法務省が違反認定なら過料も視野に海外IT48社に日本での登記を要請!
日本経済新聞によると、古川禎久法務大臣は、先日の記者会見で、アメリカのグーグルなど海外に本社を置く大手IT(情報技術)企業48社に、日本での登記を要請したと明らかにしました。
法務省と総務省が2022年3月29日、電気通信事業者として届け出済みの48社に要請文を出したようです。
会社法では、日本で継続的にビジネスをしている外国企業に、日本法人だけでなく、本国の本社も登記することを義務づけていています。
IT企業の多くはこのルールを把握しつつも、日本法人だけを登記していた可能性があるようです。
法務省と総務省は48社に登記をしない場合、4月15日までにその理由を説明することも求めていました。
複数社から回答が来ているとみられ、古川氏は「回答状況は現在精査中」と述べました。
要請を受けた全48社の社名は明らかになっていません。
法務省は日本国内で電気通信事業の届け出をしている外国企業の中から、登記をしていない企業を選び、一斉に要請文を出しました。
届け出を継続的なビジネスをしている証拠と考えたためです。
総務省によると、電気通信事業の届け出をしている企業数は国内外合わせて約1万3,000社あるそうです。
海外勢ではツイッターやメタ(旧フェイスブック)などアメリカのIT大手のほか、華為技術(ファーウェイ)や動画共有アプリ「TikTok」など中国系大手の関連会社も届け出をしています。
複数の関係者によると、法務省はこれまでにも海外IT大手に登記を要請したことがあったが、各社は対応してこなかったようです。
今回は法務省と総務省の連名の要請で、回答期限も区切り、今後の対応方針を検討しているもようです。
登記の徹底を求める声は、国会議員や弁護士の間からも上がっていたようです。
2021年に施行したデジタルプラットフォーム取引透明化法の付帯決議や、2021年6月に出されたネット上の中傷対策を巡る自民党の緊急提言でも、政府に対策を取るよう求めていました。
法務省は今後、各社からの回答内容を精査し、会社法違反と判断した場合には過料(100万円以下)の手続きに移ることを視野に入れています。
過料の可否は裁判所が判断するため、法務省は会社法違反と判断した企業を裁判所に通知することを検討しているようです。
今まで知りませんでしたが、会社法では本国の本社も登記しないといけないことになっているんですね。
それなのに、今まで要請しても無視されてきたのはなぜなのでしょうか?
登記するとマズいことがあるのでしょうか?
登記関係で過料が科されるのはあまりないのではないかと思われますが、企業のコンプライアンスに対するスタンスの問題だと思いますので、今後どうなるか注目したいですね。
法務省が違反認定なら過料も視野に海外IT48社に日本での登記を要請していることについて、どう思われましたか?
官報の決算公告を実施している株式会社は「わずか1.5%」!
東京商工リサーチによると、会社法で定める「決算公告」ですが、決算公告が義務付けられている「株式会社」では、約8割の企業が決算公告を官報と記載しています。
しかしながら、2021年に官報に決算公告した株式会社は40,154社で、全株式会社のわずか1.5%にとどまることがわかったようです。
経営の透明性が重要視されていますが、情報開示に消極的な中小企業が多いようです。
「合併」や「資本金の額の減少」など、一部の法的公告は法令で官報公告と定められています。
ただし、「決算公告」は「官報」だけでなく、「電子公告」や「日刊新聞紙」も可能です。
東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベースによると、株式会社の公告方法は「官報」が83.1%と大半を占め、日刊新聞紙ほかが14.5%、電子公告が2.4%でした。
会社法では決算公告の義務を怠った場合、100万円以下の過料という罰則規定が定められています。
ところが、同法が適用されたケースはほとんど確認されていません。
決算公告が進まない理由は、貸借対照表の公告料が最低でも74,331円(税込)、損益計算書を付記すると15万円近くかかります。
こうした高額の公告料も、決算公告が進まない一因とみられます。
政府の「中小企業活性化パッケージ」では、経営者の個人破産回避や再チャレンジなどの中小企業支援策が強化されています。
その一方で、決算公告など情報開示が不十分な状況だけに、債権者(取引先)が取引対象先の信用力を判断する客観的な材料が少ないのも事実です。
中小企業が経営の透明性を高めるためにも、法律に沿った決算公告の運用意識と配慮が求められます。
