各更正通知書に添付された各別表から算出される金額と当該各更正通知書に記載された金額とが不一致である場合において理由の提示に不備があると判断した事例
- 平成28年12月1日から平成29年11月30日まで、平成29年12月1日から平成30年11月30日まで、平成30年12月1日から令和元年11月30日まで及び令和元年12月1日から令和2年11月30日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分
- 全部取消し
- 令和5年12月15日裁決
<ポイント>
本事例は、各更正通知書に添付された各別表から算出される控除対象仕入税額の減少額と当該各更正通知書に記載された控除対象仕入税額の減少額とが不一致である場合において、当該各別表に記載のどの部分が課税仕入れと認められなかったのかが判別できないことから、理由の提示に不備があると判断したものである。
<要旨>
原処分庁は、各更正通知書に記載された処分の理由には不利益処分の根幹部分をなす事実関係が明示されており、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文の法の趣旨に反するものではないから、各更正処分の理由の提示に不備はない旨主張する。
しかしながら、当該各更正通知書に添付された各別表に記載された金額から算出される控除対象仕入税額の減少額と当該各更正通知書に記載された控除対象仕入税額の減少額とは一致しておらず(本件不一致)、本件不一致は当該各別表中の一部の取引について原処分庁が請求人の仕入税額控除の対象と認めた金額(本件差額)があるために生じたものであるところ、当該各更正通知書に、本件差額に係る記載がないことにより、当該各別表を含む当該各更正通知書の記載だけでは、請求人において本件差額の存在さえ知ることができず、また、当該各別表に記載のどの部分が課税仕入れとして認められなかったのか判別することもできないため、不服の有無を判断することができない。
そうすると、当該各更正通知書は、各更正処分の全体について、原処分庁の判断過程を逐一検証し得る程度の更正の理由の記載があるとは認められず、原処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という趣旨目的を充足する程度に具体的に更正の根拠を明示したものと評価することはできないから、当該各更正処分は、その理由の提示に不備があり、違法である。
★リンクはこちら ⇒ 各更正通知書に添付された各別表から算出される金額と当該各更正通知書に記載された金額とが不一致である場合において理由の提示に不備があると判断した事例
2024年8月30日
請求人がした修正申告書の提出は、通則法第65条第5項(令和4年法律第4号による改正前のもの)の「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたもの」に該当しないとした事例
- 平成29年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分
- 棄却
- 令和5年12月7日裁決
<ポイント>
本事例は、いわゆる更正の予知の判断枠組みにつき「税務職員がその申告に係る国税についての調査に着手してその申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し、これによりその後の調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に、納税者がやがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意し修正申告書を提出したものでない」か否かにより判断するとした上で、その該当性については、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して判断すべきとしたものである。
<要旨>
請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(本件調査担当者)が、請求人に対して、調査又は行政指導の行為のいずれの事務として行うかを明示していないから、国税通則法第65条《過少申告加算税》第5項に規定する「調査」があったとはいえないため、修正申告書(本件修正申告書)の提出が、同項に規定する「その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件調査担当者は、請求人が勤務する法人の親会社から受けたインセンティブ報酬(本件報酬)が記載された資料の内容と請求人の確定申告書の記載内容とを比較検討することにより、本件報酬に係る給与所得の申告金額が計上されていないことをあらかじめ確認した上で、請求人に本件報酬を確認する旨の電話連絡(本件電話)をしたと推認され、これらの行為は本件調査担当者の課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程であると認められるから、同項に規定する「調査」があった場合に該当すると認められる。
そして、調査の内容・進捗状況、調査の内容・進捗状況に関する請求人の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性に係る各事情からすれば、修正申告の時点において、本件調査担当者による調査は、その後の調査が進行し確定申告が本件報酬を計上しない不適正なものであることが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達していたというべきであり、また、請求人は、本件電話を受けてから税理士に依頼し、修正申告していることから、やがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意し修正申告書を提出したものと認められる。
したがって、本件修正申告書の提出は、「調査があつたことにより更正があるべきことを予知してされたものではない場合」に該当しない。
2024年8月28日
国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税等の特例による加重措置の対象となる「重要なものの記載が不十分であると認められる場合」は、国外財産調書又は財産債務調書の記載内容により判断すべきとした事例
- 令和2年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分
- 令和元年分から令和3年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分
- 棄却
- 令和5年12月7日裁決
<ポイント>
本事例は、確定申告書の内容等から国外財産調書又は財産債務調書に記載すべき財産が特定できる場合であっても、納税者が提出した国外財産調書又は財産債務調書の記載内容から当該財産の特定が困難なときは、国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例による加重措置が適用されるとしたものである。
<要旨>
請求人は、請求人がした修正申告(本件修正申告)の基因となった財産(本件財産)から生ずる所得について確定申告をしていたことや、原処分庁所属の調査担当職員から本件財産について確認があったことなどからすると、本件財産は既に特定済みであるため、本件修正申告による過少申告加算税は、令和4年法律第4号による改正前の内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第3項又は第6条の3《財産債務に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項の規定(加算税加重措置)により加算税の額が加算されることとなる国外財産調書又は財産債務調書に記載すべき事項のうち重要なものの記載が不十分である場合には該当しない旨主張する。
しかしながら、加算税加重措置の適用の可否の判断は、国外財産調書又は財産債務調書の記載内容から行うべきであるところ、請求人が提出したこれらの調書には本件財産に係る記載事項に誤りや記載漏れがあり、その記載内容からは本件財産の特定が困難であると認められる。
したがって、当該記載内容は、国送法第6条第3項第2号又は第6条の3第2項第2号に規定する「記載すべき事項のうち重要なものの記載が不十分である」ものと認められるから、修正申告に係る過少申告加算税について加算税加重措置が適用される。
★リンクはこちら ⇒ 国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税等の特例による加重措置の対象となる「重要なものの記載が不十分であると認められる場合」は、国外財産調書又は財産債務調書の記載内容により判断すべきとした事例
2024年8月26日
請求人が、工事代金の一部が申告漏れとなったことについて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、隠匿あるいは故意に脱漏したとまでは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 令和2年1月1日から令和3年12月31日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分
- 令和2年1月1日から令和3年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分
- 全部取消し
- 令和5年12月4日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人の取締役が、申告漏れとなっていた現金での受領に係る工事代金について、領収証を故意又は過失により発行しなかったか、その控えを故意又は過失により破棄したものと認められるものの、故意に領収証を発行しなかったこと、あるいはその控えを故意に破棄したことなどにより、故意に帳簿に記載しなかったことを裏付ける証拠はないとして、国税通則法第68条第1項に規定する「隠蔽」に該当するとは認められない旨判断したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が現金で受領した工事代金(本件工事代金)について、請求人の取締役が請求人に帰属する金員と認識して受領した上で帳簿に記載せず、個人的に費消したと認められ、請求人も修正申告において取締役に対する役員賞与を支出したとして追認していることから、これらの行為は故意であり、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が領収証の控えが存在しながら帳簿に記載しなかったことをうかがわせる証拠はないことから、本件工事代金が帳簿に記載されていなかったのは、請求人が本件工事代金に係る領収証を故意又は過失により発行しなかったか、その控えを故意又は過失により破棄したものと認められるところ、取締役の申立てからは過失により本件工事代金に係る領収証を発行しなかった事実は認められるものの、故意に領収証を発行しなかったこと、あるいは、領収証の控えを故意に破棄したことなどにより、故意に帳簿に記載しなかったことを裏付ける証拠は見当たらない。
また、取締役が本件工事代金を個人的に費消したと取り扱われても仕方ない旨申し立てたことや、請求人が本件工事代金相当額を修正申告で役員賞与の取扱いをしたことは認められるものの、取締役が自らの所持金と混同するなどにより本件工事代金を個人的に費消した可能性を否定できず、請求人に帰属する金員と認識した上で個人的に費消したと認める証拠もない。そうすると、請求人が課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、隠匿あるいは故意に脱漏したとまでは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 請求人が、工事代金の一部が申告漏れとなったことについて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、隠匿あるいは故意に脱漏したとまでは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2024年8月22日
請求人がした青色申告承認申請書の提出期限の延長申請に関し、原処分庁が先にした同延長申請の承認を取り消した処分について、請求人が青色申請を期限までにすることができなかったことに通則法第11条規定の「災害その他やむを得ない理由」はなく、同承認は同条に適合しないにもかかわらずされたものだから、同取消処分が適法とした事例
- 災害による申告、納付等の期限延長申請の承認取消処分
- 棄却
- 令和5年11月15日裁決
<ポイント>
本事例は、原処分庁が先にした青色申告承認申請書の提出期限の延長申請についての承認処分について、当該延長承認の要件を満たさないことから、職権で取り消したことが適法と判断したものである。
<要旨>
請求人は、「新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で提出が遅れました」と記載した青色申告承認申請書(本件青色申請書)の提出が提出期限後となったのは、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言や自治体の外出自粛要請を受けて外出自粛等をしていたためであり、これらの事情は、国税通則法第11条《災害等による期限の延長》に規定する「災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるとき」に該当するから、原処分庁が、上記記載による同申請書の提出期限の延長申請に係る承認(本件延長承認)を後日取り消した処分(本件取消処分)は違法である旨主張する。
しかしながら、本件取消処分の適否を判断するに当たっては、本件延長承認がされた時点における事情に照らし、本件延長承認に違法等が認められるか否かを審理判断すべきであり、具体的には、本件延長承認が国税通則法第11条に適合するものであったか否かを検討すべきであるところ、本件青色申請書の提出が提出期限後になったのは、提出期限後になって特別償却の適用を受けるために青色申告の承認を受けようとしたという理由によるものであり、新型コロナウイルスの感染拡大を理由とするものではないから、「災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるとき」には該当しない。
2024年8月20日
給与を返還した場合には源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するとした事例
- ①平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する理由なし通知処分
- ②平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する理由なし通知処分
- ①一部取消し
- ②棄却
- 令和5年4月12日裁決
<ポイント>
本事例は、給与の返還に伴って源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額が減少した場合には、その減少後の正当に徴収された又はされるべき所得税等の額を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付を受けることはできないとしたものである。
<要旨>
請求人は、役員給与につき源泉徴収された所得税等(本件各源泉所得税)について、当該役員給与を一部返還したことにより過大となったにもかかわらず、源泉徴収義務者が源泉徴収税額の精算をしない場合には、源泉徴収義務者が請求人に役員給与を支払う際に徴収した源泉所得税を国は収納し利益を得ているのであるから、所得税法(平成31年法律第6号による改正前のもの)第120条《確定所得申告》第1項第5号の「源泉徴収された又はされるべき所得税の額」は、実際に源泉徴収された所得税等の額と解するのが相当であり、請求人は、本件の各更正の請求により本件各源泉所得税の額の還付を受けることができる旨主張する。
しかしながら、同号にいう「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは、所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収をされた又はされるべき所得税等の額を意味するものであり、役員給与が減額された以上、源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するのであるから、請求人が主張する事情があったとしても、請求人は、本件の各更正の請求において、本件各源泉所得税の額のうち、「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付を受けることはできない。
なお、原処分庁は、請求人の源泉徴収による所得税等の額は原処分庁ではなく源泉徴収義務者が再計算すべきものであり、また、請求人は源泉徴収義務者が発行した訂正後の源泉徴収票又はこれに代わる書類を提出していないから、源泉徴収義務者によって再計算された請求人の給与所得に係る源泉徴収された所得税等の額や所得控除の額を確認することができない旨主張する。
しかしながら、所得税法第120条第1項第5号の「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」の意味を踏まえると、請求人が本件の各更正の請求に関して提出した資料から正当に徴収されるべき所得税等の額が計算できる場合には、その計算をした所得税等の額を基に確定申告書に記載された納付すべき税額が過大となっているか否かを判断することが相当である。
★リンクはこちら ⇒ 給与を返還した場合には源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するとした事例
2024年3月25日
実地の調査に係る手続に原処分を取り消すべき違法又は不当は認められないとした事例
- ①平成26年分から令和2年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分
- ②平成26年1月1日から平成30年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分
- ③平成31年1月1日から令和2年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
- ①②③棄却
- 令和5年5月18日裁決
<ポイント>
本事例は、原処分庁が、その保有する情報及び請求人の確定申告書の記載内容から売上除外を想定し、原始記録及び帳簿書類等の保全のために国税通則法第74条の10《事前通知を要しない場合》に規定する事前通知を要しない場合に該当すると判断したことに、裁量権の逸脱又はその濫用は認められないことから、違法又は不当はないとしたものである。
<要旨>
請求人は、原処分庁が国税通則法第74条の10《事前通知を要しない場合》に規定する要件に該当しないにもかかわらず、請求人に対して無予告無通知で調査を行ったことから、原処分を取り消すべき違法又は不当がある旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、把握していた情報及び請求人の確定申告書の記載内容から売上除外等が想定され、事前通知をすることで請求人が売上げに係る原始記録及び帳簿書類等を破棄するなど不正取引の把握を困難にするおそれがあると認められたため事前通知を要しない場合に該当すると判断したものであり、その判断に全く事実に基づかず明白に合理性に欠けるなど裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったとは認められないことから、事前通知をしなかったことに違法又は不当はない。
また、請求人は、請求人から国税通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定する調査結果の内容の説明(調査結果説明)を受けることについての同意を受けた代理人税理士(本件税理士)に調査結果説明を行えなかったのであれば、原処分庁は、他の代理人税理士に調査結果説明をすべきであり、調査結果説明がないまま行われた原処分には取り消すべき違法がある旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、本件税理士に対して相当の回数、調査結果説明をするために連絡を試みており、本件税理士がこれに応じなかったことは、その機会を自ら放棄したものと認められることから、調査結果説明がなかったことについて、原処分の取消事由となる違法があるとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 実地の調査に係る手続に原処分を取り消すべき違法又は不当は認められないとした事例
2024年3月21日
請求人が、インターネット販売に係る売上げを隠蔽し又は売上げが請求人に帰属しないかのごとく取引名義を仮装したとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- ①平成26年分及び平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
- ②平成28年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分
- ③平成27年1月1日から平成27年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
- ④平成28年1月1日から令和2年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分
- ①③全部取消し、②④一部取消し
- 令和5年1月27日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、インターネット販売の出品者プロフィール画面に実在しない会社名や親族の名前を記載していたものの、請求人自身がネット販売を行っていることを示す行動をし、商品の仕入れにおいて請求人の実名で取引を行っていたことなどから、国税通則法第68条第2項に規定する隠蔽又は仮装の事実があったとは認められない旨判断したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、インターネット販売(本件ネット販売)において、出品者プロフィール画面に実在しない会社名や親族の名前を記載するなどして、取引名義を仮装することにより、本件ネット販売を行っていた事実を隠蔽した行為は、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、出品者プロフィール画面に請求人の携帯電話番号を表示するなど顧客に対して、請求人自身が本件ネット販売を行っていることを示す行動をしていること、商品の仕入れや売上代金の回収において、一貫して、請求人の実名で取引を行い、請求人名義の口座を用いていたことからすると、商品の出品の段階において、請求人の親族の氏名などを記載していたことをもって、直ちに請求人が本件ネット販売を行っていることを隠したなどと評価することはできない。
そうすると、請求人は、商品の仕入れから売上代金の回収までの本件ネット販売における取引の各段階において、本件ネット販売の取引上の名義に関し、あたかも請求人以外の者が取引を行っていたかのごとく装い、故意に事実をわい曲するなどの仮装行為を行っていた又は請求人に帰属する本件ネット販売の売上げを秘匿する等の隠蔽行為を行っていたとは認めることはできないから、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 請求人が、インターネット販売に係る売上げを隠蔽し又は売上げが請求人に帰属しないかのごとく取引名義を仮装したとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2023年12月22日
請求人が不動産の売買取引及び不動産の売買の仲介取引に関し、各取引の存在を把握し当該所得金額等も含め申告すべきことを認識しながら、これを申告しないことを意図し、これらを除外した収支内訳書の下書を作成して、それを提示して税務相談し、その結果に基づき確定申告をしたことなどから、隠蔽又は仮装が認められるとした事例
