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四国化成HDが香川県の「骨付鳥」実店舗で老舗の味を継承!

香川県で讃岐うどんと並ぶ名物といえば、丸亀市が発祥の骨付鳥でしょう。

日本経済新聞によると、地元の四国化成ホールディングス(HD)は傘下のシコク・フーズ商事(宇多津町)を通じ、骨付鳥の持ち帰り専門店を丸亀市内に開きました。

味を監修したのは老舗居酒屋の「藤(とう)ちゃん」です。

異業種の大手企業が地域の食文化を受け継ぎ、より大きな事業に育てようとしているのです。

丸亀市の青果市場内に2024年6月下旬、「おやわか厨房」の1号店が開業しました。

独自の下味を付けた骨付きの鳥もも肉を、注文を受けてからオーブンで焼き上げます。

値段は1本900円です。

営業は金曜と土曜の週2日のみですが、多いときには1日100本前後を売り上げる人気ぶりです。

四国化成HDは化学品や建材の製造などを手がけています。

一方、子会社のシコク・フーズは食品関連の商社で、香川県内でハンバーガーチェーン「モスバーガー」のフランチャイズ店を運営し、「オリーブ牛」など地元の名産品を通信販売しています。

骨付鳥の販売を始めたのは2023年2月からです。

シコク・フーズで新規事業の立ち上げを指揮する大空浩基取締役によると「フランチャイズではない、独自の事業をチームで模索したところ、地元発祥の骨付鳥を使うアイデアが浮上した」と振り返っています。

丸亀市で骨付鳥が生まれたのは約70年前のことです。

ある飲食店経営者が外国映画を鑑賞中に、登場人物が骨付きの鳥もも肉をうまそうに食べるシーンを見てひらめいたそうです。

その後、骨付鳥を提供する店は丸亀市内外に広がり、味付けも多彩になりました。

シコク・フーズが目を付けたのは、地元で人気の居酒屋「藤ちゃん」でした。

骨付鳥発祥の店で創業期から働いていた店主が、独立して開業しました。

藤ちゃんの骨付鳥は、本家本元の作り方を今に伝えているわけです。

調味料は塩とコショウ、ガーリックのみです。

シンプルな味わいで鳥肉のうまみを生かしています。

「スパイスに頼りすぎず、女性や子供にも食べやすい味付けにしたい」という社内からの意見にも合致しました。

店主から鳥肉の下処理や味付けなどの指導を受けた後、冷蔵した骨付鳥の通信販売と、焼きたてを提供するキッチンカーの営業を始めたのです。

「藤ちゃんの味やね」と、老舗の味を知る地元の人からも評価を得て、着実に販売実績を伸ばしました。

口コミ効果もあって、販売開始から1年で約3万本を売り上げました。

2023年末のクリスマス商戦で店舗販売を試したところ好評で、2024年6月に1号店を開業しました。

一方で、同じ6月末に藤ちゃんは休業を決めました。

高齢の店主の体調不良もあり、営業が難しくなったそうです。

このため藤ちゃん流の骨付鳥の味を楽しめるのは、現時点ではシコク・フーズの製品だけです。

自社の新事業開拓を目的に始めた骨付鳥の販売は、いつしか「後世に残したい伝統食品の保存・継承」に変わったのです。

シコク・フーズは多店舗展開により、「おやわか厨房」を商事部門の新たな柱に育てたい考えです。

大空取締役は「将来はイートイン(店内飲食)ができる店も開きたい」と話しています。

香川県でも、有名飲食店が閉店し、残念に思っている方も多いと思います。

誰か個人が引き継いでくれたら良かったのになぁと思うことも多いですが、今回の四国化成HDのように、地元の大手企業が引き継ぐことも大事だと考えています。

名店を残し、それも県外資本ではなく、地元資本で承継していくことになりますので。

四国化成HDが香川県の「骨付鳥」実店舗で老舗の味を継承したことについて、あなたはどう思われましたか?


中小企業の事業承継を地銀が支援!

日本経済新聞によると、経営者の高齢化や後継者難で、中小企業の廃業が増えている状況に対応して、地方銀行が企業の買い取り先を探す「事業承継・M&A(合併・買収)」業務を強化しています。
事業承継支援を目的にしたファンド組成などを手掛けているほか、営業エリア外の企業とのマッチングができるプラットフォームを活用するなど、デジタル技術の活用にも熱心です。

岐阜県岐阜市に本店を置く十六フィナンシャルグループ(FG)は、2023年7月、日本M&Aセンターホールディングス(HD)と、中小企業の事業承継を支援する共同出資会社「NOBUNAGAサクセション」(岐阜県岐阜市)を設立しました。
十六FGの営業基盤である岐阜県と愛知県でも、中小企業の後継者難は深刻です。
新会社は企業に後継人材を紹介したり、他社とのM&Aを仲介したりして、地域経済の活性化を目指そうとしています。

事業承継を支援するため、ファンドを設ける動きも広がっています。
最近では秋田銀行が10億円規模の「あきぎんNEXTファンド」の組成を発表しました。
「ベンチャー企業や事業承継等の課題を抱える企業」を、出資や株式取得を通じて支援する計画です。
事業承継したい中小企業と経営人材をつなぐファンドは「サーチファンド」と呼ばれ、地域金融機関の出資が相次いでいます。

事業の売り手と買い手をマッチングするプラットフォームの利用も活発です。
我が香川県高松市に本店がある百十四銀行は、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー(FA)が運営するプラットフォーム「M&Aプラス」を活用しています。
百十四銀行は「支店の情報網が及ばない地域での企業探しに役立てている」(中山正史コンサルティング部長)といいます。

このプラットフォームは、地銀などの地域金融機関や会計事務所、M&A仲介会社など700社あまりがデロイトの審査を経て参加し、M&A案件などの情報を交換しています。
他の会員に案件情報を知られたくない場合には非開示先を設定することで、情報の流出リスクを抑える仕組みを取り入れています。

東京商工リサーチによると、2022年の企業の休廃業・解散件数は49,625件で、ここ数年増加傾向にあります。
休廃業・解散直前期の業績を見ると黒字企業が54.9%、赤字企業は45.1%です。
黒字であっても、後継者難などで廃業を余儀なくされる企業は少なくありません。

中小企業の事業承継問題に詳しいデロイトトーマツFAの牟禮貴史シニアアナリストは、「地銀やM&A事業者などが手がけるM&Aは、年間3千〜4千件程度と推定されるが、廃業防止に十分寄与しているとは言い難い」と話しています。
中小企業の事業承継・M&Aを支援する社会ニーズはますます高まりそうです。

百十四銀行は、地域経済の振興を目的に、取引先企業の事業承継やM&Aを支援する業務に力を入れ、事業承継先の企業を探すデジタルツールも積極的に活用しています。
百十四銀行が進める事業承継・M&A支援の現状や見通しを中山正史コンサルティング部長に聞きました。

「顧客である取引先企業に事業を継続してもらうことは、我々のような地域金融機関にとって極めて重要です。取引先企業が直面している状況や課題を最も理解できる立場にあるのが地域の金融機関です。地方銀行だからこそ可能な支援業務があります。地域経済や雇用を支える企業の事業承継やM&Aを支援することには、大きな社会的価値があると考えています」

「取引先企業の事業承継やM&Aに関与すると、多くの場合はその後も当該企業との取引関係が長く続きます。これも事業承継・M&A支援を重視している大きな理由です。事業承継やM&Aのディール完了といった顧客にとっての大きなターニングポイントの局面を支援することは、地銀の様々な業務の中でも重要性が増しています」

実際の事業承継・M&Aではどのようなケースが多いのでしょうか。
「やはり中小企業で後継者がいないという事情を抱えているところが多いですね。ただ、後継者が確保されている場合でも、経営者が事業の先行きに不安を感じているケースが最近は多いと感じています。その一方で事業成長のためM&Aを選択され、そのための相談に来られる経営者も少なくありません」

「我々の場合、中国・四国地方を中心に支店を展開しており、これらの地域の案件が多いです。東京都や福岡市にも支店を置いており、それらのネットワークを通じて寄せられる案件もあります。年によって変動がありますが、事業承継・M&Aの成立件数はこのところ年間10数件の水準で推移しています」

どのような体制で事業承継・M&A支援に取り組んでいますか。
「コンサルティング部の中に事業承継担当が3人、M&A担当が5人います。これ以外に事業承継ファンドや関連企業への出向者が3人います。コンサルティング部は約60人の体制で、企業の事業計画や人事制度、ICT(情報通信技術)構築、人材紹介など事業に関する支援をすべて行うことができます。事業承継・M&Aの前後で多面的な支援ができる体制を整えているところが我々の強みです」

事業承継の相手先を探すマッチングプラットフォームを活用しているそうですね。
「デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーが運営している会員制プラットフォーム『M&Aプラス』を約5年前から使っています。事業譲渡を希望する顧客からの依頼を受けて、買い手企業を探す際などに利用しています。そうした買い手企業の情報は、関東以北など支店のない地域では得にくいため、マッチングの可能エリアを広げる目的でこのプラットフォームを活用しています」

「M&Aプラスの場合、我々のような地域金融機関のほか、会計事務所や税理士法人といったM&Aに精通した会員が多く、案件が具体的に進み始めた場合に、実務の分かった人間同士で話が非常にスムーズに進むという特徴もあります」

それ以前はどんな方法で事業承継先などを探していたのですか。
「支店のない地域では、同業の金融機関から寄せられる情報や、人脈を頼りに探していました。同じ地銀で比較的親密な関係があるところと定期的に連絡をとりながら、そのネットワークの中で探していました。M&Aプラスのようなデジタルツールを使うことで、業務の効率性が飛躍的に向上したと思います」

今後、どのような分野に特に力を入れますか。
「新型コロナウイルス感染症の流行期には、我々から見て十分に事業継続の余地がある会社でも、将来に不安を感じる経営者が増えました。地域の企業が減ることは地域経済の衰退につながりかねません。事業を承継する意欲のある経営者を広く探して、地元企業とマッチングを進められればと思います。その場合も、地域のサプライチェーン(供給網)を維持できる形で話が進むのが望ましいです」

「地元の医院やクリニックの事業承継を支援するのも重要な業務です。開業医の方々の高齢化が進み、後継者がいなくなっていくためです。香川県の医師会と事業承継に関する連携協定を結んでマッチングに力を入れているところです」

『取引先企業が直面している状況や課題を最も理解できる立場にあるのが地域の金融機関です。』とありますが、自戒を込めて、会計事務所がそうでないといけないように思います。
手数料ビジネスではなく、クライアントのために提案等をできるのが会計事務所だと考えています。
公認会計士や税理士の業界をあげて、事業承継やM&Aに取り組んでいかないといけないのではないかと改めて感じた記事でした。

中小企業の事業承継を地銀が支援していることについて、あなたはどう思われましたか?


ジャニーズ事務所ジュリー氏「代表取締役残留」は相続税支払い免除のためだった!

文春オンラインによると、2023年9月7日の会見で、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子氏(57)は、社長からの引責辞任を発表したが、同時に「性加害の補償への取り組み」を理由に、代表取締役の留任を明かしていました。

会見に先立ち、「外部専門家による再発防止特別チーム」は、性加害問題の背景に同族経営の問題があると指弾したうえで、ジュリー氏は代表取締役社長を辞任し、「解体的出直し」を図るべきだと提案していました。

なぜ、それでもジュリー氏は「代表取締役」に居座ったのでしょうか?
その主な理由が、ジャニーズ事務所が「事業承継税制」の特例措置で税優遇を受けるためだったことが、「週刊文春」の取材で明らかになりました。
同誌の取材に対し、ジャニーズ事務所も事業承継税制の特例措置を申請し、適用されていると認めました。

ジャニー氏が逝去したのは2019年7月で、ジャニーズ事務所の株は、メリー氏とジュリー氏の2人で分け合い、50%ずつ保有する形になりました。
さらに、2021年にメリー氏が亡くなると、メリー氏の株がジュリー氏にわたり、彼女は全株を保有することとなりました。

専門家が同業他社などの株価を勘案し、ジャニー氏が亡くなった時点での1株当たりの評価額を約200万円とした場合、ジュリー氏が納めるべき株に対する相続税は約860億円と推計できるそうです。
しかしながら、この巨額の相続税をジュリー氏は一切、支払っていないのです。
「事業承継税制」の特例措置を申請し、相続税の支払いを免れているからです。

それでは、「事業承継税制」とはどのような制度なのでしょうか?
税理士の板倉京氏が解説しています。
「近年、後継者不足や後継者の重い税負担を理由に、黒字廃業する中小企業が後を絶たない。そこで国は、2009年から中小企業の事業承継を後押しするため、『事業承継税制』を導入しました。2018年にできた特例措置が適用されれば、株式の相続税や贈与税の納税が猶予され、実質ゼロにできるのです」

ただし、ジャニーズ事務所が事業承継税制の特例措置で税優遇を受けるためには、ジュリー氏が「代表取締役」の座に座り続ける必要があります。

「相続税をゼロにするには、申告期限の翌日から5年間、代表取締役を務めないといけません。また5年後以降は株を継続して保有する必要がある。この税優遇の目的は、後継者が事業を円滑に次世代に繋ぐことを条件に、本来かかる税金を全額免除しますよ、というもの。なぜ、5年間かというと、後継者育成に最低5年は必要とされているからです。ジャニー氏が亡くなった際の、相続税の申告期限は2020年5月。そこから5年間つまり2025年5月まで、ジュリー氏は代表取締役を務める必要があるのです」(同前)

制度の適用対象は、非上場の中小企業です。
年間の売り上げが1,000億円を超えるジャニーズ帝国は中小企業といえるのでしょうか?

「サービス業の場合、従業員100人以下、もしくは資本金5,000万円以下のどちらかに該当すれば適用対象となる。同社の社員数は200人以上とされますが、資本金は設立以来ずっと変わらず、1,000万円に設定されており、中小企業扱いとなります」(同前)

もし、今回、ジュリー氏が代表取締役を辞任していたら、どうなったのでしょうか?
「精神疾患や要介護認定を受けるなど、やむを得ない事情を除き、特例措置の認定が取り消しになる。それまで猶予されていた相続税に利子分を加えて納税しなくてはいけません」(同前)

ジャニーズ事務所の同制度利用について、国税庁関係者は、「被害者やファンを馬鹿にした話」と憤っています。

「ジュリー氏が代表取締役を留任した最大の理由は、税金逃れに他ならない。このまま彼女は、性加害の被害者補償を名目に、2025年5月まで時間稼ぎをするつもりでしょう。もちろん事業承継税制を申請すること自体は何ら違法ではないが、きちんと会見で説明すべき。税逃れを隠して『被害者への補償・救済』へと目的をすり替えるのは、悪質な手口と言わざるを得ません」

「事業承継税制」の趣旨の観点から、前出の板倉氏が指摘しています。
「事業承継税制は、地道に経営する中小企業を助けるための優遇措置です。ジャニーズ事務所のように巨額の資産を保有する企業を想定していません。また先代の性加害への対応で芸能事務所として適切な事業継続が求められる中、免税のために留任しているのであれば、事業承継税制の本来の趣旨にも反していると言わざるを得ません」

ジャニーズ事務所に尋ねると、「事業承継税制を受けているのは事実です」と認めたうえで、次のように回答した。

「中小企業が事業および雇用の継続等を行うための事業承継税制であり、当社は雇用を維持し、事業を継続しております。法律事務所、会計事務所と協議し事業を継続するためには、どのようにするのが一番良いか話し合った結果であり、税金逃れと言われるのは大変遺憾です。(相続税の額が860億円か?との質問には)違います」

個人的には、この記事に、国税庁関係者が憤っているとありますが、ジュリー氏が事業承継税制を使っていることについては、批判されるべき話ではないと思います。
要件を満たしているからこそ、使えているわけであり、制度の趣旨にそぐわないというのであれば、制度の設計がおかしかったということだと思います。
相続税の猶予を継続するのであれば、要件を満たす(代表取締役であることを継続する)のは当然なのではないかと思います。
100%株主であり、また、事業承継税制を用いるときに、色々と検討したうえでやったわけでしょうから。
一方で、僕自身は、この件もそうだと思いますが、税制の要件を満たすために、経営における判断等が制約されるものは、そもそも使うべきではないと考えており、事業承継税制は、よほど納税できないという状況を除いては、色々と要件があるため使うべきではないと考えていますので、改めて、この考え方は間違っていないなぁと感じたニュースでした。

ジャニーズ事務所ジュリー氏「代表取締役残留」は相続税支払い免除のためだったことについて、あなたはどう思われましたか?


親族内承継は早めの行動と準備が必要!

中小企業にとって事業承継は重要なテーマですが、その選択肢の一つとして親族内承継があります。
しかしながら、適任者の選定や教育など、成功させるためには慎重な準備と対策が必要です。
J-Net21では、事業承継を考える経営者の方々に向けて、親族内承継の方法と注意点、メリット・デメリットなどについて解説しています。

1.親族内承継とは
親族内承継は、経営者が自身の親族(子供、孫、甥、姪、兄弟など)に会社の経営を引き継ぐことです。
この方法は、日本では最も一般的な事業承継手法ですが、親族内承継には適任者の選定や教育を含む複数年にわたる準備が必要なため、現経営者が健康なうちから計画を立てることが重要です。
親族内承継は、経営者が直接的に後継者を指名できるため、経営理念や企業文化の継承が比較的スムーズに行われることが特徴です。
この形態の事業承継を実現するためには、遺言書作成や各種税金対策などを事前に考慮することが重要です。
後継者不足が問題化している現在では、親族内承継の割合も年々減少しています。
このような背景もあり、事業承継や親族内承継は、早めの準備と対応がポイントとなるでしょう。

2.親族内承継のメリット
(1)早めの準備や後継者の育成が可能
親族内承継では、経営者本人の子供や兄弟などの親族が後継者となるため、早い段階で育成や事業の引継ぎ準備を始めることができます。

(2)従業員や取引先などの理解や協力を得やすい
円滑に事業承継を進めるためには、あらかじめ従業員や取引先に後継者を周知していくことが必要です。
日本では、現経営者の子供が会社を引き継ぐケースが一般的であり、その点で社内外の関係者を納得させやすい利点があります。
周囲に明確な説明を行い、後継者が事業を引き継ぐことについての納得を得ることで、得意先や金融機関との取引を円滑に引き継ぐことが可能となります。

(3)相続・贈与などの節税対策がしやすい
親族内承継では、経営者が生前に相続や贈与の計画を立てることができます。
これにより、相続税や贈与税の節税対策をすることができ、事業の継続性や財務面においてメリットを享受できます。

3.親族内承継のデメリット
(1)適切な後継者の不在
親族内承継では、経営者の子供や兄弟など親族が後継者となりますが、必ずしも経営能力や意欲があるとは限りません。
適任者が不在の場合、事業の継続と成長が困難になる可能性があります。

(2)後継者以外の親族とのトラブル
親族内承継では、後継者以外の親族との関係が事業に影響を及ぼす可能性があります。
相続や遺産の分配に関するトラブルが生じる場合もあり、経営者としての判断や意思決定に制約が生じることがあります。

(3)現経営者の借入に対する個人保証の問題
親族内承継では、現経営者が過去に行った借入に対する個人保証や、契約などの責任も後継者に引き継がれます。
これにより、後継者に負担がかかり、事業の安定性に悪影響を与えることがあります。
また、個人保証を引継ぐには、金融機関の承諾が必要ですが、変更が認められないケースもあります。

4.親族内承継の方法
親族内承継の流れは下記のような手順で進められます。
事業の継続や相続税の負担軽減に向けて、遺言書作成や税金対策などをしっかりと考慮し、専門家などの適切な指導を受けながら進めることが重要です。
(1)親族内から後継者を選んで育成する
事業を継続的に成功させるためには、後継者の選定と育成が重要です。
適切な資質を備えた一族のメンバーを選び、新しい役割を担うための適切なスキルと知識を身につけさせることが重要です。
後継者は、必要なトレーニングや能力開発を行えるよう、早い段階で選定することが望ましいと言えるでしょう。
また、後継者をどのように親族や従業員、その他の利害関係者に周知するかを検討することも重要です。

(2)株式など会社資産の承継準備をする
親族内承継を行うためには、自社株などの資産を移転する必要があります。
事業承継の早い段階で、所有割合などを明確にしておくことが望ましいでしょう。
そうすることで、将来の意思決定や経営管理が明確になり、トラブル(争族)の予防にもなります。
さらに、会社資産の譲渡による法的・税務的問題から、後継者を保護するための対策を講じることが可能になります。

(3)従業員や取引先に事業承継を周知する
従業員・株主・取引先に、事業承継について、周知するタイミングや方法も重要です。
事業承継のプロセスを早期に開示することで、利害関係者は経営者の交代に対応するために必要な調整を行うことができます。
また、懸念事項があればそれに対処し、円滑な移行のために必要な措置を講じることができます。

(4)実際の株式や会社資産の承継手続きを行う(相続・生前贈与・遺言など)
親族内承継の場合、慎重に遺言などを作成する必要があります。
遺言によって、重要な会社資産や株式を後継者に譲ることができます。
また、生前贈与によって株式などを引き継ぐ場合には、節税対策を検討する必要があります。

(5)借入などの個人保証を後継者に変更する
現経営者が会社の借入の個人保証や、個人資産を担保に入れている場合には、金融機関と交渉をして保証や担保を外し、後継者に替える必要があります。
変更がスムーズに行えるように、事前に交渉しておくことが重要です。

5.親族内承継の注意点
後継者不足が社会問題化している現在においては、事業承継を希望する場合には、早い段階から計画的に対策を講じることが重要です。
特に親族内承継は、親族だからこそ注意すべき点を考慮して行うことが求められます。
(1)後継者を早めに決めて対策を講じる
親族内承継を成功させるポイントは、後継者を早期に決定し、その育成に必要な対策を講じることです。
誰が経営者に最も適しているかは、意欲・野心・経営センスといった、個人の資質や適性に基づいて判断すべきでしょう。
事業承継の準備や、後継者選びが原因で、事業が衰退するケースも多いので、十分に注意しましょう。

(2)公正証書遺言を作成する
事業を親族に引き継ぐことを決めたら、遺言書の作成を行う必要がある。遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」がありますが、事業承継においては、公的な証明性の高い公正証書遺言を作成することが重要です。
公正証書遺言があれば、不測の事態に備え、現経営者の希望に沿った承継手続きを行うことができます。
まだお持ちでない場合は、司法書士などの専門家に相談して遺言書を作成することをおすすめします。
さらに、一度作れば良いというわけではなく、事業や状況やお気持ちに変化があった場合は、その都度遺言書を更新することが重要です。

(3)相続税や贈与税などを考慮して承継方法を決める
相続時には相続税が、贈与時には贈与税が課されることがあります。
例えば、株式の相続の場合、経営者に退職金を支払うなどして株式の評価額を抑え、生前に贈与することで節税できるケースもあります。

(4)有利な税制や補助金の最新情報を入手しておく
事業譲渡に伴う節税のためには、状況に応じて有利な税制や補助金などの、最新情報を事前に入手することが重要です。
現在は、事業譲渡に関する特例措置などが用意されており、関連する税金を最小限に抑えることが可能になります。
また、事業承継や後継者育成のための補助金もあるので、最新情報の把握は非常に重要です。

以前から何度も言っていますが、やはり、事業承継に重要なことは、早めに検討するということだと思います。
まだ早いと思わずに、早めにスタートして、事業承継計画を立てましょう。

親族内承継は早めの行動と準備が必要であることについて、あなたはどう思われましたか?


意欲低下が原因で中小企業の「事業承継したい」が過去最低に!

ニューススイッチによると、大同生命保険が発表した中小企業を対象にしたアンケートでは、「事業承継したい」と答えた企業の割合は53%と、2019年に同様の質問を始めて以来、最低となりました。

大同生命は、専門家の見方として「コロナ禍やインフレといった急激な経営環境の変化に中小企業が対応しきれていない」ことが原因の一つとしています。

調査によると、事業承継したいと答えた企業の割合2022年比で3ポイント低下し2019年比では20ポイント減と大幅に下がりました。
事業承継したいと答えなかった理由としては、廃業予定や後継者不在を挙げています。

企業からは「コロナ禍により業界構造が変化し、外注先の廃業が進んだ。今後が心配」(卸売業・南関東)との声があがっています。

事業承継したいと答えた企業に課題を尋ねたところ、「後継者の育成」が最多の48%となり、「後継者の選定・確保」が28%で続きました。

また、事業承継先を検討する際の相談相手を聞いたところ、公認会計士・税理士が61%、自社で検討が26%、銀行が20%の順番でした。

調査は2023年6月1日から28日に大同生命と契約のある企業を中心に大同生命営業職員が聞き取りで実施し、8,000社超の企業から回答を得ました。

災害やコロナなど何が起こるか分からず、経営環境の変化が激しい時代なので、設備投資や事業承継の意欲が低下するのは、当然のことのように思います。
サラリーマンをしているお子さんがいても、将来が見えない会社だと引き継ごうとは思わないでしょうね。
明るい未来が見えるようにならないと、国も数年前から事業承継を進めようとしていますが、なかなか厳しいでしょうね。

意欲低下が原因で中小企業の「事業承継したい」が過去最低になっていることについて、あなたはどう思われましたか?


羽二重餅の老舗が6代目への承継を機に和カフェをオープン!

朝日新聞によると、福井の銘菓「羽二重餅」の老舗(福井県福井市)が、6代目に事業を継承するのを機に和カフェを始めました。
来春の北陸新幹線福井開業を見据えた取り組みで、老舗の強みを生かして打ち出しました。

福井駅西口から約800メートル。
足羽川の近くで、かつて繊維業者が軒を連ねた地域の一角に「羽二重餅総本舗松岡軒」はあります。

1897年に高級絹織物「羽二重」を扱う織物屋として創業。
ただし、繊維業は浮き沈みが激しいことから、2代目が東京で菓子修業を積み、絹織物の白さと、なめらかな肌触りを表現し、1905年から販売したのが羽二重餅です。

現在は5代目の淡島律子さん(74)が切り盛りしています。
2014年に亡くなった夫の洋さんから引き継ぎましたが、事業承継は懸案でした。

後継ぎに期待されたのが長女の智子さん(49)でした。
大学進学を機に福井を離れ、東京都内で働いていました。
しかしながら、経営に関わったことはありません。
「自分の代で店が途絶えるのか」と考えても、継ぐのは重圧だと感じ、背を向けた状況が続いていました。

転機はコロナ禍です。
仕事量が減り、自分自身と向き合う時間が増えたのです。
娘は2人とも成人し、仕事も一段落していました。

「今、決断すれば10~15年は働ける」と考え、2022年春、Uターンしました。
国の委託を受けた「福井県事業承継・引継ぎ支援センター」に相談し、第三者の視点も入れて会社を分析しました。

強みは、代々受け継がれた材料の配合で築いた商品力です。
味にこだわり、粘りや保存を高める添加物を一切使わなかったことで、安心安全という評価も得ました。

一方で、老舗企業であっても人手不足は深刻です。
新たな事業展開を打ち出しにくい状況にありました。

たどり着いたのが、和カフェでした。
羽二重餅を取り入れたメニューを通じて、福井県内外の人に改めて魅力を感じてもらうのが狙いで、強みを伸ばせると考えました。

実は、本店で夏場を中心に販売するかき氷はカンナで削ったもので、明治期から続くロングセラー商品です。
この取り組みをリニューアルし、通年でカフェを構えることにしたのです。

目玉の抹茶パフェなどと一緒に提供する日本茶は、福井県内の専門店で試飲を繰り返し、合うものを厳選しました。
融資に関わった日本政策金融公庫福井支店の担当者は「和菓子の販売との相乗効果も期待できる」と話しています。

中小企業庁の2023年版「中小企業白書」によると、事業を承継した企業は、実施しない企業と比べて、売上高成長率が高い傾向です。
中小企業庁は、承継を機に事業を再構築し、企業の付加価値を高めたとみています。

4月21日に新装開店しましたが、智子さんは「福井を盛り上げる取り組みにつなげていきたい」と意気込んでいます。

2023年版中小企業白書によると、後継者の不在率は2017年の66.5%をピークに減少傾向にあり、2022年には57.2%となりました。
2011年以降の調査で初めて60%を下回りました。

一方、事業承継が円滑に進められなかったことが原因の倒産が増加しています。
帝国データバンクによると、そのことが原因の2022年度の倒産件数は487件となっています。
このうち半数近い48%は「代表者の病気・死亡」が理由でした。

不測の事態で会社の事業が途絶えてしまうことを意味し、「全体が減少傾向でも楽観できない」と中小企業基盤整備機構の担当者は指摘しています。

福井商工会議所が運営する「県事業承継・引継ぎ支援センター」によると、事業承継が行われた2022年度の案件のうち約7割は、「高齢・後継者不在」が事業を譲渡する理由でした。
全国平均より厳しい状況にあると言えそうです。

やはり、親族内で承継するにしろ、親族外で承継するにしろ、自社の分析(SWOT分析など)を行い、引き継いでもらえるような将来性のある状態に磨き上げておくことが重要だなぁと思った1件でした。

羽二重餅の老舗が6代目への承継を機に和カフェをオープンしたことについて、あなたはどう思われましたか?


「柿の種」の元祖である浪花屋が事業承継で再スタート!

新潟テレビ21によると、新潟ならではの米菓「柿の種」を巡る事業承継ですが、柿の種の元祖とも言われる長岡市の浪花屋製菓が新たな体制で再スタートしました。

創業100周年という節目に事業承継した浪花屋製菓ですが、引受先は同じく米菓を手がける新潟県小千谷市の阿部幸製菓です。

■浪花屋製菓 兼 阿部幸製菓専務 阿部幸明社長
「浪花屋製菓は元祖柿の種っていうブランドと歴史があってお土産の方での販売の強みがある。阿部幸製菓は業務用柿の種という販路と強みがある、お互いの強みを活かしてグループ一体になってともに成長し合う」

新型コロナ禍によるお土産の需要低迷と後継者問題が重なった浪花屋製菓ですが、歴史を絶やさぬため事業承継を選びました。

■浪花屋製菓 兼 阿部幸製菓専務 阿部幸明社長
「実は中越地震の時に、阿部幸製菓は震源地だったので被災した。商品供給が滞った時に浪花屋製菓から助けてもらった経緯がある」

阿部幸製菓が設立した新たな会社が引き継ぐ形で「浪花屋製菓」の名前・商品も、約70人の従業員の雇用も守られました。

■浪花屋製菓 螻健児 製造部長
「今まで以上にお客さんに喜んでもらえるネットワークが広がることになるので日本を超えて世界にもサービスを届けられるように広げていきたい」

今後はお互いの強みを生かして海外も含めた販路開拓商品開発を進めます。

■浪花屋製菓 兼 阿部幸製菓専務 阿部幸明社長
「柿の種や米菓の世界・海外に向けての発信。両者の強みを活かしてともに成長していきながら次の100年につなげていくことを目指していきたい」

こういう老舗は守っていきたいですね。
それなりの規模の会社となると、営業マンや職人などではなく、経営者が必要になってきますが、親族内にも会社内にもそういった人はなかなかいないでしょうから、外部に求めるのは至極当然のことのように思います。
今後、こういった流れはどんどん進んでいくのではないかと思います。

「柿の種」の元祖である浪花屋が事業承継で再スタートしたことについて、あなたはどう思われましたか?


徳島県の中小事業者の11%が事業承継せず「清算・廃業」!

2023年06月02日(金)

朝日新聞によると、後継者の確保に悩む企業などを支える徳島県事業承継・引継ぎ支援センターが、徳島県内の中小・小規模事業者に事業承継の進め方をアンケートしたところ、経営資源を引き継がずに「清算・廃業予定」と回答した社が11%を占めたようです。
センターは、相談会を開くなど、廃業をなくす取り組みに力を入れたいとしています。

センターは中小企業庁・四国経済産業局の委託を受けた公的相談窓口で、徳島市南末広町5丁目の徳島経済産業会館内にあります。
2023年2~3月に代表者・経営者が55歳以上の徳島県内3,076社を対象に調査をし、809社から回答を得ました。
結果の公表は、2023年4月24日付けです。

事業承継の課題(複数回答)を尋ねると、「後継者育成」が36.54%、「後継者未定」が24.32%、「負債」が15.05%でした。

現在考えていたり、決めたりしている承継方法は「親族承継」52.20%、「役員・従業員承継」12.05%、「第三者M&A(合併・買収)」7.65%の順でした。
一方で、「清算・廃業予定」も11.67%ありました。

清算・廃業を選んだ事業者に「引き継いでくれる会社・人材が見つかれば譲渡を検討するか」と聞くと、「するつもりはない」30.93%、「わからない」25.77%、「相手の会社や経営者により検討」15.46%といった回答でした。

センターの担当者は、「譲渡したくないという回答が予想より多かった。廃業は地域経済や雇用への影響が大きいため、セミナーや相談会を通じて事業者の意識を変えていきたい」と話している。

国が事業承継に取り組みだして、結構経ちますが、まだまだ経営者の方々には重要性が伝わっていないということしょうね。
こういったアンケートも結構やっていると思いますが、フォローができていないんでしょうね。
徳島県だけの話ではなく、我が香川県でも同じような状況かと推測されますが、やはり、事業承継するとなると、後継者が引き継ぎたいと思うような財務内容、将来性などが必要になると思いますので、そのあたりが見いだせず、自分の代で、終わりにしようと考える経営者の方々が一定数いらっしゃるのは仕方ないと思いますが、従業員の方の雇用もできれば守っていきたいでしょうし、経営者ご本人が買ってくれるところはないだろうと思っていたとしても、価値を見いだし買ってくれるところもあるかもしれませんので、少しでも、清算・廃業しようと考えているところを減らすことのお手伝いが何かできないかなぁと感じます。

徳島県の中小事業者の11%が事業承継せず「清算・廃業」を考えていることについて、どう思われましたか?


筑邦銀行が北九州市のふく太郎本部の株式を取得!

㈱筑邦銀行(久留米市諏訪野町、佐藤清一郎頭取)は、先日、事業承継ファンドの㈱事業承継機構(東京都千代田区、吉川明社長)との合弁会社を通じて、ふぐ加工食品製造加工の㈲ふく太郎本部(北九州市門司区白野江1丁目)の株式を取得したようです。

両社では後継者不在など事業承継に課題を抱える中小企業にファンド「ちくぎん事業承継投資事業有限責任組合」(ファンド総額10億100万円)を通じて投資して、事業継続や雇用の維持を目指す取り組みを2020年11月から実施しました。

今回が2号案件となります。
新社長には千葉忍氏が就き、創業者で前社長の古川順一氏は相談役に就きました。

合弁会社の㈱ちくぎん事業永久承継では同社の株式を永年保有し、事業継続を支援します。
同行では「中小企業廃業の急増により、2025年頃までに約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性がある『2025年問題』が問題視されています。事業承継問題を積極的に解決し、『必要な企業は地域に残す』『地域の雇用を守る』ことで、地域とともに成長・発展していくことを目指す」と話しています。

地域のためにも、地域の名店などを残していくことはすごく重要なことだと思います。
ただし、ファンドが永年保有するのはどうなのかなぁという気はします。
どこかのタイミングで、経営陣がバイアウトして、自由に経営していくほうが企業の将来的な成長につながるのではないかと思いますね。

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日本企業の約半数が「同族企業」 でその事業承継に潜むリスクと失敗パターン!

日刊ゲンダイによると、企業の後継者不足が深刻です。
近年は、大企業にかかわらず中小企業の事業承継も増え、家族間のトラブルも起きています。
「いきなり事業承継」(講談社)の著者で、税理士法人小形会計事務所所長の小形剛央氏は、公認会計士・税理士として中小企業の税務顧問や事業承継のコンサルティングを行っていますが、実際、後継者の能力やマインドが不十分なまま事業承継した結果、短期間で従業員や取引先が離れてしまい、数年で廃業に追い込まれたという会社をたくさん見てきたそうです。
失敗パターンとして多いのが「同族経営」のケースです。

日本の上場企業は、ファミリービジネス(同族経営)が53%、単独経営が10%、一般企業が37%という構成で成り立っています。たしかにお子さんである後継者は、小さいときから経営者としての親の背中を見て育ってきています。
そのため、経営の細かい内実はわからないにせよ、従業員や取引先を大切にする気持ちや、経営者としての責任感などを体感として学び、持ち合わせているものです。

ところが中小企業や零細企業の場合、「家族だから」という盲目的な信頼によって、経営能力がない我が子を後継者に据え、失敗してしまう例が非常に多いのです。

創業から50年近く経つ産廃関連会社(売上約5億円)のケースです。
ニッチな分野ではありますが、クライアントや従業員からも信頼されており、着実な経営を続けていました。
仕事一筋だった先代経営者は、「これからは家族のために何かしてあげたい」という気持ちを強く抱き、自身が80歳に近づいたタイミングで娘(43歳)に会社を継がせることにしました。
しかし、娘にはリーダーシップがなく、目先の利益を優先して行動するタイプで、承継後まもなく経営に致命的な損害を与え、1年も経たずに事業は廃止となりました。
その後、先代経営者も心労から持病が悪化し、お亡くなりになったのです。

また、建設業(リフォーム=売上約3億円)の65歳の先代経営者は、息子(35歳)を後継者にすることを決めていたものの、「年齢的には、まだまだ現役としていけるだろう」と考えていました。
しかし、引き継ぐ前に先代経営者が急死したことで事態は一変します。
後継者である息子も、引き継ぐのはまだまだ先のことと考えていて、心の準備もできていなかったのです。
もちろん後継者に経営の知識や経験はほとんどなく、それどころか、「経営者になったら経費を使いたい放題だ」くらいの考えしか持っておらず、非常に危険な状態でした。
結局、バタバタと承継したものの、その後すぐに従業員の退職が相次ぎ、取引先は離れていき……と、わずか1年足らずで廃業寸前まで追い込まれてしまったのです。
何の準備を何もしないまま「親族」という理由だけで後継者を選ぶと、ほぼ確実に会社が立ち行かなくなってしまいます。先代経営者は、自分の子どものことだとフィルターがかかって正しい判断を下しにくくなるため、後継者候補を選定する段階で第三者の意見を聞くことが大切です。
また、経営者には「元気だからこそ、今のうちに準備を進めよう」という意識が必要です。
高齢になるほど、突然死のリスクは高まります。
急死すると同時に資金繰りがショートするという事例も、決して少なくありません。
突然死でなくとも、ケガや病気で入院せざるを得なくなったり、それまでのように働けなくなったりという恐れもあります。

結局、事業承継は、計画(事業承継計画)を作って、できるだけ早く取り組みましょうということだと思います。
お子様に引き継ぐことがベストだと限りませんし、お子様が引き継がないかもしれませんし、一般的に、事業承継は5年から10年かかると言われていますので、年齢的な問題や突然死のリスクを考えると、早く取り掛かることに越したことはありません。
何を誰に相談すればいいのかわからないかもしれませんが、事業承継の相談を行っている士業、金融機関、公的機関などはたくさんありますので、相談しやすいところに相談してみればいかがでしょうか?

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「休廃業」企業の7割が十分な資産があった!

読売新聞によると、2022年に休廃業や解散した山梨県内の企業のうち、十分な資産があるのにもかかわらず休廃業や解散した企業が7割近くに上ることが、帝国データバンクの調査で分かったようです。
事業承継や事業改革の課題を克服する見通しが立たない中でコロナ禍となり、経営へのダメージが広がる前に休廃業などを決断したとみられます。

帝国データバンク甲府支店によると、2022年に休廃業や解散した山梨県内企業は340件です。
このうち資産が負債を上回る「資産超過型」の割合が前年比7.2ポイント増の67.9%で、2016年に現在の手法で調査を始めて以来最高でした。
コロナ禍となった2020年から急激に増えており、担当者は「コロナ禍が経営に影響し、資産がなくなる前に事業をやめることにした」と分析しています。

休廃業や解散した企業の代表者の年齢は、前年並みの平均71.4歳です。
年代別では70代が35.4%で最も多く、80代以上が28%、60代が21.2%で続きました。
80代以上は前年比7.5ポイント増で、事業承継がうまくいかないまま高齢化が進んでいるとみられます。
担当者は「(高齢の経営者が)判断に迷った末に、休廃業・解散を余儀なくされている可能性もある」と話しています。

こうした状況に危機感を持った山梨県や商工団体は、事業承継のサポートに取り組んでいます。

山梨県は2018年7月、商工団体や金融機関などと「山梨県事業承継ネットワーク会議」を設立し、2021年には、やまなし産業支援機構に「山梨県事業承継・引継ぎ支援センター」を設置しました。

同会議が、事業承継を希望する事業者を掘り起こし、センターが金融機関や、企業の合併・買収(M&A)を専門に行う業者を紹介するなどしています。
2021年度に事業承継が成功した件数は45件で、目標(39件)を上回りました。
同会議への相談も3,250件で、目標(1,547件)の2倍以上となりました。

また、補助金も用意し、企業価値の簡易算定や事業を引き継ぐマニュアルの作成、M&Aにかかる経費などの3分の2(上限50万円)を助成しています。

山梨県商工会連合会は会員事業者へのアンケートで事業承継のニーズを把握し、中小企業診断士や税理士といった専門家を派遣するなどしています。

山梨県産業振興課は「すばらしい技術を引き継いでいくためにも、事業者の掘り起こしに力を入れていきたい」と話しています。

山梨県に限らず、基本的に地方は同じような状況だと思いますが、まだまだ、会議やセンターの認知度はそれほど高くないのではないでしょうか?
国も力を入れていることは間違いないと思いますが、普段事業者と接している我々会計事務所や金融機関や商工会議所・商工会などが、もっともっと頑張らないといけないですね。

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2022年6月で閉店した福岡県柳川市の名物回転焼きのお店の味が事業承継で復活!

読売新聞によると、2022年6月末で閉店した福岡県柳川市辻町の「まよい焼き でんちゃん」の回転焼きが、同市坂本町にオープンしたベーカリーカフェに引き継がれたそうです。
市民のソウルフードとして親しまれ、惜しまれながら30余年の歴史に幕を下ろしたでんちゃんの元女将おかみである高崎貴美代さん(79)は「良い事業承継先が見つかり、うれしい」と 安堵しているようです。

事業を引き継いだのは、「tanabata(たなばた)」です。
同市などでコンビニを経営する会社「Newem」社長の石橋隆也さん(37)が、日吉神社そばの古民家を改装し、9月17日にオープンさせました。

石橋さんは小学生の頃にでんちゃんの常連で、「安くておいしい」まよい焼きの味を覚えていました。
体調が優れず、店を閉めることにした高崎さんが事業承継を望んでいることを知り、柳川商工会議所に相談をすると、福岡県事業承継・引継ぎ支援センターを紹介され、高崎さんと引き合わせてもらったそうです。

高崎さんは「しっかりしていて人物も良い」と、石橋さんへの承継を決断しました。
カフェの店舗前に止めたキッチンカーに回転焼きの機材が据えられると、「もう一踏ん張り」と足を運び、石橋さんらに作り方を指導しました。

店名の由来となり、選ぶのに迷うほど種類が多い具材は定番の黒あんと白あんをはじめ、チョコレート、ベーコン、ピザなど14種類もあり、一つ一つを丁寧に教えました。
10月中旬に販売を始めると多くの客が訪れ、連日100個以上を売り上げるほど人気になしました。
高崎さんは「石橋さんがもっと自信を持って作れるよう、しばらくは教え続けようと思う」と話しています。

石橋さんは「場所や人が変わっても味は変わらず、きちっと引き継ぐことを大事にしたい」と誓い、将来はキッチンカーで市外にも出向き、まよい焼きの魅力を広げる夢も描いているそうです。

このようなケースが、本当の事業承継なんでしょうね。
我がうどん県高松市でも、今年、昔、高松の監査法人で働いていたころに時々行っていたビーフレストランウエノやグリル山が閉店になりましたが、個人的には事業承継で誰かが引き継ぐことができなかったのだろうかと残念な気持ちでいっぱいです。
こういった名店を、てんちゃんのように、事業承継で残していけるお手伝いをどうにかしてやっていけないだろうかと思う今日この頃です。

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若手後継者が新市場を開く[業を継ぐ]ベンチャー型事業承継に注目!

読売新聞によると、家族や親族らが営む会社の若手後継者らが、本業を守りつつ新事業などに挑むケースが目立ち始めているようです。

「ベンチャー型事業承継」と呼ばれる取り組みで、事業の継続と、新市場の開拓などによる会社の成長を両立させるのが狙いのようです。

「みそ汁に入れたり、ポップコーンにかけたりと、使い方は様々です」と、野菜加工を手がける「村ネットワーク」(大分県豊後大野市)の応和春香常務(37)は、自身が開発した野菜パウダー「ベジマリ」を手に笑顔を見せています。

応和さんが家業を継ぐため同社に入ったのは2016年です。

大分県大分市で臨床心理士として働いていましたが、2005年に同社を設立した父の小原秀樹社長(66)から「後継者がいない」と聞き、思い切って転身しました。

同社は、地元の規格外野菜をカットして学校給食用などに販売する事業が主力ですが、生野菜のため賞味期限が短く、販路も限られていました。

応和さんは、野菜をパウダーにすれば用途と販路が広がることに着目し、ニンジンやカボチャなどを原料に、栄養素を逃がさないよう低温乾燥など製造法にこだわって2019年に完成させました。

臨床心理士の経験も生かし、女性が手に取りやすいようシンプルなデザインのパッケージも考案しました。

年間4,000個が売れるヒット商品となり、日本貿易振興機構(ジェトロ)の商談会を機にフランスと豪州にも取引が広がりました。

応和さんは「新事業を通じ、会社を継ぐ自負が生まれてきた。父が大事にしてきた会社を残したい」と話し、小原社長も「私では生み出せなかったであろう商品を開発してくれた」と目を細めています。

増田桐箱店(福岡県古賀市)の3代目である藤井博文社長(35)も、アイデアで市場を切り開いた後継者の一人です。

社長に就いた約10年前はリーマン・ショックの影響で高級品の需要が伸びず、工芸品を入れる桐箱の卸販売も低迷していました。

「自分と同年代の消費者が気軽に買える商品が作れないか」と、知り合いのデザイナーの協力を得て2015年頃に米びつやブックエンド(本立て)などを開発してインターネットで販売したところ人気となり、小売り事業は売上高の2割を占めるまで成長しました。

藤井社長は「職人や社員の意識向上にもつながった」と手応えを語っています。

中小企業の社長が後継者を決めるときの選択肢として最も多いのは、家族や親族ら「同族承継」とされています。

東京商工リサーチが2021年、全国の中小企業約17万社を対象に調べたところ、後継者が「いる」とした約72,000社のうち67%は経営者の息子や娘らが後継ぎで、従業員を昇格させる「内部昇進」の17%を大きく上回りました。

経営を受け継いだ若手による「起業」が相次ぐのは、情報技術(IT)の進化などで経営を巡る環境が一変し、生き残りに向けて新たな対応が必要となっているためです。

九州・山口でホームセンター「グッデイ」を展開する嘉穂無線ホールディングス(福岡県福岡市)の柳瀬隆志社長(46)が2016年の就任後に力を入れたのは、デジタル技術の活用です。

店舗などで得られるデータを分析して営業や在庫管理などに生かし、売上高を就任前の1.2倍に伸ばしました。

2017年には企業のデータ分析を支援する新会社も設立し、事業領域を広げています。

ただし、家業を継いだ経営者が始めた事業が軌道に乗るかどうかは未知数で、失敗すれば大きな損失につながる恐れもあります。

新事業に傾注しすぎると本業とのバランスが崩れる可能性もあり、従業員の理解を得られるかが課題となります。

事業承継に詳しい早大ビジネススクールの入山章栄教授は「中小企業の活性化は経済成長に不可欠で、ベンチャー型事業承継は有効な手段だ。後継者が30~40歳代の頃から任せるなど、経営トップが思い切った世代交代を図る必要がある。後継者は、産業構造や市場の変化に応じた事業に取り組むことが求められる」と指摘しています。

ベンチャー型事業承継を巡っては、地域企業の廃業が減って経済活性化につながるとみて、自治体などの支援も充実してきています。

大分県は2022年9月、家業を継ぐ40歳以下の後継者ら10人に対し、デザインや市場分析などの専門家が手助けする事業を始めました。

福岡県も、新商品の開発などを目指す後継者らの相談に応じる制度を設けており、今年度は選ばれた8社をサポートしている。

若手後継者を支える全国組織もあります。

企業経営者らでつくる一般社団法人「ベンチャー型事業承継」(東京)は、新事業の開発支援や、投資家との仲介などを行っています。

九州地区担当の山岸勇太・事業戦略マネージャーは「企業が存続するためにも、若い世代の後継者によるイノベーション(革新)が必要だ」と話しています。

後継者が会社を引き継いだときに悩むのが、既存事業の安定・成長と、新規事業だとよく言われます。

どちらかだけというわけではなく、時代の変化を読み取り、バランスを取ることが必要かと思います。

新規事業は、もちろん、必ずしもうまく行くとは限りませんし、結果が出るまでに長期間を要するものもあります。

場合によっては、会社の存亡危機に陥るかもしれません。

しかしながら、商売の面白さは新しいことをすることではないかと思っています。

周りのサポートを受けながら、新規事業を軌道を乗せ、地域活性化につながればいいですね。

若手後継者が新市場を開く[業を継ぐ]ベンチャー型事業承継に注目が集まっていることについて、どう思われましたか?


ソフトバンクGは3人いた副社長がゼロに!

読売新聞によると、ソフトバンクグループは、先日、ラジーブ・ミスラ氏が副社長を辞任したと発表しました。
ソフトバンクグループでは2018年に3人の副社長が就任し、一時は孫正義会長兼社長の後継者候補と目されていました。
すでに2人が退社しており、ミスラ氏の辞任で副社長はゼロとなりました。

ミスラ氏は、欧州の大手銀行などを経て2014年に入社し、2017年にソフトバンクグループ傘下の新興企業向け投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」の設立を主導しました。
副社長辞任後も、SVFの運営責任者は続けるようです。

ソフトバンクグループの副社長では、ゴールドマン・サックス証券副会長やゆうちょ銀行副社長を歴任した佐護勝紀氏が、2021年辞任しました。

2022年1月には、海外事業を統括するマルセロ・クラウレ氏も退社しました。

ソフトバンクグループは2022年4~6月期連結決算(国際会計基準)で、投資事業の低迷により最終利益が3兆1,627億円の赤字に陥るなど、厳しい経営環境が続いています。

ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井さんや日本電産の永守さんなどもそうですが、 日本を代表する優秀な経営者で、会社をすごく大きくされましたが、後継者が未だにいないです。
経営者の重要な仕事の一つは、後継者を見つけたり、育てたりすることだと思いますので、その点については、御三方ともにできていないということです。
もちろん、ご本人が非常に優秀なので、ご本人が求めるレベルに達する方がいまだにいないということだと思いますが、そういうレベルの方は世の中にはそうはいないということを認識するというのも重要なのではないかと思います。

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2021年度は後継者難倒産が深刻化!

日本経済新聞によると、後継者がいないために倒産や廃業をする企業が東京都内で増えています。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行政の資金繰り支援策で企業倒産件数は低水準に抑えられていますが、後継者難による倒産は2021年度に過去最多を更新しました。
経営者の高齢化が進む中、金融機関などは事業承継や事業再生の支援強化を急いでいます。

「早く後継者を決めなければ……」と、東京都内で内装業を経営する80代女性は危機感を口にしています。
社長の夫は90歳を超えました。
後継者候補として迎え入れた社員との調整もうまく進まず、脳裏に”廃業”の2文字がよぎているようです。
女性は「取引先との人間関係が重要な仕事。経営者として任せられるようになるには何年もかかる」と事業承継の難しさに直面しています。

東京商工リサーチの調査では、2021年度の後継者難による東京都内の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は86件で、中小・零細企業が中心で、統計を取り始めた2013年度に比べ倍増しました。
特に2021年度は前年比で40.9%増え、増加ペースが大幅に加速しました。

東京商工リサーチによると、新規出店の減少に伴い需要が縮小した建築内装関連などが目立つそうです。
要因別では、代表者の死亡と体調不良が約8割を占めました。
東京商工リサーチは「後継者の育成や事業承継が後手に回っていたところに経営の中核を失い、事業継続を断念するケースが大半」と指摘しています。

経営者の高齢化は深刻さが増しています。
中小企業白書によると、最も多い経営者年齢層は2000年は50~54歳だったのに対し、2015年は65~69歳となりました。
2020年も70歳以上の経営者の割合は高まりました。
廃業する企業数も高水準で推移していて、東京都内の金融機関の幹部は「経済の規模が拡大し続けてきた東京では、事業承継を考えていなかった経営者が地方よりも多い」と明かしています。

中小企業が地域から減っていく厳しい現実を受け、金融機関などはより実効性の高い支援を展開する必要性に迫られています。
東京都墨田区では、東京東信用金庫と区内に拠点を置く地元の3信用組合が連携協定を2月に締結し、利害が対立しがちな組織の枠を超え、企業情報を共有しながら事業承継を支援する体制を整えました。

全国信用金庫協会によると、こうした金融機関主導の取り組みは全国的に珍しいそうです。
担当者は「業態をまたぎ、顧客の方を向いて足並みをそろえて取り組むのはいいこと。今後広がっていくのでは」と話しています。

長引くコロナ禍で都内の事業所は疲弊しています。
行政の資金繰り支援で倒産件数は抑制されているものの、ウクライナ情勢の悪化もあって経営環境は一層厳しくなっています。
増大する債務に苦しむ中小の支援を強化するため、経済産業省は2022年4月1日、中小企業活性化協議会を設置し、収益力改善や事業再生などの一元的なサポートに力を入れます。

事業再生支援が専門の宮原一東弁護士は、コロナ禍で受けた融資の返済期限が多くの企業で迫ってきていることに関し「(2回目の)『おかわり』の融資はハードルが高い。資金繰りがつかず、やむを得ず倒産する会社が増える可能性がある」と見通しています。
その上で、中小企業活性化協議会について「再生支援のニーズは多い。マンパワーを拡充するなどして、事業再生の案件を増やしていくことが望まれる」と指摘しています。

長引くコロナで廃業を決断する経営者も多いのでしょうが、地域経済や雇用などをまもっていくためにも、事業承継に早めに取り組んでほしいですね。
事業承継も経営者の重要な仕事の一つですから。
毎回、このような記事を見るたびに思いますが、国や金融機関や会計事務所がなかなか事業承継に取り組んでこなかったことが原因であり、僕自身も公認会計士・税理士として、事業承継のお手伝いをして、1社でも倒産や廃業を防ぎたいと思っています。

2021年度は後継者難倒産が深刻化していることについて、どう思われましたか?

北信越の事業承継は新潟の酒蔵を中心に「後継は非同族」で広がる!

日本経済新聞によると、北信越5県の2021年の後継者不在率を2011年と比べたところ、新潟・福井・長野が改善(低下)した一方、石川・富山は悪化(上昇)したようです。
4年連続で不在率が改善した新潟では、日本酒業界を中心に後継者難から非同族への承継が広がっています。
また、各地域では事業承継を支援する組織を設立し、技術や伝統を次代につなげて、地域再生に生かそうとしています。

日本三大夜桜の地としても知られる高田城址公園(新潟県上越市)からも近い地にある1804年創業の老舗造り酒屋、上越酒造は、2021年秋に導入した新設備で「越後美人 初しぼり」を初出荷しました。
旧来の設備も展示用に残し、見学もできます。

「上越に酒造りを残すことができ、本当に良かった」と、飯野美徳会長は語っています。
後継者がおらず、廃業も視野に相談した関東甲信越酒税担当官から紹介をされたのが「新潟県事業承継・引継ぎ支援センター」です。
にいがた産業創造機構(NICO)内に2015年7月に設立されました。

新潟県内外から多くの譲り受け希望会社が名乗りをあげたなか、選ばれたのは公営競技の企画・運営を全国展開する日本トーター(東京都港区)でした。
日本トーターは、地方創生につながる新事業開発の一つとして日本酒業界への参入を検討していました。
新潟とは、妙高市の競輪場外車券売場「サテライト妙高」や全国で唯一、村が運営する「弥彦競輪場」などで縁があったのです。

上越酒造は2021年8月に日本トーターの子会社となりました。
新設備を導入し、機械化・省人化を推進し、温度などのデータ管理も工場に泊まる必要なくスマホで遠隔で確認できるようにしました。
新ブランド開発に加え、競技場ごとのオリジナルラベル日本酒なども検討し、シナジー効果を高める考えです。

日本のアンデルセンといわれた児童文学作家・小川未明の「赤い蝋燭(ろうそく)と人魚」ですが、そのモチーフとされる日本海に近い上越市の海岸近くにある小山酒造店の看板商品の一つだったのが「人魚の里」です。
江戸時代から続く老舗を半世紀の間、守ってきた小山伸一さんですが、後継者不在で国税局酒類業調整官に廃業を打診したところ、新潟県事業承継・引継ぎ支援センターを紹介されました。

3年程度をメドに自宅に隣接する会社名義の工場・作業場などを解体し、更地に戻したい小山さんの意向を受け、譲り受け候補先を探しました。
登録民間支援機関の大光銀行(新潟県長岡市)が伝えてきたのが、低たんぱく米を製造するバイオテックジャパン(新潟県阿賀野市)でした。
新潟県事業承継・引継ぎ支援センターと、バイオ社のアドバイザーとなった大光銀行が連携し支援しました。

バイオ社は自社の発酵技術を生かし清酒製造業への参入をめざしており、主力商品の低たんぱく米を使った酒造りなどを計画しており、清酒製造拠点は阿賀野市に移します。
まだ使える設備は移設します。
「雪解けが進んだら阿賀野に行く」と、2021年12月に事業承継の最終契約を結び、技術顧問として残る小山さんには技術の伝承という大仕事が残っています。

「やめるのが早いと言われるが、早いうちがいい」と、2022年に創業60年を迎えた自動車販売・整備の旭自動車工業(新潟市)の原山徹社長は、こう話しています。
86歳の父親が創業した同社の株式の大半を中古車販売のONE&PEACE(新潟市)に売却しました。
ONE&PEACEの販売網と、旭自動車工業が地元で培った顧客への対応力や整備技術のシナジー効果をめざします。

広い県土をもち「車社会」の新潟県のなかでも新潟市などの下越地域では「過当競争で我慢比べの状況が続いている」(原山さん)。
20社ほどの候補先があるなかから選んだのが「新潟県事業承継・引継ぎ支援センター」から紹介されたONE&PEACEでした。
原山さんは「顧客へのサービスと従業員の雇用を守り、父親が作った会社を続けるための最善の選択ができた」と語っています。

地方企業の事業承継を手がける企業も生まれています。
新潟ベンチャーキャピタル(VC、新潟市)取締役などを務める星野善宣氏は2021年5月、エスイノベーション(新潟市)を設立しました。
星野最高経営責任者(CEO)は「小規模事業者の想いやストーリーを引き継げる後継者を探していきたい」と話しています。
スタートアップや首都圏の人材との連携も仲介し、地方企業の成長を後押しします。
スノーピークの山井太会長、デジタルホールディングスの野内敦社長らも取り組みを支援します。

北陸3県で唯一、不在率が改善した福井は、歴史的に中小企業や家族経営が多く、福井商工会議所の調べでは5割近い経営者が60歳代以上です。
帝国データバンクによると、コロナ禍前の2019年の「休廃業・解散率」は全国で首位でした。
危機感は強く、福井県は2022年度当初予算案に、中小企業の経営を県外から引き継いだ社長に奨励金300万円を支給する事業を計上しました。

2022年1月31日、地元電器店のデンキ・ビート(福井市)は開業4年目の新興IT企業、PTOK(同)と事業譲渡契約を結びました。
社長が70歳を超え廃業を考えていましたが、業容拡大を狙う若手IT経営者の意向と一致しました。
福井商工会議所内に2021年4月に設置された「福井県事業承継・引き継ぎ支援センター」の仲介です。

福井県事業承継・引き継ぎ支援センターは全国に先駆け福井弁護士会と提携し、依頼料の一部を補助するなどしてM&A(合併・買収)案件に早期に県内弁護士が関与する仕組みを構築しました。
中小零細企業では弁護士を頼みづらいことも多く「法律面の安心感につながる」との声が上がるほか、弁護士側も県内ではまだ数少ないM&Aの経験を積めます。

福井県事業承継・引き継ぎ支援センターは2021年4月、第三者承継と親族承継の相談窓口を一本化する形で発足しました。
2022年1月までの相談件数はすでに前年度比6割増、第三者承継の成約率も4割増えています。
弁護士紹介のほか、民間M&A仲介会社からも出向を受け入れ、相談機能を強化します
他都道府県の同様のセンターに比べ、広報に力を入れ案件の掘り起こしを進めています。

士業とセンターがうまく連携できているところは、事業承継がうまく進んでいるみたいですね。
中小零細企業は、センターとかを利用して、うまく事業承継できれば、雇用も継続できますし、技術なども後世に残していくことができますので、こういった取り組みが、全国的に広がると良いなぁと思います。
今なお社長の高齢化が進んでいるようであり、早く、事業承継を進めていかないと将来の日本経済に大きな影響が出るのではないかと思っています。

北信越の事業承継は新潟の酒蔵を中心に「後継は非同族」で広がっていることについて、どう思われましたか?


社長の平均年齢は60.3歳と「社長の高齢化」に歯止めがかからず!

帝国データバンクによると、「社長の高齢化」に歯止めがかからないようです。
帝国データバンクの調査では、2021年の平均社長年齢は60.3歳(前年比+0.2歳)となり過去最高を更新しました。
調査を開始した1990年以降右肩上がりの状況が続いています。
事業承継や世代交代などが進んでいない現状が表れており、後継者の選定・育成など事業承継が課題として一段と鮮明になっています。

内閣府の発表した『令和3年版高齢社会白書』によると「日本の高齢化率は世界で最も高い」とされています。
また、2022年以降は団塊の世代が後期高齢者になり、事業承継の課題が一段と深刻になるといわれる「2025年問題」まで残り3年となるなど、高齢化の問題は日本社会に重くのしかかり今後さまざまな影響が懸念されています。
特に企業においても代表者の平均年齢は年々上昇を続け、2020年には調査開始以来初の60歳超となりましたが、2021年はさらに社長の高齢化が進んだ格好となりました。

2021年の社長の平均年齢は60.3歳(前年比+0.2歳)と、調査を開始した1990年以降右肩上がりの状況が続き、31年連続で過去最高を更新しました。
年代別の割合をみると、「50代」が構成比27.6%を占め最多、「60代」が同26.9%、「70代」が同20.2%で続いています。
また、交代企業の平均年齢は交代前の68.6歳に対して交代後は52.1歳となり、交代による若返りは平均16.5歳となりました。

社長の高齢化が進むと、年齢を理由に引退を迎える社長が増えると予想されますが、企業がこれまで培ってきた事業や貴重な経営資源を次世代の社長(後継者)へ引き継いでいくことは重要です。
そこで、社長年齢別に後継者の有無について確認すると、「60代」では約半数、「70代」は約4割、「80代以上」は約3割で後継者が不在となっており、社長年齢の高い企業においても、後継者が不在の企業が多く存在することが分かります。

2021年の社長年齢の平均は昨年比で「50代」と「80代以上」が増加しました。
「70代」の増加幅は昨年までと比べると落ち着いたものの、引き続き「70代」と「80代以上」を含めた70歳以上の代表が全体の25%近くを占める高齢化の傾向が続いています。

昨今のコロナ禍以降、事業環境が急激に変化するなか、依然6割を超える企業が後継者不在であるものの、4年連続で不在率は低下し過去10年で最も低くなりました。
後継者問題に対する社長の意識に変化がみられ、明るい兆しも見えてきています。

一方で、2021年の社長交代率は、3.92%と依然低水準の状態が続いています。
直近2年では改善傾向となっているものの、リーマン・ショック以降低下した交代率が元の水準に戻りきっているとはいえず、引き続き低水準を脱していない点は否めません。

帝国データバンクが実施した「事業承継に関する企業の意識調査(2021年8月)」では、「後継者への移行にかかる期間」を3年以上と回答した企業が半分以上を占めているように、事業承継には長い年月が必要となります。
また、適切な人材の選定・育成などを含めると交代は容易でなく、今後も社長交代率の短期間における大幅な上昇は見込めない可能性が高いと言えます。

社長の平均年齢を業種別にみると、「不動産業」が62.4歳で最も高く、「製造業」(61.3歳)、「卸売業」(61.1歳)、「小売業」(60.3歳)も全体の平均年齢を上回りました。
また、この4業種のうち、「不動産業」では「70代」が最多、「製造業」「卸売業」「小売業」では「60代」が最多となりました。
「サービス業」も58.8歳と上昇しました。
さらに、「運輸・通信業」は初の60歳超えとなるなど、全業種で平均年齢の上昇が続いています。
上場企業社長の平均年齢は58.5歳(前年比-0.2歳)、年代別では「60代」が構成比42.0%を占め、最多となりました。

また、平均年齢を年商規模別にみると、「1億円未満」(61.6歳)が最も高く、次いで「500億以上」(60.7歳)が続き、比較的小規模な事業者と大規模な事業者の二者で平均年齢を上回る結果となりました。

都道府県別にみると、社長年齢が最も高いのは「秋田県」の平均62.3歳(全国平均+2.0歳)です。
次いで「岩手県」が62.1歳(同+1.8歳)、「青森県」が61.9歳(同+1.6歳)でこれに続いています。
秋田県は対90年比で+8.5歳と対90年比ではトップ、青森県は2021年で対90年比+8.0歳になるなど、東北地方における平均年齢の上昇が目立ちます。
また、東北以外でも主に東日本において全国平均を上回る地域が目立ち、東京都(同59.7歳)、石川県(同59.3歳)以外は平均を上回る結果となりました。

一方、前年比減となったのは西日本の島根県(同-0.1歳)と徳島県(同-0.1歳)の2県のみと、引き続き“東高西低”のような状況が続いています。

社長年齢の上昇は、代表の培ってきた業界経験や経営手腕などを生かし、最前線で今なお活躍していることを示す一方で、事業承継や世代交代などが進んでいないことを表しています。
事業の将来的な存続に欠かせない後継者の選定と育成にかかる時間を見誤ると、不測の事態が起きた際に円滑な移行に失敗する危険性をはらんでいます。

今後は経営リスクの軽減に向けて、事業承継や後継者の選定・育成はさらなる課題になるでしょう。
世界的に事業を取り巻く環境が変化しつつある今、企業がこれまで培ってきた経営資源や企業が紡いできた長年の歴史を絶やさないためにも、内部からの昇格や外部からの招聘、あるいは近年さらに増加しつつあるM&Aなども視野に入れた様々な事業承継の形から、会社の将来を選択する必要に迫られています。

数年前から国もかなり力を入れて(税金を使って)、事業承継を進めようとしていますが、それほど効果があがっていないということなんでしょうね。
事業承継は重要ではあるものも、喫緊性はない(事業承継に取り組んでも売り上げが上がるなど目に見えるものは少なく、むしろコスト等がかかる。)ということだと思います。
しかしながら、公認会計士や税理士や金融機関などが頑張って事業承継を進めないと、日本経済の将来に関わってくるでしょう。
微力ではありますが、事業承継のお手伝いを1件でも多くさせていただきたいと思っています。

社長の平均年齢は60.3歳と「社長の高齢化」に歯止めがかかっていないことについて、どう思われましたか?


東海4県でも後継者難は解消せず!

日本経済新聞によると、経営を次世代にバトンタッチする事業承継の進み具合で全国トップは三重県で、2021年までの10年間で後継者のいない企業の割合が31.3ポイント改善したそうです。
東海4県では愛知県が全国8位で7.5%の改善。岐阜県(31位)と静岡県(34位)はマイナスでした。
三重県では地域金融機関が仲介に入り、県境を超えたM&A(合併・買収)にも取り組んでいます。
行政も支援体制の拡充を急いでいます。

「後継者はどうするんですか」。
金属加工の森安鉄工(三重県桑名市)を経営していた森浩光さん(76)は60歳を過ぎたころ、取引先からこう聞かれて後継ぎを考え始めました。
子どもには断られ清算も頭をよぎったようですが、会社は黒字経営で無借金です。
従業員の雇用を守ろうとM&Aの仲介を依頼したのはメインバンクの百五銀行でした。

紹介されたのは三重県桑名市に拠点を持つ自動車部品のエイベックス(名古屋市)でした。
エイベックスは「財務状況が良く、独自の技術と顧客を持つ」(加藤丈典社長)と森安鉄工を評価しました。
社員に子会社を任せて経営感覚を磨いてもらう狙いもありました。
森さんも「大きい会社に任せれば従業員の雇用も安心」と売却を決め、2017年に無事に社長を引き継ぎました。

百五銀行は本部に事業承継M&A支援課を設置し、専門の担当者を11人置き、営業店の担当者と連携して売り手と買い手をつないでいます。

チラシ配布を手掛けるミッド八光(三重県菰野町)創業者の横山義之会長(80)は70歳を迎えた2012年から承継を考え始めました。
長男に打診したようですが、多数の社員をまとめる自信がないと断られました。
当時未成年だった孫に継がせることも考えたようですが、中継ぎ社長として期待した社員が退社し、2018年にメインバンクの百五銀行にM&Aの仲介を依頼しました。

紹介されたのは三重県桑名市で印刷業を手掛けるアサプリホールディングスでした。
同社社長は横山会長と10年来の付き合いで話は進み、2020年に傘下に入いりました。
家族以外の社員が引き継ぐ場合には、株式の買い取りに大きな資金が必要になります。
横山会長は家族に後継者がいなければ「承継してくれる会社を見つけるのが手っ取り早い」と語っています。

政府系の金融機関でも取り組みが進んでいます。
日本政策金融公庫岐阜支店・多治見支店は岐阜県商工会連合会と2021年12月に事業承継で提携しました。
各地の商工会に寄せられた事業譲渡の相談を日本公庫に紹介し、日本公庫が持つ全国のネットワークから買い手を探します。
こうした提携は全国で2例目です。
2022年1月末までに商工会連合会から4件の相談の紹介を受け、買い手を探し中です。

一方、行政も地道に取り組んでいます。
静岡県の事業承継・引継ぎ支援センターは事業承継の事例集を2冊つくりました。
センターが支援した企業の経営者や後継者にインタビューして、何に悩み、どう解決してきたかを紹介しており、相談会の参加者などに渡している。「冊子を家に持ち帰ってもらい、家族で事業承継を話し合うきっかけにしてほしい」(担当者)そうです。

愛知県は外国人経営者にも手を差し伸べています。
2022年4月から外国人経営者の事業承継などの相談に乗る経営支援センターを設けます。
予約制で英語、中国語、ポルトガル語のほか、ベトナム語、タガログ語など幅広い言語に対応します。
相談は無料です。
愛知県は人口に占める外国人の比率が3.4%で全国2位で、会社を経営する人もたくさんいます。

ただし、社長が交代すれば終わりではありません。
森安鉄工ではエイベックスに買収された直後に社員数人が退社しました。
エイベックスの加藤社長は「買収してもすぐに当社の色に染めるのではなく、社員の思いを理解して10年、20年かけて企業文化を伝えることが必要だ」と指摘しています。
官民の支援も息長く続けていくことが欠かせません。

事業承継は簡単ではありません。
株式譲渡とかが終われば完了ではありません。
事業承継後のことも考えて、きちんと事業承継計画を立てて、事業承継を着実進めていきましょう。
後回しにせず、早めにスタートしましょう。

東海4県でも後継者難は解消していないことについて、どう思われましたか?


