ぐ準大手の監査法人です。

上場企業の監査数で第4位で、2023年9月末時点でプライム上場企業118社を含む計約350社の上場企業を監査しています。

大手がクライアントを減らし、準大手が増やしている中、準大手の中でも大きな太陽監査法人がこのような実態であれば、会計監査に対する社会的信用を失うことは明らかですので、本当に勘弁してほしいですね。

そういうことを考えると、投資家の視点で考えると、大手が会計監査をやっている企業がやはり信用できますね。

個人的には、処分は甘すぎると思いますし、このような監査法人は解散して、きちんと会計監査をできる監査法人が上場企業の会計監査をすべきだと思います。

金融庁が太陽監査法人に業務停止命令及び担当公認会計士2人も処分したことについて、あなたはどう思われましたか?


メガネスーパー運営のビジョナリーHDの監査人が結論の不表明!

日本経済新聞によると、眼鏡店「メガネスーパー」運営のビジョナリーホールディングスは、先日、2022年5月〜2023年1月期の四半期報告書について、PwCあらた有限責任監査法人から結論を表明しないとの報告書を受け取ったと発表しました。

第三者委員会を設立し前社長の利益相反行為を調査しましたが、影響額などを示す詳細情報を得られていないようです。

第三者委は前社長の利益相反行為について業務委託先など25社を調査しました。
前社長が一部の取引先で「意思決定機関を支配している」とし、ビジョナリーHDが一部取引先から不合理な賃料増額や業務実態が確認できない費用を請求されている可能性を指摘しました。

ところが、ビジョナリーHDは取引先から必要な情報を入手できず、先日発表した決算短信で「重要な虚偽記載が存在する可能性がある」と記載しました。
PwCあらたは「未発見の虚偽表示があるとすれば影響は広範囲である。結論を表明する十分な証拠がなく、重要な修正が必要か判断できなかった」としています。

ビジョナリーHDは前社長らによる利益相反行為の影響を精査するため、3月に予定していた決算発表を延期していました。
四半期報告書の提出遅れから東京証券取引所の上場廃止基準に抵触する恐れがある「監理銘柄」に指定されていましたが、6月14日付で解除されました。

2022年5月〜2023年1月期の連結純利益は9,100万円でした。
なお、前期の同期間は4億200万円の赤字でした。

前社長側が制限などしているようですが、元々は、監査法人の通報窓口に通報があったようです。
正義感の強い方が社内におられるというのは、ある意味、素晴らしい会社なのかなぁと思います。
嘘の通報がたくさん行われるようになると問題はあるかと思いますが、もっともっと上場企業で通報が普通に行われ、有効なものになればいいなぁと思った1件でした。

メガネスーパー運営のビジョナリーHDの監査人が結論の不表明だったことについて、あなたはどう思われましたか?


中小監査法人を登録制で選別!

日本経済新聞によると、上場企業の会計監査において役割が増す中小監査法人の選別が進みそうです。
監査担当を大手から替える動きが目立つ一方、ずさんな監査体制で行政処分を受ける中小は少なくありません。
金融庁は上場企業の監査を担うための登録制度を法律で定め、情報開示などを強化する方針です。
自主規制団体の日本公認会計士協会が登録制をどの程度厳格に運用できるかが焦点となっています。

監査法人のあり方を巡り、金融庁は公認会計士法などを改正し、自主規制の枠組みにとどまる登録制を法律で定める方針です。
政府は2022年3月に改正法案を国会に提出し、2022年度内の施行を目指しています。

金融庁は2017年に策定した「監査法人のガバナンス・コード」などに基づき、監査の品質向上や透明性の確保の徹底を求めます。
登録制を運用する日本公認会計士協会の手塚正彦会長は「情報開示を強化し、各事務所の強みや特徴を理解してもらうことが重要」とした上で、「重大な不備があれば、上場監査マーケットから退場してもらう」と断言しています。

上場企業を監査する中小監査法人は約120あります。
100人超の規模の法人がある一方、個人で事務所を開き、共同で監査する場合もあります。
IT(情報技術)資源も法人間でばらついており、新しいビジネスへの対応でも情報量に差があります。

中小監査法人では近年、行政処分に至る事例が相次いでいます。
2021年8月、原会計事務所は金融庁から1か月の業務停止命令を受けました。
2020年11月には大手門会計事務所に対して同様に5か月の業務停止命令が下りました。

金融庁幹部は経営陣の意識次第としながらも「企業との癒着が起きやすく、組織的監査も機能しにくい」と話しています。
「一部の監査法人は、明らかに身の丈に合わない量の監査業務を引き受けている」とも指摘しています。

応和監査法人(東京都千代田区)はIT専門担当3人を含む約40人で上場企業9社を担当しています。
大手監査法人出身で総括代表の沢田昌輝氏は「監査業務の本質は規模で変わるものではない」とする一方、「中小は特に問題が起こった際に、ひとくくりで見られる」と語っています。
優秀な人材の確保も「大手に比べると難しい」と指摘しています。

中小監査法人の役割自体は増しています。
公認会計士・監査審査会の報告書では、企業が監査担当を大手監査法人から中小監査法人に替えた件数は2021年6月までの1年間で87件と前年の2倍以上でした。
大手監査法人は手数料などコストが高くなっています。
シェアでは大手がなお7割弱(社数ベース)を占めていますが、中小のシェアは拡大傾向が続いています。

情報開示の強化など登録制の厳格運用で中小監査法人の選別は進む可能性が高いでしょう。
企業が自らに適した監査法人を選びやすくなり、財務情報の信頼性もより高まります。

ただし、日本公認会計士協会が実効性のある運用ができるか懐疑的な見方もあります。
2016年度以降に会計士協会が登録を取り消したケースは2件しかありません。
日本公認会計士協会が甘い評価を下せば、登録制の法定化は意味をなしません。

監査業界は問題が起こるたびに規制強化の議論が出ますが、規制対応で負担がかさみ、業務に支障をきたせば本末転倒です。
登録制で自浄作用を発揮できるか、監査人の自覚が改めて問われています。

少し前の伝説の監査法人のような駆け込み寺的存在になっている監査法人が存在するのも事実だと思いますし、監査法人が処分を受けたとしても、同じようなメンバーで新しい監査法人を作っているケースもあるのではないかと思います。
あと、たまに、監査法人のホームページを見たりしますが、代表者の経歴を見て、このような業界の経歴の浅い人がトップの監査法人が上場企業の会計監査をやっていいのかと疑問に思うことがあります。
結局、誰かが問題を起こすと、公認会計士の信頼が失われることになりますので、実効性のある運用がなされることを期待したいと思います。

中小監査法人を登録制で選別することになることについて、どう思われましたか?


トーマツが不正会計リスクをAIで“監査”し過去の不正企業との近似率を計算!

ITmediaによると、デロイトトーマツグループの監査法人トーマツは、先日、AI技術を活用して不正会計のリスクを予測する「不正検知モデル」を開発したと発表しました。

AIによる監査の高度化を目指すそうです。

2005年以降に公開された有価証券報告者の財務データや、為替レート、物価指数といった市況データをAIに学習させました。

対象企業・勘定科目の財務データから不正企業との近似率を「不正スコア」として算出します。

計算に影響を与えた項目など、スコアの理由を表示できるほか、類似度の高い不正企業の事例も参照できます。

トーマツは2022年1月から不正検知モデルを本格導入しました。

今後2年間で100社以上の監査先で活用し、入手した財務データは同意を得てAIの学習データとして使うとしています。

AIが馴染む仕事かもしれませんが、元トーマツの人間で、会計監査をしていた僕としては、個人的には、監査人としての経験からくる直感というものがとても重要だと思っています。
もちろん、AIも使うということは否定しませんが、AIに頼りすぎるのもどうかと思います。
会計監査の報酬は、現場での時間がベースとなるでしょうから、クライアントの見えないところで使っている時間はチャージしにくいでしょうから、監査報酬の値下げに繋がる可能性もあるのではないかと思っています。
また、監査人があまり考えず、機械的な判断になってしまうのではないかと危惧しています。
もちろん、監査法人は人手不足や働き方改革にも対応しないといけないことは重々承知ですが、直感とAIをうまく組み合わせて効率的な監査ができるようになり、不正が少なくなればいいなぁと思います。

トーマツが不正会計リスクをAIで“監査”し過去の不正企業との近似率を計算するようになったことについて、どう思われましたか?


金融庁が質向上を狙い監査法人登録の法制化を検討!