- 平成29年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、平成29年1月1日から令和2年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分
- 棄却
- 令和5年2月8日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、一部の取引に係る所得金額等を申告すべきことを認識しながら、意図的にこれを除外した収支内訳書の下書を作成して税務相談し、その結果に基づき確定申告をしたことなどの諸事情から、国税通則法第68条第1項及び第2項に規定の事実の隠蔽又は仮装が認められるとして、同条該当性を認めたものである。
<要旨>
請求人は、主たる業務である不動産賃貸の仲介の収支を管理する業績管理表実績と題する表(本件業績管理表)は、請求人の事業全部に係る帳簿書類ではないことから、同表に不動産の売買取引(本件売買取引)及び不動産の売買仲介取引(本件売買仲介取引)に関する記載がないとしても内容虚偽の帳簿書類の作成に当たらず、これらの取引の申告をしないことを意図したものではないから、国税通則法(通則法)第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する事実の隠蔽又は仮装に当たらない旨、また、これらの取引の申告をしない意図をうかがい得る特段の行動もしていない旨主張する。
しかしながら、本件売買取引に関しては、請求人は、同取引の帳簿書類たる売買計算表を作成して利益を把握しており、同表により算出した本件各売買取引に係る所得金額等も含めて申告すべきであると知りながら、これを申告しないことを意図して、本件業績管理表のみに基づいて、本件売買取引に係る収入金額等を除外した内容虚偽の収支内訳書の下書を作成し、税務署での申告相談に、本件売買取引に係る書類を一切持参せず、対応した職員に同下書を提示して相談した上で、その結果に基づいて、所得金額等を意図的に過少に記載して確定申告をしたと認められるから、通則法第68条各項に規定する隠蔽又は仮装が認められる。
また、本件売買仲介取引に関しては、請求人は、仲介手数料収入についての申告の必要性を認識していたと推認できること、本件売買仲介取引に関する収支の記録が存在しないのは、本件売買仲介取引に係る所得金額等を申告する意図がなかったことに起因すると認められること、前記申告相談の際に、対応した職員に対し、本件売買仲介取引に係る所得について何も明らかにしていないこと、調査の当初の言動は、本件売買仲介取引を隠蔽する意図に基づくものと推認できることからすると、当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったと認められ、同各項に規定する隠蔽又は仮装が認められる。
2023年12月21日
特定記録郵便により発送された処分に係る通知書は、配達完了の記録がされた日に納税者がその通知書を了知し得る客観的状態になり、送達されたものとなるとした事例
- 令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分
- 却下
- 令和5年2月22日裁決
<ポイント>
本事例は、処分に係る通知書が特定記録郵便により発送された場合には、その通知書は、その配達が完了した旨が記録された日に請求人の支配下に入ってその内容を了知し得る状態に置かれたものと評価でき、同日に送達されたと認められるとしたものである。
<要旨>
請求人は、原処分に係る通知書(本件通知書)を受け取った日からすれば、本審査請求は、不服申立てをすることができる期間内にされたものである旨主張する。
しかしながら、本件通知書は、特定記録郵便により請求人の住所に発送されているところ、本件通知書が返戻された事実はなく、当審判所の調査の結果によっても本件通知書が誤配達されたこと等をうかがわせる証拠は見当たらないことからすると、その配達が完了した旨が記録された日に送達を受けるべき請求人の住所に設置された郵便受箱に配達されたと認められ、同日に請求人の支配下に入ってその内容を了知し得る状態に置かれたものと評価できるから、本件通知書は、同日に請求人に送達されたと認められる。
そうすると、本審査請求は、本件通知書が送達された日の翌日から起算して3月を経過した後にされたものであり、また、請求人が法定の不服申立期間内に本審査請求をしなかったことについて、国税通則法第77条《不服申立期間》第1項ただし書に規定する正当な理由があるといえる事情は認められないから、本審査請求は、不服申立てをすることができる期間を経過した後にされた不適法なものである。
★リンクはこちら ⇒ 特定記録郵便により発送された処分に係る通知書は、配達完了の記録がされた日に納税者がその通知書を了知し得る客観的状態になり、送達されたものとなるとした事例
2023年12月20日
法律の規定に不備がある旨の主張は採用できないとした事例
- 平成28年分から平成30年分までの所得税及び復興特別所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分
- 棄却
- 令和4年11月2日裁決
<ポイント>
本事例は、先物取引等の全取引期間における損益の通算を認めないなどの現行の法律の規定には不備がある旨の請求人の主張は採用できないとしたものである。
<要旨>
請求人は、原処分について、国税に関する法律に基づいて実施された処分であることを認める一方、先物取引や株式の譲渡取引の各損益が、各取引を実施した全ての期間の損益を通算してそれぞれ赤字となる場合には、先物取引の差金等決済に係る損失や上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除が認められる3年を超える期間であっても通算をそれぞれ認めるべきであり、また、先物取引の損益と株式譲渡の損益の間でも通算を認めるべきであるから、このような取扱いのない現行の法律には不備がある旨主張する。
しかしながら、審判所は、原処分庁が行った処分が違法又は不当なものであるか否かを判断する機関であって、その処分の基となった法令自体の適否又は合理性を判断することはその権限に属さないことであるので、請求人が主張する点については、当審判所の審理の限りではない。
★リンクはこちら ⇒ 法律の規定に不備がある旨の主張は採用できないとした事例
2023年12月6日
請求人が法定申告期限までに申告書を提出しなかったことについて、仮装又は隠蔽に該当する事実はなかったとして重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成28年分から平成30年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和4年9月9日裁決
<ポイント>
本事例は、土地と建物が一括して売買され、当該売買契約において定められた土地及び建物それぞれの価額がその客観的な価値と比較して著しく不合理なものである場合には、所得税法施行令第126条第1項第1号イにいう「当該資産の購入の代価」は、合理的な基準により算定するのが相当であると判断したものである。
<要旨>
請求人は、土地及び建物を一括で3物件(本件3物件)買い受けて貸付けの用に供したところ、各売買契約書に記載された土地及び建物の各価額(本件各内訳価額)は第三者間での相対の商取引において合意された価額であって合理的な価額といえるから、当該各建物に係る所得税法施行令第126条《減価償却資産の取得価額》第1項に規定する「当該資産の購入の代価」は、本件各内訳価額に基づいて算定すべきである旨主張する。
しかしながら、固定資産税評価額は一般的に適切な時価を反映しているといえるところ、本件3物件の各売買代金総額は各固定資産税評価額総額を上回るのに対し、各建物価額はその固定資産税評価額を大きく上回る一方、各土地価額はその固定資産税評価額と同様か又は下回っている。
本件においてそのような評価とすべき事情は見当たらず、本件各内訳価額に係る各建物価額は、各売買代金総額から過剰に価額が配分されたものというべきであり、客観的な価値と比較して著しく不合理なものである。
そして、売主が土地及び建物を一括して譲渡する場合、建物の購入の代価について、売買代金総額を土地及び建物の各固定資産税評価額の価額比によりそれぞれあん分して算定することは、一般的には合理的な基準による算定であるといえるところ、本件各内訳価額に係る各建物価額についてはいずれも上記の不合理な場合に該当し、また、本件3物件の各固定資産税評価額が適正な時価を反映しているとはいえないような事情もないから、本件3物件に係る各建物の購入の代価は、本件3物件の各売買代金総額を土地及び建物の各固定資産税評価額比によりそれぞれあん分して算定すべきである。
なお、本件3物件のうち2物件の各建物に係る取得価額に加算すべき仲介手数料の金額等及び本件3物件の各仲介手数料に係る繰延消費税額等について、いずれも計算誤りがあると認められるため、原処分はその一部を取り消すべきである。
★リンクはこちら ⇒ 請求人が法定申告期限までに申告書を提出しなかったことについて、仮装又は隠蔽に該当する事実はなかったとして重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2023年5月22日
請求人の母が相続財産の一部の株式を申告していなかったことについて、隠蔽、仮装に該当する事実があると認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成29年11月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和4年6月24日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が相続税の申告書を作成するための資料収集等を委任していた請求人の母が申告漏れとなっていた株式を当初申告の相続財産に含めなかったことについて、国税通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められず、請求人についても、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるとは認められないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、被相続人の相続に係る相続税の申告書(本件申告書)に被相続人の名義の株式の一部等が計上されていないことについて、請求人の母(本件母)に国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があり、請求人が本件申告書を作成するための資料収集等を本件母に委任し、請求人にはその選任及び監督につき過失がないとする特段の事情はなく、請求人は本件母と同視可能である者と認められることから、請求人にも、国税通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張する。
しかしながら、本件母が、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないことから、本件母に「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなく、請求人についても、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はないといわざるを得ない。
★リンクはこちら ⇒ 請求人の母が相続財産の一部の株式を申告していなかったことについて、隠蔽、仮装に該当する事実があると認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2023年1月17日
請求人が相続財産の一部の株式を申告していなかったことについて、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成29年11月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和4年6月24日裁決
<ポイント>
本事例は、申告漏れとなっていた株式について、申告書提出前後の請求人の行為や言動に鑑みると、その銘柄、株式数等を記載したノート等を関与税理士に提出しなかったことをもって、国税通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとみることは困難であり、また、当該事実につき過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当するものとも認められないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人自らが銘柄、株式数及び配当金額等を2冊のノート(本件各ノート)に記載しながら、被相続人の相続に係る相続税の申告書(本件申告書)に計上されなかった被相続人名義等の株式(本件株式)について、被相続人の相続財産である旨を十分認識していたにもかかわらず、関与税理士(本件税理士)に本件各ノートを含む本件株式に係る資料等を渡さずに本件税理士をして本件株式を計上しない本件申告書を作成、提出させたのであるから、請求人には、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件税理士から株式については証券会社から残高証明書等を取得して提出するよう指示を受け、当該指示のとおりに証券会社から残高証明書等を取得して提出していたため、本件株式についても本件申告書に計上されていると思い込んでいた可能性等が否定できない。
また、本件各ノートは、その記載状況からみて、請求人の単なる備忘メモ的なものとして使用されていたと考えられ、請求人が、本件税理士を含む第三者に提出する目的で本件各ノートを作成したものではないと推認できること、請求人は、相続税の調査の際に、原処分庁所属の調査担当職員に自ら本件各ノートを提出したことなどに鑑みると、本件各ノート等の資料を本件税理士に提出しなかった行為について、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から過少申告をすることを意図した上で、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当するものと認めるに足る事情はないから、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はないといわざるを得ない。
2023年1月13日
請求人が相続財産の一部の貯金のみを申告していなかったことについて、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成30年11月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和4年5月10日裁決
<ポイント>
本事例は、申告漏れとなっていた貯金について、相続税の申告からあえて当該貯金のみを除外する意図が請求人にあったものとは認められない上、他の預貯金とは異なり残高証明書の発行依頼をしなかったことが故意によるものとは認め難く、また、請求人が、申告書の作成を依頼した会計事務所に対し当該貯金の存在を故意に伝えなかったと認めることもできないとして、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと評価すべき事情は認められないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、申告漏れとなっていた貯金(本件貯金)について、請求人が被相続人名義の預貯金のうち本件貯金についてのみ残高証明書を取得することなく相続手続を行うという特異な行動をしていること、及び請求人が本件貯金の存在を認識していたにもかかわらず、これを相続税の申告書の作成を依頼した会計事務所(本件会計事務所)に対して伝えていないことが、請求人の当初から相続財産を過少に申告する意図を外部からもうかがい得る特段の行動であり、請求人には国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張する。
しかしながら、相続税の申告からあえて本件貯金のみを除外しようとする意図が請求人にあったものとは認められない上、請求人が訪れた金融機関における貯金の一般的な相続手続などからすると請求人が誤解や失念により本件貯金の残高証明書を取得しなかった可能性も否定できないから、請求人が本件貯金についてのみ特異な行動をしたと断ずることはできず、本件貯金の残高証明書の発行依頼をしなかったことは故意によるものとは認めがたく、また、請求人が本件会計事務所に対して本件貯金の存在を故意に伝えなかったと認めることもできないから、請求人の一連の行為において当初から相続財産を過少に申告する意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと評価すべき事情は認められない。
2023年1月11日
請求人が生命保険金を含めずに所得税等の確定申告をしたことについて、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 令和元年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和4年4月15日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、生命保険金等の存在や申告の必要性を一旦は認識していたものの、確定申告時にその存在や申告の必要性を直ちに認識していたとまではいえず、当初から当該生命保険金等を申告しないことを意図していたとはいえない上、請求人が、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとも認められないことから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件は充足しないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が生命保険会社から振り込まれた保険契約に基づく一時金及び定期支払金(本件一時金等)を含めずに所得税及び復興特別所得税(所得税等)の確定申告(本件確定申告)をしたことについて、請求人が、本件一時金等が課税の対象となることを十分に認識しながら申告書の作成を補助した請求人の親族に本件一時金等が振り込まれた預金口座の通帳を提示しなかったことや、本件一時金等の支払明細等を廃棄したことは、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をした場合に当たるから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人は、上記保険の取扱代理店である銀行の担当者から、上記一時金についての課税関係の説明を受け、上記支払明細等の送付を受けていたことから、本件一時金等の存在や申告の必要性を一旦認識することができたものと認められるが、過去5年間のうち一度しか所得税等の確定申告をしておらず、本件確定申告についても、金地金の売却利益について申告が必要である旨記載された税務署からのお知らせが届いたことを動機として行ったものであり、遺族年金を含めて申告するなど、請求人に確定申告の経験や税務の知識が豊富にあったとはいえないこと、上記説明が口頭により行われていた上、同説明があったのは本件確定申告の時点から約1年以上も前で、上記支払明細等の送付も本件確定申告の時点から9か月以上前であったことなどからすれば、請求人が、本件確定申告の時点において、本件一時金等の存在や申告の必要性を直ちに認識していたとまではいえず、請求人が本件一時金等を申告しないことを意図していたとはいえない。
また、請求人が親族に本件通帳を提示しなかったことについては、請求人が親族に申告書の作成の補助を依頼した際のやり取りが不明であること、上記支払明細等を破棄したことについても、意図的に廃棄したとは認められないことから、これらをもって、請求人が過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められない。
2022年12月22日
隠蔽仮装行為の始期に関する請求人の申述は信用できず、そのほかに隠蔽仮装行為の始期を示す証拠や請求人によって隠蔽仮装行為がなされたことを示す証拠もないから、請求人に隠蔽仮装の行為があったとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分等を取り消した事例
- ①平成24年分の所得税並びに平成25年分、平成26年分及び平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
- ②平成24年1月1日から平成27年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分
- ③平成24年分の所得税並びに平成25年分、平成26年分及び平成27年分の所得税及び復興特別所得税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分
- ④平成24年1月1日から平成27年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分
- ⑤平成24年分の所得税並びに平成25年分、平成26年分及び平成27年分の所得税及び復興特別所得税の各修正申告の取消しを求める請求
- ⑥平成24年1月1日から平成27年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各修正申告の取消しを求める請求
- ①② 全部取消し、一部取消し
- ③④ 棄却
- ⑤⑥ 却下
- 令和3年6月22日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人の行った隠蔽仮装行為(伝票を意図的に廃棄し、売上金額を過少に記載した日計表の作成)の始期について、請求人が争う年分及び課税期間の初年である旨の請求人の申述は信用性がなく、そのほかに、始期が同年と認める証拠はなく、また、同年分及び同課税期間において、他に請求人が隠蔽仮装行為を行ったことを示す証拠がないとして、隠蔽又は仮装に該当する事実は認められないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人は、事業に係る正しい売上金額を把握していたにもかかわらず、真実の売上金額を記載した売上メモ及び伝票を意図的に廃棄し、売上金額を過少に記載した日計表を商工会に提示することにより、売上げの一部を故意に申告していなかった旨主張する。
しかしながら、請求人は、調査担当職員による質問の当初、隠蔽仮装行為の始期について、曖昧な申述にとどまっていたことなどからすれば、同始期に関して、明確な記憶を持っておらず、その記憶は曖昧なものであったと認められる。
そして、隠蔽仮装行為の始期に関する請求人の申述は、自発的な申述をしたのではなく調査担当職員の教示に沿う形で申述した程度にすぎず、客観的事実とも整合せず、不自然であるともいえ、直ちに信用できない。
また、そのほかに隠蔽仮装行為の始期を示す証拠や請求人によって隠蔽仮装行為がなされたことを示す証拠もないから、請求人に、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められない。
また、隠蔽又は仮装の具体的事実や開始時期を特定できない本件において、他に何らかの偽計その他の工作を伴う不正の行為があったと認めるに足る証拠もないから、請求人には国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実があったとは認められない。
さらに、更正の請求では、納税者側において売上金額が過大であることの立証をすべきであるところ、請求人から提出された資料等では、修正申告書に記載された売上金額が過大であるとは認められない。
2022年2月10日
当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成29年6月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和3年6月25日裁決
<ポイント>