広島のお好み焼き「みっちゃん総本店」の全株式を広島マツダが取得!

広島経済新聞によると、広島のお好み焼き店「みっちゃん総本店」(八丁堀本店=広島市中区)を運営する「株式会社ISE広島育ち」(広島市佐伯区)の全株式を、先日、カーディーラーや「おりづるタワー」などの観光、宿泊業を手掛ける株式会社広島マツダ(広島市中区)が取得しました。

「みっちゃん総本店」は「美笠屋(みかさや)」の名称で、1950(昭和25)年に中区中央通りで創業したお好み焼き店です。
1968(昭和43)年に現在の店名に改め、現在は広島市内を中心に広島県内に6店、東京都内に2店舗を展開しています。

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、外食需要が低迷し、売り上げは例年に比べて8割減少したそうです。

支援を決めた株式会社広島マツダの松田哲也会長と株式会社ISE広島育ちの小林直哉社長は中学、高校の同級生だった縁もあったそうです。
店名や経営体制は現状維持で、広島マツダが経営の多角化をサポートし、経営基盤を強化します。

先日、福岡でもありましたが、こういった地元の名店を地元の名士が引き継いで、守っていくという案件が増えていくんでしょうね。
想像以上に会社が大きくなると、普通の方では経営が難しく、プロの経営者に任せるとかバックについてもらい、さらに大きくしていくケースですね。
それは、地元にとってもとても素晴らしいことだと思います。
飲食店は、コロナ禍で経営が大変だと思いますが、頑張って、広島のお好み焼きをもっともっと広めていってほしいですね。

広島のお好み焼き「みっちゃん総本店」の全株式を広島マツダが取得したことについて、どう思われましたか?


会社の後継ぎも働き手もいない場合の第三者への事業譲渡という選択肢!

朝日新聞によると、戦後のベビーブーム世代の高齢化が進み、山口県内でも働き手の世代の減少が著しいようです。

先行きが見通せないなか、社会を支える産業の維持は大きな課題です。
後継者がいない中小企業の経営者には、第三者への事業譲渡を選ぶ人もいます。

山口県山口市朝田の幹線道路沿いですが、オレンジの壁の工場が目を引きます。
2021年7月に設立された自動車整備会社「二光自動車工業」です。
工場はトヨタ車の販売店だった建物を改修したものです。

「自分は運が良かった」と新会社の設立に同市の吉崎祐美さん(66)は胸をなで下ろしました。
約1.5キロ離れた場所で別の自動車整備会社を経営していましたが、その社名と、約20人の従業員のほとんどが新会社に引き継がれたからです。

旧二光自動車工業は1961年の創業で、吉崎さんの父親やおじが支えてきました。
吉崎さんは約30年前に社長に就き、主にリース車のメンテナンスを手がけてきました。
自前のデータベースをつくって作業を効率化するなどして取引先を増やし、会社を成長させました。

しかしながら、自分や弟の子どもは県外に就職し、後継ぎがいませんでした。
工場は電気設備の老朽化などで改修が必要でしたが、その費用は約1億円。
数年前からは、従業員を募集しても採用につながらなくなりました。
人口減少で市場規模が縮む中、新たな投資の決断はできませんでした。

廃業も考えたようですが、「親から継いだ会社を自分の代で終わらせたくない」と思っていた時に、知人に紹介されたのが山口県宇部市で同じ自動車整備業を営む俵美将さん(68)でした。

俵さんの会社は、一般客の車検や新車・中古車販売を手がけていたため、営業のノウハウが違う新会社を持つことによる相乗効果に期待し、事業を引き継ぐことを決めました。

空き店舗を改修した現在の社屋に移転しましたが、「地場でやってきた看板と信用がある」と、社名はそのまま残しました。
新社屋の設備投資など、全体で約7千万円の資金は、日本政策金融公庫の融資を受けるなどしてまかないました。

戦後のベビーブーム世代を中心に高齢化が進み、山口県内の働き手世代は激減しています。
2020年の国勢調査によると、山口県内の15~64歳の「生産年齢人口」は72万3,588人で、10年前から13万人以上減少しました。
山口県は生産年齢人口の割合(53.9%)が全国の都道府県で4番目に低く、逆に高齢化率は3番目に高くなっています。
その影響は山口県内の中小企業にも及び、後継者不在は課題の一つです。

帝国データバンクが2021年に発表した調査結果では、回答が得られた山口県内企業2,516社のうち、後継者がいないか、決まっていない会社は1,786社で、71.0%を占めました。
全国の61.5%を上回り、都道府県で5番目に高くなっています。
山口県経営金融課の担当者は「廃業が続けば、地域経済が先細りしてしまう」と危機感を募らせています。

国の委託を受けた「山口県事業承継・引継ぎ支援センター」(山口県山口市)では、山口県内で出張相談会を開催するなど、無料の個別相談に乗っています。しかしながら、事業者にはほとんど知られていないそうです。

一般に、事業承継は引き継ぎに5~10年かかると言われています。
一方、廃業を選ぶ事業者のうち半分は黒字とされ、支援センターの福田敏彦統括責任者は「事業者が減って雇用が失われれば、価値ある技術が失われ、若者が県外に流出するなど生産年齢人口が減る負のスパイラルに陥る。切羽詰まる前に、とにかく早く相談を」と呼びかけています。

働き手の減少を受け入れつつ、どう産業力を維持するか、山口県の施策も問われています。

これは山口県だけの問題ではなく、日本全体の問題だと思います。
団塊の世代から第2次ベビーブームの世代に事業承継するのが、当面の事業承継では多いのかもしれませんが、その次の事業承継を考えると、人口が多い年代がありませんので、さらに厳しくなるのではないかと思います。
それゆえ、当面の事業承継は、早めに取り組んで、ぜひとも成功させて雇用を守り、知的資産もきちんと引き継いで、日本経済が活性化するよう僕自身も微力ながら貢献したいと思います。
もちろん、都道府県や市町村も、魅力ある街づくりをしていただいて、従業員の方などが楽しく、安全に過ごせるようにすることが、地域の活性化、夢のある日本につながると思いますので、真剣に取り組んでほしいですね。

会社の後継ぎも働き手もいない場合の第三者への事業譲渡という選択肢もあることについて、どう思われましたか?


農業と事業承継!

幻冬舎オンラインによると、農業の事業承継は我が国にとって重要なテーマです。
なぜならば、農業という食の根幹事業であるにもかかわらず、農業の担い手は、通常の中小企業以上に少子高齢化の状態に陥っている場合が多いからです。
具体的には、農林水産省によると「農村において、少子高齢化・人口減少が都市に先駆けて進行しており、農村の高齢化率は特に平成27(2015)年時点で31.0%であり、都市部よりも20年程度先行して」いると報告されている。

さらに、事業承継に悩む農家にとっては採算性もまた重要な問題となりえます。
そのため、農業の事業承継を円滑に行うにあたっては、採算性等に目処を立てるか、あるいは大手の農家に全てを委ねるかという判断にもなりかねません。

それでは、農家にとって採算性を高めるにはどのような方法があるのでしょうか?
仮に採算性=利益率の向上と考えた場合、利益=売上-経費である以上、売上を上げるか、経費を下げることが考えられます。
経費を削減する1つの方法としては無人収穫ロボット等のスマート農業を活用することが考えられます。

また、売上は商品単価×販売量によって決まるので、理論的には付加価値をつけて単価を上げるか、作付面積を増やして収穫量を増加するか、あるいは、高性能土壌の利用や環境制御装置による生産性の向上が考えられます。

しかしながら、現実はもっと複雑であり、①品種改良の進んだ作物であればあるほど付加価値をつけることが難しい場合があり、②マーケット価格の影響を大きく受ける作物も存在し、③作付面積が増えたことによって、かえって収穫の効率性が落ちる場合も想定されます。
したがって、農業における採算性の向上はこのような諸要素を踏まえて実行していく必要があるのです。

次に、採算性に目処がついたとしても、それをどのように事業承継させるかという問題が存在します。

類型的には、①親族に承継させる場合、②従業員に承継させる場合、③第三者にM&Aで承継させる場合があります。
また、それぞれ農地を承継させるのか、それとも農業法人の株式を承継させるのかという場合分けが考えられます。

親族への承継の場合、遺言によって承継させる場合もあれば、事前に生前贈与や負担付贈与を実行する場合が考えられます。
もっとも生前贈与等の場合は農地法の許可を得る必要があります。
このことは、従業員や第三者に有償譲渡する場合も同様です。

これに対して、農業法人の株式を譲渡する場合には、農地法の許可は直ちには必要ありませんが、農業法人が農地所有適格法人であるための農地法の要件を具備しておく必要があります。
具体的には、(非常に簡単に記載すると)①法人形態要件(株式会社であれば非公開会社)、②事業要件(主たる事業が農業であること)、③議決権要件(農業関係者が総議決権の過半を占めること)、④役員要件(役員の過半が法人の行う農業に常時従事する構成員であること)、⑤農作業従事要件(役員又は重要な使用人の1人以上が法人の行う農業に必要な農作業に従事すること)が規定されています。

次に、農業の承継に際しては、①農地のような可視化された資産のみならず、②可視化されていない資産の承継も重要です。
②の資産としては、農業上のノウハウ、取引先との人間関係(原材料の調達等を含む)等であり、これらは一朝一夕に承継できるものではないため、時間をかけた承継、場合によっては承継後のサポートが必要になることもあります。

また、農業は各地のルールを尊重することが非常に重要となりうる事業でもあります。
したがって、農地の獲得に際しては、地元との友好関係構築、土地改良区のスケジュール把握等の情報にも配慮が必要となる場合があります。
さらに、農業は農地という土壌があってこそ、実施できる事業ではありますが、農地に関しては相続未登記農地の問題にも留意が必要です
なお、農業は光合成を利用した事業であるため、土壌は当然のこと、水や光といった光合成に不可欠な要素に関する情報取得も重要です。

また、農業の事業承継は必ずしも短期間で行うものでもありません。
既に述べたように可視化できない資産の承継には、信頼関係構築の時間が必要なこともあります。
そのような場合には、①入り口段階として業務提携を締結したり、②農業法人の株式をマジョリティとマイノリティで分け合い、株主間協定を締結することも想定されます。
すなわち、一定期間を経て信頼関係が構築された場合には(農地所有適格法人の要件に留意しつつ)プットオプション(株式売却権)を行使してすべての株式を譲渡し、逆に信頼関係の構築が難しいと判断された場合にはコールオプション(株式購入権)を行使して全ての株式を買い戻すことが考えられます。

さらに、事業が債務超過である場合、どのように負債を承継させるかという問題が存在します。
債務超過が過大でなければ、今後の収益等で埋め合わせることが考えられるでしょう。
しかしながら、債務超過が過大な場合、事業を廃止し、事業承継を断念することも選択肢としてありえるでしょう。

他方、当該債務をリストラクチャリングする場合には、通常以上の留意が必要になることが想定されます。
農業の現場は狭い社会です。
そのため、債務のリストラが思わぬ形でレピュテーションリスクを生む場合があれば、金融機関の同意が得にくい場合も想定されます。
また、スポンサーが農家を救済しようにも、前述した農地法の許可等が得られるかという問題も存在します。

しかしながら、債務のリストラクチャリングがまったく行われていないわけでもありません。
帝国データバンクの分析によると、2019年度の「野菜作農業」倒産は、過去20年で最多の37件(前年度比105.5%増)に達し、そのうち負債1億円未満が21件を占めるとのことですが、実際にはレピュテーションリスクの回避の観点から、私的整理を通じたリストラクチャリングも存在します。
また、金融機関側も、農業経営体は家族経営が多く、経営リスクへの対応力が必ずしも十分とはいえないことから早期に対応できる相談窓口設置の必要性を認識しているようです。

さらに、事業承継に関しては保証契約の承継が問題となりえます。
特に事業借入は個人にとって巨額になりうるため、承継は相続人等から難色を示されることも多いです。
この問題に明確な解は存在しませんが、対応策としては、①相続人全員が(相続分に応じて)承継する方法、②事業承継の対象者のみが保証切替により承継する方法、③保証によらない融資が望まれていることを丹念に金融機関に説明する方法、④経営者保証ガイドラインまたは特定調停等の手法により保証債務の削減を依頼する方法等が考えられます。

このような状況を踏まえ、政府としても、農業競争力強化支援法を準備し、農家の事業承継をサポートしています。
具体的には、①登録免許税の軽減、②減価償却の特例、③事業再編における資産評価損の損金算入、③事業譲渡時の債権者みなし同意の規定を設けています。

農業は国民生活の根幹であり、安定的な生産供給を維持するためにも、また、海外への輸出によって売上を確保するためにも、農業及び農業を取り巻く環境の特質を理解した対応が必要と思われます。

事業承継は、一般企業でも、簡単に考えられている方もたくさんおられますが、実際には何かと難しいのですが、農業の場合、さらに難しくなったりしますね。
一つは農地の問題ですね。
自由に売買などができないので、手間も時間もかかります
あとは、ほとんど農協に出荷しているケースですね。
その場合、自分で値段を付けることができないので、将来的な採算を検討しにくいからです。
まぁ、事業承継はすぐにはできませんので、しっかりと計画を立てて、時間をかけて取り組んでいきましょう。

農業と事業承継について、どう思われましたか?


ホワイトデー発祥の博多の「鶴乃子」の老舗和菓子店「石村萬盛堂」が業績悪化で新会社に事業譲渡!

「鶴乃子」で知られる老舗菓子店「石村萬盛堂」が、複数の地場企業が出資する新会社に事業を譲渡したと発表しましたそうです。

新型コロナによる業績の悪化が理由だそうです。

石村萬盛堂が事業を譲渡したのは、明太子メーカー「ふくや」の持ち株会社の「かわとし」や福岡地所など、6つの地場企業が出資する新会社です。

石村萬盛堂は1905年創業で、あんをマシュマロで包んだ「銘菓鶴乃子」が、博多土産として全国に知られています。

しかしながら、他社との競争に加え、コロナ禍で土産物の需要が減り、2020年6月期の売り上げは約30億円で、5年前の半分ほどに落ち込むなど業績が悪化したことから、事業の譲渡を決断したものです。

今後は新会社が、従業員の雇用と店舗の経営を引き継ぎ、商号はそのままで営業を継続するそうです。

この記事を見て、こういうのが、地方における事業承継の一つの在り方かなと思いました。
ちなみに、ネットで調べると、現在では定着したホワイトデーの起源は、昭和52年にこの石村萬盛堂の考えついた「マシュマロデー」に由来しているそうです。
マシュマロの売上を増やすために、百貨店に話を持ち込み、バレンタインデーの1か月後をマシュマロデーにしたようですが、7、8年間それほど売れず、百貨店の提案でホワイトデーに変更したところ、定着したそうです。
今回のような業績の悪化だけではなく、後継者不在などのケースでも、いわゆる地元の名士みたいなところが共同で出資して、地元の企業を守っていくというのは非常に重要なのではないかと思います。
県外の企業に事業譲渡したり、株式譲渡したりすると、商号はそのまま残ったとしても実質的に県外の企業になるかもしれませんし、将来的に本社移転とか、合併で、県外の企業になってしまうかもしれないからです。
まぁ、こういうことが可能になるには、普段から地元の経営者が顔を合わせていて、(地元の経営者に知られるのは嫌ということで県外の企業などに話を持ちかけることがないよう)色々なことを隠さずに相談できるような環境を作っておかないといけないでしょうが。

博多の「鶴乃子」の老舗和菓子店「石村萬盛堂」が業績悪化で新会社に事業譲渡したことについて、どう思われましたか?


中小企業の事業承継で大切な技術や雇用を守れるか?

読売新聞によると、中小企業の後継者不足が深刻化し、廃業になるケースが増えています。
技術や雇用を支えている中小企業を守るために、官民挙げて支援策を強化することが不可欠です。

民間の信用調査会社によると、2020年の企業の休廃業、解散は、前年より1割以上多い約5万件で、過去最高でした。
この中で、黒字の企業が6割を占めています。

後継者難にコロナ禍が追い打ちをかけ、事業継続を断念した中小企業が相次いだようです。

2025年までに70歳を超える経営者は約245万人に上るとみられますが、半数程度は後継者が決まっていないとの推計もあります。

中小企業には高度な技術を持つ町工場や、雇用の受け皿となって地域経済を支えているサービス業も少なくありません。
そうした健全な会社が、後継者がいないという理由で廃業に追い込まれるとすれば、経済の損失は計り知れないでしょう。

これまでは、親族や従業員に引き継ぐのが主流でしたが、受け手がいない場合の打開策として、他企業や起業を目指す人による買収が有望視されています。

経済産業省によると、中小企業の合併・買収(M&A)は年3,000~4,000件に達し、事業承継にも活用されています。

売り手と買い手を仲介する業者も増加しており、経済産業省は業者の登録制度を始めました。
政府が「お墨付き」を与えて使いやすくする狙いです。
トラブルを防ぎつつ、事業承継の円滑化につながるといいですね。

M&Aでは、会社の資産査定などに多額の費用がかかるほか、手続きがわかりにくいため、尻込みする経営者が目立つそうです。

政府は、全国に相談窓口として「事業承継・引継ぎ支援センター」を整備して、自ら紹介業務も手がけています。
体制を強化するとともに、国による費用補助の拡充などを検討してほしいですね。

すでに成功事例は増えています。
社員十数人の石川県の産業機械企業は社長が急逝しましたが、支援センターに相談し、地元出身で東京の大手重工メーカーに勤務経験がある人材に株式を売却して社長に迎え入れ、雇用を守りました。

好業績を上げながら後継者難に悩んでいた長崎県の機械設計会社は、強みが異なる同業者の傘下に入り、業務を補完し合って一層の事業拡大につなげました。

地域金融機関の役割も重要です。
企業の経営状況や成長力を熟知しているはずで、融資だけでなく、事業承継に関する助言や仲介業務に力を注いでもらいたいですね。

経済産業省のM&A支援機関の登録制度は、僕(及び法人)も先日申請はしました。
ただし、過去の実績等が問われるわけではなく、おそらく申請すれば、書類の不備がなければ登録されると言われています。
よって、登録されている支援機関だからといって安心というわけではなく、個人的にはM&Aの成立ではなく、その後の統合(いわゆるPMI)の方がかなり重要だと思っていますので、その辺も考慮したうえで、登録支援機関や支援センターを選んで欲しいと思いますし、僕自身(法人を含む。)も、大切な技術や雇用を守るためにできるだけのお手伝いをしていきたいと思っています。

中小企業の事業承継で大切な技術や雇用を守れるか?について、どう思われましたか?


秋田県由利本荘市が移住者が担う事業承継へ挑戦!

日本経済新聞によると、オムレツとタルトが人気の秋田県由利本荘市のカフェ「カトルセゾン」は約2年半前、愛知県から移住した夫婦が前オーナーから店を引き継ぎました。
人口減と少子高齢化が進む秋田県由利本荘市では移住者に事業承継も担ってもらう取り組みを進めており、成功事例の一つです。

前経営者(72)が愛知県岡崎市から移住した後継者(33)夫妻に店を引き継いでもらったのは2019年4月のことです。

その10年ほど前、フランスで菓子づくりを2年間学んだ前経営者が妻の実家がある秋田県で開業しました。
焼き菓子のタルトは風味豊かで人気を呼んだのです。
「食い道楽」という前経営者は旬の食材にこだわり、ランチも工夫して地域の人々の胃袋をつかみました。

しかしながら、飲食店経営は重労働です。
仕込みは午前9時ごろに始めますが、菓子づくりに取りかかるのは閉店後です。
一段落つくころには日付が変わっていたことも少なくありません。
60代後半で持病もある前経営者は体力に不安があったようです。

「開店して約10年。ありがたいことに常連さんがお店についてくれていた。閉めるのは忍びなく、誰かに引き継げないか」、前経営者がこう考えていたとき、秋田県由利本荘市が引き合わせたのが愛知県の食品会社に勤めていた後継者です。

後継者は当時30歳で、「新しいことに挑戦したい」と脱サラも考えながら、自治体の移住関連情報をよく調べていたのです。

「やっていけるのか」、後継者を探していたカトルセゾンを見つけて興味を覚えたものの、後継者の最大の懸念は飲食店勤務の経験がなかったことでした。
それでも前経営者は「本気で考えるなら、面倒を見るよ」と。
「開店して半年は横にいて店を手伝う」、そのひと言が迷っていた後継者の背中を押したのです。

移住前、毎月のように愛知県から通い、前経営者から接客の方法も料理も一から学びました。
店のメニューで人気のオムレツも同じ味を再現できるまで「何十回も作り直しさせた」(前経営者)。
塩加減ひとつ違っていても同じ味を再現できなかったのです。

後継者夫妻が引き継いだのは店やレシピだけではありません。
常連客もです。
地域には年配者が多く、当初は「味が変わったね」「しょっぱいね」と告げられました。
後継者の妻は今も感謝しています。
「店の常連さんが頑張ってね、といつも声をかけてくれた。味を引き継げるようになるまで、辛抱強く待ってくれた」

秋田県由利本荘市も後継者夫妻を支えました。
移住まるごとサポート課の長谷部浩司課長は「2人が互いに納得するまで時間をかけたこと、関係機関の連携と情報共有が後押しした」と振り返っています。

後継者が愛知県から前経営者のもとに通う際、秋田県由利本荘市はその旅費の一部を補助しました。
双方の思いを受け止め、クッション役を果たしました。
互いの話を聞き、焦らず雰囲気を醸成していったのです。

秋田県由利本荘市と商工会、秋田県事業承継・引継ぎ支援センターの連携と情報共有も機能しました。
秋田県由利本荘市が調整役になり、商工会は必要な資金の手当て、センターは契約など法律面の助言を請け負いました。
後継者の不安について情報を共有し、解消に努めたのです。

秋田県由利本荘市は「移住」と「継業(事業を継続)」をテーマに掲げ、移住・定住対策を進めてきました。
地域の企業や店舗に後継者がおらず、事業を続けられない事例も増えているからです。
事業を継ぐ意欲がある移住希望者にその役割を担ってもらい、人口と地域の活気の双方を維持する狙いです。

「飲食店に限らず、お客さんや取引先の思いに一つひとつ応えていくことが大切」と、店を継ぎ2年半近くが過ぎてたどり着いた後継者のこの思いが地域の活力になっているようです。

秋田県は昔から事業承継に力を入れていることは知っていましたが、国とか県とか市はこういう案件に取り組んでほしいですね。
店が続き、雇用も守られ、移住者も増えるわけですから。
あとは、地元の方より、外から来られた方のほうが、客観的にものごとを見れると思いますので、色々なことを残したり、変えたりすることができるのではないかと思います。
それが、地域活性化にもつながっていくでしょう。

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阿波銀行がAIチャットボット「あわぎん事業承継Bebot」の導入!

阿波銀行(頭取 長岡奨、本店:徳島県徳島市)は、2021年8月20日(金)に株式会社ビースポーク(代表取締役 綱川明美、本社:東京都渋谷区)との共同開発により、AIチャットボット「あわぎん事業承継Bebot」のサービスを開始しました。

近年、企業オーナーのみなさまが抱える事業承継に関する悩みは、経営者の高齢化、後継者不足等、年々深刻さを増しています。
また、企業にとってデリケートな問題であることから、どこに、何を相談すればよいのか分からず、先延ばしにしてしまう傾向があります。
当サービスの導入により、来店不要で事業承継課題に対する相談に24時間(365日)対応可能な体制を整えます。
また、AIチャットボットを通じ、事前に課題を整理されることで、阿波銀行にご相談いただいた際に、より具体的なサポートが可能となります。

ちなみに、AIチャットボット(Chatbot)とは、AIを活用した自動会話プログラムです。
リアルタイムで短文のやり取りを行う「チャット」と、ロボットを意味する「ボット」を合わせた言葉で、人間同士のような感覚でAIと会話を行い、自動応答による情報収集を行うことができます。

■サービス概要
名称  :あわぎん事業承継Bebot
提供開始:2021年8月20日(金) 12:00から
搭載場所:阿波銀行 公式ウェブサイト 「法人のお客さま」トップページ
https://www.awabank.co.jp/houjin/
内容  :事業承継(親族内承継・社内承継)・M&A等に関する対策や手続等
対応言語:日本語

■開発会社概要
会社名 :株式会社ビースポーク
代表者 :綱川 明美
所在地 :東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ8F
設立  :2015年10月
事業内容:DXソリューション「Bebot」の開発・運用
URL :https://www.be-spoke.io/jp/

■株式会社阿波銀行(The Awa Bank, Ltd.)について
本店所在地:徳島県徳島市西船場町二丁目24番地の1
設立   :明治29(1896)年6月19日
資本金  :234億円
店舗数  :102店舗(徳島県内83店舗、県外19店舗、2021年6月末現在)
URL   : https://www.awabank.co.jp/

少しさわってみましたが、別にここだけではなくほかもそうですが、会話というよりは、選んでいくと簡単な説明文が出てくるだけという感じです。
この文章を読んで分かるのだろうか?、抽象的すぎないか?などと感じますが、大企業がこういうのを作って、調べたい方が調べて、具体的なことは会計事務所に聞くという流れになるのではないかと思っていまいます。

阿波銀行がAIチャットボット「あわぎん事業承継Bebot」の導入をしたことについて、どう思われましたか?


事業承継は3社に2社が『経営上の問題』と認識!

帝国データバンクによると、新型コロナウイルスの影響拡大により倒産のみならず休廃業の増加も懸念されるなか、その回避策としての事業承継が今まで以上に注目されています。
また、政府は若い世代における事業承継の気運醸成や、世代交代にともなう中小企業の成長を促進する施策のほか、税制面の優遇措置や第三者承継の促進など、事業承継への支援体制を強化しています。
なお、調査期間は2021年5月18日~31日、調査対象は全国23,724社で、有効回答企業数は11,242社(回答率47.4%)です。
事業承継に関する調査は、2017年10月、2020年8月に続き、今回で3回目です。

<事業承継に対する考え方>
事業承継について、どのように考えているか尋ねたところ、「経営上の問題のひとつと認識している」と回答した企業が55.5%と半数を超え、最多でした。
また、「最優先の経営上の問題と認識している」は11.9%となり、企業の67.4%が事業承継を経営上の問題として考えていることが明らかとなりました。
他方、「経営上の問題として認識していない」(21.6%)は2割程度にとどまり、「分からない」は11.0%でした。
事業承継を『経営上の問題として考えている』割合(「最優先の経営上の問題として認識している」と「経営上の問題のひとつと認識している」の合計)を業界別みると、『建設』が71.7%で最も高くなりました。
次いで、『製造』(70.0%)、『卸売』(68.2%)が続きました。
他方、『金融』が44.0%で低水準となりました。
また、従業員数別では、「6~20人」(72.9%)、「21~50人」(70.9%)が7割超となった一方で、「1,000人超」(33.6%)が3割台にとどまりました。
業界や企業規模によって事業承継の捉え方に濃淡がみられます。
企業からは「中小企業が持続可能であるためには、継続的な収益を確保できるための事業の確立と、後継者の確保・育成は最重要課題の一つと考える」(コンクリート製品製造、大阪府)といった声があがっています。
他方で、「継承していくための準備がまだできておらず、人材育成を行うとしてもその若手人材が決まっていないのが問題点である」(一般貨物自動車運送、香川県)というように経営上の問題と捉えつつも後継者の人材に苦慮している様子もうかがえました。

<事業承継を『経営上の問題として考えている』割合>
事業承継を円滑に行うためにどのようなことが必要か尋ねたところ、「現代表(社長)と後継候補者との意識の共有」が43.5%で最高となりました(複数回答、以下同)。
以下、「経営状況・課題を正しく認識」(37.4%)、「早期・計画的な事業承継の準備」(36.2%)、「早めに後継者を決定」(33.9%)、「事業の将来性、魅力の維持」(30.1%)が3割台で続きました。
とりわけ、「早めの後継者を決定」は、「中小企業」(35.1%)の方が「大企業」(27.8%)と比較すると7.3ポイント高く、先を見据えて次世代への継承を意識している様子がうかがえました。
他方で、企業からは「今年から後継予定者を定めて教育と経験を積ませることを取り組み始めた。しかし、順調に進まなかった場合が心配だ」(和洋紙卸売、東京都)といった長期的な準備が必要なため不安を感じる声もあるようです。

本調査の結果、7割近くの企業で、事業承継を経営上の問題として考えており、およそ1割の企業は、最優先の問題として捉えていました。
しかしながら、その認識は、業界や企業規模で差異が生じています。
また、企業の多くは、円滑な事業承継のためには、現代表と後継候補者との意識の共有をはじめ、経営状況の現状認識や早期の計画的な準備などが重要と考えています。
一方で、後継者の育成など長期の準備期間が必要であることから事業承継に不安を感じている企業もあります。
他方で、「株の引継ぎなど相続が発生した際の税金納付が大きな経営課題となる」(ごみ収集運搬、北海道)とあるように、後継者が取得した資産に対する贈与税や相続税といった税負担が障壁となっているといった意見も多数あがっています。

日本企業を支える中小企業を中心に事業承継は喫緊の課題となっています。
企業にとって円滑な事業承継には、自社における承継に向けた意識共有や事前準備に加えて、税制の改善は不可欠と言えるでしょう。

事業承継の重要性が叫ばれて久しいですが、これだけ事業承継が進まないのは、お金をかけて取り組んでいる国、金融機関、我々会計事務所に原因があると思っています。
事業承継の重要性をきちんと周知し、説明していくことはもちろん重要です。
それ以前に、現時点での事業承継は、第2次ベビーブームの時に生まれた方が後継者や引受先となることができるため、後継者や引受先がたくさんいるので、まだ何とかなるのかもしれませんが、次の事業承継の時代には、後継者や引受先となる人の多い年代層がありませんので、かなり難しいと思いますので、今回は本気で事業承継を成功させないと日本の将来はないというくらいの気持ちで取り組んでいかないといけないということを認識したうえで取り組んでいかないといけないのではないかと思っています。
個人的には、帝国データバンクの記事には『税制の改善は不可欠と言えるでしょう。』と書いていますが、日本の場合、ほとんどが中小企業で、黒字企業が3割くらいしかないわけですから、税制の改善はそれほど大した問題ではないと考えています。
それよりは、SWOT分析を行うなどじっくりと時間をかけて事業承継についてしっかりと考えていく中で、税理士と税金対策も考えていけばいいのではないかと思います。
税金対策は主目的ではありませんから。

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他の社員は年上の営業担当がまさかの社長に!

朝日新聞によると、経営は好調なのに後継者がいないため事業を畳む中小企業が増えています。
従業員や取引先との問題だけでなく、地域経済の衰退にもつながりかねません。
商工団体などが間に入り、「事業承継」の支援に動き出しています。

電設資材の販売、設備工事などを主要業務とするエバラデンキ(千葉県市原市、従業員14人)は2021年5月に創業者(86)から従業員(41)に社長を引き継ぎました。
2人に縁戚関係はなく、親族外承継になります。

エバラデンキは1959年創業し、京葉コンビナートの埋め立てとともに発展しました。
「1日に2回、3回とお得意先に通った。苦しかったが支払いを現金にすることで信用を得た」(創業者)。
安定した取引先を持ち、コロナ禍でも業績は変わらないそうです。

しかしながら、悩みの種が後継者でした。
3人の子どもは、事業を継ぐ意思はありませんでした。
実は60歳の時に社長を従業員に譲ったのです。
ところが、「後継者は高圧的で、社内で自由に話せる空気がなくなってしまった」ということで、社長に復帰後、外部登用も試みたがうまくいかなかったようです。

そんな中で目を付けたのが、2004年に入社した後継者です。
工事の現場で働きたいという希望を持って入社したが、「工事はほかの人でもできる。自分が営業に回った方が会社の利益になる」と考え、創業者とともに地域を走り回っていました。

2年前に話を持ちかけられたとき、後継者は「責任が重すぎる」と断りました。
社員の多くは年上で、まとめる自信がなかったからです。
ところが、1年以上かけて説得され、「今まで社長がつくった土台を崩してはいけない」と承諾しました。

事業承継の実務は千葉県信用保証協会が相談に乗ってくれましたが、課題は株式承継だったようです。
事業が好調なことで、株式の評価額は1株3,000円を超していました。
まずは、後継者が20,000株中1,000株を買い取り、時間をかけて3分の2まで買い増すことにしました。
「譲ることは証書で取り決めている。撤回することはない」(創業者)

社長になっても後継者が営業の先頭に立つことに変わりはないようです。
「自分もここで育ててもらい成長してきた。他の社員とともにステップアップしていきたい」

最近、この手の事業承継の成功事例をちょくちょく目にしますが(事例や宣伝のために積極的に出しているのでしょうが)、顧問の公認会計士とか税理士の名前が出てこないのが、残念ですね。
近いところにいて、数値のことは分かっているわけですから、業界として、クライアントの事業承継について常日ごろから考え、提案していかないと、他の業界の人たちに仕事を取られ、信頼関係も築けないのではないかと思った1件でした。

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宮崎県高原町の小さなパン屋さんの店主の思いが事業承継へ!

テレビ宮崎による特集で、2021年6月26日で店を閉めた宮崎県高原町のパン屋さんが取り上げられました。
先日、地元の人たちによって開かれたお別れイベントでは清々しい表情を浮かべる店主の姿がありました。
「町から店をなくしたくない」と話す店主の思いは、新たな形で引き継がれるようです。

2021年6月20日に宮崎県高原町の皇子原公園で開催された「さよならパンまつり」。
高原町のパン屋さん「天然酵母田舎のぱん屋さん」が、6月26日に閉店することになり、有志が企画し開催されました。
店主(64)と妻(60)の九州産の小麦と天然酵母を使用し地元の野菜を使うなど素材にこだわるパンは地元の人に愛され、この日も別れを惜しむ多くの常連客が訪れました。
(客)「名残惜しいですけど、顔見にきたいと思って…」

店主は、高原町の自宅の横に店舗を構えていました。
大阪でシステムエンジニアとして働いていた店主が、15年前に脱サラして高原町出身の妻とオープンさせました。
(店主)「買ってくださる、おいしかったというのがやりがい。第2の人生の中でおもしろい。」

店主は、夫婦二人三脚で大好きなパン作りをやりきったという思いから閉店することを決めました。
ただ一つだけ心残りが…
(店主)「やめたら高原町自体がパン店が少ないので、そこを誰か引き継いでくれれば、1軒消えた分、1軒起こしてくれればうれしいかな。」

宮崎県高原町で数少ないパン屋さん。
店主は閉店を決めたものの、後ろ髪を引かれる思いでした。
そんな店主に宮崎県高原町は、あるサイトへの掲載を提案しました。
それは「リレイ」という事業承継のサイトで、後継者を募集する事業者の思いや店のストーリーが掲載されます。
また引き継ぐことに興味がある人は、事業承継をする際の譲渡金額や売上げの推移などの財務情報も見ることができます。

町から店をなくしたくないと話す店主は、機材やノウハウを無償で譲渡することにしました。
すると、宮崎県小林市出身で現在は千葉県に家族で住む女性が、Uターンして店主の店を継ぎたいと名乗り出たのです。
女性はパン屋やカフェで働いていて、いつか自分の店を持ちたいという夢があったそうです。
(女性)「きっかけがなかったからずっとできなかったんですけど、こういった形で紹介していただいたりすると店主からレシピ教えていただいたりですとか、機材の譲渡というのも大きいと思うので、開業する上でのハードルをすごい下げてくれたと思う。」

帰省した時に店主のパンを買いにきていたという女性は、店主からレシピや機材を引き継ぎ、町内でパンも楽しめるカフェをオープンすることを目指します。
(店主)「自分の店を知っている方がやってみたいというのが嬉しい」
(女性)「体に優しいものとか店主の思いも受け継いで私が継ぐことで町も少しでも元気になってくれればなと思っています。」
(店主)「嬉しいですね。次を継続する相手の方が見つかりましたので、その方にバトンをタッチして一軒新しい店ができると、また皆さんで支えていっていただきたい。本当にきょうはありがとうございました。」

地域住民に愛された田舎のパン屋さん。
店主の、店と地域への思いは次の時代へとつながります。
女性は、2021年度中のオープンを目指しているそうです。

宮崎県内の60歳以上の経営者を対象にしたアンケートによると、自分の代で廃業を考えている方の理由で最も多いのが、後継者がいないからです。

こういうのが、究極の事業承継だと思いますね。
街には、昔から飲みに行ったり、買いに行ったりしている、なくなってほしくない小さな飲食店やパン屋さんやケーキ屋さんなどは皆さんにもあるかと思いますが、後継者のいないところがほとんどではないかと思います。
お店を使っていて、お店を残したいと思う方が引き継ぐのが、一番いいのではないかと思います。
後継者がいなくて悩んでいるという方や廃業しかないと考えている方は、各都道府県の事業承継・引き継ぎ支援センターやM&Aの仲介会社などに相談してみてくださいね。
ちなみに、うちも、バトンズM&A相談所高松市木太町店になっており、無料で相談を受け付けています。

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投資ファンドを歓喜させた久美子氏の「中期経営計画」の中身と戦略!

日刊ゲンダイDIGITALによると、2015年2月26日に開かれた記者会見で、大塚家具社長の大塚久美子氏は創業者の父・勝久氏との確執について自分なりの意見をひとしきり話すと、本題の「中期経営計画」について説明を始めました。
これは単なる大塚家具再建のシナリオではありませんでした。
雌雄を決する株主総会で大口投資家たちを取り込んで勝久氏を追放するプレゼンテーションの材料でもあるわけです。
そのためには大口投資家である投資ファンドが食いつくような内容でなければなりませんでした。

もともと投資ファンドは企業現場の実態にあまり関心を寄せません。
興味を示すのは流行のビジネスモデルや財務戦略、配当性向などです。
目先の株価が上がるかどうかを重視しているからであり、金融出身の久美子氏は、そうした投資ファンドの気心を熟知していました。

会見で明らかになった「中期経営計画」のポイントは、①ビジネスモデルの変革、②開かれたガバナンス、③財務戦略としての積極的な株主還元の3つでした。
新しいビジネスモデルの構築については、単純な対立の構図を示して説明しました。
それは、時代遅れの旧態依然とした勝久氏の経営手法に対して、新しい時代にマッチした最先端の経営手法を採用するというものでした。

勝久氏は、丁寧な接客と会員制の導入で高級ブランドイメージを構築してきました。
それによって結婚や新築などのハレの日のまとめ買い需要をつかむことに成功し、大塚家具を急成長させています。

それに対して久美子氏は、「消費者の購買スタイルが『まとめ買い』に代わり、『単品買い』が主流になっている」と分析しました。
勝久氏が構築した会員制や高級ブランドイメージを活用したビジネスモデルはすでに過去の遺物になっており、これらのビジネスモデルを見直すことが必要であると主張しました。

「当社が中価格帯のメインプレーヤーとして認知されることで、IKEAやニトリが攻勢をかける低価格帯から中価格帯へ顧客が回帰する」(久美子氏)

さらに専門店の出店、地方の百貨店などとの提携、B to B事業の強化などで2015年下期までには黒字化を達成し、売上高は2014年度の555億円から2017年度には594億円、営業利益は4億円の赤字から19億円の黒字、当期利益は5億円から14億円を達成するとしました。

さらにコーポレートガバナンスを強化するために社内取締役を5人から4人に減らし、一方で社外取締役を2人から6人、監査役を3人から4人に増やすことを表明しました。
社外取締役や監査役候補には有名大学教授、大手金融機関元役員、弁護士ら投資ファンドが喜びそうな華やかな学歴、キャリアの人材を集めました。

そして2015年度から2017年度までの3年間、株主配当を40円から80円に引き上げることを約束したのです。

こうした久美子氏の計画は表面的なビジネスモデルや財務戦略、コーポレートガバナンス体制を重視する投資ファンドの心をとらえることに成功し、株主総会での勝機をつかみました。
しかしながら、これがキャッシュリッチの優良企業だった大塚家具を地獄の底に陥れるとは、このとき誰も予想だにしていなかったのです。

先日、ジャパネットたかたの前社長の高田さんのセミナーをオンラインで受講した(2回目)のですが、事業承継に大事なのは、『残す』『捨てる』『変える』『加える』の4つだとおっしゃっておられましたが、その時に、大塚家具のことが真っ先に頭に浮かびました。
この4つを見誤ると、事業承継どころか、会社の存亡の危機につながってしまいますね。
個人的には、今でも、既存のままではダメだったと思いますが、高級路線でブランドイメージのある大塚家具が、ニトリやIKEAを意識して、中価格帯の方に向かっていったのが失敗だった(高価格帯は残すところであった。)、変えるところは店舗の展示の仕方などであったと思っています。
投資ファンドも、企業現場の実態をきちんと把握しないといけないですね。

投資ファンドを歓喜させた久美子氏の「中期経営計画」の中身と戦略について、どう思われましたか?


なぜ事業承継は会社法で考えないといけないのか?

DIAMOND onlineで、株式会社武蔵野の小山 昇代表取締役社長が、書籍『経営・戦略 門外不出の経営ノート』のうち、事業承継は「会社法」で考える理由を取り上げています。

事業承継には、「民法(相続)」「会社法(株式承継)」「税法(株式売却益課税・贈与税・相続税)」という、3つの法律が関わってきます。

A社の先代社長は、「自分が亡くなった後、会社を継ぐのは長男。自分が100%保有している自社株は、妻と子ども(3人)の計4人に相続させる」ことにしました。

法定相続人(妻と子ども)は、一定の割合で財産を相続できることが「民法」により保障されています。
民法では、法定相続人は、
・配偶者……財産の2分の1
・子ども……残りの2分の1を子どもの数で均等に分割の割合
で相続できます。

したがって、母親が50%、子どもたちはそれぞれ17%弱の株を持つことになりました。

先代経営者が保有していた株式を妻と子どもたちで分けるのは、民法上は正しいでしょう。

しかしながら、「会社法」で事業承継を考えた場合、「後継者が(長男が会社を継ぐなら長男が)、すべての自社株式を相続する」のが正しいのです。

後継者がどれだけ自社株を保有しているかによって、経営者に与えられる議決権が変わるからです。

結果的にA社では、先代社長が亡くなった後、母親と次男が経営方針をめぐって長男と対立しました。
母親は次男に、「長男を追い出してあなたが社長になったほうがいい」とそそのかしました。
結果、長男は会社を追い出され、母親に操られた弟に社長の椅子を譲ることになりました。

自社株が分散していたり、自分の会社の株を、誰が、どれくらい持っているかわからない状況だったりすると、後継者に会社を承継させても、安定した経営はできません。

A社のケースだと、先代経営者が「長男に自社株を集中させる」計画をあらかじめ立てておけば、母と子の骨肉の争いは避けられたはずです。

僕もおっしゃるとおりだと思います。
今まで、民法・会社法・税法という切り口は持っていなかったのですが、以前から、『事業承継は平等さを考えなくてよい。』とか『相続税対策でたくさんの子どもや孫に110万円の範囲で自社株を贈与をするのは会社の経営を考えるとすべきではない。』とか『株主は極力少なく。』ということは、色々なところで言ってきました。
その辺は、結局、会社法(議決権)の話しです。
切り口というか説明の仕方として、『民法』『会社法』『税法』というのは、すっきりしていてよいなぁと感じました。

なぜ事業承継は会社法で考えないといけないのか?ということについて、どう思われましたか?


建設業の事業承継!

建設通信新聞によると、事業譲渡の合意までに一般的に1年程度を要する企業の第三者承継(M&A)にとって、2021年度以降に新型コロナウイルス感染症の影響が表面化してくる可能性があるようです。

影響度合いは現段階で予測しづらいですが、廃業が増加に傾けば大きな経済損失をもたらすだけに、予防線となり得る事業承継の役割は否が応でも高まっていきます。

また、コロナ禍のM&Aという枠組みの中で、エッセンシャルワーカーとして業務継続が求められる建設業の立ち位置も変化しそうです。

全国48か所(東京都は2か所)にある事業引継ぎ支援センターをサポートする、中小企業基盤整備機構(中小機構)中小企業事業引継ぎ支援全国本部によると、2020年11月末までの2020年度累計(4月から11月)の取扱件数は相談が7,556件と前年度同期と比べ、ほぼ横ばいとなっています。

一方、事業引継ぎの成約は902件と前年度(通期1,176件)を上回るペースで推移しています。

2012年から2020年度までの合計は4,479件に上り、事業承継に携わる国内の機関・企業でトップクラスの実績を誇ります。

建設業の成約は110件(2020年度4月から11月累計)と例年並みですが、今後の状況によっては単年度で最多だった2019年度(131件)を超えることも見込まれます。

全産業に占める割合は12%で、サービス・その他(30%)、製造業(24%)、卸・小売業(19%)に次ぐ比率となっています。

一般的に事業承継の成立には1年程度がかかり、2020年度の成約は2019年度以前に着手した案件のため、コロナ禍の影響は現段階で顕在化していません。

ただし、今後はコロナ禍が経営面などを直撃し、かじ取りが難しくなるとみられる業種も少なくありません。

中小機構事業承継・再生支援部の木口慎一審議役は、「(企業存続・成長の観点から)世代交代が進み事業承継が増えるのか、それとも廃業が増えるのか。先行きを見通せず、予断を許さない」と吐露しています。

どちらに振れても、国内の雇用・経済損失を防ぐ上で事業承継が果たす役割が高まることから「相談体制を拡充していきたい」と話しています。

建設業については、未曾有の感染症下でも社会・経済活動を支えるために事業継続が要請される、“安定産業”として買い手にとって魅力的に映り、事業承継が加速する可能性があります。

また、建設企業や専門工事企業を対象とした第三者承継の場合、買い手は、売り手が持つ公共工事の入札参加要件に設定される地域要件や工事実績などが取得できるとともに、技術者、技能者の人材も引き継げ、当該地域の建設事業を取り込めます。

一方、次の経営者がいない、もしくはその候補を探している売り手は、社会資本の整備・維持管理、災害対応などを通じて地域の安心・安全に貢献する社会的使命を受け渡すことができ、双方にとってのメリットは多いものとなっています。

中小機構中小企業事業引継ぎ支援全国本部では相談体制を強化するため、各支援センターの増員を計画しています。

さらに、中小企業庁が民間委託していた事業承継ネットワーク事業の業務を2021年度から実施する見通しです。

同ネットワークは地銀や商工会議所などと連携しながら、地元企業を直接訪問し、事業承継に関する相談に応じています。

能動的な相談体制を加えることで、潜在的な事業承継を掘り起こすのが狙いです。

木口審議役は、「『うちのような会社は事業引継ぎの対象として目にとまらない』と決め付けずに、気軽に相談してほしい。立地やネームバリュー、技術力、ノウハウなど(売り手)自身では気付かない魅力を買い手が感じてくれることも多い」と話しています。

中小企業庁は、全国の中小企業経営者の平均年齢(2018年時点・62歳)と引退年齢(70歳)に基づいて、2025年までに245万人が70歳以上を迎え、そのうち後継者未定が127万人に上ると試算しています。

具体策を講じずに廃業が加速すると、2025年ごろまでの10年間の累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われると予測され、中小企業庁は事業承継を最重要施策に位置付けています。

新型コロナウイルスの影響で、生き残りが最優先事項となり、ますます事業承継の優先度が下がるのではないかと個人的には危惧しています。
M&A市場では今後売り案件が増加すると推測していますが、新型コロナウイルスの影響でどうしようもなくなって売りに出すところが多くなってくるでしょう。
そうなると、買い手としては、良いところかそうでないところかの見極めが必要になってくるでしょうし、どうしようもなくなっているところを買うことを検討するとしては、立て直し方が今までにはないような難しさもあるでしょう。
安く買えると考えるところもあるでしょうが、結局のところ、買うことを決定するのに時間やコストがかかり、その間にもますます悪化していくという状況が多くなり、スピードも重要なM&A市場ではその点もネックになってくるのではないかと考えています。
あとは、建設業のM&Aの実務に関わっている方でないと分からないかもしれませんが、建設業のM&Aは他の業種と比べて、難しい面が多く、時間がかかる可能性があるかもしれませんので、その点も認識はしておいた方が良いでしょうね。

建設業の事業承継について、どう思われましたか?


東邦銀行が中小企業の事業承継絡みのM&A資金を融資!

日本経済新聞によると、東邦銀行(福島県福島市)は、先日、中小企業の事業承継に絡むM&A(合併・買収)資金の一部を融資したと発表しました。
買収対象企業の資産や収益力を担保とするLBO(レバレッジド・バイアウト)ローンと呼ばれる手法で、東北地方では珍しいそうです。

民間投資会社の技術承継機構(東京都中央区)が特別目的会社(SPC)を通じ、はんだ付け装置製造のFAシンカテクノロジー(福島県福島市)の全株式を取得しました。
東邦銀行は、買収資金のほぼ全額をSPCに貸し付けました。

FA社は主に車載向けのプリント基板製造用のはんだ付け装置を製造し、売り上げを伸ばしています。
2020年6月期の売上高は、約4億2,000万円でした。
現時点で山口薫社長(59)の後継者がおらず、自社株式の譲渡を先行実施しました。

同機構は、官民ファンドの旧産業革新機構(現INCJ)に参画した新居英一社長が2018年に設立しました。
後継者不足などに悩む中小製造業者の買収で技術継承の受け皿となり、転売を目的とせず、長期的な成長を目指す経営手法をとっています。
投資は今回で3件目だそうです。

すぐに事業承継したい、会社を売りたいというニーズがあっても、すぐに、承継できる人、買ってくれるところがあるとは限りませんので、こういう形態の事業承継やM&Aは増えていくでしょうね。
銀行としても、融資が発生しますから。
ただ、渡り鳥経営者みたいな方がいらっしゃるのかどうかは疑問ですが。

東邦銀行が中小企業の事業承継絡みのM&A資金を融資したことについて、どう思われましたか?


社長の平均年齢が調査開始以来初めて60歳に到達!

社長の平均年齢は年々上昇し続けており、70歳以上で現役の社長も珍しくはありません。
その一方、全国の後継者不在率は2020年時点で65.1%(「全国企業『後継者不在率』動向調査(2020年)」帝国データバンク、2020年11月発表)と依然高水準であり、事業承継への備えが追いついていない現状もうかがえます。

帝国データバンクは、2021年1月時点の企業概要データベース「COSMOS2」(約147万社収録)から企業の社長データ(個人、非営利、公益法人等除く)を抽出し、約94万社を、業種別、業歴別、都道府県別に集計・分析しました。

2020年の社長の平均年齢は60.1歳(前年比+0.2歳)と、調査を開始した1990年以降初めて60歳を上回りました。
年代別の割合をみると、「60代」が構成比27.3%を占め、最多となっています。
業歴別にみると、30年以上では全体の平均年齢を上回りました。
また、「30~50年未満」では「60代」「70代」、「50~100年未満」「100年以上」では「60代」がそれぞれ最多となっています。
都道府県別にみると、「秋田県」が平均62.2歳(全国平均+2.1歳)で最も高く、「岩手県」が62.0歳(同+1.9歳)、「青森県」が61.8歳(同+1.7歳)でこれに続いています。
上位3県はすべて東北地方となっています。

<社長の平均年齢>
2020年の社長の平均年齢は60.1歳(前年比+0.2歳)と、調査を開始した1990年以降初めて60歳を超え、過去最高を更新しました。
年代別の割合をみると、「60代」が構成比27.3%を占め最多、「50代」が同26.9%、「70代」が同20.3%で続いています。
上場企業社長の平均年齢は58.7歳(前年比±0.0歳)、年代別では「60代」が構成比43.3%を占め最多となりました。

<業種別>
社長の平均年齢を業種別にみると、「不動産業」が62.2歳で最も高く、「製造業」(61.3歳)、「卸売業」(61.0歳)、「小売業」(60.2歳)も全体の平均年齢を上回りました。
また、「製造業」「卸売業」「小売業」では「60代」が最多、「不動産業」では「70代」が最多となりました。

<業歴別>
業歴別にみると、30年以上では全体の平均年齢を上回りました。
また、「10年未満」では「40代」が最多(構成比34.5%)となる一方、「30~50年未満」では「60代」「70代」(同29.3%)、「50~100年未満」「100年以上」では「60代」(各、同29.7%、同32.7%)がそれぞれ最多となりました。
業歴別における「80歳以上」の割合をみると、「50~100年未満」では構成比7.4%、「100年以上」では同6.2%と、50年未満よりも割合が大きくなる傾向がみられました。

<都道府県別>
都道府県別にみると、「秋田県」が平均62.2歳(全国平均+2.1歳)で最も高く、「岩手県」が62.0歳(同+1.9歳)、「青森県」が61.8歳(同+1.7歳)でこれに続いています。
また、東北以外でも主に東日本において全国平均を上回る地域が目立ちました。
1990年と比較して社長の平均年齢が最も高くなったのは「秋田県」(+8.4歳)、次いで「青森県」(+7.9歳)、「山梨県」・「沖縄県」(+7.8歳)となりました。
一方、「三重県」は平均58.8歳(全国平均▲1.3歳)と、全国で最も平均年齢が低くなっています。

<早めの後継者選定および育成に取り組むことの重要性>
2020年の社長の平均年齢は60.1歳と、調査開始以来初の60歳超となりました。
高齢化が進むにつれて社長の平均年齢も右肩上がりで推移しており、1990年(平均54.0歳)と比較して6.1歳上昇しました。
また、業歴30年以上では全体の平均年齢を上回っており、老舗クラスの企業においては社長の高齢化が顕著に進んでいるといえるでしょう。
社長平均年齢の上昇は、年齢に関係なく第一線で活躍し続ける社長が多いことを示しています。
その反面、事業承継の観点では課題の一つになり得ます。
2020年時点の社長交代率は3.80%と、ここ数年の推移から大きな変動はみられないほか、後継者が不在であることなどが一因となった倒産(後継者難倒産)は2020年1月から12月で452件と、依然高水準です。
企業の将来性を担保する観点からも、早めの後継者選定および育成に取り組むことの重要性が増しています。
社長の平均年齢は今後も上昇傾向が続くとみられますが、これまでに培ってきたノウハウや歴史を絶やさないためにも、円滑な事業承継に向けた準備が急務になっているといえるでしょう。

国も事業承継に力を入れていますが、新型コロナウイルスの影響もあるのかもしれませんが、事業承継が思ったほど進んでいませんね。
日本経済を支え、雇用を守り、地域に貢献するためなどには円滑な事業承継は必要です。
国もそうですが、金融機関、我々公認会計士や税理士がもっと積極的に推し進めていかないと手遅れになってしまうと思います。
今後は引き継ぐ世代の人口がどんどん減っていくわけですから。

社長の平均年齢が調査開始以来初めて60歳に到達したことについて、どう思われましたか?


広島銀行が事業承継の専門サイト立ち上げ中小企業を開拓!

日本経済新聞によると、広島銀行はNTTドコモなどと組み、企業の事業承継をサポートする専門サイトを2月1日に試験的に開設すると発表しました。
ネットで申し込みを受け付け、地元の税理士などを紹介するようです。

広島銀行はこれまでも事業承継業務を手がけてきましたが、経営者の高齢化でニーズが増え中小企業まで手が回らないこともあったようです。
より効率的に地場企業の相談に対応できる仕組みとして期待しているようです。

広島県内にある年間売上高10億円未満の会社を主なターゲットとします。
サイト名は「事業承継サポート」です。
経営者は申し込み後、地元の税理士など10人の中からアドバイザーを選んで相談できます。
事業承継の手法を決めて契約を結ぶまで費用はかかりません。
親族内承継が難しく、外部の企業に自社を売却するための相談が中心になると見込んでいるようです。

サイトの試験運用は2022年1月末までで、期間内に100件の相談受け付けを目指しています。
うまくいけば、2022年3月ごろに本格的なサービスとして始めます。

個人的には、今まで、手が回らないというよりは、(手数料ビジネスの)収益にならないと思って取り組んでいなかったけれど、銀行の業績が悪くなり、もう少し小さな企業から手数料を取ることを考え始めたのではないかと思います。
中小企業から手数料があまり取れなくても、紹介した税理士から取ることができますから。
あとは、事業承継のお手伝いをしないと、融資先がなくなったり、(事業承継の支援を積極的に行っている)サブにメインを取られたりするリスクもあるわけですから。

広島銀行が事業承継の専門サイト立ち上げ中小企業を開拓することについて、どう思われましたか?


事業承継の仲介企業が受け皿としてファンドを設立!

日本経済新聞によると、第三者承継のニーズの高まりを受け、事業承継の仲介企業も動き出したようです。
名南コンサルティングネットワーク(名古屋市)は2020年10月、投資専門会社の「名南経営キャピタル」を設立しました。
自己資金で投資しながら経営を支援するセレンディップ・ホールディングス(HD、名古屋市)はグループ企業を6社に増やしています。

名南経営キャピタルは2021年1月にも1号ファンドを組成します。
自己資金で10億円規模をまかないます。
「後継者不足に悩みつつも、成長が期待できる中部圏の中小企業を投資対象としたい」(永井晶也社長)そうです。
議決権の過半数を抑え、名南ネットワークのサポートで投資先の収益力を高めるのが基本戦略です。
3~5年程度をかけて第三者への再譲渡や新規株式公開(IPO)で出口を探ります。

名南ネットワークに相談する顧客企業の中には「後継者不足に悩むが、譲渡先がいきなり第三者というのには抵抗感がある」という企業が少なくないそうです。
ファンドはこうした企業の受け皿としての役割を担うことになります。

ファンドと聞いただけでアレルギー反応を起こす経営者はまだいるようです。
セレンディップHDは長期保有を前提にしています。
投資先の信頼感を得ながら、収益を立て直して経営指導料を得る事業モデルです。
目指すのは「経営力の高いものづくり企業集団」(竹内在社長)です。

2018年にはトヨタ自動車の内装部品を手掛ける三井屋工業(愛知県豊田市)を譲り受けました。
トヨタと関係の深いサプライヤーがコンサルティング会社に事業譲渡するのは珍しいそうです。
2020年夏にはシステム開発会社を傘下に収め、グループのIT(情報技術)基盤を整えています。

最近は、事業承継の受け皿としてファンドを作るところが増えているみたいですね。
早く入りたい、直接第三者に売るのは抵抗があるとかいう場合には、ファンドもバリューアップして売却益を得ることができますので、両者の利害が一致する感じですね。
スキームはどうであれ、事業承継ができ、会社が存続し、雇用も継続するということで日本の経済を守っていけると思いますので、どんどん色々なスキームができてほしいですね。

事業承継の仲介企業が受け皿としてファンドを設立したことについて、どう思われましたか?


後継者難倒産がコロナで加速!

J-CASTニュースによると、少子高齢が進むなか、中小企業では事業後継が大きな課題の一つになっています。
東京商工リサーチが2020年11月2日に発表した調査結果によると、2020年1~9月に発生した後継者難による倒産は278件で、前年同期比54.4%増と急増していることがわかりました。

東京商工リサーチが集計を開始した2013年以降で年間(1~12月)の最多を記録した2015年(279件)を大幅に上回り、最多件数を塗り替えることが確実です。
2020年になって突然社会を覆ったコロナ禍の影響が大きいとみられます。

2020年1~9月に発生した後継者難を要因とする倒産のうち、48.5%とほぼ半数の135件は、1980年代以前に設立・創業した業歴30年以上の企業です。
また、倒産に至った代表をめぐる理由は、「死亡」が119件(前年同期比21.4%増)と最多で、次いで「体調不良」の96件(同57.3%増)となっています。
構成比は前者が42.8%、後者が34.5%と、1、2位で計215件と77.3%を占めています。

トップの高齢や健康不安が、後継者がいない企業での最大の経営リスクになっているということでしょう。

2020年1~9月の全国の企業倒産件数は6,022件(前年同期比2.4%減)で、前年同期を下回っています。
新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われて増えた倒産件数でしたが、政府の支援策が奏功し、再び企業倒産は小康状態になっています。

その一方で、後継者難倒産は急増しています。
代表者が高齢化などに悩むなか、コロナ禍の直撃を受けて事業意欲が低下したとみられます。

後継者難倒産が、全倒産に占める割合は、2013年1~9月は2.1%でしたが、2020年同期は4.6%に拡大しました。

東京商工リサーチによると、中小企業では、代表者が営業や経理の責任者を兼務することも少なくなく、このことが会社全体での情報共有に障害となり、後継者候補などブレーンも育ちにくい要因になっています。
そのため、代表者の急な死亡や病気に直面すると事業継続が困難に陥りやすいと言えるでしょう。

コロナ禍の収束が見えないなか、後継者がいない企業では倒産や廃業が加速する可能性も高いようです。

みずほフィナンシャルグループ系列シンクタンク、みずほ総合研究所の上席主任コンサルタント、堀内直太郎さんは、2020年8月25日に「ウィズコロナの事業承継に必要な中長期的『構造変革』の備え」と題するレポートを公開しました。
このなかで東京商工リサーチが2020年7月に発表した「2020年上半期(1~6月)『後継者難』の倒産状況調査」を引用して、コロナ禍の収束が見通せないこと関連づけて、経営者の高齢化や人手不足による事業承継問題が深刻さを増していることを指摘しています。
「内に後継者がいない企業の中には、これまで想定してこなかったM&Aを具体的に検討し始めるケースも少なくない」と、指摘しています。

狭義の事業承継やM&Aに関わる僕としては、実感として合っています。
事業承継関連のお仕事で経営者の方にお話を聞いていると、後継者が既に会社にいて、ほとんどのことは経験しているが、経営者や経営者の配偶者が握っている経理・財務だけ経験していないというケースが非常に多いように感じます。
ここも早めに引き継いておかないと、危ないですね。
また、M&Aのネットでのマッチングサイトのアドバイザーとして登録していますが、最近は、飲食店をはじめ、かなり売り案件が多くなっています。
良い意味でコロナがきっかけで広義の事業承継が進めば良いとは思います。
ただし、コロナによる業績悪化で売らざるをえないようになってからでは、買い手もなかなか見つからないと思いますので、こちらも早めの決断が必要ですね。

後継者難倒産がコロナで加速していることについて、どう思われましたか?


群馬銀行が事業承継や相続のCM!

日本経済新聞によると、群馬銀行は、事業承継と相続に関するテレビCMを群馬テレビや自行ホームページなどで配信を始めました。
2020年8月下旬から順次配信しており、時間の長さによって、15秒と30秒の2種類ずつ制作しています。
事業承継と相続に関する顧客のニーズを喚起し、関連業務での収益の積み増しを狙うようです。

群馬銀行が事業承継や相続に関するテレビCMを配信するのは初めてだそうです。
群馬テレビでは、群馬銀行がスポンサーの番組内で配信しています。

群馬銀行は2022年3月まで3年間の中期経営計画で、事業承継支援では6千件の実施を目標に掲げています。
2020年6月末までの累計では3,343件でした。
同じく400件を目標とする相続関連業務では93件でした。

銀行がどれほど事業承継や相続の支援ができるのか分かりませんが、こういったCMで、少しでも事業承継や相続のニーズの掘り起こしができるのであれば、資金に余裕があるところにどんどんやって欲しいですね。
我々公認会計士や税理士では、限界がありますので。
両方ともCMを観てみましたが、少しインパクトに欠けるなぁという感じはしますが。

群馬銀行が事業承継や相続のCMを配信し始めたことについて、どう思われましたか?


山陰の6信金が事業承継で連携!

日本経済新聞によると、山陰地方の6つの信用金庫は、先日、事業承継の後押しで連携することで合意しました。
山陰地方では企業経営者の高齢化が大きな課題であるため、引き継ぎ先候補の企業を紹介し合うほか、信金中央金庫の提携先の専門機関も活用し、地域経済の維持や雇用確保を図ります。

ネットワークに参加するのは、鳥取県内の鳥取、米子、倉吉の3信金、島根県内は、しまね、日本海、島根中央の3信金で、これに、信金中央金庫と信金キャピタルも加わります。
「山陰の企業で承継できれば、地元の雇用が守られ意義が大きい」と山陰信用金庫協議会会長を務める島根中央信金の福間均理事長は話しています。

同様の連携は2019年秋に岡山県の8信金が全国で初めてスタートさせ、2020年7月に広島県の4信金も取り組むなど中国地方の取り組みが先行しています。

帝国データバンクの調査によると「後継者がいない(決まっていない)」という企業は鳥取県で約76%、島根県で約71%あり、全国平均(65%)と比べて高水準です。

こちらも、広島県に引き続き、良い試みですね。
個人的には、やはり、売り手も買い手も数が多い方が良いと思いますので、信用金庫だけでなく、地方銀行なども加わればいいなぁとは思いますが。
信金キャピタルのホームページを見ても、2001年5月14日から2020年8月17日までの19年間で140件しか成約していないわけですので。

山陰の6信金が事業承継で連携したことについて、どう思われましたか?


「廃業惜しい」と昔ながらの老舗を近所の食品メーカー社員が新社長に就任し職人技を引き継ぐ!

上毛新聞によると、100年以上続く老舗の技術を守れと、昔ながらの製法であめを作る小見製菓(群馬県高崎市江木町)の新社長に、近くの食品メーカーに勤める方(36)が就任しました。
先代社長(71)から職人技を少しずつ受け継ぎ、新たな一歩を踏み出しました。

「あと2回でよろしく」と、水盤という冷たい台の上で煮詰めた水あめや砂糖を何度も折り畳んでいます。
あめ全体を均一に冷やせるかどうかで仕上がりが左右される重要な工程です。後継者は先代社長から微妙なあんばいを教わり、重さ20キロ以上のあめを練り込んでいます。

2019年12月に相川さんが食品衛生指導員として同社を訪問したのが、2人の出会いでした。
体力の低下などから廃業を決めた先代社長が機械を手放し始めた頃でした。
先代社長の職人技を反映させた年季の入った機械を前に「まだ動くのに、なくしてしまうのは惜しい」と跡取りに名乗りを上げたのです。

同社は1918年に先代社長の祖父が創業し、ニッキあめや黒あめなど伝統的な菓子を製造、販売してきました。
以前は高崎市内だけであめ製造の会社が10社以上あったそうですが、現在は同社のみだそうです。
企業買収での継続も考えていたようですが、創業100年を区切りに畳もうとしていました。

2020年5月1日付で正式に社長を交代しました。
後継者は勤務する会社と小見製菓が同じ町内にあり、業務を掛け持ちしています。
引退した先代社長からあめ作りを学び、技術を磨いています。

卸売業者だけでなく個人客からも注文が入るたびに、小見製菓は愛されていると感じるという後継者ですが、新社長となった今、伝統を受け継ぐ地元の産業としての価値を高め、新たな販路をつくれないかと考えています。
先代社長に支えてもらいながら「まずは売り上げを増やし、少しずつ頑張りたい」と意気込んでいます。

群馬経済研究所(前橋市)が2018年に実施した事業承継動向調査によると、群馬県内企業263社のうち16.7%(44社)が「後継者不在」と回答しています。
73.5%が経営上の課題として捉えているにもかかわらず、「(承継の)計画があり、進めている」と応えた企業は36.4%にとどまりました。

同研究所は「後継者がいないことで廃業する企業が増えれば、技術やノウハウ、雇用が失われる。地域経済の活力を維持するためには円滑な事業承継が重要」としています」。

国もここ数年事業承継に力を入れていますが、ビジネスとして見合う報酬を支払うことのできないような案件、この事例のような案件を引き継ぐことが、個人的には重要だと思っています。
地元の方に愛されていたお店が急にやめて、悲しい思いをしたことのある方も多いのではないかと思います。
もちろん、全国展開のチェーン店ではなく、地元の小さなお店に行くという地元の方の貢献は必要になると思いますが、味や技術や雇用や町の存続を図っていくことが非常に大事なのではないかと思います。
そのためには、Uターンを考えている人、転勤とかをしたくない人、今の仕事に満足していない人、何か新しいことをしたい人、そのお店を大好きな人などが、こういうお店を引き継いでいって欲しいなぁと改めて思いました。

「廃業惜しい」と昔ながらの老舗を近所の食品メーカー社員が新社長に就任し職人技を引き継ぐことについて、どう思われましたか?


広島の4信金が事業承継で連携!

日本経済新聞によると、広島県内の4つの信用金庫は、先日、取引先の事業承継を後押しするネットワークを立ち上げました。
引き継ぎ先の候補となる企業を紹介し合うほか、信金中央金庫の提携先の専門機関も活用します。
広島県内では後継者難に加え、新型コロナウイルスによる業況悪化で中小の廃業が増えかねません。
各信金は地域の技術や雇用を守る取り組みを「点」から「面」で展開する狙いです。

同ネットワークに参加するのは広島信金(広島市)、呉信金(広島県呉市)、しまなみ信金(同三原市)、広島みどり信金(同庄原市)です。
信金中央金庫や同中金が提携する専門機関、信金キャピタルなども入ります。

4信金は事業承継の相談があった場合、買い手となる可能性がある取引先の情報を交換します。
従来はそれぞれの金庫の取引先内で引き継ぎ先を探すことが多かったようですが、営業エリアが限定されているために限界もあったようです。
他の信金の協力を得ることで、事業基盤を県内にとどめることにつなげます。

今回の取り組みでは信金同士の横の連携に加え、信金中金が業務提携を結んでいるスタートアップ企業や専門機関なども力を発揮します。
トランビ(東京都港区)が手掛ける事業承継の仲介サイトに各信金が案件をあげることで、より広域で買い手企業を探すことができるようにします。

事業承継を検討する売り手企業は相手探しに時間や費用がかかることが多く、煩わしさから廃業を決める例も少なくありません。
買い手とのマッチングまでは売り手に費用がかからない仕組みにすることで、廃業ではなく事業譲渡や売却といった承継につなげることを目指します。
マッチング後の監査や株式譲渡にかかる契約書類の作成などはミロク情報サービスグループなどが税理士や会計士を紹介するようです。

同様の仕組みは2019年秋に岡山県でも立ち上がっており、今回は全国で2例目です。
岡山県では既に複数の成功事例が出ているそうです。

広島でも同ネットワークが立ち上がった背景には、広島県内の後継者不足の問題があります。
帝国データバンク広島支店がまとめた調査によると、県内企業の後継者不在率(2019年)は7割超で、全国で4番目に高い水準です。
広島県内の経営者の平均年齢は59.8歳と、高齢化も年々進行しています。

足元では新型コロナの影響で、幅広い業種で収益環境が悪化しています。
呉市では日本製鉄が呉製鉄所(現・瀬戸内製鉄所呉地区)を2023年9月末までに閉鎖することもあり、広島県内での廃業増も懸念されています。
2019年の県内における休廃業・解散件数は650件と、3年ぶりに増加しました。
帝国データバンク広島支店の藤井俊氏は「今後はさらに増加基調になる可能性が高い」と指摘しています。

先日の発足式で、広島信金の武田龍雄理事長は「コロナによる廃業は何としても防ぎたい」と話しました。
地域金融機関としては取引先に事業を継続してもらうことが最も望ましいですが、「事業承継も一つの選択肢として提示できることが大事」(呉信金の向井淳滋理事長)と話しています。
廃業を防ぎつつ、円滑な承継の好事例を広島県内で共有する取り組みも欠かせません。

良い試みですね。
本当は、自県のことを考えるのであれば、地銀も巻き込めればいいのでしょうが、そう簡単にはいかないんでしょうね。
一方で、残念ながら、国が各都道府県に設置している事業引継ぎ支援センターや事業承継ネットワークにあまり期待していないということの表れようにも思われますので、事業引継ぎ支援センターや事業承継ネットワークにも頑張って欲しいと思います。

広島の4信金が事業承継で連携したことについて、どう思われましたか?


