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事務所通信2015年12月

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2015年12月号 『会計ソフトや税務申告ソフトに頼り過ぎてはいけない?』

 世の中には、会計ソフトとか税務申告ソフトと呼ばれるものがたくさんあります。
 もちろん、無料のものもあれば、有料のものもあります。
 また、CD-ROMなどで提供されるもの、ダウンロードするもの、クラウドのものなどがあります。
 2015年の当事務所の営業は今日までだったのですが、10月決算企業の決算・申告業務を何とか終えました。
 ところが、昨日の夜、会計ソフトで計算した消費税等の額と、会計ソフトのデータを税務申告ソフトに取り込んで計算した消費税等の額が異なるという事態に陥り、時間をロスしてしまいました。
 そこで、今回は、『会計ソフトや税務申告ソフトに頼り過ぎてはいけない?』について書きたいと思います。

1.会計ソフト
 皆さんの中には、会計ソフトと税務申告ソフトの区別がつかない方もたくさんおられると思いますし、両者が一体となったようなソフトもあります。
 しかしながら、基本的には別物です。
 会計ソフトは、文字どおり、会計処理を行うものであり、仕訳を入力して、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成するものです。
 具体的には、当事務所が使っている弥生会計、ソリマチ会計王、OBC勘定奉行、PCA会計、JDL IBEX会計などがあります。
 また、最近では、MFクラウド会計(旧マネーフォワード)やfreeeなどのクラウド会計ソフトが台頭してきています。

2.税務申告ソフト
 一方、税務申告ソフトは、法人税消費税所得税や相続税や贈与税などの税務申告書を作成するソフトです。
 当然、会計ソフトからデータを取り込んで作成するものもあります。
 具体的には、当事務所が使っているNTTデータの達人シリーズ、魔法陣、EPSONの顧問シリーズなどがあります。
 また、会計ソフトと税務申告ソフトが一体となっているものとしては、具体的には、TKC、MJSなどがあります。

3.バージョンアップ・連動・自動計算
 税法などの改正などがあると、会計ソフトや財務申告ソフトなども、バージョンアップが必要となります。
 これも、保守契約を結んでいれば無料になるケースや有料のケースなどがあります。
 当然、改正などの影響を受けるためよって、一度買えばそのままずっと使えるということは少なく、バージョンアップ版が出たときには、タイムリーにバージョンアップをする必要があります。
 また、それなりのソフトになると、ある箇所から数値が飛び、自動計算されますので、すべてを入力しなくても構いません。

4.最後に
 今回の会計ソフトで計算した消費税等の額と、会計ソフトのデータを税務申告ソフトに取り込んで計算した消費税等の額が異なるという事態は、税務申告ソフトのサポートセンターに電話したところ、僕が税務申告ソフトでチェックマークを外していなかったために発生したようです。
 自動的に計算できるのも、良し悪しなので、会計ソフトや税務申告ソフトに頼り過ぎないようにしないといけないですね。

2015年12月25日 國村 年

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事務所通信2015年11月

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2015年11月号 『タワマンを使った節税ができなくなる?』

 杭打ち偽装問題が水を差すことになるかもしれませんが、東京や大阪などでは、タワーマンション(タワマン)が売れています。
 ステータス、値崩れしにくい、賃貸すれば安定した賃料収入が見込めるなどの理由もあるのでしょうが、今年から相続税法が改正され増税されることになったこともあり、相続税の節税対策として購入されている方も多くなっています。
 一方で、国税庁は、チェックを厳しくするようです。
 そこで、今回は、『タワマンを使った節税ができなくなる?』について書きたいと思います。

1.相続税の計算における不動産の評価
 相続税の計算においては、一般的に、土地は路線価もしくは固定資産税評価額、建物は固定資産税評価額がベースとなります。
 これを賃貸すると、建物は30%、土地は約20%の評価減が可能であり、さらに、一定の面積までは50%の評価減を行うことができます。