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースを活用し、株式会社の公告方法を調査しました。
公告方法は、官報、日刊新聞紙、電子公告の大きく3つに分類されます。
最も多いのは「官報」で、全体の83.1%と8割を超えました。
合併公告や資本金の額の減少公告などは、法令で官報掲載と定められています。
日本経済新聞などの全国紙、地方紙などの「日刊新聞紙」ほかの公告は14.5%で、本社所在地の地元紙に掲載するケースも少なくありません。
「電子公告」は商法等の改正で2017年から始まり、自社ホームページなどでの公告で利便性は高いが、まだ2.4%にとどまっています。
2021年に「官報」に決算公告した未上場の株式会社40,154社の産業を調査しています。
最多は、サービス業他の27.4%で、3割に届きませんでしたが、積極的に官報公告を利用しています。
次いで、大手企業の子会社なども多い製造業の19.1%、卸売業11.5%、情報通信業10.4%と続いています。
社数の多い建設業は5.4%にとどまり、決算公告に消極的な姿勢がみられました。
資本金別では、1千万円以上5千万円未満が構成比39.5%と約4割を占めました。
次いで、1億円以上の大企業が29.7%と3割近くを占め、5千万円以上1億円未満が19.3%と続いています。
一方、100万円未満はわずか1.9%にとどまり、小規模事業者の情報開示への認識が低いことを示しています。
売上高別(判明分)では、売上規模が大きいほど公告比率が高かったようです。
最高は10億円以上50億円未満の31.6%。次いで、100億円以上の18.3%と続いています。
売上規模の小さい1億円未満も9.3%と一定の水準があり、大手企業の系列やベンチャー企業などが決算公告を実施しているようです。
決算公告を実施している株式会社は、全体のわずか1.5%にとどまります。
罰則の適用例がほとんどないことに加え、官報公告の掲載費用が高いことが背景にあるとみられます。
しかしながら、同時にコンプライアンス(法令遵守)やコーポレートガバナンス(企業統治)の意識の乏しさも問われています。
決算公告は、金融機関や取引先など第三者でも決算数値の整合性を確認できます。
万が一、複数の異なる決算書を作成している場合、官報公告で差異発覚の端緒となる可能性もあります。
決算公告は、経営の透明性を向上させ、企業への信頼性を高めることにつながります。
2016年に官報の公告料金が値上げされました。
官報公告が高額になると中小・零細企業では活用しにくくなります。
官報公告の意義を認識し、掲載費用の見直しも必要でしょう。
長引くコロナ禍で、中小企業への支援策は拡充されました。
ただし、インターネットで取得できる商業登記の代表者住所は2022年9月から非表示となる見通しで、代表者の資産把握が難しくなります。
また、経営者保証ガイドラインでは、経営者保証に依存しない動きも加速しますが、債権者側の保全対応が難しくなるだけに債務者(経営者)の責任感や意識も問われます。
事業再構築、復活支援金など、コロナ禍でも中小企業向けの支援策が多く打ち出されました。
「事業再生ガイドライン」では地域の経済合理性も打ち出されました。
地域社会を構成する取引先への情報開示も必要でしょう。
様々な支援を求める企業や上場企業だけでなく、情報公開が少ない外資系企業にも、会社法で定める決算公告など最低限の遵守が求められます。
なお、本調査は、TSRが独自集計した2021年(1-12月)の株式会社で官報に決算公告した40,154社と、TSRの企業情報や国税庁の「令和元年分会社標本調査」による株式会社の単体法人数2,545,100社を比較・分析したものです。
有価証券報告書提出会社は会社法で決算公告の義務などの適用がないため、上場企業は除いています。
複数回掲載は重複を避けるため1社でカウントしています。
また、合併公告や資本金の額の減少公告、通常の決算公告などすべての決算公告を対象にしました。
調査は今回が初めてです。
この記事は、会社法で定められているので中小企業も決算公告をしましょうという論調ですが、個人的には、実態を考慮し、資本金や売上高や従業員数などで決算公告が必要な会社を定めるなど、会社法を変える必要があるのではないかと思っています。
おそらく、決算公告が本当にすべての株式会社に必要なものと国や金融機関が考えているのであれば、支援金などの添付資料などに、決算公告を加えても良いと思いますし、金融機関の融資の際の提出書類に加えても良いと思いますので。
官報の決算公告を実施している株式会社は「わずか1.5%」であることについて、どう思われましたか?
