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事務所通信2025年1月

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2025年1月号『換価分割!』

遺産を分割する方法は、現物分割、共有分割、代償分割、換価分割の4つあります。

経験上、現物分割が圧倒的に多く、共有分割や代償分割はたまに見かけ、換価分割は珍しいという感じでしょうか。

そこで今回は、『換価分割!』について、取り上げます。

1.換価分割とは?

換価分割とは、相続財産を売却するなどして現金に換え、その現金を相続人同士で分割する方法です。

換価分割は、相続財産の多くが不動産・有価証券などで、相続人が相続財産の保有を必要としない場合に、一般的な遺産分割方法です。

2.換価分割のメリット

換価分割には、以下のようなメリットがあります。

相続人が多くても、公平に遺産分割がしやすい
延納や物納を使わずとも、相続税の納税資金を準備できる
代償分割と違って、自己資金を準備しなくてよい
不動産の実勢価格と比べて相続税評価額の方が低いことが多いため、相続税の節税ができることがある

3.換価分割のデメリット

一方、換価分割には、以下のようなデメリットがあります。

売却を急ぐと、希望額で売却できない可能性がある
譲渡所得税が発生する可能性がある
不動産産売買手数料・印紙代・測量費などが生じる

4.換価分割の手続き

換価分割の手続きは、以下のようになります。

換価分割する相続財産の相続税評価額を算出する

相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議で決めた共同登記か単独登記かに基づき、相続登記を行う
売却方針を協議する
売却先が見つかれば、売買契約書を締結し、売却代金を受領する
売却代金から各種費用を差し引いた金額を、遺産分割協議書に基づき分配する

5.換価分割の税務

相続税の計算の結果、課税されないこともありますが、換価分割の対象となる財産は、相続税の計算上、課税対象となります。

次に、換価分割の対象となる財産を売却した際には、売却代金から取得費や譲渡費用などを差し引いた『譲渡所得』が生じれば、譲渡所得税が課税されます。

この場合、取得費は相続税評価額ではなく、被相続人の取得費を引き継ぎますのでご留意ください。

なお、単独登記の場合、遺産分割協議書で詳細を記載しておけば、贈与税の問題は生じません。

6.最後に

代償分割だけでなく、換価分割もケースによっては有効だと思われますので、検討されてもよいかもしれませんね。

2025年1月27日 國村 年

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事務所通信2024年12月

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2024年12月号『ダイレクト納付!』

国税庁は、納付書を使用しない納付手段で納付した方などについては、納付書の事前の送付を取りやめています。

そこで今回は、『ダイレクト納付!』(e-Taxによる口座振替)について、書きます。

1.事前送付を行わないこととなる方

e-Taxにより申告書を提出されている法人の方

e-Taxによる申告書の提出が義務化されている法人の方

e-Taxで「予定納税額の通知書」の通知を希望された個人の方

「納付書」を使用しない以下の手段により納付されている法人・個人の方

・ダイレクト納付

・振替納税

・インターネットバンキング等による納付

・クレジットカード納付

・スマホアプリ納付

・コンビニ納付(QRコード)

(注1)現在、e-Taxを利用されず、税務署から送付された納付書で納付されている方など納付書を必要とされる方に対しては、引き続き、納付書を送付しています。

(注2)源泉所得税の徴収高計算書や、e-Taxによる申告書の提出が義務化されている法人以外の方に送付する消費税の中間申告書兼納付書については、引き続き送付しています。

(注3)「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

2.ダイレクト納付の手続

ダイレクト納付とは、e-Tax(国税電子申告・納税システム)により申告書等を提出した後、納税者ご自身名義の預貯金口座から、即時または指定した期日に、口座引落しにより国税を電子納付する手続です。

利用に当たっては、事前にe-Taxの利用開始手続を行ったうえ、納税地を所轄する税務署へ、『国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書』を書面で提出する必要があります(個人の方は、『ダイレクト納付利用届出書』をオンラインで提出することもできます。)。

3.自動ダイレクト

自動ダイレクトとは、e-Taxの申告等データを送信する画面で「自動ダイレクトを利用する」旨の項目が表示されるので、チェックを入れて送信すると、申告等データの送信と併せてダイレクト納付の手続をすることができる機能です。