2.タワマンを使った節税が行われる理由
 タワマンについては、土地の持ち分が狭いため、一定の面積の上限に達することが少なく、評価減の金額が大きくなります。
 また、同じ面積だとすれば、一般的に販売価格の高い上層階の部屋も安い下層階の部屋も相続税の評価額は同じになるため、時価と相続税の評価額の差が大きくなる上層階の部屋が節税目的で購入されたりするのです。

3.タワマンを使った節税が認められなかったケース
 最近では、平成23年7月1日の国税不服審判所で納税者が負けるという採決が下されています。
 内容的には、父が入院1か月後に2億9,300万円のマンションを購入し、1か月後に父は亡くなり、相続税の申告においては5,802万円で評価し、マンション購入後1年弱で2億8,500万円で売却したというものです。
 結局、購入後一度も住んだり貸したりしておらず、節税目的ということで、2億9,300万円の評価と判断されています。

4.国税庁の姿勢
 タワマンを使った相続税の節税をめぐり、国税庁が行きすぎた節税策がないかチェックを厳しくするよう全国の国税局に指示したそうです。
 相続財産の評価に用いられる『財産評価基本通達』に、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」という規定があり、すべてのタワマンの評価について適用するかどうか検討する考えのようです。

5.最後に
 国税庁が2013年までの3年間を調べたところ、評価額が約3,600万円の物件が約1億円で売られるなど、343件の平均で時価が評価額の3倍を超えていたようです。
 また、過去には相続後すぐに売り抜けて多額の差益を得るケースもあったようです。
 個人的には、節税の提案をするのが僕ら税理士の存在価値の一つだと思いますし、上記の採決は露骨すぎる例だと思います。
 やはり、節税を行う際には、税務署に否認されないよう、ストーリーをきちんと描いて実行しないといけませんね。

2015年11月20日 國村 年

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事務所通信2015年10月

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2015年10月号 『相続税の申告がすぐにできない?』

 今年は、おかげさまで相続税の申告業務のご依頼をたくさんいただきました。
 実際に相続税や贈与税の申告や試算などの業務を行っていると、すぐには正確な税額を算出できないケースに出くわすことが多々あります。
 そこで、今回は、『相続税の申告がすぐにできない?』について書きたいと思います。

1.相続税の申告がすぐにできないケース
 相続税の申告がすぐにできないケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

 ①   不動産をお持ちの方で、その年の前半にお亡くなりになったケース 
 ②   非上場株式をお持ちの方で、その年の前半にお亡くなりになったケース 
 ③   相続税の申告書の様式が変わった年の前半にお亡くなりになったケース 

2. 不動産をお持ちの方で、その年の前半にお亡くなりになったケース
 基本的に、土地はお亡くなりになった年の『路線価』もしくは『固定資産税評価額』、家屋はお亡くなりになった年の『固定資産税評価額』をベースに評価を行います。
今年もそうでしたが、ここ数年、『路線価』は7月1日に国税庁から公表されています。
 また、『固定資産税評価額』は、お住まいの場所によって異なりますが、市町村(東京都23区内については特例で東京都)から5月頃に納税通知書が送られてきます(4月1日以降であれば市役所で縦覧できます)。

3. 非上場株式をお持ちの方で、その年の前半にお亡くなりになったケース
 非上場株式は、相続などで株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主か、それ以外の株主等かの区分によるのですが、純資産価額方式または類似業種比準方式というものによって評価するケースがあります。
 類似業種比準方式の場合、類似業種の株価・配当金額・利益金額・簿価純資産金額を用いて計算するのですが、これらは国税庁から公表されます。
 ただし、これらはすぐに公表されるわけではなく、例えば今年だと、1・2月分が6月1日、3・4月分が6月11日、5・6月分が8月14日、7・8月分が10月13日付けで発表されています(ホームページに公表されるのはこれから10日前後のち)。