関西スーパーの株主総会は取引先持ち株会が賛否の「隠れみの」に!
日本経済新聞によると、司法判断を受けて、先日、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下となった関西スーパーマーケットですが、最高裁までもつれた原因は株主総会での1人の株主の行動でしたが、僅差の可決を後押ししたとみられるのは9%超を保有する第2位株主の取引先持ち株会だったそうです。
関西スーパーの取引先持ち株会には、食品スーパーや卸などが参加しています。
総会前には伊藤忠食品が、理事長一任での議決権行使という慣例に異を唱えて、自主投票となりました。
上場企業の多くの取引先持ち株会は同じような慣例があります。
そしてほとんどが議案への賛成になっているとみられます。
「相互間の親睦関係の増進に寄与することを目的とする」と、日本証券業協会の「持ち株制度に関するガイドライン」には、取引先持ち株会の目的について記されています。
取引先持ち株会は、社歴の長い伝統的な企業に多く存在します。
昔は上場時の安定株主対策や定期的な売買手数料を得る狙いもあって、主幹事証券会社が「取引先に株を持ってもらいましょう」と持ち株会の設立を提案することも多かったようです。
関西スーパーの総会では、取引先持ち株会の議決権行使の透明性も課題として浮かび上がりました。
株主総会の議決権行使書面は総会日から3か月間保管しなければならず、株主は閲覧や複写を求めることができます。
今回の場合、総会を開いた関西スーパーだけでなく、オーケーも株主ごとに賛否を知ることが可能なのです。
しかしながら、持ち株会の中の議決権行使結果は開示されません。
持ち株会全体として賛成、反対、棄権の比率が開示されるだけです。
自主投票となった持ち株会の会員企業の賛否は、関西スーパーにしかわからないのです。
今回、この仕組みをうまく活用できないか検討した取引先株主がいたようです。
持ち株会は定期的に資金を拠出して株式を買い付けるため、少しずつ会員企業の保有株数は増えていきます。
一部を持株会から引き出して自社名義での保有にする企業も多いです。
この株主は「自社名義分は不行使や棄権、反対に、持ち株会での保有分は賛成にと使い分けできると考えていた」(関係者)ようです。
オーケーが知ることができる部分はオーケー寄りに、関西スーパーにしかわからない部分は関西スーパー寄りにすれば両方に義理立てできるわけです。
取引先持ち株会を通して保有する株は、政策保有株扱いになることが多いようです。
上場企業に課されているコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は、政策保有株式の削減を促すと同時に、政策保有株式に係る議決権の行使について具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきだと定めています。
取引先持ち株会を「隠れみの」にした議決権行使の使い分けはコーポレートガバナンス・コードに沿っているとは言いがたいでしょう。
伊藤忠食品が関西スーパーに統合相手の価値評価額や算定根拠の開示などを求める質問状を送り、持ち株会の理事長一任に異を唱えたのは、自らの株主への説明責任を果たすためでした。
2019年にはある国内投資家が日証協に対し、コーポレートガバナンス・コードの趣旨に沿えば取引先持ち株会は解散されるべきだとの要望をしています。
日本企業の古き伝統は企業統治強化の中で存在意義を問われています。
知りませんでしたが、取引先持ち株会はそうなっているんですね。
取引先は、どちらとも取引があるところが多いでしょうから、困ったと思いますが、うまく使い分けていたところもあるんですね。
これをきっかけに、取引先持ち株会のあり方が議論されるといいですね。
関西スーパーの株主総会は取引先持ち株会が賛否の「隠れみの」になったことについて、どう思われましたか?
国税が過去に「高額すぎる」と指摘した京都新聞HDの大株主への報酬を第三者委員会が調査!
