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事務所通信2018年6月

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2018年6月号『農振除外とは?』

 最近、相続や事業承継に関しては、自社株の相続税及び贈与税の納税猶予の特例が、ホットな話題になっているかと思います。
 しかしながら、最近、相続税対策を考える上で、『農振除外』のことを知っておかないと、田を相続したものの、どうしようもないという状況になりかねないと感じています。
 そこで今回は、『農振除外とは?』について、書きたいと思います。

1.農業振興地域制度とは?
 農業の健全な発展と国土資源の合理的な利用を図るため、「農業振興地域の整備に関する法律」に基づく農業振興地域制度が設けられています。
 市は、県が指定した農業振興地域(自然的・経済的・社会的諸条件を考慮して一体として農業の振興を図ることが相当であると認められる地域)を区域とした農業振興地域整備計画を定めることとされ、この計画には、農業生産の基盤整備に関する事項などを定めるほか、農用地等として利用すべき土地の区域(以下「農用地区域」という。)を定めることとされています。

2.農用地利用計画の変更(農振除外)とは?
 農用地区域の農地は、原則として宅地、雑種地などへの農地転用ができない農地です。
 ただし、許可要件を満たせば農用地区域から除外(農用地利用計画変更)できる場合があります(農地転用の許可要件等も満たす必要があります。農地転用については、市の農業委員会事務局などに問い合わせることになります。)。
 「農業振興地域の整備に関する法律」等で農用地区域から除外できる要件等が定められていますので、除外できる見込みがあるかどうか、市の農林水産課などにお問い合わせください。
 なお、除外の手続きは、県との協議、公告等の関係で申請(受付締切日)から除外通知までに、約3〜4か月かかります。

3.農業振興地域における農用地区域の農地の確認方法は?
 農用地区域の農地かどうかの確認は、市の農林水産課などで確認できます。

4.農振除外申出受付の一時休止
 2017年2月に我が香川県農業振興地域整備基本方針が変更されたことに伴い、高松市などでは、農業振興地域整備に関する法律が改正され、農業振興地域整備計画の全体見直しに着手しています。
 全体見直しにおいては、素案決定後、県と協議を開始して全ての手続きが完了するまでのおおむね1年間は、農用地利用計画の変更申出(農用地区域からの除外・農用地区域への編入・用途区分の変更)に係る受付が一時休止になります。
 例えば、我が高松市の場合、2019年6月受付分から全体見直し手続き完了まで(2020年3月末完了予定ですが、県との協議及び県の同意が必要なため、完了時期は未定です。)です。

5.最後に
 農振除外のことを知っておかないと、例えば、相続税対策として賃貸アパートを建てようと思っても建てられない可能性があります。
 早めに、調査や検討をしましょうね。

 2018年6月28日 國村 年

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事務所通信2018年5月

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2018年5月号『特定収入とは?』

 消費税の納税額は、その課税期間中の課税売上げ等に係る消費税額からその課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額(仕入控除税額)を控除して計算します。
 しかしながら、国もしくは地方公共団体の特別会計、公共法人、公益法人等または人格のない社団等など(以下「国、地方公共団体、公共・公益法人等」といいます。)の仕入控除税額の計算においては、一般の事業者とは異なり、補助金、会費、寄附金等の対価性のない収入を「特定収入」として、これにより賄われる課税仕入れ等の消費税額を仕入控除税額から控除する調整が必要とされています。
 そこで今回は、『特定収入とは?』について、書きたいと思います。

1.特定収入の範囲
 特定収入とは、資産の譲渡等の対価以外の収入で、例えば、以下のような収入が特定収入に当たります。

(1)

租税

(2)

補助金

(3)

交付金

(4)

寄附金

(5)

出資に係る配当金

(6)

保険金

(7)

損害賠償金

(8)

資産の譲渡等の対価に当たらない負担金、他会計からの繰入金、会費等、喜捨金(お布施、戒名料、玉串料など)