自動ダイレクトを利用すると、口座引落日は各申告手続の法定納期限となります。

なお、以下のすべての条件に該当する場合に利用できます。

令和6年4月1日以降、法定納期限が到来する申告手続

法定納期限内に申告手続をする場合

法定納期限当日に自動ダイレクトの手続をした場合は、納税額に制限があります。

法定納期限に申告手続をする日

納税額

R6/4/1~R8/3/31

1千万円以下

R8/4/1~R10/3/31

3千万円以下

R10/4/1~

1億円以下

4.最後に

ダイレクト納付は手間が省けて便利ですので、使うことを検討しても良いですね。

2024年12月24日 國村 年

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事務所通信2024年11月

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2024年11月号『地籍調査とは?』

先日、地積調査に立ち会いました。

そこで今回は、『地籍調査とは?』について、書きたいと思います。

1.地籍調査とは?

人に戸籍があるように、土地には「地籍」があります。

「地籍」とは一筆ごとの土地に関する記録のことで、登記所(法務局)の土地登記簿に所有者、地番、地目、地積などが記録されており、その地図(公図)が備え付けられています。

地籍が登記所の登記簿や公図に記載されて初めてその土地に関する様々な権利が保護されることになります。 

現在の公図が明治時代初期に作られた地図をもとにしているものが多く、測量技術が現在のように精密でなかったことなどから、土地の境界や面積など不正確なものが少なくなく、土地の位置や境界など、先祖代々言い継がれてきたものも多く、その間にあいまいになったり間違った情報となっているものもあるようです。

地籍調査とは、土地の物理的状況について現地調査をして、その結果に基づき公図や登記簿を修正していく作業です。

2.地籍調査の効果

地籍調査は以下のようなことに役立ちます。

土地境界をめぐるトラブルの未然防止

土地取引の円滑化

災害復旧の迅速な対応

公共事業の円滑化

課税の適正化

まちづくり

3.地籍調査の流れ

地籍調査は以下のような流れで進めます。

1

住民への説明会

2

一筆地調査

3

一筆地測量

4

地籍図の作成・面積の測定/地籍簿の作成

5

成果の閲覧・ 確認

6

登記所への送付/成果の利活用

4.地籍調査でできること・できないこと

地籍調査で以下のようなことができます。

分筆(分割)

合筆(合併)

地目変更

地籍調査で以下のようなことはできません。

所有権移転登録(相続、交換、売買など)

道路(赤線)・水路(青線)

5.筆界未定地

筆界未定地とは、地籍調査の際に、境界(筆界)を確認できなかったため、筆界が決まらないまま処理されてしまった土地です。

境界を確認できない理由としては、筆界について所有者間に紛争があったり、数筆の土地を一区画で利用されていたり、現地で調査を行った際に土地所有者に立ち合ってもらえなかった場合などがあります。

地籍調査の結果、「筆界未定地」となった土地は、所有者の権利が残りますが、原則として、分筆・合筆ができない、地積更正ができない、地目変更ができない、売買や抵当権の設定などが非常に難しくなるなど、事実上動かせない土地となってしまいます。

また、地籍調査終了後に境界が決まっても、測量や登記は土地所有者の個人負担(全額自己負担)となり、多額の費用がかかります。

6.最後に

実際に地籍調査に立ち会いましたが、上記のことを知っていて損はないと感じました。

2024年11月26日 國村 年

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事務所通信2024年10月

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2024年10月号『手形のサイトが60日になる!』

今までは、繊維業は90日、その他の業種は120日を超えるサイトの手形等が、下請法が規制する「割引困難な手形」等に該当するおそれのあるものとされてきました。

ところが、来月から60日になるのです。

そこで今回は、『手形のサイトが60日になる!』について、書きたいと思います。

1.概要

中小企業庁及び公正取引委員会は、1966年以降、業界の商慣習、親事業者と下請事業者との取引関係や金融情勢等を総合的に勘案し、繊維業は90日、その他の業種は120日を超えるサイトの手形等を、下請法が規制する「割引困難な手形」等に該当するおそれのあるものとして指導してきました。

こうした長期の手形等が下請事業者の資金繰りの負担となっていることなどを踏まえ、中小企業庁は、中小企業の取引適正化の重点課題の1つに「支払条件の改善」を位置づけ、業種別の下請ガイドラインや自主行動計画などを通じ、手形等による支払期間の短縮を推進してきました。

2021年3月に、下請法の運用の見直しについて検討を行うこととしていましたが、今般、改めて各業界の商慣行、金融情勢等を総合的に勘案し、意見公募手続を経たうえ、サイトが60日を超える手形等が下請法上の「割引困難な手形」等に該当するおそれがあるものとして、指導の対象とする運用の見直しを公正取引委員会が公表しました。