産経新聞によると、京都新聞社を傘下に置く京都新聞ホールディングス(HD、非上場、京都市中京区)で、大株主の元相談役(80)に不適切な報酬を支払っていた疑いがあるとの問題が浮上しているようです。
報酬をめぐっては国税当局が約10年前、「不相当に高額」と指摘していたことも、先日、関係者への取材で判明したようです。
報酬の支出は2021年2月まで継続していました。
京都新聞の報道によると、報酬の年間総額は4千万円を超えるとみられます。
特定の株主に配当とは別に報酬を支払い続けたことが「株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしてはならない」と定めた会社法に抵触する疑いがあるとして、京都新聞HDは弁護士でつくる第三者委員会を設置し、調査しています。
京都新聞の報道や関係者によると、元相談役が代表を務める資産管理会社は京都新聞HD株式の25.9%を保有しています。
元相談役に京都新聞HDなどのグループ3社が長年、株主配当とは別に相談役報酬を支払っていました。
年間総額は4千万円超とみられます。
2020年2月以降の内部調査の結果、不適切な支出だった可能性があるとして報酬の支払いを停止し、2021年3月に相談役を解嘱しました。
一方、関係者によると、2011年ごろの国税当局の税務調査で元相談役の報酬について、ほかの相談役の報酬や業務内容との比較などから「不相当に高額」と指摘され、高額と判断された部分は損金として認められなかったようです。
京都新聞によると、元相談役への高額報酬は長年にわたって続いたとされます。
関係者によると、元相談役の年間報酬額を知る人物は社内のごく一部に限られていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に2020年2月から経費の見直しを進めていた過程で判明しました。
元相談役は、近年は、3か月に1度のペースで京都新聞HDの社長から社の近況報告を受けていましたが、自ら出社することはほぼなかったそうです。
京都新聞HDは、先日、記者会見し、特定株主に報酬を支払い続けたことが会社法に抵触する疑いがあるとして第三者委員会を設置したことを明らかにしましたが、調査への影響などを理由に、支出先や額は伏せました。
一方、京都新聞は、翌日の朝刊1面でそれらを報じました。
京都新聞社は京都新聞HDの100%子会社ですが、記事では「独立した立場で今回の問題を取材、報道する」と伝えています。
産経新聞の取材に対し、京都新聞HDは、「会見で発表した以上のことは申し上げられない。第三者委員会の調査結果は公表する」とコメントしました。
京都新聞HDを通じて元相談役にも取材を申し込んだようですが、応じなかったようです。
京都新聞HDをめぐる問題で、小原正敏元大阪弁護士会会長ら3人の弁護士で構成される第三者委員会が調査する報酬を受け取っていた元相談役は、京都新聞の経営に長年携わってきた一族の方です。
昭和17年の合併で誕生した京都新聞社(現京都新聞HD)の社長は、この一族の方が30年以上務めました。
この社長は、昭和40年代に日本新聞協会の会長にも就いています。
この社長の後を継いだのが息子で、息子は京都新聞社と兄弟会社だった近畿放送(現京都放送、呼称・KBS京都)でも社長を務めましたが、昭和58年に死去しました。
巨額の簿外債務をめぐってグループ内部で騒動となり、京都新聞社会長だった元相談役はその関連で昭和62年に相談役に退きました。
KBS京都は、「戦後最大の経済事件」と呼ばれた平成3年のイトマン事件にからみ平成6年に経営破綻し、会社更生法の適用を申請しました。
平成19年10月に裁判所が更生手続きの終結を決定し、再建を果たしました。
京都新聞HDは、2021年6月29日の株主総会で役員を新たに選任しました。
現在この一族では、元相談役の息子(47)が取締役に名を連ねるのみです。
ただし、元相談役が代表を務める資産管理会社は京都新聞HDの25.9%の株式を保有しているため、出席株主の3分の2の賛成が必要な重要事項にこの一族側が難色を示せば、京都新聞HD側の提案が否決される可能性があります。
関係者の一人は、「この一族の機嫌を損ねる行動を取るには覚悟がいる」としつつ、問題となった元相談役報酬をめぐり「個人のためではなく、新聞が社会的な使命を果たすために使われてほしい」と話しました。
なお、京都新聞ホールディングスは、昭和17年の合併で京都新聞社として設立され、平成26年4月の持ち株会社化で「京都新聞ホールディングス」に商号変更され、新聞制作と編集を行う事業会社として、京都新聞HDが100%出資する京都新聞社が新たに誕生しました。
実態は配当のような気はしますが、社会的な影響力のある新聞社のホールディングカンパニーが会社法に抵触する疑いがあるようなことをしているんですね。
100%子会社の新聞社が、きちんと報道しているのはスゴイですね。
昔から相談役というもの自体の存在に疑問を持っていましたが、この事件が、相談役を見直すきっかけのひとつになればいいですね。
国税が過去に「高額すぎる」と指摘した京都新聞HDの大株主への報酬を第三者委員会が調査していることについて、どう思われましたか?