事業承継の際の個人保証が不要になる中小企業成長促進法が成立!

日本経済新聞によると、中小企業の事業承継の際に、経営者の個人保証を不要にする制度を盛り込んだ「中小企業成長促進法」が、先日の参議院本会議で可決、成立したようです。
信用保証協会が経営者の個人保証を肩代わりする制度を新設します。
中小企業が事業承継をためらう一因を排除し、体力のある中小企業の廃業を防ぎます。

同法は事業承継を後押しする改正経営承継円滑化法などを束ねています。
経済産業大臣の認定を受けると、事業承継の際に通常の保証と別枠で最大2.8億円の保証を受けられるようになります。

経営者の高齢化などで中小企業が後継者を探す場合、個人保証の存在がネックとなるケースは多く、円滑な事業承継の妨げとなっていました。

事業の拡大で公的支援を打ち切られることが理由で中小企業が経営革新に尻込みするのを防ぐため、支援制度も見直すようです。
国や地方自治体が地域活性化に重要と認めた場合、大企業へと成長した後も地域未来投資促進法に基づく計画期間中は低利融資などの特例を受けられるようにします。

血縁関係のない社内のサラリーマン役員や従業員を後継者とすることを考えたとしても、財産がそれほどないことも多く、保証や担保提供がネックとなり事業承継が進まないこともありますので、良い方向に向かっていますね。
そもそものところは、金融機関が事業内容を評価して、将来のキャッシュ・フローを担保に融資すれば、経営者の担保提供や保証はいらないと思うのですが、金融機関にその能力があまりないのと、世の中には悪いことを考える人もたくさんいますので、なかなか難しい面もありますが、こういった方法で補われるのはありがたいですね。
コロナ禍で、事業承継がさらに後回しになってしまうかもしれませんが、使えるところは有効に使ってほしいですね。

事業承継の際の個人保証が不要になる中小企業成長促進法が成立したことについて、どう思われましたか?


中小企業の休廃業件数の推移!

新型コロナウイルスの感染拡大により資金繰りや財務が悪化する中小企業が相次ぐなか、後継者を見つけられず廃業に追い込まれるケースが出てきています。

政府は2020年度補正予算に事業承継の支援策として、100億円を計上しました。
廃業の抑制を図りたい考えです。

一方、東京商工リサーチによると、新型コロナに関連した経営破綻は4月に急増し、4月27日時点で100件に達しました。

4月20日には、東京・銀座の歌舞伎座前の老舗弁当店「木挽町辨松」が、後継者がいないことなどを理由に廃業し、歌舞伎役者やファンの間に波紋が広がったのも記憶に新しいところです。

2019年に約4万3,000件だった中小の休廃業件数は2020年、増加するとみられます。

新型コロナウイルスの影響で、お店を一定期間閉めたり、営業時間を短縮したり、お店を閉めたものの再び開けるタイミングが見つからないなど、中小企業も、今後、どんどん休業や廃業するところが出てくると思います。
現在、色々な融資制度や給付金や助成金などが出てきたり、社会保険料や税金の猶予が認められたりはしていますが、給付金や助成金など返さなくてもよいものを除き、結局は無利息だろうと、元本を返済したり、社会保険料や税金を支払ったりしないといけません。
新型コロナウイルスが落ち着いたとしても、おそらくしばらくは厳しい状況は続くでしょう。
それゆえ、融資などで延命したとしても、結局は破綻に追い込まれる企業も増えてくると思われます。
よって、将来的なことを考え、早めに休業や廃業を決めることも英断かと思いますので、休廃業は増えるでしょうが、良い意味での早めの休廃業の決断が増えることは、悪くはないかもしれません。

中小企業の休廃業件数の推移について、どう思われましたか?


特例で猶予される事業承継税制の申請は10倍だが認知向上に課題!

日本経済新聞によると、「約3000万円の贈与税の支払いがすべて猶予されました」と都内で部品製造会社を経営するAさんはほっとしたように話しています。
創業者の父親が80代と高齢のため、2019年に父の所有する株式の贈与を受けて社長に就任しました。
会社を継ぐ際の税負担がネックでしたが、「事業承継税制」が2018年に大幅に緩和されたことが背中を押したそうです。

(親族内)事業承継とは、大まかにいえば中小企業を経営する親から子に経営を譲ることです。
その際に子は親の株式を贈与や相続や売買で取得する必要があります。
ただし業績が好調だったり、会社の保有資産が多額だったりすると株式評価額は高くなり、贈与税や相続税や所得税の負担が重くなる例は少なくありません。
そこで雇用維持(現在は実質的に撤廃)などの条件を満たせば納税負担を軽減するのが、事業承継税制なのです。

経営を引き継いだとき猶予された贈与税は先代の経営者が亡くなると免除になります。
一方で、贈与された株式は相続税の対象ですが、手続きをすれば、納税は猶予されます。
次の世代まで経営を引き継ぐと、猶予されていた相続税は最終的に免除となります。

事業承継税制は2009年に始まりましたが、条件が厳格で利用は低調でした。
そこで政府は2018年1月から10年間の特例として、一定の手筒機などをすれば、贈与や相続に伴う税負担を全額猶予・免除することにしました。
従来からあった特例措置ではない一般措置は、相続税は全株式の53%相当のみ、贈与税は67%相当のみの猶予で、残りは納税する必要があるだけに、思い切った措置なのです。

政府の緩和を受けて、都道府県に特例承継計画を提出する経営者は増えています。
特例措置に必要な計画の申請件数は2019年に3,815件と、一般措置だけだった2017年の396件に比べほぼ10倍に膨らんでいます。

優遇のメリットに加えて、特例の対象になるには2023年3月31日までに計画を申請する必要があることも件数を押し上げたようです。
期限を過ぎると一般措置しか受けられないため「特例を受けるか否かは別として、ひとまず計画を提出する経営者が目立った」と税理士の藤曲武美氏は話しています。

ただ、特例の内容が十分に知られていない面もあるようです。
東京商工会議所が特例承継計画の策定状況を中小企業に調査したところ「申請中」「申請を検討している」との回答は合計で14%弱にとどまり、「よく分からない」が23%あまりを占めました。

中小企業は国内企業の大半を占め、独自の技術・ノウハウをもつ企業はたくさんあります。
中小企業庁によると、2025年までに平均引退年齢の70歳を超える中小企業経営者は245万人で、その約半数は後継者が未定です。
特例の認知度が上がれば、活用する企業が増える余地は大きいといえそうです。

上記はもともと日本経済新聞の記事ですが、少し付け加えています。
あまりにも、簡単に事業承継税制が使えるような書き方だからです。
個人的には、この記事ほど、事業承継税制が知られていないわけではないように感じます。
皆さんが考えているほど、簡単ではありません。
『猶予』であって『免除』ではないからです。
上記に『免除』というところがでてきますが、一方で後継者が『猶予』を引き継ぐだけです。
新型コロナウイルスの影響で、業績が悪化し、財務状況も悪化する企業が増えると推測されます。
確かに株価は安くなり、事業承継対策はしやすくなる面はあるかもしれませんが、そのような会社を後継者が引き継ぎたいと思うでしょうか?
個人的には、いわゆる親族内もしくは会社内の第三者への承継は思ったほど増えず、会社外の第三者への承継(いわゆるM&A)が増えるのではないかと考えています。
国がせっかく多額の予算を投入して事業承継を進めようとしていますが、当初の想定とは違う方向に行きそうですね。

特例で猶予される事業承継税制の申請は10倍だが認知向上に課題があることについて、どう思われましたか?


新型コロナで後継者不足が深刻化し政府が中小企業・個人事業者の事業承継の支援を強化!

新型コロナウイルスの感染拡大により資金繰りや財務が悪化する中小企業が相次ぐ中、後継者を見つけられず廃業に追い込まれるケースが出てきています。
政府は2020年度補正予算に事業承継の支援策として100億円を計上しました。
廃業の抑制を図りたい考えです。

東京商工リサーチによると、新型コロナに関連した経営破綻は4月に急増し、4月27日時点で100件に達しました。
先日、東京・銀座の歌舞伎座前の老舗弁当店「木挽町辨松」が、後継者がいないことなどを理由に廃業し、歌舞伎役者やファンの間に波紋が広がりました。
2019年に約4万3,000件だった中小の休廃業件数は今年、増加するとみられます。

国内雇用の7割を占める中小企業の経営者や個人事業者の多くが後継者不足に頭を悩ませる中、コロナ拡大がこの問題を一段と深刻化させています。
宿泊・飲食業を中心に需要回復が見通せないだけに、事業を引き継いでくれる人が見つかりにくくなっているためです。

政府は補正予算で事業承継の仲介手数料などに対応した補助金を新設しました。
官民が出資する支援ファンドも創設します。
後継者が見つからない場合でも、企業の合併・買収(M&A)は事業を存続させる有効な手段となります。中小企業庁は2020年3月、中小企業向けにM&A契約の具体例や仲介手数料の目安をまとめた指針を策定しました。
「ハゲタカのイメージが強いM&Aに対する不安を払拭(ふっしょく)したい」(幹部)としており、M&Aによる廃業回避を進める方針です。

このような状況を考えると、破綻や休廃業が増えるのは明らかでしょう。
当然、M&A市場で、売り希望の企業は増えるでしょう。
しかしながら、一般的に、財務状態や経営成績が悪化している企業を買い手が買う可能性は下がるでしょうし、買い手側の財務状態や経営成績が悪化している可能性も高いため、買いにくくはなるでしょう。
ただし、一部の元気な企業はチャンスとみて積極的にM&Aを進めるでしょう。
このような中で、事業承継の仲介手数料などに対応した補助金を新設したり、官民が出資する支援ファンドを創設したり、中小企業向けにM&A契約の具体例や仲介手数料の目安をまとめた指針を策定したりしても、あまり役に立たないのではないかとも思えますね。

新型コロナで後継者不足が深刻化し政府が中小企業・個人事業者の事業承継の支援を強化していることについて、どう思われましたか?


「事業承継」の窓口である事業引継ぎ支援センターと事業承継ネットワークを一本化!

政府は事業承継を支援する国の機関「事業引継ぎ支援センター」と、経済産業省が自治体などと連携して支援する「事業承継ネットワーク」を2021年4月に統合するそうです。
5月にも今通常国会に提出する「中小企業成長促進法案」に関連法案を盛り込みます。

関連事業の窓口を一本化することで、連続性のある支援の提供と事業者の利便性向上につなげます。
統合した機関を、経営再建を支援する国の機関「再生支援協議会」に合流させるかが今後の焦点とみられます。

事業承継ネットワークは、親族内外の事業承継を促進するため、2017年度から経済産業省のプッシュ型事業承継支援高度化事業として開始しました。
東京都を除く道府県で支援事業を展開しています。
独自の事業承継診断を活用し、商工団体や金融機関などの専門家が課題を探るとともに、経営者に事業承継の準備に対する“気付き”を促しています。
事業承継診断の実績は2019年4月から9月の半年間で約6万3,400件です。
中小企業庁は、この診断結果を事業引継ぎ支援センターでも活用し、“気付き”を事業承継の実現につなげたい意向です。

事業引継ぎ支援センターはデータベースを活用し、県境を越えたマッチングで事業承継を促進しています。
センターは全国47都道府県に設置され、2011年度の発足以来、相談件数は累計4万件超と増加傾向にあります。
ただし、政府が今後10年間で60万人の第三者承継を目指しているのに対し、事業引継ぎ支援センターの事業引継ぎ件数は、累計約3,000件にとどまっています。

事業引継ぎ支援センターの業務はM&A(合併・買収)による事業承継に限られていることが背景にあります。
事業引継ぎ支援センターと事業承継ネットワークが円滑に統合するには、親族内承継事業を追加する必要があり、今国会で法改正を目指します。

また、東京商工リサーチがまとめた「2019年休廃業・解散企業動向調査」によると、休廃業・解散する直前期の決算は、2019年には赤字率が5年前より1.2ポイント上昇して38.6%になっています。
赤字経営が廃業を促す一因となっていると言えるでしょう。

事業引継ぎ支援センターと、経営再建を支援する再生支援協議会が統合すれば、こうした事態を回避する効果が期待され、今後の課題になります。
ワンストップの支援により、経営再建と経営者の交代が同時に進むことになります。

僕自身、中小企業基盤整備機構(いわゆる中小機構)で事業承継コーディネーターをやっているので、『色々なところがあるのでどこに頼んでよいのか分からない』と言われることがまぁまぁあります。
個人的には、まずは窓口を一本化したほうが良いと思っていたので、とりあえず一本化は良いことだと思います。
ただし、一本化して終わりということではなく、あとは目標などの数値を達成することが目的ではないと思いますので、きちんと事業引継ぎの後押しができる組織になってほしいですね。

「事業承継」の窓口である事業引継ぎ支援センターと事業承継ネットワークを一本化することについて、どう思われましたか?


中小企業の「2025年問題」は根深い!

 ニッセイ基礎研究所によると、中小企業の事業承継問題が話題になる機会が増えています。
経営者が高齢化していく中、後継者が見つからない中小企業も多くなっています。
2017年秋に経済産業省と中小企業庁が出した試算によれば、「現状を放置すると、中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる」可能性があるそうです。
あわせて、休廃業・解散企業の約5割が黒字であることにも触れ、地方経済の再生・持続的発展には事業承継問題の解消が必要であると言及しています。
上記は一定の仮定を置いた試算ではありますが、2025年まで残された時間は少なくなる中、政府も中小企業の事業承継対策に取組んでいる状況です。

中小企業は、企業数では日本企業の約99%を占め、従業員数では約70%を占めます。
経済や社会の基盤を支え、雇用の受け皿として機能としていると言えるでしょう。
中小企業の経営は、経営者自身の手腕・信用によるところも大きくなっています。
しかしながら、その経営者の高齢化が進んでいるのです。
年代別に見た経営者の年齢分布を見てみると、1995年から2015年にかけて高齢の経営者の割合が増加しています。
経営者年齢のボリュームゾーンは、40代後半から60代半ばへと移動しています。
あと数年で、そのボリュームゾーンが70代に突入するのです。
まだまだ元気で活力ある経営者も多いのでしょうが、そのボリュームゾーンにいる多くの経営者が引退を考える時期がもうすぐやってくるのです。

しかしながら、まだ後継者を決められていない経営者が多くなっています。
東京商工会議所のアンケート調査によれば、「既に後継者を決めている」経営者は、60代で約3割、70代でも約5割に留まっています。

また、同アンケートで「後継者は決めていないが、事業は継続したい」と回答した経営者の多くが後継者探索・確保を障害・課題と感じています。
ところが、そう感じていてもその準備・対策に取組む経営者は少ないようです。
日々の経営で精一杯、または何から始めたら良いのか分からないといったことも背景にあるのでしょう。
後継者を決定して終わりではなく、後継者の育成、承継準備にも時間がかかることを考えると、承継のハードルは年々上がっていくことになります。

かつては子や親族が事業を承継するケースが多かったですが、親族内承継が必ずしも当たり前ではなくなってきています。
事業承継のリスクや不安から、安定した会社勤めを選ぶ経営者の子・親族も多くなっています。
最近は、役員・従業員への承継や、M&A等(株式譲渡や事業譲渡等)による承継が増加傾向にあります。
こうした後継者確保の難しさ、親族外承継のニーズの高まりもあって、中堅・中小企業のM&A仲介を手掛ける株式会社日本M&AセンターのM&A成約件数は堅調に伸びているのです。
地方銀行への事業承継への相談件数も増加傾向にあり、事業承継問題はM&A仲介業や地方銀行、コンサルティング会社等にとっては、大きなビジネスチャンスになっている一面もあるのです。

政府も、成長戦略において今後10年程度を「集中実施期間」とする等、取組みを強化する方針です。
例えば、「平成30年度税制改正」では、事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制について、「今後5年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者」を対象として抜本的に拡充しています。
また、2018年7月に中小企業等経営強化法、及び中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の一部改正が施行され、M&A等再編による事業承継への措置や、親族外承継時の資金ニーズへの対応が追加されました。

まだまだ後継者が決まっていない企業も多い中、政府の支援策や、M&A仲介業・地方銀行といった民間のサポートで、事業承継問題がどこまで好転するのかに注目が集まっています。

経営者の高齢化、事業承継の問題は今になって叫ばれているわけではありません。
2004年度版の中小企業白書にも、経営者の高齢化、後継者難が言及されています。
それから約14年、経済環境は改善しましたが、事業承継問題は依然として大きな課題として残っており、解決の難しさを改めて認識させられます。

事業承継を考える経営者・中小企業は、早めに課題に着手する必要があります。
仮に後継者が見つかったとしても、後継者の育成やその準備に数年かかることも多くなっています。
M&Aによる株式譲渡、事業譲渡等を考えるにも、実際にM&Aが成立するまでには時間がかかります。
買い手がすぐに見つかるとは限りませんし、買い手候補が見つかったとしても、企業価値算定・デューデリジェンス・条件交渉(譲渡価格、今後の経営方針、従業員の処遇等)には一定の時間を要します。
売り手の時間に余裕がなければ、足もとを見られて買い手ペースで交渉を進めなくてはならないこともあるでしょう。
また、所在不明株主が存在する場合には、買い手が嫌がって条件で譲歩せざるを得ないケースもあります。
そうした所在不明株主の整理等にも時間を要する点には留意が必要です。
また、M&Aによる承継が増えてきたとはいえ、小規模・零細事業者のM&Aの担い手はまだまだ少なく、小規模・零細になるほどハードルも高くなっています。
このように、事業承継には時間がかかり、早めの着手が求められるものの、実際には何から手をつけて良いか分からない経営者も多くなっています。
地域金融機関、地方自治体、商工会・商工会議所等の支援組織の一層の啓蒙・支援活動に期待したいですね。

また、親族内承継であっても、親族外承継であっても、如何に企業の魅力を高められるかが重要です。
中小企業庁の「経営者のための事業承継マニュアル」の中でも、事業承継に向けた経営改善、会社の「磨き上げ」の重要性が強く指摘されています。
後継者候補に是非継ぎたいと思わせるように、他の企業から是非買いたい、その事業が欲しいと言われるように、企業の魅力を高めていく必要があるのです。

継続的に利益を出して成長し、雇用の受け皿となるような魅力や可能性のある中小企業が、後継者がいないという理由で廃業に追い込まれるのは余りに惜しいですね。
事業承継で経営者としてチャレンジしたいという人材を増やしていく必要があります。
イノベーション推進・ベンチャー支援策にも共通する点ですが、日本はリスクをとって起業等にチャレンジする人が少ないことが長らく指摘されてきました。
アントレプレナーシップ(起業家精神)を育む起業家教育や、承継後間もない経営者への支援策、ロールモデルの提示等の更なる推進が必要でしょう。

アベノミクスで景況感が改善したものの、中小企業は新たな経営課題に直面しています。
深刻化する人手不足が中小企業を悩ませています。
また、小売や生産の現場等、様々な領域でデジタル化が急速に進もうとしています。
今後、IT人材に乏しく、積極的なIT投資に手を打てない中小企業が、競争力を失う可能性もあります。

後継者がなかなか見つからない状況下、中核人材獲得や生産性向上を果たせず競争力に乏しくなった中小企業の退出(廃業)が一定程度増えていくことは避けられないでしょう。
ネガティブな話題が先行する事業承継問題ですが、むしろこれを契機に、廃業、再編、経営者の若返り等を通じて、産業や経済の新陳代謝を進めていくことも求められます。
活力ある中小企業が次々と登場し、日本経済、地方経済を盛り上げていくことが出来るでしょうか?
今後の展開を見守りたいですね。

上記は目新しいことは一つも書いていませんが、事業承継がなかなか進んでいないのは事実です。
僕自身、独立して8年半ほど経ちますが、独立当初から事業承継は事務所の柱として捉えています。
色々な面で、事業承継の重要性が叫ばれていますが、まだまだ進んでいないのは、公認会計士・税理士・中小企業基盤整備機構事業承継コーディネーターとして力不足と、認識していただく難しさを感じています。
業務として、M&Aも柱として捉えていますが、独立してから、圧倒的にお手伝いさせていただいているのはM&Aです。
ここ数年、特にその傾向が強いように思います。
個人的には、1947年から1949年に生まれたいわゆる団塊の世代の経営者から、僕もそうですがいわゆる第2次ベビーブームで生まれた経営者に承継することが、ここ数年は中心になると思いますが、本当に大変なのはその次の事業承継だと思っています。
人口分布図を見ても、第2次ベビーブーム以降、大きな山はないわけですから。
それゆえ、今回の事業承継が順調に進まないと、日本経済が終わってしまうのではないかとすら思っています。
それゆえ、親族内の事業承継にしろ、M&Aにしろ、1件でも多くの案件をお手伝いさせていただき、雇用や地域経済を少しでも守ることに貢献したいと思っています。

中小企業の「2025年問題」は根深いことについて、どう思われましたか?


大戸屋のお家騒動が終結!

 M&A Onlineによると、居酒屋「甘太郎」などを運営するコロワイドが、大戸屋ホールディングスの株式18.67%を取得して筆頭株主になったようです。
急逝した創業者・三森久実氏の妻・三枝子氏とその息子・智仁氏が、保有していた株式をすべて譲渡したのです。
大戸屋ホールディングスは久実氏が逝去した後、現社長・窪田健一氏と三森家の間で後継者を巡る壮絶な争いを繰り広げていました。
コロワイドの登場により、後継者争いに終止符が打たれました。
これは大戸屋の騒動をまとめたものです。

大戸屋ホールディングスの創業者である三森久実氏が、肺がんにより逝去したのは平成27年7月27日のことです。
その後、久実氏の従弟で取締役の窪田健一氏がトップに立ちました。
46歳だった窪田氏は国内事業本部長などを務めており、その実力は社内外からも認められていました。
しかしながら、それを良しとしない三枝子夫人が、会社の裏口から社長室に入り込み、机の上に久実氏の遺骨と位牌、遺影を置いて退任を迫るといった。そんなドラマのような一幕があったことはあまり知られていません。
「主人があなたを見ている。窪田、社長を辞めなさい。そして、智仁を社長にしなさい」
この鬼気迫るやり取りに至るまでに、いったい何があったのでしょうか?

こじれた要因は大きく2つあります。
1つは久実氏の肺がんが判明してから死に至るまで、わずか一年しかなく後継者問題に決着をつける時間がなかったこと、2つ目は息子の智仁氏が当時27歳とあまりにも若かったことです。

久実氏が不治の病だとわかったのは、平成26年7月でした。
そのときすでに脳への転移が認められており、悪化すれば通常の判断ができない状態でした。
窪田氏と智仁氏は主治医から、久実氏がいなくなった後の会社の方針をできるだけ早く本人から吸収するようにと伝えられます。

創業者・久実氏が息子の智仁氏にかける期待と熱の入れ方は相当なものです。
戸田公園店の店長だった智仁氏は、肺がんが判明した直後の平成26年8月に執行役員社長付に昇進しています。
更に平成27年6月の株主総会では取締役に選任され、常務取締役海外事業本部長に就任しました。

役員や執行役、社外役員の大半が「昇進は早すぎる」という印象を持っていました。
しかしながら、死期が迫る会長の意向を汲み、反論ができませんでした。
生前の久実氏は親族だけでなく、窪田氏などの主要経営幹部にも「智仁を後継者に」という意向を伝えていたといいます。

久実氏の死後、窪田氏と智仁氏の関係は悪化します。
平成27年8月に窪田氏と智仁氏は都内の焼き鳥店で食事をしました。
そこで智仁氏が「僕が正当な事業の継承者だ」などと思いのたけを口にします。
対する窪田氏は「もっと経験を積んで地べたを這ってやらないと誰もついてこないし、そんな簡単な会社じゃない」とたしなめます。
会話はヒートアップし、「(智仁氏は)もう会社には来なくていい」との発言に至りました。
それが決定的となり、二人の関係は急速に冷え込みます。
そのおよそ一か月後に三枝子夫人が遺骨と位牌を持って会社にやってくるのです。

そんな折、功労金を巡る大問題が巻き起こります。
それが智仁氏の逆鱗に触れるのです。
功労金は生前に支払うことができませんでしたが、役員は創業家に8億円程度を準備するつもりでした。
しかしながら、それに待ったがかかるのです。
大戸屋は「祇園ミクニ」や上海事業、植物工場などの負の遺産を抱えていました。
まずはそれらを整理するための資金に充てた方が良いのではないかという意見が出たのです。
結局、功労金の支払いは先延ばしになりました。
決まりかけていたことを知っていた智仁氏は激怒しました。

追い打ちをかけるように、窪田氏は智仁氏に対して、海外事業本部長の任を解いて香港事業運営部長に任命します。
事実上の降格です。
「僕が唯一無二の存在だ」と言い放つ智仁氏の未熟さを考慮し、経験を積ませるための決断でした。

社会の厳しさを知り、客観的かつドライに対応する窪田氏と、久実氏と三枝子夫人に可愛がられ、期待されて大志を抱く智仁氏の間で、跡継ぎ問題は、価値観や視座が異なることで巻き起こった出来事でした。
これは、カリスマ性を持った創業者が急逝した際によくみられる事象の一つです。

結局、会社に居場所を失くした智仁氏は、平成28年に大戸屋ホールディングスの役員を辞任し、スリーフォレストという高齢者向けの宅配事業の会社を立ち上げました。
平成29年6月の株主総会では、功労金2億円の支給が決まるのです。

そして今回、持ち株すべてをコロワイドに譲渡して、智仁氏と三枝子夫人の株主としての影響力もなくなりました。

一連の後継者を巡る騒動は、こうして終焉を迎えたのです。

最近の事業承継の失敗例として取り上げられたりする大戸屋ですが、とりあえず騒動は終わりを迎えたようですね。
上場企業は、プライベートカンパニーではなくパブリックカンパニーですから、やはり、早くから取り組んでおかないと、会社の存続問題につながりかねないということを改めて認識しました。
これは、上場企業だけでなく、中小企業でも同様です。

大戸屋のお家騒動が終結したことについて、どう思われましたか?


中小企業の第三者承継に関する支援税制を中小企業庁と財務省が検討!

 後継ぎのいない中小企業の経営者が第三者に円滑に事業を譲り渡せるよう、中小企業庁と財務省は新たな支援税制の創設を検討するようです。
経営者が会社を売った時に手にする利益にかかる税金を、一定条件のもとで繰り延べる内容です。
会社を譲り受けた側にも、損失に備えた引当金を税務上の損金とすることを認めるなど優遇策を検討します。

中小企業庁が近くまとめる税制改正要望のなかに「第三者承継促進税制」の創設を盛り込み、財務省と折衝します。
2025年には全国の中小企業の経営者の約6割が70歳以上になり、その半分の約127万人は後継者不在とされています。
税制面の支援措置を設け、後継者難による廃業を回避する狙いがあります。

検討中の新たな税制の柱となるのが経営者の税負担軽減です。
経営者が他企業やファンドなど第三者に会社を売って退任する際、株式の簿価と売却額の差分だけ譲渡益(黒字)が生じ、通常20.315%の税金がかかります。
検討中の新税制では、課税をいったん繰り延べます。

経営者が退任後、譲渡益を元手にベンチャー企業などに投資して赤字が発生した場合などは、赤字と譲渡時に生じた黒字を相殺することを認めることを検討しています。

経営者から事業を承継した第三者側への優遇措置も設けます。
承継に伴って発生した「のれん」の価値について、通常は5年かけて償却するところを、特別に一括償却できるようにします。

承継後に投資損失に備えて計上した引当金を税務上の損金として扱い、毎年の税負担を圧縮できるようにする案も浮上しているようです。

事業承継を巡っては、親族内の承継に伴う贈与税・相続税の負担を大幅に減らす「新事業承継税制」が2018年4月からスタートしています。
2019年度からは個人事業主版の事業承継税制も創設されました。

事業承継を進めていくのは大事なことだとは思いますが、どこか支援税制が的外れだと思うのは僕だけでしょうか?
高齢の方が多いなか、課税を繰り延べる必要があるのか疑問ですし、高齢の方がベンチャー企業に投資するでしょうか?
第三者側を優遇するのは良いかと思いますが、『のれん』を償却するのが嫌で、IFRSを採用している上場企業が多いと思いますので、一括償却はニーズがどれほどあるのかなぁと疑問に思います。
株式譲渡所得の税率を軽減したり、第三者側は法人を含め、エンジェル税制的なものを整備すれば良いのではないかと個人的には思っています。

中小企業の第三者承継に関する支援税制を中小企業庁と財務省が検討していることについて、どう思われましたか?


2018年は「人手不足」関連倒産が過去最多の387件発生!

 2018年(1-12月)の「人手不足」関連倒産は387件(前年比22.0%増、前年317件)に達したようです。
2013年に調査を開始以来、これまで最多だった2015年の340件を上回り、最多記録を更新しました。

<2018年の要因別>
2018年の「人手不足」関連倒産387件の内訳では、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が278件(前年比11.6%増、前年249件)、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が59件(同68.5%増、同35件)、中核社員の独立、転職などの退職から事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が24件(同33.3%増、同18件)、賃金等の人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型が26件(同73.3%増、同15件)でした。
事業承継が問題になるなか、「後継者難」型が全体の7割(構成比71.8%)を占めた一方、「求人難」型や「人件費高騰」型の増勢が目立ちました。

<2018年の産業別>
2018年の産業別では、最多がサービス業他の106件(前年比39.4%増、前年76件)でした。
次いで、建設業71件(同10.1%減、同79件)、卸売業63件(同61.5%増、同39件)、製造業63件(同50.0%増、同42件)、運輸業28件(同21.7%増、同23件)の順です。
2018年の地区別では、全国9地区のすべてで倒産が発生し、このうち関東(132→170件)、九州(40→51件)、中部(32→45件)、近畿(33→36件)、東北(21→29件)、我が四国(10→15件)の6地区で前年を上回りました。
一方、減少は中国(21→20件)と北海道(24→17件)の2地区だけで、同数が北陸(4→4件)でした。

政府は深刻な人手不足から外国人労働者の受け入れ策として「出入国管理法」を改正しました。
しかしながら、新制度導入は2019年4月以降で、当面の間は人手不足の早急な解消は難しく、「人手不足」関連倒産は今後も増勢をたどるとみられます。
時代を如実に反映したような結果になっていますね。
個人的には、日本の将来のためにも1社でも事業承継のお手伝いをしたいなぁと思います。

2018年は「人手不足」関連倒産が過去最多の387件発生したことについて、どう思われましたか?


「後継者不在企業」の動向はどうなっているのか?

 地域の経済や雇用を支える中小企業ですが、近年は後継者が見つからないことで、事業が黒字でも廃業を選択する企業は多いと見られています。
経済産業省が201710月に公表した試算では、今後10年間で70歳を超える全国の中小企業経営者は約245万人と推計しています。
経済産業省は、2025年頃までに約650万人の雇用と約22兆円分のGDP(国内総生産)が失われる可能性を指摘しています。
こうした中、小企業の休廃業が相次げば地域経済の衰退や雇用喪失を招きかねないとして、国や県、地域金融機関などが中心となって事業承継への支援を強化するなど、日本企業の後継者問題は官民ともに喫緊の課題として捉えられています。
帝国データバンクは、201810月時点の企業概要データベース「COSMOS2」(約147万社収録)及び信用調査報告書ファイル(約180万社収録)をもとに、2016年以降の事業承継の実態について分析可能な約276千社(全国・全業種)を対象に、後継者の決定状況など後継者問題と事業承継動向について調査を行いました。
なお、同様の調査は201711月以来5回目です。

●後継者不在状況・概要●
<年代別後継者不在率>
2016年以降(201610月~201810月間)の詳細な実態が判明した約276千社(全国・全業種)の後継者不在状況は、全体の約66.4%に当たる約18万社で後継者が「不在」となりました。
社長年代別に見た後継者不在率では、最も高いのは「30代未満」の94.1%となり、経営者が高齢になるにつれ、後継者不在率は減少傾向となっています。
過去3年間の傾向を見ると、2016年に全年代で後継者不在率は悪化していましたが、2017年以降「50代」以上で後継者不在率は改善し、2018年における「60代」~「80代以上」の後継者不在率は調査開始以降最低となりました。
一方、「30代」と「40代」では、2018年における後継者不在率は調査開始以降最高となるなど、事業承継に対する意識は年代別で傾向に差も見られます。
現社長における先代経営者との関係別(就任経緯別)に見た後継者不在状況では、全年齢で一貫して「同族承継」で就任した社長の後継者不在率が、「創業者」の後継者不在率を下回りました。
「同族承継」では、親族間で確立した世代交代制度などが、後継候補の確保に寄与している可能性があります。
他方、「創業者」では事業承継が未経験の企業も多く、事業を承継させるために「何に取り組めばいいのかがわからない」まま、先延ばししている中小企業も少なくないと見られます。
一方、「内部昇格」で就任した社長の後継者不在率は、67歳以降全国平均を上回り、68歳以降で「創業者」を上回りました。
内部昇格や外部招聘などにおいて、若い世代が事業承継を受けた企業では次代の後継者選定に向けた十分な時間が取れているケースが多いと見られます。
一方、比較的高齢で事業を引き継いだ経営者などでは、後継候補の選定や育成といった事業承継の準備期間が短くなりやすく、後継者候補の選定や事業承継が難航する要因となっています。

<地域・都道府県別>
地域別の後継者不在状況を見ると、9地域中4地域で前年を下回りました。
このうち、「北海道」が後継者不在率73.5%となり、過去調査同様に全国で最も高かったものの、2017年からは0.5ポイント低下しました。
また、「中国」(70.4%)は3年連続で後継者不在率が前年から低下しました。
一方、「東北」(64.8%)や「北陸」(58.2%)など5地域では前年を上回り、なかでも「北陸」は2017年から1.1 ポイント上昇しました。
また、5地域中「東北」と「近畿」を除く3地域では、いずれも2011年の調査開始以降で後継者不在率が最高となりました。
都道府県別では、「沖縄県」が全国平均(66.4%)を大幅に上回る83.5%で全国トップとなり、全国で唯一8割台を超えました。
沖縄県では、ベンチャー企業をはじめとした創業年数が比較的若い企業や、沖縄県の本土復帰に伴い創業した企業なども多く、他地域に比べ事業承継を経験した機会が比較的少ないことも背景にあると考えられます。
以下、「山口県」(75.0%)、「神奈川県」(73.8%)、「北海道」(73.5%)などが続いています。
他方、「佐賀県」では全国平均を大幅に下回る43.2%で全国最低となりました。

<業種・企業規模別>
業種別の後継者不在率では「その他」を除く7業種中4業種で全国平均を上回り、なかでも「建設業」(71.4%)は2017年から0.2ポイント上昇しました。
後継者不在率が最も高いのは「サービス業」(71.6%)となりましたが、2017年と比較して0.2ポイント低下し、後継者問題への対応の改善が見られました。
2018年における後継者不在率を従業員数別に見ると、従業員数「5人以下」の企業は全体の75.0%が後継者不在となりました。
売上高規模別では「5,000万円未満」で81.4%、資本金別では個人事業主を含む「1,000万円未満」で76.9%の企業がそれぞれ後継者不在となっており、中・小規模企業を中心に後継者の選定を終えていない企業が多くなっています。
一方、中堅~大規模企業になるほど後継者の選定が進んでいる傾向が見られます。

●事業承継動向●
<就任経緯別(事業承継前)>
276千社(全国・全業種)のうち、詳細な後継候補が判明している約93千社の後継者候補の属性を見ると、後継候補として全国で最も多いのは「子供」の39.7%となり、次いで「非同族」の33.0%となりました。
年代別に見ると、60代以降の社長では後継候補として「子供」を選定するケースが多い一方、50代以下の社長では「親族」や「非同族」を後継候補としている企業が多く、50代では約4割が「非同族」を後継候補としていました。
この結果、全国平均では「非同族」の割合は2017年と比較して1.5ポイント上昇しました。
承継を受けた社長における先代経営者との関係別(就任経緯別)に、後継者候補の属性をみると、「子供」を後継者候補とする企業が多いのは「創業者」(60.3%)、「同族承継」(48.5%)となり、いずれも「子供」の次は「親族」「配偶者」の順に後継者候補とする企業が多くなっています。
しかしながら、2017年と比較すると、ほとんどで後継者候補に、従業員など社内外の第三者である「非同族」を挙げる企業の割合が増加しました。
近年は、同族外への承継に際しても利用可能な「事業承継税制」における対象制限の緩和など、国や自治体による政策的な事業承継の支援のほか、社内外の第三者へ事業譲渡を行う事に対する抵抗感が、従前より軟化しつつあることも影響していると見られます。

<就任経緯別(事業承継後)>
276千社(全国・全業種)の代表就任経緯を見ると、全体の40.3%に当たる約11万社の企業が「同族承継」となり、計算上国内企業の約2.5社に1社が同族企業となりました。
次いで「創業者」(34.7%)、「内部昇格」(14.7%)となり、社外の第三者による事業の継承など「外部招聘」は3.2%にとどまりました。

2016年以降に事業承継が判明した企業約35千社の社長について、先代経営者との関係(就任経緯別)を見ると、2018年は「同族承継」で引き継いだ割合が最も高く36.0%となりました。
しかしながら、2016年(42.4%)と比較すると6.4ポイント低下し、2017年からも2.8ポイント低下しました。
一方、「同族承継」の次に多い「内部昇格」による事業継承は32.0%となり、2016年(30.8%)から1.2ポイント上昇しました。
社外の第三者が就任した「外部招聘」は、2018年は8.2%となり、2016年(7.7%)から0.5ポイント上昇しましたが、2017年からは同水準で推移しました。
この結果、2018年に判明した事業承継は、子供や配偶者、親族間で事業を引き継ぐ「同族承継」より、親族以外の従業員などが事業を承継した「内部昇格」や「その他(買収・出向・分社化等)」などの割合が上昇し、全体の半数超で親族以外出身の社長が事業承継を受けていました。
こうしたケースでは、幹部人材の登用による50代や60代の社長で多くみられ、豊富な業界経験や経営経験を背景に代表職へ就任した企業が多くなっています。
このほか、2018年は「創業者」への事業承継が5.3%を占め、2016年から1.4ポイント上昇しました。
創業者による事業承継は、特に70代や80代など高齢社長による事業承継が多く、一度社長職から代表権のない会長職などに退任したものの、後継候補の育成に伴うものや、経営幹部人材の不足などで、再度代表職へ復帰したケースが見られました。

今回の調査では、2018年の後継者不在率は全国・全業種で66.4%となり、2017年からほぼ横ばいで推移しました。
㈱日本政策金融公庫が行った調査では、中規模企業の9割以上、小規模企業では8割以上の企業が、後継者の育成には最低でも3年以上かかると回答しています。
後継候補の育成は中長期間に渡ることから、事業承継には後継者の育成を考慮したうえでの計画的な準備が重要であることを指摘しています。
しかしながら、今回の調査では社長の平均年齢である50代で約7割、社長引退の平均年齢である60代でも約5割の企業で後継者候補が未定となるなど、事業承継時期に差し掛かる年代の後継者不在率は依然高位に留まっています。
他方、事業承継を行いたくとも後継者候補がいない企業では、転廃業や上場、M&Aなど事業承継のための選択肢が限られやすくなります。
また、技術力など有用な経営資源を有していても債務負担が重い企業では、後継者や事業売却先、金融機関との調整が難航するケースもあり、承継に向けた心理的ハードルの高さから事業承継を断念してしまう可能性もあると見られます。
こうしたなか、今年に入って後継者不在のため事業継続の見込みが立たないことで倒産した企業は316件発生し(201810月時点)、2018年通年では2015年以来3年ぶりに増加する可能性が高くなりました。
代表者の逝去や体調不良で事業継続がままならなかった企業や、後継社長への引継ぎや育成が上手くいかず、経営が立ち行かなくなったことで事業清算を選択する企業が多くなっています。
近年は「非同族」を後継候補とする企業や、経営経験や現場経験が豊富な「内部昇格」「外部招聘」により事業承継を行った企業の割合は年々上昇傾向にあり、親族だけでなく「社内外の第三者」による親族外承継も含めた事業継承を検討・実施する動きが徐々に広がりつつあります。
そのため、国や地方自治体では「プッシュ型事業承継支援高度化事業」や「よろず支援拠点」などの公的支援を活用しました、
中小企業経営者への事業承継に向けた積極的な働きかけのほか、より利便性の高い事業承継の選択肢、制度拡充への取り組みが引き続き求められます。
また、地域金融機関では地域の事業者情報等を有する強みを生かし、「事業性評価」の活用による中小企業の事業承継フォローなど、債務面以外に着目した多面的なサポートが期待されるでしょう。

国も『事業承継』に力を入れており、その例がいわゆる『新事業承継税制』だと思いますが、それもあってか、最近は経営者がかなり『事業承継』に興味を持つようになってきていると実感しています。
ただし、『事業承継』の必要性を認識されていない経営者や『事業承継』の必要性を認識しているもののどうしていいのか分からない経営者も、まだまだたくさんいらっしゃると思いますので、その辺りの顕在化やニーズの把握に少しでも貢献できればいいなぁと思っています。

2018年全国「後継者不在企業」動向調査について、どう思われましたか?


事業承継で経営者の保証を解除せず4割が二重保証となっている!

 産経新聞によると、中小企業が事業を承継する際、銀行が融資のために旧経営者から取得していた個人保証を解除せず、新経営者からも二重に保証を取るケースが4割弱に上っていることが、先日、金融庁の調査で分かったようです。

 経営者の高齢化が進み、後継者不足に悩む中小企業は多くなっています。
銀行は、融資先の倒産に備える慣行として個人保証を求めてきましたが、負担が大きいことから、事業承継ではなく廃業を選ぶ企業もあります。

金融庁が、大手銀行や地方銀行など全国548の金融機関を対象に実施した調査によると、201710月から20183月に事業承継があった取引先25,732件のうち、二重の保証取得は36.3%9,349件だったようです。
旧経営者の保証を解除し、新経営者からも取らなかったのは9.5%2,438件にとどまっています。

個人保証や担保提供については、事業承継においては、ネックになることがあります。
特に、最近では、親族以外の第三者に事業承継するケースも増えており、サラリーマンである親族ではない役員や従業員である後継者はそれほどの資力がないケースが必然的に多くなります。
よって、個人保証や担保提供ができなかったり、嫌がったりすることで、事業承継ができないケースも出てきます。

そこは、本来は、金融機関は事業性で判断すべきです。
しかしながら、あまりできていないのが現実です。
金融機関も当然、融資をするというのがビジネスですから、リスクを避けたいというのは分かりますが、事業性を評価する目をもっと養って、事業承継がうまくいくように協力してほしいですね。
事業承継は、金融機関にとっても、後継者との関係性を深くする良いチャンスだと思いますので。

事業承継で経営者の保証を解除せず4割が二重保証となっていることについて、どう思われましたか?


廃業予備軍が127万社の衝撃!

2018年05月15日(火)

東京商工リサーチによると、後継者難などで毎年3万件の企業が休業や廃業、解散しています。
技術やノウハウが失われかねない事態にどう対応すべきでしょうか?

JR大宮駅から北へ約10キロの埼玉県伊奈町の事業所や工場が集まる一角に、円戸(えんど)幸雄さん(82)が1989年に創業した三協技研があります。
複数の素材を貼り合わせて包装材などに仕上げるラミネート加工が専門です。

社屋に隣接する工場では、ゆっくりと回る2つのローラーから出た2枚の素材を自動でぴったり接着させる工程が続いていました。
できたシートは、住宅の鉄骨と外壁の間に入れられ、緩衝材の役目を果たします。

円戸さんが考案したこの製法は、大幅な自動化で人件費を抑えられるのが特徴で、特許もとっています。
製品は全て大手住宅メーカーが買い上げます。
「この製品は営業する必要がないんです」だそうで、需要は増加傾向といいます。

そんなアイデアと技術力で会社を引っ張ってきた円戸さんですが、悩みがあります。
自社の将来を任せる後継ぎがいないのです。

3人いる娘はすでにそれぞれの道を見つけました。
10年ほど前から、取引先企業に頼んで、優秀な社員を後継候補として何人か送り込んでもらいました。
しかしながら、どの候補者も定着しませんでした。
中小企業の社長は、営業から開発、製造まで、細かく把握する必要があります。
円戸さんは住宅だけでなく、土木、金属、食品、化学繊維など幅広い取引先から細かい悩みを聞き、独自の技術提案をして商機につなげてきました。
同じことを後継者が務めるのは簡単ではありません。

会社の売却という道もありますが、密接な取引がしづらくなると心配する取引先からは、独立経営をお願いされるようです。
「あと3年のうちには跡取りを見つけなければ」と、あらゆるつてをたどって探すつもりだそうです。

経済産業省によると、この20年で中小企業の経営者の年齢分布は47歳から66歳へ高齢化しています。
2020年ごろには、数十万人の「団塊の世代」の経営者が引退時期となります。
「中小企業の競争力の源泉は『社長』自身であることが多く、創業者はなおさらです。
引き継ぐのは簡単ではない」(大手銀行幹部)ですし、少子化や「家業」意識の薄れもあり、後継ぎのめどが立たない企業は多くなっています。

経営者が60歳以上で後継者が決まっていない中小企業は、日本企業の3分の1にあたる127万社に達します。
事業が続けられず廃業する企業の半分は黒字とされ、2025年ごろまでに650万人分の雇用と22兆円分の国内総生産(GDP)が失われる可能性があります。

首都圏近郊の板金会社の社長だった女性(60)は昨春、板金工の兄が約40年前に創業した会社をたたみました。
精密加工技術が評価され、製品は新幹線の車体にも採用されました。
 2011年に兄が急死し、社長を継ぎました。
出入金管理や不利な手形取引の見直しを進め、就任3年で無借金経営に転換しました。

しかしながら、兄の一人息子は後継に一時意欲を見せたが、結局別の道を選びました。
古株の従業員にも引き継ぎを断られました。
それゆえ、「私が会社をみとろう」と決めたそうです。

取引先からは「同じ品質のものが調達できなくなる」と嘆かれたようです。
廃業すれば、サプライチェーン(部品供給網)の分断にもつながります。
何とか技術は残せないかと考え、同業者と交渉し、設備やノウハウ、従業員を譲渡することでまとまりました。

機械設備を売り払って廃業してしまう方が、手続きは簡単で、多くの金額が残る可能性はありました。でも、事業譲渡で技術を引き継ぐことを優先しました。
女性は言っています、「会社をつくり、経営したのは私たちだけど、培った事業は社会のものですから」と。

中小企業の事業承継の足かせの一つが、経営者が後継者に引き継ぐ自社株の扱いです。
政府は今後10年間に限り、後継者が受け取る株式にかかる税金を全額猶予し、承継に伴う税負担を緩和します。
経営者が後継者に自社株を渡すと、相続税や贈与税の納税義務が後継者に発生します。
億単位になることもあり、代替わりにちゅうちょする一因になっていました。
既に、後継者が引き継ぐ株式の3分の2を上限に、80%まで納税を猶予する制度はあります。
ただし、フル活用しても税額全体の53%までしか猶予されず、中途半端さは否めませんでした。

そこで政府は、納税猶予の対象株式を「3分の2」から「全株」に、納税猶予の割合を「80%」から「100%」に拡充し、承継時の税負担をゼロにすることにしました。
新制度を使えるのは今後10年以内に実際に会社を引き継ぐ人のみで、中小企業の事業承継への決断を早める狙いがあります。

個人的にも、事業承継関連の仕事をしていますし、このような記事を見るたびに、社長の仕事の一つは後継者を決めるこということを、社長就任時から認識しておいてほしいなぁと思います。
ここ10年で、事業承継税制を用いた事業承継が進むのは間違いないと思いますが、落とし穴もありますので、きちんと専門家を交えたうえで慎重に検討してから実行してほしいと切に思っています。

廃業予備軍が127万社の衝撃について、どう思われましたか?


上場企業でも後継経営者の育成が進んでいない!

 企業統治のあり方を示す「コーポレートガバナンス・コード」(企業統治指針)の適用からまもなく3年になります。

 企業統治指針は、経営者の後継を育成する計画をつくるよう求めていますが、思うように進んでいないようです。
経済産業省の調査では、「文書の計画はない」と答えた企業はおよそ半数にのぼり、計画が存在するかどうか分からない企業とあわせると約8割に達します。

20156月に適用が始まった企業統治指針は、企業の取締役会に対し、最高経営責任者(CEOC)などの後継者に関する計画を適切に監督するよう求めています。
指名委員会をすでに設けたり、設ける予定の企業は約半数にのぼりますが、後継者に求められる資質・能力を文書に落とし込む作業などはなかなか進まず、試行錯誤が続いています。
経済産業省は、201712月から20181月にかけて東証1部・2部上場の2,569社を対象に計画の進み具合の調査を実施し、941社から回答を得ました。

これによると、社長やCEOの後継者に関する具体的な計画が存在しない企業は48%に達します。
計画が存在するかわからない企業は29%で、計画があると答えた11%の企業の比率を大きく上回りました。

計画があると答えた企業を見ても、「社内外の取締役に内容が共有されている」と答えた企業は半分弱にとどまります。
指名委員会との計画共有も60%ほどです。
次期経営者の具体策は、「いまの経営者の頭の中のみにある」という企業が多いようです。
計画で明文化した中身(複数回答)では「後継者に求める資質・技術・経験などの定義」が、約75%で最多でした。

次期経営者を選ぶためのプロセスが決まっているとした企業は約50%で、後継者候補者を評価する基準も決まっているとしたのは約41%どまりでした。
経済産業省は、「後継者選びを現経営陣の専権事項とする企業が多いことも背景の一つにある」(産業組織課)とみています。

計画のない企業に理由を聞いたところ、「現経営陣の意向が尊重されるため」という回答が半数を占めたようです。
現経営者の任期・定年が来るまで時間があることから、具体的な議論に着手していない企業も多いようです。

金融庁が開いている企業統治指針のフォローアップ検討会でも、取締役会で後継者計画の策定や候補者選びに十分な時間や資源が割かれているかが、主な論点の一つになっています。
企業統治指針適用から3年がたつなか、企業統治指針が示した理想像と現実の差を埋めていく作業には時間がかかりそうですね。

優秀な経営者で、世界的なお金持ちでもある、ソフトバンクの孫さんやユニクロの柳井さんでも、過去に事業承継に失敗し、現状では後継者が決まっていません。
今年から国も事業承継に一段と力を入れていますが、こういった優秀な経営者でも(カリスマ性のある経営者ゆえ)後継者育成がうまくできないわけですから、経営者の任務の一つとして事業承継を考え、上場企業のみならず、日本経済にとって大切な中小企業がなくなったり、傾いたりしないように、微力ながらお手伝いがしたいですね。

上場企業でも後継経営者の育成が進んでいないことについて、どう思われましたか?


廃業予備軍が127万社!

2018年02月16日(金)

先日の 『週刊ダイヤモンド』の特集は、「廃業or承継 大量廃業時代の最終決断」でした。
団塊世代の大量引退時期が迫り、大廃業時代の足音が聞こえています。
廃業するのか、事業承継を検討するのか?
オーナー経営者が大事に育ててきた会社の“最終決断”をどう下すべきなのでしょうか?

経済産業省が衝撃的なシナリオを提示しました。
日本の企業の3社に1社、127万社が2025年に廃業危機を迎えるというものです。
このまま廃業問題を放置すると、雇用650万人、GDP22兆円が消失してしまうそうです。

東京商工リサーチによると、廃業する企業の約半数が経常黒字です。
優良企業が大量に退出してゆく姿は、異様にも映るでしょう。
事業がジリ貧になっているわけではなく、後を受け継ぐ者がいないため、仕方なく廃業を選ぶ経営者が増えているのです。

実際に、惜しまれて廃業を決めた中小企業の経営者も少なくありません。

ご存じの方も多い『岡野工業』が製造する注射針は、赤ちゃんや糖尿病患者のインスリン注射などにも使われる「痛くない注射針」です。
品質管理に厳しい大手自動車メーカー向けの部品も製造するなど、世界に誇る技術を持つ企業ですが、2人の娘さんは嫁いで別の道に進んだため、後継者がおらず、廃業の道を選んだのです。

技術を残すために、注射針の製造はテルモに移管することに決まっています。

作り続けて82年、羽衣文具が製造するチョークは「世界一書きやすい」という評判でしたが、需要が低迷したうえ、後継者問題も持ち上がり、会社を畳みました。
興味深いのがこの先で、羽衣文具の製造技術・ノウハウは海を渡って韓国企業に買収されたのです。
他社商品で代用が利かないチョーク界の『ロールスロイス』とすら称されたメード・イン・ジャパンの技術で、廃業が決まり、アメリカの数学者らのグループが1トン分を駆け込み購入するほどの人気でした。

2018年度の税制改正で、事業承継税制が大幅に改正される予定です。
国が、事業承継を10年間で推し進めたいという意思の表れです。
一方で、数年前から事業承継が大事と言われていたわけであり、やっと国も本気になったわけですが、このような日本を代表するような技術を持つ企業が廃業するというのは、日本にとって損失であり、残念でなりません。
僕は独立開業してから6年半くらい経ちますが、独立当初から『事業承継』を看板に掲げています。
また、2年ほど前から、中小機構で『事業承継コーディネーター』をやっています。
少しでも、廃業しようとしている会社が廃業をせず、事業承継するようなお手伝いができればいいなぁと思っています。

廃業予備軍が127万社もあることについて、どう思われましたか?

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大和ハウスが社員が事業性審査をする社内起業に300億円投資!

日本経済新聞によると、大和ハウス工業は2024年6月に社内起業制度を導入し、300億円の投資枠を設定するようです。

5万人のグループ全社員から新ビジネスの候補を募り、社員間で事業性など起業の可否を審査します。

明確な投資枠を設けることで、社員の起業への意識を高めるのが狙いです。

住宅や物流施設など主に既存事業に関連した有望なビジネスモデルをいち早く見つけ出します。

2024年6月の制度導入に合わせて社員からビジネス案を募集します。

年間200〜500件ほどの提案を見込んでいます。

中堅を含む各事業部の社員が起業の可否の審査に加わるのが特徴です。

外部のコンサルティング会社とともに、案件ごとの事業性を評価します。

既存の事業の枠組みにとらわれない自由な発想を生かすため、大和ハウスの経営陣は原則として審査プロセスの大半に関わらない方針です。

書類審査や面接などを経て2025年度内に第1号となる起業案件を出したい考えです。

年間では5社程度の社内ベンチャー企業を立ち上げます。

ベンチャー企業の設立や当面の運営に必要な資金を大和ハウスが支援します。

出資などを通じて1社当たり3億円を目安に拠出します。

立ち上げた新会社には提案者自身が少額出資できる仕組みも検討します。

3月に本格運用を始めた大和ハウスにとって初となるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)や、社外のVCからの資金調達も認める方針です。

大和ハウス本体とは別会社で事業化することで、迅速な経営判断ができます。

社員に経営者としての経験を積んでもらうため、ある程度の期間は赤字を許容しながら設備投資などの追加支援にも応じます。

業績が改善せず会社を清算する場合も、社員は起業前に所属していた部署に復帰できます。

経営の経験を大和ハウスでのキャリアに生かしてもらうことも社内起業の狙いです。

社内起業に対する明確な投資枠を設けることは珍しいようです。

大和ハウスは住宅の建設・販売を起点に、工場や物流施設、商業施設の開発など事業を多角化して成長してきました。

社内起業制度を通じて、既存事業のさらなる収益機会を模索します。

シナジー(相乗効果)が見込める新事業の開拓にもつなげます。

長期的には社内ベンチャー企業の総売上高を1,000億円規模にしたい考えです。

社内起業制度を次世代の成長エンジンと位置づけ、積極活用する企業は多いようです。

リクルートホールディングス(HD)は、通信教育サービス「スタディサプリ」や結婚情報誌「ゼクシィ」といった現在の基幹となる事業を生み出しました。

サイバーエージェントも執行役員が選抜した4人の社員がチームを組み新規事業を提案する「あした会議」を年2回開催し、2023年9月時点で累計37社の子会社設立を決めました。

これらの売上高の合計は約4,000億円に達します。

リクルートHDやサイバーエージェントには将来の起業を意識した学生などが多く入社します。

大和ハウスも外部から優秀な人材を集めるため、300億円という具体的な投資枠を設けて起業を奨励する社内風土を根付かせます。

個人的には、起業はある程度のリスクや危機感を持ってやらないといけないと思っていますが、時代的にこういった起業もありなんでしょうね。

リクルートなどのように、退職して起業しても成功する方がたくさん出るような企業は素晴らしいと思っていますので、大和ハウスもリクルートみたいな企業になってほしいですね。

実績が出てくると、採用にも良い影響を及ぼすと思いますし。

大和ハウスが社員が事業性審査をする社内起業に300億円投資することについて、あなたはどう思われましたか?


法務省が2024年度にも会社代表者の住所を希望者は非公開へ!

日本経済新聞によると、経営者や起業家のプライバシーを保護し、ビジネスの新規参入を後押しする取り組みが始まります。

法務省は2024年度中にも、株式会社の登記の際に代表者が希望すれば自宅住所を非公開にする方針です。

会社の設立、代表者への就任などの際に住所の公表が必須でなくなります。

法務省は、パブリックコメント(意見公募)を開始しています。

省令の「商業登記規則」の改正を予定しています。

現在はストーカーなどの被害のある場合を除き、法務局の窓口などで紙の登記の資料を閲覧でき、インターネット上でも見られます。

もともと代表者の住所を公開しているのは公正で円滑な商取引を行うためです。

会社法は代表者の氏名、住所などを登記すると定めています。

取引先との商談の前に氏名や住所を確認して臨みたいという需要はあります。

自身の情報を開示して取引先の信用を得たいという起業家もいるようです。

ネットの普及で誰でも簡単に登記の情報にアクセスできるようになりました。

少額の手数料で閲覧できます。

手軽に情報を得られる半面、個人情報が不正利用され、脅迫やストーカー行為への心配が高まっていました。

かねて経団連や経済同友会、上場企業などから「代表者個人の住所を誰でも閲覧可能な状態にするのは望ましくない」と指摘がありました。

新興企業やフリーランスなどの業界団体は、2023年5月、自民党へ非公開を求める提言を提出しました。

「インターネット上に住所がさらされる可能性があり、法人化をためらうケースが発生している」などと訴えました。

日本弁護士連合会などには、悪質商法をする企業から被害を受けた消費者が会社を訴えられるように代表者の住所を公開すべきだとの意見があります。

会社に民事訴訟を起こす場合は本社の住所、届かない場合は代表者の住所に訴状を送ると定めています。

消費者が本社に訴状を送っても経営者が「雲隠れ」する事例があるようです。

本社の実際の住所と登記上の住所が一致しておらず、訴状を送付できない場合もありえます。

法務省は改正する省令案で、住所が非公開でも訴訟手続きを担保する仕組みを盛り込みます。

代表者に本社へ訴状が確実に届くことを証明してもらいます。

法務省はこれまでも住所の非公開化を検討してきました。

2022年にはネットでのみすべての住所を非公開とし、法務局での紙による閲覧は従来のままできるとする内容の省令改正案をまとめました。

パブリックコメントで「紙をもとにデータベースを構築する業者が出てきて意味がない」などの反対意見があがりました。

政府内で「紙で閲覧できる情報をネットで取得できないのは問題だ」との懸念が出ました。

僕自身も、住所が誰にでも見れる状況はどうなのだろうか?と以前から疑問に思っていました。

もちろん、世の中には悪質な会社などもあるわけですから、訴訟手続きに関する担保は必要だと思いますが。

あとは、資産管理会社などは本店所在地をご自宅にしているケースもそれなりに多いと思いますので、こちらは、本店所在地を別の場所にすることを考えた方が良いかもしれませんね。

法務省が2024年度にも会社代表者の住所を希望者は非公開になることについて、あなたはどう思われましたか?


定款認証を対面不要にして起業手続き期間を3日程度に短縮!

日本経済新聞によると、スタートアップの育成に向けて株式会社の設立手続きが簡素になるようです。

政府は公証人が設立者の意思などを確かめる際、対面確認を不要とする方向です。

意思確認できる動画などで代替する案があります。

登記を含めて2週間程度かかる手続きを3日ほどに短縮します。

2023年12月27日に開かれた法務省の有識者検討会で提言をまとめました。

公証人法は設立者が定款を作成したことを対面で認め、公証人に確認してもらう必要があると定めています。

同法を含めた関連法の改正案を2025年にも国会に提出します。

株式会社の設立には名称や事業目的などを記した定款の認証が必要です。

審査は法務大臣が任命する公証人が担います。

反社会的な勢力が他人名義でダミー会社をつくり、犯罪に悪用するといった事態を防ぐ目的です。

定款認証は年間およそ10万件あり、設立者は対面かオンラインで公証人と面会をする必要があります。

面会は5〜30分程度で、そのために公証役場に赴く負担を改善してほしいという要望があります。

対面手続きを省略するため、設立者の意思表明を撮影した動画を提出させる仕組みを想定しています。

本人確認をシステム上でできる方法も探ります。

起業の障壁を低くし、スタートアップの増加につなげる狙いです。

定款の作成についても起業家の負担軽減策を検討しています。

新興企業向けに商号や事業目的など数カ所を入力するだけで作成できる「モデル定款」の導入といった手法があります。

岸田文雄首相は2023年10月のデジタル行財政改革会議で創業環境の改善のため、公証人による定款認証を見直すよう指示しました。

法務省の調査によると、審査で指摘を受けたのは4割ほどで、最終的に認証に至らなかった事例は全体の0.5%です。

経済界からは一部の不適切な企業のためにそれ以外の企業が一律の負担を強いられることを批判する声があります。

日本の起業にかかる手続きの手間や費用の負担は他国に比べて重くなっています。

日本は定款認証と会社の登記含めて設立までおよそ2週間程度かかるのが一般的です。

アメリカやイギリスでは審査なしの登録のみで即日の起業が可能です。

ドイツやイタリアなどで公証人が定款認証や作成に関与する仕組みはあります。

定款認証と登記の費用は税金も含め最低20万円ほどかかります。

そのうち定款認証のために公証人に支払う手数料が、3万円〜5万円かかります。

予算執行の無駄などを点検する「秋の行政事業レビュー」で11月に経済界から引き下げの要望がありました。

定款認証の手数料を無料に近くすることが議論されました。

手続き効率化で引き下げの余地はあるとみています。

公証役場は全国におよそ300カ所あり、公証人は全国に500人ほどいます。

法曹資格者らから公募で採用され、7割弱が裁判官や検察官の退官者です。

法人の場合、起業(会社設立)は時間もかかるし、コストも高いと思っていましたので、期間が短縮され、コストも安くなるとありがたいですね。

定款認証を対面不要にして起業手続き期間を3日程度に短縮されることについて、あなたはどう思われましたか?


地方の新興企業が5年で5割増!

日本経済新聞によると、独自性のある技術やサービスで成長を目指すスタートアップが全国で増えているようです。
新興企業支援会社のデータベースでは、全国の企業数が5年間で5割増えました。
地元大学発の新興が相次いで誕生する長野県8割増と大きく伸ばしています。
地方でも産学官金の支援の輪が広がっており、スタートアップを生み育てる「エコシステム(生態系)」が構築されつつあります。

東証グロース上場のフォースタートアップスが作成した「STARTUP DB(データベース)」に登録されている2000年以降創業の企業を対象に、2023年6月末の登録数を2018年と比較しています。
登録は新たな技術やビジネスモデルでイノベーションの実現を目指す企業が対象です。
全体の登録数は1万5,692社で、東京都の企業が66%を占めますが、東京以外の自治体の合計登録数も5年で49.5%増と東京と同じ伸びを示しました。

増加率4位の長野県は信州大学の積極性が目立ちます。
2017年に知的財産・ベンチャー支援室を開設し、2018年には「信州大学発ベンチャー」の認定を始めました。
現在の認定企業は17社で、起業や事業拡大に向けた多彩な支援を受けられます。

信州大学は企業との共同研究が盛んで、特許の出願件数も地方大学でトップクラスです。
支援室長の松山紀里子准教授は「有望な技術が大学のどこにあるかを把握しており、起業を後押ししやすい」と説明しています。

認定企業の一つで2017年創業の精密林業計測(長野県伊那市)が目指すのは、地場産業である林業の活性化です。
担い手不足が深刻になるなか、ドローンなどを使って伐採に適切な木を判別するなど効率化を進めます。
農学部の特任教授でもある加藤正人社長は「特許取得などで大学の支援を受けており経営もしやすい」と話しています。

金融機関も支援に前向きです。
2022年には長野県が音頭を取り、八十二銀行グループや投資会社などが「信州スタートアップ・承継支援ファンド」を設立し、これまでに信州大学発企業を含めた9社に出資しています。

奈良県は18社と登録は少ないですが、増加率は2倍でトップです。
就職時の若者の県外流出に悩む奈良市は、独自の起業家育成プログラムを通じて「新興企業のエコシステムをつくりたい」(産業政策課)ようです。
7年目の今年のプログラムには6社が参加します。

在宅の縫製士をネットワーク化し、高付加価値で小ロットの仕事を発注するヴァレイ(奈良県上牧町)の谷英希社長は1期生です。
「情報不足の奈良でモヤモヤしていたが、プログラムを通じてビジョンを形にできた」と振り返っています。
2016年の会社設立から委託先は約300か所に増え、年商は1億円を超えます。
現在は高校生への講演などにも熱心です。

伸び率6位の愛知県は自動車など基幹産業が安定していることで、逆に「新興企業不毛の地」とも言われてきました。
クルマの電動化など変革の波が押し寄せるなか、大村秀章知事は「スタートアップで産業構造を変えたい」と意気込んでいます。
愛知県が2020年に開いたインキュベーション施設には300近い企業が集まっています。
2024年秋には国内最大級の育成拠点「ステーションAi」も開きます。

スタートアップ育成は国をあげての課題でもあります。
政府は2022年に「5か年計画」を策定し、2027年度の新興企業への投資額を10倍超の10兆円規模にすることを目指しています。

日本総合研究所の井村圭マネジャーは「農業や製造業の効率化など地域の課題に取り組む新興企業が増えることで産業の高度化につながる」と強調しています。
「今後も既存企業を巻き込んで地域全体の革新につながるような支援に力を入れる必要がある」としています。

やはり、スタートアップが出てくるということはすごく良いことだと思います。
ちなみに、我が香川県は増加率92.3%、スタートアップ数25社で、第2位でした。
どんどんスタートアップが出てきて、地域の活性化などに貢献してほしいですね。
信州大学のように、我が香川大学も産学官金で何かできればいいのになぁと思います。

地方の新興企業が5年で5割増となったことについて、あなたはどう思われましたか?


メガバンクがネットで法人口座開設など来店不要手続きを増やしている!

日本経済新聞によると、法人口座を開設するには来店して事業の実態を確認する面談が必要でしたが、メガバンクが来店不要の手続きを増やしているようです。

みずほ銀行は店舗に行かずに法人口座を開設できるサービスを7月中に全国展開します。
三井住友銀行と三菱UFJ銀行も今年度中に全国で導入する考えです。
個人向けでは、3メガバンクともアプリによる口座開設やネット振り込みを導入しています。
店舗やATMに行く必要があるのは、現金の入出金や細かな手続きを残すのみとなりました。

法人口座の開設には銀行員と企業の担当者との面談で事業の実態を確認する必要がありました。
このため個人向けに比べるとデジタル化が遅れていました。
全国のみずほ銀行では7月下旬から、法人は一度も来店せずに口座開設ができるようになります。
一部支店では2021年から導入しており、インターネット経由の申し込みの割合が2019年度から2020年度で1割以上伸び5割を超えてきました。

全国一斉の対応はメガバンクでは初めてです。
事業の実態などを確認する審査は専門部署に集約し、オンラインで企業の担当者と面談します。
店舗の営業時間後でも柔軟に対応し、必要書類は郵送でやりとりします。

三井住友銀行はスマートフォンとパソコンで口座開設手続きが完結するサービスを8月に都内12の本支店で始め、2022年度中に全国で導入します。
グループの日本総合研究所やSMBCクラウドサイン、ポラリファイと協力し、顔写真による本人確認や必要書類のアップロード、電子署名などのシステムを導入します。
他メガと異なり、書類の郵送やオンライン面談をせずに口座の開設ができるようにします。
速やかに口座を開きたいスタートアップなどの利便性を高めます。

法人口座の開設は申し込みから4週間程度かかっていましたが、面談や書類送付をなくすことで短縮できるとみています。
残高証明書の発行や口座解約、法人の定期預金など頻度がさらに少ない手続きもデジタル化して来店不要にすることを検討します。

三菱UFJ銀行は2018年、他メガに先駆けてネットでの法人口座開設サービスを一部店舗で始めました。
6月時点では窓口がある店舗の4割で利用が可能になりました。
2022年度中に全店展開する方針です。

法人口座を開設するには、審査のための面談やキャッシュカードの受け取りなどで数回来店するのが一般的です。
書類に不備があると来店回数が増えることもあります。
創業間もない企業の経営者が手続きのために支店を訪れるのは負担が大きいです。

法人口座のネット開設は銀行側の経営効率化にもつながります。
3メガバンクはネットからの開設申し込みを受ける部署を一本化する方針で、各店舗で担っていた業務を集約することで、生産性の向上につなげます。

2021年度の法人口座開設のうち6割超を創業間もない企業が占めるGMOあおぞらネット銀行は最短即日で法人口座の開設ができます。
4月には、会社の登記が完了する前に法人口座開設手続きに入り創業から口座開設までの期間を2~3週間短くするサービスを始めました。
メガバンクが本格的に乗り出せば、スタートアップを巡る競争が激しくなる可能性があります。

最近は、口座の開設がなかなかできない状況ですので、こういったことで少しでも口座開設ができないということが解消され、早く開設できるようになるのであれば、素晴らしいことですね。
僕自身も、法人の口座をネットでメガバンクで開設してみようと思います。

メガバンクがネットで法人口座開設など来店不要手続きを増やしていることについて、どう思われましたか?


個人保証を創業5年間は不要に!