4. 相続税の申告書の様式が変わった年の前半にお亡くなりになったケース
 今年がそうだったのですが、今年から相続税法が改正になり、相続税の申告書の様式が変わりました。
 この様式は、『路線価』と同じ7月1日に国税庁のホームページに掲載されました。
 税理士は申告用のソフトを使っていることが多いと思いますが、ベンダーの新様式への対応はここから数か月後になります。
 ちなみに、僕がNTTデータの『相続税の達人』を使っていますが、平成27年度版がリリースされたのは8月22日でした。

5.最後に
 心理的に早めに相続税の申告・納税をしたいと思っても、その年の前半にお亡くなりになると、路線価や固定資産税評価額や類似業種の株価などが分かるのが数か月後になるケースもあり、相続税の申告書の様式がまだ出ておらず、できないケースがあります。
 国税庁などには、もっと素早い対応をしてもらいたいですね。

2015年10月29日 國村 年

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事務所通信2015年9月

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2015年9月号 『電子書籍・音楽・広告の配信などに消費税が課税される!』

 皆さんは、amazonやkoboなどで電子書籍を購入されていますか?
 通常の書籍と比べて、電子書籍は安いと思いますが、実は消費税が課税されていなかったので安かったのです。
 ところが、来月から消費税が課税されるようになります。
 そこで、今回は、『電子書籍・音楽・広告の配信などに消費税が課税される!』について書きたいと思います。

1.消費税の課税の対象となる取引は?
 そもそも消費税の課税の対象となる取引は、原則として、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等と外国貨物の輸入です。
 ここで、「資産の譲渡等」とは、事業として有償で行われる資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供をいいます。
①資産の譲渡
 「資産の譲渡」とは、売買等の契約により、資産の同一性を保持しつつ、他人に移転することをいいます。
②資産の貸付け
 「資産の貸付け」とは、資産に係る権利の設定など他の者に資産を使用させる一切の行為をいいます。
③役務の提供
 「役務の提供」とは、例えば、土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、情報の提供、出演などのサービスを提供することをいいます。
 次に、「対価を得て」とは、資産の譲渡もしくは貸付けまたは役務の提供に対して反対給付を受けることをいいます。
 したがって、営利を目的としない親睦会の会費や寄附金などは、消費税の課税の対象とはなりません。
 また、有償で行われるのが条件ゆえ、無償で行われた資産の譲渡には、原則として消費税がかかりません。
 しかし、①個人事業者が自分の販売する商品などを家庭で使用したり消費した場合や②法人が自社の商品などをその役員に対して贈与した場合には、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなされます。

2.平成27年年10月1日からの改正
 電気通信回線(インターネット等)を介して、国内の事業者・消費者に対して行われる電子書籍・広告の配信等のサービスの提供(「電気通信利用役務の提供」といいます。)については、これまで、国内の事務所等から行われるもののみ消費税が課税されていましたが、平成27年10月1日以後、国外から行われるものについても、消費税が課税されることとされました。
 この改正に伴い、国外事業者が行う「電気通信利用役務の提供」のうち、「事業者向け電気通信利用役務の提供」(例:「広告の配信」等)について、当該役務の提供を受けた国内事業者に申告納税義務を課す「リバースチャージ方式」が導入されます。
 なお、説明は省略しますが、上記の見直しのほか、所要の改正も行われています。

3.最後に
 海外企業には消費税が課税されていないため安いということを知っていた方は少なかったのではないでしょうか?
 改正により価格が上がるかもしれませんが、国内企業も海外企業と同じ土俵に立って勝負ができますので、価格だけでなく、サービスでも競ってほしいものですね。