時事通信によると、金融庁は、先日、企業の会計監査を行う監査法人に関する論点整理案を有識者会議に提示しました。

監査法人の登録制度について「法律に基づく制度の枠組みを検討する必要がある」と指摘しています。

現在は日本公認会計士協会による自主規制としての登録制度がありますが、中小監査法人を含め、上場会社の監査の質を向上させるため、法律に基づく新制度を検討するようです。

上場会社の監査を担う中小監査法人は増加傾向にあります。

しかしながら、企業側の事業規模拡大に十分対応できていないとの見方があります。

論点整理案では、中小監査法人も上場会社の監査に十分な能力・体制の確保が必要だと強調しています。

問題を起こした監査法人のパートナーが新しく監査法人を作ってパートナーとなり、監査法人は変わったものの実態は同じみたいな案件もありますし、金融庁の検査を受けた監査法人が処分されたケースで、指摘内容を見てみると、こんなところが上場企業の会計監査をやっているのかと思うことがあります。
公認会計士や監査法人の信頼性を担保し、会計監査の重要性を認識してもらうには、質の向上は避けることができないと思います。
金融庁がどうするのかは分かりませんが、非常に良いことだと、個人的には思います。

金融庁が質向上を狙い監査法人登録の法制化を検討していることについて、どう思われましたか?


公認会計士が帳簿や領収書を在宅チェックする「リモート監査」!

日本企業の2020年3月期決算の監査業務が大詰めを迎えています。
今年は、監査法人の会計士が在宅で企業の帳簿や領収書をチェックする「リモート監査」が広がりました。
公認会計士が新型コロナウイルスに感染し、担当企業の決算や株主総会に影響するのを防ぐためです。
ただし、効率低下は避けられないでしょう。
書類の電子化や期末直後に集中する業務の分散など課題も浮き彫りになりました。

企業は株主総会の招集通知や有価証券報告書に損益計算書などの計算書類を掲載します。
正確さを担保するために公認会計士または監査法人による会計監査が欠かせません。
法律上は必要のない決算も会計監査を終えて臨むことがほとんどです。

契約書や請求書などの電子化が進んでいない企業の監査では、公認会計士が会社を訪れて資料を直接確認し、会社が報告する決算資料と照らし合わす作業が必要でした。

今年は新型コロナの影響で企業への訪問が難しくなり、監査法人は「リモート監査」で対応しています。
公認会計士は1人が複数企業の業務を掛け持ちします。
従来のような企業訪問を続ければ感染リスクが高いうえ、オフィスで監査法人内に濃厚接触者が増えれば監査業務が滞りかねません。

大手のトーマツは2月末から、原則的にオフィス作業を在宅勤務に切り替えました。
在宅で監査ができるよう上場企業など顧客企業900社に携帯端末の配布も始めました。

企業の経理担当者などが領収書や契約書など、公認会計士の確認が必要な書類を撮影し画像を送ります。
送り先が設定されており、誤送信がありません。
データは端末に残らず、情報流出リスクを抑えています。

アメリカのアップルの多機能携帯端末「iPodタッチ」に独自開発のアプリやセキュリティー対策ソフトを加えました。
1社につき1台は無料で、2台目以降は1台あたり2万9,000円で貸し出しています。

公認会計士は1社当たり数千枚の書類照合作業が在宅でできます。
国井泰成包括代表は「顧客企業と監査法人双方の負担軽減にもなる」と期待しています。
トーマツが属する世界のデロイトグループでも初めてで、今後は海外にも広がる可能性があります。

EY新日本監査法人は監査先企業とオンラインでデータをやり取りするためのポータルサイトを活用しています。
2018年ごろから利用を始めました。
上場、非上場あわせて約3,800社の顧客企業のうち630社程度が利用しています。
3月末にもある上場食品メーカーが採用を決めました。

顧客が使うポータルサイトは、EY新日本の会計士が業務で使うシステムと連携しています。
各公認会計士が自分に割り当てられた業務のために該当ページを開くと、企業側がアップした資料から必要なデータだけが自動的に表示される仕組みです。
EY新日本は2月末よりオフィス業務は原則在宅にしました。

もっとも監査業務全てをリモートに置き換えられるわけではありません。
紙の契約書や請求書などはPDFデータをいったん参照しますが「改ざんがないか最終的に現物を確認する作業は残る」(EY新日本の片倉正美理事長)。
各監査法人は最小限の人数で会社を訪問しています。

遠隔作業は手間がかかる面もあります。
大手監査法人に所属する30代の公認会計士は「対面で同じ資料を突き合わせてやり取りするのに比べると意思が伝わりにくい」と語っています。
在宅勤務は経験が少ない若手公認会計士にとってベテランの指導を仰ぎにくい面もあります。

「現場では作業効率が20%程度落ちている」(日本公認会計士協会の手塚正彦会長)といい、作業の遅れから決算発表を当初予定から延期する企業が続出しています。

監査業務が決算期末後に集中するという問題がコロナでより顕在化しました。
一つの解決策は「常時監査」です。
企業の基幹システムと監査システムを常に接続し、人工知能(AI)も活用しながら不正の有無をリアルタイムで確認するものです。
業務の平準化と訪問機会の減少につながるでしょう。

EY新日本が導入を検討しており、AIを使った監査ツールの開発人材を3年後に2.5倍の75人に増やす予定です。

会計監査は、担当者の態度や話しからおかしいなぁと思うこともあるでしょうし、質問することもたくさんあります。
それゆえ、在宅になると時間もかかりますし、不正などを見落とす可能性も高くなるでしょう。
一方で、現金や受取手形や有価証券や預金証書などの現物を確かめたり(いわゆる実査)、実地棚卸の現場に出向いて状況を把握したり、現物を確かめたり(いわゆる立会)することは、監査手続上、非常に重要なものとなるため、在宅では不可能な手続も存在します。
また、上場企業の場合、一つの部屋で数人が数週間監査を行っていることが多いため、感染しやすい環境にあるかと思います。
窓がない部屋のことも多いですから。
今回の新型コロナウイルス感染症は会計監査を根本的に見直す機会になるかもしれませんね。
ただし、会計監査は、担当者の単価×見積時間の積み上げによって監査報酬が決まるでしょうから、在宅やAIによる会計監査などが増えると、見積時間がクライアント側には感覚的に分かりにくくなるかもしれませんので、監査報酬の交渉が重要性を増すかもしれませんね。

公認会計士が帳簿や領収書を在宅チェックする「リモート監査」について、どう思われましたか?


プリントネットが『公認会計士等の異動に関するお知らせ』を一部変更!

 プリントネットというJASDAQに上場している企業が、先日、「公認会計士等の異動に関するお知らせ」というプレスリリースを一部変更しています。
文章は、以下のとおりです。

(訂正)「公認会計士等の異動に関するお知らせ」の一部訂正について

 2019年10月24日に開示いたしました「公認会計士等の異動に関するおしらせ」の記載内容について、下記のとおり訂正させていただきます。

                 記

1.訂正の理由
当社が2019年10月24日に開示いたしました「公認会計士等の異動に関するお知らせ」の記載内容につき、退任する有限責任監査法人トーマツより、訂正の依頼が本日付けであったため、その訂正を行うものであります。

2.訂正の内容
 訂正箇所には下線を付して表示しております。
 2ページ「6.異動の決定または異動に至った経緯」

<訂正前>

当社は、監査体制に疑念を抱く点並びに近年の監査報酬が増加傾向であることなどから、公認会計士等の評価・見直しを行うべきと考え、監査役会において複数の監査法人と検討してまいりました。

<訂正後>
 当社は、監査証明が出されている期より以前の期における監査体制に不備があったこと、また、近年の監査報酬が増加傾向であることなどから、公認会計士等の評価・見直しを行うべきと考え、監査役会において複数の監査法人と検討してまいりました。

2ページ「7.6.の理由及び経緯に対する意見」
(1)退任する公認会計士等の意見1行目
<訂正前>
 特段の意見はない旨の回答を得ております。

<訂正後>
 退任する公認会計士等からは、「監査報酬に関し合意するに至らなかったため、任期満了により退任する旨申し出たものであります。なお、当監査法人は所定の品質管理体制のもと適切に監査を実施しております。」との回答を得ております。

                                     以上

監査法人に対する不信感はあったのでしょうが、監査法人の意見も聞かず、プレスリリースするというのもどうなんでしょうね。
『監査証明が出されている期より以前の期における監査体制に不備があったこと』というのもよく分かりませんが。
まぁ、あまり会社と監査法人の関係性が良くはなかったということなのでしょうけど。
個人的には、最近では、監査法人変更の理由にすごく興味がわきます。
会社もきちんと理由を書き、監査法人もそれに対する意見をきちんと書くということが、投資家のためになるでしょうね。

プリントネットが『公認会計士等の異動に関するお知らせ』を一部変更したことについて、どう思われましたか?


現場を衰退させる形式主義!