本事例は、相続税の申告書の作成を依頼した税理士からの質問に対して請求人がした回答が、同税理士の質問を誤解して回答した可能性を否定できず、故意に虚偽の事実を説明したものとは認められないとして、かかる回答をしたことをもって、請求人が、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、被相続人が締結していた各建物更生共済契約(本件各共済契約)に関する権利(本件各権利)を相続税の課税財産として申告する必要があると認識していながら、税理士(本件税理士)に対して本件各共済契約は掛け捨て型のものであると故意に虚偽の説明をし、本件税理士に相続税の課税財産として申告すべき損害保険契約に関する権利はないとの誤解を生じさせた上、本件税理士に本件各権利の存在を一切告げなかったことは、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たり、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定の隠蔽又は仮装の行為が認められる旨主張する。
しかしながら、本件税理士の請求人に対する質問の文言からすれば、請求人の「共済は掛け捨てに移行している」旨の回答は、本件税理士の質問の趣旨を誤解してなされた可能性があり、実際に建物更生共済契約から掛け捨ての損害保険へと移行されたものもあることからすれば、必ずしも虚偽であるとまではいえない。
また、請求人が本件税理士に預けた各普通貯金通帳の中には本件各共済契約に係る共済掛金の支払が確認できるものもあることからすれば請求人が本件税理士に対して本件各権利を秘匿しようという意図があったとまで認めることはできない。
したがって、請求人が本件税理士に対して故意に虚偽の説明をしたものと認めることはできず、請求人が本件税理士に当該回答をした事実をもって、請求人が、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないから、国税通則法第68条第1項に規定の隠蔽又は仮装の行為があったということはできない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2022年2月8日
請求人が、被相続人の借入金が存在しないのに存在するかのように仮装していたとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成29年8月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和3年6月3日裁決
<ポイント>
本事例は、相続税の課税価格の計算上債務控除していた被相続人の請求人からの借入金について、実際に被相続人が請求人から借り入れることとなった経緯が認められ、金銭借用証書の表題の記載からしても借入れが不自然とはいえないことや、当時、被相続人が意思能力に欠ける状態であったとは認定できず同借入れを否定する事情もないなどとして、同借入金がなかったと認めることはできないとして国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定の仮装に該当する事実があったとは認められないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が相続税の申告において相続税の課税価格の計算上債務控除をしていた被相続人の請求人からの借入金は、請求人から被相続人ヘ直接送金されておらず、十分な金額の預貯金を有する被相続人が請求人から借り入れする必要も認められないこと等から、借入金が存在しないにもかかわらず、あたかも当該借入金が存在したかのように装って金銭借用証書を作成したことが事実の仮装行為に該当し、国税通則法第68条《重加算税》第1項所定の重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、①被相続人の土地の購入資金に係る信用金庫からの融資がとん挫し、請求人が代わりに被相続人に対し金員を貸し付けることとなった経緯が認められ、金銭借用証書の表題に一時的な貸付けであることを意味する「一時」と付されていること等からすれば、請求人が被相続人に同金員の貸付けをしたとしても不自然とはいえないこと、②暫定的に請求人から被相続人に対する貸付けが行われた可能性があるから、請求人から被相続人に直接送金されていないことをもって直ちに被相続人の請求人からの借入れがなかったとはいえないこと、③同金員の貸付けについて被相続人の了解を得ていたことを否定する事情もないことからすれば、被相続人の請求人に対する借入金が存在しなかったとはいえず、請求人が金銭借用証書を作成して、存在しない債務を実際に存在するかのように仮装していたとは認められないから、請求人に国税通則法第68条第1項の「仮装」があったとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 請求人が、被相続人の借入金が存在しないのに存在するかのように仮装していたとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2022年2月4日
所有者を被相続人の孫とする登記がなされているなど家屋に係る相続税の申告以前の状況からすると、相続税の申告において請求人が当該家屋を申告しなかったことにつき国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由が認められるとした事例
- 平成29年7月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和3年6月24日裁決
<ポイント>
本事例は、相続財産と認められる家屋について、①相続開始前に当該家屋の登記上の所有者が被相続人から同人の孫に名義変更されていたこと、②請求人自身が関与税理士として当該家屋の売買に係る譲渡所得の申告を行っていること、③上記①の名義変更以前から当該家屋に被相続人は居住しておらず同人の孫が居住していたことなどの理由から、相続税の申告において当該家屋を申告しなかったことにつき国税通則法第65条第4項所定の「正当な理由」があると認められるとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、相続開始時点において被相続人(本件被相続人)の孫(本件孫)名義となっていた家屋(本件家屋)について、本件被相続人や共同相続人らの各預金口座等を調査すれば、本件家屋の売買代金が実質的に支払われておらず、本件被相続人と本件孫との間の当該家屋に係る売買契約が成立していないことを確認できたのであるから、本件家屋が被相続人に帰属する財産であることを把握することは可能であったにもかかわらず、その確認を怠った請求人には国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由」は認められない旨主張する。
しかしながら、前述するとおり、相続開始時点において本件家屋の登記上の名義は本件孫名義であり、請求人自身が関与税理士として本件家屋の売買に係る譲渡所得の申告を行っていたことに加え、当該売買以前から本件家屋には、本件被相続人ではなく譲受人である本件孫が居住していたことからすると、請求人は、本件家屋に係る本件被相続人と本件孫との間の売買契約が有効に成立し、本件家屋の所有権が本件孫に移転したと誤信せざるを得ない事情があったといわざるを得ない。
加えて、本件家屋の売買代金が実質的に支払われていないことを把握し得た時点が、相続税の申告期限後であったことを併せ考えれば、請求人が本件家屋について申告しなかったことにより相続税の申告が過少申告となったことにつき、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお請求人に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷であって、請求人には「正当な理由」があったと認められる。
2022年2月2日
第三者が何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表を作成した行為は、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当しないとした事例
- 平成29年分及び平成30年分の所得税及び復興特別所得税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和3年3月24日裁決
<ポイント>
本事例は、第三者が何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表は、当該第三者が請求人の確定申告書を作成するためだけの一時的な補助資料の域を出るものではなく、その作成が、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当すると認めることは困難であるから、重加算税の賦課要件を満たさないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人の申告書を作成した第三者が、何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表(本件各試算表)を作成した上で、それを基に作成した確定申告書を提出したことは、請求人の事業所得に係る必要経費の計上について、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為であり、重加算税の賦課要件を満たしている旨主張する。
しかしながら、当該第三者は、本件各試算表を使用して確定申告書を作成した後には、本件各試算表を保存しておくことなく、不要なものとして処分しており、また、請求人を含む他者に見せることもなかったものである。
そうすると、本件各試算表は、当該第三者が確定申告書を作成するためだけの一時的な補助資料の域を出るものではなく、その作成が、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当すると認めることは困難であるから、重加算税の賦課要件を満たさない。
★リンクはこちら ⇒ 第三者が何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表を作成した行為は、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当しないとした事例
2021年11月11日
第三者が何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表を作成した行為は、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当しないとした事例
- 平成29年分の所得税及び復興特別所得税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和3年3月24日裁決
<ポイント>
本事例は、第三者が何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表は、当該第三者が請求人の確定申告書を作成するためだけの一時的な補助資料の域を出るものではなく、その作成が、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当すると認めることは困難であるから、重加算税の賦課要件を満たさないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人の申告書を作成した第三者が、何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表(本件試算表)を作成した上で、それを基に作成した確定申告書を提出したことは、請求人の事業所得に係る必要経費の計上について、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為であり、重加算税の賦課要件を満たしている旨主張する。
しかしながら、当該第三者は、本件試算表を使用して確定申告書を作成した後には、本件試算表を保存しておくことなく、不要なものとして処分しており、また、請求人を含む他者に見せることもなかったものである。
そうすると、本件試算表は、当該第三者が確定申告書を作成するためだけの一時的な補助資料の域を出るものではなく、その作成が、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当すると認めることは困難であるから、重加算税の賦課要件を満たさない。
★リンクはこちら ⇒ 第三者が何ら根拠のない金額を必要経費として記載した試算表を作成した行為は、過少申告行為とは別の隠ぺい又は仮装行為に該当しないとした事例
2021年11月10日
当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成29年8月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和3年3月23日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、みなし相続財産である死亡保険金の申告漏れに関し、当該死亡保険金の存在を税理士に伝えなかったことをもって、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとまではいえないことから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件は充足しないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、自身が支払を受けた2口の死亡保険金のいずれもが相続税の課税対象であることを理解しながら、そのうちの1口の死亡保険金(本件保険金)に関する資料を税理士に交付せず、本件保険金を含めない申告書を当該税理士に作成・提出させたことは、当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたといえるから、重加算税の賦課要件を充足する旨主張する。
しかしながら、請求人及び被相続人が受けた本件保険金を扱う銀行の担当者の説明によると、請求人は、本件保険金が相続税の課税の対象とならないものと誤解した可能性が否定できず、この誤解に基づいて、本件保険金の存在を税理士に伝えなかった可能性も否定できない。
また、請求人は、調査の初日に本件保険金の入金事績が記録された請求人名義の銀行口座に係る通帳を原処分庁の調査担当職員に提示するなど、本件保険金の入金の事実を調査担当職員に対して隠そうとはしていなかったことが認められ、この事実は、上記誤解があった可能性を高める事実といえる。
したがって、請求人が本件保険金の存在を税理士に伝えなかったことをもって、請求人が当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとまではいえず、重加算税の賦課要件は充足しない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2021年11月9日
当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成29年12月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和3年3月1日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、みなし相続財産である死亡保険金の申告漏れに関し、その存在を一旦は認識していたものの、申告までの間に失念等した可能性を直ちには否定できず、また、請求人が、当初から当該死亡保険金をあえて申告から除外することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたともいえないことから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件は充足しないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、申告漏れとなっていた死亡保険金(本件死亡保険金)について、請求人が、自身でその支払請求手続を行ったこと、原処分庁の調査担当職員に本件死亡保険金の存在を伝えなかったことなどから、本件死亡保険金の存在を認識しつつ、それをあえて申告していないから、過少に申告する意図を有していたといえ、また、本件死亡保険金の存在を関与税理士等に説明せず、関係資料の提示もしなかった行為は、本件死亡保険金を相続税の申告財産から除外するという過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当するものとして、重加算税の賦課要件を充足する旨主張する。
しかしながら、請求人が当初は生命保険契約に係る申告すべき保険金は同じ保険会社の別件の申告済の保険金(本件申告済保険金)のみであると誤認していたことに加えて、本件申告済保険金及び本件死亡保険金の請求手続は、請求人が仕事で多忙な中でその合間に行われたものであることなどからすると、請求人が、本件死亡保険金について、その存在及び申告が必要な相続財産であることを一旦認識したものの、相続税の申告までの間に、本件死亡保険金の存在とこれについても申告が必要であることを失念ないし誤認した可能性を直ちに否定することはできない。
さらに、関与税理士等とのやりとりの経過等を見ても、請求人が当初から本件死亡保険金をあえて申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたともいえないため、重加算税の賦課要件は充足しない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2021年11月8日
みなし相続財産に該当する生命保険金が申告漏れとなったことにつき、請求人が殊更過少な相続税申告書を提出したとは認められないとした事例
- ①平成29年3月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分 → 一部取消し
- ②平成29年3月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分 → 全部取消し
- 令和3年2月5日裁決
<ポイント>
本事例は、相続税の重加算税を賦課する場合の殊更過少な相続税申告書を提出したか否かの認定に当たっては、請求人や税理士の証言の一部分をもって判定するのではなく、その証言内容を裏付けるに足る事情の存在を含めて判定すべきとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が一部の生命保険金について相続税の申告すべき財産であることを十分認識していたにもかかわらず、関与税理士に対してその存在を殊更に秘匿したことなどに照らせば、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、同税理士は関係資料等の提出時や申告書の作成時に請求人に対して具体的な確認等をしていなかった上、その他に、請求人が同税理士に対して殊更にその存在を秘匿したと裏付けるに足りる事情も存在しないことなどに照らせば、請求人が当初から過少申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合に該当するとまでは認められないから、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとはいえない。
★リンクはこちら ⇒ みなし相続財産に該当する生命保険金が申告漏れとなったことにつき、請求人が殊更過少な相続税申告書を提出したとは認められないとした事例
2021年11月5日
源泉所得税の納付が法定納期限後になったことについて、その納付が、告知があるべきことを予知してされたものではないと認められた事例
- 平成31年1月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の不納付加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和3年1月20日裁決
<要旨>
原処分庁は、請求人が法定納期限を徒過して源泉所得税等を納付したことについて、当該納付は調査担当職員が実地調査の日程調整を依頼した際に行った源泉徴収義務の存否に関する発言(本件発言)を起因としたものであり、その後の調査が進行すれば告知に至るであろうことを予知して行ったものであるから、国税通則法第67条《不納付加算税》第2項に規定する「当該国税についての調査があったことにより当該告知があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
しかしながら、当該規定の適用に係る判断に当たっては、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、納付に至る経緯、納付と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して判断するのが相当であるところ、調査担当職員が署内調査を行い、実地調査の日程調整を依頼した時点では、その後の調査の進行により、やがて納税の告知に至る可能性が高い状況にあったといえるものの、本件発言からは、具体的な取引内容や調査対象期間も示されず、そのため、請求人は署内調査の内容・進捗状況を具体的に認識していないと認められ、さらに、請求人が当該納付を自主的に行ったと認められるから、当該納付と署内調査との関連性も乏しいと言わざるを得ない。
したがって、当該納付は、同項に規定する「当該国税についての調査があったことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。
★リンクはこちら ⇒ 源泉所得税の納付が法定納期限後になったことについて、その納付が、告知があるべきことを予知してされたものではないと認められた事例
2021年11月4日
外国子会社合算税制に係る所得が無申告であった者に対する無申告加算税の賦課決定処分において、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項を適用したことを適法とした事例
- 平成25年分から平成29年分の所得税等の決定処分等及び無申告加算税の賦課決定処分
- 棄却
- 令和3年3月26日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、外国子会社合算税制に係る所得の基因となる外国子会社の株式を記載した国外財産調書を提出していなかった場合において、原処分庁が、当該所得に係る無申告加算税の賦課決定処分を行う際に内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の加重措置を適用したことは適法と判断したものである。
<要旨>
請求人は、平成27年12月31日、平成28年12月31日及び平成29年12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有していたと認められるから、平成27年分から平成29年分までにつき、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)第5条《国外財産調書の提出》第1項本文に規定する国外財産調書の提出義務があったにもかかわらず、これらをいずれも法定提出期限内に提出しなかったと認められる。
したがって、上記各年分の無申告加算税の金額につき、国税通則法第66条《無申告加算税》並びに国送法第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項の規定に基づいて計算すると、いずれも原処分の各金額と同額となるから、本件の無申告加算税の各賦課決定処分は、いずれも適法である。
2021年11月2日
予納制度を利用した納税のご案内
1.予納制度とは
予納とは、調査等により近日中(おおむね6か月以内)に納付すべき税額の確定が見込まれる場合に、修正申告書等を提出する前であっても、その納付すべき税額の見込金額を、税務署長に申し出て、あらかじめ納付(予納)することができる制度である。
※期限内申告書においては、おおむね12か月以内に納付すべき税額が確定することが確実な国税について、あらかじめ税務署長に申し出ることで予納することができる。