2015年9月29日 國村 年

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事務所通信2015年8月

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2015年8月号 『個人事業税とは?』

 早いもので、事務所通信も今回でNo.50になりました。
 個人事業主のみなさまは、3月15日までに所得税の確定申告を行いますが、忘れたころに納税通知書が送られてくるのが、個人事業税です。
 そこで、今回は、『個人事業税とは?』について書きたいと思います。
 なお、都道府県によって若干異なることもあるため、以下では、香川県のケースについて記載します。

1.個人事業税とは?
 個人事業税とは、個人事業主の方が事務所または事業所を設けて営む事業のうち、地方税法で決められた事業(法定業種)に対してかかる税金です。
 現在、法定業種は70の業種があり、ほとんどの事業が該当します。

2.法定業種
 法定業種は、以下のように3つに分けられています。

 区 分   数   業 種 
 第1種事業   37  物品販売業・製造業・運送業・請負業・飲食店業・問屋業・不動産売買業 ほか 
 第2種事業   3  畜産業・水産業・薪炭製造業 
 第3種事業   30  公認会計士業・税理士業・医業・弁護士業・理容業・美容業・あん摩、マッサージ 
 または指圧、はり、きゅう、柔道整復その他の医業に類する事業・装蹄師業 ほか 

3.税率
 税率は、以下のように分けられています。

 区 分  税 率 
 第1種事業   5% 
 第2種事業   4% 
 第3種事業   ●マッサージまたは指圧、はり、きゅう、柔道整復その他の医業に類する事業・装蹄師業…3% 
 ●それ以外…5% 

4.個人事業税の計算方法
 個人事業主は、毎年3月15日までに前年中の事業の所得などを、県税事務所に申告することになっています。
 ただし、所得税の確定申告や住民税の申告をした方は個人の事業税の申告をする必要はありません。
 なお、計算方法は、以下のとおりです。

 (事業所得または(及び)不動産所得+所得税の事業専従者給与(控除)額-個人の事業税の事業専従者給与(控除)額 
 -青色申告特別控除額-事業主控除(290万円)などの各種控除額)×税率 

5.個人事業税の納期
 8月に県税事務所から送付される納税通知書により、原則として、8月、11月の年2回納付します。

6.最後に
 僕自身、2012年7月に開業して今回初めて事業税を納付することになったのですが、事業税を納めるくらいは稼がないといけないなぁと思う一方、一定以上の所得がある場合のみかかる、法定業種のみかかる、業種によって税率が異なる税金ということには疑問を感じますね。

2015年8月27日 國村 年

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事務所通信2015年7月

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2015年7月号 『不適切会計とは?』

 2011年7月1日に國村公認会計士事務所を開業してから、早いもので既に4年経ち、今月1日から5年目を迎えました。
 これもひとえに皆さまのおかげです。
 今後とも、よろしくお願いいたします。
 最近、東芝の『不適切会計』が新聞紙上等を賑わせていますが、個人的には、『不適切会計』という言葉にすごく違和感を抱いています。
 そこで、今回は、『不適切会計とは?』について書きたいと思います。

1.不適切会計とは?
 日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会研究報告第25号「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項」によると、不適切な会計処理の定義を「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる誤り」と定義しています。

2.新聞社による使用状況
 THE PAGEというサイトに、東芝が決算の利益を水増していた問題をどんな言葉で表現するかについて調査しています。
 2015年7月24日時点では、以下のようになっています。

    現在の表現   表現の変更   変更時期 
 朝日   不正決算  不適切会計から変更   7/21朝刊 
 毎日   不正会計  7/17朝刊 
 産経   利益水増し問題  7/22朝刊 
 読売   不適切会計   変更せず   
 日経   不適切会計   