「バーチャル開催」は株主総会の新潮流になるか?
東洋経済ONLINEによると、政府からの自粛要請を受け、大規模な集会やイベントが中止を余儀なくされています。
そんな中、法律上中止にできないのが定時株主総会です。
会社法の規定により、株主全員の同意があった場合以外は、必ず総会を開催しなければならないことになっています。
3月は12月決算企業の定時株主総会が開催される月で、12月決算の上場会社は453社(2020年3月10日時点)あり、このうち4月開催の窪田製薬ホールディングスを除く452社が3月中の開催を予定しています。
その窪田製薬も、2016年の上場当時から毎年4月に総会を開催しています。
つまり、新型コロナウイルス対策を理由に株主総会の開催を4月以降に延期する上場会社はゼロなのです。
法務省は定時株主総会の開催時期について、「会社法上、事業年度の終了後3カ月以内に必ず定時株主総会を招集しなければならないものとされているわけではありません」というコメントを発表しています。
しかしながら、株主総会の開催日はそう簡単に動かせません。
株主総会の開催が決算期末から3カ月を越えてしまうと、翌期の第1四半期が終わっても役員人事が確定しないという事態を招いてしまいます。
配当の決議機関を株主総会としている会社では配当の支払いが遅れ、税務処理の面でも影響が出ます。
12月決算の上場会社を単元株主数の多い順に並べ、上位50社を見てみると、2019年と同様、総会開催日も総会開催会場もほぼ同じという企業がほとんどです。
大半の企業が招集通知に新型コロナ対策についての注意書きを付し、議決権行使は総会会場に来場せずに、郵送もしくはインターネットで行使することを推奨しています。
会社側のスタッフはマスクを着用し、具合が悪そうな人には声かけをし、退場を促すなど、臨戦態勢モード全開です。
カゴメとライオンは例年手渡しているお土産を中止し、ライオンは総会後に開催していた懇談会も取りやめます。
ヤマハ発動機は会場に保健師を待機させ、お土産、飲料提供は中止します。
自社製品の展示や、総会後に実施していたコミュニケーションプラザの視察会も2020年は実施しません。
クックパッドやキヤノン、花王、電通グループ、DICは会場入口での検温を実施し、体温が37.5度以上の株主は入場を制限するとしています。
資生堂は、株主が座る座席の間隔を大きくとるなど、各種の対策をこらしています。
屋外作業向け工具卸のトラスコ中山は、2019年は3月8日に開催した総会を2020年は3月13日に開催しました。
見かけ上は1週間後ろ倒したように見えますが、3月の第2金曜日開催という従来のルールどおりで、新型コロナ問題を理由に後ろ倒したのではありません。
同社は開催会場を東京と大阪の2カ所としている唯一の上場会社だそうです。
取締役は2カ所に分かれて出席しますが、議長は1年おきに出席会場を変えます。
2019年は大阪だったので、2020年は東京会場に出席しました。
総会の進行は通信回線で両会場を結び、議長のいない方の会場の株主は、議事進行状況を会場に設けられたスクリーンで見ることができます。
議決権行使や質問、動議はもう1つの会場の議長に伝わるので、どちらの会場にいても議決権行使は可能です。
同社の2019年12月末時点の株主総数は4万106人で、2会場での総会開催ゆえか、リアル総会への出席率は例年7%を超えます。
基本的には総会への来場・出席を促しているが、今回はさすがに郵送かインターネットによる議決権行使を促しました。
12月決算会社中51番目に多い2万9,335人の株主を擁するGMOインターネットは、株主が参加しやすくするため、2019年は上場しているグループ会社8社中5社が、日曜もしくは祝日に開催しました。
ところが、2020年は逆に来場を控えるよう呼びかけ、開催日も3月30日とするなど、開催日を後ろ倒しにしました。
総会の当日はホームページ上でライブ中継も実施し、株主以外でも視聴可能です。
ソフトバンクも決算説明会や株主総会をライブ中継してきましたが、GMOは2020年が初めてで、「2021年以降も株主の反応をみて、株主の不利益やハードルがない限り継続したい」(同社広報)とのことです。
経済産業省は、2020年2月26日、「ハイブリッド型バーチャル株主総会」(以下、バーチャル総会)に関する実施ガイドを公表しました。
バーチャル総会とは、取締役などがリアルの株主総会を開催しつつ、インターネットなどを使って遠隔地の株主が総会に参加・出席できる総会のことです。