※予納した場合には、予納の目的となる申告書等の提出を行う前(納期限前)に、その還付を求めることはできないので注意すること。
2.予納のメリット
予納をすると、延滞税の計算は納付された日までとなるので、延滞税の額が少なくなる場合がある(注)。
(注1)法定申告期限から1年以内に修正申告等を行う場合は、延滞税の計算は予納した日までとなり、延滞税の額が少なくなる。
(注2)法定申告期限から1年を経過して修正申告等を行う場合は、除算期間がない場合に限り、延滞税の額が少なくなる。
(参考)
●予納した額が、修正申告等により確定した税額よりも少ない場合
予納した額は修正申告等により確定した本税に充てられ、残りの本税、加算税、延滞税については、別途納付する必要がある。
●予納した額が、修正申告等により確定した税額よりも多い場合
予納した額を修正申告等により確定した本税に充てた残額については、順次、他の未納の国税に充てられ、納め過ぎた額については還付される。
※不明な点があれば、税務署の管理運営(担当)部門に問い合せること。
★リンクはこちら ⇒ 予納制度を利用した納税のご案内
2021年9月14日
公売処分の取消請求において、国税徴収法上、土地の差押手続は土地の地番ごとに行うより他なく、差押処分の効力も当該地番の土地にしか及ばないから、公売不動産の隣接地所有者である請求人は、当該隣接地の所有権を主張する者にとどまり、差押えに係る財産について所有権を主張していないこととなり、したがって、請求人適格は認められないとした事例
- 公売公告処分・最高価申込者の決定処分
- 却下
- 令和2年12月22日裁決
<ポイント>
本事例は、公売不動産の隣接地所有者が公売不動産の一部について所有権を有していると主張する審査請求において、請求人は、「差押えに係る財産について所有権を主張する者」には該当せず、したがって、請求人適格はないと判断したものである。
<要旨>
請求人は、公売不動産の隣接地の実質所有者は請求人であり、当該隣接地の一部が公売不動産に含まれているため、請求人の権利が侵害されていると主張する。
しかしながら、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項は、国税に関する法律に基づく処分に不服がある者は、不服申立てをすることができる旨規定しており、この者とは、その処分によって直接自己の権利又は法律上の利益を侵害された者であることを要すると解される。
また、国税徴収法第89条《換価する財産の範囲等》第1項の規定では、公売処分は、差し押さえた財産について行うものであるところ、差押処分の効力は、嘱託登記により差押登記が付された地番以外の土地に及ぶと解することはできず、当該地番の土地にしか発生しないことから、公売処分もまた、公法上の一筆の土地を対象として行われることとなる。
そうすると、差押処分で特定された地番の土地に、請求人が所有する公売不動産の隣接地の地番の土地が含まれることは法律上あり得ないことから、請求人は、公売処分によって直接自己の権利又は法律上の利益が侵害された者とは認められず、国税に関する法律に基づく処分に不服がある者に該当しない。
2021年7月30日
原処分庁に所属する職員が原処分に係る各通知書を歯科医院を営む請求人の自宅兼事業所に持参した際に、請求人が診療中であり対応することができないとして各通知書を受け取らなかった事情は、国税通則法第12条《書類の送達》第5項第2号に規定する「正当な理由」には該当しないとした事例
- ①平成27年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分
- ②平成25年分、平成26年分、平成27年分及び平成28年分の所得税及び復興特別所得税の過少申告加算税の各賦課決定処分
- ③平成24年分の所得税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
- ④平成25年分、平成26年分、平成27年分及び平成28年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
- ⑤平成28年1月1日から平成28年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の過少申告加算税の賦課決定処分
- ⑥平成28年1月1日から平成28年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分
- 棄却
- 令和2年12月21日裁決
<ポイント>
本事例は、国税通則法の送達に関する規定の趣旨を紐解き、その趣旨に照らせば、受送達者が診療中であったとしても、送達場所におり、原処分庁職員が交付送達のため来訪したことを現に認識していた場合には、(法が、その診療終了を待って出会送達をすることや、再度の送達を行うことまでを求めていると解することは困難であるとして)差置送達を行うことができると判断したものである。
<要旨>
請求人は、原処分庁に所属する職員が原処分に係る各通知書を自宅兼事業所に持参した際、歯科医師として診療中であり対応することができなかったから、国税通則法第12条《書類の送達》第5項第2号に規定する「正当な理由」に該当するため、原処分庁が差置送達を行ったことは同条に規定する差置送達の要件に該当しないから、原処分を取り消すべき違法がある旨主張する。
しかしながら、差置送達は、書類の送達を受けるべき者等が送達すべき場所にいない場合、又はこれらの者が正当な理由がなく書類の受領を拒んだ場合に行うことができる送達方法であり、差置送達の制度が認められた趣旨に照らせば、請求人の診療中であるという事情は、国税通則法第12条第5項第2号に規定する「正当な理由」には該当しないと解すべきであるから、原処分庁による差置送達は法令上の要件を満たしたものであるから、原処分庁が差置送達を行ったことにつき、原処分を取り消すべき違法はない。
2021年7月29日
役務提供のない支払手数料を計上したことに事実の仮装は認められないとした事例
- 平成27年6月1日から平成28年5月31日までの事業年度の法人税の重加算税の賦課決定処分、平成27年6月1日から平成28年5月31日までの課税事業年度の地方法人税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和2年9月4日裁決
<要旨>
原処分庁は、請求人の実質経営者である元代表者が、役務の提供がないことを認識していたにもかかわらず、関与税理士に指示して、不動産仲介業者に対する役務提供の対価(本件金員)を支払手数料勘定に計上させたことが、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人と不動産仲介業者との間で複数の不動産取引を共同事業として行う目論見書が作成されていたことなどからすれば、元代表者が本件金員を支払う必要があると認識していた可能性が否定できない。
そして、当審判所の調査によっても、元代表者が本件金員を支払う必要がないことを認識した上で本件金員を支払手数料勘定に計上させたと認定する証拠は見当たらず、その他仮装と評価すべき行為を認めるに足りる証拠もない。
したがって、本件において認定される事実のみからは、請求人に、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する事実があったものとして同項を適用することはできない。
★リンクはこちら ⇒ 役務提供のない支払手数料を計上したことに事実の仮装は認められないとした事例
2021年4月14日
滞納法人の代表者である請求人の実印が押なつされた納税保証書は、請求人の同意もなく従業員によって作成、提出されたものであって、無効であるとの請求人の主張に対し、請求人に納税保証をする意思が認められるとした事例
- 納付告知処分
- 棄却
- 令和2年7月1日裁決
<ポイント>
本事例は、納税保証書の真正な成立について、請求人から、いわゆる二段の推定における請求人の意思に基づくことの反証がされたところ、納税保証書の作成時の請求人の実印の保管状況等や、滞納法人の従業員に請求人の実印を冒用すべき理由があるか、納税保証書提出後に請求人が徴収職員に自らが保証人であることを自認する言動をしていたかを認定した上で、関係人の答述の信用性を評価し、判断したものである。
<要旨>
滞納法人の代表者である請求人は、請求人が滞納国税(本件滞納国税)を納税保証する旨が記載された納税保証書(本件保証書)について、滞納法人の従業員が請求人の印章を無断で使用してこれを作成したものであり、請求人が当該従業員やその他の第三者にこの作成を指示したことがなく、請求人の同意なく提出されたものであることから、当該納税保証は無効であり、これを前提とする納付告知処分は違法である旨主張する。
しかしながら、私文書中の印影が本人又は代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、当該印影は本人又は代理人の意思に基づいて成立したものと推定されるところ、請求人にこれを覆すべき反証はなく、また、本件保証書の提出後、請求人自身が保証人であることを自認する言動を繰り返していたことからすれば、請求人は本件滞納国税について納税保証をしたと認められる。
2021年4月12日
相続放棄の申述をした請求人に対して、原処分庁が相続放棄の無効を前提として行った不動産の差押処分について、相続人である請求人の口座に振り込まれた被相続人の顧問料相当額を引き出した事実は法定単純承認事由となる相続財産の処分に該当しないとした事例
- 不動産の差押処分
- 全部取消し
- 令和2年4月17日裁決
<ポイント>
本事例は、法定単純承認事由となる相続財産の処分がされたか否かについて、請求人及び関係者の答述並びに帳簿等の広範囲な証拠に基づき、請求人が相続財産を費消(処分)したと認められるか否か、総合的かつ慎重に認定し、相続放棄の申述が有効であると判断したものである。
<要旨>
原処分庁は、①請求人名義の金融機関の口座(本件口座)に振り込まれた金員(本件金員)は、請求人の配偶者(本件被相続人)と本件金員の支払者との間の委任契約(本件委任契約)に基づき、本件被相続人に対する未払報酬が請求人名義の本件口座に振り込まれたもので、相続財産に該当するところ、請求人が本件金員を受領、出金及び返納した行為は、いずれも民法第921条《法定単純承認》第1号に規定する相続財産の「処分」に該当する旨、②請求人名義の土地及び建物(本件各不動産)の取得資金は、本件被相続人が出捐し、又は本件被相続人の意思により関係会社等が支出していることから、本件各不動産は本件被相続人に帰属する財産であり相続財産に該当するところ、請求人が本件各不動産について、同条第3号に規定する「隠匿」及び同条第1号に規定する「処分」に該当する行為をしている旨、上記①及び②の事実は法定単純承認事由に該当するから、請求人の相続放棄は認められず、請求人は本件被相続人の納付義務を承継する旨主張する。
しかしながら、①については、本件金員が相続財産に該当することが認められるものの、本件金員が本件委任契約に基づいて本件口座に振り込まれたものにすぎず、請求人が出金した本件金員を一部でも費消した事実は認められないこと、請求人が振込名義人あてに送金したのは相続放棄の申述が受理された後であることから、これらはいずれも相続財産の処分には該当しないこと、②については、本件各不動産が本件被相続人に帰属する財産であることを認めるに足りる証拠はなく、相続財産に該当すると認められないことから、本件金員及び本件各不動産について、請求人に法定単純承認事由に該当する事実はなく、請求人の相続放棄の申述は有効であり、請求人は本件被相続人の納付義務を承継しない。
2020年12月22日
翌事業年度に計上すべき本件修繕費の完了日を仮装したとまではいえないとした事例
- 平成29年4月1日から平成30年3月31日までの事業年度の法人税の重加算税の賦課決定処分
- 平成29年4月1日から平成30年3月31日までの課税事業年度の地方法人税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和2年3月10日裁決
<ポイント>
本事例は、翌事業年度に計上すべき本件修繕費について、施行業者が発行した請求書の納品日欄に本件事業年度内の日付が記載されていたことをもって仮装行為に該当するとまでは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人代表者が翌事業年度に計上すべき本件修繕費について、本件事業年度に修繕工事が開始しておらず、本件修繕費を損金の額に算入できないことを認識した上で、施工業者に依頼して納品日欄に本件事業年度内の日付を記載した請求書を発行させ、本件修繕費を損金の額に算入したことが仮装行為に該当する旨主張する。
しかしながら、施工業者は事業年度内に施工に向けた準備を行っていることから、請求人代表者から依頼されて施工業者が本件事業年度内の日付の請求書を発行しても不自然とまでは言い切れず、請求書の納品日欄についてもシステムの便宜上入力された可能性を否定できない。
また、請求書の納品日欄に記載された日付が修繕工事の完了日を示すと認めるに足る証拠もなく、請求人代表者が施工業者に対し請求書の納品日欄の日付を修繕工事の完了日として記載するよう依頼したことを示す証拠もない。
加えて、請求人代表者は入出金に係る会計伝票を作成するにとどまり、本件修繕費のような未払金に関する会計伝票は作成しておらず税務代理人が会計処理を行ったものであり、請求人代表者に本件修繕費を本件事業年度の損金の額に算入できないとの認識があったとまでは認められない。
したがって、本件修繕費を本件事業年度の損金の額に算入したことにつき、仮装の行為があるとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 翌事業年度に計上すべき本件修繕費の完了日を仮装したとまではいえないとした事例
2020年11月5日
請求人が法定申告期限までに法人税及び消費税等の申告をしなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例
- 平成24年12月1日から平成25年11月30日まで、平成25年12月1日から平成26年11月30日まで、平成26年12月1日から平成27年11月30日まで、平成27年12月1日から平成28年11月30日まで及び平成28年12月1日から平成29年11月30日までの各事業年度の法人税の重加算税の各賦課決定処分
- 平成24年12月1日から平成25年11月30日まで及び平成25年12月1日から平成26年11月30日までの各課税事業年度の復興特別法人税の重加算税の各賦課決定処分
- 平成26年12月1日から平成27年11月30日まで、平成27年12月1日から平成28年11月30日まで及び平成28年12月1日から平成29年11月30日までの各課税事業年度の地方法人税の重加算税の各賦課決定処分
- 平成25年12月1日から平成26年11月30日まで、平成27年12月1日から平成28年11月30日まで及び平成28年12月1日から平成29年11月30日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和2年2月13日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人には、申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったと認めるに足る事実はなく、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件は満たさないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、所得金額を容易に把握できたにもかかわらず、申告をせず、調査において書類提示を拒否したなどの行為は、申告すべき所得金額及び納付すべき税額が生ずることを明確に認識していながら確定的な意思に基づいて無申告を貫いたものであって、当該行為は、当初から課税標準等及び税額等を法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められることから、その意図に基づき法定申告期限までに法人税及び地方法人税(法人税等)の確定申告書を提出しなかったことは、国税通則法第68条《重加算税》第2項に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、法定申告期限までに法人税等の確定申告書の提出が必要であったことを認識しながら、確定申告書を提出しなかったことは認められるものの、調査の開始当初においては質問調査や書類の提示要請に応じるとともに、調査の開始当初から事業に関連する支出の存在を主張し所得が生じていないと認識していた可能性を否定できないことから、無申告行為そのものとは別に、請求人が当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をとったとは言い難い。
したがって、請求人に国税通則法第68条第2項に該当するとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 請求人が法定申告期限までに法人税及び消費税等の申告をしなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例
2020年11月4日
当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認定した事例
- 平成23年分から平成29年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分及び平成23年課税期間から平成29年課税期間の消費税等の各重加算税賦課決定処分
- 棄却
- 令和2年2月19日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、事業所得の金額を正確に把握していたにもかかわらず、収入金額を1,000万円を下回るように調整して極めて過少な所得金額を記載した所得税等の確定申告書を長年にわたり継続的に提出し続け、調査の際にも、調査担当者に対し、帳簿書類の存在を秘し、事後的に作成した虚偽の帳簿書類を複数回提示したことなどが認められ、これらの一連の行為によれば、請求人は、重加算税の賦課要件を満たすとしたものである。
<要旨>
請求人は、確定申告書に誤りがあったのは勘違いや集計誤りを原因とするものにすぎず、故意に多額の所得を脱漏したのではなく、また、請求人に対する調査(本件調査)の際に請求人の行う事業(本件事業)に係る帳簿書類を隠したこともないから、国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件事業において収入に係る帳簿書類の作成・保存、経費に係る支払、収入が入金される口座の管理等を自ら行うなどしていることからすれば、事業所得の金額を正確に把握していたといえ、それにもにもかかわらず、請求人は、7年もの長期間にわたって収入金額を1,000万円を下回るように調整して極めて過少な所得金額を記載した確定申告を継続的に提出し続けていたものと認められる。
そして、請求人は、調査に際しても真実の総収入金額が容易に判明する帳簿書類の存在を秘しただけではなく、事後的に虚偽の帳簿書類を複数回作成し、本件調査の担当者に提示するなどしており、このことは真実の所得の調査解明に困難を伴う状況を作出し真実の所得金額を隠蔽しようという確定的な意図の下に、隠蔽のための具体的な工作を行い、真実の所得金額を隠蔽する態度、行動をできる限り貫こうとしたと評価せざるを得ない。
以上のような請求人の一連の行為によれば、請求人が、当初から所得を過少に申告する確定的な意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告をしたような場合などに該当する。
2020年10月30日
請求人が法定申告期限までに相続税の申告をしなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例
- 平成28年11月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和元年12月18日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が相続財産を過少に記載したお尋ね文書を提出しているものの、そのことのみをもって、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件は満たさないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が意図的に「相続についてのお尋ね」と題する文書(本件お尋ね文書)に虚偽の記載をしてこれを提出したなどとして、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、当審判所に提出された証拠資料等を精査しても、請求人が本件お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したことなどを裏付けるに足りる証拠は存在せず、また、請求人が当初から相続税を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたなどとも認められないことからすれば、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていない。
★リンクはこちら ⇒ 請求人が法定申告期限までに相続税の申告をしなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例
2020年6月26日
当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないとして重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成27年4月1日から平成28年3月31日までの事業年度の法人税の決定処分及び重加算税の賦課決定処分、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税の決定処分及び重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和元年11月20日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が法定申告期限までに申告書の提出が必要であったことを認識しながら、これをしなかったことが認められるものの、調査の開始当初においては質問調査や書類の提示要請に応じるとともに、請求人が支出の存在を主張し所得が生じていないと認識していた可能性があることを否定できないことから、請求人が当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと評価することはできないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、所得金額を容易に把握できたにもかかわらず、申告をせず、調査において書類提示を拒否したなどの行為は、申告すべき所得金額及び納付すべき税額が生ずることを明確に認識していながら確定的な意思に基づいて無申告を貫いたものであって、当該行為は、当初から課税標準等及び税額等を法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められることから、その意図に基づき法定申告期限までに法人税及び地方法人税(法人税等)の確定申告書を提出しなかったことは、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する事実の隠蔽又は仮装に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、法定申告期限までに法人税等の確定申告書の提出が必要であったことを認識しながら、これをしなかったことは認められるものの、調査の開始当初においては質問調査や書類の提示要請に応じるとともに、調査の開始当初から事業に関連する支出の存在を主張し所得が生じていないと認識していた可能性を否定できないことから、無申告行為そのものとは別に、請求人が当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をとったとはいい難い。