3.東芝の状況
 通常の第三者委員会報告書と異なり、東芝からの委嘱を受けて、東芝のためだけに行われているなど色々と批判の多い第三者委員会報告書ですが、これによると、直接的な原因は、経営トップらの関与を含めた組織的な関与、間接的な原因は、コーポレートにおける内部統制が機能していなかったことなどが挙げられています。
 これを読むと、どう考えても、『不適切会計』とは言えないと思うのですが、いまだに、読売と日経は『不適切会計』という言葉を使っているのはなぜなのでしょうか?
 また、第三者委員会報告書の中で、個人的にすごく気になるところもありました。
 会計監査人である新日本監査法人に対する責任が記載されていないということです。
 巧妙な手法を使って粉飾したとしても、監査法人の責任がまったくないわけではありませんし、報道によると、売上を上回る利益を計上した月があったように言われていますので、まったくおかしなところがなかったというわけではないでしょう。

4.最後に
 過去にも、新日本監査法人はオリンパスなどの会計監査を担当していて処分を受けなかったわけですが、今回も東芝は上場廃止にならず、新日本監査法人も処分を受けないようなことが言われたりています。
 そうなると、企業側に粉飾をしてバレても上場廃止にはならないのであれば、赤字や債務超過を避けるために粉飾しようと思ったり、監査法人は粉飾を見逃しても処分されないということになると、会計監査制度というものがそもそも必要なのかという議論になるのではないかと危惧しています。
 今回は、『適切な』処分をして欲しいですね。

2015年7月28日 國村 年

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事務所通信2015年6月

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2015年6月号 『マイナンバー

 先日、日本年金機構の100万件を超える年金情報の流出問題がありましたが、最近、『マイナンバー』に不安を感じておられる方も多いのではないでしょうか。
 そこで、今回は、『マイナンバー』について書きたいと思います。

1.マイナンバーとは?
 マイナンバーは、住民票を有する全ての方に1人1つの番号を付して、①社会保障、②、③災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるものです。
 期待される効果は、以下のとおりです。

  • 公平・公正な社会の実現
  • 国民の利便性の向上
  • 行政の効率化

2.マイナンバーはいつ分かるのか?
 平成27年10月から、住民票を有する国民全員に12桁マイナンバー(個人番号)が通知されます(中長期在留者や特別永住者などの外国人の方にも通知されます。)。
 通知は、市区町村から、原則として住民票に登録されている住所宛てにマイナンバーが記載された「通知カード」を送ることによって行われます(法人13桁)。
 マイナンバーは一生使うものであり、マイナンバーが漏えいして、不正に使われる恐れがある場合を除き、番号は一生変更されませんので、マイナンバーはぜひ大切に扱ってくださいね。

3.マイナンバーはどう使われるのか?
 平成28年1月から、①社会保障、②、③災害対策の中で、法律や自治体の条例で定められた行政手続にマイナンバーが必要になります(不正は罰則の対象になります。)。
 国の行政機関や地方公共団体などで、年金・雇用保険・医療保険の手続、生活保護・児童手当その他福祉の給付、確定申告などの税の手続などで、申請書等にマイナンバーの記載を求められることとなります。
 また、税や社会保険の手続きにおいては、事業主や会計事務所などが個人に代わって手続きを行うこととされている場合もあるため、勤務先や会計事務所などにもマイナンバーの提出を求められる場合があります。
 民間企業も、従業員の健康保険や厚生年金の加入手続を行ったり、従業員の給料から源泉徴収して税金を納めたりしています。
 また、証券会社や保険会社等の金融機関でも、利金・配当金・保険金等の税務処理を行っています。
 平成28年1月以降(厚生年金、健康保険は平成29年1月以降) は、これらの手続を行うためにマイナンバーが必要となるため、企業や団体にお勤めの方や金融機関とお取引がある方は、勤務先や金融機関にご本人やご家族のマイナンバーを提示する必要があります。
 また、民間企業が外部の方に講演や原稿の執筆を依頼し、報酬を支払う場合、源泉徴収をしなければならないため、こうした外部の方からもマイナンバーを提供してもらう必要があります。

4.最後に
 まだまだ認知度が低いのは国の広報不足だと思いますし、情報漏えいのリスクも対応コストも負うのは民間ですので、マイナンバーセミナーも(有料・無料問わず)民間が行うのではなく、国がどんどん行うべきと思うのは僕だけでしょうか?