ソフトバンクなどのような一般公開型の株主総会中継と異なり、参加・出席できるのは議決権を持った株主に限定しています。
バーチャル総会には、参加者が議決権行使や質問などをすることができない「参加型」と、それができる「出席型」があります。
参加型は、希望する株主にIDとパスワードを発行し、WEBサイト等で配信される中継動画を視聴してもらいます。
質問や動議を出せないが、参加者のコメントを議長の裁量で取り上げることはできます。
議決権行使は事前に郵送かインターネットで済ませておく必要があり、すでにグリーやアステリアで実施された実績があります。
これに対し、出席型の場合、会社側は通信障害の対策を施さねばならず、株主側も参加可能な通信環境を備えていることが前提になります。
12月決算企業で唯一、この出席型総会の実施に踏み切ったのは、独立系ソフト開発大手の富士ソフトです。
2019年12月末時点の株主総数は1万1,118人で、例年の出席株主数は200人前後にとどまっています。
同社が3月13日に開いた総会でバーチャル出席を希望したのは11人でした。
事前に通信環境を会社側に申請させ、議決権行使に必要なiPadを保有していることを必須条件としました。
一方、リアル会場での出席者は159人でした。
当日は密集を避けるために複数の会議室に映像と音声を同時中継し、座席の間隔を大きくとりました。
同社は以前からバーチャル総会用のソフト開発を進めており、今回もリアルの総会会場に、出席者の人数分のiPadを用意し、iPad上で議決権行使できるようにしました。
同社は「少人数だからこそ実施できたが、マンモス総会に対応できるかどうかは未知数」(広報)としています。
バーチャル総会の議論はそもそも、企業と株主・投資家の建設的な対話を促すための環境整備という視点で始まったものです。
取締役会が不適切な意思決定をすれば、株主は会社側と対話をしたり、取締役の選任議案に反対するなど、株主総会で権利を行使したりすることもなく、その会社を見限って株を売ってしまいます。
一部のエンゲージメントファンドが根気強く会社と対話をし、権利を行使する場合もありますが、それはあくまでも例外でしかありません。
株主総会の実務に詳しい大塚和成弁護士によると、「上場会社と株主の対話をどのように促し、株主総会を活性化させるかというのは、昔からある、古くて新しいテーマ」だそうです。
日本は3月期決算企業が上場会社の6割強を占め、総会開催日が特定の日に集中しやすくなっています。
さらに、株主総会の招集通知を発送してから総会開催日までの日数が短く、議案を検討する時間が十分にとれません。
欧米の投資家は長年、こうした点の弊害を指摘し続けていますが、バーチャル総会には日本の株主総会慣行を多少なりとも変える機能を期待できるでしょう。
ある上場会社の幹部からは「今後、バーチャル総会が一般化すると、経営側は緊張感が高まる」という声もあがっているようです。
日本企業は株主に総会前の議決権行使を促し、会社提案の議案可決ラインの票を確保した上で総会に臨むことが多くなっています。
しかしながら、バーチャル総会が一般化すると、事前に議決権行使をせず、当日の総会の場で議決権行使をする株主が増え、総会終了まで結果がわからないという事態が一般化する可能性があります。
そうすると、その分だけ経営陣の緊張感は高まり、ガバナンス上は好ましいでしょう。
想定外の新型コロナウイルス禍でバーチャル総会が広まれば、日本企業のガバナンス向上に一役買うことになるのかもしれませんね。
限られた時間の中で、新しいことをするのは大変だと思いますが、新型コロナウイルスがきっかけとは言え、株主にとっては株主総会に参加する方法が増えることは望ましいことだと思います。
このような状況下で、感染のリスクを背負ってまで株主総会に参加しなくても良いと思います。
お土産目的で株主総会に参加される方もそれなりに多いようなことを聞きますが、個人的には、そもそもお土産は必要なのかと疑問に思っています。
株主総会に参加できる人とそうでない人がいると思いますので、お土産を出すのであれば、配当を1円でも増やしたり、株主優待を増やしたりして欲しいですね。
僕みたいに地方に住んでいる人間にとっては、株主総会にリアルで参加するには、時間もコストもかなりかかりますので。
今後、株主総会が新たな方向に向かうことを期待したいと思います。
「バーチャル開催」は株主総会の新潮流になるか?について、どう思われましたか?