時事ドットコムによると、政府が、創業間もない「スタートアップ企業」支援のため、金融機関から融資を受ける際に創業5年未満は経営者の個人保証を免除する方針であることが、先日、分かったようです。
日本政策金融公庫など政府系金融機関に新たな制度を設けます。
併せて、企業の独自技術など無形資産も融資時の担保にできるよう法制化を進めます。
新興企業が創業期に資金調達しやすい環境を整え、経済活性化を後押しします。

政府は2022年6月に閣議決定した「新しい資本主義」実行計画で、スタートアップ企業を5年間で10倍に増やす目標を掲げました。
ただし、こうした企業は工場など担保となる有形資産を持たず、創業当初は赤字が続くことも多いです。
経営者が連帯保証人となる個人保証や担保なしに融資を受けるのは、難しいのが実情です。

支援策では、日本政策金融公庫が個人保証を不要とする期間について、現行の「創業2年未満」から2倍程度に延ばす方向です。
信用保証協会も創業5年未満の企業に対し個人保証を求める規則を見直し、保証を不要とする制度を新設します。
商工中金は現在も半分以上のスタートアップ向け融資で個人保証を取っていませんが、原則不要にします。

民間金融機関にも対応を促します。
金融庁は、法人と経営者個人の資産が明確に区分され、財務情報が適切に開示されていれば、個人保証を取らないよう改めて文書で要請する方針です。

一方、金融機関にとっては個人保証や担保なしに融資すれば、貸倒時のリスクが高まります。
金融庁は、技術力や顧客基盤、特許など将来の成長につながる無形資産も担保と位置付けられるよう法整備を検討しています。
民法の特別法として制定する見通しで、早ければ2023年の通常国会提出を目指します。

やはり、起業する方にとってネックの一つとなるのが、個人保証でしょうね。
本来、事業性を評価し、将来のキャッシュ・フローを担保にお金を貸すことが融資だと思いますが、貸す側が事業性を評価するようなノウハウを持ち合わせていないのか、個人保証や担保をベースに融資を行っているのが現状です。
もちろん、個人保証なしとなると、詐欺的な行為も増えてくるでしょうから、その辺の見極めが重要になってくるでしょうね。
多すぎると言われている金融機関が生き残っていくためには、手数料目的の投資信託やiDeCoなどに注力するのではなく、事業性を評価する能力を高めていく方が重要なのではないかと個人的には思います。
その方が諸々のコンサルティングのベースとなるでしょうから。

個人保証が創業5年間は不要になることについて、どう思われましたか?


「コロナ不況」にもかかわらず希望退職に申し込みが殺到する理由!

M&AOnlineによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大に伴う景気低迷で、希望退職の募集が相次いでいます。
景気が悪くなれば企業が希望退職を募るのは当たり前ですが、事前想定を大きく上回る応募者が殺到する事例が目立っています。
かつては従業員を震え上がらせた希望退職に、なぜ応募が殺到するのでしょうか?

松山三越(松山市)が2020年5〜7月にかけて希望退職を募ったところ、約200人が応募しました。
全従業員約250人の8割に当たる「大量退職」になります。
残る2割の50人で運営が継続できるかどうか不安になりますが、同店は2021年秋のリニューアルで7~8階に道後温泉でホテルを展開する茶玻瑠(同)が運営する高級ホテルが入居するほか、1階と地階には地元の食料品や土産物店などのテナントを誘致、直営フロアは2〜4階の3フロアに縮小するため「人手不足危機」は避けられるそうです。

大手アパレル大手のワールドが2020年9月に実施した希望退職者募集には当初想定の約200人に対して、ほぼ5割多い294人が応募しました。
ワールドは「ハッシュアッシュ」「オゾック」「サンカンシオン」など5つのブランドを廃止すると同時に358店舗を閉店するなどリストラを進めています。

同じアパレル大手では2020年1月に実施したオンワードホールディングスの希望退職で、当初想定の約350人を2割近く上回る413人が応募しました。
同列に比較できないものの、コロナ禍で希望退職への応募が加速した可能性はあります。

「はなの舞」や「さかなや道場」などの居酒屋チェーンを展開するチムニーが2020年8月に実施した希望退職者募集には、当初想定の100人を5割も上回る152人が応募しました。
同社はコロナ禍による売上減で72店舗の閉鎖を決めています。

飲食店向け人材サービスのクックビズも、外食業界がコロナ禍で売り上げを大幅に落としたあおりを受けて2020年8月に50人の希望退職を実施したところ、63人が応募しました。これは全社員約190人の3分の1に当たります。

日本では希望退職を募集しても実際の応募は当初想定を下回り、人員削減に苦労するケースがたくさんありました。
しかしながら、このところ応募者が当初想定を大幅に上回るケースが増えています。

上場企業の希望退職で想定外の応募が殺到した最初の事例として知られているのは、2001年2月に実施したマツダです。
1,800人の募集枠に対して、受付開始と同時に応募者が殺到し、2時間後に急きょ募集を打ち切り、募集枠を2割以上も上回る2,210人が退職することになりました。
突然の打ち切りに応募が間に合わず、「先月の予備面談で上司に退職の意志表示はしている。希望退職を受け付けろ」「いや、もう受け付けられない」との押し問答も見られたそうです。

当時のマツダはアメリカのフォード・モーターの経営支配下にあり、アメリカの企業では当たり前だったが当時の日本企業では破格となる30歳代で年収の1.5倍、40歳代で2.5倍という退職金の加算に加え、ITバブルで再就職先に困らなかったという事情があったようです。

現在では日本企業でもアメリカの企業並みの手厚い退職割増金や再就職支援といったサポートが充実しています。
さらには、転職が当たり前となり、再就職への抵抗感がなくなってきたという働き手の意識の変化もあるでしょう。

なにより、日本経済の「不況」のパターンが変わったことが大きいかもしれません。
かつて「不況」といえば景気循環によるものと考えられており、「いずれ景気が上昇すれば、企業収益は持ち直す」というのが共通認識でした。
それゆえ、希望退職に応じず、会社にしがみついている方が有利と考えられていたのです。

ところが、近年は「寿命」を迎えた業界は、これから景気が持ち直しても苦境が続くとの見方が一般的になっています。
たとえば、百貨店業界や同業界に大きく依存する大手アパレル、過当競争と人出不足に悩む居酒屋チェーンといった、当初想定を上回る希望退職者が出た業界が該当します。

こうした業界では、将来性が低い会社にしがみついている方がリスクは高いと言えるでしょう。
むしろ、「会社が手厚いサポートをする余裕があるうちに退職した方が有利」と考えるのも無理はありません。
企業にとっては「いかに1人でも多く希望退職に応募させるか」に悩む時代から、「どうやって当初想定の範囲内に希望退職者を抑え込むか」に苦慮する時代になったようです。

昔から『会社の寿命は30年』((注)30年でほとんどの企業が潰れるという意味ではありません。それは都市伝説です。)と言われたりしますが、新入社員として入社したときに人気業界の企業であったとすれば、管理職になるころには衰退業界の企業になっている可能性も高いのではないかと思います。

それゆえ、希望退職を機に転職するという選択肢は正しいのかもしれません。

ただし、現在は、新型コロナウイルスの影響で、特定の企業に限らず、幅広い業界で、リストラをしたり、採用を止めたり、抑えたりしているような時代なので、希望どおりの企業に転職できるかどうかは分からないでしょうね。個人的には、新規に起業したり、スモールM&Aで起業したりして、新しい商品やサービスを提供する企業や個人事業主がたくさん出てきて、日本の経済が上向けばいいなぁと考えています。

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介護や地場産業が起業しやすくするために「協同労働」に法人格を付与!

自民、公明、立憲民主など超党派議員が、働く人たちが資金を出し合って経営に携わる「協同労働」に法人格を認める議員立法に乗り出すようです。
非営利の新たな法人格をつくり、信用力を高めて起業しやすくするようです。
超党派の協同組合振興研究議員連盟が法案をとりまとめ、今国会に提出し、成立をめざすようです。

2年以内の施行を想定しているようです。会社でもNPO法人でもない第3の法人格「労働者協同組合」をつくるようです。

一般の会社なら、出資者(株主)と経営者、従業員が別々に存在します。
しかしながら、協同労働は働き手全員が出資者となり、皆で協議しながら経営方針を決めていきます。
よって、労使関係がないため、働き手が仕事の量を調整しやすくなっています。

議連会長を務める河村建夫氏(自民党)は「主婦や高齢者などによる起業を増やし、地域課題の解決につなげたい」と語っています。

協同労働の発祥はヨーロッパで、日本でも約10万人が働いています。
訪問介護や学童保育、農産物加工品の直売などに従事しています。

国内の事業規模は、約1,000億円に成長しています。

協同組合には、農業協同組合(農協)や生活協同組合(生協)などがあります。
法律上、農協は農業従事者、生協は消費者が対象です。
幅広い業種で働く人がお金を出し合う協同労働は、協同組合として認めていませんでした。
現行では、協同労働には制約があります。

たとえば、金融機関の融資を受けにくくなっています。
それゆえ、法人格があれば、介護や保育の施設、農産物の加工場などの建設や運営がしやすくなるでしょう。

法案には多様な就労機会を創出して地域の需要に応じた事業を促進し、持続可能で活力ある地域社会の実現をめざすと明記するようです。
協同組合は、働き手がお金を出し合って設立し運営します。
なお、出資配当は認めず、事業で得たお金は働き手で分配します。
会社やNPO法人から労働者協同組合への転換は可能ですが、人材派遣業は除外するようです。
行政の監督対象となり、信用度も高まるでしょう。

かつてはPTAやボランティア団体などを想定し、営利法人と公益法人の中間的な団体を「中間法人」として法人格を与える仕組みがありました。
2008年に中間法人は廃止となり、現在は一般社団法人に統一されています。

個人的には、どれほどニーズがあるのかよく分かりませんが、起業などがしやすくなり、地域活性化につながるのであれば、良いことだと思います。
ただし、NPO法人のように、特定非営利活動法人という名前から皆さんがイメージするのものと、実態がかけ離れたものにはならないようにして欲しいと思います。

介護や地場産業が起業しやすくするために「協同労働」に法人格を付与する方向であることについて、どう思われましたか?


新設企業の5社に1社が合同会社になっている!

 20171月から12月に全国で新設された法人(以下、新設法人)は、131,981社(前年比3.1%増)で、2010年以来、8年連続で前年を上回りました。
なかでも「合同会社」は27,039社(同14.4%増)と急増ぶりが際立っています。
「合同会社」は、「株式会社」より設立費用が安価で、手続きも簡易な上に株主総会を開催する必要もなく経営の自由度が高くなっています。
最近では20185月に ()DMM.com()DMM.comラボを吸収合併し、株式会社から合同会社に組織変更しています。
同社は、この目的について「意思決定の迅速化、事業推進の効率化を図ること」と説明しています。
さらに、大手外資系企業の日本法人であるボーズ(2017年) 、ワーナーブラザースジャパン(2016年)も合同会社となる動きがありました。
なお、本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象477万社)から「合同会社」を抽出し、20171月から12月 に設立された新設法人と過去の新設法人データを分析したものです。

<新設法人の5社に1社が合同会社>
2017年の新設法人のうち、「合同会社」は27,039社で、前年より3,412社増加しました。
増加率(14.4%増)は前年(7.7%増)を6.7ポイント上回りました。
当初、「合同会社」は信用の面で「株式会社」より低いとされていました。
しかしながら、2006年の会社法施行から10年余を経て、大手外資系企業の日本法人が合同会社となった実績に加え、様々なメリットも浸透してきたようです。
新設法人に占める「合同会社」の構成比は年々上昇し、2013年の13.1%から2017年は20.4%に上昇し、2割を超えて新設法人の5社に1社にまで増えています。

<産業別>
「合同会社」を産業別でみると、10産業のうち、8産業が前年より増加しました。
構成比トップは、サービス業他で38.7%を占めました。
サービス業他の新設法人は中小・零細企業が中心で、取引相手も一般消費者が多く、会社形態にさほどこだわらないことが要因とみられます。
増加率のトップは、不動産業で前年比34.9%増で、金融・保険業(前年比32.4%増)、建設業(同30.4%増)も30%以上の増加率でした。

<業種別>
業種別でみると、社数トップは不動産業で6,024社(構成比22.2%)でした。
2015年が3,738社、2016年が4,465社と年々増加しています。
金融,保険業は2016年の前年比20.1%減(959社)から、2017年は同32.4%増(1,270社)と大幅に増えました。
FX(外国為替証拠金取引)や急騰した仮想通貨で利益を得た個人が節税目的で「合同会社」を設立し、押し上げたことも一因とみられます。
一方、減少は繊維工業(同7.9%減)、織物・衣服・身の回り品小売業(同1.8%減)などが目立ちました。

<都道府県別>
都道府県別では、最多は東京都の9,522社(前年比20.0%増、構成比35.2%)。次いで、神奈川県の2,020社(同15.0%増、同7.4%)、大阪府の1,821社(同18.2%増、同6.7%)と大都市圏が上位に並びました。
33都道府県で前年を上回り、増加率トップは、和歌山県の前年比59.0%増でした。
次いで、山梨県の同51.4%増、長野県の同42.6%増と続いています。
一方、減少率では、秋田県の同21.5%減を筆頭に、岐阜県が同13.8%減、徳島県が同13.5%減の順でした。
我がうどん県(香川県)は前年と同数でした。
地区別では、北陸を除く8地区で増加しました。
増加率トップは、中部で前年比19.9%増(2,111社)でした。
次いで、近畿が同18.0%増(3,336社)、関東が同16.4%増(15,453社)と続いています。

2017年の新設法人数は13万社を超え、調査を開始した2007年以降で最多記録を更新しました。
法人格別にみると、「合同会社」だけが年々増加し、他の法人格は伸び悩んでいます。
2017年の「合同会社」の急増は、不動産やFX、仮想通貨の個人投資家が節税対策の一つとして活用したことが背景にあるとみられます。
しかしながら、シェアハウスのサブリース問題で銀行の不動産融資は厳しくなっています。
また、仮想通貨も不正アクセスによる流出事件を契機に、交換業者やみなし業者への業務改善命令が相次ぎ、相場も乱高下を繰り返しています。
このため、今後は個人の不動産・仮想通貨への投資意欲が減退し、「合同会社」の新設数への影響も想定されます。

「合同会社」は他の法人格にはない、設立の手続きが簡便で、安価に設立でき、経営の意思決定が迅速というメリットがあります。
こうしたメリットが浸透すれば節税効果に依存せず、資金力が乏しくても創業支援の後押しを受け新規立ち上げに活用される可能性が残っています。
日本の「合同会社」のモデルとなった米国の「LLC」のように、パススルー課税(法人税がなく、出資者の所得税のみが課税される制度)の適用も、開業率アップへの検討課題かもしれません。
政府の成長戦略である「未来投資戦略」は、開業率を欧米並みの10%を目標に掲げています。
ただし、税金対策での乱立は本末転倒でしょう。
「イノベーション・ベンチャーを生み出す好循環システム」という本来の目的からも乖離してきます。
今後、「合同会社」はメリットを生かして、すそ野を広げた地域経済の活性化への貢献が求められます。
新設企業が実需と雇用を生み出し、経済活動に携わるには、時間的な猶予と同時に、サービス業や製造業、建設業など、幅広い業種での設立誘導が必要でしょう。

確かに、最近は合同会社が増えていますね。
それは、僕が設立から関わっている案件でもすごく感じます。
個人的にも、起業する人が増えて、地域の活性化につながればいいなぁと考えていますが、新設法人が増えているのは喜ばしいことですね。
ただし、節税対策として法人を設立するのも良いと思いますが、設立時は色々と資金が必要でしょうから、設立費用がもっと安くならないのかなぁと切に思います。
ベンチャー企業がたくさん出てきて、その中から地域、ひいては日本をけん引するような企業が出てきてほしいですね。

 新設企業の5社に1社が合同会社になっていることについて、どう思われましたか?


1円起業に5万円」の謎

 「一円起業、5万円也(なり)」。
起業の手続きに必要なこんな手数料について、廃止を訴える内閣官房と必要と主張する法務省が昨秋から対立してきたようです。
結果は存続で固まり、法務省に軍配があがりました。
首相官邸の人事権を背景に各省を動かす手法が、法曹界を後ろ盾にする法務省には通用しませんでした。 起業の手続きを巡る議論の発端は、安倍晋三首相が打ち出した「世界で最もビジネスしやすい国」づくりです。
成長戦略で「日本のビジネスのしやすさを20年までに先進国で3位以内にする」との目標を掲げてきました。世界銀行によると、日本の順位は2013年には経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中15位でした。
あれから5年後の順位は24位です。
目標に近づくどころか、一段と遠のいています。
とりわけ見劣りするのが、32位の評価に沈んだ「法人設立のしやすさ」です。
日本は手続きが煩雑なうえに、登記などに時間がかかるのです。政府は2017年9月に検討会を立ち上げ、法務局への登記や税務署への設立届などを1回でまとめるといった改善点をまとめました。
一方で、政府内で対立が深まったのが、公証制度を巡る問題です。公証制度は遺言書や不動産売買などの重要な契約書について、公証人が公正証書などで内容を証明する制度です。
株式会社をつくるには、会社の目的や組織、運営に関するルールを定めた定款の認証を公証人から得なければなりません。これに、1回当たり一律5万円の手数料がかかるのです。
資本金1円の株式会社でも5万円です。起業したことのある経済人からは不満が多いようです。
「超アナクロ的な現状は絶対に変えるべきだ」と、先日、官邸で開いた未来投資会議で、民間議員の金丸恭文フューチャー会長は公証制度の「面前確認」と「手数料5万円」を批判しました。経済界の声を反映し、内閣官房は改革の原案をつくりました。
標準的な項目を記載した定款に電子署名を付けてオンラインで申請すれば、公証人の認証手続きを撤廃するという案です。
これに対し、公証制度を所管する法務省が「暴力団などの反社会勢力が隠れる法人が増えかねない」と反発しました。

法務省は撤廃の代わりに、「スマホなどを通じた画像や音声でのやりとりも認める」という案を示しました。
将来は、公証人にオンラインで送った定款のデータを法務局に転送するシステムもつくるようです。

この見直しで、公証役場に出向く義務はなくなります。
しかしながら、それでも5万円の手数料は手つかずに終わりました。
日本公証人連合会の大野重国理事長は、「会社法の改正などに応じて公証人の研修を重ねたり、電子定款システムのセキュリティー対策を施したりするなど投資負担は軽くない」と語っています。

今回の見直しで壁となったのは、中央官庁の中では特殊な法務省内の法曹関係者の存在です。

多くの公証人は裁判官と検察官のOBです。
内閣官房の資料によると、東京法務局に所属する指定公証人は103人で、裁判官が45人、検察官が58人です。
手数料を減らしたりなくしたりすれば、裁判官や検察官の再就職先の収入が減ってしまうことになります。

制度を所管する法務省の幹部ポストには検察官や裁判官からの出向者が多くなっています。
公証制度の見直しを担当した民事局も、幹部6人のうち5人は裁判官出身者です。

ある法務省の政務三役経験者は「検察庁や裁判所からの出向者は法曹界の利益を優先しがちだ。一方で官邸の人事権は及びにくい」と語っています。
他の省庁の職員と異なり、人事を恐れて官邸の意向に従う雰囲気にならないようです。

手数料が5万円になったのは1993年だそうですが、額の根拠ははっきりしないようです。
内閣官房は定款認証による手数料収入が年50億円あり、公証人1人あたりの収入が約1,000万円とはじいています。
ある関係者は、「法務省の願いは手数料の死守だった」と話しています。

日本の開業率は6%で、10%台の米英レベルは遠いです。
日本は親会社と子会社で税務や社会保険の手続きをまとめるのが法的に難しく、社会保険労務士などの既得権になっているとの指摘もあります。

 5万円の手数料すら見直せない現状では、「ビジネスをしやすい国」は遠のくだけでしょう。

当然コストはかかるでしょうから手数料が必要なのは理解できますが、公証人の収入を確保するために手数料を死守するのはどうかと思います。
AIなどの発達により、今後、手間が省かれ、手数料が下がることを期待したいですね。
やはり、会社設立に費用がたくさんかかるということが、会社設立を躊躇する一因だと思いますので。

「1円起業に5万円」の謎があることについて、どう思われましたか?


仮想通貨(イーサリアム) を現物出資して会社設立!

2018年04月23日(月)

仮想通貨を資本金の一部に組み込んだ企業が生まれるようです。
仮想通貨関連のベンチャー、スマートコントラクトシステムズ(東京・千代田)は、金融システム開発のシンプレクス(東京・港)と5月につくる共同出資会社に仮想通貨「イーサリアム」を現物出資するようです。

 新会社は仮想通貨取引の価格の透明性を高める仕組みづくりを担うようです。
資本金2億円のうちシンプレクスが1200万円を現金で、スマート社がイーサリアム9,800万円相当を現物で出資します。
会社法は、不動産や有価証券など金銭以外の財産の現物出資を認めていますが、仮想通貨を使うのは極めて珍しいと言えます。

企業による仮想通貨の活用を巡っては、企業会計基準委員会(ASBJ)が先日、会計ルールを策定しました。
保有する仮想通貨は、原則として期末に時価評価し、価格変動に応じて損益に計上することなどを決めています。
スマート社は一定程度、多めに現物出資し、イーサリアムの価格変動に伴う出資比率の変動を吸収できるようにします。

イーサリアムの活用をめぐっては、米JPモルガン・チェースやマイクロソフトなど欧米の約30社が企業連合を立ち上げ、企業間取引への応用を目指して技術開発しています。
日本勢ではトヨタ自動車子会社や三菱UFJフィナンシャル・グループのほか、スマート社の親会社も連合に参加しています。

個人的には、いまだ成熟しておらず、価格変動リスクの高い仮想通貨を現物出資するのはどうかと思いますね。

仮想通貨(イーサリアムを現物出資して会社設立するところが現れたことについて、どう思われましたか?


経済産業省が大学発ベンチャーに関する調査結果を取りまとめデータベースの運用を開始!

 経済産業省は、大学発ベンチャーに関する調査を実施した結果、2,093社の大学発ベンチャーを把握し、昨年度調査時(1,846社)に比べ247社増加していることが分かりました。
 また、本調査の結果を基に大学発ベンチャーデータベースを構築し、運用を開始しました。<背景・経緯>
経済産業省は、大学発ベンチャーの設立状況を把握するとともに、「イノベーションの担い手」として高く期待される大学発ベンチャーの効果的な支援の検討のため、平成26年度以降、毎年本調査を実施しています。
また、大学発ベンチャーの設立状況等の動向や成功要因を正確に把握するためには、大学発ベンチャーの基礎データを継続的に把握することが重要であり、平成29年度においても引き続き調査を行いました。<調査の結果概要>
 大学発ベンチャー設立数について、平成29年度調査において存在が確認された大学発ベンチャーは2,093社であり、平成28年度調査時より247社増加していることが分かりました(平成28年度調査時は1,846社)。
大学発ベンチャーの大学別創出数について、概ね昨年度調査時と同様のランキングとなりましたが、名古屋大学が大きく順位を上げました。

順位 (前年度)     大学名      創出数
1   (1) 東京大学         245
2   (2) 京都大学         140
3   (3) 筑波大学          98
4   (4) 大阪大学          93
5   (5) 九州大学          81
6   (6) 早稲田大学         74
7  (12) 名古屋大学         69
8   (7) 東北大学          56
9   (8) 東京工業大学        53
10  (10) デジタルハリウッド大学   52
11  (11) 慶応義塾大学        51
12   (9) 北海道大学         49
13  (15) 龍谷大学          43
13  (13) 広島大学          43
15  (12) 九州工業大学        39
16  (19) 神戸大学          31
16  (18) 岡山大学          31
18  (17) 会津大学          29
19  (22) 名古屋工業大学       27
20  (16) 立命館大学         26

大学発ベンチャーの大学関係者の役割について、研究・開発の方針、戦略への助言や技術的指導を行う者(技術顧問)が約6割と最も多く、次いで経営方針・経営戦略の最終的な決定者(CEO、代表取締役)、研究・開発の方針、戦略の最終的な決定者(CTO)の順に多いことが分かりました。
大学発ベンチャーの業種について、バイオ・ヘルスケア・医療機器が最も多く、次いでIT(アプリケーション、ソフトウェア)、ものづくり(ITハードウェア除く)、環境テクノロジー/エネルギー科学・素材等の自然科学分野(バイオ関連除く)、IT(ハードウェア)の順に多いことが分かりました。

<大学発ベンチャーデータベースの構築・運用>
本調査で得られた大学発ベンチャーの情報を基に、大学発ベンチャーデータベースを構築し、運用を開始しました。
本データベースは、大学発ベンチャーの基本情報や関連特許、人材、資金等の情報を掲載しています。
本データベースが大学発ベンチャーと関連する事業者のマッチングを促進させ、大企業、アクセラレーター、ベンチャーキャピタル等から大学発ベンチャーへの人材や経営等の支援、リスクマネー等の資金の循環に繋がることを期待しています。
 大学発ベンチャーデータベースHP

<担当>
産業技術環境局大学連携推進室長飯村
担当者: 船橋、小林、内藤
電話:03-3501-1511(内線33713
03-3501-0075(直通)
03-3501-5953FAX

<公表日>
平成3039()

税金などを使って研究しているわけですから、民間企業などにそこで得られた知見などを移してしていくことは、非常に大事なことだと思っています。
一方で、研究者は、経営者には向かない方が多いと思いますので、いろいろな位置づけで、うまくやっていければいいですね。
我が関西学院大学や、教鞭をとっている香川大学が上位20大学に入っていないのはとても残念ですが、日本を挙げて、このような企業が増えてくれることを期待したいと思います。

経済産業省が大学発ベンチャーに関する調査結果を取りまとめデータベースの運用を開始したことについて、どう思われましたか?

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ファーストリテイリング柳井正氏が約775億円相当の株式を売却!

FASHIONSNAPによると、ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼CEOが、2024年4月12日から4月30日の間でファーストリテイリングの株式188万3,700株を売却したことが分かったようです。

これにより、柳井正氏の保有比率は18.2%から約1%減り17.19%となりました。

柳井正氏は2024年5月9日に大量保有報告書の変更報告書を提出しました。

売却額は、2024年5月8日終値の4万1,160円で775億円までのぼります。

大量保有報告書の変更報告書によれば、柳井正氏の親族をはじめとする共同保有者と合計した保有比率は42.3%から41.28%まで減少しました。

なお柳井正氏は、ファーストリテイリング株を2023年7月に約175万株、2024年2月に約183万株売却しています。

1%で775億円ってスゴイですね。

毎年、香川大学の大学院の授業で、ファーストリテイリングの柳井正氏やソフトバンクグループの孫正義氏や楽天グループの三木谷浩史氏などの株式の保有状況を取り上げていますが、過去から、柳井正氏は株式を売却したりしていますね。

以前は、税金対策でオランダの会社に株式を移したりしていましたが、最近の売却の目的は何なんでしょうね?

ウォッチしていきたいと思います。

株式売却で譲渡益が出た場合、所得税と住民税とを合わせて、20.315%ですから、所得税率が高い方にとっては、税率が低いという感覚なんでしょうね。

ファーストリテイリング柳井正氏が約775億円相当の株式を売却したことについて、あなたはどう思われましたか?


SBI証券が新規上場の株価操作で証券取引等監視委員会が金融庁に勧告へ!

テレビ朝日によると、新しく上場する企業が株式を公開する際株価を釣り上げる株価の操作をしていたとして、証券取引等監視委員会はSBI証券に対して行政処分を行うよう金融庁に勧告しました。

証券取引等監視委員会によると、SBI証券は3つの新規株式上場で最初に付く値を釣り上げる目的と知りながら、遅くとも公開2日前には金融仲介業者を通じて株式の買い注文を出すように香港の現地法人社員らに指示しました。

その後、顧客に勧誘し、公開前に買い注文を受けました。

証券取引等監視委員会はこれらの行為について公正な取引をゆがめ、株価を操作した違法行為にあたると認定し、金融庁に行政処分を勧告しました。

今後、金融庁が業務改善命令などの行政処分を検討します。

SBI証券は勧告を受けて「内容を厳粛に受け止め、改善・再発防止に取り組む」とコメントしています。

こういう証券会社が主幹事をやっていいのだろうか?と疑問に思いますね。

こういう証券会社の行為が株式市場の信頼性を落としますので、厳格な処分をしてほしいと思います。

SBI証券が新規上場の株価操作で証券取引等監視委員会が金融庁に勧告したことについて、あなたはどう思われましたか?


東証が親子上場の意義を開示要請!

日本経済新聞によると、東京証券取引所は親子関係や持ち分法適用関係にある上場会社1,000社超に対して、12月中にも、企業統治に関する情報開示の拡充を求めるようです。

企業側は上場子会社を持つ意義や、子会社の独立性確保のための取り組みなどの説明が必要になります。

少数株主の利益を脅かしかねない親子上場などには相応の説明責任を求め、市場全体の魅力向上につなげます。

情報開示の拡充は、上場子会社や上場関連会社を持つ親会社・大株主側と、株式を持たれている子会社・関連会社側の双方が対象となります。

親子上場では、親会社が企業グループとしての利益を優先することで子会社に不利益になるような経営を進めても、子会社の少数株主がその決定を覆すのは難しいなどの問題が指摘されています。

上場各社は取り組み内容を、東証に提出するコーポレート・ガバナンス報告書に記載します。

開示は義務ではないが、東証は上場企業への通知文に「(開示事項が)投資判断上重要であり、投資家との対話の出発点となる」と記載して対応を促します。

親会社・大株主側には、子会社や関連会社を持つことになった経緯や、それらの上場を維持しておくことの合理性などの説明を求める。子会社や関連会社の役員の指名プロセスへの関与方針や、役員の選解任議案での議決権行使の考え方なども示すようにします。

子会社・関連会社側には、親会社や大株主が掲げるグループ経営に関する考え方を代わりに説明するよう求めます。

グループの事業ポートフォリオにおける自社の位置づけを示し、グループ会社間で資金管理をしている場合はその意義の開示を要請します。

少数株主保護のため、自社の意思決定プロセスへの親会社や大株主の関与の有無や内容なども示すようにします。

グループ間取引や完全子会社化といった利益相反懸念のある行為を監督する特別委員会を設置している場合、委員の構成や実際の活動状況などを開示するように求めます。

東証は親子上場に関する開示要請とあわせて、親会社や個人の支配株主を持つ上場会社で独立社外取締役が果たすべき役割をまとめた通知も出します。

独立社外取締役は「少数株主の利益を保護するという重要な責務を負う」と明記し、取締役会や特別委員会での役割などを示します。

独立社外取締役が役割を十分に発揮できるよう、取締役会をはじめ会社側にも体制を整備するよう求めます。

東証が企業に開示拡充を求める背景には、親子上場自体は減っているものの、持ち分法適用関係にある上場企業はむしろ増えていることがあります。

東証によると、親子上場に厳しい目が向けられるようになり、上場子会社は2022年時点で約260社と4年間で18%減少しました。

ところが、発行済み株式の20%以上50%未満を保有する大株主(個人株主を除く)を持つ上場会社は2022年時点で約960社と、4年間で27%増えています。

上場企業間での資本業務提携が増えていることが大きいようです。

2019年にはアスクルの株主総会で社長と独立社外取締役の選任議案に、株式の4割超を握るヤフー(現LINEヤフー)が反対し、否決となりました。

東証は実質的な支配力を持つ株主がいる上場会社における少数株主保護の枠組みなどを議論するため、2020年1月に外部の専門家でつくる研究会を立ち上げました。

研究会は同年9月に中間整理をまとめて以降、中断していましいたが、2023年1月に再開して議論を進めてきました。

研究会では独立社外取締役の実効性を高めるため、選任議案には「マジョリティー・オブ・マイノリティー(MOM)」と呼ぶ手法を採用する案が浮上しました。

MOMでは利害関係のある大株主を除いた少数株主の過半の賛同が必要になります。

こうしたルールの導入には上場制度の見直しが必要になるため、今後東証で論点を整理した後、研究会で改めて議論します。

個人的には、業績の良い子会社を上場させて業績の悪い上場親会社が資金を調達したり、業績の良いグループの稼ぎ頭を上場させることにより上場親会社に帰属する利益が減少したり、上場しても親会社の影響を受けているなど、親子上場には以前から疑問を抱いていますが、これを契機に親子上場を認めない方向で議論が進んでいくといいなぁと思いますね。

海外の投資家が日本市場に投資するのを嫌がる理由の一つに親子上場があるとも聞きますし。

東証が親子上場の意義を開示要請したことについて、あなたはどう思われましたか?


Jリーグがサッカー全体の成長のためIPO候補として上位10クラブを支援!

ブルームバーグによると、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は競技成績や人気、経営力で優れた上位10クラブ程度を新規株式公開(IPO)の候補として財政・情報面で重点的に支援していくそうです。
上場による資金調達の選択肢拡大などを通じてクラブやリーグ全体の成長につなげる狙いです。

Jリーグ(東京都千代田区)の青影宜典執行役員がブルームバーグの取材で明らかにしました。
資金調達が有力選手の獲得やインフラ整備などクラブの競技力強化に資するうえ、上場による認知度の向上や経営管理体制の整備も期待できます。

また、一部の海外投資家がクラブへの出資に興味を示す中、投資リターンを確保する道筋を上場という形で提供できます。
青影氏は「これまでクラブに出資したいという投資家にとってエグジット(出口)の道は無かったが、上場解禁で将来の戦略が立てられるようになった」と語りました。

欧州ではイギリスのマンチェスター・ユナイテッドがニューヨーク証券取引所に上場するなど、公開クラブは10を数えます。
クラブは上場することで国内外からの資金調達、知名度向上、経営管理体制の強化が可能になります。
調達した資金は選手の獲得、スタジアムの建設などに充てられています。

ことし30周年を迎えたJリーグですが、数年前は新型コロナウイルスのまん延でリーグ戦が長期中断、存続の危機にも直面しました。
その後、入場規制とともに再開したもののスポンサー収入が減少、コロナ禍における成長のための施策の一つとしてクラブの上場解禁を決めました。

上場解禁がJリーグの理事会で決議されたのは2022年2月です。
旗振り役はデロイトトーマツコンサルティングで企業再生を担当した経歴のある青影氏と、当時の専務理事でゴールドマン・サックス証券で債券営業部長を務めた木村正明氏でした。
木村氏はファジアーノ岡山の筆頭株主でもあります。

関係者によれば、現在Jリーグに所属する2チームが上場を検討しているようです。
これについて、Jリーグの仲村健太郎広報担当はコメントを控えるとしています。

青影氏によれば、外国人投資家からのクラブ投資に関する問い合わせは多く、出資を検討している投資家もいるそうです。
一方、上場は「一つの手段、目的はリーグ全体を活性化して成長すること」で、いつまでに何クラブを上場させるというような数値目標は設定しないようです。

Jリーグは青影氏が管轄するクラブライセンス事務局で約60クラブの経営情報を把握、上場に関する必要な情報を共有していきます。
また、昨年リーグ全体で年間114億円あったクラブへの配分金は今後、競技成績や人気などに応じて上位を占めるチームへの傾斜配分を強めることも検討します。

一方、青影氏は上場のためには「難題をクリアしなくてはならない」と指摘、現状では対象となる10クラブ程度の全てが上場に相応しい基準には達しているわけではないとの認識を示しました。
そのうえで、「世界に認められるチームを作ってほしい」と各クラブによる今後の経営努力に期待をかけました。

それほど儲かっているクラブがあるようには思いませんので、IPOはそう簡単ではないとは思いますが、IPOできるようなクラブが日本にもできて、Jリーグの底上げが図られて、活性化すると素晴らしいですね。
日本選手が世界的レベルのクラブでたくさん活躍していますが、Jリーグのクラブに所属している外国人選手が、ワールドカップなどで活躍する姿を観られるようになるのも楽しいでしょうね。

Jリーグがサッカー全体の成長のためIPO候補として上位10クラブを支援することについて、どう思われましたか?


ファーストリテイリングの柳井氏が同社株約175万株(時価約600億円)を売却!

Bloomberg によると、カジュアルファッションのチェーン店「ユニクロ」などを運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が、同社株175万500株を市場内で売却したことが、先日、変更報告書で明らかになりました。

開示資料によると、柳井氏は2023年7月18日から31日にかけて市場内で株式を売却し、同氏の保有比率は従来の20.32%から19.23%に低下しました。
8月3日の終値3万4,140円で換算すると、約600億円の価値に相当します。

同社株は年初来で27%の上昇とTOPIX(20%の上昇)を上回るパフォーマンスを示しています。
2023年7月13日に発表したところによると、8月決算における通期営業利益の予想を3,600億円から3,700億円に増額しました。

ちなみに、ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、柳井氏の資産総額は372億ドル(約5兆3,000億円)に達し、国内では1位、アジアでは6位の富豪です。

1%くらいで約600億円とはすごいですね。
上場企業のオーナーは、たくさん株式を持っている方も多いですが、インサイダー情報を持っていますので、株式を売却できるタイミングが非常に限定されますので、株式を売るのも大変ですね。
夢がある話しだと思いますので、こういうニュースを見て、起業をして、大成功される方が増えるといいなぁと思った1件でした。

ファーストリテイリングの柳井氏が同社株約175万株(時価約600億円)を売却したことについて、あなたはどう思われましたか?


国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度!

東洋経済によると、「われわれの想定とは、まったく違う税務上の解釈となりました」と、6月上旬、都内に本社を置くあるスタートアップ企業の経営陣は、社員にそのような説明を行いました。

事の発端は5月29日、あるストックオプション(SO)の税率をめぐって国税庁が示した見解にあります。
SOはあらかじめ決めた価格で自社株を買える権利で、「株式購入権」ともいいます。
そのうち「信託型SO」が焦点となりました。

スタートアップ関係者らを集めて開かれた説明会の場で国税庁の担当者は、「(SOの)権利行使と株式の交付が行われている場合、給与課税の対象となり、源泉所得税の納付が必要」などと指摘しました。
これにより、約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなりました。
冒頭の会社もその一社です。

株売却時の課税のみと考えられていたSOは通常、役員や社員に直接与えられます。
それに対して信託型では、信託会社などにオプションプール(SOの交付枠)として割り当て、信託契約期間中や契約終了時に、企業が指定する役員や社員などに同一条件のSOを交付します。

発行時に、誰にどれだけ権利を与えるかを決めておく必要がなく、SOの発行後に入社した人も同一条件でSOを得ることができる公平性などを売りにしていました。
従来、この信託型SOは、SOの行使時に給与所得課税は行われず、株式売却時の譲渡益課税のみになるとの見方が広がっていました。

ところが、国税庁が示した見解に沿えば、役職員が信託型SOを行使した時点で、給与所得として最大55%の課税がなされます。
20%の譲渡益課税が生じる前の時点で、キャッシュインなき課税が発生するのです。

SOの行使と株式の売却でキャピタルゲインを得て20%の納税をすでにしていても、過去5年にさかのぼり、給与所得として追徴課税されます。
年収4,000万円を超えていた場合は、最高税率55%が課せられます。

「所属会社の税解釈を信じてお金を使い切っていた場合、納税のために家などの資産を手放さざるをえない人が出てくるのでは」と、スタートアップ関係者からは不安の声が上がっています。

信託型SOを導入していた会社やそれを支援していたコンサルティング会社などは行使時点の課税について、一貫して負担は生じないと見ていました。
しかしながら、国税庁の説明で、それがひっくり返ることとなったのです。

源泉所得税を徴収して納付する立場の企業では、会計上の損失計上が必要になる可能性もあります。

日本公認会計士協会や企業会計基準委員会(ASBJ)の見解次第では、信託型SOを発行し、すでに役職員による行使が行われていた場合、追加の税負担を会計上で処理しなければならなくなります。
上場企業では、人工知能(AI)開発で知られるPKSHA Technologyなどで、その影響が大きいとみられています。

いったいなぜ、このような事態になってしまったのでしょうか?
あるベンチャーキャピタルの幹部は、「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘しています。

一方で、投資先が信託型SOを導入している別のベンチャーキャピタルの幹部は、「多くの会社が慎重に調べて信託型SOを導入している。課税関係はクリアだったと信じており、国による後出しじゃんけんは許せない。『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤っています。

立場によって見方は分かれますが、国税庁は説明会当日、日本のスタートアップにとって追い風となるSOの環境整備策も公表しています。
それは一定の要件を満たすことで、税制の優遇措置を受けることができる「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールです。

従来は明確な算定式がなく保守的な運用が行われていましたが、新ルールによって、20%の譲渡益課税のみで済む税制適格SOが発行しやすくなるでしょう。
信託型SOの特長だった低い行使価格で、税制適格SOを発行できるメリットが生まれます。

自社でも信託型SOを発行していたフォースタートアップスの志水雄一郎社長は、「株価算定ルールが新しくなったのは画期的。既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測しています。

SOの環境整備をめぐっては、政治による後押しも進んでいます。
自民党は2023年5月に公表した提言で、株主総会の決議事項であるSOの行使期間や期間に関する承認を取締役会に委任できるよう会社法を改正することなどを求めました。
政府の側も、使い勝手のよいSOの制度設計はスタートアップの人材獲得力向上に欠かせないという意識を持っているようです。

「国税ショック」を機に、日本のスタートアップの活性化に弾みをつけられるでしょうか?

結構、コンサル会社や信託銀行が勧めて、稼いでいたのではないかと思いますが、冷や汗ものでしょうね。
まぁ、明確になったということで良かったというべきかもしれませんが。
税制適格SOの方は良かったですね。

国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度について、あなたはどう思われましたか?


公正取引委員会がIPOで一方的値決めのみずほ証券を「注意」!

日本経済新聞によると、公正取引委員会はIPOを巡り、みずほ証券を「注意」したようです。
公正取引委員会は、先日、みずほ証券に対して「注意」をしたと発表しました。
新興企業の新規株式公開(IPO)で「公開価格」を設定する際に、主幹事証券会社の優位な立場からの一方的な値決めとみられる行為があり、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)につながる恐れがあると判断しました。

公開価格が低くなったことでスタートアップの資金調達に不利益を与えた可能性があるとして、改善を促します。

公正取引委員会によると、みずほ証券は20206月〜2021年5月に東証に上場した企業21社の主幹事を担当し、このうち2社について企業側の主張を下回る想定発行価格を提示するなどしました。
2社の上場後に最初に売買が成立した「初値」は公開価格の2倍以上になったといい、公正取引委員会は「新規上場会社はより多くの資金を調達できた可能性があった」と問題視しました。

独禁法違反が疑われた場合公正取引委員会は、違反行為の再発防止を求める行政処分の「排除措置命令」のほか、違反の疑いがある行為の取りやめを求める行政指導の「警告」や、違反はないが未然防止を図るため口頭で行う「注意」の対応を取ります。

今回はみずほ証券に明確な違反行為はなく、既に社内マニュアルの改定など改善を図る取り組みを進めていたことから「注意」に当たると判断した。
みずほ証券は、先日、「注意を真摯に受け止め、引き続き、合理的かつ適正な公開価格設定プロセスとなるよう、努めていく」とコメントしました。

IPOの手続きは新規上場企業から手続きを受託した主幹事証券が、上場する株式の大部分を引き受け、市場取引前の公開価格で投資家に販売します。

公開価格の設定に当たっては、市場の需要を適正に判断することが不可欠となります。
このため日本証券業協会の規則などは、類似企業の株価や業績を基に、投資家へのヒアリング結果を加味した上で価格帯を設け、主幹事証券が企業側と協議して決めるよう定めています。

今回、公正取引委員会が価格決定の過程に問題があるとした行為は2件あります。
一つは企業が想定発行価格について、主幹事以外の証券会社から意見を聞く「セカンドオピニオン」です。
客観的な視点から価格の妥当性を検討できるとともに、証券会社間の競争を促す手続きだが、みずほ証券は価格の参考にしていなかったと認定されました。

投資家へのヒアリングの経緯も注意の対象となりました。
みずほ証券は価格決定前に機関投資家などから需要を聞き取った際、自らが想定した価格よりも高い評価を聞いたにもかかわらず、意見を聞き入れなかったようです。

一方で、みずほ証券は最終的に2社側に公開価格の決定根拠を説明したことから独禁法違反とまで認定できないと判断しました。
2件の行為について「一方的に価格を低く設定することにつながり、新規上場会社側に不当な不利益を与える恐れがある」として、同様の行為を繰り返さないよう注意しました。

みずほ証券は2020年以降の3年間に毎年20〜30件前後のIPOで主幹事証券を務めました。
件数ベースでみると、全体の2割超を占め、2021年のシェアはトップ、他の2年も2位でした。

政府は2021年6月に閣議決定した成長戦略実行計画に「IPOの価格設定プロセスの見直し」を明記しました。
日本の公開価格が初値を大幅に下回っているとして、値決めの適正化を図ってきた経緯があります。

公正取引委員会は2021年8月からIPOで上場した国内企業や証券会社に、書面と聞き取りでの調査を開始しました。
2022年1月の報告書で、立場の強い主幹事証券が一方的に適正でない公開価格を設定し新規上場企業に不利益を与えるのは、独禁法が禁じた「優越的地位の乱用」に当たる恐れがあると言及していました。

日本証券業協会も実態把握を進めた上で2022年2月、公開価格について各証券会社が会社側に十分な説明を果たす、といった改善策をまとめました。
2022年6月以降に順次規則を改定して是正を進めています。

▼公開価格
企業の新規上場に当たり、事前に主幹事証券会社が投資家に販売する際の株式の価格。
一般に、まず類似企業の株価や業績などを基に「理論価格」を算出し、続いて相場環境などを考慮して一定割合を差し引いた「想定発行価格」を出します。
機関投資家から妥当な株価水準を聞き取って「仮条件」と呼ばれる価格帯を設け、最終的に主幹事証券が企業側と協議して決定すべきだとされています。

政府の成長戦略会議は2021年、株式公開後に市場で成立する「初値」が公開価格を大幅に上回るとして、新興企業の資金調達の足かせになっていると是正を求めました。

一方、証券業界は日本の新規株式公開(IPO)が欧米に比べて小規模で、個人投資家の買い注文により初値が上昇しやすいと反論しました。

公開価格が過小との批判は当たらないとする声もあります。
公正取引委員会は2022年1月に公表した報告書で「(一方的な価格設定で)新規上場会社に不当に不利益を与える明確な実態は確認されなかった」としました。
しかしながら、優位な立場にある証券会社が企業側に合理的な根拠を説明せずに価格を低く決めた場合は、独占禁止法に抵触する恐れがあるとも指摘しています。

みずほ証券は誰のために仕事をしているんでしょうね。
別の報道などを見ると、公開価格を高くしすぎると株を売りにくくなるため安くしているようなことが書かれてありましたが、それって、結局、投資家に儲けさせて、投資家の取引を増やそうとか継続してもらおうという意図があるのではないかと邪推していまいます。

公正取引委員会がIPOで一方的値決めのみずほ証券を「注意」したことについて、どう思われましたか?


東証の暫定組の猶予2026年3月までとなり上場維持へ改革が急務!

日本経済新聞によると、東京証券取引所は、先日、プライム市場などの上場基準に満たなくても暫定的に上場を認める「経過措置」を実質4年で終わらせる案を発表しました。
経過措置は2022年4月の市場再編を起点に3年で終了し、その後1年の改善期間を設けます。
それでも基準を満たせなければ監理・整理銘柄に指定され、上場廃止になります。
プライム市場で基準を満たしていない約270社は上場維持に向けた経営改革が急務となります。

東京証券取引所は2022年4月にプライム、スタンダード、グロースの3つに市場を再編しました。
プライムは大株主や役員などの保有分を除く流通株式ベースで時価総額100億円以上、スタンダードは10億円以上といった基準を新たに設けました。

この際、すでに東証に上場している企業に対し、プライムなどの基準に満たなくても暫定的な経過措置として上場を認めたのです。
経過措置の対象は2022年12月末時点でプライムが269社、スタンダードが200社、グロースが41社あり、各市場の1〜2割を占めています。

東京証券取引所は当初、経過措置は「当分の間」とし、期間をはっきりさせていませんでした。
市場では「上場のダブルスタンダード(二重基準)」との批判がありました。
東京証券取引所は有識者会議での議論を踏まえ、先日、制度改正案をまとめ、「3年プラス1年」という期間を打ち出しました。
早ければ今春にも適用されます。

経過措置の終了時期は決算期によって異なります。
3月期決算の場合は2025年3月まで、9月期決算なら2025年9月までとなります。
それぞれその後1年が改善期間となります。

それまでに基準を満たせなければ監理銘柄・整理銘柄に指定されて上場廃止になります。
監理銘柄と整理銘柄の指定は通常3か月以内ですが、特例として指定期間を6か月としました。
既存株主が保有株を売ることのできる機会を確保するためです。

プライム上場の経過措置企業は、新しい制度が始まってから6か月間は審査なしでスタンダードに移れるようにします。
旧東証1部企業は市場再編に合わせてプライムかスタンダードに移りました。
プライム基準には遠かったが最上位市場にとどまりたいとしてプライムを選んだ企業は一定数あります。
こうした「背伸び組」への救済措置となります。

一方、スタンダードの経過措置企業には救済措置はありません。
グロースはスタートアップなど成長企業を対象にし「市場の性質が異なる」(東京証券取引所関係者)ためです。

経過措置の対象企業は、上場維持基準を満たすために計画を策定し、進捗状況を定期的に公表する必要があります。
計画をいつまでに達成するかは企業に任されています。
プライムの場合、達成までの期間を2〜3年とした企業が97社と全体の4割弱を占める一方、5年以上とした企業も21社ありました。

計画達成までの期間が今回定めた猶予期間(実質4年)を超える企業は、猶予期間が終わっても計画の期間中は監理銘柄にとどめ、上場廃止にしない特例を設けました。
ただし、監理銘柄となることで、投資家の目線は厳しくなります。

基準を満たしていない企業は、収益の改善によって流通時価総額を上げたり、創業オーナーの持ち株を放出して流通株式比率を高めたりする必要があります。
2028年5月に基準を満たすことを目指しているプライム暫定組のファーマライズホールディングスは以前から「計画の前倒しを含めて検討していく」としていました。
2028年3月の達成を目標にするピーバンドットコムは「プライム上場維持を第一に何をすべきか経営陣で検討する」考えのようです。

課題だった経過措置の期限を巡る議論の終わりが見えてきましたが、これだけで投資家の評価が高まるわけではありません。
市場では「プライムの銘柄数が多すぎるのが問題で、少なくとも半分にするなど大きく減らしていくべきだ」(エピック・パートナーズ・インベストメンツの武英松代表取締役)といった声もあるようです。

東京証券取引所は今回、企業に企業価値向上に向けた意識改革を促す方策もまとめました。P
BR(株価純資産倍率)が1倍を割れるなど株価の低い企業に対し、資本コストなどを踏まえて企業価値を高める取り組みや進捗状況を開示するよう要請します。
プライムだけが対象だった英文開示をスタンダードやグロース企業にも求めるようにします。

市場再編の目的は上場企業の新陳代謝を促し、株式市場を再活性化することにありました。
ゴールはいまだ遠く、継続的な制度改正が課題となります。

再編時に、こんな中途半端なことで世界の投資家から評価されるのだろうかと思っていましたが、ようやく改正がなされるようで嬉しいです。
従来のいわゆる『東証一部上場企業』でも、聞いたことのない企業が託さ案あったわけですから、僕も個人的には、プライムは半分以下にすべきだと思っていますし、東京証券取引所の存在感を高めるためにも上場企業としてふさわしくない企業は上場廃止にすべきだと思います。
証券市場は、会社側の肩書きのためのものではありませんので。

東証の暫定組の猶予2026年3月までとなり上場維持へ改革が急務であることについて、どう思われましたか?


IPOの減少予想広がりスタートアップ企業の目線はM&Aに!

2022年04月14日(木)

“上場熱”が高かった2021年から一転して2022年は新規上場数が減少するとの市場予想が広がっているようです。
株安傾向が続く2022年の市場動向やウクライナ情勢への懸念からIPOを目指す企業にとって厳しい環境となっています。
東京商工リサーチの全国「IPO意向企業」動向調査によると、株式上場(IPO)の意向を示す企業は1,857社だった一方で、業績伸び悩みの傾向があると分析し、「世界経済の混乱による投資家心理の冷え込みや株価低迷でIPOは逆風となっている」と指摘しています。

東証1部に上場予定だった住信SBIネット銀行は2022年3月7日に上場延期を公表し、「ウクライナ情勢や最近の市場動向など様々な環境の変化を総合的に勘案」との延期理由を表明しました。
期待していた株価や上場メリットが得られないと判断すれば、今後もIPOを延期する企業が出てくる可能性があります。

2021年には14年ぶりにIPOが100社を超え、136社が上場しました。
ただし、2022年4月の東京証券取引所の市場再編を前に、大企業が上場する子会社を非上場化するトレンドもあり、あえて上場を廃止する企業も数多くありました。

全国「IPO意向企業」動向調査の業種別では情報サービス・制作業が540社と全体の約3割を占め、システム開発やweb関連サービスといったIT関連企業が多く、ベンチャーやスタートアップ企業などで構成されています。
売上高では年商50億円未満が84.3%で、従業員数は50人未満が約6割と中堅・中小企業が主体となっています。
ただし、比較可能な最新決算で、IPO意向企業1,422社を合算すると、売上高が8兆8,062億円と微減となっています。
さらに、1,174社の当期利益は1,602億円の赤字で、うち4割が赤字と伸び悩みを示す結果となりました。
スタートアップ企業などは初期投資を負担するため赤字から事業を始めるケースが多いとされています。
東京商工リサーチはコロナ禍で「利益確保が難しく赤字に転落するIPO意向企業が目立っている」と指摘しています。

スタートアップ企業の支援を打ち出す日本M&Aセンター取締役の渡部恒郎氏は「2022年のIPOは厳しい環境となっている。アメリカの中央銀行にあたるFRBによる金融引き締めがあり、国内市場の株価も落ちているため、IPO意向企業が当初、見込んでいた株価が非常に低くなり、IPO数が鈍ってくる可能性が高い」と話しています。
スタートアップ企業がIPOではなく、アメリカ市場のようによりM&Aを選択する可能性を予想しています。
2021年には後払いサービスのペイディがIPOではなく、M&Aを選び、アメリカ決済大手ペイパル・ホールディングスに3,000億円で買収されました。
今後、IPOを目指す企業がどう対応するか注目されます。

上場しても思ったような株価が付かないと予想されるとなると、上場を延期したり、あきらめたりする企業は当然出てきますよね。
そうなると、M&Aに走ることになるでしょう。
株式市場が活性化しないのは残念ですが、一方で、M&A市場は活性化するでしょうから、しかたないですね。
どちらにしても、企業価値を高める努力をしないといけないということに変わりはないと思いますので、IPOやM&Aをゴールとして見据えるのではなく、スタートとして考えて欲しいですね。

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市場再編直前の2022年1月から3月に「東証上場」を廃止した企業!

M&A Onlineによると、2022年も第1コーナーを終えましたが、1~3月に東証上場を廃止した企業は25社を数えます。
これまでの1部、2部、ジャスダック、マザーズという市場区分を再編する約60年ぶりの歴史的な東証改革のスタートを前に、株式市場から「退場」しました。

道路舗装最大手のNIPPOは2022年3月28日に東証での最後の取引を終え、翌29日付で上場廃止となりました。
1949年以来73年に及ぶ東証1部上場にピリオドを打ったのです。

NIPPOの親会社は石油元売り最大手のENEOSホールディングスです。
2021年秋、アメリカ金融大手ゴールドマン・サックス(GS)と組んで、NIPPOの非公開化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施しました。
親子上場を解消し、株式売却で得られた資金を脱炭素化に向けた成長分野への投資に充てるのがENEOSの狙いでした。

道路舗装をめぐっては公共工事の減少で市場が縮小に向かっています。
NIPPOはGSの主導で海外事業、不動産開発事業を中心に成長戦略を推し進め、将来の再上場を目指すとみられます。

青森銀行、みちのく銀行は4月1日に経営統合で持ち株会社「プロクレアホールディングス」をスタートしました。
持ち株会社が上場するのに伴い、青森、みちのくの両行は3月30日に上場廃止となりました。

スーパー業界ではイオン系のマックスバリュ西日本が同業のフジとの経営統合で2月末に、東証2部への上場が廃止となっています。

上場廃止の理由はさまざまですが、最も多いのが親子上場の解消で、次いで創業家ら経営陣による買収(MBO)、経営統合、投資ファンド・同業他社による友好的な買収、業績悪化で上場基準を満たせなくなった場合などがあります。
経営破綻のケースはまれです。

2022年1~3月期に東証上場廃止の25社の場合はどうでしょうか?
4割以上にあたる11社が親子上場の解消、つまり、親会社による完全子会社化です。

例えば、三井金属鉱業は三井金属エンジニアリング(東証2部)、品川リフラクトリーズはイソライト工業(東証1部)、ナカバヤシは国際チャート(ジャスダック)、凸版印刷はトッパン・フォームズ(東証1部)を完全子会社化しました。

MBOによる非公開化は4社でした。
鴨川グランドホテルは国内投資ファンドの日本産業推進機構(東京都港区)の傘下入りに伴い、3月上旬、ジャスダック上場を廃止しました。
鴨川グランドホテルはファンドの支援を得て、従来の経営陣が主体となった再建を進めます。

東証1部で紳士服・婦人用スーツのオンリーも1月半ば、株式市場から退場しました。
創業者で筆頭株主の中西浩一取締役相談役らの意向によります。
ビジネスウエアのカジュアル化でスーツ需要が減っていたうえ、コロナ禍によるテレワーク導入などで市場がさらに縮小する中、中長期的な観点から経営改革を進めるには非公開化が必要だと判断しました。

不祥事による退場も1社ありました。
マニュアル制作のグレイステクノロジーは架空売り上げの計上など粉飾問題で2月末に東証1部上場の廃止に追い込まれました。

ちなみに、東証は4月4日に大企業向け「プライム」、中堅企業向け「スタンダード」、新興企業向け「グロース」の3市場に再編されました。
1961年に「2部」を開設して以来の約60年ぶりの大改革で、各市場の位置づけを明確にし、国内外からの投資を呼び込むことを狙いとしています。

投資家としては、上場廃止は避けて欲しいですよね。
スクイーズアウトされたり、株式交換でまったく違う業種の株になったりしますから。
ちなみに、僕は以前、四国コカ・コーラボトリングの株を持っていて、株主優待でコカ・コーラなどをもらうのをすごく楽しみにしていましたが、株式交換で日本製紙の株になり、今ではトイレットペーパーなどになってしまいましたから(笑)。
親子上場は疑問を持っていますので解消はいいことだと思いますが、再上場をする企業もありますが、上場する以上、安易に非上場化することなどさけて欲しいと思います。

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投資ファンドがストライプインターナショナルの全株式を取得!

山陽新聞によると、カジュアルアパレル大手のストライプインターナショナル(岡山県岡山市)は、先日、ストライプインターナショナルの全株式を、ティーキャピタルパートナーズ(東京都千代田区、TCAP)の運営する投資ファンドが取得したと明らかにしました。
取得額は非公表です。
本社は引き続き岡山に残すようです。
ストライプインターナショナルを創業した石川康晴氏は、筆頭株主の立場から離れます。

ファンドの傘下に入ることで事業変革のスピードを増し、目標に掲げてきた新規株式公開を目指すのが狙いのようです。
ストライプインターナショナルは、「TCAPの豊富な投資実績に基づく経営ノウハウを生かし、より一層の企業価値向上を図る」としています。

ストライプインターナショナルの株式はこれまで、石川氏が関連会社なども含めて8割を保有していました。
他の株主分を含めた全株式を投資ファンドが買い取り、石川氏はファンドに出資する形で実質的な主要株主として残ります。
ストライプインターナショナルの常勤取締役の立花隆央社長と張替勉専務は現職にとどまり、TCAPから過半数の非常勤取締役を迎える予定です。

ストライプインターナショナルは、2020年3月、社長だった石川氏が退任しました。
新型コロナウイルス禍が逆風となり中国での自社ブランド販売からの撤退や一部ブランドの終了、東京で営業していたホテルの閉鎖といった事業リストラを進めていました。
購買の場が実店舗から電子商取引(EC)へと移り変わる中、全国への多店舗展開で成長してきたストライプインターナショナルはEC販売比率が1割前後にとどまるなど、デジタル化への対応にも課題を抱えていました。

ストライプインターナショナルは1994年、石川氏が岡山県岡山市内にセレクトショップを開いて創業し、翌1995年にクロスカンパニーとして設立されました。
1999年に製造から小売りまで手掛けるSPA業態に転換して、自社ブランド「アースミュージック&エコロジー」のヒットなどで急拡大しました。
アパレル事業はベトナムや台湾でも展開し、店舗数は国内外計1,500店です。
資本金は1億円、2021年1月期のグループ売上高は1,011億円、従業員約3,400人です。

TCAPは1991年に東京海上キャピタルとして設立し、2019年にMBO(マネジメントバイアウト)が行われ現社名となっています。
アパレルのほか幅広い分野に投資しています。

我が香川県高松市にも数年前に出店して、結構バーゲンばっかりやっているなぁと思っていたら閉店していましたが、岡山県では勢いのある会社だと思っていました。
IPOを目指しているのは以前、何かに書いてあったのを見たことがあると記憶していますが、あまりにも大きくなりすぎて、自力では無理と判断したということなんでしょうね。
最近、会社が大きくなりすぎると、創業社長とかサラリーマン社長では限界があり、プロの経営者が必要になるんだなぁと思うことが多々あります。
日本にも、プロの経営者が必要な時代になってきたと思いますし、我が会計業界でも資格を持たないプロの経営者がたくさん出てきているという話も耳にします。

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IPOの活況を背景にどこ吹くコロナの新富裕層が台頭し金融機関が熱視線!

日本経済新聞によると、数十億円以上の金融資産を持つ超富裕層が世界で拡大しているようです。
世界的なカネ余りによる新規株式公開(IPO)の活況などが背景にあり、新型コロナウイルス禍もどこ吹く風で潤っているようです。
若い世代も増え、マネーの流れの景色を変えつつあります。
各国の金融機関や税務当局は新たなお金持ちたちへのアプローチに躍起となっています。

コロナ危機で世界経済が戦後最悪のマイナス成長に陥った2020年ですが、フランスのキャップジェミニの調べによると、金融資産を100万ドル(約1億1,000万円)以上保有する富裕層は前年から6%増えて2,080万人に拡大したようです。
最上位の「ウルトラ・ハイネット・ワース」と呼ばれる金融資産3,000万ドル以上の層も10%増の20万人に達しました。

国別で富裕層が最も多いのはアメリカで、日本が続いています。
日本は先進国の間でも人口規模が大きく、一般に金融資産を比較的多くもつ高齢者の割合が高いことも背景にあるとみられます。

新興富裕層はIPOや会社の売却を機に資産を増やす30~50代が多くなっています。
あるスタートアップの経営者はIPOで資産を一気に数百億円に増やしました。
「多くの金融機関からコンタクトがあった。うち数社と付き合っている。」。
資産の大半は自社株で、一部を現金化して不動産を購入したり新興企業に投資したりしているようです。
「普通の会社員だった」という起業前と日常は様変わりしました。

海外をみても長者番付の上位はテクノロジー企業の創業者が常連となっています。
アメリカのアマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏、アメリカのテスラのイーロン・マスク氏などが代表格です。

2021年の世界のIPO件数は9月末時点で2020年の通年実績を上回りました。
長引くコロナ禍で金融緩和が続き、あふれるマネーを吸い寄せます。
高インフレの波で金融政策が緩和一辺倒から転換しても構図はすぐには揺らぎそうにありません。

金融ビジネスも変化を迫られています。
みずほフィナンシャルグループは2021年12月末、銀行を中心に証券や信託と連携しながらワンストップで超富裕層に対応する体制を整えました。
想定するのは資産規模30億円以上の世帯で、ウルトラ・ハイネット・ワースに該当します。

既存の資産家に長い付き合いの金融機関を変えてもらうのは難しいため、台頭する新興富裕層は貴重な存在です。
みずほの酒井正之ウェルスマネジメント戦略PT長は「大きなターゲットの一つ」と明言しています。
スタートアップ支援を担当する事業部と連携し、未公開の有望企業の経営陣にはIPOよりも前の早い時期からコンタクトしています。

上場準備で伴走する主幹事証券は有利な立場にあります。
入り口で関係を構築できれば、創業者の保有株を担保にした融資や株の売り出し、不動産購入、相続手続きなど様々なビジネスにつなげられるのです。

メガバンクや証券会社、外資系金融機関が入り乱れ、あの手この手で囲い込みに動いています。
40代の富裕層の一人は「別荘探しから子どもの海外留学の手配まで何でも対応してくれる」と満足げです。

プライベートバンキングで先行する欧米の金融機関は美術品の紹介などにも力を入れています。
30~50代の新興富裕層は教育や現代アートへの投資に興味を持つ人が多いといわれています。
資産運用や相続などへの関心が大きい昔ながらの資産家のイメージは当てはまらないのです。

新たなお金持ちたちには金融機関だけでなく、税務当局も目をつけます。
日本は2021年分の確定申告から、海外中古不動産の減価償却による損金の損益通算をできなくしました。
富裕層の代表的な節税策の一つである海外不動産の購入に歯止めをかけるのが狙いです。
代わりに最近は「京都の町家などの歴史ある国内物件が節税に使われている」と明かす関係者もいるようです。

こうした節税と課税のいたちごっこという以前からの図式にとどまらない流れもコロナ下で出てきているようです。
アメリカ民主党内では、富裕層に照準を絞った「富裕税構想」が浮上しました。
株式などの保有資産について売却していなくても含み益に課税する案です。
かねてコロナ禍で格差が拡大したとの不満がくすぶっていることが背景にあるようです。

もちろん投資を促す観点からは、バランスを欠いた税制は経済の活力をそぎかねません。
日本でも岸田文雄首相が自民党総裁選で金融所得課税の強化を掲げ、波紋を呼びました。
衆院選の論戦では、ほぼ封印することになり、2022年度与党税制改正大綱でも「総合的な検討」や「是正」といった方向を示すにとどまり、事実上は先送りしました。

台頭する新興富裕層との間合いをどう取るかは、コロナ後に向けた政策課題の一つになるでしょう。

また、最近、金融所得課税の強化の動きが出てきていますね。
結構前から『貯蓄から投資へ!』と言っていますけど、金融所得課税の強化はそれに逆行しますよね。
そうなると、海外に移住する富裕層がそれなりに出てくるのではないかと思います。
稼いだ課税後のお金で投資しているわけであり、また、日本は資本主義国家なので、金融所得課税の強化は政策としてどうなのかなぁと疑問に思います。
逆に、こういった方々が、ベンチャー企業にエンジェルとして投資し、新たなビジネスや雇用を生み出し、どんどん新富裕層を増やしていくという政策の方が、夢がありますし、日本のためになるのではないかと考えています。

IPOの活況を背景にどこ吹くコロナの新富裕層が台頭し金融機関が熱視線を注いでいることについて、どう思われましたか?


公正取引委員会が「IPO割引」の慣行は「独禁法違反の恐れ」との見解を示す!

毎日新聞によると、公正取引委員会は、先日、新規株式公開(IPO)時の価格決定を巡る報告書をまとめ、証券会社が主導する現行の値決めの慣行は独占禁止法違反が発生する恐れがあるとの見解を示しました。
証券会社が価格を低く設定することで、上場する企業の調達資金や創業者らが得られる利益が少なくなることを問題視しています。

新規上場を目指す企業は、証券取引所の承認を経て、「主幹事」となった証券会社が主導する形で上場手続きを進めていきます。
説明会を開くなど投資家の需要をはかりながら、上場前に、証券会社の顧客である一部の投資家に販売する「公開価格」を決定します。
実際に上場されると幅広い投資家の間で取引が始まり、初めて付いた株価が「初値」と呼ばれます。

問題は、国内の新規上場株の初値は、公開価格の平均1.5倍もの高値が付くとされる点です。
初値が公開価格を上回れば、証券会社の顧客である投資家は含み益を得られるため、人気が高く証券会社にとっては個人投資家を呼び込む手段にもなっています。

その半面、初値での値上がりを演出するため、あまりに公開価格が低く設定されれば、企業が上場時に調達できる資金や創業者の得る利益が少なくなり、新興企業の成長にはマイナスになりかねません。

こうした現状に独占禁止法上の問題がないか、公正取引委員会は最近、国内の証券取引所に上場した企業97社と主幹事を務めた証券会社22社を対象に調査を行いました。
その結果、企業からはさまざまな不満が寄せられたようです。

その一つが、公開価格を決定するにあたり、あらかじめ価格を低くしておく「IPO割引」という慣行です。
実際、公正取引委員会の調査に答えた証券会社の63・6%が「2割以上3割未満」の割引を行ったと回答しました。

金融市場には不確実性があることから、証券会社にとっては「当然」の手法ですが、ある企業は「新型コロナウイルス感染症の拡大で(市場が不安定化しているため)、4割(低めの設定が)必要だと説明を受けた」と指摘しています。

その他にも「直接の動きが見えたわけではない」としながらも「公開価格は(証券会社内の)小売り営業の(売りやすいように引き下げろという)圧力が働いた結果の数字だと考えている」「算定根拠の説明を受けられず、交渉についても取り付く島もなかった」と証券会社に対する数々の不満があがったようです。

公正取引委員会幹部は「(主幹事の証券会社が)個人投資家に売りやすいように公開価格を下げる傾向があると言われている」と話しています。
報告書は、主幹事証券会社が企業側に十分な説明なく一方的に価格を低く設定することは、独占禁止法が禁ずる「優越的地位の乱用」にあたる恐れがあるとの見解を示しました。

また、新規上場企業は主幹事証券会社より弱い立場になりやすく、「幹事社を変更したかった」と回答した企業のうち28・6%は「変更すれば上場予定日が1年ほど延びる」と証券会社から言われるなどして断念していました。
公正取引委員会幹部は「一般的には、上場手続きのプロセスが進むほど証券会社の優越的な地位が高まっていくのではないか」と分析しています。

こうしたアンバランスな状態を緩和するため、公正取引委員会は証券会社に対し、企業が主幹事を変更したい場合に配慮することや、公開価格などについて、企業が他の証券会社から意見を聞くことを阻害しないよう促しました。

これに対し、証券業界では公正取引委員会の指摘に疑問の声が相次ぎました。
人気の高い新規上場株は証券会社の想定を超えて高い初値が付くことがあり、投資家によるマネーゲームが公開価格と初値との隔たりを招いているという認識からです。
ある大手証券幹部は「現状は『プラチナチケット争奪戦』に近い。初値が上がっても、結局、半年後、1年後には公開価格と同じ程度に戻り、下回ることが多い印象がある」と話しています。
とはいえ、証券会社は新規上場株の人気を盛り上げることで、株が売れ残って自社が含み損を抱えるリスクを抑えているという状況もあります。

日本証券業協会は既に、公開価格と初値の隔たりを小さくする方策を検討中です。
公開価格を決めてから上場するまでの期間を短縮して「IPO割引」の幅を縮小したり、初値が付くまでは投資家が株の購入価格を指定しない「成り行き注文」を禁止して初値の急騰を抑制したりすることを想定しているようです。

2021年の国内新規上場企業は136社と2006年以来の高水準でしたが、新規上場時の資金調達額はアメリカの10分の1程度にとどまります。
岸田文雄政権は日本経済にとって急務である新興企業の成長に向け、こうした状況が足かせになっているとして、公正取引委員会の報告書を改善のてこにしたい考えです。

しかしながら、どれほどの効果が期待できるのでしょうか?
ニッセイ基礎研究所の中村洋介主任研究員は「そもそも上場に至る企業をいかに増やすかが肝心だ。公開価格と初値の差はあくまで課題の一つでしかない。起業家をどう増やすかや海外から投資をどう呼び込むか、規制緩和など課題が多く、他の部分でも力を入れないといけない。新規上場のプロセスだけを変えてすべてが良くなるわけではない」と指摘しています。

一方、証券業務コンサルティング業を営む資本市場研究所きずなの渡辺雅之氏は「公開価格を安くして投資家に売るよりも、証券会社には買ってくれる投資家を掘り起こす努力が必要ではないか」と語っています。

個人的には、日本を夢のある国にするには、IPOなどで大金を手にする方をどんどん増やすことが重要だと思っています。
それゆえ、『IPO割引』が当たり前になっているという状況が、今回の公正取引委員会の見解により是正されるといいなぁと思います。
IPO株の購入を申し込んでもなかなか当たりませんし、おそらく一部の人達がIPO株を買ってすぐに売って儲けているのだと思いますので、その辺りも改善されていいのではないでしょうか。

公正取引委員会が「IPO割引」の慣行は「独禁法違反の恐れ」との見解を示したことについて、どう思われましたか?