 日本経済新聞によると、行き過ぎた形式主義が現場の思考停止を招いているようです。
不祥事が起きるたび新たな制度やルールが作られ、それらすべての規則を守ることを目的化してしまい、現場力の著しい低下を招いているようです。

企業統治(コーポレートガバナンス)の強化は大切ですが、実態はどうなのでしょうか?
本来、社外役員に求める能力やキャリアは企業ごとに異なるはずですが、知名度や性別、資格など形式要件だけで選定する企業も少なくありません。
機関投資家が画一的な形式基準で評価することも一因です。
担当する企業数が少なければいいというものではありません。
むしろ少なすぎれば1社当たりの報酬に対する依存度が高まり、言いたいことが言えない環境を作ることになってしまいます。

規制当局による検査の在り方も同様です。
実態を見よう、事業性を正しく評価しようと号令がかかるのです。
ただし、マイナスの評価基準は明確でも、プラスの基準は示されていません。
検査結果次第で人事評価を受ける現場にとって、いい仕事やリスクを取って成功した時、それを評価する基準が無ければ、顧客や社会と向き合い議論などできません。
その結果、検査のみに視点が行ってしまいます。

現場にも問題があります。
コンプライアンス(法令順守)強化により、マニュアルなどの整備が進み、ルールやルーティンを守りさえすればいいという組織は責任をとらない楽な仕組みです。
しかしながら、目先の手順や仕組みに依存していては、本質を理解する力や物事を考える力は大きく衰退するのです。

専門家も同じです。
公認会計士は『会計監査六法』に基づき監査を行いますが、20年前までは1,182ページだったものが、今では3,168ページに達します。
監査を取り巻く環境は厳しくなり、厳格な対応が求められています。
その結果、例えば棚卸しの監査時に現品の記録確認に気を取られるあまり、在庫管理状況の確認を失念するという具合に本質的な問題を見逃すことになりかねません。

ガイドラインやマニュアルなどへの依存は責任の所在を分散させ、組織的に動かすには便利な手段です。
しかしながら、職場での対話や各人が考えたり、五感で感じ取ったりという人間本来の能力を低下させているのです。
洞察力、思考力、対話力といった能力は一旦失われてしまうと容易には取り戻せません。
経済環境が好調な時こそ、コストと時間をかけてでも人を育てるという視点が不可欠でしょう。

このBlogでも何度か書いていると思いますが、僕が監査法人を辞めた理由の一つは、不祥事があり、金融庁の検査のための書類作りが増えたことにあります。
監査手続きとは直接関係のないような作業が増え、誰のために監査をしているのだろうと疑問がわいたからです。
当時以上にその作業は増えていると推測しますし、今も本質的に変わらないですね。
近年、『会計監査六法』を見るたびに、以前は『会計監査小六法』だったのになぁとか、実際にはページ数も増えているし、金融用・学校法人用・非営利法人用など種類も増えているなぁと思います。
形式にとらわれすぎて、本質を見落とさないようにして欲しいですね。

現場を衰退させる形式主義について、どう思われましたか?


「本3月期決算に係る監査の実施に当たって」の公表!

 日本公認会計士協会は、2019年03月27日付けで、「本3月期決算に係る監査の実施に当たって」を公表しました。

 内容は以下のとおりです。
 本3月期決算に係る監査の実施に当たって企業活動の複雑化・グローバル化が加速する中で、企業が作成する財務諸表は、様々な立場の人がその信頼性に注目しています。このため、財務報告の信頼性を担保するための監査の役割は、一層重要性を増しています。加えて、監査基準の改訂によるKAMの導入、通常とは異なる監査意見等に係る対応についての議論など、昨今の監査の信頼性向上への取組からも明らかなように、従来にも増して、ステークホルダーからの監査に対する期待も高まっています。
 一方で、近時においても盛んに報道されているとおり、企業の不正が後を絶ちません。また、海外でも会計不正やその監査を巡る問題を受けて、監査の信頼性を更に向上させるための議論が行われています。
 当協会では、監査業務改善のために、毎年監査業務審査会の審査内容を参考にした『監査提言集』を公表しています。この『監査提言集』では、監査人が心掛けるべき「11の提言」を記載しています。
 3月期決算に係る監査の繁忙期を迎えるに当たり、会員各位には引き続き、「11の提言」も有効に活用し、職業的懐疑心をもって、監査の基準に従いリスク・アプローチに基づく監査の実施に努めるようお願いします。

以 上

 こういう文書を出さないといけない状況であるということ自体、残念な気がしますね。
ここでは書きませんが、『11の提言』も、こんなこと書く必要があるのか?と思うようなものがいくつか入っています。
個人的には、不祥事の発生→監査の厳格化→マニュアルなどの強化→職業的懐疑心の低下という悪循環に陥っているのではないかと思います。
あと、最近、『KAM』(Key Audit Matters)ということばを、日本公認会計士協会が良く使っているような気はしますが、もう少し、一般の方々でもわかりやすいことばにした方が良いのではないかと思うのは、僕だけなのでしょうか?

「本3月期決算に係る監査の実施に当たって」の公表について、どう思われましたか?


指針変更でわかった「監査法人交代」の理由は結局お金!

 12月期決算の上場会社の定時株主総会が終わりました。
上場会社は決算書を監査法人にチェックしてもらう義務を負っています。
どの監査法人に監査を依頼するかの決定プロセスは会社によって異なり、会社が候補を決めて総会に諮る場合と、会社自体に決定権があって総会では報告するだけで良い場合があります。
しかし、いずれにしても総会マターです。
このため、監査法人の交代は、定時総会開催月の前々月の下旬から当月上旬くらいまでに公表されるのが一般的です。
2019年も12月期決算企業の監査法人交代の発表が1月下旬から始まりましたが、2019年は例年とは少々趣きが異なっています。
交代を知らせる各社のリリースに、これまでにはなかったほどしっかりと交代理由が書き込まれているのです。
逆に言えば、これまではなぜ監査法人が交代するのか、その理由がちゃんと書かれてきませんでした。
なぜ2019年になって、こうした変化が生じているのでしょうか?
これに関する記事が、Money Forwardが運営するMONEY PLUSというサイトに書かれています。

上場会社が監査法人を変える理由はいくつかあります。
1つは、会計処理の方針で会社側と監査法人の意見が対立したり、その会社の事業特性や業界慣習に対する理解をしてもらえない場合、2つ目が、監査法人の担当者が重大なミスを犯したり、何らかの粗相があって会社側を怒らせた場合、3つ目が、監査報酬で折り合えなかった場合です。
このほかに、海外子会社が増えて海外の会計事務所とのネットワークがある監査法人に乗り換える場合などがあります。
かつて、監査法人の変更は、上場会社にとって非常に重大なことでした。
会社が何か重大なリスクを抱えていて、監査法人に逃げられてしまったのではないか、と市場から疑いの目で見られる可能性があったからです。

しかしながら、平成不況が長引く中で、新規に上場する会社の数が激減し、監査法人間でクライアントの奪い合いが発生しました。
これによって、少しでも監査報酬を安くしたい会社側の思惑とが合致し、4大監査法人(EY新日本、あずさ、トーマツ、PwCあらた)間での変更や、4大監査法人から準大手への変更であれば、投資家も色眼鏡で見ることがなくなったため、監査法人変更のハードルがぐっと下がったのです。
そして景気が回復すると、今度は監査法人の人手不足が深刻化してきました。
それまで買いたたかれる一方だった監査法人も、会社に対して原価に見合う報酬を要求するようになり、一転して売り手市場になったのです。
東芝問題をはじめ、次々と不正会計が発覚したため、より厳格な監査手続が求められるようになったことも、監査法人の人手不足の原因になっています。
このため、かつては監査先数と売上高で競い合っていた監査法人も、ちゃんと採算が合うだけの報酬を払ってくれて、なおかつ粉飾発覚リスクも低い監査先しか監査を引き受けないという方針に転換し、近年では監査報酬で折り合わなかったために、監査法人が代わるケースが激増しているらしいということは、噂レベルでは出ていたのです。

ところが、会社側はその本音、つまり「監査報酬で折り合わなかったから監査法人を変えた」という理由を、なぜか交代のリリースに書かないことが一般化していたのです。
監査を受ける会社の現場の人にとって、監査法人を変えるというのは大変負担が重いものです。
会社によって業界の慣習は異なり、監査法人に会社のことや会社が手掛けている事業のことをわかってもらうまでには大変な労力がかかります。
それゆえ、監査法人を変えるというのは、そう簡単なものではないのです。
ところが、リリースに書かれる前任監査法人の退任理由は「今度の総会で任期が満了するから」となっていたのです。
後任は「監査を任せられるだけの資質があるから」、あるいは「総合的に判断して」といった、真の理由がわからない書き方であるのが普通で、まるでコピペしたかのように、大半の会社が同じ文言を書き連ねていました。

その状況が一変したのが2019年1月下旬です。
理由は、金融庁が有識者を集めて発足させた「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」が、1月22日に公表した報告書に「監査法人の実質的な交代理由をちゃんと書くべき」と書かれたからなのです。

効果はてきめんです。
それ以降、3月8日までに開示された監査法人の交代リリースをまとめてみたところ、19社中18社が明確に交代理由を書き、そのうち9社が監査報酬で折り合えなかったことを理由に挙げています。

このほか、監査時間を理由にした会社が1社あり、監査報酬は「単価×のべ作業時間」で計算されますので、監査報酬が理由と考えられます。
この1社も含めれば10社です。

4月に入ると、3月期決算会社の監査法人交代の発表が出始めます。
昔に比べれば、監査法人の交代で会社側が風評リスクにさらされる確率は低下したとはいえ、それでも大手から中堅以下の規模の監査法人に交代した場合は、あらぬ噂を立てられるリスクを伴います。
理由を明示することが常識になれば、会社側は不本意な風評リスクから解放され、それは投資家にとっても歓迎すべきことだと思います。

僕自身は、監査法人に勤めていた人間なので、監査法人を変えると事業のことをわかるようになるまでかなりの時間を要するので結局高く付くと思っているのですが、そうではないようですね。
あとは、IPOしそうな企業を探し出して、IPOまではかなり安い報酬で引き受け、上場してから回収していくというのが一般的なのかなぁと思っていたのですが、簡単に監査法人を変更するのが一般的になってくると、IPOまでの期間の報酬もきちんと取るようになる、つまり、監査法人側も選別を強めるような気はします。
あとは、投資家という立場からすると、考えが古いのかもしれませんが、今後は大手が監査先を絞っていくことになると思いますので、大手が監査しているところに投資しようとは思いますね。

指針変更でわかった「監査法人交代」の理由は結局お金であることについて、どう思われましたか?