2.新たな運用の適用開始時期

2024年11月1日以降に交付された手形等につき、新たな運用が適用されます。

3.各団体等への要請

中小企業庁は、公正取引委員会と連名で、各産業の業界団体や、金融機関及びそれを監督する省庁等に対し、以下の内容の要請文を発出しました。

サイトが60日を超える手形等を下請法の割引困難な手形等に該当するおそれがあるものとして指導の対象とする運用が2024年11月1日から始まること。

ファクタリング等の一括決済方式についてはサイトを60日以内とすることに加え、引き続き一括決済方式への加入は下請事業者の自由な意思によること並びに親事業者、下請事業者及び金融機関の間の三者契約によることを徹底すること。

下請法対象外の取引についても手形等のサイトを60日以内に短縮する、代金の支払いをできる限り現金によるものとするなど、サプライチェーン全体での支払い手段の適正化に努めること。とりわけ、建設工事、大型機器の製造など発注から納品までの期間が長期にわたる取引においては、発注者は支払い手段の適正化とともに、前払い比率、期中払い比率をできる限り高めるなど支払条件の改善に努めること。

手形等のサイトの短縮に取り組む事業者からの資金繰り支援の相談に丁寧かつ親身に応じるとともに、事業者の業況や資金需要等を勘案し、事業者に寄り添った柔軟かつきめ細かな資金繰り支援に努めること。

4.最後に

受け取る側は資金繰りが改善、振り出す側は悪化となりますので、ご留意くださいね。

2024年10月25日 國村 年

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事務所通信2024年9月

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2024年9月号『地積規模の大きな宅地!』

面積の広い土地があり、多額の相続税がかかるのではないかと心配されている方がいらっしゃるかもしれません。ところが、面積が一定規模以上の土地に対しては、要件を満たせば、減額することが可能なのです。

そこで今回は、『地積規模の大きな宅地!』について、書きたいと思います。

1.地積規模の大きな宅地とは?

地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地をいいます。

ただし、以下の(1)から(4)のいずれかに該当する宅地は、地積規模の大きな宅地から除かれます。

(1) 市街化調整区域に所在する宅地
(2) 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
(3) 指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
(4) 財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地

三大都市圏とは、以下の地域をいいます。

(1) 首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地または同条第4項に規定する近郊整備地帯
(2) 近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域または同条第4項に規定する近郊整備区域
(3) 中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域

2.地積規模の大きな宅地の評価の対象となる宅地

地積規模の大きな宅地の評価の対象となる宅地は、路線価地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地のうち、普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区に所在するものとなります。

また、倍率地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地に該当する宅地であれば対象となります。

3.評価方法

(1)路線価地域に所在する場合

評価額
=路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率などの各種画地補正率×規模格差補正率×地積(㎡)

(2)倍率地域に所在する場合

以下に掲げる①の価額と②の価額のいずれか低い価額により評価します。

その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
その宅地が標準的な間口距離および奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額に、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額

4.規模格差補正率

規模格差補正率は、以下の算式により計算します(小数点以下第2位未満は切り捨て)。

規模格差補正率
=(A×B+C)÷地積規模の大きな宅地の地積(A)×0.8

上記算式中の「B」および「C」は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて、それぞれ以下に掲げる表のとおりです。

(1)三大都市圏に所在する宅地

地積

普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
B C
500㎡以上1,000㎡未満 0.95 25
1,000㎡以上3,000㎡未満 0.90 75
3,000㎡以上5,000㎡未満 0.85 225
5,000㎡以上 0.80 475

(2)三大都市圏以外の地域に所在する宅地

地積

普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
B C
1,000㎡以上3,000㎡未満 0.90 100
3,000㎡以上5,000㎡未満 0.85 250
5,000㎡以上 0.80 500

5.最後に

2018年に新設された、通常の土地より大きな土地については評価減ができるというものですから、適用できるものについてはきちんと適用しましょう。

2024年9月27日 國村 年

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事務所通信2024年8月

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2024年8月号『農地の評価!』

現在、相続税の申告を複数件お手伝いしておりますが、そのうち7~8割の方の相続財産として出てくるのが農地です。

しかし、農地は、相続人の方が思っているより相続税の評価が高いことがほとんどです。

そこで今回は、『農地の評価!』について、書きたいと思います。

1.農地の区分

農地については、農地法などにより宅地への転用が制限されており、また、都市計画などにより地価事情も異なりますので、これらを考慮して、農地の価額は以下の4種類に区分して評価します。