会社法改正案では非上場の大企業にも社外取締役を義務化!
法制審議会(法相の諮問機関)の会社法部会がまとめた会社法改正の要綱案の全容が判明しました。
上場会社や非上場の大会社を対象に、社外取締役の設置を義務付けることなどが柱です。
株主総会での一部の株主による提案権の乱発も抑え、企業と株主の対話を促します。
2月に山下貴司法相に答申し、2019年の通常国会に改正案を提出し、2020年の施行を目指すようです。
海外の機関投資家などから企業の外部監査機能が不十分との指摘があるため、経営の監視機能を高めます。
社内の利害関係に縛られず、第三者の視点から経営をチェックするのが狙いです。
社外取締役の設置は、(1)監査役会を置き、株式の譲渡制限がない会社、(2)資本金が5億円以上または負債総額200億円以上の大会社、(3)有価証券報告書の提出義務があるのいずれも満たす企業が対象です。
上場企業のほか、少数株主がいる非上場の大会社も含みます。
法務省幹部は「今回の法改正で非上場では数百社が義務化の対象になる」とみています。
要綱案には「社外取締役を置かなければならない」と明記し、人数は1人以上を想定しています。
2015年5月施行の改正会社法は、監査役会を置き、株式の譲渡制限がない会社で大会社が社外取締役を置かない場合には、株主総会で理由を説明するよう求めています。
すでに東京証券取引所の上場企業は9割超が社外取締役を置いています。
一方、コストを敬遠したり、適任者がいなかったりして、未設置の企業も2.3%あります。
社外取締役の義務化で会社の意思決定に外部の見方を反映できます。
企業統治の多様性や透明性を確保することが、上場会社の収益性の向上や国際競争力の確保にもつながります。
取締役会の位置付けは異なるものの、欧米などでは上場会社の取締役の半数以上を独立した社外取締役にすることが多いようです。
要綱案では株主提案権の制限も盛り込みました。
株を持つ期間など一定の条件を満たせば、上限なく提案できる現行のルールを改めます。
1人の株主が株主総会で提案できる議案数を最大10に制限し、株主提案の内容にも制約を設けます。
誹謗中傷や侮辱行為、総会運営を妨げるような提案は認めません。
日産自動車の元会長のカルロス・ゴーン容疑者の報酬過少記載事件で役員報酬の透明化への関心が高まるなか、報酬の概要や基本的な考え方を取締役会が決定し、開示することも明記しました。
固定報酬や業績連動型報酬など、報酬の種類ごとの基準なども示します。
個々の役員の報酬開示については見送りました。
取締役会で決定した概要を開示し、株主に役員報酬の中身をわかりやすくし、妥当性の判断や株主総会で疑問点を追及できるようにします。
社外取締役が義務化される会社のほか、監査等委員会設置会社も対象とします。
事業報告には決定方針や報酬に関する決議、報酬の種類ごとの総額などを盛り込みます。
事業報告などの株主総会資料はインターネット上で提供できるようにします。
これまでは原則書面で、電子データでの提供は株主から個別に承諾を得る必要がありました。
定款で電子提供をすると定めれば、株主の承諾なしに電子化できるようにし、企業の負担軽減につなげます。
システム対応が必要なため、電子提供については2021年以降に施行する見通しです。
電子提供を定款に盛り込んだ企業は、株主総会の日時や資料を「総会の3週間前」からインターネット上で提供します。
書面での株主総会の招集通知の発送時期は現行通り「総会の2週間前」に据え置きます。
上場企業には施行日から電子化を義務付けます。
不適切会計の東芝にも社外取締役はいたわけですから、義務化すれば良いとは思いません。
同じ方が何社も社外取締役を兼務しているようですので、兼務を禁止するとか、お友達を禁止するとかしないと、何ら有効なものにならないような気はします。
どうせ改正するのであれば、有効なものにしてほしいですね。
会社法改正案では非上場の大企業にも社外取締役を義務化していることについて、どう思われましたか?