2.
特定収入がある場合の仕入控除税額の調整
 国、地方公共団体、公共・公益法人等が簡易課税制度を適用せず、本則課税により仕入控除税額を計算する場合で、特定収入割合()が5%を超えるときは、一定の方法によって計算した特定収入に係る課税仕入れ等の消費税額を通常の計算方法によって算出した仕入控除税額から一定の方法によって計算した特定収入に係る課税仕入れ等の消費税額を控除した残額をその課税期間の仕入控除税額とする調整が必要です。
 ただし、簡易課税制度を適用している場合または特定収入割合()が5%以下である場合には、この仕入控除税額の調整をする必要はなく、通常の計算方法によって算出した仕入控除税額の全額をその課税期間の仕入控除税額とします。

()特定収入割合=特定収入の合計額÷(課税売上高(税抜き)+免税売上高+非課税売上高+国外売上高+特定収入の合計額)

3.仕入控除税額の調整のイメージ

4.最後に
 イメージ的には何となく分かるかもしれませんが、実際に計算するとなるとかなり手間を要しますので、早めに検討してくださいね。

2018年5月30日 國村 年

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事務所通信2018年4月

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2018年4月号『事業承継補助金(後継者承継支援型~経営者交代タイプ~)』

 昨年度、事業承継補助金の公募が初めて行われました。しかしながら、予算額が2億円で採択件数も65件にとどまりました。
 今年度(平成29年度補正)は予算額が30億円となり、よりたくさんの中小企業経営者の方に使っていただける制度となり、「後継者承継支援型~経営者交代タイプ~」は今日から公募開始となりました。
 そこで今回は、『事業承継補助金(後継者承継支援型~経営者交代タイプ~)』について、書きたいと思います。

1.後継者承継支援型~経営者交代タイプ~とは?
 事業承継補助金(後継者承継支援型~経営者交代タイプ~)は、①地域経済に貢献する中小企業者等による、②事業承継(事業再編・事業統合を除く)をきっかけとした、③経営革新や事業転換などの新しい取組を支援する補助金です。

補助率

2/3

補助上限

経営革新を行う場合:200万円
事業所の廃止や既存事業の廃止・集約を伴う場合:500万円


2.
補助対象者や事業承継についての考え方
 補助対象者や事業承継についての考え方は以下のとおりです。
①地域への貢献
 他社との取引関係や地域の需要に応える商品・サービスの提供、雇用の維持・創出によって地域に貢献している中小企業が補助の対象です。

②事業承継
 平成27年4月1日から、補助事業期間完了日(最長平成30年12月31日)までの間に事業承継(代表者の交代)を行ったまたは行う必要があります。

③新しい取組
<経営革新等>
・ビジネスモデルの転換(新商品、新分野への挑戦等)による市場創出、新市場開拓等
・新規設備導入(製造ラインのIT化、顧客管理システム刷新等)による生産性向上等

<事業転換>
・事業所の廃止や既存事業の集約・廃止等

3.公募期間
 本日(平成30年4月27日)~平成30年6月8日

4.留意点
 応募の際は、認定支援機関が作成する、以下に関する「確認書」が必要です。

1

地域に貢献する中小企業であること

2

経営革新等の独創性など

3

事業期間中に継続的な支援を行うこと

 確認書のフォーマットは、ホームページに掲載されます。
 事業承継補助金事務局ページは本日(4月27日)OPENしています。

5.事業再編・事業統合支援型
 もう一つの事業再編・事業統合支援型~M&Aタイプ~は、7月上旬頃公募予定です。

6.最後に
 最近の補助金には珍しく、過去(平成27年4月1日以降)のものについても、対象になりますので、使える方は、ぜひお近くの認定支援機関にご相談して、使ってくださいね。

2018年4月27日 國村 年

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事務所通信2018年3月

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2018年3月号『収益事業とは?』

 税務業務をやっている中で、頭を悩ますことがあるのが、『収益事業』かどうかという点です。
 なお、『収益事業』は、法人税法第2条第13項、法人税法施行令第5条第1項に、34の事業が規定されています。
 そこで今回は、『収益事業とは?』について書きたいと思います。

1.収益事業とは?
 法人税法第2条第13項、法人税法施行令第5条第1項に、以下の34の事業が規定されています。
 これらの34事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含みます。)で、継続して事業場を設けて行われるものを、『収益事業』といいます。