したがって、請求人に国税通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」と評価すべき行為があるとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないとして重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2020年6月24日
請求人の従業員が、架空の請求書を作成して請求人に交付した一連の行為は、請求人による行為と同視できないとした事例
- ①平成27年4月1日から平成28年3月31日まで及び平成28年4月1日から平成29年3月31日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分
- ②平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分
- ③平成28年4月1日から平成29年3月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分
- ④平成27年4月1日から平成28年3月31日まで及び平成28年4月1日から平成29年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分
- ②全部取消し、①③④一部取消し
- 令和元年10月4日裁決
<ポイント>
本事例は、従業員による行為は仮装行為に該当し、請求人による当該従業員への管理・監督が十分ではなかったものと認定したものの、当該従業員の地位・権限や行為態様等からは請求人の行為と同視できないと認定したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人の従業員(本件従業員)が行った金員の詐取を目的とした仮装行為(本件仮装行為)について、法人の従業員の業務に関連する行為は、当該法人の活動領域内の行為として自己の行為の一部分とみることができるから、従業員の行為が納税者である法人の行為と同視できないといえるような特段の事情がない限り、請求人に国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実がある旨主張する。
しかしながら、①本件従業員は、請求人の経営に参画することや、経理業務に関与することのない一使用人であったと認められ、②本件仮装行為は、請求人の業務の一環として行われたものではなく、本件従業員が私的費用に充てるための金員を請求人から詐取するために独断で行ったものであると認められる。
一方、③請求人においては、一定の管理体制が整えられていたものの、本件仮装行為のような詐取行為を防止するという点では、管理・監督が十分であったとは認められない。
もっとも、職制上の重要な地位に従事せず、限られた権限のみを有する一使用人が、独断で請求人の金員を詐取したという事件の事情に鑑みれば、本件従業員に対する請求人の管理・監督が十分ではなく、本件仮装行為を発覚できなかったことをもって、本件仮装行為を請求人の行為と同視することは相当ではない。
したがって、以上の点を総合考慮すれば、本件従業員による本件仮装行為を納税者たる請求人の行為と同視することはできないと判断するのが相当であり、同項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 請求人の従業員が、架空の請求書を作成して請求人に交付した一連の行為は、請求人による行為と同視できないとした事例
2020年6月22日
相続財産の一部につて、相続人がその存在を認識しながら申告しなかったとしても、重加算税の賦課要件は満たさないとした事例
- 平成27年4月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 令和元年11月19日裁決
<要旨>
原処分庁は、請求人の亡母(本件相続人)が、当初申告において計上していなかった相続財産の一部である被相続人名義の預金(本件預金)について、その存在を知りながら関与税理士に伝えなかったことは、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たる旨主張する。
しかしながら、本件相続人が本件預金の存在を関与税理士に伝えなかったことは認められるものの、本件相続人が本件預金を相続財産であることを認識した上で、あえて関与税理士に本件預金の存在を伝えなかったとまで認めることはできず、また、本件相続人は、本件預金を原処分庁が容易に把握し得ないような他の金融機関や本件相続人名義以外の口座などに入金したのではなく、本件預金の口座と同じ金融機関の本件相続人名義の口座に入金し、調査日現在においても当該口座を解約していなかったことからすると、原処分庁をしてその発見を困難ならしめるような意図や行動をしているとは認められないから、本件預金を故意に当初申告の対象から除外したものとまでは認め難い。
したがって、本件相続人が、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものと認めることはできないから、国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たるとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 相続財産の一部につて、相続人がその存在を認識しながら申告しなかったとしても、重加算税の賦課要件は満たさないとした事例
2020年6月19日
取引先と通謀して検収書に虚偽の検収日を記載した事実は認められないと判断した事例
- ①平成28年4月1日から平成29年3月31日までの事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分
- ②平成28年4月1日から平成29年3月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分
- ③平成28年4月1日から平成29年3月31日までの課税期間に係る消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分
- ①②③一部取消し
- 令和元年7月2日裁決
<要旨>
原処分庁は、請求人の従業員(本件従業員)が平成29年3月20日時点において、手書き図面のデータ化に係る役務の提供が完了していないにもかかわらず、本件検収書に同日を検収日として記載して事実を仮装した行為は、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する事実の仮装に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人は、検収日に、手書き図面の電子データ化がされた図面をまとめたファイルの納品を受けており、本件従業員は、当該ファイルが納品された時点で役務の提供が実質的に完了しているとの認識の下、本件検収書に検収日を記載したものと認められることから、本件従業員が意図的に本件検収書に虚偽の検収日を記載したとはいえないため、請求人に同項に規定する事実の仮装があったとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 取引先と通謀して検収書に虚偽の検収日を記載した事実は認められないと判断した事例
2020年4月24日
債権差押処分における被差押債権の不存在又は消滅の主張は債権差押処分の違法又は無効事由と認められないとした事例
- 不動産の差押処分
- 棄却
- 令和元年5月14日裁決
<ポイント>
本件は、滞納者や第三債務者による、被差押債権の不存在又は消滅を理由とする差押処分の違法又は無効の主張は、不存在又は消滅が明らかであるような事情、あるいは徴収権の濫用と認められる等の事情が無い限り、認められないと解されるとしたものである。
<要旨>
請求人は、請求人が有する保証金の返還請求権(本件被差押債権)の差押処分(本件差押処分)時において、本件被差押債権は既に消滅しており存在しなかったから、本件差押処分は違法又は無効であり、滞納国税の徴収権の消滅時効は、本件差押処分によって中断していない、したがって、不動産差押処分時において滞納国税の徴収権は時効により消滅している旨主張する。
しかしながら、被差押債権の存在を滞納処分による債権差押処分の要件とする旨の規定は存在せず、また、仮に滞納処分による債権差押処分を行った場合に被差押債権が存在せず又は既に消滅していたとしても、それは結果的に債権差押処分の執行が功を奏しなかったというだけにすぎず、権利者による権利行使がなされたことに変わりはない。
したがって、仮に本件被差押債権が消滅しており存在しなかったとしても、そのことによって本件差押処分が違法又は無効になるものではないことから、滞納国税の徴収権の消滅時効は、本件差押処分によって中断している。
★リンクはこちら ⇒ 債権差押処分における被差押債権の不存在又は消滅の主張は債権差押処分の違法又は無効事由と認められないとした事例
2020年2月27日
収支内訳書に虚偽記載があったものの、隠ぺい仮装があったとは認められないと判断した事例
- ①平成24年課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分
- ②平成25年から平成28年の各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分
- ③平成24年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分
- ④平成25年分から平成28年分の各年分の所得税等の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分
- ⑤平成24年課税期間の消費税等の更正処分並びに無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
- ⑥平成25年から平成28年の各課税期間の消費税等の各更正処分並びに無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
- ⑦平成25年4月から平成29年9月の各月分の源泉徴収に係る所得税等の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分(平成25年7月及び平成29年9月の各月分は各納税告知処分のみ、平成25年12月、平成26年12月、平成27年12月及び平成28年12月の各月分は不納付加算税の各賦課決定処分のみ)
- ①③⑤全部取消し
- ②④⑥一部取消し
- ⑦棄却
- 令和元年6月24日裁決
<ポイント>
本事例は、売上金額の一部とそれに対応する必要経費の金額を含めなかったほか、適当な金額を記載した収支内訳書を作成したことについて、請求人に当初から過少申告の意図があったと認められるものの、隠ぺい仮装と評価すべき行為とは認められず重加算税の賦課要件を満たさないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、過少申告の意図に基づき①売上金額が1,000万円を超えないように調整した過少な売上金額を算出するためのメモ(本件売上メモ)を請求人の妻に作成させたこと、②本件売上メモに基づいて算定した過少な売上金額を収支内訳書に記載したこと、③所得税等の確定申告をした後に、本件売上メモを廃棄したこと、④申告した売上金額は、請求人の事業に係る総収入金額の半分以下の金額であったこと、⑤除外した売上金額に対応する経費が毎年合計600万円以上ありながら、収支内訳書に必要経費の金額として計上しなかったことという一連の行為は、国税通則法第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する行為又は過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当し、重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人には、過少申告の意図があったことは認められるものの、上記①ないし③の本件売上メモについては、作成及び廃棄の事実が認められないこと、上記④及び⑤については、請求人が本件従業員分の売上げや費用の存在を認識しつつこれらを本件各収支内訳書に計上せず、過少の申告をしたというだけでは、隠蔽又は仮装の行為があったということはできないことから、原処分庁が主張する請求人の行為は、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する行為又は過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動とは認められず、重加算税の賦課要件を満たさない。
★リンクはこちら ⇒ 収支内訳書に虚偽記載があったものの、隠ぺい仮装があったとは認められないと判断した事例
2020年2月25日
当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成24年分の所得税等に係る重加算税の賦課決定処分、平成25年分から平成28年分に係る所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、平成26年1月1日から平成26年12月31日まで、平成27年1月1日から平成27年12月31日まで及び平成28年1月1日から平成28年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成31年4月9日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人の意思によって提出されたと認められる内容虚偽の住民税申告書は1年分に限られ、また、請求人の電話答弁を虚偽であると評価することもできないことから、請求人が当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたと評価することはできないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、個人で事業を営む請求人が、調査年分に係る所得税等及び消費税等の各確定申告書を各法定期限までに提出していなかったことについて、請求人が、確定申告の必要性を認識した上で、①自らの収入金額及び所得金額を零円とした虚偽の住民税申告書を提出したこと(本件各住民税申告)、及び②原処分庁の調査担当職員からの電話に対し、会社員である旨の虚偽の答弁をしたこと(本件電話答弁)は、請求人が、当初から所得税等の申告をしないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと評価できるから、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件各住民税申告のうち請求人の意思によって提出されたと認められるのは1年分にとどまるものであり、かつ、それが直接原処分庁に対してなされたものではないことから、仮に請求人が所得税等の確定申告の必要性を認識していたとしても、当該1年分の住民税の申告のみをもって、請求人が、当初から所得税等の申告をしないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと評価することはできない。
また、本件電話答弁については、本件電話答弁時の状況からすれば、社会通念に照らして不合理ではなく、当時の請求人が給与を得ていた事実を併せ考えれば、請求人が、当初から所得税等の申告をしないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと評価することはできない。
さらに、原処分庁が作成した質問応答記録書の内容は、請求人の本件各住民税申告書の提出の動機に係る申述が不自然かつ不合理であり、重要な部分に関する解明が不足しているため信用できない。
したがって、請求人に国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」と評価すべき行為があるとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2020年2月21日
個人名義のクレジットカードにより支払われた飲食店等に対する支出について、請求人代表者の個人的な飲食等にかかる金額であるとは言い切れないから、請求人に仮装をした事実は認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- ①平成25年7月1日から平成26年6月30日まで、平成26年7月1日から平成27年6月30日まで及び平成27年7月1日から平成28年6月30日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分
- ②平成25年7月1日から平成26年6月30日までの課税事業年度の復興特別法人税に係る重加算税の賦課決定処分
- ③平成27年7月1日から平成28年6月30日までの課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分
- ④平成25年7月1日から平成26年6月30日まで、平成26年7月1日から平成27年6月30日まで及び平成27年7月1日から平成28年6月30日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分
- ①②④ ⇒ 一部取消し
- ③ ⇒ 全部取消し
- 平成30年9月21日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人会社の代表取締役がその個人名義のクレジットカード等を用いて、飲食店で飲食したことについて、原処分庁の職員の調査を受けて、交際費勘定等に計上した費用は損金の額に算入されないなどとして法人税等の修正申告を提出したところ、原処分庁は、当該費用は代表取締役の個人的な飲食等の費用であることを認識しながら損金の額に算入したという隠ぺい又は仮装の事実があったとして法人税等の重加算税の賦課決定処分をしたことについて、代表者がそのような認識をしていたとは認められないことを理由として、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が交際費勘定等(本件費用勘定)に計上し、損金の額に算入していた飲食等代金(本件飲食等代金)について、請求人の代表者(本件代表者)が、本件飲食等代金は請求人の業務に関連するものではなく、本件代表者が一人で飲食したものや知人との飲食に係るものである上、個人で飲食等をした代金であると申述(本件申述)していることから、請求人は、本件飲食等代金が費用として計上できないものと認識しながら、その全部又は一部を損金の額に算入し、そのことが隠蔽又は仮装の事実に該当する旨主張する。
しかしながら、本件申述は、本件飲食等代金について概括的に述べたものであり、個々の支出について言及したものではなく、具体性が乏しい上、その内容を裏付ける客観的証拠は認められず、また、本件代表者が、本件飲食等代金が個人的な飲食等に係る金額であることを認識しながら、当該金額を本件費用勘定に計上したとする仮装の事実が認めるに足りる証拠もないことからすれば、本件飲食等代金を本件費用勘定に計上したことに隠蔽又は仮装の事実は認められない。
2020年2月19日
当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認定した事例
- ①平成25年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の賦課決定処分及び平成25年1月1日から平成25年12月31日までの消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分 ⇒ 一部取消し
- ②平成26年分ないし平成28年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分 ⇒ 棄却
- ③平成26年1月1日から平成28年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分 ⇒ 棄却
- 平成31年4月23日裁決
<ポイント>
本件は、平成26年分ないし平成28年分については請求人が、正当に申告すべき収入金額等を認識した上で、真実の所得金額よりも大幅に少なく偽った所得金額を申告する目的で、メモを作成し、そのメモに基づいて所得金額を大幅に偽った収支内訳書を作成して過少申告行為を継続的に行っていたものであり、これら一連の行為は、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動と認めることができるとした一方、平成25年分については、上記特段の行動が認められないとしたものである。
<要旨>
請求人は、外注費に相当する金額は請求人の収入金額を構成しないとの誤解により収入金額を過少に申告したものであるから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」た事実はない旨主張する。
しかしながら、請求人は3年間にわたり、多額の所得を継続的に過少に申告しており、作成したメモの状況とあいまって、当初から所得を過少に申告する意図があったと認められる。
そして、請求人の事業における関係書類の作成及び外注先への支払の状況を踏まえれば、請求人は収入及び外注費のおおよその金額を認識していたと認められるところ、平成26年分においては、当該認識に沿う主要な売上先に係る売上金額及び外注費等の実額が記載されたメモを作成し、また、その後の平成27年分及び平成28年分においては、申告準備段階において事実とは異なる申告すべき金額を記載したメモを作成し、これらを相談会場に持参し、真実の所得を大幅に下回る金額を記載するなど所得金額を少なく偽った収支内訳書を作成し、所得税等の申告をしていたものである。
これら一連の行為は、請求人が外部からうかがい得る特段の行動をしたものと評価することができ、重加算税の賦課要件を満たすものである。
もっとも、平成25年分はメモの作成は認められず、収支内訳書の記載状況からするとその過少申告の形態がこれ以外の各年分と異なることが認められるから、重加算税の賦課要件を満たすとはいえない。
2020年2月13日
請求人の取締役が、外注先に対して架空の請求書を発行するよう依頼した行為は、請求人による行為と同視できるとした事例
- 平成25年1月1日から平成25年12月31日まで、平成26年1月1日から平成26年12月31日まで、平成27年1月1日から平成27年12月31日まで、平成28年1月1日から平成28年12月31日まで及び平成29年1月1日から平成29年12月31日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分
- 平成25年1月1日から平成25年12月31日まで及び平成26年1月1日から平成26年12月31日までの各課税事業年度の復興特別法人税に係る重加算税の各賦課決定処分
- 平成27年1月1日から平成27年12月31日まで、平成28年1月1日から平成28年12月31日まで及び平成29年1月1日から平成29年12月31日までの各課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の各賦課決定処分
- 平成25年1月1日から平成25年12月31日まで、平成26年1月1日から平成26年12月31日、平成27年1月1日から平成27年12月31日まで、平成28年1月1日から平成28年12月31日まで及び平成29年1月1日から平成29年12月31日までの各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分
- 棄却
- 令和元年6月20日裁決
<ポイント>
本事例は、代表取締役以外の取締役による行為を、当該取締役の業務内容、地位・権限等から請求人の仮装行為と認定した事例である。
<要旨>
請求人は、国税通則法第68条《重加算税》第1項は、隠蔽又は仮装の主体を納税者と規定していることから、専務取締役(本件専務)が外注先業者に対して架空の請求書を発行するよう依頼した行為(本件仮装)を請求人の行為と同視できないのであるから、同項の規定は適用できない旨主張する。
しかしながら、法人が納税義務者である場合、代表者自身が隠蔽又は仮装した場合に限らず、法人内部において相応の地位と権限を有する者が、その権限に基づき、法人の業務として行った隠蔽又は仮装であって、全体として納税者たる法人の行為と評価できるものについては、納税者自身による行為と同視されると解するのが相当である。