元コロプラ千葉氏が社外取締役を務める日本企業狙うSPACが上場!

日本のスタートアップを合併の対象とする特別買収目的会社(SPAC)がこのほど、米ナスダック市場に上場しました。
IT(情報技術)やドローン、人工知能(AI)などの企業を狙っています。
コロプラ元副社長の千葉功太郎氏が社外取締役を務めており、千葉氏を通じて有望な日本のスタートアップを探すようです。
米国進出を模索するスタートアップにとっては、短期間で米株式市場に上場する道が開けることになるでしょう。

SPACは「ポノ・キャピタル」です。
1年~1年半以内の合併を目指します。
主な対象はアジア企業で、特に日本企業に注目しています。
米証券取引委員会(SEC)に提出した目論見書では、日本について「世界で3番目の経済大国であるにもかかわらず、SPACの合併市場で存在感が薄い」と指摘しています。
日本企業との合併は「魅力的な時期」としています。

ポノ・キャピタルは起業家のダスティン・シンドウ氏が最高経営責任者(CEO)を務めます。
日本企業の選定のため、千葉氏を社外取に任命したとみられます。
千葉氏はドローン企業に出資するベンチャーキャピタル(VC)「ドローン・ファンド」などで投資を手掛けています。

日本企業を対象とするSPACでは「Evoアクイジション」も2月にナスダック市場へ上場しました。
プロ野球の千葉ロッテマリーンズで監督を務めたボビー・バレンタイン氏を社外取締役に迎えるなど、日本に縁のある複数の人材を採用しています。

日本の株式市場では新規株式公開(IPO)時の公開価格と初値の差が大きく、公正取引委員会が調査に乗り出しました。
日本企業を合併対象とするSPACが増えれば、国内のIPOプロセスに不満を持つスタートアップの受け皿になる可能性もあります。

こういうところが増えて、アメリカに進出するベンチャーが増えるといいですね。
ちなみに、我がクライアントも千葉さんのファンドから出資を受けていますが、すごい方なんですね。

元コロプラ千葉氏が社外取締役を務める日本企業狙うSPACが上場したことについて、どう思われましたか?


2022年から「一部上場企業」はなくなる!

ITmediaによると、「御社は一部上場とのことですが、全部上場になるのはいつですか?」と、古くから親しまれてきたこの種のジョーク、は2022年に“消費期限”を迎えることになるようです。

東京証券取引所は2022年4月4日に、これまでの「東証第一部」「東証第二部」「マザーズ」「ジャスダック」といった市場区分から、「プライム」「スタンダード」「グロース」という新たな市場区分へ移行します。
一見順風満帆にみえていた旧市場区分制度のもとでも、実はさまざまな問題が積み上がっていたことも事実です。

具体的にはまず、東証第二部とJASDAQスタンダードの位置付けが重複していることによるコンセプトのあいまいさが挙げられます。
これは、投資家にとって市場選択の利便性が低下するデメリットがありました。

次に、「入るは難し、残るは易し」という問題もありました。
これは、新規上場基準よりも上場廃止基準の方が大幅に緩いことで、本来であれば上場廃止または市場区分の格下げが必要な企業も、東証第一部上場企業であり続けられてしまう点が問題視されていました。

そこで、新市場区分では、東証第一部に相当する市場を「プライム市場」とし、東証第二部とJASDAQスタンダードに相当する市場を「スタンダード市場」、そしてマザーズ市場とJASDAQグロース市場に相当する市場を「グロース市場」と位置づけ直したのです。

このような市場区分の変更はどのような変化をもたらすのでしょうか?
今回は、「現在、東証第一部に上場している銘柄がスタンダード市場に入ってしまうのか」という点と、「東証第一部に連動している株式指数のTOPIX(東証株価指数)はどうなるのか?」という点に注目しています。

現在東証第一部に上場している会社であっても、プライム市場の上場基準を満たせなかった場合はスタンダード市場の指定となるため、実質的な「格下げ」となります。
上場基準は流動性・ガバナンス・経営成績および財政状態という3つの観点で評価されますが、現在東証第一部にある銘柄が最高位のプライム市場に残るかどうかについて、以下の点を重点チェックしています。

<プライム市場の上場基準概要>
まず確認すべきは株式の「売買代金」です。
プライム市場では、1営業日あたりの平均売買代金が2,000万円以上であることを求められています。
2021年7月21日時点のデータを確認すると、全東証第一部上場企業の2割弱に相当する457銘柄が、売買代金2,000万円位を下回っていることが分かったようです。

その中には、地方銀行株や放送局株、鉄道株など、誰しも一度は聞いたこともある企業も数多く名を連ねています。
東証第一部企業の売買高ランキングの下位をチェックするなどして、事前にスタンダード入りしそうな一部上場企業を見極めておきたいですね。

次に注意すべき点が流通株式比率です。
プライム市場ではガバナンスの観点を重視しています。
投資家との建設的なコミュニケーションが阻害される恐れがあることから、安定株主が3分の2以上の保有を許さず、外部投資家が最低でも35%以上保有すべしという趣旨の流通株式比率を求めています。

この基準は、主に親子上場の子会社にとって大きな課題となっています。
例えば、ゆうちょ銀行は親会社の日本郵政が89%保有していることが痛手となり、2021年7月9日にプライム市場の指定がない旨を東証から直々に言い渡されました。
従来から親子上場解消の動きがありましたが、東証市場再編による実質的な市場区分の格下げをきらった動きもその要因の1つなのかもしれません。

経営成績・財務状態については上場維持基準が「債務超過していないか」という点のみ記載されていることから、依然として「入るは難し、残るは易し」なきらいはあります。
したがって、2022年4月の市場再編以降は、主に売買代金と流通株式比率に気を配ることになるでしょう。

ちなみに、2021年だけでもマネーフォワードやSansanのようにマザーズ市場から東証第一部への指定替えを果たした銘柄が8つほどあります。
2021年に東証第一部に新規上場、ないしは指定替えされた銘柄も、再度の審査を経てスタンダード市場入りすることはあるのでしょうか?

基本的にこれらの銘柄は市場変更と同時にプライム市場に指定されることになります。
なぜなら、2021年に東証第一部に新規上場・市場の指定替えした銘柄は、すでにプライム市場を見据えた基準で審査が実施されているからです。

<TOPIXはどうなるのか?>
問題は、東証第一部上場企業全銘柄の株価を指数化したTOPIXです。
結論からいえば、新市場区分下のTOPIXについて、直ちに影響はない模様です。

日経平均などもそうだが、TOPIXをはじめとした指数で最も重要な点が「指数の連続性」なのです。
銘柄を入れ替えたり、基準が変わったりすることによって利害関係者が不利益を被ることは絶対に避けなければなりません。
その結果、新市場区分においてTOPIX指数は一気に様変わりするというよりも、旧市場区分から移行するインパクトを最小限に止めようと工夫がなされています。

大きな変更点は、今後のTOPIXが市場区分ではなく、流通株式の時価総額を重視するように決まったことです。
これまでは東証第一部上場企業であれば全て指数に組み込まれましたが、今回は流通株式比率などの観点で、収益や流動性の点でプライム市場並みの基準を満たす銘柄であっても、スタンダード入りする大手企業も少なくありません。

東証第一部の遺伝子をプライム市場から引き継ぐといっても、即時でTOPIXをプライム市場指数に適用してしまえば、スタンダード入りしそうな株式の大幅な売りと、プライム入りする株の大幅な買いが一気に流入し、市場は混乱してしまうでしょう。

そこで、東証は市場区分だけでなく、流動性基準の中にもある「流通時価総額100億円超」を重視し、2021年の10月に基準を満たさなかった銘柄について、四半期ごとにウェイトを低減する形で市場区分の変更とTOPIXの影響を軽減します。
これは2025年1月まで段階的に実施されていくことから、短期的な混乱は避けられるでしょう。

また、相当程度見直しが進んでいけば、従来のTOPIXの課題でもあった、衰退していたり、成長していなかったりした企業も自動的に指数に組み込まれ、TOPIX連動商品の投資家が間接的にこれらの銘柄を買ってしまう可能性も低まります。
結果として、中長期的には市場区分の変更はTOPIX自体にはプラスであると捉えることもできるでしょう。

『東証一部上場』と聞くとスゴイと思われる方が多いのかもしれませんが、会社四季報や日経新聞などで見てみると、『何をやっている会社?』、『昔は儲かっていたけど最近はさっぱり』、『この企業が東証一部上場なの?』、『不祥事などを起こしているから市場から出て行ってもらった方が良いのでは?』、『親会社も子会社も上場しているんだ。』などと感じる企業が、思っているより多いのではないかと思います。
それゆえ、今回の見直しは良いことだと思います。
また、親子上場も解消されればいいなぁと考えています。
個人的には、財務面は、債務超過かどうかだけではなく、利益額とか納税額なんかも入れてもいいのではないかと感じます。
そうすると、粉飾のリスクは高まりますが。

2022年から「一部上場企業」はなくなることについて、どう思われましたか?


「空箱」会社の上場が米国で急増しているが日本も解禁を検討しており過熱警戒!

最近よく取り上げられていますが、時事通信によると、新興企業などの買収を目的とし、自らは具体的な事業を持たない「空箱」会社の上場がアメリカで急増しているようです。
アメリカの調査会社によると、上場件数は2021年1~3月に296件と、過去最高だった2020年の通年実績を既に上回り、調達額は867億ドル(9兆6,100億円)に達する見通しのようです。

日本でも解禁に向けた検討が進んでいるようですが、投資の過熱や弊害を指摘する声もあるようです。

上場が相次ぐのは、特別買収目的会社(SPAC)です。
設立から約2年以内に有望な未公開企業を探し出して買収し、買収された企業が存続会社となります。
魅力的な企業を買収すれば株価が上がり、投資家は値上がり益を得られる。
収益はSPAC運用者の「目利き力」次第となるため、「白紙小切手会社」とも呼ばれます。

アメリカの調査会社ルネサンス・キャピタルによると、2020年のSPAC上場件数は前年比約4倍の247件、調達額は7倍近くに拡大しました。
アメリカでは、大規模な金融緩和を背景に株式などへの投資が膨らみ、SPACもその「受け皿」となったのです。

元スポーツ選手を大株主に招くなど、著名人の関与もブームを後押ししました。
買収される企業にとっては、面倒な手続きを省き、短期間で上場できる利点があります。
ソフトバンクグループが出資する共用オフィス運営のアメリカのウィーワークは、SPACとの合併を通じて年内に上場すると発表しました。
2020年には新興のアメリカの電気自動車メーカーなどが上場しました。

ただし、人気に陰りも見え始めているようです。
「SPACへの無差別な買いが続いていたが、2月中旬ごろに売りに転じた」(ルネサンス社)といい、1~3月の上場初日の株価は平均で約3%下落しました。

市場では「中期的には持続可能ではない」(アメリカの投資銀行)との声が上がるほか、情報公開が不十分な「裏口上場」だとの批判も根強いようです。

ロイター通信によると、アメリカの証券取引委員会(SEC)は金融機関に対し、SPACの監視態勢や内部統制などの情報提供を要請したようです。
問題を抱える企業の上場に警戒が強まる中、当局が近く本格調査に乗り出すとの見方も広がっているようです。

普通に考えると、実態のない企業が上場するのはどうかと思いますが、投資の対象としてはニーズがあるんでしょうね。
日本ではあまり馴染まないように思いますがどうなんでしょうか?

「空箱」会社の上場が米国で急増しているが日本も解禁を検討しており過熱警戒になっていることについて、どう思われましたか?


4大監査法人のIPO業務回避が顕著で「監査難民」解消が見えず!

日本経済新聞によると、会計監査の業界で「ビッグ4」と呼ばれる大手監査法人が、新規株式公開(IPO)の業務を回避する傾向が顕著になってきました。
2020年1~6月のIPO企業のうち大手が監査をしたのは65%と、過去最低ペースです。
水面下では、スタートアップ企業がIPOに必要なサービスを受けられない「監査難民」問題が広がっているようです。

IPO監査はかつてEY新日本監査法人、監査法人トーマツ、あずさ監査法人、PwCあらた監査法人のビッグ4が、大半を担っていました。
ところが、会計士の人手不足やIPO監査の収益性の低さから、近年は大手のシェアが下がっているのです。

2019年は78%と前の年から9ポイント下がり、大手法人の再編が一巡した2010年以降の最低を更新していました。
2020年はこれをさらに下回る可能性が大きくなってきました。

今のところ大手が手がけなくなった分は準大手が受け皿です。
金融庁によると、IPOに向けた監査の新規契約数では太陽監査法人など準大手5法人がすでに大手を上回っています。
2019年の新規契約は大手が前年比17%減の191件だったのに対し、準大手は同24%増の210件でした。

しかしながら、監査業界では「いずれ準大手だけではカバーしきれなくなる」との見方が多いようです。
監査法人に所属する公認会計士の約8割はビッグ4に集中しており、準大手のマンパワーにはおのずと限界があるからです。

大手がIPO監査を回避するのは、2014~2015年に上場直後の会計不正や業績下方修正が相次いでから、厳格な監査が求められている影響が大きいようです。

不正会計がないか、利益計画が楽観的すぎないかなど「より慎重なリスク分析や検討によって監査の工数が増えた」(EY新日本の善方正義シニアパートナー)とのことで、働き方改革で会計士の労働時間は増やせず、受託余力が乏しくなったのです。

提携先である世界の会計事務所が収益性の低い業務を抑えるよう求めているとの見方もあるようです。
IPO監査は当初見積もりより業務量が膨らんでも「報酬の増額交渉は難しい」(準大手のIPO担当者)とされ、大企業の監査に比べて実入りが少ないのです。

IPOするには、上場企業にふさわしい内部管理体制を整えたうえで、監査証明を受けた2期分の有価証券報告書をそろえる必要があります。
IPOを目指しているにもかかわらず、大手とも準大手とも契約を結べない「監査難民」になると、資金調達が滞り、成長力が陰りかねません。

金融庁は監査難民の問題を重くみて、2019年末にIPO関係者の協議会を設置しました。
2020年3月の報告書では、大手監査法人に組織体制や人員配置のあり方の見直しを求めています。

EY新日本は2020年7月、IPO監査の人材認定制度を始めました。
2021年6月までに約4,100人いる会計士のうち1,000人の認定を目指しています。
トーマツは6月にIPO監査の体制を見直しました。
ノウハウを持つ会計士を各部署に置いて人材の裾野を広げるそうです。

もっとも、IPO監査をめぐっては「ビジネスが旬のうちに早く上場したいという企業は多いですが、内部統制システムが未整備だと契約は難しい」(大手監査法人のIPO担当者)と温度差を指摘する声も多いようです。
スタートアップは監査法人の業務の繁閑に合わせて決算月をずらすなどしているようですが、監査契約のハードルはなお高いようです。

『監査難民』の問題は、数年前と比べると時代が変わったなぁと思うところですね。
数年前までは、クライアント数を増やすためにIPOに大手も注力していたのだと思いますが、会計業界だけではない人手不足、働き方改革、IPO直後の粉飾発覚、IPOまでは赤字でもIPOに回収すれば良いと思っていたのがいつ監査法人を変更されるか分からない時代、日本を代表するような大企業が監査法人を変更するケースが増加など、大手は手間がかかり、報酬があまり取れないIPOを避けるのは分かるような気はしますが、大手の都合で、IPOをしたくてもできない会社が増えるのは、日本にとってマイナスだと思います。
日本公認会計士協会や金融庁で改善策を是非とも考えて欲しいですね。

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コロナショックがもたらす「上場延期」の深刻度!

新型コロナウイルスの感染拡大による「コロナショック」が東京証券取引所への新規上場にも影響し始めたようです。
株価急落で上場を延期するベンチャー企業が増え、財務改善のためのリストラの動きが強まりそうです。
一方、キャッシュが豊富な企業にはM&Aで業容拡大の好機にもなりそうです。

「歴史的な下落相場の中で新規上場なんて狂気の沙汰ですよ」――。
近く、上場を予定していたベンチャー企業の男性社長は、こう話し上場を来年度以降に見送りました。

日経平均株価は年明けから2月20日ごろまで2万3,000~2万4,000円の水準を維持していましたが、日本での感染者数増加もあり、2月末になり急落しました。
3月11日にはWHOから新型コロナウイルスのパンデミック(世界的感染爆発)が宣言され、収束の見通しは立っていません。
3月16日の終値ベースで1万7,002円となりました。

ベンチャー企業にとって、新規上場はベンチャーキャピタルなど投資家に報いるゴールです。
上昇相場ならまだしも極端な下げ相場の場合、株式公開をしても公募価格割れも予想されるため、やるだけ損をすることになります。

実際、企業向けソフトウェア開発のウイングアーク1stは3月10日に上場申請を取り下げました。
3月12日には、医薬品の研究開発・製造・販売を手がけるペルセウスプロテオミクスが3月24日に予定していた上場を延期すると発表しました。

さらに、日本全国にスポーツジムの「エニタイムフィットネス」を展開するFast Fitness Japanも3月13日に上場の延期を発表するなどコロナショックの影響がすでに出始めています。

もともと、年初までは良好な株式市場の環境が終わることを見越した「赤字の駆け込み上場」が増加するとの観測が強かったようです。

野村証券によると、2019年の新規上場企業による市場からの資金調達総額は3,249億円で、郵政3社やソフトバンクの大型案件により金額が膨れ上がった2015年と2018年を除いても、2014年(1兆472億円)の3分の1以下の低水準にとどまりました。

2019年の新規上場企業数は86社とこの3年間ほぼ横ばいでしたが、赤字での上場企業数は過去10年で最多の19社でした。
とりわけ、2019年はIT企業の赤字上場が前年の2倍と急増したことも特徴だったようです。

赤字上場が増加する背景には、世界的な金融緩和の流れが長く続いたため、ベンチャーキャピタル側が出口戦略として、市場が冷え込む前に持ち株を売り抜けたいとの思惑があります。

公募売り出し額が縮小傾向にあるのは、事業を立ち上げて間もない段階で上場する傾向が増えていたためです。
今回のコロナショックで株価だけでなく消費の減退などにより世界経済全体が冷え込むことが予想されます。
そのため、当面は新規公開(IPO)の動きは収まるでしょう。

コロナショックの影響は株価下落だけにとどまりません。
雇用の不安定化をもたらす要因に急浮上しています。

「リモートワークの実施で社員の成果の差が露骨にわかるようになったので、リストラをしやすくなった」と先のベンチャー社長です。
コロナ対策で多くの企業が在宅でのリモートワークを進めた結果、「ただいるだけの人」「外回りと称してサボる人」がはっきりしたそうです。

この社長は「新規上場が延期できた副産物というわけでもないが、上場のために雇ったスタッフを解雇して人件費を浮かせれば、中長期的にはキャッシュが増える。それを元手に株価が下がった優良企業に対してM&Aをすれば逆に企業価値が上がる」という戦略まで立てていると打ち明けています。

上場延期のベンチャー企業だけでなく、令和になってから加速した早期退職の流れにも拍車がかかりそうです。

東京商工リサーチが3月11日に発表した『2020年1-2月上場企業「早期・希望退職」実施状況』によると、この時期に募集を実施した上場企業は19社と前年同期の9社から倍増しました。
わずか2か月で昨年1年分(36件)の半数に達したそうです。
消費の冷え込みを予想し、小売りや食料品での実施が目立ったのも特徴です。

1月下旬から新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、業績の下方修正を開示した上場企業は87社、また何らかの影響を開示した上場企業は461社に上りました(3月11日時点)。

3月に入り、コロナショックの影響による株価急落や円高進行などで景気後退局面に入るとの観測が強まり、さらに早期退職の動きが進むとみられます。

今回の調査結果で興味深いのが、早期退職を募集した上場企業のうち、直近の決算で最終黒字だった企業が19社中13社と7割を占める点です。
退職金を支払う余力のあるうちに、将来の人件費を圧縮する「黒字リストラ」が昨年から話題となっていますが、その流れが続いたと言えそうです。

近年では、将来的に人工知能(AI)の普及で省人化が進むと予想される中、小売りであればコンビニの無人レジなどへの設備投資を進める動きは避けられず、今年がきっかけとなり、その傾向が進む可能性もあります。

企業の人件費圧縮の方法は、退職金をともなう早期退職だけとは限りません。
昨年は損害保険大手のSOMPOホールディングスの国内損保事業の従業員の削減が話題となりました。
介護事業を展開する関連会社への配置転換も同時に行われたため、「介護部門を『追い出し部屋』に使っている」という批判まで起こりました。

さらには、ほかの企業においても、扱いに困る社員を自主退職に追いやる「事実上の早期退職」が広まる可能性もあります。

不況時には往々にして統合・再編が進みます。
今年は「稼ぐ力」があり、キャッシュなどの「体力」のある企業とそれ以外で差が開く1年になりそうです。

このような状況を見ると、上場延期やリストラは避けられそうにないですね。
この中に出てくる社長は容易に『解雇』できると思っている節がありますが、そのような方が上場企業社長になって大丈夫かなぁとも思います。
あとは、上場時が業績のピークという企業もたくさんありますので、延期して、上場できるのかなぁとも思います。
一方で、リストラで割増の退職金などを手にした方々が、起業して、世の中に新しい製品やサービスを提供して、日本経済を活性化してもらいたいと思います。

コロナショックがもたらす「上場延期」の深刻度について、どう思われましたか?


カーブスHDの初のスピンオフ上場を東証が承認!

東京証券取引所は、先日、フィットネス事業を展開するカーブスホールディングス(カーブスHD、東京都港区)の新規上場を承認したと発表しました。
子会社と本体を資本関係のない独立した会社にする「スピンオフ」という制度が2017年に整備されて以来、国内初の適用例となります。

カーブスHDは、カラオケ店「まねきねこ」などを運営するコシダカホールディングスの子会社ですが、コシダカホールディングスは、2019年10月に、カーブスHDへのスピンオフを発表していました。

カーブスHDは、2020年3月2日付で東証に上場する見通しです。
公募株式は241万5,000株、現時点の想定発行価格は1株720円で、発行価格は2月20日に正式に決まるようです。

親子上場に批判が高まっているなか、資本関係がなくなり、元々の企業の株主に株式が割り当てられますので、独立性は高まりますね。
事業部門や子会社がスピンオフ上場して、そこだけで売買できるとなると、いいかもしれませんね。

カーブスHDの初のスピンオフ上場を東証が承認したことについて、どう思われましたか?


2019年に東証上場を廃止した企業は?

 M&A Onlineによると、2019年に東京証券取引所で上場廃止となった企業は42社を数えるそうです。
前年に比べると19社少なくなっています。
産業界の潮流や栄華盛衰とも密接にかかるのが上場廃止の動向です。
「令和」のスタートを振り返ってみると・・・。

12月30日は2019年の取引を締めくくる東証の大納会でしたが、同日付で上場廃止したのが住宅メーカー大手のミサワホームです。
親会社のトヨタホーム(非上場)による完全子会社化に伴うもので、48年間の上場歴にピリオドを打ちました。

ミサワホームは1967年に設立し、その4年後の1971年に東証2部にスピード上場(翌1972年に東証1部)し、住宅業界の寵児の名をほしいままにしました。
しかしながら、バブル期に手がけたリゾート開発の失敗などで1990年代になると、経営が傾き、創業者の三沢千代治氏は退陣に追い込まれました。
2006年にはトヨタ自動車の傘下に入いりました。

トヨタ自動車とパナソニックは2020年1月に両社の住宅事業を統合することになっており、その統合新会社のもとにミサワホームも組み込まれます。

住宅ではほかに、「ライオンズマンション」で知られる大京がオリックスによる完全子会社化で上場廃止(2019年1月)となりました。

70年の上場歴に分かれを告げたのは出光興産と経営統合した昭和シェル石油です。
昭和シェルは1985年に昭和石油とシェル石油が合併して誕生しましたが、母体である昭和石油は戦後間もない1949年に上場しました。

業種では電子部品商社で上場廃止が目立ちました。
バイテックホールディングスはUKCホールディングス(現レスターホールディングス)との合併、フーマイスターエレクトロニクスはMBO(経営陣による買収)で非公開化、日本ライトンは台湾の親会社による完全子会社化により、それぞれ上場を廃止しました。

カーナビ大手のパイオニアとクラリオンはそろって海外企業の傘下入りに伴い、2019年3月に上場を廃止しました。
同様に、スキンケアなどの化粧品ブランド「ドクターシーラボ」を展開するシーズ・ホールディングスは2019年4月、アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンによる買収で上場廃止になりました。

金融関連では、十八銀行(長崎市)が「ふくおかフィナンシャルグループ」(福岡市)、カブドットコム証券(現auカブコム証券)がKDDIの完全子会社に伴い、上場を廃止しました。

2019年10月にはアメリカ生保大手のアフラックが東証から撤退しました。
1987年に東証に上場しましたが、取引量が乏しく上場の意義が薄れたことが理由です。
この結果、ピーク時の1991年に127社を数えた東証外国銘柄も4社(アメリカ2社、マレーシア、英領ケイマン各1社)まで減り、“風前の灯火”になっています。

時価総額が所定額に届かない状態が一定期間続き、1962年以来の東証2部上場の資格を失ったのは、競輪の場外車券場を主力とする花月園観光です。
東証は2019年11月1日付で同社の上場廃止を決めました。

過去5年間の東証での上場廃止をみると、2014年42社、2015年66社、2016年67社、2017年40社、2018年61社となっています。
一方、上場企業数は現在3,707社で、2014年末より239社増えています。

2020年はすでに4社の上場廃止が決定しています。
そのトップバッターはジーンズなどアメリカ衣料大手の日本法人であるリーバイ・ストラウス ジャパンです。
アメリカ親会社が完全子会社化することにより、2020年1月7日付で1989年以来の上場が廃止となりました。

IPOする企業が増えるのは喜ばしいことだと個人的に思っていますが、一方で、上場廃止になっている企業もあります。
貯蓄から投資へシフトすると、ビジネスに興味を持つ人が増え、景気も良い方向に向かうのではないかと考えていますが、上場すべきところは上場して、すべきではないところは早めに上場廃止になってもらうということも重要でしょうね。

2019年に東証上場を廃止した企業について、どう思われましたか?


日本初クラウドファンディングで上場するマクアケ!

 クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」を運営するマクアケが、2019年12月11日にマザーズ市場に新規上場します。
2013年5月に、サイバーエージェントの100%子会社として設立され、現在8期目の若い会社です。

4期目で赤字を脱出し、5期目で4,300万円、6期目で1億1,200万円の純利益を出しました。
2018年9月期の売上高は、9億5,800万円です。

クラウドファンディングという注目度の高い分野での、日本初上場となりました。

マクアケの想定株価は1,550円です。
公募株数が980,000株、売出株数が1,946,700株です。
市場から吸収する金額は45億3,600万円となります。
売出株分の30億円は既存株主のものとなるので、マクアケが調達する金額は15億円前後と予想できます。

この資金は、主にプロモーション費用が中心になると考えられます。
なぜなら、まだまだ市場規模が小さいためです。

矢野経済研究所によると、2018年のクラウドファンディングの市場規模は2,045億円です。
ちなみに、前年が1,700億円でしたので、20%増の急拡大をしています。
ドローンの市場規模が1,000億円(インプレス総合研究所)ですので、その倍にまで成長していることがわかります。

しかし、これには落とし穴があります。

クラウドファンディングは大きく5つに分類されます。
購入型、寄付型、ファンド型、貸付型、株式型です。
マクアケは購入型に分類され、その市場規模は全体の6%(122億円)ほどなのです。

競合のCAMPFIREが、2019年4月に女優ののんさんを起用したテレビCMを放映しました。
スタートアップ企業がテレビに広告を出すのは異例です。
これは企業の認知度を拡大すると同時に、市場規模拡大を狙ったものと考えられます。

クラウドファンディングの業者は競争が激しくなり、手数料も下げているという話も聞きますが、『Makuake』はきちんと利益を伸ばしているんですね。
乱立しているので、将来的には淘汰され、一部の企業のみが残るのでしょうが、上場することにより信用力を高めるということは、存在価値を高めますね。
上場のメリットを感じず、上場する予定をやめたり、上場企業が非上場化することも少なくなくなってきている中で、上場のメリットを活かす上場なんでしょうね。
今後の成長に期待したいですね。

日本初クラウドファンディングで上場するマクアケについて、どう思われましたか?


東証がfreeeのマザーズへの上場を承認

 東京証券取引所は、先日、クラウド会計ソフトのfreee(フリー、東京都品川区)の上場を承認したと発表しました。

2019年12月17日に東証マザーズに上場するようです。

想定する公開価格で算出すると、時価総額は750億~900億円程度になる見込みで、2019年の新規株式公開(IPO)銘柄ではSansan(約1,300億円)に次ぐ規模です。

上場で最大約120億円を調達し、広告費や技術者の人件費などにあてる計画だそうです。

マネーフォワードに引き続き、freeeも上場ですね。
以前から、かなりの赤字が続いていますし、将来的に黒字化するのでしょうか?
もう広告宣伝費をかけて、利用者を増やすステージではないように思いますので。
そうなると、マネーフォワードも2019年から大幅に利用料金を上げましたし、freeeもどこかのタイミングで利用料金を上げてくるんでしょうね。
それってビジネスとしてどうなのかなぁと思います。
freeeでもマネーフォワードでも弥生でもそれほど変わらないと思いますので、個人的には、最終的には、急に利用料金を上げることはないと思われる弥生が勝つのではないかと考えています。
話はそれますが、T●Cも利用料金か何かを大幅に上げるようで、他に変えることを考えている税理士がいるみたいですね。

東証がfreeeのマザーズへの上場を承認したことについて、どう思われましたか?


上場前の資本金が小型化しIPO戦線に「異変」?

 M&A Onlineによると、IPO(新規株式公開)戦線に「異変」が起きているようです。
2019年、東京証券取引所に新規上場した企業のうち、上場前の資本金が5,000万円以下のところが25%と4社に1社を占めています。
2018年の19%、2017年の15%と比べ、急上昇しています。
これは何を意味しているのでしょうか?

資本金が5,000万円以下の場合、VC(ベンチャーキャピタル)から出資を受けているケースはわずかです。
業種や業歴によって事情が異なるとはいえ、VC資金の活用が必ずしもIPOの“パスポート”となっていない様子がうかがえます。

2019年1月~9月に東証に新規上場した企業は47社(テクニカル上場、TOKYO PRO Market上場や他市場からの上場は除く)です。
M&A Online編集部が各社の上場前の資本金を調べたところ、5,000万円以下が12社でした。
内訳は5,000万円が1社、4,000万台が1社、3,000万円台以下が10社で、過小資本といえる1,000万円クラスは3社含まれています。

上場前の資本金が5,000万円以下の企業はここ数年、比率を高めています。
2015年は新規上場89社中、12社(14%)でしたが、2018年には同89社中、17社(19%)に増えました。

こうした流れが加速し、2019年は1月~9月で全47社中、12社と25%強を占めています。
9月末の第3四半期段階の新規上場数は前年同期の60社より13社少ないですが、最終的に年間の上場企業が例年並みの80~90社と仮定すれば、20社を超える計算です。
10月以降に上場する企業でも直前の資本金が5,000万円以下のところがすでに2社あります。

上場前の資本金1億円以下でみると、傾向はより鮮明です。
2019年は9月末で27社と半数を超え、その比率は57%です。
2018年の46%(41社)、2017年35%(30社)から急伸しています。

では、VCから資金調達の状況はどうでしょうか?
今年上場した企業を対象に、上場目論見書の「株主の状況」をあたったところ、資本金5,000万円以下の企業で、明確にVCの存在が認められたのは2月にマザーズに上場した識学だけです。

資本金が5,000万円以下と小規模である場合、一般にVCなど外部資本を受け入れていないことが考えられますが、これが裏付けられた格好です。

識学はK&Pパートナーズ(東京都千代田区)が組成するファンドから出資を得ていました。
同社は2015年に設立し、4年でスピード上場しました。
ほかの会社では投資事業を兼営する取引先の事業会社から出資を受け入れていたケースが数例見られました。

また、1億円以下までに範囲を広げると、27社中、別に7社ほどがVCを活用していました。
それでも4社に1社にとどまります。

スタートアップと呼ばれる新興企業の間では、VCからの資金調達が一種のファッションといわれるほど過熱しています。
一方、資金の出し手であるVC側もカネ余りを背景に将来のIPOやM&Aという出口を照準を合わせ、ベンチャー投資にアクセルを踏み込んでいます。

ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)がまとめた2019年上期(1~6月)のVCによる国内向け投資額は前年同期比44%増の1,016億円と、6年連続で増加し、半期ベースで初めて1、000億円を突破しました。
1件当たりの投資額は平均1億円を超え、投資先の業種はIT関連が6割近くを占めています。

他方で、直前の資本金が5,000万円以下の企業の上場が増加しているのが実情です。

2019年3月にマザーズに上場した外食企業で、居酒屋「肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場」を展開するNATTY SWANKYの上場前の資本金は1,340万円でした。
同社は2001年設立で、業種柄、日銭が入るという強みがあります。
同様に、串カツ居酒屋で知られる串カツ田中ホールディングス(2002年設立)も2016年のマザーズ上場前は資本金2,000万円と、明らかな過小資本の部類でした。

もちろん、業種や業歴の違いは見逃せません。
IT関連であれば、システム開発や人件費で赤字が先行するため、創業初期に多額の資金を必要とする場合が少なくないことから、VCからの資金調達意欲は旺盛です。

2019年1~9月の計12社(上場前の資本金5,000万円以下)のうち、10社は設立から10年以上経っています。
上場を視野に入れ始めたころはすでに安定期のところが多いようです。
資金需要にも銀行借り入れで対応できるため、とりたててVCの資金を必要としない面があります。

一般に、新興ベンチャー企業はVCから資金調達後、5年をめどに「出口」が求められるといわれます。
「短期間で成果を求められれば、自社が描く成長の方向性と食い違いが生じかねない」(Web開発ベンチャーの経営者、都内)と距離を置く向きもあるようです。

VCからの資金調達は企業の成長を導くうえで欠かせないツールであることは言うまでもありません。
ベンチャー投資フィーバーが熱を帯びれば帯びるほど、“過小資本”のままIPOに挑む企業が増えている現実に目を向ける時かもしれないですね。

個人的には、それほど資金を調達しなくても良い企業がIPOしているんだろうなぁと思います。
業種によるとは思いますが、日銭がはいる商売をしている企業のIPOが多くなっているんでしょうね。
仕事上、最近はVCやエンジェルから比較的容易に資金調達ができるようになっているなぁとは思います。
VCから資金調達をしなくて良いところ(ビジネスモデルとしてそういうビジネスを考えているところ)と、ニッチなビジネスで開発費用がかかりVCから多額の資金調達をしないといけないところが、両極端に多くなってきているのかもしれませんね。

上場前の資本金が小型化しIPO戦線に「異変」が起こっていることについて、どう思われましたか?


Forbes世界長者番付で日本人ではユニクロの柳井 正氏が首位返り咲き!

 日本の大富豪たちが保有する資産はこの一年、それぞれに異なる変化を見せました。
Forbesの長者番付に名を連ねた日本人50人のうち31人は、日経平均株価が前年比で5%近く上昇していた一方で、前年より資産を減らしていました。

リストに名前が挙がった50人が保有する資産の総額は、前年の1,860億ドル(約20兆6,700億円)より少ない1,780億ドルとなりました。

2018年の番付で1位だったソフトバンクの孫 正義氏は、2019年は2位となりました。
ただし、ソフトバンクの株価は上昇しており、孫氏の保有資産も前年から21億ドル増加し、240億ドルとなっています。

保有資産で孫を上回ったのは、衣料品大手ファーストリテイリングの創業者で、2016年以来のトップとなった柳井 正氏です。
保有資産は249億ドル。前年から56億ドルの増加となり、この一年で最も大幅に資産を増やしました。

孫氏が設立した1,000億ドル規模のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)は、多額の投資で広く注目を集めています。
SVFには、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が450億ドルを出資し、そのほかにも、アブダビ首長国のムバダラ開発公社、アップル、クアルコム、オラクルの共同創業者で富豪のラリー・エリソンなども出資しています。

前年と比べて資産を大きく増やしたもう一人は、計測器メーカー、キーエンスの創業者である滝崎武光氏です。
保有資産は10億ドル増えて186億ドルとなり、前回の4位から1ランク順位を上げました。
東証1部上場のキーエンスは、工場の機械やロボットの性能を監視するために使われるセンサーにより、中国で安定的な成長を続けています。

2018年から保有資産を72億ドル減らして約108億ドルとし、最も大幅な減少を記録したのは、酒類大手サントリーの佐治信忠氏とそのご家族です。
減少の理由の一つには、新たに入手した情報により、サントリー株の一部が佐治家ではなく慈善団体が保有するものであると確認されたことがあるようです。
また、世界的なビール販売の低迷も、資産の減少につながっています。

一方、2019年の番付には、4人が初めて名前を並べました。
2018年10月に87歳で死去した父でユニ・チャームの創業者、高原慶一朗氏が保有していた同社株を2人のきょうだいと共に引き継いだ高原豪久氏(2001年から同社の最高経営者)は、保有資産52億ドルでリスト入りしています。

その他、2018年6月に株式を公開したフリーマーケットアプリ運営のメルカリの創業者である山田進太郎氏、東証1部上場の不動産仲介・マンション開発会社オープンハウスの創業者である荒井正昭氏、ビジネスホテル・チェーンを展開するアパグループの創業者、元谷外志雄氏が初めて番付入りしました。

また、今回ランキングから外れた富豪の中で目を引くのは、人材派遣会社を創業、女性として日本で初めて自力でビリオネアになった篠原欣子氏です。
総合人材サービスを展開するパーソルホールディングスの株価は、ここ1年で30%以上下落しています。
ロボット開発を手掛けるサイバーダインの創業者、山海嘉之もまた、自社株が50%値下がりしたことを受けてリストから外れました。

以下は、2019年の日本人の長者番付トップ10の顔ぶれです(敬称略)。
1位 柳井 正(ファーストリテイリング) 249億ドル
2位 孫 正義(ソフトバンク) 240億ドル
3位 滝崎武光(キーエンス) 186億ドル
4位 佐治信忠(サントリーホールディングス) 108億ドル
5位 三木谷浩史(楽天) 60億ドル
6位 重田康光(光通信) 54億ドル
7位 高原豪久(ユニ・チャーム) 52億ドル
8位 森 章(森トラスト) 47億ドル
9位 永守重信(日本電産) 45億ドル
10位 毒島秀行(SANKYO) 44億5,000万ドル

なお、番付作成の方法ですが、ランキングは個人から入手した情報に加え、証券取引所やアナリストら、企業の提出書類その他を基に作成している。番付に入った各氏の保有資産は、2019年3月22日の株価の終値と為替レートに基づき算出しています。
非公開会社の創業者などの場合は、類似した公開会社の財務比率その他との比較から推計しています。
また、各氏の保有財産には家族の資産を含む場合もあります。

想像もつかない世界ですが、結局、上場株式などが中心だと思いますので、簡単に換金できるわけではなく、ある意味では『絵に描いた餅』です。
個人的には、これらの方々がどういう相続税対策をしているのかが気になります。
番付に入っているカリスマ経営者の方が亡くなると、おそらく業績も低迷するところも多いと考えられ、会社は業績の悪化、個人は株式の分散など色々大変だと思いますので、日本を代表するようなこれらの会社には、死亡・相続が原因で日本を代表するような会社でなくなってしまうのは避けて欲しいですね。

Forbes世界長者番付で日本人ではユニクロの柳井 正氏が首位に返り咲いたことについて、どう思われましたか?


フォーブス世界長者番付2018年版

 フォーブス世界長者番付2018年版に載った日本の人物は前年より2人増えて、35人となったようです。

 首位はソフトバンクの孫正義会長兼社長で、全体では39位、資産額は227億ドル(約24,100億円)でした。
前年の34位から落ちましたが、資産額は15億ドル(約1,590億円)増えています。

2位はファーストリテイリングの柳井正会長兼社長で、全体では55位、資産額は195億ドル(約2700億円)でした。

前年世界長者番付に載っていなかったSGホールディングスの栗和田榮一会長、ブリヂストン創業家の石橋寛氏、サイバーエージェントの藤田晋社長の3人が今回入っています。
SGホールディングスは佐川急便グループの持株会社で、栗和田榮一会長の父は佐川急便創業者の佐川清氏です。

日本人のトップ100は以下のとおりです。
1位:孫 正義(ソフトバンク/通信)227億ドル/60
2位:柳井 正(ファーストリテイリング/ユニクロ)195億ドル/69
3位:滝崎 武光(キーエンス/計測機器など)175億ドル/72
4位:森 章(森トラスト/不動産・建設)63億ドル/81
5位:永守 重信(日本電産/精密小型モーター)56億ドル/73
6位:三木谷 浩史(楽天/ネットショップ・ネット銀行など)55億ドル/53
7位:高原 慶一朗(ユニ・チャーム/生活用品)50億ドル/86
8位:似鳥 昭雄(ニトリ/インテリア)44億ドル/74
9位:重田 康光(光通信/携帯電話や光回線の販売)41億ドル/53
10位:伊藤 雅俊(セブン&アイ・ホールディングス/コンビニ・スーパー・レストラン・銀行など)39億ドル/93

上場企業の株式は簡単に売れないのである意味絵に描いた餅になるかもしれませんが、これだけの資産があるのはすごいですね。
配当もたくさんあるでしょうし。
ただし、上記に出ていない方もおられますが、上位に入っている方で、相続税対策が国税庁から指摘を受けたり、遺産相続について訴えられたり、逮捕されたりなど、問題となっている方も何名かおられますね。
たくさん持たれていると、何かと大変なんでしょうね。

フォーブス世界長者番付2018年版について、どう思われましたか?


3月期企業の決算発表時間の前倒しが前期は370社!

 上場企業の決算発表時間の前倒しが進んでいるようです。
 20183月期決算の開示時間を集計したところ、370社が前年より早く開示しました。
 投資家への説明時間を確保しやすくする狙いがあるようです。
 取引時間中の発表なら、投資家は決算の内容を参考にして株の売買ができるようになり、利便性も高まりそうです。
 前年との比較が可能で決算期末から45日以内に開示した3月期企業(2,304社)を対象に集計したものです。
 トヨタ自動車や三菱商事など時価総額が大きく、業績が堅調な企業の開示前倒しが目立ちます。
 一方で、開示時間が遅くなった企業が、287社あったようです。
 5月9日の決算発表でトヨタは開示時間を従来の午後3時から午後125分に早めました。
 証券取引所の取引時間中に発表するのは初めてです。
 競争力強化に向けた中長期の取り組みを豊田章男社長らが説明する時間を十分に確保する狙いがあったようです。
 純利益が2期ぶりに過去最高となった決算は即座に値動きに織り込まれ、この日の株価は前日比4%上昇しました。
 トヨタ広報部は「質疑応答の時間をしっかり確保でき投資家からも好評だった」と話しているようです。
 20184~6月期決算も、83日午後125分に開示しました。
 1年前も取引時間中に発表していた三菱商事や住友商事、豊田通商などは開示時間をさらに早めました。
 子会社の香港市場上場で、香港市場の取引時間外での開示が必要になった日清食品ホールディングスは、午後3時から午後115分にしました。
 欧米では午前中や取引時間中に開示する企業が多いようです。
 日本では3月期企業の約7割が、株式市場の取引が終わる午後3時以降に発表します。
 迅速な開示を求める東証の適時開示規則にそぐわないとの声もあるようです。
 岡三アセットマネジメントの前野達志氏は、「午後3時以降の開示では、海外勢の先物取引が日本市場の現物株の取引より先行する。取引時間中の開示が進めば日本の投資家が迅速に売買できるようになる」と話しています。
 トヨタが前倒しに踏み切ったことで、追随する動きが出てきそうです。
 以前から、個人的には、取引時間外の開示には疑問を持っていました。
 特に、業績が悪い企業は、取引時間外に開示するという風潮があったと思います。
 ようやく、トヨタの取引時間内の開示により、全体的に、取引時間内に開示するといった流れになればいいなぁと思います。
 そうなれば、取引時間外に開示する企業は投資家のことを考えていないということになり、開示に対する対応で、投資家に対する対応が分かるようになり、それが株価にも反映されればよいなぁと思いますね。
 3月期企業の決算発表時間の前倒しが前期は370社だったことについて、どう思われましたか?

大手監査法人が人手不足で新興勢との契約敬遠し「IPO難民」が増加!

 あずさ監査法人が監査業務の新規受注を1年間停止すると表明して半年あまり経ちましたが、大手監査法人が不正会計などリスクが大きい割に実入りの少ない新規株式公開(IPO)企業の監査を敬遠する動きが広がっているようです。
 監査契約を結べない「IPO難民」が増えれば、証券市場の活力低下にもつながりかねません。
 「検討を重ねた結果、契約は難しいと判断しました」と、東京都内のある新興企業の幹部は、担当の公認会計士からこう言い渡されてうなだれたそうです。
 上場前のショートレビュー(短期調査)を手掛けた大手監査法人から数か月間も待たされた揚げ句、契約を断られたのです。
 こんなケースが相次いでいるようです。
これまで監査法人は将来の有望企業の開拓のため、うまみが少なくてもIPO企業の監査に積極的でした。
 潮目が変わったのは、東芝などで相次いだ不正会計です。
 大手に比べて新興企業の経営リスクは高くなります。
 自動運転技術で高い期待を集めながら、東証が上場承認した直後に顧客情報の流出が発覚し上場を延期したZMP(東京都文京区)の記憶が新しいところでしょう。
 さらに、人手不足の影響も大きく、大手監査法人は一様に及び腰になっているようです。
 「ぜひそちらに依頼したい」と、ある中堅法人のもとには大手に断られた新興企業からの案件が次々に舞い込んでいるようです。
 監査法人と契約できず、上場したくてもできないIPO難民の“駆け込み寺”になっているのは準大手・中堅の監査法人です。
 「営業していないのに上場予備軍が大量に流れ込んでくる」(中堅法人のパートナー)そうです。
2017年のIPO監査法人の分布をみると、太陽監査法人や三優監査法人など四大法人以外のシェアが初めて2割を超えました。
 「引き受けた新興企業の監査法人が聞いたこともないところで戸惑った」(国内証券)との声も上がっているようです。
 公認会計士不足に悩むのは大手と同じです。
 ある中堅法人からは「業界全体でみると大手の責任放棄が甚だしい」(パートナー)との恨み節が漏れてきています。
 しかも、「業績的に上場予備軍にはほど遠い企業」(別のパートナー)も少なくないようです。
 業績や内部管理体制の整備など上場までのロードマップを丁寧に説明し、案件の分散化に努めているようです。
 この状況を大手はどうみているのでしょうか?
 あずさ監査法人の鈴木智博IPOサポート室長は、「新興企業の成長性を見極めるのと監査法人としての収益を両立させるのは難しい」と説明しています。
 現在は新規受注のガイドラインを策定中で、「監査作業の工程を見直し法人全体の作業量を3割減らしたい」(酒井弘行理事長)としています。
 堅調な相場環境に支えられ、2018年の国内IPO数は「90100社程度」(野村証券)と、金融危機前の2007年(121社)に次ぐ高水準になる見通しです。
 しかしながら、IPOには3年程度の準備期間が必要で、IPO難民が顕在化するのはこれからです。
 全体のIPO数が大きく減少する可能性もあります。
 資本市場に厚みを持たせるためには活発なIPOが不可欠です。
 「IPOのボトルネックは監査法人」(大手証券幹部)という現状を解消する知恵が必要となるでしょう。
 10年以上前に監査法人を退職した僕としては、時代の流れを感じます。
 結局、しわ寄せが中堅・中小の監査法人に来るだけだと思います。
 当然、監査法人も不祥事が起きると、場合によっては監査法人の解体に追い込まれる可能性もあり、契約に慎重になるのも分かるような気はします。
 そのような中でも、会社の将来性、日本の証券市場の発展のために、監査を引き受けてくれる監査法人が増えてきてほしいものですね。
 会社のステージに応じて、監査法人が変わるという時代が来るかもしれませんね。
 大手監査法人が人手不足で新興勢との契約敬遠し「IPO難民」が増加していることについて、どう思われましたか?

「グリーンシート」が約20年の歴史に幕!

2018年04月05日(木) 

非上場株を取引するグリーンシート市場が2018年3月末で約20年の歴史に幕を閉じました。
当初は中小・中堅企業の資金調達や株式流通手段として期待されましたが、開示規制や新興企業向け上場市場の整備で、登録企業が激減しました。
日本の資本市場の裾野を広げる取り組みは、道半ばです。

2018年2月下旬、佐賀県有田町に本社を置く深川製磁から約400人の株主に通知が届いたようです。
グリーンシートでの取引停止を知らせる内容です。
1949年に福岡証券取引所に上場しましたが、時価総額基準を満たせず2007年に廃止になりました。
株式流通の代替場所としてグリーンシートに登録しましたが、再上場は果たせませんでした。

グリーンシートは日本証券業協会が運営する市場で、1997年7月に開設されました。
登録銘柄数(年末時点)をみると、2004年末の96銘柄をピークに減少傾向が強まりました。
成長企業を呼び込む狙いもありましたが、東京証券取引所などに上場した企業は過去20年で約15社にとどまっています。

日本証券業協会が市場開設時にお手本としたのは、アメリカの店頭市場(OTC)の一つの「ピンクシート」です。
アメリカのOTC市場は、今でも全体で1万以上の銘柄登録があり、仮想通貨「ビットコイン」関連銘柄が活発に取引されるなど、一定の存在感を示しています。

それでは、日本ではなぜ利用が広がらなかったのでしょうか?

「05年の制度改正で、適時開示義務を入れたことに尽きる」と、野村総合研究所の大崎貞和主席研究員は指摘しています。
信頼性向上を狙った措置でしたが、情報開示負担は取引所上場と変わらなくなりました。
上場基準の緩い新興市場も相次ぎ開設され、グリーンシートを選ぶ理由は乏しくなりました。

魅力的な企業が集まらなければ投資家層も広がりません。
アメリカでは創業間もない企業に資金を出す「エンジェル投資家」が多く存在しますが、日本ではまだ少数派です。
国内の大手証券会社も商いが薄く手数料が稼げないため、個人顧客を誘導することは少なかったようです。

日本証券業協会はグリーンシートに代わる非上場株の発行・流通制度として「株主コミュニティ」を作りましたが、使い勝手に課題が残るようです。
適時開示義務をなくす代わりに、証券会社は不特定多数の個人を勧誘できません。
株式を売買できる「コミュニティ」に入るには、運営する中小証券に口座を作る必要があります。
野村證券など、大手の参入はまだありません。

非上場企業の資金調達ニーズは存在します。
ネットで小口出資を募る仕組み「株式投資型クラウドファンディング」では2017年の調達総額が約5億円に上っています。
DANベンチャーキャピタルの出縄良人社長は、「自己資本比率を改善したい地方企業の関心が高い」と話しています。

全国で380万社超とされる民間事業者のうち、上場会社は一握りにすぎません。
起業家へのマネー供給に加え、今後、中小企業のオーナー社長の引退が相次ぐことに備え、非上場株を容易に換金・流通できる場があった方がよいでしょう。
資本市場の裾野を広げるには、証券界を挙げた取り組みが欠かせないでしょうね。

企業にとって開示などの負担が少なく、一方で、そのようなリスクを承知の上で投資家が気軽に投資できるような市場は、ニーズもあり、個人的には必要なのでないかと思っています。
投資型のクラウドファンディングなどが典型例でしょうね。
日本証券業協会を挙げて、知恵を絞って、信頼性のあるそのような市場ができることを期待したいですね。

「グリーンシート」が約20年の歴史に幕を閉じることについて、どう思われましたか?


上場を避ける企業が増えている!

2018年02月15日(木)

日銀の資金循環統計によれば、家計が保有する非上場株式は急激に増加し、2017年9月末には84兆円に達しています。
当時の東京証券取引所第1部上場株の時価総額が626兆円ですから、その13%に達する規模です。

日本経済新聞によると、非上場株の時価が増加する原因は2つあります。
1つは、景気の回復が非上場の中小企業にまで及んできたという明るい理由です。
もう1つは、非上場企業の間に上場を避ける動きが出ているのではないかという心配な理由です。

上場基準を満たしている企業が上場しない理由は、多様です。
金融緩和で銀行からの資金調達が容易になっているため、あえて上場する必要がないという理由もあるかもしれません。
数年前から言われていますが、気になるのは、上場に伴うコストが高いと考える経営者が増えているのではないかという理由です。

そうなるのは、目に見えない上場コストが増えているからです。
上場コストには2種類のものがあります。
1つは、公認会計士による監査のコストや社外取締役や社外監査役の報酬支払いなどの目に見える直接的なコストです。
第2は、上場企業が満たすべきルールが厳しくなり、よい経営ができなくなるという目に見えないコストです。
投資家保護を考えて導入された規制が企業経営の大きな制約になっているという認識が上場企業だけでなく、日本の非上場企業の経営者の間にも広がっています。

短期投資家の発言力が強いアメリカでは、アメリカ内の証券市場に上場すると経営の制約条件が厳しすぎて良い経営ができなくなる可能性が大きくなるので、ヨーロッパの市場への上場を薦めるベンチャーキャピタルが増えているといわれているようです。

このままだと、日本でも上場を避ける企業や投資家がもっと増えるかもしれません。
それは、上場を避ける企業にとって、リスク資金を得る道が制約されるという意味でマイナスであるだけでなく、マクロ経済の成長にもマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

また、有望な投資先が増えないという意味では、投資家にもマイナスです。
投資家保護も大切ですが、それが上場企業の負担になりすぎないようにする工夫も必要です。
市場管理当局は、角を矯めて牛を殺すという結果にならないように気をつける必要があるでしょう。

会社も、トヨタのような企業から、売上がほとんどないような会社まで様々な会社があるので、一律に扱うのもどうかなぁと思います。
デメリットがメリットを上回り、上場できるのにしない会社が増えていると言われ出して結構経ちますが、個人的には、開示とか内部統制とかの頻度などにつき、いろいろと設けて、それに応じた市場を作って、投資家もリスクを認識したうえで投資すれば良いのではないかと思います。
時代的に人がなかなか採用できないので、採用の面では、今なお、上場企業のメリットはかなりあるのではないかと思います。

上場を避ける企業が増えていることについて、どう思われましたか?


2018年のIPO第1号の予定だった世紀の上場承認取り消し!

2018年01月24日(水)

東京証券取引所は、先日、射出成型の合理化機器を製造販売する世紀(山形県米沢市)について、マザーズ市場への上場承認を取り消したと発表しました。
1月5日に承認したばかりでしたが、世紀からの申し出で取り消すことになりました。

世紀は「上場にそぐわない内部規定があり、確認するため」と説明しています。
計画では2月8日の上場で、2018年の新規上場(IPO)第1号となる見通しでした。
今後、世紀は、内部規定の内容を見直し「改めて上場承認を求めたい」そうです。

「社内規定に照らして確認すべき事項」ということですが、よく分かりません。
だだ、2018年のIPOに水を差す形になったのは間違いないでしょうね。

ネットで調べると、6年前の2012年も、IPO第1号予定のリフォームスタジオが、株式市況の動向等の諸般の事情を総合的に勘案して上場中止になっています。
イオングループの会社ですが、その後もIPOはしていないですね。
上場承認取り消し(TOKYO PRO Marketは除く。)も、2015年は3件、2016年は2件、2017年は2件なので、毎年数件はあるようです。
出だしからつまずいた感じですが、IPO市場は盛り上がって欲しいですね。

2018年のIPO第1号の予定だった世紀の上場承認が取り消されたことについて、どう思われましたか?


名古屋証券取引所がアトリエはるかの上場承認を取り消し!

  名古屋証券取引所は、先日、ヘアメークなどのサロン運営のアトリエはるか(名古屋市)のセントレックス市場への上場承認を取り消したと発表しました。

 アトリエはるかは11月1日に上場が承認され、12月7日に上場する予定でした。

アトリエはるかは、先日、株式の発行・売り出し中止と上場手続きの延期を決めたと発表しました。
アトリエはるかによると、社員から会社への内部通報でコンプライアンス(法令順守)に抵触する疑いのある事例が判明したそうです。
「調査が必要と判断した。調査結果次第で手続きを再開したい」としています。

主幹事の岡三証券は「規定に沿って上場審査は進めている」としています。
名古屋証券取引所は、「上場申請そのものは取り下げられておらず、アトリエはるかの対応を待ちたい」などとしています。

名古屋証券取引所によると、過去には2007年にもいったんセントレックス上場をきめながら取り消した企業があるそうです。

個人的には、名古屋証券取引所は、過去に不祥事などがありあまり印象は良くないですが、今回の件も、印象を悪くしましたね。
そろそろ地方の証券取引所の存在意義を真剣に考える時期に来ているように感じます。

名古屋証券取引所がアトリエはるかの上場承認を取り消したことについて、どう思われましたか?


プロ向け市場の上場審査や助言を手がけるJアドバイザーに宝印刷を認定!

2017年12月06日(水)

  東京証券取引所は、先日、プロ投資家向け市場「東京プロマーケット」の上場審査などを手がける「Jアドバイザー」に宝印刷を認定したと発表しました。
東京プロマーケット市場への上場を目指す企業の適正調査や助言、指導を担います。

Jアドバイザーに認定されるのは、10社目です。
これまでは証券会社やコンサルティング会社が多く、印刷会社の認定は初めてです。

宝印刷は中小企業の上場支援に取り組む考えです。
自ら審査することで上場企業が増えれば、本業の情報開示支援業務の伸びも見込めます。

監査法人勤務時代は、『宝印刷』や『プロネクサス』などには、有価証券報告書のチェックなどで大変お世話になっていましたが、こういうこともする時代になったかと思うと、時代の流れを感じますね。
ぜひ、頑張って欲しいですね。

プロ向け市場の上場審査や助言を手がけるJアドバイザーに宝印刷が認定されたことについて、どう思われましたか?


新規公開企業の業績予想が正確に!

2017年12月01日(金) 

新規株式公開(IPO)した企業の業績見通しが正確になってきています。
今年は上場後に下方修正した企業が、現時点で3%に過ぎません。
昨年は33%が業績が下振れしたのです。
信頼できない業績予想に投資家から批判が高まったため、東京証券取引所が上場審査を厳しくし、幹事の証券会社も慎重に準備するようになりました。
新規公開企業の情報開示が向上すれば、市場に個人マネーを呼び込む一因となりそうです。

あずさ監査法人が2010年以降の動向を調べたところ、昨年までの7年間でIPO企業の4分の1超が、上場時に発表した利益予想を達成できていませんでした。
2017年は、ほとんどの企業が業績予想を引き下げていません。

先日、東証ジャスダックに上場した木材加工のシー・エス・ランバーは11月が決算月です。
決算期末直前に上場した理由について、戸田正専務取締役は「受注状況をぎりぎりまで見極めてから上場する方が、投資家に正確な業績予想を届けられる」と説明しています。

「業績予想を下回らないことは投資家からの信頼につながる」と話すのは9月に東証マザーズに上場した人工知能(AI)開発のパークシャテクノロジーです。
11月9日に発表した決算では、2017年9月期の連結純利益が2億6,800万円でした。
事前の予想を2割近く上回っています。

IPO企業は社歴の短い企業が多く、過去の業績データも少ないのが現状です。
投資家は、会社の事業内容や資本構成などを紹介する目論見書や、上場前に開示する売上高、利益額といった業績の見通しを頼りに株を売買します。

業績予想が不正確だと、一般の投資家に誤った情報を与えることになりますが、予想が外れることは珍しくありませんでした。
2014年には、新規公開した企業の4割で業績予想が下振れしました。
黒字予想から一転して赤字に転落した企業もあります。
上場時には、会社の創業者や出資者が保有していた株を売り出して現金化する場合が多くなります。
上場後に業績予想を下方修正した企業に対しては、投資家から株を高く売るのが目的ではないかとの批判が高まりました。

こうした声を受けて、東証は上場企業の審査を厳しくしました。
大和証券の松下健哉公開引受部長によると、企業の上場作業を手伝う証券会社も「投資家の視線を強く意識するようになった」そうです。

実態が伴っていないのに事業の説明にAIなどの流行語を多用する、来期以降に業績が急減速すると分かっているのに開示しない――。
証券会社に聞き取ったところ、東証の審査では、こういった企業に改善が求められていたようです。

こうした取り組みで業績予想が正確になり、上場準備に時間がかかるようになりました。
かつては、決算期が終了してから9~10カ月後に上場していましたが、現在は1年近くかける企業は珍しくありません。

あずさ監査法人の鈴木智博IPOサポート室長は、「適切な情報開示は市場の信頼性向上につながる」と話しています。
IPO企業の株は、成長への期待から個人投資家の関心が高くなっています。
情報開示の質が向上すれば、個人が株式市場に資金を振り向けやすくなりそうです。

上場時の株価は、予想PERをベースに算出されることも多いため、業績予想の数値は、上場時の株価に大きな影響を与えます。
よって、業績予想が正確でないと、投資家を欺くことになってしまいます。
業績予想は業種によっては難しいとは思いますが、ここは、今後もきちんとして欲しいですね。

新規公開企業の業績予想が正確になっていることについて、どう思われましたか?

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インボイス制度開始で8割超の公認会計士や税理士の業務量が増加!

2024年04月26日(金)

TECH+によると、freeeは2024年4月11日、公認会計士や税理士を対象に実施した、インボイス制度と電子帳簿保存法対応に関するアンケート調査の結果を公表しました。

インボイス制度開始によって80.6%の公認会計士や税理士は業務量が増えたことが明らかになりました。

このレポートは、freeeが2024年2月22日〜3月1日、公認会計士または税理士196人を対象にWEBアンケート方式で実施したインボイス制度と電子帳簿保存法対応に関する調査の結果に基づいています。

インボイス制度対応は業務量に影響をおよぼしたか尋ねると、「20〜39%増えた」が36.2%、「1〜19%増えた」が31.1%、「変わらない」が18.9%「40%以上増えた」が13.3%、「減った」が0.1%の回答となっています。

全体の80.6%がインボイス制度対応で業務量が増えたと回答しました。

インボイス制度対応のために顧問料を値上げしたか質問すると、「行っておらず、検討もしていない」が41.8%、次いで「行ってはいないが、検討している」が32.7%、「行った」が20.9%、「その他」が4.6%となり、インボイス制度対応を目的とした値上げは現状74.5%が行っていませんでした。

インボイス制度対応のために従業員を増員したかという問いには、「行っておらず、検討もしていない」が85.2%、次いで「行ってはいないが、検討している」が12.2%、「行った」が1.5%、「その他」が1%と、従業員増員は行わず現状維持で対応する事務所がほとんどでした。

また、電子帳簿保存法対応は業務量が増えたか聞くと、「変わらない」が46.9%、「1〜19%増えた」が32.1%、「20〜39%増えた」が15.3%、「40%以上増えた」が4.1%、「その他」が1.5%と、電帳法対応で業務量が増えた先は半数を超えることがわかりました。

今後新たに生じる制度対応に不安はあるか尋ねると、「少しある」が41.3%、「大いにある」が24.5%、「ある」が19.4%、「全くない 」12.2%、「その他」が2.6%で、85.2%が将来の制度変更対応に関して不安を感じていることが明らかになりました。

記帳代行を基本的にやっていない弊事務所でも、グダグダの電子帳簿保存法はともかく、インボイスは質問対応を含めて業務量は増加しています。

そして今年は、定額減税で業務量が増えることが明らかです。

個人的には、賃上げと言っている割に、一方で収益を生まないような業務を増やしているので、時間やコストが増加しているのは明らかなので、業務量が増加した事業者や会計事務所に、1人当たりいくらとか税額控除してくれるような仕組みを作ってほしいなぁと思います。

インボイス制度開始で8割超の公認会計士や税理士の業務量が増加していることについて、あなたはどう思われましたか?


公認会計士のマネロン対策が厳格に!

日本経済新聞によると、政府は2024年4月から司法書士や公認会計士に対し、マネーロンダリング(資金洗浄)対策を厳しくするように求める見通しです。

顧客となる企業や個人に、取引目的や職業を確認することを義務付け、疑わしい取引は行政に報告することを課します。

改正犯罪収益移転防止法の施行に伴うもので、対象は司法書士や行政書士、公認会計士、税理士といった士業になります。

これまでは氏名や住居、生年月日など顧客の基本情報を確認する義務が課されていました。

今後は本人確認以外に、取引を行う目的、職業・事業内容も確認します。

法人の場合は、実質的支配者の確認も求めます。

すでに義務化している金融機関と同様の内容を求めることになるのです。

行政書士、公認会計士、税理士には新たに「疑わしい取引」の届け出義務を課します。

顧客から得た収益が犯罪による収益である疑いがあると判断した場合に、所管行政庁に速やかに届け出ることを義務付けます。

200万円を超える取引は、資産や収入の状況も確認します。

公認会計士は顧客の会社設立の手続きを行うことがあります。

例えば、事業実態のないペーパーカンパニーは、資金洗浄に使われる可能性があります。

こうした場合は「疑わしい取引」として届け出対象になることが想定されます。

マネロン対策を強化する背景には、特殊詐欺などが増え、犯罪者の資金源となっている可能性があるからです。

警察庁によると、2022年には特殊詐欺の被害額が8年ぶりに増加し、2023年も11月末時点で2022年を上回る被害額となりました。

クレジットカードの不正利用被害額も2022年には約437億円にのぼり、過去最悪を更新しました。

テロ資金などを警戒する国際社会からの圧力も強まっています。

各国・地域のマネロン対策を調べる国際組織「金融活動作業部会(FATF)」が2021年に公表した第4次審査の結果で、日本は実質的に不合格を意味する「重点フォローアップ国」という評価を受けたのです。

なかでも士業や非金融機関は「マネロン対策への理解が不十分」「その監督当局もリスクベースによる監督を実施していない」など厳しい評価を受けました。

数年後に控える第5次審査では士業・非金融機関への審査が強化される見込みです。

士業の一つである公認会計士を所管する金融庁は、公認会計士と監査法人を対象に改正犯収法施行に伴う実務上の新たな指針を2024年3月末までに示すようです。

指針案によると取引目的や職業などの確認義務の対象業務は、財務に関する相談業務に付随した会社設立の手続き時などになる見通しです。

金融庁は新たな指針をもとにモニタリングも行います。

問題が見つかれば犯収法に基づき報告徴収や是正命令を出すことも視野に入れています。

マネロン対策は預金を扱う大手銀行や地域金融機関にとっても喫緊の課題です。

金融庁が2021年から金融機関にマネロンに関する体制整備を要請していました。

80超の項目を並べて対応を求めており、2024年3月末は対応完了の期限となります。

金融庁や財務局は、各地域でマネロン担当役員を対象としたフォーラムや勉強会を開いて対応を促します。

金融庁は2024年4月以降、指針に関する不備がある金融機関には業務改善命令などの行政処分を出すことも辞さない構えです。

公認会計士も、マネロンに関する対応が必要な時代なんですね。

それだけ、特殊詐欺などが増えているということなんでしょうけど。

公認会計士のマネロン対策が厳格になることについて、あなたはどう思われましたか?


PwCあらたとPwC京都が合併して「PwC Japan有限責任監査法人」へ!

LIMOによると、PwCあらた監査法人(以下「あらた」という)とPwC京都監査法人(以下「京都」という)は、2023年12月1日付で合併すると発表しました。

あらた・京都ともに4大国際会計ファーム・コンサルティングファーム(Big 4)の一つである「PwC(PricewaterhouseCoopers、プライスウォーターハウスクーパース)」のメンバーファームです。

監査法人とは、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明を組織的に行うことを目的として、公認会計士法第34条の2の2第1項によって、公認会計士が共同して設立した法人のことです(公認会計士法第1条の3第3項、第2条第1項)。

一般的には、上場している企業の決算を監査する、公認会計士資格を持つ者が所属する組織と言われます。

実際は、上述の法定監査以外にも、「任意監査」「決算早期化支援」「経理・財務に関する相談業務」「コンサルティング業務」など多くの業務を行っています。

そのため、社員も公認会計士資格者のみで組織されているわけではなく、様々なバックグラウンドを持った者が在籍しています(法律上、公認会計士でない社員の割合は決められています)。

国際会計ファーム・コンサルティングファームとしては大規模グループが存在し、
・Deloitte Touche Tohmatsu(デロイト トウシュ トーマツ)
・EY(Ernst & Young、アーンスト&ヤング)
・KPMG
・PwC(PricewaterhouseCoopers、プライスウォーターハウスクーパース)
の4グループ(順不同)が「Big 4」と呼ばれます。

「Big 4」それぞれのメンバーファームが日本国内にも存在し、4大監査法人と呼ばれており、以下のとおりです。
・有限責任監査法人トーマツ(デロイト)
・EY新日本有限責任監査法人(EY)
・有限責任あずさ監査法人(KPMG)
・PwCあらた有限責任監査法人(PwC)

2023年6月1日、あらたは京都との統合に向けた協議を開始したと公表しています。
ともに同じPwCのメンバーファームであるため、Purposeも共通しています。

また、監査業界では、人的資本や気候変動対策を記載する、サステナビリティ関連開示情報の保証業務(著者注:「経理の状況」に対してと同様に何らかの保証をすること)を担うことが想定されることや、テクノロジーを用いた監査の更なる高度化が求められることなど、監査法人を取り巻く環境が大きく変化することが見込まれています。

両法人の強みを活かすことで、統合して規模を拡大することが高品質の保証サービスを提供できるとしています。

<各社概要>
●PwCあらた有限責任監査法人
・設立:2006年6月1日
・人員:3,006名(2023年6月30日時点)
・売上高:609億8,100万円(2022年7月1日~2023年6月30日)
・主要顧客:トヨタ自動車株式会社(東証プライム、7203)、ソニーグループ株式会社(東証プライム、6758)ほか、トヨタ傘下企業、ソニーグループ傘下企業など

●PwC京都監査法人
・設立:2007年3月19日
・人員:443名(2023年6月30日時点) ・売上高:69億9,000万円(2022年7月1日~2023年6月30日)
・主要顧客:KDDI株式会社(東証プライム、9433)、ニデック(旧:日本電産)(東証プライム、6594)、京セラ株式会社(東証プライム、6971)、任天堂(東証プライム、7974)

京都の主要顧客を見て、驚かれた方もいるのではないでしょうか?
準大手監査法人ながら、多くのグローバル企業の会計検査人を担当しているのです。

2023年12月より、4大監査法人の名称が変更となります。
17年の歴史がある「あらた」の名が消えて、「PwC Japan有限責任監査法人」となります。

僕は、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)の出身ですが、就職活動をしていた頃は、6大監査法人と言われていました。
・太田昭和監査法人(E&Y)
・中央監査法人(C&L)
・監査法人トーマツ(DTT)
・朝日監査法人(AA)
・センチュリー監査法人(KPMG)
・青山監査法人(Pw)
色々とくっついたり、離れたりで提携ファームが変わったり、この中にはカネボウ事件でなくなった監査法人もありますし、今でも名前が残っているのはトーマツだけですね。
『トーマツ』はあまり知られていないのかもしれませんが、実は、監査法人等松・青木・津田・塚田・青木・宇野・月下部事務所の『等松』なのです。
大手監査法人がくっついたり、離れたりするたびに、粉飾の歴史などを思い出しますね。

PwCあらたとPwC京都が合併して「PwC Japan有限責任監査法人」になることについて、あなたはどう思われましたか?