2015年6月26日 國村 年

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事務所通信2015年5月

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2015年5月号 『税理士の節税策の報告義務』

 記帳・決算・申告業務しかしない税理士もいると思いますが、僕自身は、税理士としての仕事の一つだと考えていますので、クライアントにとって良い節税策があれば、当然提案します。
 今般、政府は、税理士に企業の節税策に報告義務を課す検討を始めたようです。
 そこで、今回は、『税理士の節税策の報告義務』について書きたいと思います。

1. 現状
 日本経済新聞によると、政府は税理士に対し、企業に提供している節税策の報告を2017年度にも義務づける検討に入ったようです。
 多額の税収減につながる節税を対象にし、報告を拒む場合は罰金も検討するようです。
 過度な節税への牽制効果を見込み、税収減や企業間の不公平を和らげることが目的のようです。
 また、企業の租税回避の防止へ国際的な枠組みが整備されつつあることを踏まえ、欧米などと足並みを揃えるようです。

2.改正時期
 与党の税制改正の議論を経て、早ければ2017年の通常国会で関連法を改正するようです。
 節税策を作る税理士やコンサルティング会社に加え、節税策の提供を受ける企業も報告義務の対象になる可能性があります。
 税理士には顧客企業のリストの提出を求めることも検討するようです。

3.海外の状況
 米英や韓国などは、既に当局への報告を義務づけています。
 日米欧などが加盟する経済協力開発機構(OECD)は今年9月にまとめる企業の節税への対抗策のなかで、日本などにも義務づけを呼びかける見通しです。
 主要7カ国(G7)が5月27日から独ドレスデンで開く財務相・中央銀行総裁会議でも、企業の租税回避をどう防ぐかが主要な論点になるようです。

4.報告の対象
 政府は今後、どんな節税策を報告の対象にするかを詰めます。
 節税策で代表的なのがグループ会社から損失を移したり、航空機のリース費用を複数の会社で分けたりして利益を意図的に減らす損失取引という手法ですが、1年間で億円単位の損失を意図的に作り出すような節税策が報告の対象(例えば、米国では、年間1千万ドル(約12億円)以上の損失を出す取引などが対象)になりそうです。
 節税策を提供する税理士に企業が割高な報酬を支払っていたり(例えば、米国では、税理士が企業から25万ドル(約3千万円)を超える報酬を得た場合が対象)、企業が提供を受けた節税策を他社に伝えないよう守秘義務を負っていたりする場合にも報告を求める見通しです。

5.最後に
 税務上、節税・租税回避・脱税という言葉がよく用いられますが、節税は、税法上認められた範囲内で行われる行為です。
 よって、本来、規制されるべきではありませんし、節税策を考えるのが税理士の仕事だと考えます。
 それなのに、政府は、報告を受けた節税策の情報をもとに法制度を手直しし、節税策を防止しようとしていますが、そのスタンスはいかがなものなのでしょうか。

2015年5月26日 國村 年

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2015年4月号 『結婚・子育て資金の贈与税の非課税制度』

 平成27年度税制改正は、それほど大きな目玉はありませんでしたが、平成26年度税制改正の『教育資金の贈与税の非課税制度』に続いて、『結婚・子育て資金の贈与税の非課税制度』ができました。
 そこで、今回は、『結婚・子育て資金の贈与税の非課税制度』について書きたいと思います。

1. 結婚・子育て資金の贈与税の非課税制度とは?
 既に先月からスタートしていますが、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に、20歳以上50歳未満の方が、結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母や祖父母など。。)から、①信託受益権を付与された場合、②書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合、または③書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合には、信託受益権または金銭等の価額のうち1,000万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となる制度のことです。