1

物品販売業

18

代理業

2

不動産販売業

19

仲立業

3

金銭貸付業

20

問屋業

4

物品貸付業

21

鉱業

5

不動産貸付業

22

土石採取業

6

製造業

23

浴場業

7

通信業

24

理容業

8

運送業

25

美容業

9

倉庫業

26

興行業

10

請負業

27

遊技所業

11

印刷業

28

遊覧所業

12

出版業

29

医療保健業

13

写真業

30

技芸教授業

14

席貸業

31

駐車場業

15

旅館業

32

信用保証業

16

料理店業その他の飲食店業

33

無体財産権の提供等を行う事業

17

周旋業

34

労働者派遣業

2.収益事業が課税される法人
 公益法人などについては、以下のようになっています。

課税対象

該当法人

収益事業から生じた所得のみ課税
ただし、公益目的事業に該当するものは非課税

公益社団法人
公益財団法人

収益事業から生じた所得のみ課税

非営利型の一般社団法人・一般財団法人
NPO法人
学校法人
更生保護法人
社会福祉法人
宗教法人
独立行政法人
日本赤十字社 等

全ての所得に対し課税

一般社団法人
一般財団法人

3.NPO法人が障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを行う場合
 国税庁は、原則、法人税法上の収益事業に該当し、法人税の納税義務があると判断しています。
 行う事業が公益法人等の本来の目的たる事業であるかどうかや、会員等に対して利益の分配を行わない(非営利)といったことにより、収益事業に該当するかどうかの判断を行うものではありません。

4.最後に
 どの事業に該当するのか、納税者は公益性があるから非課税と考えがちなところが実務上、難しいところです。
 そろそろ、課税されるかどうかの判断方法を見直す時期かもしれませんね。

2018年3月30日 國村 年

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事務所通信2018年2月

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2018年2月号『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A

 2月15日に、独立開業後3冊目の著書『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A』を中央経済社から出版しました。

 1冊目の『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A』の販売が好調だったことから、出版社からの提案を受けての出版となりましたが、お話しをいただいてから4年以上かかってようやく出版に至りました。

 そこで今回は、『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A』について書きたいと思います。

1.月次決算の目的

 決算とは、一定期間における収益と費用とを計算して損益を算出し、資産・負債や資本金・剰余金といった財政状態を確定することをいいます。
 通常、法律的な観点からは、1年に1回だけ決算をすればよいのですが、実際には、管理会計上の要請から、1か月ごと・四半期(3か月)ごと、あるいは、半年ごとなどに決算をしているのが現状です。
 このうち、 1か月ごとに決算をすることを月次決算と言うのです。
 棚卸もそうなのですが、月次決算も年度決算のような会社法や税法などの規制を受けるものではありません。
 よって、以下のような目的達成のために、どのレベルで行うかを決めれば良いのです。

財務諸表作成

価格(売値、販売価格)の決定

損益管理・原価管理

予算の作成・管理

経営の意思決定

2.書籍の内容

 目次は、以下のとおりです。

第1章

月次決算の概要

第2章

月次決算体制の構築

第1節

総論

第2節

売上・営業債権計上プロセス

第3節

売上原価・在庫計上プロセス

第4節

費用・営業債権計上プロセス

第5節

立替金と精算プロセス

第6節

従業員への仮払金・清算・費用計上プロセス

第7節

従業員の立替経費・精算・費用計上プロセス

第8節

人件費の計上プロセス

第9節

減価償却費の計上(固定資産管理)

第10節

前払費用・長期前払費用の償却費の計上

第11節

引当金の繰入額の計上

第12節

税金の計上

第13節

月次決算のチェック項目

第3章

月次決算の分析・報告

第1節

月次決算分析・報告の手順

第2節

月次決算資料の作成

第3節

各部門での利益分析

第4節

経営者に対する報告・内容検討・対策立案

第4章

月次資金管理の実務

第1節

資金の趨勢の把握

第2節

日次の資金繰り

第3節

月次の資金繰り管理

第4節

資金繰りの分析

第5節

キャッシュ・フロー計算書

3.最後に

 環境の変化が急速な昨今、変化へのタイムリーな対応が会社経営上重要です。
 本書が少しでもお役に立てば、幸いです。

 

2018年2月27日 國村 年

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事務所通信2018年1月

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2018年1月号『贈与税・相続税なしで事業承継ができる?