登録政治資金監査人に対する個別の指導・助言の取組について!

 政治資金適正化委員会は、政治資金監査の質の確保を図るための取組の一つとして、平成26年分の収支報告書(定期分)に係る政治資金監査から、政治資金監査報告書や収支報告書の記載状況等に不備のあった登録政治資金監査人に対して指導・助言を行う取組を実施しています。
個別の指導・助言の取組は、都道府県選挙管理委員会及び総務省に対して、政治資金監査報告書の記載状況等について報告を求め、当該報告に基づいて、関係する登録政治資金監査人に対して直接当委員会から個別に指導・助言を行うものです。
指導・助言の対象となる事例は、以下のとおりです。

(1) 政治資金監査報告書の基本的な構成に係るもの
(2) 収支報告書(支出に係る分に限る。)上に金額の不整合(計算誤り、表間不突合等)があるもの
(3) 政治資金監査を適確に実施していないことが明らかであると考えられ、政治資金監査制度への国民の信頼に影響を及ぼしかねないと認められるもの等

これに基づき、指導・助言の対象とした事例等が公表されています。
平成29年分の収支報告書(定期分)に係る政治資金監査を対象とした個別の指導・助言の取組において、個別の指導・助言の対象とした主な事例等は、下記のとおりです。
政治資金監査は、法令及び政治資金監査に関する具体的な指針(政治資金監査マニュアル)に基づき適確に行う必要がありますので、このような事例が生じないよう、この機会に改めて、政治資金監査マニュアル、政治資金監査チェックリスト及び政治資金監査報告書チェックリストをご覧いただき、引き続き適確な政治資金監査の実施に努めていく必要があります。

<指導・助言の対象とした主な事例>
○都道府県選管の最初の受付時に、収支報告書(支出に係る分に限る。以下同じ。)上に金額の不整合(計算誤り、表間不突合等)があった。
○都道府県選管の最初の受付時に、収支報告書と領収書等の写しとで、金額の不整合があった。
※上記事例には以下の事例を含む。
・支出に重複計上があったため、後に重複分を削除した。
・対象年以外の年月日の領収書等の写しを添付していたが、後に当該支出を削除した。
・領収書等の写しのない支出を記載していたが、後に当該支出を削除した。
・収支報告書に計上されていない支出に係る領収書等の写しが添付されており、後に当該支出を追加した。
○都道府県選管の最初の受付時に、収支報告書と領収書等の写しとで、年の不整合があった(領収書等の「年」の記載が誤っていた)。
○その他、収支報告書に計上されている支出について、領収書等との確認を行っていなかった。
○政治資金監査報告書の基本的な構成に不備があった。
○同一の登録政治資金監査人について、2か年連続で同一又は異なる事例の報告があった。
○同一の登録政治資金監査人について、複数事例の報告があった。

<上記以外に都道府県選挙管理委員会等から報告のあった誤りの事例>
1)政治資金監査報告書に関するもの
○「1 監査の概要」(1)で監査対象期間が「平成28年」「平成30年」等となっていた。
○「1 監査の概要」(1)で監査対象期間が「平成○年○月○日から平成○年○月○日まで」と旧記載例で記載されており、かつ、監査の対象となった収支報告書等に係る会計の開始日が誤っていた。
○政治資金監査報告書の本文中で政治団体名の記載不備があった(異なる政治団体の名称が記載されていた)。
○政治資金監査報告書上で矛盾した記載があった(徴難明細書に係る支出があるのに徴難明細書が存在しなかった旨の記載等)。
2)収支報告書に関するもの
○収支報告書上で氏名及び住所の記載不備(記載誤り)があった。
○収支報告書と領収書等の写しとで、月日の不整合があった(収支報告書の月日の記載が誤っていた)。
○収支報告書と領収書等を徴し難かった支出の明細書とで、支出の目的に不整合があった(領収書等を徴し難かった支出の明細書の支出目的の記載が誤っていた)。

これらを見ると、しょうもないミスが多いですね。
このようなミスをすると非常に恥ずかしいと思いますが、登録政治資金監査人はこのようなレベルの仕事で大丈夫なのでしょうか?
こういうレベルのものに、『監査』ということばを使ってほしくない感じですね。

登録政治資金監査人に対する個別の指導・助言の取組について、どう思われましたか?


内部統制報告書の訂正件数が不適切会計増加で過去最多に!

 正しい財務諸表を作成するための社内管理体制が整っていると上場企業が投資家に向けて宣言する文書、「内部統制報告書」を訂正する事例が急増しているようです。
2018年の訂正件数は106件と、2017年の61件を上回り過去最多になりました。
不適切な会計処理が発覚したことを受け、報告書の有効性を過去にさかのぼって取り消すケースが目立つそうです。

内部統制報告書は、2009年3月期から有価証券報告書と併せて金融庁への提出が求められるようになりました。
不正会計が起きない社内体制作りを促すのが目的で、財務諸表の妥当性を証明するための重要な書類なのです。

企業は報告書で、財務諸表を作成するための適切な管理体制が整っているかどうかを説明します。
そのうえで内部統制が「有効」「有効でない」「表明できない」のいずれかを明記します。

報告書の訂正の理由として目立つのが、内部告発や内部監査などをきっかけに発覚した不適切な会計処理です。
ジャストシステムは一部従業員が会社に無断で返品条項を付けて販売店に売っていた問題が判明し、2015~2018年の報告書を「有効でない」に訂正しました。
東建コーポレーションも、不適切会計が発覚し、2013~2017年分を訂正した。

まだ実現には至っていませんが、日産自動車も、元会長のカルロス・ゴーン容疑者の報酬過少記載事件を受け、報告書の訂正を検討しているようです。

訂正の増加に対し、市場関係者からは懸念の声が出ているようです。
野村総合研究所の大崎貞和フェローは「現状では不正会計の発生リスクを示す役割を果たせていない」と指摘しています。
「形式的な対応にとどまっている企業が多いのかもしれない」(大和総研の横山淳金融調査部副部長)との見方もあります。

内部統制報告書が導入されてからもう10年になるんですね。
今なお不祥事などが多くて内部統制報告書を訂正するケースが増えているということは、内部統制の重要性を認識できていない経営者が多いということなんでしょうね。
以前から、規模の小さい企業は内部統制報告書の提出を緩和すべきというような意見が出ていますが、僕は反対です。
基本的に、内部統制がきちんと構築されているからこそ、日々の取引の積み重ねの結果である決算書の数値が信用できるということだと思いますし、規模が小さいほど、人員の問題で属人的になったり、チェック機能が働かない可能性が高まると思いますので、規模が小さいから簡便にするというのは間違っているのでないかと思います。
もう少し、内部統制の重要性を認識してほしいですね。

内部統制報告書の訂正件数が不適切会計増加で過去最多になったことについて、どう思われましたか?


報酬値上げで監査法人の交代が相次ぐ!