2.結婚・子育て資金とは?
 まず、結婚に際して支払う以下のような金銭(300万円が限度)をいいます。

 1   挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの) 
 2   家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの) 

 また、妊娠、出産及び育児に要する以下のような金銭をいいます。

 3   不妊治療・妊婦健診に要する費用 
 4   分べん費等・産後ケアに要する費用 
 5   子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など 

3.留意点
 契約期間中に贈与した者が死亡した場合には、死亡日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額(結婚に際して支払う金銭については、300万円を限度とします。)を控除した残額を、贈与した者から相続等により取得したこととされます。
 この点が、『教育資金の贈与税の非課税制度』と異なる点です。
 これは、『教育資金の贈与税の非課税制度』は祖父母からの贈与を、『結婚・子育て資金の贈与税の非課税制度』は父母からの贈与を想定しているためだと言われています。
 一方、受贈者が50歳に達することなどにより、結婚・子育て口座に係る契約が終了した場合には、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除(管理残額がある場合には、管理残額も控除します。)した残額があるときは、その残額はその契約終了時に贈与があったこととされます。
 この点は、『教育資金の贈与税の非課税制度』と同様です。

4.最後に
 手続きが結構手間なのであまりお勧めはしませんが、相続税対策に時間がないときには有効な手段となると考えられます。
 そもそも、父母や祖父母からの贈与に頼った税制や日本の景気回復対策もどうかと思いますので 個人的には、いっそのこと、贈与税率を大幅に下げた方が効果的なのではないかと思いますね。

2015年4月28日 國村 年

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事務所通信2015年3月

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2015年3月号 『小規模企業共済』

 2015年は、個人事業主の方などは、3月16日で所得税、3月31日で消費税の確定申告シーズンも終わりです。
 最近、確定申告時期の無料相談会、相続税の申告業務などで、小規模企業共済の良さを改めて感じています。
 そこで、今回は、『小規模企業共済』について書きたいと思います。

1.小規模企業とは?
 小規模企業共済制度は、個人事業をやめられたとき、会社等の役員を退職したとき、個人事業の廃業などにより共同経営者を退任したときなどの生活資金等をあらかじめ積み立てておくための共済制度です。
 小規模企業共済法に基づき、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。

2.小規模企業共済に加入できる人は?
 小規模企業共済制度の加入条件は、以下のとおりです。

 1   常時使用する従業員の数が20人以下(宿泊業・娯楽業を除くサービス業、商業では5人以下)の個人事業主及び会社の役員 
 2   事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員 
 3   常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員 
 4   常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員 
 5   小規模企業者たる個人事業主に属する共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)  

3.掛金の税法上のメリット
 掛金月額は1,000円から70,000円の範囲内で500円単位で自由に選べ、「小規模企業共済等掛金控除」として、課税対象所得から全額控除できます。

4. 掛金の税法上のメリット
 満期はなく、共済金は廃業時・退職時に受け取れます。
 共済金等の受取方法には、「一括」、「分割(10年・15年)」「一括と分割の併用」の3種類があります。
 税法上、共済金を一括で受け取る場合には「退職所得扱い」、共済金を分割で受け取る場合には「公的年金等の雑所得扱い」となります。
 ちなみに、死亡の場合で、共済金を一括で受け取る場合、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)とは別枠で、死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を用いることができますので、例えば、相続人が配偶者とお子様2人の合計3人の場合、1,500万円(500万円×3人)までは相続税はかかりません。

5.事業資金の借入
 契約者(一定の資格者)の方は、担保・保証人不要で、納付した掛金合計額の範囲内で、事業資金などの貸付けが受けられます。

6.最後に
 とある団体に加盟されている方は、かなりの割合で小規模企業共済に加入されていました。
 掛金は所得税の確定申告において全額所得控除できますし、死亡時に共済金を一括で受け取る場合は、死亡金退職金の非課税枠を使えますので、かなりお勧めですよ。

2015年3月30日 國村 年