会計監査の現場離れ!

日本経済新聞に東京都立大学大学院の松田千恵子教授が以下のように、書かれています。記録的な猛暑とそれに続く豪雨などで体調を崩した人も多いでしょう。
新型コロナウイルスも相変わらず猛威を振るっています。
しかしながら、感染症法上の分類が「5類」に移行して以来、会食や旅行需要は相当回復してきました。

コーポレートガバナンス(企業統治)の世界でも、社外役員を含む現場視察やオフサイト、監査役員による現場実査などもコロナ前と同様に活発に行われるようになっています。
ただひとつ気になるのは、時たまささやかれる「会計監査のリモート化が戻らない」という点だそうです。

もちろん、多くの会計監査人は真摯に現場で業務を遂行しています。
移動にさしたる障害がなくなった今、リアルでの監査は通常のことでしょう。
しかしながら、コロナ禍で行われていたような、実地棚卸をスマートフォン越しに済ませるといったことも引き続きあるという声を時々耳にするようです。

リモートワークに異を唱えるつもりはありません。
むしろ、適宜活用して生産性を上げることは大事です。
会計など情報を扱う分野は、リモートワークとの親和性も高いでしょう。
ただし、率直に言えば、実地棚卸などを含む会計監査については、当然ながら現場をしっかり見てほしいというのが本音です。

ある監査法人の調査によれば「今後は不正リスクが高まる」と感じている企業の割合は2020年に59%でしたが、22年には64%へと上昇しました。
これまで現場のチェックや対面での状況把握が難しかったため、不正の芽が見えなくなっているのではという不安の表れとも言えるでしょう。

一般に、景気の先行きが不透明になれば、将来への不安や金銭面の困窮、ノルマ達成圧力の増大などにより、不正に走る動機は多くなります。
基本中の基本とも言える、「しっかりと現場を把握すること」の重要性を改めてかみしめるべき時機でしょう。

僕自身は、実地棚卸の本を出していますので、少し前に監査法人の後輩から棚卸の立会はZoomとかで現場でつないでやっていますと聞いて、コロナ禍とはいえ大丈夫なのだろうか?と思いましたが、やはり現場に行って現物を確認することが重要だと思いますね。
過去においても、棚卸を通じた粉飾がたくさんあり、会計監査人が基本的に必ずやらなければならないこととして、実査・立会・確認があるわけですから、実地棚卸の立会は必ず現場に行ってやってほしいですね。

会計監査の現場離れについて、どう思われましたか?


形式的な作業に失望し公認会計士の監査法人離れが進む!

日本経済新聞によると、財務諸表をチェックする会計監査の担い手不足が深刻になっているようです。
監査法人で働く公認会計士の比率は10年で10ポイント下がりました。
上場企業数や監査業務量が増え続けるなか、やりがいに乏しい形式的な作業に失望し、スタートアップやコンサルティング企業に転身する動きが目立っています。
資本市場の門番役を担う監査制度に、空洞化の危機が迫っています。

「お世話になりました」と、監査法人の年度末から初めにあたる6月から7月、大手法人幹部のメールボックスには所属公認会計士から届く離職のあいさつが引きも切らないようです。
「採用するのと同じ規模の人数がやめてしまう」と頭を抱えています。

公認会計士登録者は2023年3月末時点で3万4,436人と10年前から38%増えていますが、監査法人所属の公認会計士は1万3,980人と7%しか増えていません。
10年前に51%だった監査法人所属者比率は41%まで低下しました。

公認会計士は歴史的に流動性の高い職種です。
監査法人内でパートナーと呼ばれる役職者になれるのは同期の1割ほどで、経験を重ねつつ徐々に責任が重くなるピラミッド構造にあります。
入所10年程度で昇格するマネジャー職まで経験を積み、別の道を歩むのがかつての典型でした。

しかしながら、近年は離職する公認会計士が若手スタッフからパートナーまで全職階に広がりました。
「マネジャーまで頑張ろうと思っていたが、1年働くごとに気持ちが変わっていった」と、2021年8月に監査法人を去った20代公認会計士は吐露しています。

なぜなのでしょうか?
まず、「本当に意味があるのかと思う部分まで、全てをしゃくし定規に記録に残す」(30代公認会計士)監査業務への失望が挙げられます。
監査法人を退職した公認会計士約10人への取材で多く聞かれたのが、日本公認会計士協会が監査でやるべき手続きを定めた「監査基準委員会報告書」、通称「カンキホウ」への不満です。
元あずさ監査法人所属の40代独立公認会計士は「(報告書では)形式的で膨大な作業が積み上がっている」と明かしています。

東芝や英カリリオン、独ワイヤーカードなど、世界的に大きな会計不正は絶えず、発覚の度に監査法人に批判の矛先が向きました。
国際的な監査基準の要求事項は上乗せされ、監査法人も所属公認会計士に、規制当局から責められないように実施手続きを監査調書に細かく記録するよう求めたことも形式化に一段と拍車をかけています。

前出の20代公認会計士は「労働時間の概念を取っ払って大量のチェック項目をつぶすことが生きがいなのか、自問した」と話しています。
監査法人トーマツパートナーを経て早稲田大学会計大学院で教える林敬子教授は「(若い公認会計士に)回り道したくないという意識が強まっている」と指摘しています。
成長に寄与しない業務を避ける構図が、監査法人離れの背景にあるようです。

全体の業務が増える一方、近年は若手スタッフの残業時間上限が管理されるため、上司であるマネジャーやシニアスタッフらが「残務を巻き取っていた」(2022年に大手法人を退職した30代公認会計士)。
若手の離脱や働き方改革のしわ寄せが上の階層に波及し、監査現場全体の疲弊が進んでいるようです。

監査法人以外の「活躍のフィールドが広がっている」(日本公認会計士協会の鶴田光夫副会長)ことも要因です。
企業では経理のほか、経営企画や内部監査など引く手あまたです。
スタートアップでは若くして最高財務責任者(CFO)も珍しくありません。

かつては高収入の代表格だった監査法人ですが、一般企業の待遇面は遜色なくなってきています。
監査法人入所後、数年で昇格するシニアスタッフの年収が最低でも600万円程度、10年前後でなれるマネジャーは800万〜1,000万円程度とされます。
他方、会計系の転職エージェントでは内部監査や経理で700万円程度、戦略コンサルだと900万円強が提示されます。

監査法人に公認会計士をつなぎ留めるには、賃上げやデジタルを活用した業務効率化が必要です。
原資となる顧客から受け取る監査報酬の引き上げが欠かせませんが、時間単価はここ10年ほど1万2,000円弱と一向に伸びていません。
日本の上場企業は過去最高水準まで増えているにもかかわらず、顧客企業に危機感が伝わっていないようです。
EY新日本監査法人の片倉正美理事長は「値上げを納得してもらうには、単に監査意見を出すだけでなく付加価値のある知見を提供する必要がある」と語っています。

監査が空洞化して情報の信頼性が欠如すれば市場は効率的に機能しなくなります。
ある会計監査業界の関係者は「中小企業と大企業で同じ情報開示が必要かなど、資本市場システムの全体像を議論すべきだ」と強調しています。
公認会計士の監査法人離れは監査制度の土台を揺るがしかねず、すでに崩壊の瀬戸際にあるのかもしれません。

公認会計士に時間的な余裕を生み出すための監査DX(デジタルトランスフォーメーション)で各法人がしのぎを削っています。
カギを握るのが人工知能(AI)の活用です。

理化学研究所が日本公認会計士協会の協力で実施した2022年発表の調査によると、監査現場の進捗管理や取りまとめなどを担う現場責任者「主査」の各業務はAI活用で10年後に平均35%の時間短縮をもたらす可能性があります。
特に定型的な監査手続きは70%減、監査契約時のリスク評価は42%減と想定効果が大きいようです。

AI監査は実証段階から本格導入へ移行し始めています。
EY新日本監査法人は「リアルタイム監査」などと呼ばれる仕組みの本格展開を開始しました。
企業の統合基幹業務システム(ERP)からの取引データなどの定期的抽出や加工、AI分析による異常検知まで人手を介さず進めます。
足元では10社程度で、3年後までに100社に広げます。

今後は生成AIも広がりそうです。
あずさ監査法人では取引を勘定科目で記録した仕訳データの分析で活用を目指します。
「基礎分析して」と指示すると平均や分散などの統計量を出すとともに「金額が大きい項目の詳細分析をする」など次の行動も推奨するのです。

生成AIは、一見もっともらしいが事実と異なる内容を返す「ハルシネーション(幻覚)」を起こすこともあります。
業務効率化を理由に監査の質を落とさないため、回答をうのみにしないで高度な判断につなげる知見は欠かせません。

<公認会計士>
財務諸表に不正などがないか確認する監査業務を独占的に担います。
イギリスで誕生し、日本では医師、司法試験に並ぶ難関資格とされています。
資格取得には短答式と論文式試験の合格、監査法人勤務など3年以上の実務経験のうえ、修了考査合格が必要になります。
2006年以降の新試験制度から大学卒業などの受験資格要件をなくしました。
直後に試験合格率は2割弱まで上昇しましたが、近年の合格率は1割程度、人数はおよそ1,300〜1,400人で推移しています。
2022年試験合格者の平均年齢は24.4歳と、10年前から2歳下がるなど低年齢化が進んでおり、資格自体の若者の人気は高いようです。
試験合格後に監査法人を経ず、コンサルティング企業に就職を希望する例も増えています。

僕は、約11年監査法人に勤め、そのあと東京の会計事務所に転職し、約4年勤めてから独立開業しましたが、監査法人をやめた理由のうちの大きな一つが、当時、カネボウの粉飾事件があり、金融庁の検査のために行っているのではないかと思われる手続きが増えたことです。
もう16年以上前の話しになりますが、その当時と比べても、格段にそのようなことが増えているんでしょうね。
個人的には、会計監査は、マニュアルも重要かもしれませんが、直観も非常に大事だと思っていますので、マニュアル化やAIは、直観とか経験があまり生かせなくなりますので、自分で考えて仕事がしたい方には、会計監査という仕事は面白くないでしょうね。
かと言って、公認会計士になったからといって、企業の経理やコンサルティングがすぐにできるわけはない(会計監査という仕事は、会社が作った財務諸表などに大きな間違いがないかどうかを確かめる仕事)ということは、雇う側も公認会計士も知っておいた方がよいかと思います。
僕自身、転職活動をするときに、監査法人で会計監査のみしていた人間にセールスポイントはあるのだろうか?と本当に思いましたから。

形式的な作業に失望し公認会計士の監査法人離れが進んでいることについて、あなたはどう思われましたか?


金融庁が専門部署を設置し監査法人を直接監督へ!

日本経済新聞によると、金融庁が監査法人を直接監督する体制を整えます。
2023年度に金融庁内に「監査モニタリング室」を置き、傘下の公認会計士・監査審査会の中に「公認会計士監査検査室」を設置する方向です。

15年ぶりに公認会計士法を改正し、自主規制機関(日本公認会計士協会)だけでなく、金融庁も直接監督・検査できるようにしました。

金融庁が近くまとめる23年度の機構・定員要求に盛り込むそうです。

2022年5月に改正公認会計士法が成立していました。
上場企業の監査を担うにあたって、自主規制団体の日本公認会計士協会による登録を法律で義務付けます。
また、公認会計士・監査審査会の立ち入り検査などにおいて、通常の業務運営体制に加えて新たに有価証券報告書に対する虚偽の監査証明の検証も行えるようになります。

金融庁による監査法人への検査・監督では行政処分を発動するといった監督権限は企画市場局が持ち、検査については公認会計士・監査審査会が担っています。
監査モニタリング室は企画市場局に、公認会計士監査検査室は公認会計士・監査審査会にそれぞれ設置することを想定しているようです。

大手監査法人からそれ以外の監査法人への監査契約のシフトがここ数年、急激に進んでいます。
『監査難民』ということばが使われるほど、監査法人との監査契約が締結できないところも増えています。
当然、大手監査法人と監査レベルが大きく異なる監査法人が、上場企業の監査をしていることがあるのも事実です。
自主規制機関では年間に検査できる件数が限られているようですので、今後、一定のレベルに達していない監査法人の排除が進めばいいですね。

金融庁が専門部署を設置し監査法人を直接監督することについて、どう思われましたか?


あずさ監査法人の公認会計士が法定研修で不正で45人処分!

大手のあずさ監査法人は、先日、所属する公認会計士45人が法律で義務づけられた研修をオンラインで不正に受講していた疑いがあると発表しました。
2つの講座に同時にログインして受講したと偽り、単位認定を受けた可能性があるようです。
あずさ監査法人は公認会計士たちを減給などの懲戒処分にすることを検討中だそうです。
また、高波博之理事長ら役員10人の報酬をカットする方針を決めました。

公認会計士たちが不正に受講していたのは、公認会計士法で義務づけられている「継続的専門研修」(CPE)です。
「職業倫理」「不正リスク対応」などの科目を直近3年間で120単位以上、年20単位以上取得する必要があります。

2020年3月に内部告発があり、過去数年にわたってパソコンのログなどを調べたところ、20代~40代の45人が1台の端末を使って2つのオンライン講義を同時に受講した可能性があることがわかったようです。
あずさ監査法人は最終的な調査を現在進めていますが、対象となる公認会計士の中に「パートナー」と呼ばれる幹部社員も含まれています。

システムに二重ログインができるようになった2014年から、不正受講を繰り返していた公認会計士もいるようです。
あずさ監査法人は2020年5月にシステムを改修し、現在は同時にアクセスできない仕組みに変えています。

CPEは、アメリカのエンロン事件など続発した会計不祥事に対応するため、監査の質向上をめざし、2004年から法律で義務づけられました。
ただし、オンラインで受講したり、学会に出席したりすれば単位取得が認められることもあるため、研修制度そのものが形骸化していた可能性もあります。

先日会見した日本公認会計士協会の手塚正彦会長は「会計士制度の根幹をなす研修を怠ったのは極めて遺憾だ」と語り、協会として他の監査法人にも同様の不正がなかったのか調べる考えのようです。
不正を繰り返し悪質な場合は、金融庁の行政処分を受けて公認会計士の登録を抹消される可能性もあるそうです。

公認会計士の教育や研修をめぐっては2017年、公認会計士試験に合格した補習生12人が実務補習中に提出した論文に、他の文献を引き写す盗用行為が見つかり、大手監査法人から処分を受けたことがあります。
公認会計士としての資質が問われかねない事態が再び起こり、2006年に簡素化され、試験合格者を大量に出すようになった会計士試験のあり方を変えるべきだとの声もあがっているようです。

青山学院大の八田進二名誉教授は「不正を見抜く立場にある会計士としての資質に欠けていると言わざるをえない。試験制度そのものを見直し、マナーや倫理観を兼ね備えるような会計士を育てていく必要がある」と指摘しています。

ちなみに、あずさ監査法人は、旧新日本監査法人(現EY新日本監査法人)から国際会計事務所KPMGと提携する部門が独立し、2004年に旧朝日監査法人と合併して発足した監査法人です。
国内の4大監査法人のひとつで、約3千人の会計士が所属し、約3,600にのぼる企業や学校法人などの監査を手がけています。

同業者として恥ずかしい限りです。
普段、内部統制がどうとか、決算の数値がどうとか言っている監査法人の人間が、このような不正をしているとは、モラルが低すぎますね。
こういう人たちは、会計監査をすべきではないと思いますし、公認会計士をやめるべきだと思います。
社風なども影響しているでしょうから、あずさ監査法人にも責任があるのではないでしょうか。
あずさ監査法人にも会計監査を受けている企業はどう思われるのでしょうか?
コンプライアンスが重要とは監査法人の人間は言っているでしょうから、これをきっかけに契約解除されても仕方ないようなことだと思います。
日本公認会計士協会も、厳しい処分を課して欲しいと思います。

あずさ監査法人の公認会計士が法定研修で不正で45人処分されたことについて、どう思われましたか?


BACK TO THE BASIC!

 今日は、いつもと違った感じです。

 現在、連載もので執筆しているものがあるのですが、来年度も継続の依頼をいただきました。

 2か月ごとに発行されますので、年間6回書くことになるのですが、初回はこれについて書いて欲しいというオーダーをいただきました。

 税務のテクニカルな話しではなく、会計のベーシックな話しでしたので、事務所の本棚から古い本を取り出しました。

 飯野利夫氏の書かれた『財務会計論(三訂版)』です。

 10数年以上前にお亡くなりになっていますが、僕が大学2年生のときに、公認会計士試験のために専門学校にも通い始めて一番最初に買った会計の本なのではないかと思いますので、僕の公認会計士としてのベースになっている本ですね。

 それから25年以上経っていますが、さらっと見たところ、会計の理論は色褪せていないかもしれないですね。

 この本を参考に、来年度は6回の連載を執筆していこうと思います。

 さらっと見ましたが、日頃は目の前の仕訳や税務に対応していることが多いですが、会計のベーシックなことを久しぶりに目にして、スゴく新鮮な気持ちになりました。

 普段もシンプルにものごとを考えるということを念頭に置いて仕事に取り組んでいますが、たまには、こういうベーシックなところに立ち返って、シンプルにものごとを考えるということを改めて考えるというのも良いなぁと感じました。

 ちなみに、櫻井通晴氏の書かれた『原価計算<理論と計算>』や『経営原価計算論(増補版)』も、僕の公認会計士としてのベースになっている本です。


金融庁が清流監査法人を処分!

 金融庁は、清流監査法人に対して処分を行いました。

内容は、以下のとおりです。

 金融庁は、令和元年7月5日、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から、清流監査法人(法人番号8011205001626)に対して行った検査の結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告を受けました。
 同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当監査法人に対して公認会計士法第34条の21第2項に基づき、以下の処分を行いました。

                      記

1.処分の概要
(1)処分の対象
名称:清流監査法人(法人番号8011205001626)
事務所所在地:東京都千代田区

(2)処分の内容
業務改善命令(業務管理体制の改善)

(3)処分理由
別紙のとおり、運営が著しく不当と認められるため。

2.業務改善命令の内容
(1)総括代表社員は、組織的に監査の品質を確保する必要性を十分に認識し、社員の職責の明確化、社員会の機能発揮、社員及び職員の経験に依存した業務運営の改善など、実効性のある品質管理のシステムの構築に向け、当監査法人の業務管理態勢を整備すること。
(2)総括代表社員は、審査会の検査及び日本公認会計士協会の品質管理レビューにおいて指摘された不備の原因を十分に分析したうえで改善策を策定及び実施し、改善状況の適切な検証ができる態勢を整備するとともに、監査契約の新規の締結における十分かつ適切なリスク評価、監査実施者に対する実効性のある教育・訓練、審査担当責任者による批判的かつ適切な審査、実効性のある日常的監視及び定期的な検証を実施できる態勢を整備するなど、当監査法人の品質管理態勢の整備に責任を持って取り組むこと。
(3)現行の監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(固定資産の減損会計における兆候判定、株式移転の会計処理、関連当事者取引に関する検討など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。
(4)上記(1)から(3)に関する業務の改善計画について、令和元年11月末日までに提出し、直ちに実行すること。
(5)上記(4)の報告後、当該計画の実施完了までの間、令和2年4月末日を第1回目とし、以後、6か月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

上記の『別紙』の内容は以下のとおりです。

清流監査法人の運営は、下記のとおり著しく不当なものと認められる。

               記

1 業務管理態勢
 当監査法人は、社員5名、非常勤職員を中心とした監査補助者等により構成されているが、総括代表社員を除く社員は、それぞれの個人事務所等の業務を主としており、当監査法人の業務への関与は低く、総括代表社員が品質管理担当責任者を兼務している。
 また、当監査法人は、設立以来、特定の個人により実質的に支配されている企業グループを主な被監査会社とし、その監査報酬は当監査法人の業務収入の大部分を占めている。
 当監査法人の監査業務は、社員2名がそれぞれ審査又は定期的な検証の専任であることから、総括代表社員を含む3名の社員を中心に実施されている。また、監査補助者は主に非常勤職員で構成され、業務執行社員が主査を担当する監査業務もあるなど監査実施態勢は十分ではない。この点について、総括代表社員は、当監査法人の強みを、経験を積んだ公認会計士を基本に監査チームを編成していることであるとし、社員及び職員のこれまでの経験に依存した運営を継続しており、品質管理態勢を十分に整備する必要性を認識していない。
 このような状況において、当監査法人は、日本公認会計士協会(以下「協会」という。)の平成29年度品質管理レビューにおいて限定事項を付されており、総括代表社員は、限定事項とされた関連当事者取引の不備の根本原因を会計基準や監査の基準の理解不足にあると認識している。
 しかしながら、下記2に記載するとおり、その改善は、チェックリストの整備等の対症療法的な対応であり、知識や能力の向上を各自に委ねており、適切な教育・訓練態勢を構築していない。また、限定事項とされた審査態勢や定期的な検証等の実施態勢の改善を検討していない。
 そのため、下記3に記載するとおり、今回公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)検査で検証対象とした全ての個別監査業務の業務執行社員及び監査補助者において、会計基準及び現行の監査の基準が求める水準の理解が不足している状況、職業的懐疑心が発揮できていない状況がみられ、それらに起因する重要な不備を含む不備が広範かつ多数認められている。
 また、総括代表社員以外の社員は、当監査法人の業務運営を総括代表社員に委ね、重要事項の意思決定に十分に関与していない。そのため、財務諸表等の訂正要否や監査契約の新規の締結の審査などの重要事項が社員会に付議されているにもかかわらず、十分に検討されることなく承認されるなど社員会の機能が発揮されていない。
 このように、総括代表社員においては、法人トップとして組織的に監査の品質を確保するという意識に欠けており、当監査法人の監査業務の現状を踏まえた実効的な品質管理のシステムを構築するためにリーダーシップを発揮していない。また、総括代表社員以外の社員においては、当監査法人の業務運営、品質管理のシステムの整備及び運用を総括代表社員に委ね、これに関与するという意識に乏しく、社員としての職責を十分に果たしていない。

2 品質管理態勢
(前回審査会検査及び品質管理レビューでの指摘事項に対する改善状況)
 総括代表社員は、前回審査会検査及び平成29年度品質管理レビューでの指摘事項を踏まえた対応として、全社員及び職員を対象として品質管理レビュー等の結果報告会を開催し、指摘事項を周知するとともに、指摘事項を反映したチェックリストを作成し、業務執行社員が当該チェックリストを用いて改善状況を確認する等の改善措置を指示している。
 しかしながら、総括代表社員は、社員及び職員が会計基準や監査の基準を十分に理解していないことを個別監査業務における不備の根本原因として認識していたにもかかわらず、法人内での指示やチェックリストは、指摘事項に直接対応する対症療法的な内容にとどまっており、認識していた根本原因に対応したものとしていない。
 また、平成29年度品質管理レビューにおいて、「指示と監督及び監査調書の査閲並びに監査業務の審査、定期的な検証」について限定事項とされているが、これに対する改善は、限定事項の理由とされた関連当事者取引を重点的に確認する等の措置のみにとどまっており、総括代表社員は、審査、定期的な検証等の実施態勢の改善を検討していない。
 このように、いずれの取組も不十分であることから、今回審査会検査で検証した個別監査業務の全てにおいて、これまでの品質管理レビュー等での指摘事項と同様の不備が繰り返されている。

(監査契約の新規の締結及び更新)
 当監査法人は、監査契約の新規の締結及び更新に関する方針及び手続を「監査の品質管理規程」に定めているが、業務執行社員予定者の選任、独立性の確認、リスク評価などについて具体的な実施手続を整備していない。
 また、前回審査会検査において監査契約の新規の締結に伴うリスク評価の不備について指摘を受けているが、今回審査会検査においても監査契約の新規の締結に当たり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況に係る検討が不足しており、また、主要な経営者、監査役等の異動をリスクとして識別していないなど、リスク評価が不十分である。
 さらに、限定事項付き結論となった平成29年度品質管理レビューの結果を会計監査人の選任議案の決定権限を有する監査役等に書面で伝達していない。

(監査実施者の教育・訓練)
 監査実施者の教育・訓練を担当する総括代表社員は、前回審査会検査及び平成29年度品質管理レビューにおいて指摘された不備には、社員及び職員の会計基準及び監査の基準の理解不足に起因するものがあると認識している。このような認識の下、総括代表社員は、自ら出席した協会研修のうち業務上重要と判断した研修資料を社員及び職員へのメール等で共有し、また、専門要員の年間40単位以上の継続的専門研修の履修を確認したとしている。
 しかしながら、今回審査会検査においても、会計基準及び監査の基準の理解不足に起因した不備が多数生じており、当監査法人の教育・訓練は実効性のあるものとなっていない。

(監査業務に係る審査)
 当監査法人は、特定の社員を審査担当責任者として選任し、全ての監査業務の審査を担当させている。
 当該審査担当責任者は、審査で気付いた点を監査チームに伝達するにとどまり、最終的な判断を業務執行社員に委ねていること、監査チームの説明に過度に依存し、監査調書に基づいた客観的な検証が不足していることなどから、今回審査会検査において指摘した重要な不備を指摘できていない。
 このように、平成29年度品質管理レビューにおいて限定事項とされた後も、審査担当責任者は、審査の職責を果たしておらず、当監査法人の審査態勢は十分に機能していない。また、総括代表社員は、限定事項とされた後も、このような審査態勢の改善を検討していない。

(品質管理のシステムの監視)
 当監査法人は、特定の社員を定期的な検証担当責任者として選任し、日常的監視及び監査業務の定期的な検証の全てを担当させている。
 当該定期的な検証担当責任者は、日常的監視において、内部規程の内容を十分に確認しておらず、定期的な検証業務においては、会計上の論点を中心に検証し、監査証拠の適切性及び十分性の観点からの検証が不足している。このようなことから、今回審査会検査において認められた内部規程等の整備及び運用状況に係る不備や個別監査業務の重要な不備を看過しており、定期的な検証担当責任者が実施する、日常的監視及び定期的な検証による品質管理システムの監視は不十分である。また、総括代表社員は、定期的な検証について平成29年度品質管理レビューにおいて限定事項とされた後も、このような実施態勢の改善を検討していない。
 このように、当監査法人の品質管理態勢は、前回審査会検査及び品質管理レビューでの指摘事項に対する改善状況、監査契約の新規の締結及び更新並びに監査業務に係る審査に重要な不備が認められるほか、広範に不備が認められており、著しく不十分である。

3 個別監査業務
 総括代表社員を含む業務執行社員及び監査補助者は、会計基準及び現行の監査の基準が求める水準の理解が不足している。そのため、固定資産の減損会計における兆候判定の誤りや株式移転の会計処理の誤りを見落としている事例、関連当事者取引の開示や連結財務諸表に関する会計基準に従った連結範囲の検討が不足している事例などの重要な不備が認められる。
 また、当監査法人の主な被監査会社は、特定の個人により実質的に支配されており、関連当事者間で多様な取引が行われている状況にあるが、総括代表社員を含む業務執行社員及び監査補助者は、関連当事者取引の検討や会計上の見積りの監査などにおいて、職業的懐疑心が不足している。そのため、当該特定の個人との通例ではない重要な取引を批判的に検討していない事例、工事進行基準の適用における会計上の見積りの検討が不足している事例などの重要な不備が認められる。
 上記のような重要な不備は今回審査会検査で検証対象とした個別監査業務の全てにみられる。そのほか重要な不備ではないものの、被監査会社が作成した情報の信頼性を評価していない事例、経営者が利用する専門家の適性・能力及び客観性の評価が不足している事例、不正リスクを識別している売上高の実証手続が不足している事例、監査報告書日後に実施した手続を監査報告書日前に実施したように監査調書に記載している事例など、不備が広範かつ多数認められる。
 このように、検証した個別監査業務において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不十分なものとなっている。

以上

このような状況の監査法人が、上場企業の会計監査をやっていて良いのでしょうか?
毎年、いくつかの監査法人が処分されていると思いますが、オピニオンショッピング(会計監査を受ける企業が、自社にとって都合の良い監査意見を表明してくれる監査法人や公認会計士を新たに選任すること。)の温床とならないこと祈るばかりです。
市場から退場していただかないといけないところは早めに退場していただかないと思いますし、このようなことがあると、公認会計士業界全体の信頼が失われてしまいますので。

金融庁が清流監査法人を処分したことについて、どう思われましたか?


女子中学生にわいせつな行為をしようとした公認会計士を逮捕!

 先日、公認会計士の男が女子中学生にわいせつな行為をしようとしたとして、警視庁に逮捕されました。

強制わいせつ未遂の疑いで逮捕されたのは、東京都調布市の公認会計士(32)です。
公認会計士は5月12日午後5時ごろ、調布市のマンションで帰宅途中の女子中学生がエレベーターからおりたところ、後ろから抱きついて口を塞ぎ、わいせつな行為をしようとした疑いがもたれています。

警視庁によると、2人に面識はなく、女子中学生が悲鳴をあげたため、公認会計士は非常階段から逃げましたが、防犯カメラの捜査で関与が浮上したようです。
取り調べに対し、公認会計士は「間違いありません」と容疑を認めているということです。

後日、PwCあらた有限責任監査法人が、『当法人の職員の逮捕に関するお詫び』という以下のプレスリリースを行っています。
 昨日PwCあらた有限責任監査法人の職員が逮捕されました。詳細は現在調査中であり、事実関係を確認次第、厳正に対処いたします。皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
                                    2019年5月22日
                              PwCあらた有限責任監査法人

本当にこういったことはやめて欲しいですね。
1人の行為が、所属監査法人、公認会計士業界に多大なる影響を与えてしまいます。
先生と呼ばれることの多い士業には、人格や品位などが必要だと思いますね。
PwCあらた有限責任監査法人のプレスリリースも『皆様』になっていますが、まずは被害者の方やご家族に謝罪すべきであると思いますので、このプレスリリースはどうなんだろうと思いますね。
クライアントに向けてリリースしているのでしょうか?

女子中学生にわいせつな行為をしようとした公認会計士が逮捕されたことについて、どう思われましたか?


イギリスの競争当局が4大監査法人の「業務分離」を報告!

 イギリスの競争当局である競争・市場庁は、先日、イギリス監査業界の改革に関する最終報告書を公表しました。
「ビッグ4」と呼ばれる4大監査法人グループについて、監査とそれ以外の業務を組織内で分離するよう求めるのが柱です。
大手4社の寡占が監査の質を下げていると問題視し、上場する大企業には複数の監査法人による共同監査を義務付けることも提言しました。

イギリス政府は、報告書への見解や対応方針を90日以内に明らかにし、法制化の必要性などを判断するようです。

イギリスでは建設大手カリリオンが2018年1月に経営破綻したのを機に、経営悪化を見抜けなかった外部監査人のKPMGなど大手監査法人への批判が強まりました。
競争・市場庁は、2018年12月、利益相反リスクを減らすため監査とそれ以外の非監査業務を組織内で分けたり、共同監査を導入したりする案を示して意見を募っていました。

最終報告書は、これまでの議論を踏襲しました。
まず大手4グループについて、決算書類が正しいか調べる監査業務と、経営や税務戦略を指南するコンサルティングなどの非監査業務を運営上分離するよう求めました。
グループ内で経営や収益管理などを分け、監査部門は監査に集中すべきだと訴えました。

この背景には利益相反の懸念に加え、高収益な非監査部門の存在が監査部門を資金的にも支え、準大手以下の参入を妨げる一因になっているとの問題意識もあるようです。
政界からは別法人として完全に切り分ける「解体」論も上がっていたようですが、急進的な変更はリスクがあるとして踏み込みませんでした。

ロンドン証券取引所に上場する主要350社を対象に、原則として2つ以上の監査法人による共同監査を義務付けることも提案しました。
イギリスでは主要350社の97%の監査を4大法人が行っています。
寡占を打破するため少なくとも1つは4大監査法人以外とし、準大手以下の参入による競争の活性化を促すようです。

競争・市場庁は声明で「市民の生計や貯蓄、年金は監査が高い基準で行われているかにかかっている」と述べ、改革の必要性を強調しました。
一方で、市場関係者からは実効性に疑問の声も出ているようです。
英金融業界団体ザ・シティーUKは「真の監査の質向上につながる証拠はない」とし、急進的な改革で副作用が出ないよう慎重な実施を求めました。

僕は公認会計士で、もともと監査法人に勤めていた人間ですが、個人的には、独立性の観点からは、一般の方々にとっては、同一クライアントに対して監査以外のサービスを提供しているという状況は監査上大丈夫なのだろうかという疑問は生じると思いますので、同一クライアントに対して監査業務以外のサービス提供はやめた方がよいのではないかと思います。
共同監査については、個人的には、反対です。
日本でもあまり行われていないということは効果がないことの表れだと思いますが、監査法人ごとに監査手続きの進め方などに独自のやり方があると思いますが、共同監査になると、それを見せることになり、独自性がなくなっていく(存在意義がなくなる)と思います。
結局、お互いが手の内を見せないことになると、担当を完全に切り分けるだけになると思いますが、コミュニケーションのなさが粉飾等を見落とす原因となると推測されます。
あとは、監査意見や会計処理についてもそれぞれ独自のものがあるでしょうから、監査法人間の意見の対立・調整という監査の本質ではない無駄な時間が増加する可能性があるように思います。

イギリスの競争当局が4大監査法人の「業務分離」を報告したことについて、どう思われましたか?


東芝の監査法人である新日本監査法人に1兆円請求!

 東芝の不適切会計問題を巡り、株主が会計監査を担った新日本監査法人(東京)に損害賠償を求めた株主代表訴訟で、原告の株主側が請求額を約105億円から1兆円に増額したことがわかったようです。
監査法人を訴えた同種訴訟は珍しく、請求額が1兆円に上るのは異例です。

東芝は、20157月、パソコン部門で利益を水増しするなどの不適切会計があったとする外部の第三者委員会の報告書を公表し、3人の歴代社長が辞任しました。
金融庁は201512月~20161月、不適切会計を見抜けなかったとして、新日本監査法人に一部業務停止や約21億円の課徴金納付を命じ、20169月、大阪府内の株主が約105億円の賠償を求めて東京地裁に提訴しました。

ただし、その約3か月後、アメリカにある東芝の原発子会社ウェスチングハウス(WH)が201512月に買収したアメリカの原発建設企業の資産価値が想定より大幅に低かったことも発覚し、東芝は、アメリカの原子力事業で1兆円超の損失を計上する事態となりました。

原告側が問題視するのは、アメリカでの原発建設の遅れに伴ってWH20122013年度に計上した約1,100億円の損失を東芝がすぐには公表しなかった点です。
東芝は201511月に公表したものの、この時にはWHと原発建設企業が買収に合意していました。

原告側は「WHの損失が早く公表されていれば、株主は原発建設企業の買収を認めなかった。公表しないという東芝の判断を追認した監査法人は損失の責任を負う」として、20191月に請求額を増額しました。
これに対し、新日本監査法人は「企業が何を公表するかは監査法人の監査対象ではない」として請求棄却を求めています。

株主代表訴訟は、提訴時の手数料が一律13,000円で、請求額に応じて上昇する通常の民事訴訟よりも巨額訴訟を起こしやすいとされます。
会社法に詳しい上村達男早稲田大教授は、今回の訴訟について、「会社で生じた損失には多くの要因があり、全てを監査法人に負担させようというのは無理がある」とした上で、「1兆円の請求額は根拠に乏しい」と指摘しています。

一方、原告側代理人の弁護士は「監査法人の責任でどれだけ損害が生じたのかを裁判で明らかにすることは、再発防止のためにも意味がある」と話しているようです。

僕自身、公認会計士というのもあるとは思いますが、上村教授のおっしゃるとおりだと思います、
粉飾も第一義的には、東芝に責任があるということをきちんと認識してほしいですね。
当然、会計監査人に責任がないとは思いませんが、こういうことがどんどん出てくると、最近増えている大手監査法人が監査契約を断るというケースがますます増え、いわゆる『監査難民』となる上場企業が増えるのではないかと思います。
世間一般的に、会計監査人側と投資家側の会計監査に対する『ギャップ』があるのは事実だと思いますが、金融庁とか証券取引所とか日本公認会計士協会などが、地道に取り組んでいかないといけないでしょうね。

東芝の監査法人である新日本監査法人に1兆円請求がなされたことについて、どう思われましたか?


日本公認会計士協会が通年でビジネスカジュアルを実施!

 日本公認会計士協会は、これまで、官庁が提唱する温暖化対策への対応として、夏季期間に会館内で執務する役職員の軽装を実施していました。
しかしながら、今後は、通年で「ビジネスカジュアル」を実施するようです。

役職員のビジネスカジュアルに当たっては、『来館者の方々に対し、失礼とならない服装に努めますので、何卒、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。』とコメントしています。

僕自身も、普段お会いしている方はご存知かと思いますが、監査法人トーマツ時代に、夏場はビジネスカジュアルだったこともありますが、年がら年中、ビジネスカジュアルで、スーツを着るのは年間数日です。

昔は、スーツや靴やネクタイやシャツに結構お金をかけていましたし、スーツが嫌いなわけではないのですが、特に必要もないのではないかと思っています。
クールビズでも、上着を着ず、ネクタイをしない(クールビズにふさわしくないようなシャツ)だけなのは、中途半端さが個人的には大嫌いで、やめた方が良いと思っています。
服装で仕事をするわけではないので、こういった流れがどんどん広がり、ビジネスカジュアルが普通という時代に早くなってほしいですね。

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監査法人トーマツが罰金2億円を支払い!

 アメリカ証券取引委員会(SEC)は、先日、僕の出身の監査法人トーマツが会計監査の独立性ルールに違反し、200万ドル(約2億2,000万円)の罰金を支払うと発表しました。
トーマツ元幹部は同法人が監査を担当する金融機関の口座に一定基準を上回る金額を預けていました。
「独立性が損なわれた状態」で監査報告書が提出されていた上に、法人内の監督体制も不十分で、今回の処分につながったようです。

SECの発表によると、トーマツの元最高経営責任者(CEO)である天野太道氏が独立性ルールに違反しました。
金融機関名は公表されていませんが、アメリカニューヨーク証券取引所に上場する三菱UFJフィナンシャル・グループとみられます。
三菱UFJフィナンシャル・グループが2015年にSECに提出した資料で、トーマツ幹部の預金残高が限度額を超え、独立性ルールに抵触していたと開示していました。
天野氏、は2015年7月末にトーマツのCEO職を辞任しています。

SECのルールでは会計監査の独立性を保つために、監査法人の幹部や監査チームのスタッフが、監査担当企業の銀行口座に一定水準を超す金額を預けないように求めています。
日本企業の場合、預金保険機構の保険限度額(1千万円)がこの水準に当てはまります。
天野氏は三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の銀行に口座を持ち、預金額が一定期間、1千万円を超えていたとみられます。
この間、三菱UFJフィナンシャル・グループは、トーマツの監査報告書を添付してSECに財務書類を提出していた。

SECによると、天野氏の違反は2014年3月にトーマツ内で発見されましたが、監査先の金融機関に伝達されたのは2015年に入ってからでした。
さらに別の調査によって、トーマツに所属する計88人が「独立性ルール」に違反していたことが判明したそうです。
SECはトーマツの違反発見後の対応のまずさや、ずさんな監督体制を問題視し、今回の重い処分につながったようです。

トーマツは「品質管理態勢への影響はない。今後とも監査品質の向上に最善を尽くす」とコメントしています。

独立性が重要な監査法人のトップがこれでは、処分されて当然のように思います。
僕が勤務していた時から、こういったことはチェックするシステムがありましたが、甘かったんでしょうね。
幹部の方々はたくさん報酬をもらっていらっしゃるでしょうから、忙しくて数か月放置しておくとすぐに超えてしまうのかもしれませんね。
それについては、元々、報酬の振込口座としてクライアントを除くことにしておけば良いかと思いますが。

監査法人トーマツが罰金2億円を支払ったことについて、どう思われましたか?


タクシー運転手を蹴った公認会計士を暴行容疑で逮捕!

 タクシー運転手の男性に暴行を加えたとして、神奈川県警緑署は、先日、暴行容疑で、横浜市緑区長津田町の公認会計士(49)を逮捕したようです。
公認会計者は、「覚えていない」と供述しているそうです。

逮捕容疑は、2019日午前2時5分ごろ、自宅近くの路上に止まったタクシー車内で男性運転手(54)を蹴ったとしています。

神奈川県警緑署によると、公認会計士は東京都千代田区内からタクシーに乗車し、自宅付近にさしかかったため寝ていた公認会計士を男性運転手が起こそうとした際、足蹴りしたそうです。
男性運転手が取り押さえて通報し、駆け付けた同署員に引き渡しました。

こういったことで『公認会計士』の名前が出ることは、残念なことです。
人格なども大事ですね。
おそらく、この方はコンサル会社の執行役員だと思いますが、そもそもこういう方がコンサルをできるのでしょうか?
あとは、公認会計士協会のホームページから検索すると、平成29年度は、継続的専門研修(いわゆるCPE)の履修義務が不履行になっていますね。

タクシー運転手を蹴った公認会計士が暴行容疑で逮捕されたことについて、どう思われましたか?


1億8千万円横領容疑で弁護士を逮捕!

 土地建物管理会社から依頼を受けて弁護士の業務として預かっていた計約18,200万円を着服したとして、大阪地検特捜部は、先日、業務上横領容疑で、大阪弁護士会所属の弁護士(66)を逮捕したようです。
大阪地検特捜部は認否を明らかにしていません。

逮捕容疑は、土地建物管理会社が所有するビルの賃料相当損害金を管理する業務を行っていた20135月~201412月、19回にわたり、同社から預かっていた賃料相当損害金を、預かり金口座から出金して流用したり、自分個人名義の口座に振り込んだりして計約18,200万円を着服したとしています。

弁護士をめぐっては、大阪弁護士会が20183月、預かり金をめぐるトラブルの調査に誠実な回答をしなかったとして、業務停止3か月の懲戒処分にしたと発表していました。

大阪弁護士会によると、弁護士が建物の明け渡しや賃料の支払いをめぐる訴訟の代理人をしていた2012年~2014年、相手方が賃料として預かり金口座に振り込んだうち、約9,200万円の行方が分からなくなったようです。

大阪弁護士会が調査に乗り出したようですが、弁護士は口座の取引明細証明書の一部を黒塗りにして大阪弁護士会に提出し、開示を求めても応じなかったりしたため、懲戒処分を決定したそうです。

毎年何人かこのような弁護士のことが新聞などに出ていますが、専門家としては、悲しくなりますね。
信用で成り立っている専門家ですので、一人の行為が、業界全体の信用失墜につながりますからね。
専門家として、プライドを持って仕事をしてほしいですね。
仕事を頼まれる方も、誰を信じていいのか分からなくなると思いますので。

18千万円横領容疑で弁護士が逮捕されたことについて、どう思われましたか?


公認会計士の継続的専門研修における「会員の研修履修結果の開示」!

 公認会計士は、導入されてかなり経ちますが、継続的専門研修制度(いわゆるCPE制度)は、公認会計士としての使命及び職責を全うし、監査業務等の質的向上を図るため、公認会計士の資質の向上及び公認会計士が環境の変化に適応するための支援を目的とし行われ、会員は所定の単位数の取得を義務付けられています。

日本公認会計士協会の会員の義務達成率は平成29年度では98.8%となっており、大多数の会員が義務を達成し、その資質の向上に役立てています。

この度、公認会計士に業務を依頼する際の参考に資するための情報充実の観点から、会員の研修履修結果が開示されることになりました。

会員の研修履修結果については、公認会計士等検索システムで会員個人を検索していただいた画面で確認することができます。

僕も自分のものを確認してみましたが、開示されるようになっています。
僕自身も、年間に、公認会計士や税理士向けの研修だけでなく、かなりの数の研修を受講していますので、良い試みではないかと思います。
これを見て、この人に仕事を頼もうなどといった考えが働くかどうかは疑問ではありますが。

公認会計士の継続的専門研修における「会員の研修履修結果の開示」について、どう思われましたか?


ユニクロの柳井氏が記念式典で講演し「公認会計士がハンコを押す人になっている」!

 ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、先日、日本公認会計士協会が開催した記念講演で、公認会計士に対して「経営者と経営課題を議論できるパートナーになってもらいたい」と語った。人工知能(AI)の発達などで会計業務が標準化される可能性について言及したうえで、会計知識の経営への活用を参加者らに呼びかけました。

 日本公認会計士協会が東京国際フォーラム(東京・千代田)で開いた「公認会計士制度70周年記念式典及び記念講演」に登壇しました。

柳井氏は、公認会計士が「(監査業務で)ハンコを押す人になっている」と指摘しました。
AIの発達などで「単純な計算や分析は必要がなくなる」との見通しを示したうえで、経営者との協調を呼びかけました。

柳井氏は、また、国内企業の経営力が劣化しているとの持論を展開し、その例として「一番もうかっている半導体の部門を売って時代遅れの重厚長大な部門を残す経営判断はおかしい」と半導体メモリー子会社を売却した東芝を挙げました。

近くで開催されれば行ったのですが、流石に、柳井さんは的をついたことをおっしゃいますね。
日本公認会計士協会は、AIが発達しても、業務に影響がないことをアピールしたいのでしょうが(笑)。
僕が、監査法人にいた頃から、指導はしてはいけないということがあったので、疑問は感じでいました。
本当に、『ハンコを押す人』になっていると思います。
やはり、監査に関すること以外も経営者と協議をして、色々なことに対して発言・指導することによって、存在感が増し、クライアントとの良好な関係が構築されるのではないかと思います。
当然、監査を行う公認会計士に、幅広い知識が要求されます。

ユニクロの柳井氏が記念式典で講演し「公認会計士はハンコを押す人になっている。」と述べられたことについて、どう思われましたか?

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急拡大でひずみが生じた太陽監査法人が業務改善計画を提出!

日本経済新聞によると、太陽監査法人は2024年1月末までに金融庁に業務改善計画を提出します。

ディー・ディー・エス(DDS、2023年8月に上場廃止)に対する監査に重大な不備があり昨年12月に行政処分を受けていました。

企業の監査人交代の受け皿役を積極的に引き受け、大手法人の一角をしのぐ規模まで成長してきた太陽監査法人の拡大路線は方針転換を余儀なくされます。

2023年12月下旬、監査業界に激震が走りました。

「重大な虚偽記載がある財務諸表を虚偽がないと証明した」として、金融庁が太陽に対する処分を公表したためです。

処分内容は2024年1〜3月における新規契約締結の停止や業務改善命令などで、9,595万円の課徴金納付命令も出ました。

監査法人への課徴金納付命令は会計不正があった東芝を担当していた新日本監査法人(現EY新日本監査法人)が2015年12月に受けて以来です。

公認会計士法上の課徴金制度が導入された2008年以降で2例目と、ほぼ例がないのです。

事の発端はDDSの会計不正です。

2022年5月に売上高の過大記載の疑いが発覚しました。

貸倒引当金繰入額の過少計上なども明らかになり、訂正報告書の提出を求められていました。

DDSは2022年8月12日に太陽監査法人の監査意見付きの訂正報告書を提出しました。

しかしながら、当期と前期の繰越利益剰余金の差額が損益計算書の最終損益と整合しないなど多くの虚偽記載があったのです。

実は太陽監査法人は、DDSの訂正報告書のドラフト段階で修正が必要な箇所があることを認識しており、修正が必要な箇所もDDSに伝えていました。

ところが、DDSは修正しないまま提出を強行してしまったのです。

太陽監査法人の石井雅也経営管理本部長は「クライアントへの指導力不足が露呈した」と語っています。

今回の失敗はいくつもの要因が重なっています。

DDSは度重なる不正で経理人材の退職が相次ぎ、正しい財務諸表を作る能力が著しく下がっていました。

また、訂正報告書の提出がこれ以上遅れれば、上場廃止になると焦っていました。

太陽監査法人の担当会計士は「指摘部分は当然修正されるはず」と考え、業務効率化のため事前にレビュー報告書を渡していたのです。

青山学院大学大学院の町田祥弘教授は、太陽監査法人について「中身を確認せずレビュー報告書を事前に渡すなど言語道断だ」と話しています。

金融庁の担当者も「簿記3級程度の基本的部分の見逃しで到底考えられない」と憤っているようです。

太陽監査法人が規模を急拡大させてきたことへのひずみを指摘する声もあるようです。

上場企業監査顧客数は350社と2019年比で6割増えました。

監査業界で太陽は「ビッグ4」と呼ばれる大手に次ぐ「準大手」の位置づけですが、上場企業顧客数だけでみれば大手の一角のPwC Japan(約200社)より多いのです。

ある大手法人の公認会計士は、「公認会計士の負担が増すなか太陽監査法人側の顧客受け入れや従業員の教育体制が十分だったか疑問だ」と話しています。

太陽監査法人がリスクの高い会社の監査の受け皿になっていたという事実もあります。

5〜6年前から企業が会計監査人を大手法人から準大手や中小に交代する動きが加速しています。

金融庁傘下の公認会計士・監査審査会によると2022年度の監査シェアは準大手と中小法人が合計で40%を超えました。

人手不足に悩む大手法人は、不正リスクが高く採算も厳しい中堅中小企業の監査を絞る、実質的な顧客選別を進めてきたのです。

大手法人から切られた企業にとって太陽監査法人は頼れる先で、金融庁などが課題視する「監査難民」問題の緩和に一役買っていました。

DDS事案を教訓に、太陽監査法人は監査や審査体制の見直しを始めました。

顧客のガバナンスリスクに応じた適切な人員配置ができるようにします。

さらに、今後はリスクの高い企業の監査契約にはより慎重になる公算が大きいでしょう。

よって、拡大路線にはブレーキがかかりそうです。

駆け込み寺的な役割を担っていた太陽監査法人が選別を始めれば、国が進める新興企業などの育成に支障がでる可能性が高いです。

しかしながら、DDSのように「上場の意義を理解していない企業が存在しているのも事実」(町田教授)です。

監査インフラが有限である現実を踏まえ、野放図な上場企業増加も見直す必要があるでしょう。

事前にレビュー報告書を渡すというのは完全にアウトですね。

太陽監査法人が駆け込み寺みたいになっていたのは知りませんでしたが、駆け込み寺となる監査法人が今後出てこないことを願いたいですね。

監査法人が会計監査を引き受けないような会社は、何かしらの問題があるということでしょうから、上場にふさわしくない会社ということでしょう。

急拡大でひずみが生じた太陽監査法人が業務改善計画を提出することについて、あなたはどう思われましたか?


金融庁が太陽監査法人に業務停止命令及び担当公認会計士2人も処分!

日本経済新聞によると、金融庁は、先日、準大手の太陽監査法人(東京都港区)に対して契約の新規締結を3か月間停止する業務停止命令を出しました。

財務諸表で多くの虚偽記載をしていたディー・ディー・エスの監査で、注意を怠り虚偽記載がないと証明したのが理由です。

業務停止の期間は2024年1月1日から3月31日までです。

担当した公認会計士2人にも業務停止6か月間の懲戒処分を出しました。

2人の公認会計士は財務書類の間違いが初歩的なものにもかかわらず注意を怠り、適正であると監査証明していました。

さらに、チェックする立場にあった審査担当の社員1人に対しても監査業務の審査に関与することを3か月間禁止する処分を出しました。

この社員は会計士の評価内容を十分に検証しないまま対応を終えていました。

太陽監査法人には、業務管理体制の改善を求める業務改善命令も出した。

2024年1月31日までに業務の改善計画を提出し、直ちに実行することを求めました。

太陽監査法人への行政処分は、処分基準を制定した2005年以降で初めてです。

太陽監査法人は4大監査法人(トーマツ・新日本・あずさ・あらた)に次ぐ準大手の監査法人です。

上場企業の監査数で第4位で、2023年9月末時点でプライム上場企業118社を含む計約350社の上場企業を監査しています。

大手がクライアントを減らし、準大手が増やしている中、準大手の中でも大きな太陽監査法人がこのような実態であれば、会計監査に対する社会的信用を失うことは明らかですので、本当に勘弁してほしいですね。

そういうことを考えると、投資家の視点で考えると、大手が会計監査をやっている企業がやはり信用できますね。

個人的には、処分は甘すぎると思いますし、このような監査法人は解散して、きちんと会計監査をできる監査法人が上場企業の会計監査をすべきだと思います。

金融庁が太陽監査法人に業務停止命令及び担当公認会計士2人も処分したことについて、あなたはどう思われましたか?


メガネスーパー運営のビジョナリーHDの監査人が結論の不表明!

日本経済新聞によると、眼鏡店「メガネスーパー」運営のビジョナリーホールディングスは、先日、2022年5月〜2023年1月期の四半期報告書について、PwCあらた有限責任監査法人から結論を表明しないとの報告書を受け取ったと発表しました。

第三者委員会を設立し前社長の利益相反行為を調査しましたが、影響額などを示す詳細情報を得られていないようです。

第三者委は前社長の利益相反行為について業務委託先など25社を調査しました。
前社長が一部の取引先で「意思決定機関を支配している」とし、ビジョナリーHDが一部取引先から不合理な賃料増額や業務実態が確認できない費用を請求されている可能性を指摘しました。

ところが、ビジョナリーHDは取引先から必要な情報を入手できず、先日発表した決算短信で「重要な虚偽記載が存在する可能性がある」と記載しました。
PwCあらたは「未発見の虚偽表示があるとすれば影響は広範囲である。結論を表明する十分な証拠がなく、重要な修正が必要か判断できなかった」としています。

ビジョナリーHDは前社長らによる利益相反行為の影響を精査するため、3月に予定していた決算発表を延期していました。
四半期報告書の提出遅れから東京証券取引所の上場廃止基準に抵触する恐れがある「監理銘柄」に指定されていましたが、6月14日付で解除されました。

2022年5月〜2023年1月期の連結純利益は9,100万円でした。
なお、前期の同期間は4億200万円の赤字でした。

前社長側が制限などしているようですが、元々は、監査法人の通報窓口に通報があったようです。
正義感の強い方が社内におられるというのは、ある意味、素晴らしい会社なのかなぁと思います。
嘘の通報がたくさん行われるようになると問題はあるかと思いますが、もっともっと上場企業で通報が普通に行われ、有効なものになればいいなぁと思った1件でした。

メガネスーパー運営のビジョナリーHDの監査人が結論の不表明だったことについて、あなたはどう思われましたか?


中小監査法人を登録制で選別!

日本経済新聞によると、上場企業の会計監査において役割が増す中小監査法人の選別が進みそうです。
監査担当を大手から替える動きが目立つ一方、ずさんな監査体制で行政処分を受ける中小は少なくありません。
金融庁は上場企業の監査を担うための登録制度を法律で定め、情報開示などを強化する方針です。
自主規制団体の日本公認会計士協会が登録制をどの程度厳格に運用できるかが焦点となっています。

監査法人のあり方を巡り、金融庁は公認会計士法などを改正し、自主規制の枠組みにとどまる登録制を法律で定める方針です。
政府は2022年3月に改正法案を国会に提出し、2022年度内の施行を目指しています。

金融庁は2017年に策定した「監査法人のガバナンス・コード」などに基づき、監査の品質向上や透明性の確保の徹底を求めます。
登録制を運用する日本公認会計士協会の手塚正彦会長は「情報開示を強化し、各事務所の強みや特徴を理解してもらうことが重要」とした上で、「重大な不備があれば、上場監査マーケットから退場してもらう」と断言しています。

上場企業を監査する中小監査法人は約120あります。
100人超の規模の法人がある一方、個人で事務所を開き、共同で監査する場合もあります。
IT(情報技術)資源も法人間でばらついており、新しいビジネスへの対応でも情報量に差があります。

中小監査法人では近年、行政処分に至る事例が相次いでいます。
2021年8月、原会計事務所は金融庁から1か月の業務停止命令を受けました。
2020年11月には大手門会計事務所に対して同様に5か月の業務停止命令が下りました。

金融庁幹部は経営陣の意識次第としながらも「企業との癒着が起きやすく、組織的監査も機能しにくい」と話しています。
「一部の監査法人は、明らかに身の丈に合わない量の監査業務を引き受けている」とも指摘しています。

応和監査法人(東京都千代田区)はIT専門担当3人を含む約40人で上場企業9社を担当しています。
大手監査法人出身で総括代表の沢田昌輝氏は「監査業務の本質は規模で変わるものではない」とする一方、「中小は特に問題が起こった際に、ひとくくりで見られる」と語っています。
優秀な人材の確保も「大手に比べると難しい」と指摘しています。

中小監査法人の役割自体は増しています。
公認会計士・監査審査会の報告書では、企業が監査担当を大手監査法人から中小監査法人に替えた件数は2021年6月までの1年間で87件と前年の2倍以上でした。
大手監査法人は手数料などコストが高くなっています。
シェアでは大手がなお7割弱(社数ベース)を占めていますが、中小のシェアは拡大傾向が続いています。

情報開示の強化など登録制の厳格運用で中小監査法人の選別は進む可能性が高いでしょう。
企業が自らに適した監査法人を選びやすくなり、財務情報の信頼性もより高まります。

ただし、日本公認会計士協会が実効性のある運用ができるか懐疑的な見方もあります。
2016年度以降に会計士協会が登録を取り消したケースは2件しかありません。
日本公認会計士協会が甘い評価を下せば、登録制の法定化は意味をなしません。

監査業界は問題が起こるたびに規制強化の議論が出ますが、規制対応で負担がかさみ、業務に支障をきたせば本末転倒です。
登録制で自浄作用を発揮できるか、監査人の自覚が改めて問われています。

少し前の伝説の監査法人のような駆け込み寺的存在になっている監査法人が存在するのも事実だと思いますし、監査法人が処分を受けたとしても、同じようなメンバーで新しい監査法人を作っているケースもあるのではないかと思います。
あと、たまに、監査法人のホームページを見たりしますが、代表者の経歴を見て、このような業界の経歴の浅い人がトップの監査法人が上場企業の会計監査をやっていいのかと疑問に思うことがあります。
結局、誰かが問題を起こすと、公認会計士の信頼が失われることになりますので、実効性のある運用がなされることを期待したいと思います。

中小監査法人を登録制で選別することになることについて、どう思われましたか?


トーマツが不正会計リスクをAIで“監査”し過去の不正企業との近似率を計算!

ITmediaによると、デロイトトーマツグループの監査法人トーマツは、先日、AI技術を活用して不正会計のリスクを予測する「不正検知モデル」を開発したと発表しました。

AIによる監査の高度化を目指すそうです。

2005年以降に公開された有価証券報告者の財務データや、為替レート、物価指数といった市況データをAIに学習させました。

対象企業・勘定科目の財務データから不正企業との近似率を「不正スコア」として算出します。

計算に影響を与えた項目など、スコアの理由を表示できるほか、類似度の高い不正企業の事例も参照できます。

トーマツは2022年1月から不正検知モデルを本格導入しました。

今後2年間で100社以上の監査先で活用し、入手した財務データは同意を得てAIの学習データとして使うとしています。

AIが馴染む仕事かもしれませんが、元トーマツの人間で、会計監査をしていた僕としては、個人的には、監査人としての経験からくる直感というものがとても重要だと思っています。
もちろん、AIも使うということは否定しませんが、AIに頼りすぎるのもどうかと思います。
会計監査の報酬は、現場での時間がベースとなるでしょうから、クライアントの見えないところで使っている時間はチャージしにくいでしょうから、監査報酬の値下げに繋がる可能性もあるのではないかと思っています。
また、監査人があまり考えず、機械的な判断になってしまうのではないかと危惧しています。
もちろん、監査法人は人手不足や働き方改革にも対応しないといけないことは重々承知ですが、直感とAIをうまく組み合わせて効率的な監査ができるようになり、不正が少なくなればいいなぁと思います。

トーマツが不正会計リスクをAIで“監査”し過去の不正企業との近似率を計算するようになったことについて、どう思われましたか?


金融庁が質向上を狙い監査法人登録の法制化を検討!

時事通信によると、金融庁は、先日、企業の会計監査を行う監査法人に関する論点整理案を有識者会議に提示しました。

監査法人の登録制度について「法律に基づく制度の枠組みを検討する必要がある」と指摘しています。

現在は日本公認会計士協会による自主規制としての登録制度がありますが、中小監査法人を含め、上場会社の監査の質を向上させるため、法律に基づく新制度を検討するようです。

上場会社の監査を担う中小監査法人は増加傾向にあります。

しかしながら、企業側の事業規模拡大に十分対応できていないとの見方があります。

論点整理案では、中小監査法人も上場会社の監査に十分な能力・体制の確保が必要だと強調しています。

問題を起こした監査法人のパートナーが新しく監査法人を作ってパートナーとなり、監査法人は変わったものの実態は同じみたいな案件もありますし、金融庁の検査を受けた監査法人が処分されたケースで、指摘内容を見てみると、こんなところが上場企業の会計監査をやっているのかと思うことがあります。
公認会計士や監査法人の信頼性を担保し、会計監査の重要性を認識してもらうには、質の向上は避けることができないと思います。
金融庁がどうするのかは分かりませんが、非常に良いことだと、個人的には思います。

金融庁が質向上を狙い監査法人登録の法制化を検討していることについて、どう思われましたか?


公認会計士が帳簿や領収書を在宅チェックする「リモート監査」!

日本企業の2020年3月期決算の監査業務が大詰めを迎えています。
今年は、監査法人の会計士が在宅で企業の帳簿や領収書をチェックする「リモート監査」が広がりました。
公認会計士が新型コロナウイルスに感染し、担当企業の決算や株主総会に影響するのを防ぐためです。
ただし、効率低下は避けられないでしょう。
書類の電子化や期末直後に集中する業務の分散など課題も浮き彫りになりました。

企業は株主総会の招集通知や有価証券報告書に損益計算書などの計算書類を掲載します。
正確さを担保するために公認会計士または監査法人による会計監査が欠かせません。
法律上は必要のない決算も会計監査を終えて臨むことがほとんどです。

契約書や請求書などの電子化が進んでいない企業の監査では、公認会計士が会社を訪れて資料を直接確認し、会社が報告する決算資料と照らし合わす作業が必要でした。

今年は新型コロナの影響で企業への訪問が難しくなり、監査法人は「リモート監査」で対応しています。
公認会計士は1人が複数企業の業務を掛け持ちします。
従来のような企業訪問を続ければ感染リスクが高いうえ、オフィスで監査法人内に濃厚接触者が増えれば監査業務が滞りかねません。

大手のトーマツは2月末から、原則的にオフィス作業を在宅勤務に切り替えました。
在宅で監査ができるよう上場企業など顧客企業900社に携帯端末の配布も始めました。

企業の経理担当者などが領収書や契約書など、公認会計士の確認が必要な書類を撮影し画像を送ります。
送り先が設定されており、誤送信がありません。
データは端末に残らず、情報流出リスクを抑えています。

アメリカのアップルの多機能携帯端末「iPodタッチ」に独自開発のアプリやセキュリティー対策ソフトを加えました。
1社につき1台は無料で、2台目以降は1台あたり2万9,000円で貸し出しています。

公認会計士は1社当たり数千枚の書類照合作業が在宅でできます。
国井泰成包括代表は「顧客企業と監査法人双方の負担軽減にもなる」と期待しています。
トーマツが属する世界のデロイトグループでも初めてで、今後は海外にも広がる可能性があります。

EY新日本監査法人は監査先企業とオンラインでデータをやり取りするためのポータルサイトを活用しています。
2018年ごろから利用を始めました。
上場、非上場あわせて約3,800社の顧客企業のうち630社程度が利用しています。
3月末にもある上場食品メーカーが採用を決めました。

顧客が使うポータルサイトは、EY新日本の会計士が業務で使うシステムと連携しています。
各公認会計士が自分に割り当てられた業務のために該当ページを開くと、企業側がアップした資料から必要なデータだけが自動的に表示される仕組みです。
EY新日本は2月末よりオフィス業務は原則在宅にしました。

もっとも監査業務全てをリモートに置き換えられるわけではありません。
紙の契約書や請求書などはPDFデータをいったん参照しますが「改ざんがないか最終的に現物を確認する作業は残る」(EY新日本の片倉正美理事長)。
各監査法人は最小限の人数で会社を訪問しています。

遠隔作業は手間がかかる面もあります。
大手監査法人に所属する30代の公認会計士は「対面で同じ資料を突き合わせてやり取りするのに比べると意思が伝わりにくい」と語っています。
在宅勤務は経験が少ない若手公認会計士にとってベテランの指導を仰ぎにくい面もあります。

「現場では作業効率が20%程度落ちている」(日本公認会計士協会の手塚正彦会長)といい、作業の遅れから決算発表を当初予定から延期する企業が続出しています。

監査業務が決算期末後に集中するという問題がコロナでより顕在化しました。
一つの解決策は「常時監査」です。
企業の基幹システムと監査システムを常に接続し、人工知能(AI)も活用しながら不正の有無をリアルタイムで確認するものです。
業務の平準化と訪問機会の減少につながるでしょう。

EY新日本が導入を検討しており、AIを使った監査ツールの開発人材を3年後に2.5倍の75人に増やす予定です。

会計監査は、担当者の態度や話しからおかしいなぁと思うこともあるでしょうし、質問することもたくさんあります。
それゆえ、在宅になると時間もかかりますし、不正などを見落とす可能性も高くなるでしょう。
一方で、現金や受取手形や有価証券や預金証書などの現物を確かめたり(いわゆる実査)、実地棚卸の現場に出向いて状況を把握したり、現物を確かめたり(いわゆる立会)することは、監査手続上、非常に重要なものとなるため、在宅では不可能な手続も存在します。
また、上場企業の場合、一つの部屋で数人が数週間監査を行っていることが多いため、感染しやすい環境にあるかと思います。
窓がない部屋のことも多いですから。
今回の新型コロナウイルス感染症は会計監査を根本的に見直す機会になるかもしれませんね。
ただし、会計監査は、担当者の単価×見積時間の積み上げによって監査報酬が決まるでしょうから、在宅やAIによる会計監査などが増えると、見積時間がクライアント側には感覚的に分かりにくくなるかもしれませんので、監査報酬の交渉が重要性を増すかもしれませんね。

公認会計士が帳簿や領収書を在宅チェックする「リモート監査」について、どう思われましたか?


プリントネットが『公認会計士等の異動に関するお知らせ』を一部変更!

 プリントネットというJASDAQに上場している企業が、先日、「公認会計士等の異動に関するお知らせ」というプレスリリースを一部変更しています。
文章は、以下のとおりです。

(訂正)「公認会計士等の異動に関するお知らせ」の一部訂正について

 2019年10月24日に開示いたしました「公認会計士等の異動に関するおしらせ」の記載内容について、下記のとおり訂正させていただきます。

                 記

1.訂正の理由
当社が2019年10月24日に開示いたしました「公認会計士等の異動に関するお知らせ」の記載内容につき、退任する有限責任監査法人トーマツより、訂正の依頼が本日付けであったため、その訂正を行うものであります。

2.訂正の内容
 訂正箇所には下線を付して表示しております。
 2ページ「6.異動の決定または異動に至った経緯」

<訂正前>

当社は、監査体制に疑念を抱く点並びに近年の監査報酬が増加傾向であることなどから、公認会計士等の評価・見直しを行うべきと考え、監査役会において複数の監査法人と検討してまいりました。

<訂正後>
 当社は、監査証明が出されている期より以前の期における監査体制に不備があったこと、また、近年の監査報酬が増加傾向であることなどから、公認会計士等の評価・見直しを行うべきと考え、監査役会において複数の監査法人と検討してまいりました。

2ページ「7.6.の理由及び経緯に対する意見」
(1)退任する公認会計士等の意見1行目
<訂正前>
 特段の意見はない旨の回答を得ております。

<訂正後>
 退任する公認会計士等からは、「監査報酬に関し合意するに至らなかったため、任期満了により退任する旨申し出たものであります。なお、当監査法人は所定の品質管理体制のもと適切に監査を実施しております。」との回答を得ております。

                                     以上

監査法人に対する不信感はあったのでしょうが、監査法人の意見も聞かず、プレスリリースするというのもどうなんでしょうね。
『監査証明が出されている期より以前の期における監査体制に不備があったこと』というのもよく分かりませんが。
まぁ、あまり会社と監査法人の関係性が良くはなかったということなのでしょうけど。
個人的には、最近では、監査法人変更の理由にすごく興味がわきます。
会社もきちんと理由を書き、監査法人もそれに対する意見をきちんと書くということが、投資家のためになるでしょうね。

プリントネットが『公認会計士等の異動に関するお知らせ』を一部変更したことについて、どう思われましたか?


現場を衰退させる形式主義!

 日本経済新聞によると、行き過ぎた形式主義が現場の思考停止を招いているようです。
不祥事が起きるたび新たな制度やルールが作られ、それらすべての規則を守ることを目的化してしまい、現場力の著しい低下を招いているようです。

企業統治(コーポレートガバナンス)の強化は大切ですが、実態はどうなのでしょうか?
本来、社外役員に求める能力やキャリアは企業ごとに異なるはずですが、知名度や性別、資格など形式要件だけで選定する企業も少なくありません。
機関投資家が画一的な形式基準で評価することも一因です。
担当する企業数が少なければいいというものではありません。
むしろ少なすぎれば1社当たりの報酬に対する依存度が高まり、言いたいことが言えない環境を作ることになってしまいます。

規制当局による検査の在り方も同様です。
実態を見よう、事業性を正しく評価しようと号令がかかるのです。
ただし、マイナスの評価基準は明確でも、プラスの基準は示されていません。
検査結果次第で人事評価を受ける現場にとって、いい仕事やリスクを取って成功した時、それを評価する基準が無ければ、顧客や社会と向き合い議論などできません。
その結果、検査のみに視点が行ってしまいます。

現場にも問題があります。
コンプライアンス(法令順守)強化により、マニュアルなどの整備が進み、ルールやルーティンを守りさえすればいいという組織は責任をとらない楽な仕組みです。
しかしながら、目先の手順や仕組みに依存していては、本質を理解する力や物事を考える力は大きく衰退するのです。

専門家も同じです。
公認会計士は『会計監査六法』に基づき監査を行いますが、20年前までは1,182ページだったものが、今では3,168ページに達します。
監査を取り巻く環境は厳しくなり、厳格な対応が求められています。
その結果、例えば棚卸しの監査時に現品の記録確認に気を取られるあまり、在庫管理状況の確認を失念するという具合に本質的な問題を見逃すことになりかねません。

ガイドラインやマニュアルなどへの依存は責任の所在を分散させ、組織的に動かすには便利な手段です。
しかしながら、職場での対話や各人が考えたり、五感で感じ取ったりという人間本来の能力を低下させているのです。
洞察力、思考力、対話力といった能力は一旦失われてしまうと容易には取り戻せません。
経済環境が好調な時こそ、コストと時間をかけてでも人を育てるという視点が不可欠でしょう。

このBlogでも何度か書いていると思いますが、僕が監査法人を辞めた理由の一つは、不祥事があり、金融庁の検査のための書類作りが増えたことにあります。
監査手続きとは直接関係のないような作業が増え、誰のために監査をしているのだろうと疑問がわいたからです。
当時以上にその作業は増えていると推測しますし、今も本質的に変わらないですね。
近年、『会計監査六法』を見るたびに、以前は『会計監査小六法』だったのになぁとか、実際にはページ数も増えているし、金融用・学校法人用・非営利法人用など種類も増えているなぁと思います。
形式にとらわれすぎて、本質を見落とさないようにして欲しいですね。

現場を衰退させる形式主義について、どう思われましたか?