 平成29年12月14日に与党の『平成30年度税制改正大綱』が公表され、12月22日に閣議決定されましたが、目玉の1つは、『事業承継税制』の改正です。
 いわゆる団塊世代の方が昨年から70歳を迎え始めていますので、国は早く事業承継をさせようとしており、要件を満たせば、贈与税・相続税なしで事業承継ができるようになります。
 そこで今回は、『贈与税・相続税なしで事業承継ができる?』について書きたいと思います。

1.事業承継税制とは?
 事業承継税制とは、中小企業の後継者の方が、現経営者から会社の株式を承継する際の、相続税・贈与税の軽減制度です。
 これが、平成30年4月1日から5年以内に承継計画を作成・提出し、平成39年までに贈与などが行われば、大幅に改正予定の事業承継税制を用いることができます。

2.事業承継税制の適用要件
 事業承継税制を使うためには、対象会社・先代経営者・後継者の要件を満たし、都道府県知事の認定を受け、担保を提供する必要があります。

<対象会社の主な要件>
 以下のいずれにも該当しないこと。

上場企業

中小企業者に該当しない会社

風俗営業会社

資産管理会社(一定の会社を除く。)

総収入金額が零の会社、従業員数が零(一定の会社は5人未満)の会社

<先代経営者の主な要件>
 以下を満たすことが必要です。

会社の代表権を有していた

(贈与税のみ)贈与時に代表権を有しない

相続開始時もしくは贈与直前に、同族関係者と合わせて議決権数の50%超を保有しており、後継者を除いたこれらの者の中で筆頭株主だった

 代表者以外からの贈与等によって取得する株式についても対象となる予定です。

<後継者の主な要件>
 以下を満たすことが必要です。

(相続税のみ)相続開始日の翌日から5か月を経過する日において代表権を有している

(贈与税のみ)贈与時に代表権を有している

(贈与税のみ)贈与時に20歳以上である

(贈与税のみ)贈与時に役員等の就任から3年以上経過している

相続開始直前もしくは贈与時に、同族関係者と合わせて議決権数の50%超を保有しており、これらの者の中で筆頭株主である

 代表権のある後継者で、保有する株式が総議決権数の10%以上であれば、3名まで対象となる予定です。

3.雇用80%維持要件
 現行では、承継後5年間の平均従業員数が承継前の80%を下回ると、納税猶予が打ち切りになってしまいます。
 これを満たさなかったときでも、その理由を記載した書類を都道府県に提出し、経営悪化などが理由であれば、経営革新等支援機関の指導助言を受けると、納税猶予は打ち切りにならなくなる予定です。

4.最後に
 今回の税制改正により簡単に事業承継ができるという風潮にあるようなことを耳にしますが、そうではありませんので、使う際は専門家を交え、慎重に進めて下さいね。

2018年1月30日 國村 年

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事務所通信2017年12月

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2017年12月号『エンジェル税制とは?』

 創業して間もない元気な企業への投資を応援する制度があります。
 その企業へ投資を行った方に対しる税制優遇があるのです。
 これが、エンジェル税制です。
 そこで今回は、『エンジェル税制とは?』について書きたいと思います。

1.エンジェル税制の仕組み
 個人投資家は①投資時点、②株式売却時点のそれぞれの時点において、税制上の優遇措置を受けることができます。
 投資時点においては、以下のAとBの優遇措置のいずれかを選択できます。

A (ベンチャー企業への投資額-2,000円)をその年の総所得金額から控除
総所得金額×40%と1,000万円のいずれか低い方が上限
B ベンチャー企業への投資額全額を、その年の他の株式譲渡益から控除
控除対象となる投資額の上限なし

 売却時点(売却損失が発生した場合)においては、未上場ベンチャー企業株式の売却により生じた損失を、その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)できるだけでなく、その年に通算(相殺)しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって、順次株式譲渡益と通算(相殺)ができます。
 また、ベンチャー企業が上場しないまま、破産、解散等をして株式の価値がなくなった場合にも、同様に翌年以降3年にわたって損失の繰越ができます。
 なお、投資時点で優遇措置(AまたはB)を受けた場合は、その控除対象金額を取得価額から差し引いて売却損失を計算します。

2.投資方法
 エンジェル税制における株式を取得する方法(投資方法)については、以下の3つの方法があります。 
 それぞれにおいてエンジェル税制の確認申請の方法が異なることに注意して下さい。