 決算をチェックする監査法人を変更する企業が増えているようです。
2018年は監査法人の合併など特殊要因を除いた変更件数が125社と2017年を上回り、リーマン・ショック直後の2009年以来、9年ぶりの高水準となりました。
東芝などの会計不祥事を受けた監査の厳格化で大手を中心に報酬を引き上げる動きが背景にあるようです。
一方で、監査法人との「なれ合い」を防ごうとして監査法人を変更する企業もあります。

税務研究会(東京都千代田区)によると2017年の変更件数は123社で、監査人・監査報酬問題研究会によると、上場企業の監査報酬は2017年度で1社平均6,604万円でした。
2016年度は6,300万円、2015年度は6,152万円で、年々高額化しています。
企業ごとの差が大きく、協和発酵キリンの直近の監査報酬は1億300万円、日本ペイントホールディングスは1億2,600万円。ニトリホールディングスは4,600万円でした。
企業規模や子会社数などが関係します。

2018年に目立ったのは4大監査法人の1つ、僕が以前勤めていたトーマツからの変更のようです。
40社強が他の監査法人に変更しました。
中堅以下の企業が多く、「報酬引き上げについていけなかった」(製造業)との声が漏れています。

東芝の会計不祥事以降、大手監査法人を中心に監査の厳格化を進めています。
デロイトトーマツグループの永田高士最高経営責任者(CEO)は、「監査の品質を確保するために適正な人員配置をしている」と話しています。
監査業務に詳しい青山学院大の町田祥弘教授は、「長時間の監査に見合う報酬を払えない企業は、監査法人も業務を引き受けづらいはずだ」と指摘しています。

監査法人とのなれ合いを防ごうとする動きもあるようです。
日本ペイントホールディングスは約40年間担当したEY新日本から大手のあずさに変更しました。
どこまで本当か分かりませんが、日本ペイントホールディングスのIR担当者は、「欧州で義務化されている監査法人のローテーション(強制交代制)を意識した」と言っているそうです。

課題は情報開示です。
監査法人を変更する場合、企業の内部管理体制などに問題があり監査法人が業務を引き受けないケースもあります。
2018年に開かれた会計監査の情報開示に関する金融庁の懇談会でも、監査人交代の理由や経緯は投資家にとって重要なのに、実質的な交代理由が説明されていないなどの指摘があったようです。

現状は「任期満了」といった簡単な説明にとどまる企業が大半です。
大和総研の吉井一洋氏は、「情報開示に納得していない投資家は多い」と指摘しています。
決算の信頼性を高める上でも、監査法人との関係性を投資家に開示する姿勢が求められています。
個人的には、監査契約の期間は契約書上1年だと思いますが、実質的には自動更新だと思いますので、交代したときに任期満了というのはどうなのかなぁと感じます。
あとは、働き方改革も影響しているんでしょうね。
よって、交代の場合は、企業と監査法人双方がコメントするようにすればいいのではないかと思います。

報酬値上げで監査法人の交代が相次いでいることについて、どう思われましたか?


監査法人選任はJAの実態に合わせて慎重に(会計監査人評価のポイント)!

 農業協同組合新聞に、会計監査人評価のポイントが載っていました。
戸津禎介有限責任監査法人トーマツJA支援室の講演を、新世紀JA研究会の責任でまとめたものです。

 農協法の改正を受けて平成31年10月1日以降、農協等の会計監査は従来の中央会監査から公認会計士監査に移行されることになりました。公認会計士監査の受監に向けて、いよいよ多くの公認会計士や監査法人(以下監査法人等)から会計監査人を選任することが必要な時期となっています。
 具体的な選任は、日本監査役協会の『会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針』やJA全国監事協議会の『監事が農協等の会計監査人予定者の選定において留意すべき事項』等が公表されており、これらに従って進めていくことが通例と考えられます。
 選任プロセス自体の説明は、平成29年10月の講演で説明しましたので、本論では、実際に会計監査人選任の場でいただいた質問をもとに、会計監査人の選任を進めるための具体的な留意点を伝えることで、選任に向けての理解の深化や、系統全体に蔓延しているよくある誤解の解消を目指します。
 具体的な話をする前に、改めて農協等の会計監査人の選任にあたっては、透明で的確な選任過程を経ることの必要性を再確認させていただきます。選任にあたっては、透明で的確な選任過程を経ることで、監事、役員の説明責任を果たすことが重要になると考えます。
 具体的には、組合員に対して、監査品質はもとより、組合経営に資する監査法人等を会計監査人として選任したのだと説得的な説明を行い、特に外部(政府、マスコミ等)の目を意識し、現状維持ではなく、自己改革を進めるため適任の監査法人等を選任したことを主張できるような選任をすることが重要と考えます。
 このような透明で的確な選任過程を経ることの重要性は、ここ数か月で急激に高まっており、以下のような背景があるものと考えられます。
◇既定路線に従い会計監査人を選任するとしても、十分な検討をせずに選任してしまうと、農協改革が骨抜きになっているとの批判を受ける恐れがあるとの周知が進んでいる。
◇今後、農協の経営環境が厳しくなることが見込まれる中で、単に財務諸表を批判的に検討するだけでなく、経営課題の解決に向けて示唆を与えてくれるような指導的な機能を発揮する会計監査人に対する期待が高まっている。
◇農林水産省による報酬調査の公表や監査法人等による具体的な提案活動が進んだ結果、監査報酬の水準が想定より高くなる恐れが高まった。
◇会計監査人の選任過程を常例検査の対象にする可能性がでてきている。
◇透明で的確な選任過程を経ることの必要性を十分に認識いただいたところで、実際に会計監査人選任の場で、各農協からよく質問のある8つのポイントに絞って具体的な話をさせていただきます。
ポイント(1)「品質管理」
 品質は監査の根幹をなすものであるため、監査品質の水準は関心が高い領域です。監査の品質は、見た目で良し悪しの判断が難しく、通常、監査法人の提案書には品質管理体制に関する膨大な情報が盛り込まれることから、見極めるべきポイントを絞り込む必要があります。
 審査担当のパートナーの設置や難易度の高い事案の解決をサポートする機能があるか、などの仕組みの有無に加えて、過去の金融庁(公認会計士監査審査会)や公認会計士協会の検査結果を確認することが最低限確認すべきポイントと考えられます。
ポイント(2)「情報セキュリティ」
 監査は多くの秘匿情報を扱いますが、近年、監査法人による情報漏えい事案が少なくありません。そのため監査クライアントは、監査法人に重要情報の管理体制を整備・運用することを求める傾向が強まっています。見極めのためには、情報セキュリティマネジメント規格の取得状況など、情報セキュリティ強化に向けた取り組みを確認することが有用です。
ポイント(3)「業界理解」
 公認会計士監査はリスクアプローチにより行われます。リスクを正しく把握して、リスクに対応する監査手続を立案して対応するわけですが、リスクを把握するためには、総合事業の理解も必要ですし、そもそも株式会社と協同組合の違いを理解しておくことが必要になります。
 今まで一般事業会社ばかり監査していた公認会計士が協同組合や総合事業に対する基本的な理解を持ち合わせていなのではないかとの不安は大きいようです。系統への業務提供等の実績を把握することで、不安が顕在化しないことを確認することが考えられます。
ポイント(4)「非監査業務」
 農協を取り巻く今後の厳しい経営環境に鑑みれば、公認会計士が持つ知見を経営に活用していくことは有用であり、会計監査だけに限られてしまうことは実にもったいないと感じます。多くの農協では、公認会計士からの様々なアドバイスを期待していると思われますが、会計監査人が非監査業務を提供してはいけないとの誤解が蔓延しています。
 まずはこのような誤解を正すことが重要ですが、一方で非監査業務の提供を志向しない公認会計士がいることも事実です。公認会計士の知見を今後の農協経営に活用していくために、非監査業務に対する考え方や知見の有無を確認することをお勧め致します。
ポイント(5)「業務監査」
 これまで業務監査が農協経営の高度化に貢献してきたことから、今後公認会計士監査に移行した場合に業務監査の取り扱いがどのように変化するのかが大きな関心事になっています。公認会計士監査は会計監査を目的としているため、農協から特段の要請を受けない限り業務監査は実施されません。公認会計士の指導的機能の発揮や非監査業務の提供を通じて代替されていくものと考えられます。
ポイント(6)「是正指導」
 監査はJA全国監査機構、指導は中央会という歴史からか、公認会計士監査になったら公認会計士は指導機能を発揮してくれなくなるとの誤解をよく耳にします。公認会計士によって、指導的機能を発揮するための意思・能力に差があることも事実ですが、少なくとも指導機能の発揮は制限されるものではありません。
 どの程度指導機能の発揮が期待されるのかを、意思や能力の点から見極めることを勧めます。せっかく公認会計士監査が導入されるのですから、公認会計士を経営課題の解決に役立つ存在として取り込んだ方がよいことに異論はないと思われます。
ポイント(7)「監査チーム」
 悲しい事実ですが、監査は誰がやっても同じということはなく、監査法人もっと言ってしまうと、だれが担当するかによって監査のスタイルは大きく変わってきます。提案書では通常、監査担当者の氏名や担当者の経歴が記載されますし、プレゼンテーションの場を通じて個性を見極め、自らの組織にあうスタンスの公認会計士であるかを見極めることが重要です。
ポイント(8)「監査報酬」
 監査報酬は、最も関心が高い項目であり、多くの質問が寄せられています。内訳ごとの監査時間の合理性を確認することはもとより、次のような大前提を確認し、実質的な負担を理解することが重要と考えます。
 (1)監査時間及び監査報酬は、概算なのか確定なのか?
 (2)監査時間及び監査報酬は、工数のかさむ初年度を前提にしたものなのか、数年後の安定的な状況を前提にしたものなのか?
 (3)初年度特別価格で、2年目以降報酬が上がる可能性はないのか?
 (4)非監査業務が提供されている場合、監査報酬に取り込まれる部分はどれくらいあるのか?
 以上のように、監査人選任にあたっての具体的な留意点を説明しました。冒頭に申し上げた通り、会計監査人の選任の目的は組合員のために現状維持ではなく、自己改革を進めるため適任の監査法人等を選任することにあります。その目的を忘れることなく、上記の留意点を踏まえ、各農協がベストな会計監査人を選任いただくことを強く祈念致します。

個人的には、非監査業務が監査報酬の中に含まれていて良いのか?という疑問はありますね。
この記事を読んで、あまりクライアントの方から評価を受けることの少ない監査業務において、過去何度か高く評価していただいたのは、指導業務だったということが思い出されましたが、ここが重要なんでしょうね。
指導業務が行えるからこそ、クライアントの方も、事前に相談できるようになるのではないかと思います。
非監査業務との線引は必要だと思いますが、農協に限らず、監査人も指導機能が発揮できるよう日々スキルアップしないといけないですね。

会計監査人評価のポイントについて、どう思われましたか?