(1) 純農地
(2) 中間農地
(3) 市街地周辺農地
(4) 市街地農地

2.純農地および中間農地の評価

純農地および中間農地の価額は、倍率方式によって評価します。

倍率方式とは、その農地の固定資産税評価額に、国税局長が定める一定の倍率を乗じて評価する方法をいいます。

3.市街地周辺農地の評価

市街地周辺農地の価額は、その農地が市街地農地であるとした場合の価額の80%に相当する金額によって評価します。

4.市街地農地の評価

市街地農地の価額は、宅地比準方式または倍率方式により評価します。

宅地比準方式とは、その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額からその農地を宅地に転用する場合にかかる通常必要と認められる1㎡当たりの造成費に相当する金額を控除した金額に、その農地の地積を乗じて計算した金額により評価する方法をいいます。

これを算式で示すと、以下のとおりです。

市街地農地の評価額=(その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額-1㎡当たりの造成費の金額)×地積

上記算式の「その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、具体的には、路線価方式により評価する地域は、その路線価により、また、倍率地域は、評価しようとする農地に最も近接し、かつ、道路からの位置や形状等が最も類似する宅地の評価額(宅地としての固定資産税評価額×宅地としての評価倍率)を基として計算します。

なお、その農地が宅地であるとした場合において、財産評価基本通達20-2(地積規模の大きな宅地の評価)の定めの適用対象となるとき(同通達21-2(倍率方式による評価)ただし書において同通達20-2の定めを準用するときを含みます。)には、同項の定めを適用して計算します。

また、「1㎡当たりの造成費の金額」は、整地、土盛りまたは土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに、国税局長が定めており、国税庁ホームページで閲覧することができます。

「市街地周辺農地」および「市街地農地」の価額は、「市街地農地等の評価明細書」を使用して評価することができます。

5.最後に

相続税の計算で意外と難しいのが、市街地周辺農地や市街地農地ですので、現地を確認して、慎重に計算しましょう。

2024年8月27日 國村 年

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事務所通信2024年7月

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2024年7月号『相続土地国庫帰属制度の現状!』

土地を相続したものの土地を手放したいと考える方が増加しており、また、土地を望まず取得した所有者の負担感が増しています。

所有者不明土地の発生を抑えるため、相続や遺贈により土地の所有権を取得した方が、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度が創設されました。

そこで今回は、『相続土地国庫帰属制度の現状!』について、書きたいと思います。

1.相続土地国庫帰属制度とは?

相続した土地について、「遠くに住んでいて利用する予定がない」、「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により、土地を手放したいというニーズが高まっています。

このような土地が管理できないまま放置されることで、将来、「所有者不明土地」が発生することを予防するため、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が2023年4月27日から創設されました。

2.申請件数

法務省は、相続土地国庫帰属制度の運用状況に関する統計を公開しています。

2024年6月30日現在(以下同じ。)の申請件数は以下のとおりです。

(1)総数2,348件

(2)地目別 田・畑894件、宅地842件、山林360件、その他252件

3.帰属件数

帰属件数は以下のとおりです。

(1)総数564件

(2)地目別 田・畑237件、宅地163件、山林19件、その他145件

4.却下・不承認件数

却下・不承認件数は以下のとおりです。

(1)却下件数10件

(却下の理由)

・8件:現に通路の用に供されている土地

・2件:境界が明らかでない土地

(2)不承認件数17件(1事件1件ではない)

(不承認の理由)

・6件:土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

・2件:民法上の通行権利が現に妨げられている土地

・1件:所有権に基づく使用又は収益が現に妨害されている土地

・4件:国による追加の整備が必要な森林

・5件:国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地

5.取下げ件数

取下げ件数は、293件です。

(取下げの原因の例)

・自治体や国の機関による土地の有効活用が決定

・隣接地所有者から土地の引き受けの申出

・農業委員会の調整等により農地として活用される見込み

・審査の途中で却下、不承認相当であることが判明

6.最後に

相続したくない土地もあると思いますので、この制度を上手に使いたいものですね。

2024年7月29日 國村 年

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事務所通信2024年6月

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2024年6月号『中小企業投資育成株式会社とは?

『中小企業投資育成株式会社』という株式会社をご存じでしょうか?