・直接投資
・認定投資事業有限責任組合経由
・証券会社経由

 

3.事前確認制度
 資金調達前にベンチャー企業がエンジェル税制の対象か否かについて確認を受けることができる制度があります。
 この確認を得ることで、投資家からの投資促進が期待できます。

4.確定申告の流れ
 エンジェル税制を利用するためには、まず、ベンチャー企業が都道府県へエンジェル税制適用対象企業であること、投資が行われたこと等の確認申請を行います。
 ケースによって異なりますが、申請書・定款・登記事項証明書・株主名簿・投資契約書の写しなどが必要になります。
 申請を受けた都道府県は、確認後、ベンチャー企業へ『確認書』を交付します。
 この確認書をベンチャー企業は投資家へ提出し、投資家が確認書を確定申告の際に税務署へ提出して手続きが完了します。

5.最後に
 現在申請のお手伝いの準備中ですが、書類を揃えるのがなかなか大変です。
 また、2016年4月1日より提出窓口が、経済産業局から都道府県に変わっており、以前より確認に時間がかかるようになっていると思われます。
 エンジェルがたくさん出てきて、ベンチャー企業に大きく羽ばたいて欲しいですね。

2017年12月25日 國村 年

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2017年11月号『広大地がなくなる!』

平成28年12月22日の『平成29年度税制改正の大綱』において、『広大地』の評価の見直しが明記され、今般、従来の広大地評価を廃止し、『地積規模の大きな宅地』の評価を新設することになりました。
そこで今回は、『広大地がなくなる!』について書きたいと思います。

 

1.『広大地』の評価
『広大地』の評価は以下のとおりです。

路線価地域にある場合 財産評価基本通達15(奥行価格補正)から20-5(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)までの定めに代わるものとして広大地補正率を用いる。
<算式>
 正面路線価×広大地補正率()×地積
 広大地補正率()=0.6-0.05×広大地の地積÷1,000㎡
倍率地域にある場合 その広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額を路線価として、上記①に準じて計算する。

『広大地』の評価は、適用要件が明確ではない、土地の形状が考慮されない、富裕層の節税に利用されている、取引価額との乖離が大きい事例が多数あるといった問題点が指摘されていました。

2.『地積規模の大きな宅地』の評価
地積規模の大きな宅地(三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地をいい、次の(1)から(3)までのいずれかに該当するものを除く。)で普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在するものの価額は、財産評価基本通達15(奥行価格補正)から20(不整形地の評価)までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じ、次の算式により求めた規模格差補正率を乗じて計算した価額によって評価します。

(1) 市街化調整区域(都市計画法の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域を除く。)に所在する宅地
(2) 都市計画法に規定する工業専用地域に所在する宅地
(3) 容積率が10分の40(東京都の特別区においては10分の30)以上の地域に所在する宅地

<算式>
 規模格差補正率=(A×B+C)÷地積規模の大きな宅地の面積(A)×0.8
 なお、上記算式中の「B」及び「C」は、地積規模の大きな宅地が所在する地域に応じ、定められています。

3.年内の対応
新しい制度は、平成30年1月1日以降に相続などで取得した財産の評価から適用されますので、税理士に相続税の試算をしてもらった結果、増税になりそうであれば、平成29年度中に相続時精算課税制度を利用して生前贈与することが考えられます。

4.最後に
従来、『広大地』の評価は、「調査官が100人いれば100通りの考え方がある。」と言われるほど難しいものでしたが、今般の見直しにより、適用要件が明確になり、判断に迷うものが少なくなりますので、増税になる方がおられるものの、本来あるべき姿になったことは嬉しいことではありますね。

2017年11月29日 國村 年

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 2017年8月号『補助金の採択は厳しくなっている? 