監査法人選任はJAの実態に合わせて慎重に(公認会計士移行の留意点)!

 農業協同組合新聞に、公認会計士移行の留意点が載っていました。
日向彰農水省経営局協同組織課課長の講演を、新世紀JA研究会の責任でまとめたものです。

農協改革集中推進期間が来年5月に終わります。これが農協改革の第1ステージです。そして334月以降から改正農協法施行に伴う5年後の見直しが始まり、これが第2ステージとなります。そのなかで、農協の理事構成、中央会制度の見直しなどがあります。そのうえで公認会計士監査を導入し、31年度決算から監査が始まります。系統では昨年4月にみのり監査法人をつくりましたが、各農協では監査法人の選定作業に入っているところだと思います。
 3月決算の農協では、来年6月の総会で監査法人を決めて、内部統制の整備、公認会計士監査ということになります。最後に准組合員の利用規制ですが、農水省ではいま、正組合員、准組合員、員外3者の事業利用量を調査しています。平成333月までの予定で、その結果をもとに、いろいろ検討することになっています。
 農協によっては323月には、31年度の財務諸表づくり、来年の春ころから期中監査の結果を踏まえ期末監査となり、会計士が財務諸表の適正さをチェック。326月に監査意見の表明が行われ、通常総会で決算の承認ということになります。
 では、農水省はなにをするかというと、監査コストの引き下げのお手伝いをさせていただきます。公認会計士監査は、農協にとって意義あることだということを理解し、農協経営に活かしてほしい。

 公認会計士監査を導入したのは、農協の信用、共済事業の規模が大きいという重い事実があります。信用不安を起こさないため、第三者の意見をしっかりもらって、適正に財務諸表がつくられ、健全に経営されているのだというお墨付きを得ることです。それが組合員、国民の信頼をえることです。信金や労金などにも信用事業を営んでいるところは公認会計士監査が義務つけられています。
 というのは、秋田県のおばこ農協の問題があります。農業白書でも紹介され、輸出や直接販売を行うなど立派な農協でした。しかし会計監査の財務諸表の作り方があまりにもいいかげんだったといわざるを得ない。公認会計士に聞くと、経済受託債務と債権に80100億円もの差があり、おかしいと思わなかったのがおかしいと言っています。
 60数億の赤字で、4%割れはなかったものの、11.11%あった自己資本比率が、あっという間に8%割れを起こしました。この重みを、しっかり受け止め、農水省もそうですが、緊張感を持っていただきたい。世の中の目はきびしくなっています。住専問題をくりかえしてはなりません。法律で公認会計士監査が決まっている以上、しっかり公認会計士とキャッチボールして、役職員にとっても監査を受けたというのは、リスク回避など、農協にとっていいことだという認識をもっていただきたい。

 では農水省は何を支援できるか。監査コストは上がることも下がることもあります。高くなると、国は補填して欲しいという声も多く聞かれました。しかし、医療法人、社会福祉法人などもみんな自腹でやっています。モラルハザードを起こしてはならないと思います。農協だけ支援すると必ず批判が出ます。いろいろな思いがあるのは承知していますが、ご理解いただきたい。JAグループが批判されるようにはなって欲しくはありません。
 その代わり、監査コストを下げるお手伝いをします。本年度、全中やあずさ監査法人と、公認会計士監査のマニュアルづくりに取りかかっています。監査法人選任の一助になれば幸いです。その上で、夏の概算要求で2億円の「監査法人のコストの合理化支援」を要求しています。農協の取り組みに任すといっても、離島の農協や大きな経済事業を展開する農協があります。コストを引き下げるための相談を受けます。その場合、中央会は、これまでの経営指導のノウハウを活かし、内部統制強化にリーダーシップを発揮していただきたい。
 また、農水省、金融庁、全中、公認会計士協会の4者で、農協が監査法人を選ぶにあたっての留意点について「JA常勤監事協議会研究レポート」をまとめました。参考にしていただきたい。農協が監査法人を選ぶ場合は、なぜこの法人を選ぶのかを説明できることが重要です。また監査法人を公募するという農協もありますが、その場合も、公募していることが、ちゃんと分かるようにしていただきたい。それが組合員の農協への信頼を高めることになります。
 お願いになりますが、全中監査機構のこれまでのノウハウの蓄積を新しい監査法人に引き継ぐためのしっかりした仕組みをつくってほしい。また、来年5月、自己改革集中推進期間が終わった時点で、生産資材価格の引き下げ、農産物の有利販売などの自己改革で、農家の所得向上のためどれだけ頑張ったか、いったん総括しなければなりません。そのため、ひとつでも多く取り組み、組合員の評価を高めて、頑張っているよということを組合員に示してほしい。改革を評価するのは組合員です。
 農業者が農協を利用するかどうかが物差しです。その意味でも公認会計士監査は経営改善の一助になるのです。農協はリーダーシップを発揮し、農業者所得増大への高い評価を得て、それを農水省にバックしていただきたい。

『高くなると、国は補填して欲しいという声も多く聞かれました。しかし、医療法人、社会福祉法人などもみんな自腹でやっています。モラルハザードを起こしてはならないと思います。農協だけ支援すると必ず批判が出ます。いろいろな思いがあるのは承知していますが、ご理解いただきたい。JAグループが批判されるようにはなって欲しくはありません。』などというコメントを見ると、まともなことをおっしゃっているなぁと思いました。
あとは、『その代わり、監査コストを下げるお手伝いをします。本年度、全中やあずさ監査法人と、公認会計士監査のマニュアルづくりに取りかかっています。監査法人選任の一助になれば幸いです。その上で、夏の概算要求で2億円の「監査法人のコストの合理化支援」を要求しています。農協の取り組みに任すといっても、離島の農協や大きな経済事業を展開する農協があります。コストを引き下げるための相談を受けます。』という点については、どうすれば安い金額で契約してくれる監査法人を見つけられるかという誤った解釈の方をなくす努力をしてほしいとは思います。
監査法人は、当然、見積もりの工数ベースで報酬を提示すると思いますので、監査を受ける側に起因して工数が多くなり、結果として監査報酬が高くなるところもあるでしょうから、監査を受ける側に起因しているものを取り除くためのマニュアルとなってほしいと思います。
結局は、会計監査をきちんと受け、内部統制などをきちんと整えることが自らの信用を高めることであること、監査報酬は出資者が負担しているものであることなどを認識のうえ、監査法人を選定し、契約してほしいですね。

公認会計士移行の留意点について、どう思われましたか?


監査不信「10年周期説」に現実味!

 企業決算にお墨付きを与える会計監査の世界大手「ビッグ4」に再び批判が高まっているようです。
欧米で相次ぎ粉飾見落とし騒動が浮上し、リーマン・ショック後10年、エンロン事件からやがて20年というタイミングに、会計不祥事「10年周期説」も現実味を帯びているようです。
監査という「資本主義のインフラ」を巡るコスト分担が未解決な限り、好況期に緩むマネーの規律が不祥事の種を育て続けるでしょう。

 イギリスの企業会計の監視主体、財務報告評議(FRC)は今、異例のハイペースで、「●●の監査に関する■■への罰金」という監査法人への罰則を発表しています。
背中を押したのが、イギリス議会による5月の報告書で、「必要レベルの独立した監査をできない、なれ合い集団」と、世界企業の監査を一手に担うビッグ4、KPMG、アーンスト・アンド・ヤング(EY)、デロイトトウシュトーマツ(DTT)、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)を厳しく指弾した。

直接のきっかけが建設2位のカリリオン社の破綻です。
公共サービスに民間資金を生かす「PFI」発祥の地で、病院や道路などを多く手掛ける大手でした。
それが突如、15億ポンド(約2,300億円)の負債を抱え清算されたとあって、批判の矛先がKPMGの監査に向かったのです。

KPMGは南アフリカで銀行の破綻に関連し現地経営陣が総辞職しています。
アメリカでも米ゼネラル・エレクトリック(GE)の保険部門が巨額損失を計上した件で米証券取引委員会(SEC)が調査中です。
他の監査法人でも、PwCが「インド版エンロン事件」と呼ばれた件に絡む罰則で、上場企業監査を禁じられるなど、今年に入りニュースが相次いでいます。

企業が投資家からお金を集め、利益を生み、成長の歯車を回す資本主義で欠かせないのが企業の姿を正しく表す決算書です。
監査はそれを担保するプロセスです。
産業革命後の英国を源に、大恐慌を経て上場企業に作成と定期的な開示が義務付けられるようになったのです。