「本3月期決算に係る監査の実施に当たって」の公表!

 日本公認会計士協会は、2019年03月27日付けで、「本3月期決算に係る監査の実施に当たって」を公表しました。

 内容は以下のとおりです。
 本3月期決算に係る監査の実施に当たって企業活動の複雑化・グローバル化が加速する中で、企業が作成する財務諸表は、様々な立場の人がその信頼性に注目しています。このため、財務報告の信頼性を担保するための監査の役割は、一層重要性を増しています。加えて、監査基準の改訂によるKAMの導入、通常とは異なる監査意見等に係る対応についての議論など、昨今の監査の信頼性向上への取組からも明らかなように、従来にも増して、ステークホルダーからの監査に対する期待も高まっています。
 一方で、近時においても盛んに報道されているとおり、企業の不正が後を絶ちません。また、海外でも会計不正やその監査を巡る問題を受けて、監査の信頼性を更に向上させるための議論が行われています。
 当協会では、監査業務改善のために、毎年監査業務審査会の審査内容を参考にした『監査提言集』を公表しています。この『監査提言集』では、監査人が心掛けるべき「11の提言」を記載しています。
 3月期決算に係る監査の繁忙期を迎えるに当たり、会員各位には引き続き、「11の提言」も有効に活用し、職業的懐疑心をもって、監査の基準に従いリスク・アプローチに基づく監査の実施に努めるようお願いします。

以 上

 こういう文書を出さないといけない状況であるということ自体、残念な気がしますね。
ここでは書きませんが、『11の提言』も、こんなこと書く必要があるのか?と思うようなものがいくつか入っています。
個人的には、不祥事の発生→監査の厳格化→マニュアルなどの強化→職業的懐疑心の低下という悪循環に陥っているのではないかと思います。
あと、最近、『KAM』(Key Audit Matters)ということばを、日本公認会計士協会が良く使っているような気はしますが、もう少し、一般の方々でもわかりやすいことばにした方が良いのではないかと思うのは、僕だけなのでしょうか?

「本3月期決算に係る監査の実施に当たって」の公表について、どう思われましたか?


指針変更でわかった「監査法人交代」の理由は結局お金!

 12月期決算の上場会社の定時株主総会が終わりました。
上場会社は決算書を監査法人にチェックしてもらう義務を負っています。
どの監査法人に監査を依頼するかの決定プロセスは会社によって異なり、会社が候補を決めて総会に諮る場合と、会社自体に決定権があって総会では報告するだけで良い場合があります。
しかし、いずれにしても総会マターです。
このため、監査法人の交代は、定時総会開催月の前々月の下旬から当月上旬くらいまでに公表されるのが一般的です。
2019年も12月期決算企業の監査法人交代の発表が1月下旬から始まりましたが、2019年は例年とは少々趣きが異なっています。
交代を知らせる各社のリリースに、これまでにはなかったほどしっかりと交代理由が書き込まれているのです。
逆に言えば、これまではなぜ監査法人が交代するのか、その理由がちゃんと書かれてきませんでした。
なぜ2019年になって、こうした変化が生じているのでしょうか?
これに関する記事が、Money Forwardが運営するMONEY PLUSというサイトに書かれています。

上場会社が監査法人を変える理由はいくつかあります。
1つは、会計処理の方針で会社側と監査法人の意見が対立したり、その会社の事業特性や業界慣習に対する理解をしてもらえない場合、2つ目が、監査法人の担当者が重大なミスを犯したり、何らかの粗相があって会社側を怒らせた場合、3つ目が、監査報酬で折り合えなかった場合です。
このほかに、海外子会社が増えて海外の会計事務所とのネットワークがある監査法人に乗り換える場合などがあります。
かつて、監査法人の変更は、上場会社にとって非常に重大なことでした。
会社が何か重大なリスクを抱えていて、監査法人に逃げられてしまったのではないか、と市場から疑いの目で見られる可能性があったからです。

しかしながら、平成不況が長引く中で、新規に上場する会社の数が激減し、監査法人間でクライアントの奪い合いが発生しました。
これによって、少しでも監査報酬を安くしたい会社側の思惑とが合致し、4大監査法人(EY新日本、あずさ、トーマツ、PwCあらた)間での変更や、4大監査法人から準大手への変更であれば、投資家も色眼鏡で見ることがなくなったため、監査法人変更のハードルがぐっと下がったのです。
そして景気が回復すると、今度は監査法人の人手不足が深刻化してきました。
それまで買いたたかれる一方だった監査法人も、会社に対して原価に見合う報酬を要求するようになり、一転して売り手市場になったのです。
東芝問題をはじめ、次々と不正会計が発覚したため、より厳格な監査手続が求められるようになったことも、監査法人の人手不足の原因になっています。
このため、かつては監査先数と売上高で競い合っていた監査法人も、ちゃんと採算が合うだけの報酬を払ってくれて、なおかつ粉飾発覚リスクも低い監査先しか監査を引き受けないという方針に転換し、近年では監査報酬で折り合わなかったために、監査法人が代わるケースが激増しているらしいということは、噂レベルでは出ていたのです。

ところが、会社側はその本音、つまり「監査報酬で折り合わなかったから監査法人を変えた」という理由を、なぜか交代のリリースに書かないことが一般化していたのです。
監査を受ける会社の現場の人にとって、監査法人を変えるというのは大変負担が重いものです。
会社によって業界の慣習は異なり、監査法人に会社のことや会社が手掛けている事業のことをわかってもらうまでには大変な労力がかかります。
それゆえ、監査法人を変えるというのは、そう簡単なものではないのです。
ところが、リリースに書かれる前任監査法人の退任理由は「今度の総会で任期が満了するから」となっていたのです。
後任は「監査を任せられるだけの資質があるから」、あるいは「総合的に判断して」といった、真の理由がわからない書き方であるのが普通で、まるでコピペしたかのように、大半の会社が同じ文言を書き連ねていました。

その状況が一変したのが2019年1月下旬です。
理由は、金融庁が有識者を集めて発足させた「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」が、1月22日に公表した報告書に「監査法人の実質的な交代理由をちゃんと書くべき」と書かれたからなのです。

効果はてきめんです。
それ以降、3月8日までに開示された監査法人の交代リリースをまとめてみたところ、19社中18社が明確に交代理由を書き、そのうち9社が監査報酬で折り合えなかったことを理由に挙げています。

このほか、監査時間を理由にした会社が1社あり、監査報酬は「単価×のべ作業時間」で計算されますので、監査報酬が理由と考えられます。
この1社も含めれば10社です。

4月に入ると、3月期決算会社の監査法人交代の発表が出始めます。
昔に比べれば、監査法人の交代で会社側が風評リスクにさらされる確率は低下したとはいえ、それでも大手から中堅以下の規模の監査法人に交代した場合は、あらぬ噂を立てられるリスクを伴います。
理由を明示することが常識になれば、会社側は不本意な風評リスクから解放され、それは投資家にとっても歓迎すべきことだと思います。

僕自身は、監査法人に勤めていた人間なので、監査法人を変えると事業のことをわかるようになるまでかなりの時間を要するので結局高く付くと思っているのですが、そうではないようですね。
あとは、IPOしそうな企業を探し出して、IPOまではかなり安い報酬で引き受け、上場してから回収していくというのが一般的なのかなぁと思っていたのですが、簡単に監査法人を変更するのが一般的になってくると、IPOまでの期間の報酬もきちんと取るようになる、つまり、監査法人側も選別を強めるような気はします。
あとは、投資家という立場からすると、考えが古いのかもしれませんが、今後は大手が監査先を絞っていくことになると思いますので、大手が監査しているところに投資しようとは思いますね。

指針変更でわかった「監査法人交代」の理由は結局お金であることについて、どう思われましたか?


登録政治資金監査人に対する個別の指導・助言の取組について!

 政治資金適正化委員会は、政治資金監査の質の確保を図るための取組の一つとして、平成26年分の収支報告書(定期分)に係る政治資金監査から、政治資金監査報告書や収支報告書の記載状況等に不備のあった登録政治資金監査人に対して指導・助言を行う取組を実施しています。
個別の指導・助言の取組は、都道府県選挙管理委員会及び総務省に対して、政治資金監査報告書の記載状況等について報告を求め、当該報告に基づいて、関係する登録政治資金監査人に対して直接当委員会から個別に指導・助言を行うものです。
指導・助言の対象となる事例は、以下のとおりです。

(1) 政治資金監査報告書の基本的な構成に係るもの
(2) 収支報告書(支出に係る分に限る。)上に金額の不整合(計算誤り、表間不突合等)があるもの
(3) 政治資金監査を適確に実施していないことが明らかであると考えられ、政治資金監査制度への国民の信頼に影響を及ぼしかねないと認められるもの等

これに基づき、指導・助言の対象とした事例等が公表されています。
平成29年分の収支報告書(定期分)に係る政治資金監査を対象とした個別の指導・助言の取組において、個別の指導・助言の対象とした主な事例等は、下記のとおりです。
政治資金監査は、法令及び政治資金監査に関する具体的な指針(政治資金監査マニュアル)に基づき適確に行う必要がありますので、このような事例が生じないよう、この機会に改めて、政治資金監査マニュアル、政治資金監査チェックリスト及び政治資金監査報告書チェックリストをご覧いただき、引き続き適確な政治資金監査の実施に努めていく必要があります。

<指導・助言の対象とした主な事例>
○都道府県選管の最初の受付時に、収支報告書(支出に係る分に限る。以下同じ。)上に金額の不整合(計算誤り、表間不突合等)があった。
○都道府県選管の最初の受付時に、収支報告書と領収書等の写しとで、金額の不整合があった。
※上記事例には以下の事例を含む。
・支出に重複計上があったため、後に重複分を削除した。
・対象年以外の年月日の領収書等の写しを添付していたが、後に当該支出を削除した。
・領収書等の写しのない支出を記載していたが、後に当該支出を削除した。
・収支報告書に計上されていない支出に係る領収書等の写しが添付されており、後に当該支出を追加した。
○都道府県選管の最初の受付時に、収支報告書と領収書等の写しとで、年の不整合があった(領収書等の「年」の記載が誤っていた)。
○その他、収支報告書に計上されている支出について、領収書等との確認を行っていなかった。
○政治資金監査報告書の基本的な構成に不備があった。
○同一の登録政治資金監査人について、2か年連続で同一又は異なる事例の報告があった。
○同一の登録政治資金監査人について、複数事例の報告があった。

<上記以外に都道府県選挙管理委員会等から報告のあった誤りの事例>
1)政治資金監査報告書に関するもの
○「1 監査の概要」(1)で監査対象期間が「平成28年」「平成30年」等となっていた。
○「1 監査の概要」(1)で監査対象期間が「平成○年○月○日から平成○年○月○日まで」と旧記載例で記載されており、かつ、監査の対象となった収支報告書等に係る会計の開始日が誤っていた。
○政治資金監査報告書の本文中で政治団体名の記載不備があった(異なる政治団体の名称が記載されていた)。
○政治資金監査報告書上で矛盾した記載があった(徴難明細書に係る支出があるのに徴難明細書が存在しなかった旨の記載等)。
2)収支報告書に関するもの
○収支報告書上で氏名及び住所の記載不備(記載誤り)があった。
○収支報告書と領収書等の写しとで、月日の不整合があった(収支報告書の月日の記載が誤っていた)。
○収支報告書と領収書等を徴し難かった支出の明細書とで、支出の目的に不整合があった(領収書等を徴し難かった支出の明細書の支出目的の記載が誤っていた)。

これらを見ると、しょうもないミスが多いですね。
このようなミスをすると非常に恥ずかしいと思いますが、登録政治資金監査人はこのようなレベルの仕事で大丈夫なのでしょうか?
こういうレベルのものに、『監査』ということばを使ってほしくない感じですね。

登録政治資金監査人に対する個別の指導・助言の取組について、どう思われましたか?


内部統制報告書の訂正件数が不適切会計増加で過去最多に!

 正しい財務諸表を作成するための社内管理体制が整っていると上場企業が投資家に向けて宣言する文書、「内部統制報告書」を訂正する事例が急増しているようです。
2018年の訂正件数は106件と、2017年の61件を上回り過去最多になりました。
不適切な会計処理が発覚したことを受け、報告書の有効性を過去にさかのぼって取り消すケースが目立つそうです。

内部統制報告書は、2009年3月期から有価証券報告書と併せて金融庁への提出が求められるようになりました。
不正会計が起きない社内体制作りを促すのが目的で、財務諸表の妥当性を証明するための重要な書類なのです。

企業は報告書で、財務諸表を作成するための適切な管理体制が整っているかどうかを説明します。
そのうえで内部統制が「有効」「有効でない」「表明できない」のいずれかを明記します。

報告書の訂正の理由として目立つのが、内部告発や内部監査などをきっかけに発覚した不適切な会計処理です。
ジャストシステムは一部従業員が会社に無断で返品条項を付けて販売店に売っていた問題が判明し、2015~2018年の報告書を「有効でない」に訂正しました。
東建コーポレーションも、不適切会計が発覚し、2013~2017年分を訂正した。

まだ実現には至っていませんが、日産自動車も、元会長のカルロス・ゴーン容疑者の報酬過少記載事件を受け、報告書の訂正を検討しているようです。

訂正の増加に対し、市場関係者からは懸念の声が出ているようです。
野村総合研究所の大崎貞和フェローは「現状では不正会計の発生リスクを示す役割を果たせていない」と指摘しています。
「形式的な対応にとどまっている企業が多いのかもしれない」(大和総研の横山淳金融調査部副部長)との見方もあります。

内部統制報告書が導入されてからもう10年になるんですね。
今なお不祥事などが多くて内部統制報告書を訂正するケースが増えているということは、内部統制の重要性を認識できていない経営者が多いということなんでしょうね。
以前から、規模の小さい企業は内部統制報告書の提出を緩和すべきというような意見が出ていますが、僕は反対です。
基本的に、内部統制がきちんと構築されているからこそ、日々の取引の積み重ねの結果である決算書の数値が信用できるということだと思いますし、規模が小さいほど、人員の問題で属人的になったり、チェック機能が働かない可能性が高まると思いますので、規模が小さいから簡便にするというのは間違っているのでないかと思います。
もう少し、内部統制の重要性を認識してほしいですね。

内部統制報告書の訂正件数が不適切会計増加で過去最多になったことについて、どう思われましたか?


報酬値上げで監査法人の交代が相次ぐ!

 決算をチェックする監査法人を変更する企業が増えているようです。
2018年は監査法人の合併など特殊要因を除いた変更件数が125社と2017年を上回り、リーマン・ショック直後の2009年以来、9年ぶりの高水準となりました。
東芝などの会計不祥事を受けた監査の厳格化で大手を中心に報酬を引き上げる動きが背景にあるようです。
一方で、監査法人との「なれ合い」を防ごうとして監査法人を変更する企業もあります。

税務研究会(東京都千代田区)によると2017年の変更件数は123社で、監査人・監査報酬問題研究会によると、上場企業の監査報酬は2017年度で1社平均6,604万円でした。
2016年度は6,300万円、2015年度は6,152万円で、年々高額化しています。
企業ごとの差が大きく、協和発酵キリンの直近の監査報酬は1億300万円、日本ペイントホールディングスは1億2,600万円。ニトリホールディングスは4,600万円でした。
企業規模や子会社数などが関係します。

2018年に目立ったのは4大監査法人の1つ、僕が以前勤めていたトーマツからの変更のようです。
40社強が他の監査法人に変更しました。
中堅以下の企業が多く、「報酬引き上げについていけなかった」(製造業)との声が漏れています。

東芝の会計不祥事以降、大手監査法人を中心に監査の厳格化を進めています。
デロイトトーマツグループの永田高士最高経営責任者(CEO)は、「監査の品質を確保するために適正な人員配置をしている」と話しています。
監査業務に詳しい青山学院大の町田祥弘教授は、「長時間の監査に見合う報酬を払えない企業は、監査法人も業務を引き受けづらいはずだ」と指摘しています。

監査法人とのなれ合いを防ごうとする動きもあるようです。
日本ペイントホールディングスは約40年間担当したEY新日本から大手のあずさに変更しました。
どこまで本当か分かりませんが、日本ペイントホールディングスのIR担当者は、「欧州で義務化されている監査法人のローテーション(強制交代制)を意識した」と言っているそうです。

課題は情報開示です。
監査法人を変更する場合、企業の内部管理体制などに問題があり監査法人が業務を引き受けないケースもあります。
2018年に開かれた会計監査の情報開示に関する金融庁の懇談会でも、監査人交代の理由や経緯は投資家にとって重要なのに、実質的な交代理由が説明されていないなどの指摘があったようです。

現状は「任期満了」といった簡単な説明にとどまる企業が大半です。
大和総研の吉井一洋氏は、「情報開示に納得していない投資家は多い」と指摘しています。
決算の信頼性を高める上でも、監査法人との関係性を投資家に開示する姿勢が求められています。
個人的には、監査契約の期間は契約書上1年だと思いますが、実質的には自動更新だと思いますので、交代したときに任期満了というのはどうなのかなぁと感じます。
あとは、働き方改革も影響しているんでしょうね。
よって、交代の場合は、企業と監査法人双方がコメントするようにすればいいのではないかと思います。

報酬値上げで監査法人の交代が相次いでいることについて、どう思われましたか?


監査法人選任はJAの実態に合わせて慎重に(会計監査人評価のポイント)!

 農業協同組合新聞に、会計監査人評価のポイントが載っていました。
戸津禎介有限責任監査法人トーマツJA支援室の講演を、新世紀JA研究会の責任でまとめたものです。

 農協法の改正を受けて平成31年10月1日以降、農協等の会計監査は従来の中央会監査から公認会計士監査に移行されることになりました。公認会計士監査の受監に向けて、いよいよ多くの公認会計士や監査法人(以下監査法人等)から会計監査人を選任することが必要な時期となっています。
 具体的な選任は、日本監査役協会の『会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針』やJA全国監事協議会の『監事が農協等の会計監査人予定者の選定において留意すべき事項』等が公表されており、これらに従って進めていくことが通例と考えられます。
 選任プロセス自体の説明は、平成29年10月の講演で説明しましたので、本論では、実際に会計監査人選任の場でいただいた質問をもとに、会計監査人の選任を進めるための具体的な留意点を伝えることで、選任に向けての理解の深化や、系統全体に蔓延しているよくある誤解の解消を目指します。
 具体的な話をする前に、改めて農協等の会計監査人の選任にあたっては、透明で的確な選任過程を経ることの必要性を再確認させていただきます。選任にあたっては、透明で的確な選任過程を経ることで、監事、役員の説明責任を果たすことが重要になると考えます。
 具体的には、組合員に対して、監査品質はもとより、組合経営に資する監査法人等を会計監査人として選任したのだと説得的な説明を行い、特に外部(政府、マスコミ等)の目を意識し、現状維持ではなく、自己改革を進めるため適任の監査法人等を選任したことを主張できるような選任をすることが重要と考えます。
 このような透明で的確な選任過程を経ることの重要性は、ここ数か月で急激に高まっており、以下のような背景があるものと考えられます。
◇既定路線に従い会計監査人を選任するとしても、十分な検討をせずに選任してしまうと、農協改革が骨抜きになっているとの批判を受ける恐れがあるとの周知が進んでいる。
◇今後、農協の経営環境が厳しくなることが見込まれる中で、単に財務諸表を批判的に検討するだけでなく、経営課題の解決に向けて示唆を与えてくれるような指導的な機能を発揮する会計監査人に対する期待が高まっている。
◇農林水産省による報酬調査の公表や監査法人等による具体的な提案活動が進んだ結果、監査報酬の水準が想定より高くなる恐れが高まった。
◇会計監査人の選任過程を常例検査の対象にする可能性がでてきている。
◇透明で的確な選任過程を経ることの必要性を十分に認識いただいたところで、実際に会計監査人選任の場で、各農協からよく質問のある8つのポイントに絞って具体的な話をさせていただきます。
ポイント(1)「品質管理」
 品質は監査の根幹をなすものであるため、監査品質の水準は関心が高い領域です。監査の品質は、見た目で良し悪しの判断が難しく、通常、監査法人の提案書には品質管理体制に関する膨大な情報が盛り込まれることから、見極めるべきポイントを絞り込む必要があります。
 審査担当のパートナーの設置や難易度の高い事案の解決をサポートする機能があるか、などの仕組みの有無に加えて、過去の金融庁(公認会計士監査審査会)や公認会計士協会の検査結果を確認することが最低限確認すべきポイントと考えられます。
ポイント(2)「情報セキュリティ」
 監査は多くの秘匿情報を扱いますが、近年、監査法人による情報漏えい事案が少なくありません。そのため監査クライアントは、監査法人に重要情報の管理体制を整備・運用することを求める傾向が強まっています。見極めのためには、情報セキュリティマネジメント規格の取得状況など、情報セキュリティ強化に向けた取り組みを確認することが有用です。
ポイント(3)「業界理解」
 公認会計士監査はリスクアプローチにより行われます。リスクを正しく把握して、リスクに対応する監査手続を立案して対応するわけですが、リスクを把握するためには、総合事業の理解も必要ですし、そもそも株式会社と協同組合の違いを理解しておくことが必要になります。
 今まで一般事業会社ばかり監査していた公認会計士が協同組合や総合事業に対する基本的な理解を持ち合わせていなのではないかとの不安は大きいようです。系統への業務提供等の実績を把握することで、不安が顕在化しないことを確認することが考えられます。
ポイント(4)「非監査業務」
 農協を取り巻く今後の厳しい経営環境に鑑みれば、公認会計士が持つ知見を経営に活用していくことは有用であり、会計監査だけに限られてしまうことは実にもったいないと感じます。多くの農協では、公認会計士からの様々なアドバイスを期待していると思われますが、会計監査人が非監査業務を提供してはいけないとの誤解が蔓延しています。
 まずはこのような誤解を正すことが重要ですが、一方で非監査業務の提供を志向しない公認会計士がいることも事実です。公認会計士の知見を今後の農協経営に活用していくために、非監査業務に対する考え方や知見の有無を確認することをお勧め致します。
ポイント(5)「業務監査」
 これまで業務監査が農協経営の高度化に貢献してきたことから、今後公認会計士監査に移行した場合に業務監査の取り扱いがどのように変化するのかが大きな関心事になっています。公認会計士監査は会計監査を目的としているため、農協から特段の要請を受けない限り業務監査は実施されません。公認会計士の指導的機能の発揮や非監査業務の提供を通じて代替されていくものと考えられます。
ポイント(6)「是正指導」
 監査はJA全国監査機構、指導は中央会という歴史からか、公認会計士監査になったら公認会計士は指導機能を発揮してくれなくなるとの誤解をよく耳にします。公認会計士によって、指導的機能を発揮するための意思・能力に差があることも事実ですが、少なくとも指導機能の発揮は制限されるものではありません。
 どの程度指導機能の発揮が期待されるのかを、意思や能力の点から見極めることを勧めます。せっかく公認会計士監査が導入されるのですから、公認会計士を経営課題の解決に役立つ存在として取り込んだ方がよいことに異論はないと思われます。
ポイント(7)「監査チーム」
 悲しい事実ですが、監査は誰がやっても同じということはなく、監査法人もっと言ってしまうと、だれが担当するかによって監査のスタイルは大きく変わってきます。提案書では通常、監査担当者の氏名や担当者の経歴が記載されますし、プレゼンテーションの場を通じて個性を見極め、自らの組織にあうスタンスの公認会計士であるかを見極めることが重要です。
ポイント(8)「監査報酬」
 監査報酬は、最も関心が高い項目であり、多くの質問が寄せられています。内訳ごとの監査時間の合理性を確認することはもとより、次のような大前提を確認し、実質的な負担を理解することが重要と考えます。
 (1)監査時間及び監査報酬は、概算なのか確定なのか?
 (2)監査時間及び監査報酬は、工数のかさむ初年度を前提にしたものなのか、数年後の安定的な状況を前提にしたものなのか?
 (3)初年度特別価格で、2年目以降報酬が上がる可能性はないのか?
 (4)非監査業務が提供されている場合、監査報酬に取り込まれる部分はどれくらいあるのか?
 以上のように、監査人選任にあたっての具体的な留意点を説明しました。冒頭に申し上げた通り、会計監査人の選任の目的は組合員のために現状維持ではなく、自己改革を進めるため適任の監査法人等を選任することにあります。その目的を忘れることなく、上記の留意点を踏まえ、各農協がベストな会計監査人を選任いただくことを強く祈念致します。

個人的には、非監査業務が監査報酬の中に含まれていて良いのか?という疑問はありますね。
この記事を読んで、あまりクライアントの方から評価を受けることの少ない監査業務において、過去何度か高く評価していただいたのは、指導業務だったということが思い出されましたが、ここが重要なんでしょうね。
指導業務が行えるからこそ、クライアントの方も、事前に相談できるようになるのではないかと思います。
非監査業務との線引は必要だと思いますが、農協に限らず、監査人も指導機能が発揮できるよう日々スキルアップしないといけないですね。

会計監査人評価のポイントについて、どう思われましたか?


監査法人選任はJAの実態に合わせて慎重に(公認会計士移行の留意点)!

 農業協同組合新聞に、公認会計士移行の留意点が載っていました。
日向彰農水省経営局協同組織課課長の講演を、新世紀JA研究会の責任でまとめたものです。

農協改革集中推進期間が来年5月に終わります。これが農協改革の第1ステージです。そして334月以降から改正農協法施行に伴う5年後の見直しが始まり、これが第2ステージとなります。そのなかで、農協の理事構成、中央会制度の見直しなどがあります。そのうえで公認会計士監査を導入し、31年度決算から監査が始まります。系統では昨年4月にみのり監査法人をつくりましたが、各農協では監査法人の選定作業に入っているところだと思います。
 3月決算の農協では、来年6月の総会で監査法人を決めて、内部統制の整備、公認会計士監査ということになります。最後に准組合員の利用規制ですが、農水省ではいま、正組合員、准組合員、員外3者の事業利用量を調査しています。平成333月までの予定で、その結果をもとに、いろいろ検討することになっています。
 農協によっては323月には、31年度の財務諸表づくり、来年の春ころから期中監査の結果を踏まえ期末監査となり、会計士が財務諸表の適正さをチェック。326月に監査意見の表明が行われ、通常総会で決算の承認ということになります。
 では、農水省はなにをするかというと、監査コストの引き下げのお手伝いをさせていただきます。公認会計士監査は、農協にとって意義あることだということを理解し、農協経営に活かしてほしい。

 公認会計士監査を導入したのは、農協の信用、共済事業の規模が大きいという重い事実があります。信用不安を起こさないため、第三者の意見をしっかりもらって、適正に財務諸表がつくられ、健全に経営されているのだというお墨付きを得ることです。それが組合員、国民の信頼をえることです。信金や労金などにも信用事業を営んでいるところは公認会計士監査が義務つけられています。
 というのは、秋田県のおばこ農協の問題があります。農業白書でも紹介され、輸出や直接販売を行うなど立派な農協でした。しかし会計監査の財務諸表の作り方があまりにもいいかげんだったといわざるを得ない。公認会計士に聞くと、経済受託債務と債権に80100億円もの差があり、おかしいと思わなかったのがおかしいと言っています。
 60数億の赤字で、4%割れはなかったものの、11.11%あった自己資本比率が、あっという間に8%割れを起こしました。この重みを、しっかり受け止め、農水省もそうですが、緊張感を持っていただきたい。世の中の目はきびしくなっています。住専問題をくりかえしてはなりません。法律で公認会計士監査が決まっている以上、しっかり公認会計士とキャッチボールして、役職員にとっても監査を受けたというのは、リスク回避など、農協にとっていいことだという認識をもっていただきたい。

 では農水省は何を支援できるか。監査コストは上がることも下がることもあります。高くなると、国は補填して欲しいという声も多く聞かれました。しかし、医療法人、社会福祉法人などもみんな自腹でやっています。モラルハザードを起こしてはならないと思います。農協だけ支援すると必ず批判が出ます。いろいろな思いがあるのは承知していますが、ご理解いただきたい。JAグループが批判されるようにはなって欲しくはありません。
 その代わり、監査コストを下げるお手伝いをします。本年度、全中やあずさ監査法人と、公認会計士監査のマニュアルづくりに取りかかっています。監査法人選任の一助になれば幸いです。その上で、夏の概算要求で2億円の「監査法人のコストの合理化支援」を要求しています。農協の取り組みに任すといっても、離島の農協や大きな経済事業を展開する農協があります。コストを引き下げるための相談を受けます。その場合、中央会は、これまでの経営指導のノウハウを活かし、内部統制強化にリーダーシップを発揮していただきたい。
 また、農水省、金融庁、全中、公認会計士協会の4者で、農協が監査法人を選ぶにあたっての留意点について「JA常勤監事協議会研究レポート」をまとめました。参考にしていただきたい。農協が監査法人を選ぶ場合は、なぜこの法人を選ぶのかを説明できることが重要です。また監査法人を公募するという農協もありますが、その場合も、公募していることが、ちゃんと分かるようにしていただきたい。それが組合員の農協への信頼を高めることになります。
 お願いになりますが、全中監査機構のこれまでのノウハウの蓄積を新しい監査法人に引き継ぐためのしっかりした仕組みをつくってほしい。また、来年5月、自己改革集中推進期間が終わった時点で、生産資材価格の引き下げ、農産物の有利販売などの自己改革で、農家の所得向上のためどれだけ頑張ったか、いったん総括しなければなりません。そのため、ひとつでも多く取り組み、組合員の評価を高めて、頑張っているよということを組合員に示してほしい。改革を評価するのは組合員です。
 農業者が農協を利用するかどうかが物差しです。その意味でも公認会計士監査は経営改善の一助になるのです。農協はリーダーシップを発揮し、農業者所得増大への高い評価を得て、それを農水省にバックしていただきたい。

『高くなると、国は補填して欲しいという声も多く聞かれました。しかし、医療法人、社会福祉法人などもみんな自腹でやっています。モラルハザードを起こしてはならないと思います。農協だけ支援すると必ず批判が出ます。いろいろな思いがあるのは承知していますが、ご理解いただきたい。JAグループが批判されるようにはなって欲しくはありません。』などというコメントを見ると、まともなことをおっしゃっているなぁと思いました。
あとは、『その代わり、監査コストを下げるお手伝いをします。本年度、全中やあずさ監査法人と、公認会計士監査のマニュアルづくりに取りかかっています。監査法人選任の一助になれば幸いです。その上で、夏の概算要求で2億円の「監査法人のコストの合理化支援」を要求しています。農協の取り組みに任すといっても、離島の農協や大きな経済事業を展開する農協があります。コストを引き下げるための相談を受けます。』という点については、どうすれば安い金額で契約してくれる監査法人を見つけられるかという誤った解釈の方をなくす努力をしてほしいとは思います。
監査法人は、当然、見積もりの工数ベースで報酬を提示すると思いますので、監査を受ける側に起因して工数が多くなり、結果として監査報酬が高くなるところもあるでしょうから、監査を受ける側に起因しているものを取り除くためのマニュアルとなってほしいと思います。
結局は、会計監査をきちんと受け、内部統制などをきちんと整えることが自らの信用を高めることであること、監査報酬は出資者が負担しているものであることなどを認識のうえ、監査法人を選定し、契約してほしいですね。

公認会計士移行の留意点について、どう思われましたか?


監査不信「10年周期説」に現実味!

 企業決算にお墨付きを与える会計監査の世界大手「ビッグ4」に再び批判が高まっているようです。
欧米で相次ぎ粉飾見落とし騒動が浮上し、リーマン・ショック後10年、エンロン事件からやがて20年というタイミングに、会計不祥事「10年周期説」も現実味を帯びているようです。
監査という「資本主義のインフラ」を巡るコスト分担が未解決な限り、好況期に緩むマネーの規律が不祥事の種を育て続けるでしょう。

 イギリスの企業会計の監視主体、財務報告評議(FRC)は今、異例のハイペースで、「●●の監査に関する■■への罰金」という監査法人への罰則を発表しています。
背中を押したのが、イギリス議会による5月の報告書で、「必要レベルの独立した監査をできない、なれ合い集団」と、世界企業の監査を一手に担うビッグ4、KPMG、アーンスト・アンド・ヤング(EY)、デロイトトウシュトーマツ(DTT)、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)を厳しく指弾した。

直接のきっかけが建設2位のカリリオン社の破綻です。
公共サービスに民間資金を生かす「PFI」発祥の地で、病院や道路などを多く手掛ける大手でした。
それが突如、15億ポンド(約2,300億円)の負債を抱え清算されたとあって、批判の矛先がKPMGの監査に向かったのです。

KPMGは南アフリカで銀行の破綻に関連し現地経営陣が総辞職しています。
アメリカでも米ゼネラル・エレクトリック(GE)の保険部門が巨額損失を計上した件で米証券取引委員会(SEC)が調査中です。
他の監査法人でも、PwCが「インド版エンロン事件」と呼ばれた件に絡む罰則で、上場企業監査を禁じられるなど、今年に入りニュースが相次いでいます。

企業が投資家からお金を集め、利益を生み、成長の歯車を回す資本主義で欠かせないのが企業の姿を正しく表す決算書です。
監査はそれを担保するプロセスです。
産業革命後の英国を源に、大恐慌を経て上場企業に作成と定期的な開示が義務付けられるようになったのです。

その欠かせない「インフラ」に「約10年周期でスキャンダルが起きる流れがある」と、大原大学院大学の八田進二教授は指摘しています。
10年前に、アメリカのリーマン・ブラザーズが破綻し、さらに、その10年前はアメリカのエンロンが簿外に債務を隠し「驚異の利益」を粉飾計上していた頃です。

10年」に明確な根拠はありません。
しかしながら、あるサイクルの存在を歴史が示しています。
成長率の高い好況時には企業がその前提の下、設備投資やM&A(合併・買収)を実行しますが、監査する側も足元の延長線上で妥当であれば問題視しにくいと言えます。
ところが、実際には常にバブルがはじけ、資産価格が下がり「時価」へと修正を迫られるという繰り返しです。

対応し、規制強化は進んでいます。
エンロン後の2002年、アメリカで企業改革法(SOX法)が成立し、決算の虚偽報告に最長20年の禁錮刑が導入されました。
日本でもカネボウの粉飾後に「日本版SOX法」が開始し、ヨーロッパでは同じ監査法人が同一企業を担当するのは最長20年となりました。

それでも絶えぬ不祥事にイギリスでは今、懲罰的ビッグ4解体論も浮上しているようです。
実際、エンロンの監査担当だったアーサー・アンダーセンは、粉飾を見抜けなかっただけでなく、積極的な加担も疑われ解散に追い込まれました。
監査部隊はデロイトトウシュなどに吸収され、現在のビッグ4になりました。

しかしながら、その結果、欧米の大企業の9798%がビッグ4の顧客となっています。
寡占ゆえの競争欠如が緩みの元凶との批判は根強いようですが、実際はこれ以上潰せない「ラスト4」と呼ばれる存在です。

「監査は(未来を映す)水晶玉ではない」と、イギリスKPMGのビル・マイケル会長は英誌で批判に反論しています。
投資家は会社の不正を見抜けといいますが、監査とは決算書類が適正に作られている確認を行う作業であり、万能ではないとの主張です。

根本には企業と監査人を巡る、本質的な緊張関係の欠如が横たわっています。
KPMGがカリリオンから得た監査報酬は約2,900万ポンド(約41億円)で、報酬を受けながら、企業性悪説に立つ厳しいチェックは果たして可能なのでしょうか?
一方、企業にしてみれば監査は必要ですが、利益を生まない経費です。
この資本主義のインフラのコスト分担が未解決なことが、10年周期の遠因です。

代案の議論はあるようです。
保険会社が監査リスクを見積もり最低価格をはじき、監査人が入札する、企業と投資家がコストを折半し取引所に監査費用をプールする。
要は企業と監査を相対にせず、第三者を挟むアイデアです。
しかしながら、「公的監査が試みられた国で成功例はない」(青山学院大学の町田祥弘教授)ようです。
自由競争に基づくのが、資本主義であり、コスト分担の解は見えないようです。

そんな中、トランプ米大統領は先日、突然「費用の節約だ」と企業業績の四半期開示見直しを指示しました。
戦後最長に並ぶ好景気の下で踏まれるアクセルですが、規律が緩み、そして次の会計不祥事の芽が育っているのでしょう。

 元々、監査法人に勤めていた人間としては、監査費用は、企業が負担しているのではなく株主が負担しているという考え方をすれば、現状で問題ないのではないかと思います。
監査は決算の数値だけをチェックしていると思われがちですが、普段の取引の流れ(内部統制)もチェックしており、内部統制がきちんと整備・運用されていることを確かめられたからこそ、決算の数値はある程度信用でき、決算時のチェックも少なくなっています。
この普段の取引の流れを把握するのが大変なのです。
当然、業界の特性もあるでしょうし、それぞれの企業によって異なるからです。
これは、決算の数値の監査においても同じことが言えます。
あとは、ここが理解を得ることが難しいところだとは思いますが、すべての粉飾を見破るのは不可能だと思いますし、粉飾の歴史に伴って、監査技術も向上しています。
よって、頻繁に監査法人が変わるとなると、これを新たに把握するのに膨大な時間がかかり、結局、監査報酬が上がることになってしまいますし、その企業のことをよく知らないということになりますので、粉飾のリスクは高まります。
ここは、大手監査法人の担当者の定期的な変更で、新たな視点や緊張感は担保できるのではないかと思います。
結果的に、現状が良いと考えています。

 監査不信「10年周期説」に現実味が帯びていることについて、どう思われましたか?


シンガポール取引所が世界の動きに対応して決算・四半期開示を見直し!

2018年01月30日(火)

シンガポール取引所は、先日、上場企業に課している四半期決算の開示ルールの見直しを検討すると発表しました。
年4回の開示義務を年2回に軽減したり、開示が必要な項目を減らしたりする案を検討するようです。
開示ルールを簡素化する世界の取引所の流れに対応する狙いだそうです。

シンガポール取引所は、まず、四半期決算制度を維持するかどうかを検討します。
仮に、四半期決算の維持を決めた場合も、開示を義務づける対象企業を現在の時価総額7,500万シンガポールドル(約63億円)以上から1億5,000万シンガポールドル以上に引きあげるなど、負担軽減策を検討します。
市場関係者から意見を集め、2018年後半から新制度を導入します。

シンガポール取引所が開示制度を見直すのは、中小企業などから情報開示にかかるコストが重いとの不満が高まっているためです。
四半期開示を実施する企業の割合も、2003年の制度導入当初は全体の37%でしたが、今は70%まで高まっているそうです。

東京証券取引所も、2017年3月期決算から決算短信の記載内容の一部を自由に変更できる簡素化に踏みきっています。
シンガポール取引所は、他の取引所に比べ開示負担が重い状態が続けば、有望なベンチャー企業が他に上場する事態を加速しかねないと判断したようです。

一方で、開示の頻度や項目が減れば、投資家が情報を入手しにくくなります。
情報開示の不備が原因で株価が乱高下するなどすれば、市場開設者としての取引所の信頼性も低下する可能性があります。
シンガポール取引所は、別の施策によって少数株主の権利保護を確保すると説明しています。

日本も検討した方が良いかもしれませんね。
四半期開示は、会社にも監査法人にも過度な負担を与えているように思います。
当然、監査報酬のアップにもつながっているでしょう。
開示したい企業がすればいいのではないでしょうか?
そういう積極的な姿勢が評価されて、株価に反映するようになるのではないでしょうか?
ただし、一方で、投資家の保護も考えないといけませんが、これは、市場を分けるといったようなことで対応できるのではないでしょうか?
四半期開示がないという条件のうえ、そのリスクを考慮しても株式を買いたい人が買えばいいわけですから。
ちなみに、シンガポール取引所は、お昼休みも取引ができます。

シンガポール取引所が世界の動きに対応して決算・四半期開示を見直すことについて、どう思われましたか?


海外の監査チームの人事権までも持つ!

2017年12月27日(水)

先日、日本経済新聞に『揺れる監査法人』という記事が連載されていました。
タイトルと内容が合っていないような気はしますが、今週3日間は、これについて書きました。
2017年9月下旬、港区の東京ミッドタウンにある富士フイルムホールディングスの本社に約20人の外国人の集団がやってきました。
国際会計事務所KPMGの公認会計士です。
富士フイルムと今後の会計監査について意見交換する会議に集まったようです。

「複合機のリース債権について貸し倒れ引き当てを正確に積むべきだった」などと、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど各地域を担当する公認会計士が監査で気付いた注意点を次々と報告し、経営陣は聞き入ったようです。

富士フイルムは2016年6月末の株主総会後に、会計監査の担当を新日本監査法人からあずさ監査法人に切り替えました。
国内はあずさ監査法人が監査し、海外グループ会社はあずさ監査法人と提携するKPMGが各地域を受け持つ体制になっています。

「日本のあずさがまとめ役となり海外から情報を吸い上げる仕組みが効果的」と、富士フイルムのグローバル監査部の花田信夫部長はKPMGのネットワークを評価しています。

実際に子会社の富士ゼロックスの海外子会社が起こしたリース取引の不適切会計では、このネットワークが機能しました。
あずさ監査法人とKPMGが監査で疑問点を見つけ、不適切会計問題にメスを入れるきっかけにつながりました。

海外販売子会社の不適切会計では、累計で375億円の損失が発生しました。
2017年7月には過年度にさかのぼって決算訂正を余儀なくされました。
優良会社とされてきた富士フイルムが経験した不祥事だけに、衝撃は大きかったようです。

あずさ監査法人で監査の品質を担当する金井沢治専務理事は「一般的に親会社の財務担当者が海外子会社について外部の視点で客観的な情報を入手する機会は多くない」と会合を開催した狙いを明かしています。

海外ネットワークの整備が急ピッチで進んでいます。
あずさ監査法人は海外の会計事務所とのやり取りを密にするため、海外赴任経験のある人材を大幅に増やしました。
さらにグローバル企業を担当する国内の監査チームが、海外子会社を担当するKPMGの現地事務所の監査チームに直接指示を出す体制に切り替えました。
「現地の情報を収集しやすくなり、不正につながる情報も素早く把握できる」そうです(金井氏)。

かつてあずさ監査法人は、現地拠点を通じて国内と海外の監査チームが間接的に情報をやり取りする体制でした。
今は国内で監査全体のリーダーを務める公認会計士は、海外の監査チームの人事権までも持っています。

もちろん企業側の対応が大前提です。
富士フイルムも監査の仕組みを根底から変えました。
9月に監査部をグローバル監査部へと衣替えし、持ち株会社が直接300社にのぼるグループ会社を監査する体制に切り替えました。
「子会社任せをやめ、問題が起こる前に芽を摘む」ようです(花田氏)。
今回のKPMGとの会合も監査のグローバル体制構築に向けた一環です。

日本企業のグローバル展開が広がる中、目が届きにくい海外子会社の不正会計をどう見つけるのか。上場企業と監査法人の双方で再発防止に向けた地道な取り組みが進み始めました。
個人的にも、ここ数年、海外子会社での不正が増えていると感じています。
今までは、提携先の海外の会計事務所に丸投げという感じだったのでしょうが、あすさ監査法人のようなこちらが主導権を持つということは、見習わないといけないでしょうね。

あずさ監査法人は海外の監査チームの人事権までも持っていることについて、どう思われましたか?


世界で最も複雑な財務諸表?

 先日、日本経済新聞に『揺れる監査法人』という記事が連載されていました。

 タイトルと内容が合っていないような気はしますが、今週3日間は、これについて書いています。
「日本、いや世界で最も複雑な財務諸表かもしれない」と、トーマツ幹部がこう形容する担当企業があります。
それは大型M&A(合併・買収)を繰り返し、姿が大きく変わり続けるソフトバンクグループです。
担当公認会計士は、当然、エース級を送り込んでいるようです。

担当公認会計士を悩ませる原因の一つは、ソフトバンクの資産評価だそうです。
英半導体設計、アーム・ホールディングスの買収では2.9兆円(20179月末)という巨額の「のれん」が注目を集めました。
「のれん」とは、買収価格と純資産の差を示すものです。
それが膨らむのは、ソフトバンクはアームが将来、大きな価値を生み出すと考えているからです。
ソフトバンクの「のれん」は、2017年9月末で計4兆3,900億円と総資産全体の16%を占めています。

しかしながら、すべてのビジネスが企業の計画通りに進むわけではありません。
見通しの甘さが巨額の減損につながる可能性もあります。
「のれんはできるだけ保守的に評価したい」(あるベテラン公認会計士)というのが本音であり、リスクに敏感な公認会計士が、のれんの金額を巡って担当企業とせめぎ合うのは必然でしょう。

「(あらゆるモノがネットにつながる)I o Tが普及すれば、このくらいの売上高と利益は出る」と、孫正義会長兼社長は本社の会議室でアームの成長性について熱弁を振るいました。
面談相手は投資家ではなく、トーマツの担当公認会計士です。

実はソフトバンクは昨年のアーム買収では、孫会長兼社長とトーマツの担当公認会計士の面談を年4回程度に増やしたようです。
これまでも孫会長兼社長が年2回ほど、公認会計士に経営の現状を説明してきました。
回数を増やした理由は、公認会計士の理解を得るにはトップの懇切丁寧な説明が不可欠との判断のようです。

ソフトバンクで孫会長兼社長を支える一人は、経理統括の君和田和子常務執行役員です。
公認会計士の資格を持ち、かつてデロイト系の会計事務所にも在籍していました。
アームの買収手続きが一段落し、君和田氏の視線は新たに買収する米投資会社フォートレス・インベストメント・グループに向いています。
 「新しい事業なので監査業務にはトーマツでも(ファンドに詳しい)専門家が入らないといけない」と注文を付けています。

買収した事業の将来性をどう評価するのか?は、ソフトバンクを担当するトーマツだけの問題ではありません。
成功も失敗もありますが、日本企業による巨額買収の事例は増える一方です。
2017年3月期に東芝は買収した米原子力事業で7,316億円の減損損失を計上しました。
公認会計士に、買収先の経営を目利きする力も必要になってきます。

君和田氏は「会計士は過去のことを見るのは得意だが、将来の見積もりは不得意」と指摘しています。
担当企業側から投げられたボールをどう受け止めるのでしょうか?
監査法人が抱える課題は大きくなっていますね。
僕が監査業界に入った約21年前と比べると、将来の見積もりが必要な会計ルールも増えていますし、その頃には想像もできなかったような事業をやられている会社もたくさん存在します。
公認会計士は、事業をやっているわけではないので、専門分野を設けていく必要があると思いますが、色々な会社を担当していることが強みだと思いますので、過去の数値のチェックだけでなく、財務諸表などから将来のことも読み取れるように、日頃からアンテナを張り巡らせておかないといけないですね。
個人的には、監査の仕事は将来AIに置き換わると言われていますが、将来のことが考えられる公認会計士が生き残っていくんでしょうね。

ソフトバンクグループの世界で最も複雑な財務諸表について、どう思われましたか?


毎日が決算!

 先日、日本経済新聞に『揺れる監査法人』という記事が連載されていました。

 タイトルと内容が合っていないような気はしますが、今週3日間は、これについて書きたいと思います。
監査法人を取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。
顧客企業のグローバル化が進み、買収ファンドを通じた複雑な経営形態も広がっています。
相次ぐ不正会計問題で打撃を受けた監査業界ですが、今の課題を監査法人と企業の取り組みを通じて探っています。

決算発表で毎回先陣を切るのが愛知県拠点のレストランチェーン『あみやき亭』です。
同社と監査法人の取り組みは、将来の会計監査の在り方を示すモデルの一つになるでしょう。

10月1日の日曜日に、愛知県春日井市にある、あみやき亭本部の一室では、あずさ監査法人の公認会計士が決算短信の最終確認に追われていました。
「月末の資産残高を確認するのに追加資料が必要」ということで、資料を片手に電卓をはじきながら経理担当者に矢継ぎ早に注文を繰り返し、作業は夜遅くまで続いたようです。

翌2日、あみやき亭は2017年4月から9月期の決算を発表しました。
3月期の決算企業では一番乗りです。
2002年の上場当初から原則、締め日の翌営業日に決算を開示してきました。
開示1番を巡ってIT(情報技術)企業などと競う時期もありました。

しかしながら、監査の厳格化が進む中、翌営業日に開示する3月期企業は、あみやき亭だけになりました。
同社の佐藤啓介会長は、「やるからには1番にこだわりたい」と意気込んでいます。

高速決算の裏にあるのが「日次決算」です。
月ごとが一般的な締め日を日ごとにして毎日の収支を把握する管理会計のひとつで、あみやき亭はこれを徹底しています。

その実現にはあずさ監査法人の協力が欠かせません。
売り上げや仕入れ代、人件費といった各店舗のデータは毎晩、本部が集約していますが、日次決算のデータは公認会計士のもとに毎日送られます。
公認会計士は不自然な点が見つかればその都度、会社側に確認します。
あみやき亭の経理部門と担当公認会計士は情報を共有し、売り上げが落ち込むなど店舗に減損処理の兆候が見られれば即座に対応します。

情報が毎日オープンに伝わることで、あみやき亭側は「監査法人と会計処理を巡った意見対立はほとんどない」(幹部)と話しています。
公認会計士側も決算集中日を避けて業務を分散できる利点があります。

「カギは単純化と平準化だ」と佐藤会長は強調しています。
あみやき亭では交通費などの即日精算は当たり前で、経費は原則、当日に現金で払い戻しを受けます。
経費を勘定システムに入力するのはパート社員で、経理部門の正社員は2人のみです。

あみやき亭の2017年3月期の売上高に占める販管費の割合は53%と同業の安楽亭などに比べ10ポイントほど低くなっています。
監査法人と協業した高速決算が業務の効率化を促しているようです。

実は、あみやき亭のように経理処理などの作業をできるだけ標準化し、「早く決算発表する企業は欧米では一般的」(あずさ幹部)だそうです。
複雑なシステムや組織が災いし、作業に手間取る企業や監査法人が学ぶ点は多いでしょう。

不正会計問題などを受け、我が公認会計士の人気は下落傾向が続いています。
監査法人が顧客企業と切磋琢磨し、業務の効率化を進めることが深刻な人手不足を乗り越える手段の一つになると言えるでしょう。
個人的には、正確性なども必要なため、決算は早ければいいわけではないと思っていますが、できる限り早く公表することが投資家のためにはなるんでしょうね。
決算短信は監査報告書は不要ですが、監査法人内の手続きはどうなっているんでしょうね?
1番乗りということが良い宣伝にはなるのでしょうが、従業員の方や監査法人の担当者に過度な負担をかけ過ぎていないのかも気にはなります。
ただ、業務の標準化というのは見習うべき点は多いんでしょうね。

毎日が決算のあみやき亭について、どう思われましたか?

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最新型ロボット導入で医薬品の出庫や在庫管理を効率化する「レデイ薬局木太店」が高松市にオープン!

瀬戸内海放送によると、医薬品の取り出しや在庫管理ができる最新型のロボットを導入した調剤薬局が香川県高松市にオープンしました。

我が高松市木太町にオープンした「レデイ薬局木太店」です。
ドラッグストア「くすりのレデイ」に併設しています。

全国の病院の処方箋を受け付けていて、服薬指導や健康相談も行っています。

そして、目玉は最新型のロボットです。
香川県の薬局では初めて導入されました。
処方箋のデータを選ぶと自動で薬の箱が出てきます。

これまで人の手で行っていた医薬品の出庫や在庫管理をロボットが自動でやってくれます。
こうした効率化で生まれた時間を患者さんの対応にあてることができます。

レデイ薬局木太店は月曜から土曜日の朝9時から夕方6時まで営業しています。

同じ町内なので、一度見に行きたいと思います。
おそらくドラッグストアが増えていて薬剤師の方も人手不足ゆえ、人手不足の解消にもつんがるんでしょうね。
また、小さな薬がたくさんあるでしょうから、棚卸もおそらく楽になるでしょう。

最新型ロボット導入で医薬品の出庫や在庫管理を効率化する「レデイ薬局木太店」が高松市にオープンしたことについて、あなたはどう思われましたか?


東芝テックが福井県立恐竜博物館内のミュージアムショップにRFIDを活用したセルフレジを導入!

東芝テック株式会社は、2023年7月14日にリニューアルオープンした福井県立恐竜博物館内のミュージアムショップ(運営:東急リゾーツ&ステイ株式会社)に、RFIDを活用したセルフレジを導入しました。
ちなみに、RFID(Radio Frequency Identification)とは、情報が書き込まれたICタグ・RFタグ(RFIDタグともいいます。)と電波などでワイヤレス通信し、情報の読み取りや書き換えをするシステムです。

ミュージアムショップでは、特に夏季休暇など来場者が増える繁忙期においてレジが混雑し、会計に大きく時間を要するといった課題がありました。
東芝テックは、今回の施設リニューアルオープンに合わせて、RFIDを活用したセルフレジを導入しました。

このセルフレジは、消費者が商品を専用台に置いた時点から、RFタグが付いた商品を袋詰めする過程で自動読み取りを行うため、従来のように1品ごとにバーコードを読み取る手間がなくなり、会計スピードが格段に向上します。
また、将来的には、RFタグを活用した棚卸業務ソリューションを導入することにより、店舗側のさらなる業務効率改善を目指します。

<「RFIDを活用したセルフレジ」の主な特⻑>
1.スピーディーな会計
店舗で取り扱う全ての商品にRFタグを取付け、RFID技術を利用したスピーディーな会計を実現します。
2.什器の工夫
消費者自身で袋詰めをしながらスムーズに商品登録を行える運用にし、レジ周りの什器を工夫しました。

<会計の流れ>
①専用台に商品を置く(RFID読取)
②ショップ袋のセット
③袋詰め(RFIDで商品点数の確認)
④会計

RFIDの導入で、棚卸が早くなるといいですね。
RFIDの導入がなかなか進まないのは、コストの面だと思いますが、県立博物館で導入するということは、かなり、安くなったんですかね?
どんどんコストが安くなることを期待したいですね。

東芝テックが福井県立恐竜博物館内のミュージアムショップにRFIDを活用したセルフレジを導入したことについて、あなたはどう思われましたか?


ドローンで全自動棚卸!

LogisticsTodayによると、ロジスティクス自律制御システム研究所(ACSL、東京都江戸川区)とブルーイノベーション(東京都文京区)は、先日、国産ドローンを活用した屋内DX(デジタルトランスフォーメーション)サービスを共同開発したと発表しました。

共同開発したサービスは、ACSLの国産産業用ドローン「Mini」(ミニ)と、ブルーイノベーションのソフトウエアプラットフォーム「Blue Earth Platform」(BEP)を連携させたもので、5G通信とエッジAIを組み合わせた「プラント自動点検」と、RFIDリーダーを搭載した「倉庫内自動在庫管理」の2種類です。

このうちRFIDドローンによる倉庫内在庫管理ソリューションは、RFIDリーダーを搭載したドローンでデータを取得し、倉庫内棚卸作業のデジタル化・効率化につなげる仕組みで、トッパン・フォームズが協力しています。

BEPを活用することで複数のドローンによる同時棚卸や、AGVやロボットなどの既存システムと連携させ、ほかの作業工程も含めた統合管理が可能となります。
今後は業務終了後にドローンなどの既存システムが全自動で在庫棚卸を行い、翌朝に結果を確認できるサービスにも対応するそうです。

入出庫管理やその情報をもとにした理論在庫管理など倉庫内業務を対象としたデジタル化が進んでいるなか、棚卸業務は依然として作業員による計数作業が主流となっており、ほかの業務を止めて人手で棚卸作業を行う効率の悪さや高所作業に伴う危険性が指摘されていました。

僕自身、棚卸の重要性を以前から認識しており、棚卸の書籍を出版し、14回増刷になっているのですが、こういう時代になることは数年前から色々なところで言っていました。
網羅性が担保できるのか、カウント時に把握すべき破損や汚れなどをどうしていくかなど難しい問題もあると思いますが、スピードと精度を高めるには必要なことだと思います。
そのためには、RFIDがかなり安くなることが前提でしょうが。

ドローンで全自動棚卸することについて、どう思われましたか?


大日本印刷がRFID導入前の運用効果検証キットの提供開始!

大日本印刷(DNP)はこのほど、RFID導入前の効果検証が行えるトライアルキットを開発しました。
入出荷・棚卸し管理や読み取りの効果を把握できる「DNP RFID導入検証支援サービス」の提供を開始しました。

製造、流通、小売など各現場の業務効率化を支援するRFIDは、サプライチェーン上の商品の流れを可視化して食品ロス削減や在庫の偏重解消にも寄与。また工程内で取得したデータを分析して次の商品企画に反映したり、より効果的に販売するために店頭の配置を検証したりと、製造・配送・販売の各チャネルで有用性が期待されています。

RFIDの運用においては、事前の導入効果検証や課題抽出が重要。従来は機器を購入したり簡易システムを開発したりと負荷が大きく、RFID導入を妨げる一因となっていました。
こうした背景から、1999年からRFID事業を展開しているDNPは今回、効果検証を安価かつ短期間で実施できる導入支援サービスを開始します。

このサービスは、システムと機器の貸与、現場でのRFID読み取り環境構築のノウハウを提供して、2つの専用アプリで検証・評価レポートの作成を支援するというものです。
RFIDの読み取りを検証評価する「RFID読取評価アプリ」は、ハンディーリーダーライター・据置型リーダーライターの2機種を使用します。
RFIDとバーコードの読み取り速度を比較し、導入効果試算に役立つデータを作成するほか、RFIDの貼付位置やリーダーライターのアンテナの位置の違いによる読み取り速度の差を比較して、RFIDタグの最適な貼付位置や最適なアンテナ設置位置などを導き出すものです。

また、入荷・出荷・棚卸のステータス管理が行える「サプライチェーン業務系アプリ」は、製品の入荷・出荷・棚卸の結果を可視化するクラウドサービスです。

これら支援作業と機器貸出の一式で30万円(税別)からです。
DNPは「新型コロナウイルスの感染防止対策の一環で、非接触での業務も増えている。その効率化に向けて、数メートル離れていても複数のIDを読み取ることのできるRFIDの導入を検討している企業が、計画から評価まで一連の概念実証をスムーズに実施できるよう支援するもの」とサービスを説明しています。

僕自身、7年半ほど前に棚卸の書籍を出版し、何度も増刷になっていますが、改訂版を出すときには、当然、RFIDのことを付け加えないと思っています。
RFIDを使っているユニクロのレジは、感動すらおぼえますよね。
こういうのをきっかけに、RFIDが少しでも普及し、コストも安くなってくれればなぁと思います。

大日本印刷がRFID導入前の運用効果検証キットの提供を開始したことについて、どう思われましたか?


東レがICタグの価格を5分の1に!

 日本経済新聞によると、東レは衣料など商品の在庫管理などに使うICタグを、1枚2円以下と従来の5分の1程度のコストで生産できる技術を開発したようです。
情報などを記録する集積回路を特殊な素材で直接印刷し、生産工程を大幅に減らせます。
ICタグは、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」にとって重要な部品です。
価格が大幅に下がり、関連サービスの普及を後押しすることになるでしょう。

 東レは、2022年度にもICタグ事業に参入するようです。
ICタグはICチップとアンテナを内蔵し、商品の製造日や賞味期限といった情報を記録できます。
無線自動識別(RFID)機能を持ち、記録された情報は専用の機械を使って無線で読み取ることができます。
アメリカのエイブリィ・デニソンなど欧米企業が約6割の世界シェアを占め、日本勢では村田製作所や大日本印刷などが手掛けています。

東レは炭素原子が筒状につながった高強度のカーボンナノチューブを原料として、一定の条件下で導電性を示す新素材を開発しました。
これを活用し、ICタグの記憶装置となるICチップを基板フィルムに直接印刷・形成できるようになったのです。

従来品は、ICチップを組み込むための生産工程などがコスト増の原因でした。
東レの新技術で生産コストは5分の1程度になります。
東レは、1枚当たりの販売価格を2円以下に設定する方針で、従来品の10~20円前後と比べ大幅に安くなります。
東レは、衣料、食品大手などに売り込むようです。
2020年代後半に年500億円規模の売上高をめざすそうです。

調査会社の富士キメラ総研(東京都中央区)によると、ICタグなどのRFIDの世界市場規模は2022年度に4,090億円程度と2019年度(予測)比で1.6倍となる見通しです。

近年は、企業がICタグなどのセンサーを使って商品などの情報を常時収集・分析し、業務の効率化などにつなげる動きが広がっています。
例えば「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングはICタグを活用し、商品の搬送や検品作業を大幅に効率化しています。

価格低下でICタグを使った商品が増えれば、企業に加え、消費者が自分で会計を済ませることが可能なセルフレジなど利便性の高いサービスの普及にもつながりそうです。
需給や繁閑をみて価格を変動させる「ダイナミックプライシング」などの新しい小売りシステムの普及のカギも握るでしょう。

東レは、2020年代後半にはICタグの市場規模が1兆円以上になると見込んでいます。
国内でも経済産業省がコンビニ大手各社と、2025年までに全商品にICタグをつける構想を掲げるなど、急速な需要の拡大が見込まれます。

ユニクロに行くと、レジでカゴを渡すとICタグを読み込んで、即座にお会計ができるのですごいなぁと思いますね。
個人的には、ロングセラーになっている『実地棚卸』の本を出版していますが、ずっと、ICタグが安くなって世間一般に普及しだすと、在庫管理はもちろんですが、『実地棚卸』のやり方も大きく変わると言ってきました。
それゆえ、数年前から改訂版を出したいと思っていましたが、そろそろ書き始めないといけなくなってきましたね。
早く価格が下がり、ICタグが普及し、『実地棚卸』も楽になる時代が来て欲しいですね。

東レがICタグの価格を5分の1にすることについて、どう思われましたか?


中間決算棚卸のポイント(5/5)

 日本においては3月決算の企業が多いと思いますが、3月決算企業の場合、9月末にも、在庫の棚卸(中間決算棚卸)を実施するかもしれません。
そこで、今週1週間は、中間決算棚卸について書きたいと思います。
既に『事前準備』『当日の作業(1/3)』『当日の作業(2/3)』『当日の作業(3/3)』について書きましたので、最終日の本日は、『後日のフォロー』についてです。

 なお、今週は、以下の内容で書いています。

事前準備

当日の作業(1/3)

当日の作業(2/3)

当日の作業(3/3)

後日のフォロー

 あまり実行していない会社が多いように感じていますが、中間決算棚卸の後日のフォローは非常に重要なものなのです。

 中間決算棚卸当日に、中間決算棚卸講評会を行うことは昨日述べましたが、後日、経営改善の観点から、中間決算棚卸に関与しなかった人も含めた在庫関係者が一堂に介し、中間決算棚卸検討会議を行うことが望ましいと言えます。

中間決算棚卸検討会議の議題としては、以下のようなものが考えられます。

A

棚卸差異の発生原因とこれに対する予防対策

B

中間決算棚卸方法の改善

C

不良在庫の発生原因の把握と予防対策、最終的な処分

D

保管設備の環境、整備及び保管管理の状況

E

在庫量の適正化などについての指摘

F

物流費用等に関する配慮

A『棚卸差異の発生原因とこれに対する予防対策』ですが、棚卸差異の発生原因とこれに対する予防対策を検討します。
これにより、今後の中間決算棚卸や記帳や業務フローなどの精度を高めることができ、中間決算棚卸の時間短縮や業務の効率化などにつながります。

B『中間決算棚卸方法の改善』ですが、中間決算棚卸担当者や立会者が中間決算棚卸方法の要改善点に気付くことがありますので、これらの要改善点を全社的に集約し、今後の中間決算棚卸方法の改善について検討します。
改善は、とある部門での改善のみならず、全社的な改善につながることもあります。

C『不良在庫の発生原因の把握と予防対策、最終的な処分』ですが、中間決算棚卸の過程で不良在庫が発見されることもあります。
不良在庫の発生原因を把握するとともに、今後の予防対策を検討します。
また、不良在庫を廃棄する・廉価で売却するなど、今後どう処分していくかの処分方法を検討します。

D『保管設備の環境、整備及び保管管理の状況』ですが、中間決算棚卸時に、倉庫の雨漏りが発見されたり、防虫対策等の不備が発見されたりすることがあります。
また、在庫が直射日光に当たっていたり、倉庫の湿気が多かったり、在庫が雨ざらしになっていることなどに気付いたりします。
これらの保管設備の環境、整備及び保管管理の状況を全員で共有し、今後どうするかの検討を行います。

E『在庫量の適正化などについての指摘』ですが、中間決算棚卸の過程で現場を見ることにより、想像していたより在庫が多かったことに気付くことがあります。
また、適正在庫に問題があることに気付くこともあります。
中間決算棚卸をきっかけに、在庫量の適正化も検討しても良いでしょう。

F『物流費用等に関する配慮』ですが、中間決算棚卸時には、入出庫の状況も確認することになりますが、1回当たりの発注量や出荷量によっては、物流費用等が多大にかかってしまっていることもあります。
中間決算棚卸の過程において、これらに気付くこともありますので、物流費用等の検討を行うことも有益でしょう。

詳細については、20132月に中央経済社から出版した拙著『誰も教えてくれなかった中間決算棚卸の実務Q&A(http://www.amazon.co.jp/dp/4502470309/)に載っていますので、ご覧くださいね。

中間決算棚卸の後日のフォローについて、お分かりいただけましたか?


中間決算棚卸のポイント(4/5)

 日本においては3月決算の企業が多いと思いますが、3月決算企業の場合、9月末にも、在庫の棚卸(中間決算棚卸)を実施するかもしれません。

 そこで、今週1週間は、中間決算棚卸について書きたいと思います。
既に『事前準備』『当日の作業(1/3)』『当日の作業(2/3)』について書きましたので、4日目の本日は、『当日の作業(3/3)』についてです。

 なお、今週は、以下の内容で書きたいと考えています。

事前準備

当日の作業(1/3)

当日の作業(2/3)

当日の作業(3/3)

後日のフォロー

 既に1か月を切っている9月末の中間決算棚卸の事前準備として、今から何をしますか?
当日の流れは、一般的に、以下のようになっています。

A

中間決算棚卸の説明

B

棚卸原票を配布し、コントロールシートに配布枚数などを記入

C

在庫をカウントし、棚卸原票に記入

D

立会者のテストカウント及び棚卸原票()の回収

E

棚卸集計表による集計及び在庫管理システムへの入力

F

差異分析の実施

G

棚卸原票の回収枚数などをコントロールシートで確認

H

現物または棚に添付された棚卸原票()の回収

I

中間決算棚卸講評会

既にAFについては書きましたので、今日はGIを取り上げます。

G『棚卸原票の回収枚数などをコントロールシートで確認』ですが、棚卸原票を、①使用したもの、②書き損じたもの、③未使用のものに分けて回収し、配布した枚数と回収した枚数が一致し、棚卸原票のすべて回収されていることを確かめます。
これによって、モレがないこと、ダブリがないこと、後日追加で記入といった不正に利用されないことが担保されます。

H『現物または棚に添付された棚卸原票()の回収』ですが、現物または棚に、2枚複写の棚卸原票のうち()の方が残っていますので、回収します。

I『中間決算棚卸講評会』ですが、中間決算棚卸終了後、中間決算棚卸責任者は中間決算棚卸の関係者を集めて、中間決算棚卸講評会を開催し、総括を行います。
今回の中間決算棚卸の問題点などについても取り上げ、次回以降の棚卸及び今後の業務改善に役立てるようにします。

詳細については、20132月に中央経済社から出版した拙著『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A(http://www.amazon.co.jp/dp/4502470309/)に載っていますので、ご覧下さいね。

中間決算棚卸の当日の作業について、お分かりいただけましたか?


中間決算棚卸のポイント(3/5)

 そこで、今週1週間は、中間決算棚卸について書きたいと思います。
既に『事前準備』『当日の作業(1/3)』について書きましたので、3日目の本日は、『当日の作業(2/3)についてです。

 なお、今週は、以下の内容で書きたいと考えています。

事前準備

当日の作業(1/3)

当日の作業(2/3)

当日の作業(3/3)

後日のフォロー

 既に1か月を切っている9月末の中間決算棚卸の事前準備として、今から何をしますか?
当日の流れは、一般的に、以下のようになっています。

A

中間決算棚卸の説明

B

棚卸原票を配布し、コントロールシートに配布枚数などを記入

C

在庫をカウントし、棚卸原票に記入

D

立会者のテストカウント及び棚卸原票()の回収

E

棚卸集計表による集計及び在庫管理システムへの入力

F

差異分析の実施

G

棚卸原票の回収枚数などをコントロールシートで確認

H

現物または棚に添付された棚卸原票()の回収

I

中間決算棚卸講評会

昨日はACについて書きましたので、今日はDFを取り上げます。
GIは明日書く予定です。

D『立会者のテストカウント及び棚卸原票()の回収』ですが、立会者が、網羅性(カウントが漏れているものはないか?)と実在性(棚卸原票に記入されているものが実際に存在するか?)の観点から、サンプルベースでテストカウントを行います。
カウントミスがないようであれば、2枚複写の棚卸原票のうちの1枚である()を剥がして回収します。
企業が独自のルールを決めることになりますが、一定数もしくは一定率以上のカウントミスがあれば、そのエリアを再カウントすることになります。

E『棚卸集計表による集計及び在庫管理システムへの入力』ですが、回収した棚卸原票()をもとに、同じものが1箇所ではなく複数箇所に保管していることもあるため、棚卸集計表で集計のうえ、在庫数量などを在庫管理システムに入力していきます。

F『差異分析の実施』ですが、帳簿上の在庫数量と、カウントに基づく実際の在庫数量とを比較します。
差異が生じているものについては、再カウントを行ったり、入出庫の記録にモレや誤りがないかを確認するなどして差異分析を行い、最終的な在庫数量を確定します。
なお、カウントが漏れていたり、カウントミスをしてしまうこともあるため、必ずしも、カウントした在庫数量が正しいとは限りませんので、ご留意下さい。

詳細については、20132月に中央経済社から出版した拙著『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A(http://www.amazon.co.jp/dp/4502470309/)に載っていますので、ご覧下さいね。

中間決算棚卸の当日の作業について、お分かりいただけましたか?