今月、IT導入補助金の2次公募の採択決定先が公表されました。
弊事務所は1次公募に、締め切り数分前に応募し、めでたく採択されましたが、2次公募はかなり厳しかったようです。
そこで今回は、『補助金の採択は厳しくなっている?』について書きたいと思います。

1.IT導入補助金とは?
既に公募は終わりましたが、IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等がITツール)ソフトウエア、サービス等)を導入する経費の一部を補助することで、中小企業・小規模事業者等の生産性の向上を図ることを目的としています。
中小企業・小規模事業者等が行う生産性向上に係る計画の策定や補助金申請手続等について、中小企業・小規模事業者等単独ではなく、ITベンダー・専門家等の支援を得ることで、目的の着実な達成を推進するものとなっています。
補助対象者は、日本国内に本社及び事業所を有する中小企業者等に限ります。
IT導入支援事業者が、あらかじめ事務局の承認を受け、事務局のHPに補助対象サービスとして公開されたITツール(ソフトウエア、サービス等)が対象となります。
補助率は補助金に多い2/3以内、補助下限額は20万円、上限額は100万円となっています。

2.IT導入補助金の1次公募
補助事業者(中小企業・小規模事業者等)の1次公募は2月28日まででした。
そして、採択先は、10日後の3月10日に公表されました。
採択率は公表されていませんが、2次公募が行われていることからも、ほぼ100%ではないかと言われています。
締め切り数分前に何とか応募が完了した弊事務所も、その中に含まれています。

3.IT導入補助金と2次公募
補助事業者(中小企業・小規模事業者等)の2次公募は3月31日から6月30日まででした。
当初の予定では7月上旬に採択先が公表されることになっていましたが、知らないうちに8月上旬に変更になり、結果的に8月4日に公表されました。
採択率は公表されていませんが、3割くらいと言われています。
採択先の公表が当初の予定より遅れたことから、公募企業が予想以上に多かったということが推測されます。

4.その他の補助金
平成29年度予算「創業・事業承継補助金(創業・事業承継支援事業)」のうち、「事業承継補助金」について、5月8日から6月2日(電子申請は6月3日)まで公募を行い、申請があった517件について、外部審査委員会による厳正な審査を行った結果、65件を採択しました。
公募期間が短かったため再度公募が行われるのではないかと勝手に思っていましたが、過去に行った事業承継も対象になるためか、採択率は12%と低くなっています。

5.最後に
補助金は、予想以上に簡単にもらえるものもあり、もらわないと損・知らないと損というような感じがします。
ただし、採択は厳しくなっていると思われますので、それなりに準備をしておく必要があると考えます。

2017年8月31日 國村 年

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2017年9月号『ビットコインを使用した場合の課税関係』

最近、毎日のように『仮想通貨』とか『ビットコイン』といったことばを、目にしたり、耳にしたりします。
これらは、金融商品でないため金融商品取引法の対象ではなく、税法上の取り扱いも明確化されていませんでした。
しかしながら、先日、国税庁が『ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係』というタックスアンサーを公表しました。
そこで今回は、『ビットコインを使用した場合の課税関係』について書きたいと思います。

1.『ビットコイン』とは?
ウィキペディアによると、『ビットコイン』は、サトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto) を名乗る人物によって投稿された論文に基づき、2009年に運用が開始されました。
ビットコインシステムは、ピア・トゥー・ピア(P2P)型のネットワークにより運営され、取引は仲介者なしでユーザ間で直接に行われるものです。
この取引は、ネットワークに参加しているノード(コンピュータ)によって検証され、『ブロックチェーン』と呼ばれる公開分散元帳に記録されていきます。
取引では、通貨単位としてビットコイン (BTC)が使用されます。

2.ビットコインを使用した場合の課税関係
以下のようになっています。
『ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。』
これだけですので、『使用』の範囲が明確ではありませんが、現時点では以下のように言われています(今後変わる可能性もあります。)。

 ケース  課税関係
円に売却 売却益(売却額-取得価額)に課税
他の仮想通貨と交換 取得時から交換時までの値上がり益に課税
無償で付与またはマイニング(採掘)で得たものを円に売却または他の仮想通貨と交換 売却益(売却額-所得価額(ゼロ?)またはマイニング費用)に課税
物品を購入 取得時から購入時までの値上がり益に課税
売買代金として受取 事業所得
保有により含み益が発生 なし

3.ビットコインの消費税
従来は課税でしたが、2017年7月1日から非課税になっています。

4.最後に
国税庁からタックスアンサーが出されたものの、『使用』の範囲が明確でないこと、ビットコイン以外の仮想通貨はどう取り扱えば良いかなど、現状では、色々不明な点が多くなっています。
仮想通貨の取引をされている方は、今後の動向に注意してくださいね。

2017年9月25日 國村 年