おそらく、聞いたこともない方が多いと思いますが、相続制対策や事業承継対策などで使えるのです。

そこで今回は、『中小企業投資育成株式会社とは?』について、書きたいと思います。

1.中小企業投資育成株式会社とは?

中小企業投資育成株式会社とは、『中小企業投資育成株式会社法』に基づき設立された公的な投資育成機関です。

東京中小企業投資育成株式会社(新潟・長野・静岡以東の18都道県)、名古屋中小企業投資育成株式会社(愛知・岐阜・三重・富山・石川の5県)、大阪中小企業投資育成株式会社(福井・滋賀・奈良・和歌山以西の24府県)の3つあります。

ちなみに、株主は、都府県・市・商工会議所・メガバンク・地方銀行・大手生命保険会社・日本取引所グループなどで、監督官庁は経済産業省です。

2.中小企業投資育成株式会社の業務・特徴

中堅・中小企業が発行する株式・新株予約権付社債などの引受けを通じて、優良企業への成長をサポートしています。

投資育成は、自己資金で投資を行っているという性格を背景に、投資先企業の自主性を尊重した友好的・安定株主として、長期にわたり中堅・中小企業の皆様の後方支援を行うため、以下の3つの特徴があります。

・長期安定株主

・経営干渉しない

・良き相談相手

3.利用できる企業の条件

原則として資本金3億円以下の株式会社であること
事業基盤があり安定的な配当を実施できる収益力を有していること
公序良俗に反しない企業、投機的な事業を行っていない企業であること

4.利用後に必要なこと

安定配当の実施(利用前に相談の上決定)
株主総会の開催、投資育成の出席
決算内容、株主総会付議事項の事前説明

5.投資育成制度の活用事例

現経営陣の持株比率が低く、議決権の過半数を確保できていない。株式を買い集める資金もなく、相続発生による更なる株主構成分散も懸念される。

安定株主確保のため、投資育成会社に対して第三者割当増資を実施し、投資育成会社を合わせて議決権の過半数を確保

過去に従業員に株式を持たせていたが、株式を保有したまま退職してしまった。
役員、従業員の議決権比率は合わせても過半数に届かない。

1)社外個人株主の保有株式を自己株式化により整理、2)従業員が株式を保有したまま退職してしまわないよう従業員持株会を新たに組成し、従業員保有株式を従業員持株会に組み入れ、3)自己株式を従業員持株会と投資育成が取得。

6.最後に

先月の従業員持株会と同様、相続税対策や事業承継対策を考えている経営者の方は、投資育成制度の活用を検討してもよいかもしれません。

2024年6月24日 國村 年

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事務所通信2024年5月

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2024年5月号『非上場会社でも従業員持株会を活用できる!』

『従業員持株会』という制度をご存じでしょうか?

聞いたこともない方もたくさんおられるでしょうし、知っていても上場会社で使われる制度と思われている方もおられるのではないでしょうか?

実は、非上場会社でも使えるのです。

そこで今回は、『非上場会社でも従業員持株会を活用できる!』について、書きたいと思います。

1.従業員持株会とは?

会社の従業員(当該会社の子会社の従業員を含む。)が、当該会社の株式の取得を目的として運営する組織をいいます。

2.従業員持株会のメリット

メリットとしては以下のようなものが挙げられます。

<会社>
従業員福利厚生制度の柱となる
従業員に経営参加意識を持たせることができる
株式の社外流出を防止できる
株主からの買取要請に対処しやすい
オーナーの相続税対策に役立つ
<従業員>
財産形成に役立つ

3.従業員持株会のデメリット

一方、デメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

<会社>
従業員の資本参加の度合いによってはオーナーの会社支配権が揺るぎかねない
公正に運営が行われないと従業員から不満の声が出る
退会等による換金の申し込みが集中すると株式転売の対応が難しくなる
既存の従業員株主を持株会に吸収できないと株主管理に問題が残る
配当が期待できないと従業員の不信感、不満が表面化し運営が困難になる
<従業員>
倒産の場合、資産も失うことになる