本件専務は、常務取締役又は専務取締役として対外的な営業業務を行っていたこと、請求人の他の営業担当者に対して営業方法を指導する立場にあったこと、請求人の営業利益の大部分を占める業績があり、代表者に次ぐ報酬を得ていたことから、大きな影響力を有する地位にあったと認められ、また、代表者は取引先との取引の詳細な内容まで把握しておらず、本件専務は、代表者から取引先との交渉を一任されていたことからすると、本件専務は、取引先の選定及び取引内容を確定する権限があったと認められる。
そうすると、本件仮装は、上記のような地位及び権限に基づき、請求人の業務として行われた行為であると認められ、請求人において本件仮装を防止するための措置を講じたとも認められず、全体として請求人の行為と評価できる。
したがって、本件仮装は納税者である請求人による行為と同視でき、請求人が事実を仮装したものと認められる。
★リンクはこちら ⇒ 請求人の取締役が、外注先に対して架空の請求書を発行するよう依頼した行為は、請求人による行為と同視できるとした事例
2020年2月13日
売上金額を脱漏する目的で、取引先に依頼し、決済方法を変更したなどの事実があったとは認められないとして重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- ①平成27年6月1日から平成28年5月31日までの法人税の重加算税の賦課決定処分
- ②平成26年6月1日から平成27年5月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分
- 全部取消し
- 平成31年2月7日裁決
<ポイント>
本事例は、原処分庁が主張する売上金額を脱漏する目的で、取引先に依頼し、決済方法を変更した事実は認められず、国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺいの事実は認められないとの判断をしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人の代表者(本件代表者)は銀行振込みでなければ売上げに計上されないことを認識した上で、取引先に決済方法を銀行振込みから小切手に変更するよう依頼して、請求人の売上げを脱漏したのだから、その行為は国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)(通則法)第68条《重加算税》第1項に規定する事実の隠ぺいに該当する旨主張する。
しかしながら、決済方法が銀行振込みから小切手に変更されたのは、当該取引先の事情によるものであり、本件代表者が当該取引先に対して決済方法の変更を依頼した事実が確認できず、また、その他の証拠においても、本件代表者が売上代金を銀行振込みされなければ売上げに計上されないと認識していたことを裏付ける証拠も認められないことから、請求人に通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺいがあったとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 売上金額を脱漏する目的で、取引先に依頼し、決済方法を変更したなどの事実があったとは認められないとして重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2020年1月10日
過去の事業年度における仮装経理について、修正の経理を行わず、当事業年度の実際の材料仕入高を水増しした材料仕入高により帳簿書類を作成したことは、仮装に該当するとした事例
- 平成21年8月1日から平成22年7月31日まで、平成22年8月1日から平成23年7月31日まで、平成23年8月1日から平成24年7月31日まで、平成24年8月1日から平成25年7月31日まで、平成25年8月1日から平成26年7月31日まで、平成26年8月1日から平成27年7月31日まで及び平成27年8月1日から平成28年7月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分、平成21年8月1日から平成22年7月31日まで、平成22年8月1日から平成23年7月31日まで、平成23年8月1日から平成24年7月31日まで、平成26年8月1日から平成27年7月31日まで及び平成27年8月1日から平成28年7月31日までの各事業年度の法人税の重加算税の各賦課決定処分、平成23年8月1日から平成24年7月31日まで、平成26年8月1日から平成27年7月31日まで及び平成27年8月1日から平成28年7月31日までの各事業年度の法人税の過少申告加算税の各賦課決定処分、平成27年8月1日から平成28年7月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分並びに平成21年8月1日から平成22年7月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分
- 棄却
- 平成31年3月1日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、材料仕入高の水増し計上について、過去の事業年度における仮装経理の「修正の経理」として行った旨主張するが、当該仮装経理の金額を任意の金額で各事業年度に分けて材料仕入高を水増し計上することによって損金に算入したものであって、「修正の経理」の手続によらずに行ったものであるとしたものである。
<要旨>
請求人は、請求人が各事業年度の損金の額に算入した材料仕入高は、過去の事業年度における仮装経理の「修正の経理」であるから、国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第68条《重加算税》第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する事実はない旨主張する。
しかしながら、請求人の代表取締役は、各事業年度において、実際とは異なる水増しした材料仕入高により帳簿書類が作成されていたことを認識していたと認められ、当該認識の下で請求人が水増しした材料仕入高を帳簿書類に計上したことは、行為の意味を理解しながら故意に事実をわい曲したものということができ、仮装したものというべきであるから、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する。
★リンクはこちら ⇒ 過去の事業年度における仮装経理について、修正の経理を行わず、当事業年度の実際の材料仕入高を水増しした材料仕入高により帳簿書類を作成したことは、仮装に該当するとした事例
2020年1月8日
国税の担保の処分においても民法第389条第1項の適用があるとした事例
- 担保物処分のための差押処分
- 棄却
- 平成31年2月5日裁決
<ポイント>
本事例は、国税を担保するために抵当権が設定された後に当該担保不動産上に建物が築造された場合には、当該担保不動産及び当該建物を一括して公売するために、国税通則法第52条第1項及び民法第389条第1項の規定に基づく担保権の実行として当該建物を差し押さえることができるとしたものである。
<要旨>
請求人は、滞納国税(本件滞納国税)を徴収するためには、本件滞納国税を担保するための抵当権が設定された各不動産(本件各不動産)の差押えで十分であるなどとして、当該抵当権の設定後に当該各不動産上に築造された請求人の物置(本件物置)に対する差押処分(本件差押処分)は違法である旨主張する。
しかしながら、民法第389条《抵当地の上の建物の競売》第1項は、民事執行における競売手続において、土地利用権のない建物の存続を図る形で売却することにより社会経済的損失を回避するとともに、競売手続の円滑な運営を目的として、土地の抵当権に内在する換価権を建物に拡大したものと解される。
そして、かかる要請は、滞納処分における公売手続においても当てはまると解され、また、国税を担保するために設定された抵当権であっても、当該抵当権に内在する換価権の及ぶ範囲については実体法である民法に委ねていると解するのが相当であることからすると、国税の担保の処分においても民法第389条第1項が適用されると解される。
そうすると、本件差押処分は、国税通則法第52条《担保の処分》第4項の規定に基づき行われたものではなく、本件各不動産及び本件物置を一括して公売に付すために同条第1項及び民法第389条第1項に基づく担保権の実行として行われたものであって、担保として提供された財産の処分の代金を滞納国税等に充ててなお不足があると認めることを要件とするものではないから、本件差押処分は適法である。
★リンクはこちら ⇒ 国税の担保の処分においても民法第389条第1項の適用があるとした事例
2019年12月27日
換価代金等の配当処分の取消しを求める審査請求は、換価代金等の交付期日が経過し、換価代金等の交付が終了した後においても不服申立ての利益が認められるとした事例
- 配当処分
- 棄却
- 平成30年10月29日裁決
<ポイント>
本事例は、税務署長は、配当処分の取消しにより、再度適法な配当処分をすべき地位に置かれることになることから、換価代金等の配当処分の取消しを求める審査請求は、換価代金等の交付期日が経過し、換価代金等の交付が終了した後においても不服申立ての利益が認められるとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、配当処分(本件配当処分)は、換価代金等の交付期日に配当が実施され、その効力が消滅していること、処分の効力が消滅した後において、処分の取消しによって得られる実益がないことから、本審査請求は不服申立ての利益を欠く不適法なものである旨主張する。
しかしながら、換価代金等の交付期日が経過し、換価代金等の交付が終了すると、配当処分はその目的を完了して処分の効力が消滅したと解されるが、その場合であっても、配当処分の取消しにより、税務署長は、再度適法な配当処分をすべき地位に置かれることになると解されるから、処分の名宛人は、配当金額の交付を受け得るべき地位を回復することとなり、処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するということができる。
したがって、請求人は、換価代金等が交付された後においても、本件配当処分の取消しを求めるにつき不服申立ての利益を有するから、本審査請求は適法なものである。
★リンクはこちら ⇒ 当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2019年11月20日
当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成27年2月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成30年10月2日裁決
<ポイント>
本事例は、各共済契約に係る権利及び出資金を相続財産として申告しなかったことについて、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものとは認めることができないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が各共済契約について、①関与税理士(本件税理士)からの指示に基づき解約返戻金相当額等証明書を取得したこと、②被共済者等の名義を請求人に変更したこと、また、出資金については、③払戻請求を行ったことなどの各手続等(本件手続等)を行ったにもかかわらず、本件税理士に各共済契約及び出資金の存在を一切伝えなかったことは、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が行った本件手続等は相続により財産を取得した相続人が通常行う手続と外形上何ら異なるものではないこと、さらに、上記各共済契約のうち満期共済契約の返戻金及び上記出資金の払戻金が相続財産として申告されている貯金の解約金の入金口座と同一の口座に入金されていることからすれば、請求人が本件税理士に各共済契約及び出資金の存在を一切伝えなかったとしても、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたとは認められない。
したがって、請求人に通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2019年11月18日
消費税の課税を免れるため売上金額を調整した行為が事実の隠ぺい又は仮装に当たるとした事例
- ①平成21年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分(再調査決定により過少申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの。以下②及び④において同じ。) →全部取消し
- ②平成22年分及び平成24年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分 →棄却
- ③平成23年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分 →棄却
- ④平成25年分から平成27年分までの所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の賦課決定処分 →棄却
- ⑤平成21年1月1日から平成27年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分 →棄却
- ⑥平成23年分の所得税及び平成23年1月1日から平成23年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の各更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分 →棄却
- 平成30年12月4日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、消費税の課税事業者にならないようにする目的で、各取引先に対する売上金額を集計した表を調整して、事業所得の売上金額を1,000万円以下に減額して所得税等の申告をしたとして、国税通則法第68条《重加算税》に規定する「事実の隠蔽又は仮装」に当たるとしたものである。
<要旨>
請求人は、各取引先に対する各月の売上金額等を集計した年次の集計表(本件年次集計表)は決算時のメモでありこれに基づく申告等を行っていないのであるから、各年次の本件年次集計表の作成は税額計算の基礎となる事実についての隠ぺい又は仮装に当たらない旨主張する。
しかしながら、請求人は、消費税等の課税事業者にならないようにする目的で、売上金額を1,000万円以下に減額して所得税等の申告をすることとし、本件年次集計表において、丸印や下線を付すなどして売上金額の合計が1,000万円以下になるように調整したものと認められ、このような調整は、調整後の金額のみ申告すれば足りるかのように装うとともに、消費税等の納税義務が無いかのように装うという隠ぺい又は仮装と評価すべき行為であり、請求人は、当該調整後の金額を収支内訳書に転記して所得税等の申告をしたものと認められ、このような事実は、国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する「事実の隠蔽又は仮装」に当たる。
なお、平成21年分の所得税については、偽りその他不正の行為により売上に加算されなかった金額を上回る必要経費の認容により、同年分の偽りその他不正の行為に係る所得金額は零円となり、請求人は、国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項第1号に規定する偽りその他不正の行為により所得税を免れたものとはいえないことから、同年分の重加算税の賦課決定処分(再調査決定により過少申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの)については5年を超えて行うことはできず、本件はこれを超えていることからその全部が取り消されるものである。
★リンクはこちら ⇒ 消費税の課税を免れるため売上金額を調整した行為が事実の隠ぺい又は仮装に当たるとした事例
2019年11月14日
当初から所得を過少に申告することを意図していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課要件を満たさないとした事例
- 平成27年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成30年9月27日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人らは、譲渡した土地の全てに居住用財産の譲渡所得の特別控除を適用できるものと誤解し、確定申告をした可能性があるといわざるを得ず、当初から所得を過少に申告することを意図していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課要件を満たさないと判断したものである。
<要旨>
原処分庁は、①請求人らが譲渡した土地(本件土地)のうちの一部のみが租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項の規定(本件特例)の適用対象となることを認識していたにもかかわらず、本件土地の全てに本件特例を適用して所得税等の確定申告書を提出していたこと、②税理士に対する申告前の相談の際、本件土地及びその土地上の3棟の建物(本件各建物)に係る具体的な資料を提示しなかったこと、③請求人らに対する調査(本件調査)の際、調査担当職員に対し、虚偽の答弁をしたことなどから、請求人らが、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認められ、国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する賦課要件を充足する旨主張する。
しかしながら、請求人らは、本件調査の際、本件各建物のうち請求人らが日常生活を営んでいた建物(本件母屋)以外の2棟の建物(本件各別棟)は譲渡直前において物置として利用していた旨を一貫して述べていること、本件各建物の各居宅は物置として利用していたと認められることなどからすると、請求人らは、本件各別棟を物置として利用していれば、本件土地の全てに本件特例を適用できるものと誤解し、確定申告をした可能性があるといわざるを得ない。
したがって、当初から所得を過少に申告することを意図していたと認めることはできない。
また、請求人らは、確定申告時点では税理士に関与を依頼しておらず、調査の際の請求人らの答弁が虚偽であると認めるに足る証拠などもないことから、重加算税の賦課要件を充足するとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から所得を過少に申告することを意図していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課要件を満たさないとした事例
2019年7月29日
第三者が作成した内容虚偽の確定申告書の作成行為について、請求人の行為と同視することはできないとした事例
- 平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成30年9月3日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が不動産を購入する際、その不動産販売を代理した法人の従業員が不動産の取得時期等について、事業年度の異なった確定申告書等を作成し、請求人が当該申告書等に押印をして原処分庁に提出をしたところ、当該法人の従業員の行為は請求人の行為と同視することはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人の不動産購入の販売代理をした法人の従業員ら(本件従業員ら)が作成して請求人が提出した内容虚偽の確定申告書等(本件申告書等)について、請求人が本件従業員らにこれらの作成を持ちかけた、そうでなかったとしても、これらに請求人が押印し提出したものであり本件従業員らの行為は請求人の行為と同視できることなどを理由に、重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件従業員らに対し本件申告書等の作成を持ちかけた事実は認められず、また、請求人が本件従業員らにより虚偽の内容の本件申告書等を作成した行為を追認したことはもとより、本件申告書等に事実と異なる内容が記載されていることを認識していたとか、それを予想することができたとは認められず、本件従業員らの行為は請求人の行為と同視することはできないから、重加算税の賦課要件を満たすとはいえない。
★リンクはこちら ⇒ 第三者が作成した内容虚偽の確定申告書の作成行為について、請求人の行為と同視することはできないとした事例
2019年7月25日
差押財産が自己に帰属するものではないことを理由として差押処分の取消しを求めることはできないとした事例
- 差押処分
- 棄却
- 平成30年6月19日裁決
<ポイント>
本事例は、差押財産が自己に帰属するものではないとの請求人の主張は、「自己の法律上の利益に関係のない違法」(行政事件訴訟法第10条第1項)を主張するものであるから、差押処分の取消しを求めることはできないとしたものである。
<要旨>
審査請求は、違法又は不当な処分によって侵害された不服申立人の権利利益の救済を図るものであることから、自己の法律上の利益に関係のない違法を審査請求の理由とすることはできないと解するのが相当である。
請求人は、差し押さえられた財産は自己に帰属する財産ではないから差押処分(本件差押処分)は違法である旨主張するが、仮にそのような事実があったとしても、本件差押処分によって不利益を受けるのはその財産の真正な帰属者であって、請求人は本件差押処分によって何らの影響も受けないのであるから、結局、請求人がかかる事実を違法であると指摘することは自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものにほかならない。
したがって、差押財産が自己に帰属するものではないことを理由として本件差押処分の取消しを求めることはできない。
★リンクはこちら ⇒ 差押財産が自己に帰属するものではないことを理由として差押処分の取消しを求めることはできないとした事例
2019年4月19日
課税負担を軽減する目的で兄弟会社に対する債務引受による債権放棄を行ったとしても、直ちにその経済的利益の額は寄附金の額とはならないことから、確定申告が事実を隠ぺい又は仮装をしたものとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成24年3月1日から平成25年2月28日まで及び平成25年3月1日から平成26年2月28日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分、平成25年3月1日から平成26年2月28日までの課税事業年度の復興特別法人税に係る重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成30年5月31日裁決
<ポイント>
本事例は、いわゆる兄弟会社において、その債務を引き受けたことによる債権放棄をして貸倒損失として損金の額に算入したことについて、請求人が課税軽減目的を有していたからといって、法人税基本通達9-4-1によれば、兄弟会社の債務引受等であっても相当の理由がある場合には寄附金の額に該当しないことから、直ちに請求人が計上した貸倒損失について寄附金の額に該当すると認識していたとは認められないことを理由として、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人がいわゆる兄弟会社(本件分割法人)の債務を引受け、当該債務引受けによる債権を放棄して貸倒損失として損金の額に算入したことについて、請求人における課税負担を軽減する目的で、本件分割法人の解散、請求人による債務引受けや債権放棄、本件分割法人の特別清算などの一連の行為(本件分割法人整理)を検討したことなどからすると、請求人は当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づいて法人税の確定申告(本件確定申告)をしたから、本件確定申告は事実を隠ぺい又は仮装したところに基づくものである旨主張する。