その欠かせない「インフラ」に「約10年周期でスキャンダルが起きる流れがある」と、大原大学院大学の八田進二教授は指摘しています。
10年前に、アメリカのリーマン・ブラザーズが破綻し、さらに、その10年前はアメリカのエンロンが簿外に債務を隠し「驚異の利益」を粉飾計上していた頃です。

10年」に明確な根拠はありません。
しかしながら、あるサイクルの存在を歴史が示しています。
成長率の高い好況時には企業がその前提の下、設備投資やM&A(合併・買収)を実行しますが、監査する側も足元の延長線上で妥当であれば問題視しにくいと言えます。
ところが、実際には常にバブルがはじけ、資産価格が下がり「時価」へと修正を迫られるという繰り返しです。

対応し、規制強化は進んでいます。
エンロン後の2002年、アメリカで企業改革法(SOX法)が成立し、決算の虚偽報告に最長20年の禁錮刑が導入されました。
日本でもカネボウの粉飾後に「日本版SOX法」が開始し、ヨーロッパでは同じ監査法人が同一企業を担当するのは最長20年となりました。

それでも絶えぬ不祥事にイギリスでは今、懲罰的ビッグ4解体論も浮上しているようです。
実際、エンロンの監査担当だったアーサー・アンダーセンは、粉飾を見抜けなかっただけでなく、積極的な加担も疑われ解散に追い込まれました。
監査部隊はデロイトトウシュなどに吸収され、現在のビッグ4になりました。

しかしながら、その結果、欧米の大企業の9798%がビッグ4の顧客となっています。
寡占ゆえの競争欠如が緩みの元凶との批判は根強いようですが、実際はこれ以上潰せない「ラスト4」と呼ばれる存在です。

「監査は(未来を映す)水晶玉ではない」と、イギリスKPMGのビル・マイケル会長は英誌で批判に反論しています。
投資家は会社の不正を見抜けといいますが、監査とは決算書類が適正に作られている確認を行う作業であり、万能ではないとの主張です。

根本には企業と監査人を巡る、本質的な緊張関係の欠如が横たわっています。
KPMGがカリリオンから得た監査報酬は約2,900万ポンド(約41億円)で、報酬を受けながら、企業性悪説に立つ厳しいチェックは果たして可能なのでしょうか?
一方、企業にしてみれば監査は必要ですが、利益を生まない経費です。
この資本主義のインフラのコスト分担が未解決なことが、10年周期の遠因です。

代案の議論はあるようです。
保険会社が監査リスクを見積もり最低価格をはじき、監査人が入札する、企業と投資家がコストを折半し取引所に監査費用をプールする。
要は企業と監査を相対にせず、第三者を挟むアイデアです。
しかしながら、「公的監査が試みられた国で成功例はない」(青山学院大学の町田祥弘教授)ようです。
自由競争に基づくのが、資本主義であり、コスト分担の解は見えないようです。

そんな中、トランプ米大統領は先日、突然「費用の節約だ」と企業業績の四半期開示見直しを指示しました。
戦後最長に並ぶ好景気の下で踏まれるアクセルですが、規律が緩み、そして次の会計不祥事の芽が育っているのでしょう。

 元々、監査法人に勤めていた人間としては、監査費用は、企業が負担しているのではなく株主が負担しているという考え方をすれば、現状で問題ないのではないかと思います。
監査は決算の数値だけをチェックしていると思われがちですが、普段の取引の流れ(内部統制)もチェックしており、内部統制がきちんと整備・運用されていることを確かめられたからこそ、決算の数値はある程度信用でき、決算時のチェックも少なくなっています。
この普段の取引の流れを把握するのが大変なのです。
当然、業界の特性もあるでしょうし、それぞれの企業によって異なるからです。
これは、決算の数値の監査においても同じことが言えます。
あとは、ここが理解を得ることが難しいところだとは思いますが、すべての粉飾を見破るのは不可能だと思いますし、粉飾の歴史に伴って、監査技術も向上しています。
よって、頻繁に監査法人が変わるとなると、これを新たに把握するのに膨大な時間がかかり、結局、監査報酬が上がることになってしまいますし、その企業のことをよく知らないということになりますので、粉飾のリスクは高まります。
ここは、大手監査法人の担当者の定期的な変更で、新たな視点や緊張感は担保できるのではないかと思います。
結果的に、現状が良いと考えています。

 監査不信「10年周期説」に現実味が帯びていることについて、どう思われましたか?


シンガポール取引所が世界の動きに対応して決算・四半期開示を見直し!

2018年01月30日(火)

シンガポール取引所は、先日、上場企業に課している四半期決算の開示ルールの見直しを検討すると発表しました。
年4回の開示義務を年2回に軽減したり、開示が必要な項目を減らしたりする案を検討するようです。
開示ルールを簡素化する世界の取引所の流れに対応する狙いだそうです。

シンガポール取引所は、まず、四半期決算制度を維持するかどうかを検討します。
仮に、四半期決算の維持を決めた場合も、開示を義務づける対象企業を現在の時価総額7,500万シンガポールドル(約63億円)以上から1億5,000万シンガポールドル以上に引きあげるなど、負担軽減策を検討します。
市場関係者から意見を集め、2018年後半から新制度を導入します。

シンガポール取引所が開示制度を見直すのは、中小企業などから情報開示にかかるコストが重いとの不満が高まっているためです。
四半期開示を実施する企業の割合も、2003年の制度導入当初は全体の37%でしたが、今は70%まで高まっているそうです。

東京証券取引所も、2017年3月期決算から決算短信の記載内容の一部を自由に変更できる簡素化に踏みきっています。
シンガポール取引所は、他の取引所に比べ開示負担が重い状態が続けば、有望なベンチャー企業が他に上場する事態を加速しかねないと判断したようです。

一方で、開示の頻度や項目が減れば、投資家が情報を入手しにくくなります。
情報開示の不備が原因で株価が乱高下するなどすれば、市場開設者としての取引所の信頼性も低下する可能性があります。
シンガポール取引所は、別の施策によって少数株主の権利保護を確保すると説明しています。

日本も検討した方が良いかもしれませんね。
四半期開示は、会社にも監査法人にも過度な負担を与えているように思います。
当然、監査報酬のアップにもつながっているでしょう。
開示したい企業がすればいいのではないでしょうか?
そういう積極的な姿勢が評価されて、株価に反映するようになるのではないでしょうか?
ただし、一方で、投資家の保護も考えないといけませんが、これは、市場を分けるといったようなことで対応できるのではないでしょうか?
四半期開示がないという条件のうえ、そのリスクを考慮しても株式を買いたい人が買えばいいわけですから。
ちなみに、シンガポール取引所は、お昼休みも取引ができます。

シンガポール取引所が世界の動きに対応して決算・四半期開示を見直すことについて、どう思われましたか?


海外の監査チームの人事権までも持つ!

2017年12月27日(水)

先日、日本経済新聞に『揺れる監査法人』という記事が連載されていました。
タイトルと内容が合っていないような気はしますが、今週3日間は、これについて書きました。
2017年9月下旬、港区の東京ミッドタウンにある富士フイルムホールディングスの本社に約20人の外国人の集団がやってきました。
国際会計事務所KPMGの公認会計士です。
富士フイルムと今後の会計監査について意見交換する会議に集まったようです。

「複合機のリース債権について貸し倒れ引き当てを正確に積むべきだった」などと、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど各地域を担当する公認会計士が監査で気付いた注意点を次々と報告し、経営陣は聞き入ったようです。

富士フイルムは2016年6月末の株主総会後に、会計監査の担当を新日本監査法人からあずさ監査法人に切り替えました。
国内はあずさ監査法人が監査し、海外グループ会社はあずさ監査法人と提携するKPMGが各地域を受け持つ体制になっています。

「日本のあずさがまとめ役となり海外から情報を吸い上げる仕組みが効果的」と、富士フイルムのグローバル監査部の花田信夫部長はKPMGのネットワークを評価しています。

実際に子会社の富士ゼロックスの海外子会社が起こしたリース取引の不適切会計では、このネットワークが機能しました。
あずさ監査法人とKPMGが監査で疑問点を見つけ、不適切会計問題にメスを入れるきっかけにつながりました。

海外販売子会社の不適切会計では、累計で375億円の損失が発生しました。
2017年7月には過年度にさかのぼって決算訂正を余儀なくされました。
優良会社とされてきた富士フイルムが経験した不祥事だけに、衝撃は大きかったようです。

あずさ監査法人で監査の品質を担当する金井沢治専務理事は「一般的に親会社の財務担当者が海外子会社について外部の視点で客観的な情報を入手する機会は多くない」と会合を開催した狙いを明かしています。

海外ネットワークの整備が急ピッチで進んでいます。
あずさ監査法人は海外の会計事務所とのやり取りを密にするため、海外赴任経験のある人材を大幅に増やしました。
さらにグローバル企業を担当する国内の監査チームが、海外子会社を担当するKPMGの現地事務所の監査チームに直接指示を出す体制に切り替えました。
「現地の情報を収集しやすくなり、不正につながる情報も素早く把握できる」そうです(金井氏)。