中間決算棚卸のポイント(2/5)

 そこで、今週1週間は、中間決算棚卸について書きたいと思います。
昨日は『事前準備』について書きましたので、2日目の本日は、『当日の作業(1/3)』についてです。

 なお、今週は、以下の内容で書きたいと考えています。

事前準備

当日の作業(1/3)

当日の作業(2/3)

当日の作業(3/3)

後日のフォロー

 既に1か月を切っている9月末の中間決算棚卸の事前準備として、今から何をしますか?
当日の流れは、一般的に、以下のようになっています。

A

中間決算棚卸の説明

B

棚卸原票を配布し、コントロールシートに配布枚数などを記入

C

在庫をカウントし、棚卸原票に記入

D

立会者のテストカウント及び棚卸原票()の回収

E

棚卸集計表による集計及び在庫管理システムへの入力

F

差異分析の実施

G

棚卸原票の回収枚数などをコントロールシートで確認

H

現物または棚に添付された棚卸原票()の回収

I

中間決算棚卸講評会

今日はACを取り上げます。
DFは明日、GIは明後日書きたいと思います。

A『中間決算棚卸の説明』ですが、昨日書いたとおり、中間決算棚卸当日ではなく、事前に説明等をしておくべきものですが、確認のために、中間決算棚卸の当日に、中間決算棚卸管理者が、当日のスケジュール・中間決算棚卸の留意点・カウントを行うペア(カウントは通常21組で行ないます。)・カウントを行うエリアなどの説明を行います。

B『棚卸原票を配布し、コントロールシートに配布枚数などを記入』ですが、中間決算棚卸管理者が、棚卸原票をカウント担当者に配布し、コントロールシートに、エリア・担当者名・棚卸原票No.ex.151200)・配布枚数などを記入します。

C『在庫をカウントし、棚卸原票に記入』ですが、21組のうちカウント担当者が在庫をカウントし、もう1人の記入担当者が棚卸原票に数量などを記入し、押印します。
カウントが終われば、現物または棚に、棚卸原票を貼り付けるのです。
これは、その現物または棚のカウントが終わったことが分かるようにするためです。

詳細については、20132月に中央経済社から出版した拙著『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A(http://www.amazon.co.jp/dp/4502470309/)に載っていますので、ご覧下さいね。

中間決算棚卸の当日の作業について、お分かりいただけましたか?


中間決算棚卸のポイント(1/5)

 そこで、今週1週間は、中間決算棚卸について書きたいと思います。
初日の本日は、『事前準備』についてです。

 なお、今週は、以下の内容で書きたいと考えています。

事前準備

当日の作業(1/3)

当日の作業(2/3)

当日の作業(3/3)

後日のフォロー

 既に1か月を切っている9月末の中間決算棚卸の事前準備として、今から何をしますか?
以下の点に留意することが必要だと考えられます。

責任者・管理者の選任

中間決算棚卸計画書の作成

中間決算棚卸マニュアルの作成

中間決算棚卸計画書及び中間決算棚卸マニュアルの配布

中間決算棚卸現品の事前準備

その他

①『責任者・管理者の選任』ですが、誰の責任で中間決算棚卸を行うかを明確にします。
『中間決算棚卸全体を統括する責任者』と、『現場レベルでの責任者』とを選任します。
また、現場では『責任者を補助する管理者』も選任することが必要となってきます。

②『中間決算棚卸計画書の作成』ですが、責任者・管理者の選任、中間決算棚卸当日のタイムスケジュール、中間決算棚卸の対象範囲、チーム編成及び作業分担などを決めることになります。

③『中間決算棚卸マニュアルの作成』ですが、中間決算棚卸をルールをきちんと決めたうえで実施するため、作成する必要があります。
この『中間決算棚卸マニュアル』をきちんと作成しておかないと、それぞれが独自のルールで勝手に中間決算棚卸を行うことになり、全社的に統一された中間決算棚卸、つまり、効率的な中間決算棚卸を行うことができません。

④『中間決算棚卸計画書及び中間決算棚卸マニュアルの配布』ですが、中間決算棚卸の関係者に中間決算棚卸のことを理解しておいてもらうために、事前に配布します。
企業によっては、事前に中間決算棚卸の関係者を一同に集めて説明会を開催することもありますが、中間決算棚卸を効率的かつ効果的に行うために有効な手段と言えるでしょう。

⑤『中間決算棚卸現品の事前準備』ですが、中間決算棚卸をスムーズに行うため、事前に整理整頓を行っておきます。
普段からも必要ですが、効率的かつ効果的に中間決算棚卸を行うためには、整理整頓は重要です。

⑥『その他』ですが、中間決算棚卸当日の効率性を高めるため、中間決算棚卸当日までに動きがないと思われるものは事前にカウントしておいたりします。
ただし、事前にカウントしたものについては、まだカウントしていないものと明確に区別できるようにしておく必要があります。
あと、コントロールシート、棚卸原票などの準備も必要となります。

詳細については、20132月に中央経済社から出版した拙著『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A(http://www.amazon.co.jp/dp/4502470309/)に載っていますので、そちらをご覧下さいね。

中間決算棚卸の事前準備について、お分かりいただけましたか?

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BLOG(国税通則法)

納付税額300万円超の無申告加算税を30%に引上げ!

TabisLandによると、加算税は、申告納税制度の定着と発展を図るため、申告義務が適正に履行されない場合に課されるもので、一種の行政制裁的な性格があります。
令和5年度税制改正においては、納税環境の整備の一環として、加算税制度が見直されます。
まず、無申告加算税の割合(現行15%(納付すべき税額が50万円を超える部分は20%))について、納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合が30%に引き上げられます。

調査通知以後に、かつ、その調査があることで更正・決定があるべきことを予知(「更正予知」)する前にされた期限後申告・修正申告に基づく無申告加算税の割合(現行:10%(納付すべき税額が50万円を超える部分は15%))は、上記の納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合を25%とします。
また、納付すべき税額が300万円を超えることにつき納税者の責めに帰すべき事由がない場合の適用に関する所要の措置が講じられます。

次に、過去に無申告加算税又は重加算税が課されたことがある場合に無申告加算税・重加算税の割合を10%加重する措置の対象に、前年度及び前々年度の国税について、期限後申告・修正申告(調査通知前に、かつ、更正予知する前にされたものを除く)または更正・決定(「期限後申告等」)があった場合において、無申告加算税・無申告重加算税が課される者が行う更なる無申告行為が加えられます。

つまり、前年度及び前々年度に無申告加算税(期限後申告・修正申告が、調査通知前に、かつ、更正予知する前にされたものであるときに課されたものを除く)や無申告加算税に代えて課される重加算税(「無申告加算税等」)を課されたことがあるとき、またはその無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認めるときに、その期限後申告等に基づき課する無申告加算税等を10%加重する措置の対象に加えられることになるのです。

ただし、過少申告加算税、源泉徴収等による国税に係る不納付加算税及び重加算税(無申告加算税に代えて課されるものを除く)については、上記の見直しの対象としません。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。

今までは、真面目に期限内に申告している人より、無申告の人が税務調査やお尋ねによりあとから出すほうが有利なこともあり、どう考えてもおかしいなぁと思うことがあったのですが、少しずつ改正されていることはいいことだと思います。
税務調査も無申告の人を増やし、罰則を与えることにより、きちんと申告するようにしないと、真面目に申告している人が馬鹿らしくなると思いますので、無申告の人には厳正に対処してほしいと思います。

納付税額300万円超の無申告加算税を30%に引上げることについて、どう思われましたか?


確定申告などの押印が廃止へ!

政府・与党は確定申告などの税務手続きで押印の原則廃止を検討するようです。
2021年度の税制改正で検討し、年末にまとめる与党税制改正大綱に反映させます。
新型コロナウイルス禍を受けて菅義偉政権が掲げる社会のデジタル化の一環です。
税に関わる他の書類でも「脱ハンコ」を進めます。

加藤勝信官房長官は、先日の記者会見で、「政府全体として不要な押印は廃止する方向で検討を進めている。国税関係手続きでの押印についても、納税者の利便性向上の観点から財務省で見直しを検討している」と述べました。

現在は国税通則法で納税手続きの際に必要な書類には原則、押印を求める規定があります。
オンラインで国税電子申告・納税システム「e-Tax」を使えば電子署名で済みますが、書類で申告するときは押印が求められます。
2021年度税制改正で結論を得て、法改正を検討するようです。

確定申告以外では財産形成貯蓄制度(財形)の届け出書などでも押印が求められています。
こうした書類でも不要にする方向です。
財務省は税に関する手続きのオンライン化を加速する契機にしたい考えのようです。

与党税制調査会幹部も押印廃止には前向きです。
菅首相は、先日の規制改革推進会議で、押印廃止に向けて行政全体の手続きを改めて見直すよう指示していました。
河野太郎規制改革相は行政手続きで求める押印のうち、99%を廃止できる見込みだと発表済みです。

菅さんになって一気に進みましたね。
うちの事務所は基本的に電子申告をしていますので、あまり影響ないかもしれませんが、望ましいことですね。
あとは、押印のみならず、e-Tax(国税)とeLTAX(地方税)の統合、届出の際の添付書類の削減なども進めてほしいですね。

確定申告などの押印が廃止されることについて、どう思われましたか?

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令和5年度税制改正大綱(速報)

2022年12月16日(金)

本日2022年12月16日に『令和5年度税制改正大綱』が公表されました。
ここ数年、小粒な改正が続きましたが、今回は結構改正があります。
ただし、事前に報道等も多く、報道のとおりで、驚くようなものはありませんが。
(個人的に興味があるのは資産課税ですので)主な改正は、以下のとおりです。

二 資産課税
1 資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築
(1)相続時精算課税制度について、次の見直しを行う。
①相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。

②相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用する。

③その他所要の措置を講ずる。

(2)相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等について、次の見直しを行う。
①相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。

②その他所要の整備を行う。

2 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
(1)直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、次の措置を講じた上、その適用期限を3年延長する。
①信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合において、当該贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満である場合等であっても、その死亡の日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を、当該受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなす。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税について適用する。

②受贈者が30歳に達した場合等において、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとす る。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用する。

③本措置の対象となる教育資金の範囲に、都道府県知事等から国家戦略特別 区域内に所在する場合の外国の保育士資格を有する者の人員配置基準等のー定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けた認可外保育施設に支払われる保育料等を加える。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に支払われる教育資金について適用する。

④その他所要の措置を講ずる。

(2)直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、受贈者が50歳に達した場合等において、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとした上、その適用期限を2年延長する。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用する。

今後は相続税対策が変わると思いますが、とりあえず、2023年は贈与が増えるでしょうね。

ちなみに、全文は以下からご覧ください。
https://storage.jimin.jp/pdf/news/information/204848_1.pdf

令和5年度税制改正大綱について、どう思われましたか?


金融所得課税と1億円の壁!

ITmedia ビジネスオンラインによると、日経平均株価は2021年9月24日以降、10月7日まで8営業日連続で下落し、下げ幅は2,700円を超えました。
特に、岸田文雄氏が自民党新総裁に選出されて以降、下げ足が早まったように見受けられます。
岸田氏は、成長と分配の好循環に向けた政策の1つとして、「金融所得課税」の見直しを掲げており、足元の株安はこれを嫌気した反応との声も市場で聞かれます。

金融所得課税とは、株式譲渡益や配当金などの金融所得に課される税金で、現在、税率は一律20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。

岸田氏は2021年10月4日の記者会見で、改めて金融所得課税の見直しを検討する意向を示しており、今後は年末の2022年度税制改正で、一律20.315%の税率を引き上げる案や、高所得者の負担が重くなるよう累進的に課税する案などについて、議論される見通しです。

なお、金融所得の税率は、前述のとおり一律20.315%に定められています。
そのため、金融所得の割合が相対的に高い高所得者層は、株式譲渡益がいくら大きくなっても、累進的に課税されることはなく、税率は20.315%で変わらないということになります。
このような状況から、現行の金融所得課税は、金持ちを優遇する制度になっているという批判が根強くみられます。

一方、給与所得の税率は、所得が増えるほど累進的に課税され、最高税率は課税所得4,000万円超について設定されている45%です。
このほかに住民税が10%かかります。
そのため、年間所得の増加につれ、給与所得が多く金融所得が少ない場合は所得税の負担率が上昇し、給与所得が少なく金融所得が多い場合は負担率が低下することが起こり得ます。
実際、所得税の負担率は、年間所得が1億円を超えると低下しており、これを「1億円の壁」といいます。

岸田氏は、金融所得課税を見直すことで、1億円の壁を打破し、中低所得者層への配分を増やすことを検討しています。
ただし、金融所得の税率を一律に引き上げた場合、一定程度の税収増は見込まれるものの、増税前の株式売却や株式投資の敬遠につながる恐れもあります。
また、累進課税とした場合、対象を高所得者層に絞ることはできますが、配分の原資となる税収は小さくなるため、具体的な方向性は今後の議論を待つことになります。

なお、岸田氏が改めて金融所得課税を見直す意向を示した10月4日夜の記者会見以降、日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)および業種別株価指数の動きですが、10月6日は両指数で上昇銘柄数と下落銘柄数が拮抗し、業種別では原油高や長期金利上昇の影響もうかがえます。
金融所得課税の見直しは、足元の株安要因の1つと思われますが、市場では比較的冷静な物色の動きもみられます。

この後、岸田氏は今度の税制改正には織り込まないと発言したようですが、将来的には改正するんでしょうね。
数年前から盛んに言われており、税制改正大綱も『貯蓄から投資へ』というスタンスですが、これに逆行するのではないかと思いますね。
あとは、実現していない単なる含み益であっても、株価が上昇しているということは消費者のマインドに好影響を与えると思いますので、この辺りもマイナスに働くかもしれませんね。
金持ち優遇と批判されたりしますが、やはり、お金持ちが消費を支えているという面は否定できないのではないかと思っています。
しばらくは、改正しないようなことを発言したりしていますが、個人的には、外国人投資家が減ったり、外国に移住するお金持ちが増えたりするような政策は避けてほしいなぁと思います。

金融所得課税と1億円の壁について、どう思われましたか?


令和3年度税制改正大綱(速報)

本日2020年12月10日に『令和3年度税制改正大綱』が公表されました。
相続税と贈与税の一体化はなされず、個人的には、予想どおり、非常に小粒な改正だと感じます。
(個人的に)主な改正は、以下のとおりです。

一 個人所得課税
4 その他
(3)退職所得課税の適正化
勤続期間5年以下の退職者に対する退職金
(短期退職手当等の収入金額―退職所得控除)が300万円を超える部分については、1/2とする措置を適用しない
(注)令和4年分以後の所得税について適用

二 資産課税
3 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
(1)直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、一定の措置を講じた上、その適用期限を2年延長

(2)直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、一定の措置を講じた上、その適用期限を2年延長

三 法人課税
2 株式対価M&Aを促進するための措置の創設
法人が会社法の株式交付により、その有する株式を譲渡し、株式交付親会社の株式等の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べる(所得税についても同様)

四 消費課税
3 その他
(6)金又は白金の地金の課税仕入に係る仕入税額控除の要件として保存することとされている消費税法上の本人確認書類のうち、在留カードの写し並びに国内に住所を有しない者の旅券の写し及びその他これらに類する書類をその対象から除外
(注)令和3年10月1日以後に国内において事業者が行う課税仕入れについて適用

七 納税環境整備
1 納税関係書類における押印義務の見直し
提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、以下に掲げる税務関係書類を除き、押印しないこととするほか、所要の措置を講ずる。
(1)担保提供関係書類及び物納手続関係書類のうち、実印の押印及び印鑑証明書の添付を求めている書類
(2)相続税及び贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類
(注)令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用。なお、施行日前においても、運用上、押印がなくとも改めて求めない。

ちなみに、全文は以下からご覧ください。
令和3年度税制改正大綱

令和3年度税制改正大綱について、どう思われましたか?


富裕層への課税を強化し海外住宅投資の節税を認めない方向!

 日本経済新聞によると、政府・与党は海外の不動産への投資を通じた節税をできないようにする方針のようです。
現在は高額な海外物件への投資で出る赤字と国内の所得を合算して税負担を減らせますが、この合算を認めないこととするようです。
海外の不動産への投資は富裕層に多い節税策で、ほかの納税者との間で公平でない仕組みと判断しました。

与党の税制調査会で詳細を詰めたうえで、2020年度の税制改正大綱に所得税法の見直しを盛り込むようです。
2021年分以降の所得税に適用される見通しです。

この節税はアメリカやイギリスなどで高額な中古物件を購入し、家賃収入を上回る減価償却費などの赤字を発生させて日本での所得を圧縮するというものです。
2020年度の税制改正では、海外の中古物件で生じた赤字はなかったものと扱い、日本国内での損益通算には使えないようにするようです。

節税の背景には、日本と欧米で中古住宅の平均寿命や利用可能年数の考え方が違うことがあります。
長い間使える中古物件でも、日本のルールに沿って計算すると使用可能年数が4~9年になります。
本来なら10年以上使える物件の価値を4年程度でゼロにするため、決算上は大きな赤字が発生するのです。

高額な物件を買うほど節税の恩恵が得られるため、富裕層を中心に利用されています。
会計検査院が富裕層の多い東京都の麹町税務署管内などで調べたところ、海外の中古物件で延べ337人が39億8千万円超の赤字を計上していたそうです。

会計検査院が「公平性を高める検討が必要」と指摘し、政府・与党で対応を議論してきました。
この節税策は、不動産会社などがセミナーを開いて勧誘することも多くなっています。
適用できなくなれば、高収入の個人や不動産を取り扱う企業に影響が広がりそうです。

最近、会計検査院が指摘した事項については税制改正が早いと言われたりしていますが、今回もそうですね。
個人的には、当たり前の改正だとは思いますが、海外不動産投資のことが記載されたチラシなどをまぁまぁ目にしますので、そういう企業などは影響が大きいでしょうし、税制改正のリスクの説明をした、していないでもめそうな気はしますね。

富裕層への課税を強化し海外住宅投資の節税を認めない方向であることについて、どう思われましたか?


多国籍企業の税逃れ対策でOECDが複数国平均での課税を検討!

 時事ドットコムニュースによると、経済協力開発機構(OECD)がまとめる多国籍企業による税逃れ防止策が、先日、分かったようです。
租税回避地にグループ会社を置いて利益を移転するケースでは、各国・地域共通の法人税率の最低水準を設定し、租税回避地で実際に払っている法人税を差し引いて課税するようです。
税逃れが複数の国・地域に及ぶ場合には、それらの地域の法人税の平均を元に課税する案などが議論されています。

OECDが先日公表し、新たな国際課税に関して2020年中に策定する最終報告書に盛り込まれる見通しです。
現状では、多国籍企業が租税回避地にあるグループ会社に特許料や使用料の支払いといった名目で利益を移し、法人税の負担を免れるといった例が相次いでいます。
これに対し、租税回避地の低い税率で納められているグループ会社の法人税を、共通の最低水準から差し引いた上で、本社のある国が多国籍企業に課税できるようにします。
例えば、法人税率の最低水準を15%、租税回避地を2%とすると、差し引いた13%の法人税を課税できます。

問題はグループ会社が複数の国・地域にあるケースです。
共通税率の最低水準を15%、グループ会社の所在地をA国(10%)、B国(2%)と仮定し、税率の平均を採用すると、法人税率は6%となり、本社のある国は多国籍企業に対してそれぞれの国で差額分の9%を新たに課税できます。
平均を取ると、税率の高い国の影響で数字が高めに出やすい。国ごとに税率を差し引くケースに比べ、課税対象部分が小さくなるため、低税率国には有利となりますが、高税率国に不利となります。

日本は国ごとに差し引く案を支持していますが、平均案の方が極端に税率の低い国にも受け入れられやすく、有力視されているそうです。
法人税率の最低水準を決めること自体、各国の主権に関わるため容易ではなく、こうした面も含め協議は難航が予想されます。

国ごとに税率などには政策的なものがあるでしょうから、難しいでしょうね。
個人的には、色々と研究して、可能な限り税金の支払いを減らすということは営利企業として当然に経済的合理性があると思っていますが、そういう流れではなく、防ぐということになってきていますね。
いわゆるGAFAの節税が度を越しているということなのでしょうが。

多国籍企業の税逃れ対策でOECDが複数国平均での課税を検討していることについて、どう思われましたか?


平成31年度税制改正大綱(速報)

 当初の予定より2日遅れとなりましたが、本日2018年12月14日に『平成31年度税制改正大綱』が公表されました。
個人的には、新聞等で取り上げられていた『個人事業者の納税猶予制度』が目玉だと思いますが、それ以外は、それほど目立ったものはないなぁという小粒な改正だと感じます。
(個人的に)主な改正は、以下のとおりです。

一 個人所得課税
5その他
(3)個人が保有する資金決済に関する法律に規定する仮想通貨につき、その者の所得の金額の計算上必要経費に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となる期末において有する仮想通貨の価額は、移動平均法又は総平均法により算出した取得価額をもって評価した金額とするほか、所要の措置を講ずる。

(10)個人住民税における都道府県又は市区町村(以下「都道府県等」という。)に対する寄附金に係る寄附金税額控除について、次の見直しを行う。
①総務大臣は、次の基準に適合する都道府県等をふるさと納税(特例控除)の対象として指定することとする。
イ 寄附金の募集を適正に実施する都道府県等
ロ イの都道府県等で返礼品を送付する場合には、以下のいずれも満たす都道府県等
(イ)返礼品の返礼割合を3割以下とすること
(ロ)返礼品を地場産品とすること
②①の基準は総務大臣が定めることとする。
③指定は、都道府県等の申出により行うこととする。
④総務大臣は、指定をした都道府県等が基準に適合しなくなったと認める場合等には、指定を取り消すことができることとする。
⑤総務大臣は指定をし、又は指定を取り消したときは、直ちにその旨を告示しなければならないこととする。
⑥基準の制定や改廃、指定や指定の取消しについては、地方財政審議会の意見を聴かなければならないこととする。
⑦その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成31年6月1日以後に支出された寄附金について適用する。

(11)子どもの貧困に対応するため、次の措置を講ずる。
①児童扶養手当の支給を受けている児童の父又は母のうち、現に婚姻をしていない者又は配偶者の生死の明らかでない者(これらの者の前年の合計所得金額が135万円を超える場合を除く。)を個人住民税の非課税措置の対象に加える。
②個人住民税の申告書、給与所得者の扶養親族申告書及び給与支払報告書等について、上記①の者に該当する旨の記載をし、申告することとする等の所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成 33 年度分以後の個人住民税について適用する。

二 資産課税
1 個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設等
(1)個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度の創設
①概要
認定相続人が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、相続等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納税を猶予する。

(2)個人事業者の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度の創設
①認定受贈者(18歳(平成34年3月31日までの贈与については、20歳)以上である者に限る。以下同じ。)が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、贈与により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定受贈者が納付すべき贈与税額のうち、贈与により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する贈与税の納税を猶予する。
(注)上記(1)及び(2)の改正は、平成31年1月1日以後に相続等又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。

(3)特定事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し
小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等(当該宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合を除く。)を除外する。
(注)上記の改正は、平成31年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用する。ただし、同日前から事業の用に供されている宅地等については、適用しない。

(2)非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、次の措置を講ずる(特例制度についても同様とする。)。
1 贈与税の納税猶予における受贈者の年齢要件を18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げる。
2 一定のやむを得ない事情により認定承継会社等が資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合においても、その該当した日から6月以内にこれらの会社に該当しなくなったときは、納税猶予の取消事由に該当しないものとする。
3 非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の適用を受ける場合には贈与税の納税猶予の免除届出の添付書類を不要とする等、手続の簡素化を行う。
(注)上記1の改正は、平成 34 年4月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用する。

(1)相続税の未成年者控除の対象となる相続人の年齢を18歳未満(現行:20歳未満)に引き下げる。
(2)次に掲げる制度における受贈者の年齢要件を18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げる。
①相続時精算課税制度
②直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
③相続時精算課税適用者の特例
④非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度(特例制度についても同様とする。)(再掲)
(注)上記(1)及び(2)の改正は、平成34年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
(3)民法(相続関係)の改正に伴い、次の措置を講ずる。
①相続税における配偶者居住権等の評価額を次のとおりとする。
イ 配偶者居住権
建物の時価-建物の時価×(残存耐用年数-存続年数)÷残存耐用年数
×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
ロ 配偶者居住権が設定された建物(以下「居住建物」という。)の所有権
建物の時価-配偶者居住権の価額
ハ 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利
土地等の時価-土地等の時価×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
ニ 居住建物の敷地の所有権等
土地等の時価-敷地の利用に関する権利の価額
②物納劣後財産の範囲に居住建物及びその敷地を加える。
③配偶者居住権の設定の登記について、居住建物の価額(固定資産税評価額)に対し1,000分の2の税率により登録免許税を課税する。
④特別寄与料に係る課税について、次のとおりとする。
イ 特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が確定した場合には、当該特別寄与者が、当該特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税を課税する。
ロ 上記イの事由が生じたため新たに相続税の申告義務が生じた者は、当該事由が生じたことを知った日から10月以内に相続税の申告書を提出しなければならない。
ハ 相続人が支払うべき特別寄与料の額は、当該相続人に係る相続税の課税価格から控除する。
ニ 相続税における更正の請求の特則等の対象に上記イの事由を加える。
⑤遺留分制度の見直しに伴う所要の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
⑥その他所要の措置を講ずる。

三 法人課税
6 円滑・適正な納税のための環境整備
(2)法人税における仮想通貨の評価方法等について、次のとおり時価法を導入する等の措置を講ずる。
①法人が事業年度末に有する仮想通貨のうち、活発な市場が存在する仮想通貨については、時価評価により評価損益を計上する。
②法人が仮想通貨の譲渡をした場合の譲渡損益については、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度に計上する。
③仮想通貨の譲渡に係る原価の額を計算する場合における一単位当たりの帳簿価額の算出方法を移動平均法又は総平均法による原価法とし、法定算出方法を移動平均法による原価法とする。
④法人が事業年度末に有する未決済の仮想通貨の信用取引等については、事業年度末に決済したものとみなして計算した損益相当額を計上する。
⑤その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成31年4月1日以後に終了する事業年度分の法人税について適用する。なお、同日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度については、会計上仮想通貨につき時価評価していない場合には、上記①及び④を適用しないことができる経過措置を講ずる。

四 消費課税
4 その他
(2)金地金等の密輸に対応するための消費税における仕入税額控除制度の見直し
①密輸品と知りながら行った課税仕入れについて、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。
②金又は白金の地金の課税仕入れについて、本人確認書類の写しの保存を仕入税額控除の要件に加える。
(注)上記①の改正は平成31年4月1日以後に国内において事業者が行う課税仕入れについて、上記②の改正は同年10月1日以後に国内において事業者が行う課税仕入れについて、それぞれ適用する。

六 納税環境整備
3 eLTAX 障害発生時の申告等に係る期限延長
eLTAX(地方税のオンライン手続のためのシステム)に障害が発生した場合の申告等に係る期限について、迅速かつ全国統一的な対応を行うため、次の見直しを行う等の所要の措置を講ずる。
(1)総務大臣は、eLTAX の障害によって多くの納税者が期限までに申告等をすることができないと認めるときは、告示を行うことにより、当該期限を延長することができることとする。
(2)地方税共同機構(eLTAX の運営主体)は、eLTAX の障害が生じたときは、遅滞なく総務大臣に報告しなければならないこととする。

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日本税理士会連合会による平成31年度税制改正に関する重要建議・要望項目!

 日本税理士会連合会は、2018628日に開催された第1回理事会において「平成31年度税制改正に関する建議書」を決定し、810日に財務省、国税庁、総務省、中小企業庁などに提出しました。

内容は、以下のとおりです。

<最重要建議・要望項目>
●消費税における単一税率及び請求書等保存方式の維持
①単一税率の維持
軽減税率(複数税率)制度は、区分経理等により事業者の事務負担が増加すること、逆進性対策として非効率であること、財政が毀損し社会保障給付の抑制が必要となること等の理由により、従来、単一税率制度の維持を強く主張している。低所得者への逆進性対策としては、例えば、あらかじめ国が一定額を入金したプリペイドカードを配付する方法や、一定額の簡素な給付措置などによる消費支出の負担軽減策等を検討すべきである。
②請求書等保存方式の維持
平成3510月に導入予定の区分経理等のための適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)への移行は、事業者及び税務官公署の事務に多大な影響を与えることから、行政手続コスト削減の方向性に逆行することのないように配慮又は見直しをする必要がある。この点については、例えば、請求書等に一定の記載事項を追加することにより、区分経理等は十分可能である。
③消費税のあり方についての抜本的な見直し
事業者の負担と徴税コスト等を考慮し、仕入税額控除方式(インボイス方式を含む。)及び免税点制度等の見直しを含めた消費税のあり方について抜本的に再検討すべきである。特に、免税事業者が適格請求書等を発行できないことに伴い、不当な値下げ要求等により経営状態が圧迫されることのないよう対策を講じなければならない。

●所得計算上の控除から基礎的な人的控除へのシフトと基礎的な人的控除のあり方
①所得計算上の控除から基礎的な人的控除へのシフト
基礎的な人的控除(基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除及び扶養控除)は、憲法第25条が定める生存権の保障を目的としたものと解されており、健康で文化的な最低限度の生活を維持するために侵害してはならない課税最低限を構成するものである。したがって、このような性質を有する課税最低限は、財政事情を考慮しつつ、生活保護の水準に合わせていくことが望ましい。その際、給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、基礎的な人的控除を中心として課税最低限を確保することが適切である。
②基礎的な人的控除のあり方
最低限度の生活を維持するのに必要な部分は担税力を持たないとする最低生活費不課税の観点から、基礎的な人的控除については、その額を引き上げた上で、所得控除方式を維持すべきである。その際、課税最低限を構成する基礎控除を逓減・消失させることについては、憲法の要請もまえ慎重な検討が必要である。
なお、その他の人的控除項目については、整理合理化を図りつつ、可能な範囲で税額控除化すれば、所得再分配機能が低下していることや高所得者の負担軽減額が大きくなるという問題は相当程度解消することとなる。

●償却資産に係る固定資産税制度の抜本的見直し
償却資産課税について、(一財)資産評価システム研究センターの「償却資産課税のあり方に関する調査研究-申告制度の簡素化・効率化に向けた制度設計について-」(2018年3月)において、現行の賦課期日(11日)はそのままとし、申告期限については、現行制度(131日)と電子申告(eLTAX)に限り法人税の申告期限と一致させる新方式との選択制にするとの方向性が示された。事業者の事務負担軽減、市町村の課税事務効率化及び電子申告率の向上に伴う実務の簡素化・効率化の観点から評価できるものであり、まずは、これを早期に実現すべきである。
また、当面の課題として、下記の項目についても検討する必要がある。
・中小企業の設備投資促進と事務負担軽減のため、免税点を現行150万円から倍額程度まで引き上げる。
・租税特別措置法により費用化が認められる30万円未満の少額資産は、償却資産課税の対象から除外する。

僕も、基本的に同意見です。
消費税の軽減税率制度は導入すべきではないと思っていますし、低所得者の保護が目的であるならば、期限付きの商品券を渡すのが良いと以前からこのブログでも書いています。
日刊紙の軽減税率についても、低所得者の保護が目的であるならば、まずは、所得別の日刊紙購読者数を把握し、開示する必要があると思います。
償却資産税についても、決算期にかかわらず一律に131日までに申告するのではなく、決算期に合わせて、申告時に固定資産台帳を提出する方が、漏れもなく、効率的かつ効果的なのではないかと思います。
月次決算などを行っておらず、年に1回決算時にのみ入力などを行っているところが、漏れなく申告するのは現実的に厳しいと思います。
あとは、印紙税の廃止も織り込んでほしいですね。

日本税理士会連合会による平成31年度税制改正に関する重要建議・要望項目について、どう思われましたか?

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旧年金施設の組織改編巡り運営会社が20億円の申告漏れ!

 

読売新聞によると、旧「年金福祉施設」を運営する企業グループの組織再編を巡り、運営会社「ホテルマネージメントインターナショナル」(HMI、東京都中央区)が東京国税局から約20億円の申告漏れを指摘されたことが関係者の話でわかったようです。
吸収合併した子会社の欠損金を取り込むことで所得が圧縮されていましたが、税負担の軽減が目的の「租税回避行為」に当たると判断されたとみられます。

過少申告加算税を含む法人税の追徴税額は約5億円です。
HMIは修正申告に応じており、取材に「解釈の相違があったが、意見交換をしていく中で国税局の解釈が正しいと判断した。租税回避や仮装・ 隠蔽いんぺいの認定を受けた事実はない」と文書などで回答しました。

関係者によると、HMIは2017年10月、ホテル運営会社「 知立観光」(愛知県、解散)を子会社化しました。
翌11月21日、知立観光が出資して新たに合同会社を設立し、知立観光が全国約10か所で運営していた旧年金福祉施設などのホテル事業を合同会社に承継しました。

会社間で事業や不動産を承継する場合、帳簿上の価格(簿価)と時価に差があれば、譲渡益や欠損金が発生します。
知立観光が運営していた施設は建設から年数がたち、時価が簿価を下回っていたことから、知立観光に約35億円の欠損金が生じました。

8日後の11月29日、HMIは知立観光を吸収合併し、欠損金をHMIに取り込みました。
HMIはその後の2019年6月期の税務申告で、この欠損金のうち約20億円を自社の黒字と相殺し、法人税額をゼロと申告しました。

これに対し、2020年に開始された東京国税局の調査では、吸収合併の前日、知立観光が合同会社の経営権(持ち分)を別の関連会社に譲渡していたことが判明しました。

企業の合併や分割に関わる「組織再編税制」では、別会社に譲った事業や不動産に対する「支配」が続いていると、欠損金が発生しない仕組みになっています。
HMIの組織再編では、知立観光が合同会社の経営権を手放したことで、欠損金が生まれていました。

しかしながら、東京国税局の調査では、再編後、接客や仕入れなどの施設の運営は、合同会社やその経営権を持つ関連会社ではなく、HMIが実質的に行っていたことが確認されたそうです。

東京国税局はこうした経緯を踏まえ、一連の再編には欠損金を利用して税負担を減らす狙いがあったと判断し、欠損金の計上や黒字との相殺は認められないと指摘したとみられます。

ちなみに、HMIは2005年設立で、旧年金福祉施設などを買収して事業を拡大しています。
2008年には郵政民営化に伴う「かんぽの宿」の入札にも参加しました。
2022年6月時点で全国46施設を運営しています。
民間の信用調査会社によると、2021年6月期の売上高は約196億円です。

なお、年金福祉施設 とは、「厚生年金会館」や「健康福祉センター(サンピア)」など、国が厚生年金や国民年金の保険料を使って建設したものです。
保険料の無駄遣いと批判され、2005~2010年に約300施設が民間に売却されました。

その後、HMIのホームページに、この件に関して、ニュースリリースが公表されています。
それによると、『意図的な租税回避行為や仮装隠蔽などの不正行為を行ったというような事実は一切ございません。また、今回の修正申告において、重加算税も課されておりません。』と書かれています。
重加算税が課されていないのであれば、仮装・隠ぺいはなかったということですね。
組織再編に詳しい税理士も付かれているでしょうから。

旧年金施設の組織改編巡り運営会社が20億円の申告漏れを指摘されたことについて、どう思われましたか?


「合併は租税回避目的」でPMG子会社が57億円の申告漏れ指摘も不服で提訴!

 

産経新聞によると、全国で100か所以上のゴルフ場を経営するパシフィックゴルフマネージメント(PGM、東京都台東区)の子会社が、東京国税局の税務調査を受け、約57億円の申告漏れを指摘されていたことが、先日、関係者への取材で分かったようです。
合併で引き継いだ欠損金(赤字)を用い、租税回避を図ったと判断されたもようです。

PGM側は過少申告加算税を含む約15億円を追徴課税(更正処分)され、処分の取り消しを求める訴訟を東京地裁に起こしました。

関係者によると、ゴルフ場などの資産を保有する子会社「PGMプロパティーズ」は2017年2月、グループ会社と合併し、企業再編を優遇する税制に基づきグループ会社の約57億円の赤字を引き継ぎ、利益と通算(相殺)して税務申告しました。
ただし、グループ会社の赤字はもともと別のグループ会社で発生したもので、直前に別のグループ会社との合併を通じて引き継いでいました。

これに対し国税局は、別のグループ会社は事実上の休眠会社で、2度にわたる合併は赤字を子会社に移すことが目的だったと指摘しました。
税制の乱用と判断して赤字の引き継ぎを認めず、申告漏れの対象にしたようです。

PGM側は、合併は経営の効率化などが目的で、別のグループ会社も「休眠会社ではない」と主張し、課税処分を不服として2021年4月に提訴しました。
PGMは、「買収によって増加した法人を合併で減少させるビジネスモデルを基本としている。今回の合併も従前どおりで何ら『不当』なものでなく、税制度の乱用を行った事実もない」とコメントしています。

『買収によって増加した法人を合併で減少させる』というのがビジネスモデルと言えるのかどうか疑問ですが、合併を2段階で行う必要性があるのかどうかが問題とされたんでしょうね。
直前ということなので、節税目的と判断されても仕方ないような気はしますが。
一昔前のように、条文で細かい規定がなされているからこれを満たせば良いというのは間違いで、組織再編は、きちんとストーリーを描いて、租税回避と判断されないようにきちんと理屈付けしておかないと否認される可能性が結構高いということを改めて感じた1件でした。

「合併は租税回避目的」でPMG子会社が57億円の申告漏れ指摘も不服で提訴したことについて、どう思われましたか?


使い捨てカイロ大手の「桐灰化学」が日本初の「地球温暖化」で姿を消す!

 

 使い捨てカイロ国内大手の桐灰化学(大阪市淀川区)が、親会社の小林製薬に吸収合併され、104年にわたる歴史の幕を閉じることになったようです。
 百年企業だった桐灰化学の息の根を止めたのは、「地球温暖化」でした。

 2019年1月に米カリフォルニア州の電力大手PG&Eが、異常乾燥で発生した大規模な山火事により経営が悪化し、連邦破産法11条の適用を裁判所に申請したのが「世界初の地球温暖化による経営破綻」とされます。
 日本でもスキー場などの廃業は相次いでいますが、地球温暖化よりもスキー人口の減少による影響が大きいようです。
 国内で公式に地球温暖化を理由とした会社の消滅は、桐灰化学が初めてとみられます。
 今後も温暖化による企業の倒産や救済合併が増加する可能性が高いようです。

 桐灰化学は1915(大正4)年に広島市で、創業者の植木康之氏が半練製カイロ灰を製造する「植木カイロ灰製造所」として創業しました。
 1928年に大阪市東淀川区に三国工場を設置して以降、同区内に工場を建設し、大阪を拠点に事業を拡大しました。

 同社の転機は1989年の「はるカイロ」の発売です。
 使い捨てカイロの片側を粘着面に加工し、衣服の上から貼るというアイデアが大ヒットし、使い捨てカイロ市場をリードする存在となりました。
 1997年には群馬県藤岡市に藤岡工場を開設し、東日本での生産にも乗り出しました。

 ところが、消耗品である使い捨てカイロはスーパーやドラッグストアなどで「安売り」の目玉となり、市場競争が激化しました。
 2001年に小林製薬の100%子会社になり、その後は2006年に米Heat Max, nc.を、2012年には米Grabber,Inc.を、それぞれ子会社化するカイロ事業の海外展開などで、温熱製品は小林製薬グループの主力製品の一つに育ちました。

 しかしながら、「地球温暖化に伴う暖冬傾向が想定され、市場も競争激化の流れにある中で、カイロを中心とした温熱製品のさらなる成長のためには開発・販売体制を抜本的に見直す必要がある」(小林製薬)として、2020年7月1日に吸収合併の上、桐灰化学を解散することになりました。

 今後は小林製薬の営業力を活かして使い捨てカイロの国内販売力を強化するとともに、桐灰化学の温熱技術をより効果的に活用した新製品開発を加速するようです。
 地球温暖化で気温は上昇していますが、冬向けのシーズンビジネスを展開する企業にとっては背筋も凍る「超氷河期」を迎えたようです。

 僕の中では、カイロと言えば、『桐灰』でしたので、非常に残念ですね。
 地球温暖化は、様々なところに影響を及ぼすんだなぁと改めて感じました。
 使い捨てカイロは、旭化成が発明し、ロッテ電子工業が『ホカロン』を発売したことで一気に売れたということですが、本当に素晴らしい発明でしょうね。
 別の技術に応用して、新たなヒット商品を出してほしいと思います。

 使い捨てカイロ大手の「桐灰化学」が日本初の「地球温暖化」で姿を消すことについて、どう思われましたか?


ユニマットグループ3社が組織再編で100億円の申告漏れ!

2018年06月26日(火)

 オフィス向けのコーヒーサービス事業などを展開する「ユニマットライフ」(東京都港区)などグループ企業3社が、平成283月期までの数年間で総額約100億円の申告漏れを東京国税局から指摘されていたことが、先日、関係者への取材で分かったようです。

 関係者によると、税務調査を受け申告漏れを指摘されたのは、ユニマットライフのほかに、グループ持ち株会社の「ユニマットホールディング」と、リゾートホテルやゴルフ場などを経営する「ユニマットプレシャス」(いずれも東京都港区)だそうです。

 グループ企業内の組織再編を進める中で、赤字企業を取り込んで黒字企業の所得を減らす行為があったようです。
 国税局は、こうした組織再編について、租税を回避する目的があったと判断したとみられます。

 個人的には、税法で組織再編時の要件をかっちりと決めているのに、伝家の宝刀である『行為計算の否認』を安易に用いるのはやめてほしいですね。
 怖くて何もできなくなると、組織再編税制を作った意味がなくなってしまいかねないような気がします。
 過去にも合併などを何度もやっている会社なので、事前に慎重に検討していると思いますので、不服であれば、争ってほしいですね。

 ユニマットグループ3社が組織再編で100億円の申告漏れを指摘されたことについて、どう思われましたか?

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法務省が違反認定なら過料も視野に海外IT48社に日本での登記を要請!

 

日本経済新聞によると、古川禎久法務大臣は、先日の記者会見で、アメリカのグーグルなど海外に本社を置く大手IT(情報技術)企業48社に、日本での登記を要請したと明らかにしました。
法務省と総務省が2022年3月29日、電気通信事業者として届け出済みの48社に要請文を出したようです。

会社法では、日本で継続的にビジネスをしている外国企業に、日本法人だけでなく、本国の本社も登記することを義務づけていています。
IT企業の多くはこのルールを把握しつつも、日本法人だけを登記していた可能性があるようです。

法務省と総務省は48社に登記をしない場合、4月15日までにその理由を説明することも求めていました。
複数社から回答が来ているとみられ、古川氏は「回答状況は現在精査中」と述べました。
要請を受けた全48社の社名は明らかになっていません。

法務省は日本国内で電気通信事業の届け出をしている外国企業の中から、登記をしていない企業を選び、一斉に要請文を出しました。
届け出を継続的なビジネスをしている証拠と考えたためです。

総務省によると、電気通信事業の届け出をしている企業数は国内外合わせて約1万3,000社あるそうです。
海外勢ではツイッターやメタ(旧フェイスブック)などアメリカのIT大手のほか、華為技術(ファーウェイ)や動画共有アプリ「TikTok」など中国系大手の関連会社も届け出をしています。

複数の関係者によると、法務省はこれまでにも海外IT大手に登記を要請したことがあったが、各社は対応してこなかったようです。
今回は法務省と総務省の連名の要請で、回答期限も区切り、今後の対応方針を検討しているもようです。

登記の徹底を求める声は、国会議員や弁護士の間からも上がっていたようです。
2021年に施行したデジタルプラットフォーム取引透明化法の付帯決議や、2021年6月に出されたネット上の中傷対策を巡る自民党の緊急提言でも、政府に対策を取るよう求めていました。

法務省は今後、各社からの回答内容を精査し、会社法違反と判断した場合には過料(100万円以下)の手続きに移ることを視野に入れています。
過料の可否は裁判所が判断するため、法務省は会社法違反と判断した企業を裁判所に通知することを検討しているようです。

今まで知りませんでしたが、会社法では本国の本社も登記しないといけないことになっているんですね。
それなのに、今まで要請しても無視されてきたのはなぜなのでしょうか?
登記するとマズいことがあるのでしょうか?
登記関係で過料が科されるのはあまりないのではないかと思われますが、企業のコンプライアンスに対するスタンスの問題だと思いますので、今後どうなるか注目したいですね。

法務省が違反認定なら過料も視野に海外IT48社に日本での登記を要請していることについて、どう思われましたか?


官報の決算公告を実施している株式会社は「わずか1.5%」!

 

東京商工リサーチによると、会社法で定める「決算公告」ですが、決算公告が義務付けられている「株式会社」では、約8割の企業が決算公告を官報と記載しています。
しかしながら、2021年に官報に決算公告した株式会社は40,154社で、全株式会社のわずか1.5%にとどまることがわかったようです。
経営の透明性が重要視されていますが、情報開示に消極的な中小企業が多いようです。

「合併」や「資本金の額の減少」など、一部の法的公告は法令で官報公告と定められています。
ただし、「決算公告」は「官報」だけでなく、「電子公告」や「日刊新聞紙」も可能です。

東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベースによると、株式会社の公告方法は「官報」が83.1%と大半を占め、日刊新聞紙ほかが14.5%、電子公告が2.4%でした。

会社法では決算公告の義務を怠った場合、100万円以下の過料という罰則規定が定められています。
ところが、同法が適用されたケースはほとんど確認されていません。
決算公告が進まない理由は、貸借対照表の公告料が最低でも74,331円(税込)、損益計算書を付記すると15万円近くかかります。
こうした高額の公告料も、決算公告が進まない一因とみられます。

政府の「中小企業活性化パッケージ」では、経営者の個人破産回避や再チャレンジなどの中小企業支援策が強化されています。
その一方で、決算公告など情報開示が不十分な状況だけに、債権者(取引先)が取引対象先の信用力を判断する客観的な材料が少ないのも事実です。
中小企業が経営の透明性を高めるためにも、法律に沿った決算公告の運用意識と配慮が求められます。

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースを活用し、株式会社の公告方法を調査しました。
公告方法は、官報、日刊新聞紙、電子公告の大きく3つに分類されます。
最も多いのは「官報」で、全体の83.1%と8割を超えました。
合併公告や資本金の額の減少公告などは、法令で官報掲載と定められています。
日本経済新聞などの全国紙、地方紙などの「日刊新聞紙」ほかの公告は14.5%で、本社所在地の地元紙に掲載するケースも少なくありません。
「電子公告」は商法等の改正で2017年から始まり、自社ホームページなどでの公告で利便性は高いが、まだ2.4%にとどまっています。

2021年に「官報」に決算公告した未上場の株式会社40,154社の産業を調査しています。
最多は、サービス業他の27.4%で、3割に届きませんでしたが、積極的に官報公告を利用しています。
次いで、大手企業の子会社なども多い製造業の19.1%、卸売業11.5%、情報通信業10.4%と続いています。
社数の多い建設業は5.4%にとどまり、決算公告に消極的な姿勢がみられました。

資本金別では、1千万円以上5千万円未満が構成比39.5%と約4割を占めました。
次いで、1億円以上の大企業が29.7%と3割近くを占め、5千万円以上1億円未満が19.3%と続いています。
一方、100万円未満はわずか1.9%にとどまり、小規模事業者の情報開示への認識が低いことを示しています。

売上高別(判明分)では、売上規模が大きいほど公告比率が高かったようです。
最高は10億円以上50億円未満の31.6%。次いで、100億円以上の18.3%と続いています。
売上規模の小さい1億円未満も9.3%と一定の水準があり、大手企業の系列やベンチャー企業などが決算公告を実施しているようです。

決算公告を実施している株式会社は、全体のわずか1.5%にとどまります。
罰則の適用例がほとんどないことに加え、官報公告の掲載費用が高いことが背景にあるとみられます。
しかしながら、同時にコンプライアンス(法令遵守)やコーポレートガバナンス(企業統治)の意識の乏しさも問われています。

決算公告は、金融機関や取引先など第三者でも決算数値の整合性を確認できます。
万が一、複数の異なる決算書を作成している場合、官報公告で差異発覚の端緒となる可能性もあります。
決算公告は、経営の透明性を向上させ、企業への信頼性を高めることにつながります。

2016年に官報の公告料金が値上げされました。
官報公告が高額になると中小・零細企業では活用しにくくなります。
官報公告の意義を認識し、掲載費用の見直しも必要でしょう。

長引くコロナ禍で、中小企業への支援策は拡充されました。
ただし、インターネットで取得できる商業登記の代表者住所は2022年9月から非表示となる見通しで、代表者の資産把握が難しくなります。
また、経営者保証ガイドラインでは、経営者保証に依存しない動きも加速しますが、債権者側の保全対応が難しくなるだけに債務者(経営者)の責任感や意識も問われます。

事業再構築、復活支援金など、コロナ禍でも中小企業向けの支援策が多く打ち出されました。
「事業再生ガイドライン」では地域の経済合理性も打ち出されました。
地域社会を構成する取引先への情報開示も必要でしょう。
様々な支援を求める企業や上場企業だけでなく、情報公開が少ない外資系企業にも、会社法で定める決算公告など最低限の遵守が求められます。

なお、本調査は、TSRが独自集計した2021年(1-12月)の株式会社で官報に決算公告した40,154社と、TSRの企業情報や国税庁の「令和元年分会社標本調査」による株式会社の単体法人数2,545,100社を比較・分析したものです。
有価証券報告書提出会社は会社法で決算公告の義務などの適用がないため、上場企業は除いています。
複数回掲載は重複を避けるため1社でカウントしています。
また、合併公告や資本金の額の減少公告、通常の決算公告などすべての決算公告を対象にしました。
調査は今回が初めてです。

この記事は、会社法で定められているので中小企業も決算公告をしましょうという論調ですが、個人的には、実態を考慮し、資本金や売上高や従業員数などで決算公告が必要な会社を定めるなど、会社法を変える必要があるのではないかと思っています。
おそらく、決算公告が本当にすべての株式会社に必要なものと国や金融機関が考えているのであれば、支援金などの添付資料などに、決算公告を加えても良いと思いますし、金融機関の融資の際の提出書類に加えても良いと思いますので。

官報の決算公告を実施している株式会社は「わずか1.5%」であることについて、どう思われましたか?


関西スーパーの株主総会は取引先持ち株会が賛否の「隠れみの」に!

 

日本経済新聞によると、司法判断を受けて、先日、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下となった関西スーパーマーケットですが、最高裁までもつれた原因は株主総会での1人の株主の行動でしたが、僅差の可決を後押ししたとみられるのは9%超を保有する第2位株主の取引先持ち株会だったそうです。

関西スーパーの取引先持ち株会には、食品スーパーや卸などが参加しています。
総会前には伊藤忠食品が、理事長一任での議決権行使という慣例に異を唱えて、自主投票となりました。

上場企業の多くの取引先持ち株会は同じような慣例があります。
そしてほとんどが議案への賛成になっているとみられます。

「相互間の親睦関係の増進に寄与することを目的とする」と、日本証券業協会の「持ち株制度に関するガイドライン」には、取引先持ち株会の目的について記されています。

取引先持ち株会は、社歴の長い伝統的な企業に多く存在します。
昔は上場時の安定株主対策や定期的な売買手数料を得る狙いもあって、主幹事証券会社が「取引先に株を持ってもらいましょう」と持ち株会の設立を提案することも多かったようです。

関西スーパーの総会では、取引先持ち株会の議決権行使の透明性も課題として浮かび上がりました。

株主総会の議決権行使書面は総会日から3か月間保管しなければならず、株主は閲覧や複写を求めることができます。
今回の場合、総会を開いた関西スーパーだけでなく、オーケーも株主ごとに賛否を知ることが可能なのです。

しかしながら、持ち株会の中の議決権行使結果は開示されません。
持ち株会全体として賛成、反対、棄権の比率が開示されるだけです。
自主投票となった持ち株会の会員企業の賛否は、関西スーパーにしかわからないのです。

今回、この仕組みをうまく活用できないか検討した取引先株主がいたようです。
持ち株会は定期的に資金を拠出して株式を買い付けるため、少しずつ会員企業の保有株数は増えていきます。
一部を持株会から引き出して自社名義での保有にする企業も多いです。

この株主は「自社名義分は不行使や棄権、反対に、持ち株会での保有分は賛成にと使い分けできると考えていた」(関係者)ようです。
オーケーが知ることができる部分はオーケー寄りに、関西スーパーにしかわからない部分は関西スーパー寄りにすれば両方に義理立てできるわけです。

取引先持ち株会を通して保有する株は、政策保有株扱いになることが多いようです。
上場企業に課されているコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は、政策保有株式の削減を促すと同時に、政策保有株式に係る議決権の行使について具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきだと定めています。

取引先持ち株会を「隠れみの」にした議決権行使の使い分けはコーポレートガバナンス・コードに沿っているとは言いがたいでしょう。
伊藤忠食品が関西スーパーに統合相手の価値評価額や算定根拠の開示などを求める質問状を送り、持ち株会の理事長一任に異を唱えたのは、自らの株主への説明責任を果たすためでした。

2019年にはある国内投資家が日証協に対し、コーポレートガバナンス・コードの趣旨に沿えば取引先持ち株会は解散されるべきだとの要望をしています。
日本企業の古き伝統は企業統治強化の中で存在意義を問われています。

知りませんでしたが、取引先持ち株会はそうなっているんですね。
取引先は、どちらとも取引があるところが多いでしょうから、困ったと思いますが、うまく使い分けていたところもあるんですね。
これをきっかけに、取引先持ち株会のあり方が議論されるといいですね。

関西スーパーの株主総会は取引先持ち株会が賛否の「隠れみの」になったことについて、どう思われましたか?


国税が過去に「高額すぎる」と指摘した京都新聞HDの大株主への報酬を第三者委員会が調査!

 

産経新聞によると、京都新聞社を傘下に置く京都新聞ホールディングス(HD、非上場、京都市中京区)で、大株主の元相談役(80)に不適切な報酬を支払っていた疑いがあるとの問題が浮上しているようです。
報酬をめぐっては国税当局が約10年前、「不相当に高額」と指摘していたことも、先日、関係者への取材で判明したようです。
報酬の支出は2021年2月まで継続していました。
京都新聞の報道によると、報酬の年間総額は4千万円を超えるとみられます。

特定の株主に配当とは別に報酬を支払い続けたことが「株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしてはならない」と定めた会社法に抵触する疑いがあるとして、京都新聞HDは弁護士でつくる第三者委員会を設置し、調査しています。

京都新聞の報道や関係者によると、元相談役が代表を務める資産管理会社は京都新聞HD株式の25.9%を保有しています。
元相談役に京都新聞HDなどのグループ3社が長年、株主配当とは別に相談役報酬を支払っていました。
年間総額は4千万円超とみられます。
2020年2月以降の内部調査の結果、不適切な支出だった可能性があるとして報酬の支払いを停止し、2021年3月に相談役を解嘱しました。

一方、関係者によると、2011年ごろの国税当局の税務調査で元相談役の報酬について、ほかの相談役の報酬や業務内容との比較などから「不相当に高額」と指摘され、高額と判断された部分は損金として認められなかったようです。

京都新聞によると、元相談役への高額報酬は長年にわたって続いたとされます。
関係者によると、元相談役の年間報酬額を知る人物は社内のごく一部に限られていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に2020年2月から経費の見直しを進めていた過程で判明しました。
元相談役は、近年は、3か月に1度のペースで京都新聞HDの社長から社の近況報告を受けていましたが、自ら出社することはほぼなかったそうです。

京都新聞HDは、先日、記者会見し、特定株主に報酬を支払い続けたことが会社法に抵触する疑いがあるとして第三者委員会を設置したことを明らかにしましたが、調査への影響などを理由に、支出先や額は伏せました。
一方、京都新聞は、翌日の朝刊1面でそれらを報じました。
京都新聞社は京都新聞HDの100%子会社ですが、記事では「独立した立場で今回の問題を取材、報道する」と伝えています。

産経新聞の取材に対し、京都新聞HDは、「会見で発表した以上のことは申し上げられない。第三者委員会の調査結果は公表する」とコメントしました。
京都新聞HDを通じて元相談役にも取材を申し込んだようですが、応じなかったようです。

京都新聞HDをめぐる問題で、小原正敏元大阪弁護士会会長ら3人の弁護士で構成される第三者委員会が調査する報酬を受け取っていた元相談役は、京都新聞の経営に長年携わってきた一族の方です。

昭和17年の合併で誕生した京都新聞社(現京都新聞HD)の社長は、この一族の方が30年以上務めました。
この社長は、昭和40年代に日本新聞協会の会長にも就いています。
この社長の後を継いだのが息子で、息子は京都新聞社と兄弟会社だった近畿放送(現京都放送、呼称・KBS京都)でも社長を務めましたが、昭和58年に死去しました。

巨額の簿外債務をめぐってグループ内部で騒動となり、京都新聞社会長だった元相談役はその関連で昭和62年に相談役に退きました。
KBS京都は、「戦後最大の経済事件」と呼ばれた平成3年のイトマン事件にからみ平成6年に経営破綻し、会社更生法の適用を申請しました。
平成19年10月に裁判所が更生手続きの終結を決定し、再建を果たしました。

京都新聞HDは、2021年6月29日の株主総会で役員を新たに選任しました。
現在この一族では、元相談役の息子(47)が取締役に名を連ねるのみです。
ただし、元相談役が代表を務める資産管理会社は京都新聞HDの25.9%の株式を保有しているため、出席株主の3分の2の賛成が必要な重要事項にこの一族側が難色を示せば、京都新聞HD側の提案が否決される可能性があります。

関係者の一人は、「この一族の機嫌を損ねる行動を取るには覚悟がいる」としつつ、問題となった元相談役報酬をめぐり「個人のためではなく、新聞が社会的な使命を果たすために使われてほしい」と話しました。

なお、京都新聞ホールディングスは、昭和17年の合併で京都新聞社として設立され、平成26年4月の持ち株会社化で「京都新聞ホールディングス」に商号変更され、新聞制作と編集を行う事業会社として、京都新聞HDが100%出資する京都新聞社が新たに誕生しました。

実態は配当のような気はしますが、社会的な影響力のある新聞社のホールディングカンパニーが会社法に抵触する疑いがあるようなことをしているんですね。
100%子会社の新聞社が、きちんと報道しているのはスゴイですね。
昔から相談役というもの自体の存在に疑問を持っていましたが、この事件が、相談役を見直すきっかけのひとつになればいいですね。

国税が過去に「高額すぎる」と指摘した京都新聞HDの大株主への報酬を第三者委員会が調査していることについて、どう思われましたか?


「バーチャル開催」は株主総会の新潮流になるか?

 

東洋経済ONLINEによると、政府からの自粛要請を受け、大規模な集会やイベントが中止を余儀なくされています。

そんな中、法律上中止にできないのが定時株主総会です。
会社法の規定により、株主全員の同意があった場合以外は、必ず総会を開催しなければならないことになっています。

3月は12月決算企業の定時株主総会が開催される月で、12月決算の上場会社は453社(2020年3月10日時点)あり、このうち4月開催の窪田製薬ホールディングスを除く452社が3月中の開催を予定しています。

その窪田製薬も、2016年の上場当時から毎年4月に総会を開催しています。
つまり、新型コロナウイルス対策を理由に株主総会の開催を4月以降に延期する上場会社はゼロなのです。

法務省は定時株主総会の開催時期について、「会社法上、事業年度の終了後3カ月以内に必ず定時株主総会を招集しなければならないものとされているわけではありません」というコメントを発表しています。

しかしながら、株主総会の開催日はそう簡単に動かせません。
株主総会の開催が決算期末から3カ月を越えてしまうと、翌期の第1四半期が終わっても役員人事が確定しないという事態を招いてしまいます。
配当の決議機関を株主総会としている会社では配当の支払いが遅れ、税務処理の面でも影響が出ます。

12月決算の上場会社を単元株主数の多い順に並べ、上位50社を見てみると、2019年と同様、総会開催日も総会開催会場もほぼ同じという企業がほとんどです。

大半の企業が招集通知に新型コロナ対策についての注意書きを付し、議決権行使は総会会場に来場せずに、郵送もしくはインターネットで行使することを推奨しています。
会社側のスタッフはマスクを着用し、具合が悪そうな人には声かけをし、退場を促すなど、臨戦態勢モード全開です。

カゴメとライオンは例年手渡しているお土産を中止し、ライオンは総会後に開催していた懇談会も取りやめます。

ヤマハ発動機は会場に保健師を待機させ、お土産、飲料提供は中止します。
自社製品の展示や、総会後に実施していたコミュニケーションプラザの視察会も2020年は実施しません。

クックパッドやキヤノン、花王、電通グループ、DICは会場入口での検温を実施し、体温が37.5度以上の株主は入場を制限するとしています。
資生堂は、株主が座る座席の間隔を大きくとるなど、各種の対策をこらしています。

屋外作業向け工具卸のトラスコ中山は、2019年は3月8日に開催した総会を2020年は3月13日に開催しました。
見かけ上は1週間後ろ倒したように見えますが、3月の第2金曜日開催という従来のルールどおりで、新型コロナ問題を理由に後ろ倒したのではありません。

同社は開催会場を東京と大阪の2カ所としている唯一の上場会社だそうです。
取締役は2カ所に分かれて出席しますが、議長は1年おきに出席会場を変えます。
2019年は大阪だったので、2020年は東京会場に出席しました。

総会の進行は通信回線で両会場を結び、議長のいない方の会場の株主は、議事進行状況を会場に設けられたスクリーンで見ることができます。
議決権行使や質問、動議はもう1つの会場の議長に伝わるので、どちらの会場にいても議決権行使は可能です。

同社の2019年12月末時点の株主総数は4万106人で、2会場での総会開催ゆえか、リアル総会への出席率は例年7%を超えます。
基本的には総会への来場・出席を促しているが、今回はさすがに郵送かインターネットによる議決権行使を促しました。

12月決算会社中51番目に多い2万9,335人の株主を擁するGMOインターネットは、株主が参加しやすくするため、2019年は上場しているグループ会社8社中5社が、日曜もしくは祝日に開催しました。

ところが、2020年は逆に来場を控えるよう呼びかけ、開催日も3月30日とするなど、開催日を後ろ倒しにしました。

総会の当日はホームページ上でライブ中継も実施し、株主以外でも視聴可能です。
ソフトバンクも決算説明会や株主総会をライブ中継してきましたが、GMOは2020年が初めてで、「2021年以降も株主の反応をみて、株主の不利益やハードルがない限り継続したい」(同社広報)とのことです。

経済産業省は、2020年2月26日、「ハイブリッド型バーチャル株主総会」(以下、バーチャル総会)に関する実施ガイドを公表しました。
バーチャル総会とは、取締役などがリアルの株主総会を開催しつつ、インターネットなどを使って遠隔地の株主が総会に参加・出席できる総会のことです。
ソフトバンクなどのような一般公開型の株主総会中継と異なり、参加・出席できるのは議決権を持った株主に限定しています。

バーチャル総会には、参加者が議決権行使や質問などをすることができない「参加型」と、それができる「出席型」があります。
参加型は、希望する株主にIDとパスワードを発行し、WEBサイト等で配信される中継動画を視聴してもらいます。
質問や動議を出せないが、参加者のコメントを議長の裁量で取り上げることはできます。
議決権行使は事前に郵送かインターネットで済ませておく必要があり、すでにグリーやアステリアで実施された実績があります。

これに対し、出席型の場合、会社側は通信障害の対策を施さねばならず、株主側も参加可能な通信環境を備えていることが前提になります。
12月決算企業で唯一、この出席型総会の実施に踏み切ったのは、独立系ソフト開発大手の富士ソフトです。
2019年12月末時点の株主総数は1万1,118人で、例年の出席株主数は200人前後にとどまっています。

同社が3月13日に開いた総会でバーチャル出席を希望したのは11人でした。
事前に通信環境を会社側に申請させ、議決権行使に必要なiPadを保有していることを必須条件としました。

一方、リアル会場での出席者は159人でした。
当日は密集を避けるために複数の会議室に映像と音声を同時中継し、座席の間隔を大きくとりました。
同社は以前からバーチャル総会用のソフト開発を進めており、今回もリアルの総会会場に、出席者の人数分のiPadを用意し、iPad上で議決権行使できるようにしました。

同社は「少人数だからこそ実施できたが、マンモス総会に対応できるかどうかは未知数」(広報)としています。

バーチャル総会の議論はそもそも、企業と株主・投資家の建設的な対話を促すための環境整備という視点で始まったものです。

取締役会が不適切な意思決定をすれば、株主は会社側と対話をしたり、取締役の選任議案に反対するなど、株主総会で権利を行使したりすることもなく、その会社を見限って株を売ってしまいます。
一部のエンゲージメントファンドが根気強く会社と対話をし、権利を行使する場合もありますが、それはあくまでも例外でしかありません。

株主総会の実務に詳しい大塚和成弁護士によると、「上場会社と株主の対話をどのように促し、株主総会を活性化させるかというのは、昔からある、古くて新しいテーマ」だそうです。

日本は3月期決算企業が上場会社の6割強を占め、総会開催日が特定の日に集中しやすくなっています。
さらに、株主総会の招集通知を発送してから総会開催日までの日数が短く、議案を検討する時間が十分にとれません。
欧米の投資家は長年、こうした点の弊害を指摘し続けていますが、バーチャル総会には日本の株主総会慣行を多少なりとも変える機能を期待できるでしょう。

ある上場会社の幹部からは「今後、バーチャル総会が一般化すると、経営側は緊張感が高まる」という声もあがっているようです。

日本企業は株主に総会前の議決権行使を促し、会社提案の議案可決ラインの票を確保した上で総会に臨むことが多くなっています。
しかしながら、バーチャル総会が一般化すると、事前に議決権行使をせず、当日の総会の場で議決権行使をする株主が増え、総会終了まで結果がわからないという事態が一般化する可能性があります。
そうすると、その分だけ経営陣の緊張感は高まり、ガバナンス上は好ましいでしょう。

想定外の新型コロナウイルス禍でバーチャル総会が広まれば、日本企業のガバナンス向上に一役買うことになるのかもしれませんね。

限られた時間の中で、新しいことをするのは大変だと思いますが、新型コロナウイルスがきっかけとは言え、株主にとっては株主総会に参加する方法が増えることは望ましいことだと思います。
このような状況下で、感染のリスクを背負ってまで株主総会に参加しなくても良いと思います。
お土産目的で株主総会に参加される方もそれなりに多いようなことを聞きますが、個人的には、そもそもお土産は必要なのかと疑問に思っています。
株主総会に参加できる人とそうでない人がいると思いますので、お土産を出すのであれば、配当を1円でも増やしたり、株主優待を増やしたりして欲しいですね。
僕みたいに地方に住んでいる人間にとっては、株主総会にリアルで参加するには、時間もコストもかなりかかりますので。
今後、株主総会が新たな方向に向かうことを期待したいと思います。

「バーチャル開催」は株主総会の新潮流になるか?について、どう思われましたか?


会社法改正案では非上場の大企業にも社外取締役を義務化!

 

 法制審議会(法相の諮問機関)の会社法部会がまとめた会社法改正の要綱案の全容が判明しました。
 上場会社や非上場の大会社を対象に、社外取締役の設置を義務付けることなどが柱です。
 株主総会での一部の株主による提案権の乱発も抑え、企業と株主の対話を促します。
 2月に山下貴司法相に答申し、2019年の通常国会に改正案を提出し、2020年の施行を目指すようです。

 海外の機関投資家などから企業の外部監査機能が不十分との指摘があるため、経営の監視機能を高めます。
 社内の利害関係に縛られず、第三者の視点から経営をチェックするのが狙いです。

 社外取締役の設置は、(1)監査役会を置き、株式の譲渡制限がない会社、(2)資本金が5億円以上または負債総額200億円以上の大会社、(3)有価証券報告書の提出義務があるのいずれも満たす企業が対象です。

 上場企業のほか、少数株主がいる非上場の大会社も含みます。
 法務省幹部は「今回の法改正で非上場では数百社が義務化の対象になる」とみています。
 要綱案には「社外取締役を置かなければならない」と明記し、人数は1人以上を想定しています。

 2015年5月施行の改正会社法は、監査役会を置き、株式の譲渡制限がない会社で大会社が社外取締役を置かない場合には、株主総会で理由を説明するよう求めています。
 すでに東京証券取引所の上場企業は9割超が社外取締役を置いています。
 一方、コストを敬遠したり、適任者がいなかったりして、未設置の企業も2.3%あります。

 社外取締役の義務化で会社の意思決定に外部の見方を反映できます。
 企業統治の多様性や透明性を確保することが、上場会社の収益性の向上や国際競争力の確保にもつながります。
 取締役会の位置付けは異なるものの、欧米などでは上場会社の取締役の半数以上を独立した社外取締役にすることが多いようです。

 要綱案では株主提案権の制限も盛り込みました。
 株を持つ期間など一定の条件を満たせば、上限なく提案できる現行のルールを改めます。
 1人の株主が株主総会で提案できる議案数を最大10に制限し、株主提案の内容にも制約を設けます。
 誹謗中傷や侮辱行為、総会運営を妨げるような提案は認めません。

 日産自動車の元会長のカルロス・ゴーン容疑者の報酬過少記載事件で役員報酬の透明化への関心が高まるなか、報酬の概要や基本的な考え方を取締役会が決定し、開示することも明記しました。
 固定報酬や業績連動型報酬など、報酬の種類ごとの基準なども示します。
 個々の役員の報酬開示については見送りました。

 取締役会で決定した概要を開示し、株主に役員報酬の中身をわかりやすくし、妥当性の判断や株主総会で疑問点を追及できるようにします。
 社外取締役が義務化される会社のほか、監査等委員会設置会社も対象とします。
 事業報告には決定方針や報酬に関する決議、報酬の種類ごとの総額などを盛り込みます。

 事業報告などの株主総会資料はインターネット上で提供できるようにします。
 これまでは原則書面で、電子データでの提供は株主から個別に承諾を得る必要がありました。
 定款で電子提供をすると定めれば、株主の承諾なしに電子化できるようにし、企業の負担軽減につなげます。
 システム対応が必要なため、電子提供については2021年以降に施行する見通しです。

 電子提供を定款に盛り込んだ企業は、株主総会の日時や資料を「総会の3週間前」からインターネット上で提供します。
 書面での株主総会の招集通知の発送時期は現行通り「総会の2週間前」に据え置きます。
 上場企業には施行日から電子化を義務付けます。

 不適切会計の東芝にも社外取締役はいたわけですから、義務化すれば良いとは思いません。
 同じ方が何社も社外取締役を兼務しているようですので、兼務を禁止するとか、お友達を禁止するとかしないと、何ら有効なものにならないような気はします。
 どうせ改正するのであれば、有効なものにしてほしいですね。

 会社法改正案では非上場の大企業にも社外取締役を義務化していることについて、どう思われましたか?