しかしながら、法人税基本通達9-4-1《子会社等を整理する場合の損失負担等》によれば、兄弟会社の債務引受け等であっても、そのことについて相当の理由があると認められる場合には、その債務引受け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないことから、支援者が課税負担を軽減する目的で当該債務引受け等を行ったことのみをもって、直ちに当該債務引受け等により供与する経済的利益の額が、寄附金となるものではないというべきであり、原処分庁が主張する本件分割法人整理に係る上記各事実をもって、直ちに請求人が計上した貸倒損失について寄附金の額に該当することを認識していたとは認められず、その他、請求人にそのような認識があったことを認めるに足りる証拠はないから、本件確定申告は、事実を隠ぺい又は仮装したところに基づくものであるとは認められない。
2019年4月16日
更正の請求を提出することができる者は、納税申告書を提出した者に限られ、第三者が債権者代位権又は取消権の行使として、更正の請求を提出することはできないとした事例
- 平成24年分贈与税に係る更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分
- 棄却
- 平成30年6月22日裁決
<ポイント>
本事例は、国税通則法第23条第1項は、更正の請求をすることができる者として、納税申告書を提出した者と規定しており、その趣旨は、申告納税方式では、納付すべき税額は課税要件に関する事実関係に最も通じている納税者自らの申告により確定することが原則とされており、その税額が過大であった場合の是正手続も、納税申告書を提出した納税者自らが行うことが申告納税方式に適合するからであると解されるとしたものである。
<要旨>
請求人らは、贈与税の申告書を提出した者に対し有する金銭債権を保全するため、債権者代位権又は取立権の行使として、更正の請求をすることができる旨主張する。
しかしながら、国税通則法(平成27年法律第9号による改正前のもの)第23条《更正の請求》第1項は、更正の請求をすることができる者として納税申告書を提出した者と規定しており、その趣旨は、申告納税方式では、納付すべき税額は課税要件に関する事実関係に最も通じている納税者自らの申告により確定することが原則とされており、その税額が過大であった場合の是正手続も、納税申告書を提出した納税者自らが行うことが申告納税方式に適合するからであると解される。
また、納税者の債権者等の第三者が更正の請求をすることができるとすると、更正をした場合には納税者の課税標準等又は税額等に係る情報を当該第三者に知らせることになり、国税通則法第126条及び国家公務員法第100条《秘密を守る義務》第1項に規定する守秘義務に抵触することとなるが、その解除を規定した法令は存在しない。
したがって、国税通則法は更正の請求をすることができる者を、納税申告書を提出した者に限定していると解するのが相当である。
★リンクはこちら ⇒ 更正の請求を提出することができる者は、納税申告書を提出した者に限られ、第三者が債権者代位権又は取消権の行使として、更正の請求を提出することはできないとした事例
2019年4月4日
当初から相続税を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- ①平成26年分の所得税等の修正申告に係る重加算税の賦課決定処分 → 一部取消し
- ②平成26年分の所得税等の更正処分 → 棄却
- ③平成26年分の所得税等の重加算税の賦課決定処分 → 一部取消し
- 平成30年3月7日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が農地の借主(本件借主)に支払った金員(本件金員)について、譲渡費用に該当しないことを認識していたことを認めるに足りる証拠はないから、本件借主に本件金員に係る領収証の名目を離農補償金と書き直させたことは、隠ぺいまたは仮装をしたものとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が農地の借主(本件借主)に支払った金員(本件金員)について、譲渡費用にならないことを認識しながら、領収証の名目を離農補償金と書き直させたことは、国税通則法第68条《重加算税》第1項にいう隠ぺい、仮装に当たると主張する。
しかしながら、請求人が本件借主に農地法上の耕作権がないことを知っていたとしても、そのことをもって直ちに、本件借主との間の貸借状態解消のために支払った本件金員が譲渡費用にならないことまで認識していたとはいい難い。
また、その他、請求人が本件金員が譲渡費用に該当しないことを認識していたことを認めるに足りる証拠はないから、請求人が同項にいう隠ぺいまたは仮装をしたものとはいえない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から相続税を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2019年1月15日
支払った金員に係る領収証の名目を書き直させた行為は、当該金員が譲渡費用に該当しないことを認識していたと認めるに足りる証拠はないから隠ぺい又は仮装をしたものとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- ①平成26年分の所得税等の修正申告に係る重加算税の賦課決定処分 → 一部取り消し
- ②平成26年分の所得税等の更正処分 → 棄却
- ③平成26年分の所得税等の重加算税の賦課決定処分 → 一部取り消し
- 平成30年3月7日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が農地の借主(本件借主)に支払った金員(本件金員)について、譲渡費用に該当しないことを認識していたことを認めるに足りる証拠はないから、本件借主に本件金員に係る領収証の名目を離農補償金と書き直させたことは、隠ぺい又は仮装をしたものとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が農地の借主(本件借主)に支払った金員(本件金員)について、譲渡費用にならないことを認識しながら、領収証の名目を離農補償金と書き直させたことは、国税通則法第68条《重加算税》第1項にいう隠ぺい、仮装に当たると主張する。
しかしながら、請求人が本件借主に農地法上の耕作権がないことを知っていたとしても、そのことをもって直ちに、本件借主との間の貸借状態解消のために支払った本件金員が譲渡費用にならないことまで認識していたとはいい難い。
また、その他、請求人が本件金員が譲渡費用に該当しないことを認識していたことを認めるに足りる証拠はないから、請求人が同項にいう隠ぺい又は仮装をしたものとはいえない。
2018年11月29日
当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったことをうかがわせる事情は見当たらないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成27年5月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成30年2月6日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人らが、相続手続等を依頼した弁護士に対し、法定申告期限前に相続財産の内容等が記録されているUSBメモリを交付していたと認められるなどとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人らは、有価証券及び現金預貯金等を相続財産として申告しなければならないことを十分認識していたにもかかわらず、相続手続等を依頼した弁護士(本件弁護士)に対し、相続税を安くする目的で相続財産の内容等が記録されているUSBメモリ(本件USBメモリ)を交付せず、また、請求人らが相続開始直前に被相続人の預金口座から出金した現金(本件現金)の存在も伝えなかったのであり、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき過少申告をしたものと認められるから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人らは、本件弁護士に対して法定申告期限前に本件USBメモリを交付していたものと認められ、また、本件現金の存在を本件弁護士に秘匿するためにその事実を伝えなかったと評価することはできず、その他、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人らに、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったことをうかがわせる事情は見当たらないから、同項に規定する重加算税の賦課要件は満たさない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったことをうかがわせる事情は見当たらないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2018年11月22日
税理士交付用として相続財産の一覧表を作成した行為は隠ぺい又は仮装の行為に当たらないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成26年5月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成30年1月30日裁決
<ポイント>
本事例は、相続税の申告に当たり請求人が税理士へ交付した相続財産の一覧表は、あえて相続財産の一部を記載せずに作成されたものと推認することはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人は、相続財産を正確に把握していたにもかかわらず、あえて一部の保険金(本件各無申告保険金)及び遺族一時金(本件遺族一時金)を記載せずに相続財産の一覧表(本件税理士提出用一覧表)を作成し、相続税の申告に当たってこれを税理士に交付したものであり、請求人が本件税理士提出用一覧表を作成した行為は、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する隠ぺい行為に当たる旨主張する。
しかしながら、本件各無申告保険金及び本件遺族一時金が振り込まれた請求人名義の各口座は、いずれも原処分庁においてその存在を容易に把握し得るものであることに加え、本件税理士提出用一覧表は上書入力を繰り返し行ったために本件遺族一時金の記載が消えてしまった旨の請求人の説明は、一応合理的であることなどからすれば、請求人が、あえて本件各無申告保険金及び本件遺族一時金を記載せずに本件税理士提出用一覧表を作成したとの事実を推認することはできず、ほかにこの事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって、請求人が本件税理士提出用一覧表を作成した行為は、同項に規定する隠ぺいまたは仮装の行為に当たらない。
★リンクはこちら ⇒ 税理士交付用として相続財産の一覧表を作成した行為は隠ぺい又は仮装の行為に当たらないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2018年11月16日
当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成30年1月11日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、換地不交付に対する清算金を受領した事実を秘匿するため、あえて当該清算金に係る書類を確定申告会場へ持参しなかったとの事実を認めることはできないなどとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、土地区画整理組合から受領した換地不交付に対する清算金(本件清算金)について、確定申告をしなければならないことを十分認識していたにもかかわらず、原処分に係る調査において、本件清算金を受領した事実を秘匿するためにあえて本件清算金に係る書類を確定申告会場へ持参しなかった旨申述していることなどからすれば、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったものと認められる旨主張する。
しかしながら、請求人の当該申述の内容は、合理性、具体性に乏しく、審判所の調査及び審理の結果によってもこれを裏付ける客観的な証拠は認められず、請求人が本件清算金を受領した事実を秘匿するためにあえて本件清算金に係る書類を確定申告会場へ持参しなかったとの事実を認めることはできないなど、請求人が、当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったものと認めることはできない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2018年10月25日
このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で期限後申告書を提出したとは認められないとして、無申告加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成26年12月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成30年1月29日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、相続税の申告及び納付を決意した後、原処分庁所属の職員との申告相談を経て期限後申告書を提出したものと認められるとして、無申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、原処分庁所属の職員(本件職員)は、請求人に対し、相続税に係る調査の事前通知をした上で当該調査を行う旨説明したほか、調査結果の内容の説明とともに期限後申告を勧奨しており、請求人は、調査があったことを認識し、期限後申告をしなければやがて決定されるであろうことを認識することができたものと認められるから、請求人が提出した期限後申告書(本件期限後申告書)は、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人は、請求人の母と本件職員との間で行われた請求人の相続税に関する相談結果を契機として、相続税の申告及び納付を決意し、その後、本件職員との申告相談を経て本件期限後申告書を提出したものと認められるから、請求人が、このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で本件期限後申告書を提出したとは認められず、そもそも本件期限後申告書の提出に至るまで、相続税に関する調査を受けていたとの認識を有していたとも認められない。
したがって、本件期限後申告書の提出は、同項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。
★リンクはこちら ⇒ このまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で期限後申告書を提出したとは認められないとして、無申告加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2018年10月19日
徴収担当職員から、再三再四、預金通帳の提示を求められたにもかかわらず、請求人が預金通帳を一切提示しなかったことは、帳簿書類その他の物件の検査を拒んだものと認められるとして、納税の猶予の不許可事由に該当するとした事例
- 納税の猶予不許可処分、督促処分
- 棄却
- 平成30年1月9日裁決
<要旨>
請求人は、請求人がした納税の猶予の申請(本件猶予申請)につき、原処分庁が、国税通則法第46条の2《納税の猶予の申請手続等》第10項第2号に該当する事実があるとして不許可処分をしたのに対し、徴収担当職員から提示を求められた預金通帳については元関与税理士法人から返却されなかったため提示できなかったものであって、徴収担当職員の検査を拒んだり、妨げたり、忌避したりしてはいない旨主張する。
しかしながら、原処分庁は、本件猶予申請に係る事項を明らかにするため、預金口座の状況を調査する必要があったと認められるところ、請求人は、徴収担当職員から、再三再四、預金通帳の提示を求められたにもかかわらず、預金通帳を一切提示しなかったのであり、請求人は、徴収担当職員による帳簿書類その他の物件の検査を拒んだものと認められる。
また、仮に、請求人が主張するように、元関与税理士法人が請求人の所有する預金通帳を返却していないとしても、請求人は、預金通帳を発行した金融機関に対して、預金通帳の再発行の手続や預金口座の異動履歴状況の分かるものの発行の手続をすれば、預金通帳その他預金口座の状況を証する書類を容易に取得できるのであるから、所有する預金通帳の提示を求められた請求人が、上記各手続をせずに、預金通帳その他預金口座の状況を証する書類の提示をしないことは、徴収担当職員の検査を拒んだものといわざるを得ない。
2018年10月17日
国税を担保するために抵当権が設定された後に当該担保不動産上に築造された建物について原処分庁が行った差押処分は、国税通則法第52条第4項に規定する「なお不足があると認めるとき」にされたものではないとして取り消した事例
- 不動産の差押処分
- 全部取消し
- 平成29年10月16日裁決
<ポイント>
本事例は、国税を担保するために抵当権が設定された後に当該担保不動産上に築造された建物についての差押えは、国税通則法第52条第4項に規定する「なお不足があると認めるとき」の要件を充足する必要があるとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人の国税を担保するため抵当権が設定された各担保不動産(本件各担保不動産)上に、抵当権の設定後に築造された請求人の建物(本件建物)に対して行った国税徴収法第47条《差押の要件》第1項第1号に基づく差押処分(本件差押処分)は、国税通則法第52条《担保の処分》第4項に規定する「なお不足があると認めるとき」になされたものではないが、抵当権の設定後に抵当地に築造された建物を抵当地とともに競売できる旨を定めた民法第389条《抵当地の上の建物の競売》第1項の規定に照らせば、許容されるべきである旨主張する。
しかしながら、国税の担保の処分においても民法第389条第1項が適用されると解する余地はあるが、その場合であっても、抵当権の設定後に抵当地に築造された建物を抵当地とともに公売するための差押えは、担保権の実行である以上、国税通則法第52条第1項に基づく担保物処分のための差押えとして行うものであり、国税徴収法第47条第1項第1号に基づいてなされた本件差押処分は、国税通則法第52条第4項の「なお不足があると認めるとき」になされたものではないから、違法である。
2018年7月9日
国税徴収法第153条第1項各号に該当する事実がいずれも認められないことから、滞納処分の停止の取消処分は適法であると認めた事例
- ①滞納処分の停止取消処分 →棄却
- ②債権の差押処分 →棄却
- 平成29年7月25日裁決
<要旨>
請求人は、原処分庁がした滞納処分の停止取消処分(本件停止取消処分)は、請求人には滞納処分の執行等をすることができる財産がなく、また、請求人の収入額は最低賃金にも満たないから、国税徴収法第153条《滞納処分の停止の要件等》第1項第1号及び同項第2号に該当する事実があるにもかかわらず行われた違法な処分である旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件停止取消処分時において供託金払渡請求権(本件払渡請求権)を有していたと認められ、本件払渡請求権は差押えの対象となる将来生ずべき債権であると認められる以上、請求人に国税徴収法第153条第1項第1号に該当する事実はない。
また、請求人は、妻の扶養親族であるが、自らも就労して収入を得ており、請求人の属する世帯は、それなりの収入がある一方、定期的に多額の支出があるとは認められず、生活が窮迫しているとは認められないことを考慮すると、本件払渡請求権に対して滞納処分を執行したとしても、生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態に直ちに陥ることはないと認められ、請求人に国税徴収法第153条第1項第2号に該当する事実もない。
★リンクはこちら ⇒ 国税徴収法第153条第1項各号に該当する事実がいずれも認められないことから、滞納処分の停止の取消処分は適法であると認めた事例
2018年6月29日
当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- ①平成22年分の所得税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分 →全部取消し
- ②平成23年分から平成26年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分 →一部取消し
- ③平成22年1月1日から平成22年12月31日までの課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分 →全部取消し
- ④平成23年1月1日から平成26年12月31日までの各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分 →一部取消し
- 平成29年8月23日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、その他、請求人の上記意図を認めるに足りる証拠はないとして、重加算税の賦課要件を満たさないと判断したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、①特定の取引先(本件取引先)からの報酬等(本件収入)が請求人の事務所名義の預金口座(本件預金口座)に入金されていたと認識していたにもかかわらず、関与税理士に対し、本件預金口座に係る通帳(本件通帳)を提示しておらず、また、②調査担当職員から本件収入の申告漏れを指摘されるまで、調査担当職員に対して本件通帳を提示しなかったことからすると、請求人は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められるから、重加算税の賦課要件を満たす旨主張する。
しかしながら、請求人は、①本件取引先が源泉徴収を行った後、本件収入は本件預金口座以外の預金口座に振り込まれているとの誤解の下、関与税理士に対し、手持ちの源泉徴収票及び支払調書に加えて本件通帳以外の通帳を提示することにより、本件収入についても適正に申告していると誤解していたものと考える余地があり、また、②調査担当職員に対して本件預金口座の存在を殊更隠ぺいしようとしたとは考え難く、本件通帳以外の通帳を提示すれば問題ないと考えて本件通帳を提示しなかったものとみる余地があるから、原処分庁が主張する事情は、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、その他、請求人の上記意図を認めるに足りる証拠もないから、重加算税の賦課要件を満たさない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2018年5月16日
期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について決定があるべきことを予知してされたものでないとした事例
- ①平成23年分及び平成24年分の所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分 →全部取消し
- ②平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の各賦課決定処分 →一部取消し