かつてあずさ監査法人は、現地拠点を通じて国内と海外の監査チームが間接的に情報をやり取りする体制でした。
今は国内で監査全体のリーダーを務める公認会計士は、海外の監査チームの人事権までも持っています。

もちろん企業側の対応が大前提です。
富士フイルムも監査の仕組みを根底から変えました。
9月に監査部をグローバル監査部へと衣替えし、持ち株会社が直接300社にのぼるグループ会社を監査する体制に切り替えました。
「子会社任せをやめ、問題が起こる前に芽を摘む」ようです(花田氏)。
今回のKPMGとの会合も監査のグローバル体制構築に向けた一環です。

日本企業のグローバル展開が広がる中、目が届きにくい海外子会社の不正会計をどう見つけるのか。上場企業と監査法人の双方で再発防止に向けた地道な取り組みが進み始めました。
個人的にも、ここ数年、海外子会社での不正が増えていると感じています。
今までは、提携先の海外の会計事務所に丸投げという感じだったのでしょうが、あすさ監査法人のようなこちらが主導権を持つということは、見習わないといけないでしょうね。

あずさ監査法人は海外の監査チームの人事権までも持っていることについて、どう思われましたか?


世界で最も複雑な財務諸表?

 先日、日本経済新聞に『揺れる監査法人』という記事が連載されていました。

 タイトルと内容が合っていないような気はしますが、今週3日間は、これについて書いています。
「日本、いや世界で最も複雑な財務諸表かもしれない」と、トーマツ幹部がこう形容する担当企業があります。
それは大型M&A(合併・買収)を繰り返し、姿が大きく変わり続けるソフトバンクグループです。
担当公認会計士は、当然、エース級を送り込んでいるようです。

担当公認会計士を悩ませる原因の一つは、ソフトバンクの資産評価だそうです。
英半導体設計、アーム・ホールディングスの買収では2.9兆円(20179月末)という巨額の「のれん」が注目を集めました。
「のれん」とは、買収価格と純資産の差を示すものです。
それが膨らむのは、ソフトバンクはアームが将来、大きな価値を生み出すと考えているからです。
ソフトバンクの「のれん」は、2017年9月末で計4兆3,900億円と総資産全体の16%を占めています。

しかしながら、すべてのビジネスが企業の計画通りに進むわけではありません。
見通しの甘さが巨額の減損につながる可能性もあります。
「のれんはできるだけ保守的に評価したい」(あるベテラン公認会計士)というのが本音であり、リスクに敏感な公認会計士が、のれんの金額を巡って担当企業とせめぎ合うのは必然でしょう。

「(あらゆるモノがネットにつながる)I o Tが普及すれば、このくらいの売上高と利益は出る」と、孫正義会長兼社長は本社の会議室でアームの成長性について熱弁を振るいました。
面談相手は投資家ではなく、トーマツの担当公認会計士です。

実はソフトバンクは昨年のアーム買収では、孫会長兼社長とトーマツの担当公認会計士の面談を年4回程度に増やしたようです。
これまでも孫会長兼社長が年2回ほど、公認会計士に経営の現状を説明してきました。
回数を増やした理由は、公認会計士の理解を得るにはトップの懇切丁寧な説明が不可欠との判断のようです。

ソフトバンクで孫会長兼社長を支える一人は、経理統括の君和田和子常務執行役員です。
公認会計士の資格を持ち、かつてデロイト系の会計事務所にも在籍していました。
アームの買収手続きが一段落し、君和田氏の視線は新たに買収する米投資会社フォートレス・インベストメント・グループに向いています。
 「新しい事業なので監査業務にはトーマツでも(ファンドに詳しい)専門家が入らないといけない」と注文を付けています。

買収した事業の将来性をどう評価するのか?は、ソフトバンクを担当するトーマツだけの問題ではありません。
成功も失敗もありますが、日本企業による巨額買収の事例は増える一方です。
2017年3月期に東芝は買収した米原子力事業で7,316億円の減損損失を計上しました。
公認会計士に、買収先の経営を目利きする力も必要になってきます。

君和田氏は「会計士は過去のことを見るのは得意だが、将来の見積もりは不得意」と指摘しています。
担当企業側から投げられたボールをどう受け止めるのでしょうか?
監査法人が抱える課題は大きくなっていますね。
僕が監査業界に入った約21年前と比べると、将来の見積もりが必要な会計ルールも増えていますし、その頃には想像もできなかったような事業をやられている会社もたくさん存在します。
公認会計士は、事業をやっているわけではないので、専門分野を設けていく必要があると思いますが、色々な会社を担当していることが強みだと思いますので、過去の数値のチェックだけでなく、財務諸表などから将来のことも読み取れるように、日頃からアンテナを張り巡らせておかないといけないですね。
個人的には、監査の仕事は将来AIに置き換わると言われていますが、将来のことが考えられる公認会計士が生き残っていくんでしょうね。

ソフトバンクグループの世界で最も複雑な財務諸表について、どう思われましたか?


毎日が決算!

 先日、日本経済新聞に『揺れる監査法人』という記事が連載されていました。

 タイトルと内容が合っていないような気はしますが、今週3日間は、これについて書きたいと思います。
監査法人を取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。
顧客企業のグローバル化が進み、買収ファンドを通じた複雑な経営形態も広がっています。
相次ぐ不正会計問題で打撃を受けた監査業界ですが、今の課題を監査法人と企業の取り組みを通じて探っています。

決算発表で毎回先陣を切るのが愛知県拠点のレストランチェーン『あみやき亭』です。
同社と監査法人の取り組みは、将来の会計監査の在り方を示すモデルの一つになるでしょう。

10月1日の日曜日に、愛知県春日井市にある、あみやき亭本部の一室では、あずさ監査法人の公認会計士が決算短信の最終確認に追われていました。
「月末の資産残高を確認するのに追加資料が必要」ということで、資料を片手に電卓をはじきながら経理担当者に矢継ぎ早に注文を繰り返し、作業は夜遅くまで続いたようです。

翌2日、あみやき亭は2017年4月から9月期の決算を発表しました。
3月期の決算企業では一番乗りです。
2002年の上場当初から原則、締め日の翌営業日に決算を開示してきました。
開示1番を巡ってIT(情報技術)企業などと競う時期もありました。

しかしながら、監査の厳格化が進む中、翌営業日に開示する3月期企業は、あみやき亭だけになりました。
同社の佐藤啓介会長は、「やるからには1番にこだわりたい」と意気込んでいます。

高速決算の裏にあるのが「日次決算」です。
月ごとが一般的な締め日を日ごとにして毎日の収支を把握する管理会計のひとつで、あみやき亭はこれを徹底しています。

その実現にはあずさ監査法人の協力が欠かせません。
売り上げや仕入れ代、人件費といった各店舗のデータは毎晩、本部が集約していますが、日次決算のデータは公認会計士のもとに毎日送られます。
公認会計士は不自然な点が見つかればその都度、会社側に確認します。
あみやき亭の経理部門と担当公認会計士は情報を共有し、売り上げが落ち込むなど店舗に減損処理の兆候が見られれば即座に対応します。

情報が毎日オープンに伝わることで、あみやき亭側は「監査法人と会計処理を巡った意見対立はほとんどない」(幹部)と話しています。
公認会計士側も決算集中日を避けて業務を分散できる利点があります。

「カギは単純化と平準化だ」と佐藤会長は強調しています。
あみやき亭では交通費などの即日精算は当たり前で、経費は原則、当日に現金で払い戻しを受けます。
経費を勘定システムに入力するのはパート社員で、経理部門の正社員は2人のみです。

あみやき亭の2017年3月期の売上高に占める販管費の割合は53%と同業の安楽亭などに比べ10ポイントほど低くなっています。
監査法人と協業した高速決算が業務の効率化を促しているようです。

実は、あみやき亭のように経理処理などの作業をできるだけ標準化し、「早く決算発表する企業は欧米では一般的」(あずさ幹部)だそうです。
複雑なシステムや組織が災いし、作業に手間取る企業や監査法人が学ぶ点は多いでしょう。

不正会計問題などを受け、我が公認会計士の人気は下落傾向が続いています。
監査法人が顧客企業と切磋琢磨し、業務の効率化を進めることが深刻な人手不足を乗り越える手段の一つになると言えるでしょう。
個人的には、正確性なども必要なため、決算は早ければいいわけではないと思っていますが、できる限り早く公表することが投資家のためにはなるんでしょうね。
決算短信は監査報告書は不要ですが、監査法人内の手続きはどうなっているんでしょうね?
1番乗りということが良い宣伝にはなるのでしょうが、従業員の方や監査法人の担当者に過度な負担をかけ過ぎていないのかも気にはなります。
ただ、業務の標準化というのは見習うべき点は多いんでしょうね。

毎日が決算のあみやき亭について、どう思われましたか?