4.従業員持株会の設立形態

設立形態としては、以下の①から③が考えられますが、③民法上の組合として設立することが多いと考えられます。

民法上の組合
法人格のない社団
任意団体

③民法上の組合の特徴は以下のとおりです。

法的性格 民法667条の規定に基づく団体
法人格を持たない
税務上の

取り扱い

法人税の課税なし
会員個人が受ける
配当金は配当所得(配当控除可)
採  用 ほとんどの会社で採用

5.従業員持株会の参加者

会社の正社員を参加者とするのが一般的だと考えられます。

なお、子会社の正社員も参加させることも可能です。

6.最後に

上場会社のみならず、非上場会社でも従業員持株会は使えます。

従業員に報いたいと考えていたり、相続税対策を考えている経営者の方は、検討してもよいかもしれません。

2024年5月28日 國村 年

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事務所通信2024年4月

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2024年4月号『経営者保証を提供しない3つの制度!』

最近、経営者保証を外すことが話題になっています。

そのような中、2024年3月15日から保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等が開始されました。

そこで今回は、『経営者保証を提供しない3つの制度!』について、書きたいと思います。

1.事業者選択型経営者保証非提供制度

<要件>

次の要件のいずれにも該当すること(*)

過去2年間(法人の設立日から2年経過していない場合は、その期間)において決算書等を申込金融機関の求めに応じて提出していること
直近の決算において代表者への貸付金等がなく、かつ、代表者への役員報酬、賞与、配当等が社会通念上相当と認められる額を超えていないこと
直近の決算において債務超過でない(純資産の額がゼロ以上である)こと又は直近2期の決算において減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと
上記①及び②については継続的に充足することを誓約する書面を提出していること
中小企業者が、保証料率の上乗せにより保証人の保証を提供しないことを希望していること

(*)法人の設立後最初の決算が未了の者の場合にあっては①から③までに掲げるものを、法人の設立後最初の2期分の決算が未了の者にあっては③に掲げるものをそれぞれ除く。

<保証料率>

  • 上記の③の要件の両方を満たす場合

信用保証協会所定の保証料率に0.25%上乗せ

  • 上記の③の要件のいずれか一方を満たす場合又は法人の設立後2事業年度の決算がない場合

信用保証協会所定の保証料率に0.45%上乗せ

<保証人>
不要
<対象となる保証>
無担保保険(限度額8,000万円)に係る保証など。
<その他>
原則として、本制度を適用する個別の保証制度等の取扱いに準じる。

2.事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度

<要件>
前記1.と同じ。
<保証限度額>
8,000万円セーフティネット保証(4号・5号)の場合は、別枠で8,000万円
<保証期間>
・一括返済の場合:1年以内・分割返済の場合:10年以内(据置期間は1年以内)
<保証料率>
前記1.と同じ。
<保証料補助>
保証申込日に応じて、次の補助率に相当する額を国が補助します。

  • 2024年3月15日~2025年3月31日の保証申込分 補助率 0.15%
  • 2025年4月1日~2026年3月31日の保証申込分 補助率 0.10%
  • 2026年4月1日~2027年3月31日保証申込分 補助率 0.05%
<保証人>
不要
<取扱期間>
2027年3月31日まで

3.プロパー融資借換特別保証制度

<要件>
以下の全ての要件を充足する法人

資産超過であること
EBITDA有利子負債倍率(*1)が15倍以内であること
法人・個人の分離がなされていること
申込日(*2)において返済緩和している借入金がないこと

(*1)EBITDA有利子負債倍率=(借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費)

(*2)危機関連保証又はSN保証4号(新型コロナ)の指定期間内の場合は、指定期間の始期の前日でも差し支えない。

<対象資金>
借換資金(プロパー融資のうち、経営者保証を提供している事業資金の借換えに限る。)
<保証限度額>
保証限度額:2億8,000万円(組合等4億8,000万円)申込金融機関における保証限度額は、プロパー融資のうち、経営者保証を提供していない残高の範囲内。
<保証期間>
  • 一括返済の場合:1年以内
  • 分割返済の場合:10年以内(据置期間は1年以内)
<保証料率>
0.45%~1.90%
<保証人>
不要
<取扱期間>
2027年3月31日まで
<その他>
申込金融機関において、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 経営者保証を不要とし、かつ、保全のないプロパー融資を実行すること
  • 経営者保証を提供している既往のプロパー融資(本制度による返済部分を除く。)の全部又は一部について経営者保証を解除し、かつ、解除したプロパー融資については保全がないこと

4.最後に

経営者保証を提供しなくてすむ制度が色々とできましたので、ふさわしいものを使っていただきたいですね。

個人的には、普段から会社の状況を見て減価償却費を入れたり入れなかったりしていますが、減価償却前経常利益で考えれば良いということを改めて認識しました。

2024年4月24日 國村 年