- 平成29年9月26日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が行った期限後申告書の提出は、調査の内容・進捗状況、それに関する請求人の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断した結果、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当するとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、調査担当職員(本件調査担当職員)が、請求人の配偶者の所得税に係る調査(本件調査)において、請求人名義の不動産から生じる不動産所得が当該配偶者の所得として申告され、請求人が申告していない事実を把握し、請求人の所得税の課税標準等又は税額等を認定するために税理士(本件税理士)に質問を行ったのであるから、本件調査後の期限後申告書(本件期限後申告書)の提出は国税通則法第66条《無申告加算税》第5項(平成28年法律第15号による改正前のもの。)に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない旨主張する。
しかしながら、「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことは、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断すべきところ、請求人は、本件調査に応じた本件税理士を通じて請求人の所得税に係る調査を認識したものの、本件調査とは別の契機により不動産の名義どおりに申告をやり直したいとの申出を行い、期限後申告を行ったのであるから、本件期限後申告書の提出は「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当する。
その結果、納付すべき税額に5%を乗じて計算した無申告加算税の額が5,000円未満となった年分は処分の全部を、その他の年分は上記5%相当額を超える部分につき処分の一部をそれぞれ取り消すことが相当である。
★リンクはこちら ⇒ 期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について決定があるべきことを予知してされたものでないとした事例
2018年5月9日
内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の規定は国税通則法第65条第5項の規定の適用がある修正申告書にも適用されるとした事例
- 平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分
- 棄却
- 平成29年9月1日裁決
<ポイント>
本事例は、更正を予知せずにされた修正申告書であっても、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の規定に基づく過少申告加算税は課されるとしたものである。
<要旨>
請求人は、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国送法)第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第2項の規定は、国税通則法(通則法)第65条《過少申告加算税》第5項の規定が適用される請求人の修正申告書(本件修正申告書)には適用されない旨主張する。
しかしながら、国送法第6条第2項は、通則法第65条の規定の適用がある場合に過少申告加算税を加重する旨規定しており、同条第5項の規定の適用がある場合を除く旨規定しているものではない上、同項の規定の適用がある修正申告書にも国送法第6条第2項の適用があると解することは、同条第1項及び第2項の規定の趣旨とも整合する。
したがって、国送法第6条第2項の規定は、通則法第65条第5項の規定の適用がある修正申告書にも適用されると解するのが相当であるから、本件修正申告書についても国送法第6条第2項の規定は適用される。
★リンクはこちら ⇒ 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条第2項の規定は国税通則法第65条第5項の規定の適用がある修正申告書にも適用されるとした事例
2018年4月18日
請求人は、特定株式の移転の日において、K国の居住者であり、当該特定株式の移転に係るみなし譲渡益は、日本国政府とK国政府との租税協定の規定により、K国に課税権があるとし所得税の更正の請求をしたのに対し、原処分庁がした更正をすべき理由はないとの通知処分は適法であるとした事例
- 所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分
- 棄却
- 平成29年8月22日裁決
<ポイント>
本事例は、特定株式の移転に係るみなし譲渡益のうち、請求人が日本国の居住者であったときに、新株予約権を行使したことにより生じた権利行使益については、日本国政府とK国政府との租税協定による制限を受けず、国内法の規定により、国内源泉所得として課税を受けることとなると判断したものである。
<要旨>
請求人は、新株予約権の行使により取得した株式に係る租税特別措置法第29条の2《特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等》第4項の規定により譲渡とみなされるもの(本件みなし譲渡)のうち、同条第1項に規定する経済的利益(本件権利行使益)については、本件みなし譲渡の全てが株式の保有によって生じた値上がり益、すなわち株式譲渡益と考えるのが相当であり、また、請求人は同条第4項に規定する特定株式の移転の日においてK国の居住者であるから、本件権利行使益は、日本国政府とK国政府との租税協定(本件協定)の規定が適用され、K国に課税権がある旨主張する。
しかしながら、本件みなし譲渡に係る譲渡所得は、所得税法第161条《国内源泉所得》第1号に規定する資産の譲渡により生ずる国内源泉所得であるから、租税特別措置法第37条の12《恒久的施設を有しない非居住者の株式等の譲渡に係る国内源泉所得に対する課税の特例》第1項の規定により、その全体について15%の税率を適用して分離課税の対象になるところ、この国内法上の課税関係が本件協定上受ける制限についてみると、本件みなし譲渡に係る譲渡所得のうち本件権利行使益は、請求人が内国法人であるF社から付与を受けた新株予約権を日本国の居住者である時に行使することにより生じたものであるから、本件権利行使益に係る日本国の課税権については、本件協定による制限を受けないことになり、同項に基づいて15%の税率で分離課税の対象となる。
したがって、本件権利行使益については、国内法の規定により、国内源泉所得として日本国で課税を受けることになる。
2018年4月13日
催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じるとした事例
- ①第二次納税義務の納付告知処分 →棄却
- ②不動産の差押処分 →棄却
- 平成29年5月29日裁決
<ポイント>
本事例は、催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じると解するのが相当であるとしたものである。
<要旨>
請求人は、滞納者(本件滞納者)の滞納国税(本件滞納国税)に係る債務の承認によって催告による時効中断の効力が生じるとする原処分庁の民法第153条《催告》の解釈は誤っており、本件滞納国税の徴収権の時効は中断していない旨主張する。
しかしながら、民法第153条は、債権者の催告について、債権者が正規の中断事由によって補強することにより時効中断の効力を認めるものであって、正規の中断手続をとるのが遅れることにより時効が完成するのを防ぐ便法として機能することを期待して定められたものと解され、債権者の催告について、債務者の行為による正規の中断事由である承認を、債権者の行為による正規の中断事由と区別する理由はないというべきであるから、催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じると解すべきである。
これを本件についてみると、本件滞納者の行った承認は、原処分庁が差押予告書(本件差押予告書)の送達によって行った本件滞納国税についての催告後6か月以内にされたものであるから、当該承認によって、本件差押予告書による催告の時効中断の効力が生じたものと認めるのが相当である。
★リンクはこちら ⇒ 催告後6か月以内にされた承認によっても、民法第153条が規定する催告による時効中断効が生じるとした事例
2018年3月6日
収入金額の一部が計上されていない試算表を作成した行為は、隠ぺい、仮装と評価すべき行為に該当するとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- ①平成25年分の所得税及び復興特別所得税の重加算税の賦課決定処分 ⇒ 一部取消し
- ②平成25年1月1日から平成25年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分 ⇒ 一部取消し
- 平成29年5月29日裁決
<ポイント>
本事例は、一部の業務に係る収入金額を除く一方当該業務に係る必要経費の一部を加えて作成された試算表は、確定申告義務が生じないことの説明資料として作成されたものとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人は、建築設計業務のほか風俗業を営むことによって多額の利益が生じていることを認識しつつ、風俗業を行っていた複数の店舗のうちの一部の店舗に係る業務(本件独自業務)について、その収入金額を除く一方必要経費の一部を加えた試算表(本件試算表)を作成しているところ、本件試算表は、本件独自業務に係る収入金額を除外するともに、本件独自業務以外の業務において損失が生じているという虚偽の内容を記載することにより、所得金額が生じていないという状況を意図的に作出し、確定申告義務がないことの説明資料として作成されたものといえるから、請求人は、本件独自業務に基因する事業所得の金額を隠ぺいして確定申告書を提出しなかったものと認められる旨主張する。
しかしながら、本件試算表は、請求人が顧問契約の締結を検討していた税理士法人(本件税理士法人)によって作成されたものであるところ、請求人は、本件独自業務に係る売上げを記載した手帳の提示などをせず、本件税理士法人に試算表を作成させたと認められるものの、その後原処分調査までの間に、本件税理士法人に対して本件独自業務を行っていることを述べていることや、原処分調査の際、自ら進んで本件試算表を示して確定申告義務がないとの説明をしたこともなかったことなどを考慮すると、本件独自業務に係る収入金額を申告しないという意図を有していたとか、所得金額が生じない状況を意図的に作出したものとは認められず、本件試算表の作成は、請求人による隠ぺい、仮装と評価すべき行為に該当するとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 収入金額の一部が計上されていない試算表を作成した行為は、隠ぺい、仮装と評価すべき行為に該当するとは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2018年2月23日
相続税の法定申告期限までに判明した相続財産のみでも、遺産に係る基礎控除を超える場合には、その把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかった場合、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」はないとした事例
- 平成27年9月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分
- 棄却
- 平成29年6月15日裁決
<ポイント>
本事例は、相続税の法定申告期限までに判明した相続財産だけで遺産に係る基礎控除を超える場合、相続税の期限内申告書を提出しなければならないと解するのが相当であり、全ての相続財産を反映した相続税の申告書を作成できなかったとしても、「正当な理由」には該当しないと判断したものである。
<要旨>
請求人らは、期限内申告書を提出しなかったのは、法定申告期限において、被相続人が受け取るべき損害賠償金の額が確定しておらず、全ての相続財産を反映した相続税の申告書を作成することができなかったためであるから、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」がある旨主張する。
しかしながら、納税者が相続財産の全容を把握するため、種々の調査をし、情報入手の努力をした結果、法定申告期限までに相続財産の一部しか判明しなかったとしても、その判明した部分だけで遺産に係る基礎控除額を超える場合には、納税者は、判明した相続財産につき期限内申告書を提出しなければならず、納税者が、法定申告期限までに把握した相続財産の価額が遺産に係る基礎控除額を超えることによって相続税の申告書の提出を要すると認識し、又は認識し得た場合において、その把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかった場合には、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められないと解するのが相当であるところ、請求人らは、法定申告期限までに、相続税の申告について相談した税理士から相続税の申告が必要である旨の説明を受けるとともに、相続した土地の価額のみで基礎控除額を超えることを認識していたのであるから、相続税の申告が必要であることを認識していたものと認められる。
したがって、請求人らが期限内申告書を提出しなかったことについて、同項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
2018年2月16日
当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認められるものの、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動を認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成19年分から平成24年分までの所得税並びに平成25年分の所得税及び復興特別所得税の重加算税の各賦課決定処分、平成19年1月1日から平成25年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成28年7月4日裁決
<ポイント>
本事例は、事業所得を秘匿した内容虚偽の所得税の確定申告書の提出など、当初から所得を過少に申告することを意図して行われたものと認められるものの、請求人が事業所得を秘匿するためにあえて帳簿を作成しなかったとまでは断定し難い上、請求人の営む事業に関するその余の行為においても、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動を見いだすことはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人は、請求人の営む事業(本件事業)で多額の利益が生じており、当該利益は帳簿書類を作成し確定申告をすべき金額であることを十分に認識していながら、債務弁済や利殖のために税を免れることを意図し、その意図に基づいて本件事業に係る帳簿書類をあえて作成せずに、7年間にわたって本件事業に係る多額の収入金額を一切記載しない内容虚偽の所得税等の確定申告を行うとともに、消費税等についてあえて申告していなかったものと認められるのであって、これら請求人の一連の行為は、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告等をしたものと認められるから、請求人は、国税通則法第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部の隠ぺいを行った旨主張する。
しかしながら、請求人が、所得税等の確定申告に際し、本件事業に係る所得を全て秘匿して、給与所得及び株式等に係る譲渡所得等のみを記載した内容虚偽の確定申告書を提出し、本件事業に係る所得を申告しなかったこと、また、本件事業に係る収入等につき消費税等の申告をしなかったことは、当初から所得を過少に申告する意図、又は法定申告期限までに申告しないことを意図して行われたものと認めるのが相当であるものの、請求人が本件事業に関する正当な収入金額、必要経費及び所得金額を秘匿するためにあえて帳簿を作成しなかったとまでは断定し難い上、審判所の調査によっても、本件事業に関する請求人のその余の行為において、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動などを見いだすことはできない。
したがって、原処分庁が主張する請求人の行為は、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動とは評価することができないものであり、請求人の所得税等及び消費税等について、重加算税を賦課することはできないものといわざるを得ない。
★リンクはこちら ⇒ 当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認められるものの、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動を認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2017年8月9日
当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認定した事例
- 平成21、22、24年分の所得税並びに平成25年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分 棄却
- 平成21年1月1日から平成24年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分 棄却
- 平成28年9月30日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、消費税等の負担を免れるため、長年にわたり、農産物等の販売金額を過少に記載した下書用の収支内訳書を作成し、これを市の申告相談で市職員に提示することにより、同職員をして販売金額を過少に記載した収支内訳書及び確定申告書を作成させ続けていたとして、重加算税の賦課要件を満たすとしたものである。
<要旨>
請求人は、自身が下書用の収支内訳書を作成した行為は単なる過少申告行為であり、隠ぺいしようという確定的な意図の下に行った申告ではなく、隠ぺい又は仮装に該当する行為はないから、国税通則法第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する重加算税の賦課要件は満たされない旨主張する。
しかしながら、請求人は、消費税等の負担を免れるため、7年間という長期間にわたり、農産物及び肉用牛(農産物等)の販売年間取引実績表等によってその販売金額の合計額が1千万円を超えていることを認識していたにもかかわらず、その合計額が1千万円を超えないよう、農産物等の販売金額を過少に記載した下書用の収支内訳書を作成し、これを市の申告相談で市職員に提示することによって、同職員をして農産物等の販売金額を過少に記載させ、その合計額がいずれも1千万円以下となる収支内訳書及び確定申告書を作成させ続けていたものと認められる。
したがって、請求人は、当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認められるのであるから、国税通則法第68条第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすというべきである。
2017年8月7日
e-Taxソフト等のメンテナンス終了について
国税庁が提供しているe-Taxソフト等について、e-Taxソフト等と組み合わせているインストール用ファイルに不具合が発見されたためメンテナンスを実施していたが、平成29年6月23日(金)に全てのインストール用ファイルのメンテナンスが終了した。
詳細は「ダウンロード再開対象一覧」をご覧のこと。
e-Taxソフト等をご利用になる場合は、最新版のインストーラをダウンロードすること。
【平成29年6月6日以前からe-Taxをご利用いただいている方へ】
6月6日(火)以前に、e-Taxソフト等をインストールされた方で、新たにe-Tax ソフトをインストールまたはバージョンアップしてe-Taxを利用する場合には、既にパソコンに保存されているインストール用ファイル(削除対象ファイル一覧)は実行せずに、確実に削除いただいた上で、6月12日(月)以降、e-Taxホームページから提供される最新版の「e-Taxソフト(共通プログラム)インストーラ」等をダウンロードまたはバージョンアップすること。
★リンクはこちら ⇒ e-Taxソフト等のメンテナンス終了について
2017年6月26日
相続財産である各預金口座を隠ぺいし、秘匿しようという確定的な意図、態勢の下に、計画的に相続税の申告書を提出しなかったとまではいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
- 平成24年11月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成28年4月25日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が、相続に関する原処分庁の照会に対して被相続人名義の各預金口座の存在を回答せず、相続税調査の初期においても上記回答に沿った申述するなど、当該各預金口座の存在を隠した事実は認められるものの、これらの行為をもって、隠ぺい又は仮装の行為と評価することは困難であるなどとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、被相続人が、生前、同人名義の各預金口座の存在を原処分庁に容易に知り得ない状況を作出するとともに、請求人に対して当該各預金口座は申告する必要はないと指示しており、請求人が、その意図を十分に理解して、当該各預金口座を記載しない「相続についてのお尋ね」(本件お尋ね回答書)を原処分庁に提出するとともに、原処分庁所属の職員に対しても、その記載に沿った申述を行った後、その存在を把握されるに至って、当該職員から指摘された口座についてのみ段階的にこれを認める行為を繰り返したのであるから、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する隠ぺい又は仮装の事実がある旨主張する。
しかしながら、無申告加算税に代えて重加算税を課す場合、法定申告期限の前後を含む、外形的、客観的な事情を合わせ考えれば、真実の相続財産を隠ぺいし、秘匿しようという確定的な意図、態勢の下に、計画的に納税申告書を提出しなかったときには、重加算税の賦課要件を満たしていると解するのが相当である。
これを本件についてみると、請求人は、相続税の法定申告期限後において、当初、当該各預金口座の存在を隠す申述をしているものの、当該職員から指摘されるとその存在を認めており、当該各預金口座を隠す態度を一貫していたとはいえない上、当該各預金口座が発見されるのを防止するなど積極的な措置を行っていないことからすれば、本件お尋ね回答書の提出及び当該各預金口座を隠していたことを、隠ぺい又は仮装と評価するのは困難である。
そして、このほか、請求人が、法定申告期限の前後において、積極的な隠ぺい又は仮装の行為を行っていないことからすれば、法定申告期限経過時点において、相続税の調査が行われた場合には、積極的な隠ぺい又は仮装の行為を行うことを予定していたと推認することはできない。
したがって、請求人は、当該各預金口座を隠ぺいし、秘匿しようという確定的な意図、態勢の下に、計画的に相続税の申告書を提出しなかったとまではいえないから、重加算税の賦課要件を満たさない。
★リンクはこちら ⇒ 相続財産である各預金口座を隠ぺいし、秘匿しようという確定的な意図、態勢の下に、計画的に相続税の申告書を提出しなかったとまではいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例
2017年2月13日
太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したと認めることはできないとした事例
<ポイント>
本事例は、太陽光発電設備に係る請求書を請求人が作成したことについて争いはなく、その請求書の欄外に工事完了は課税期間の末日までとする旨記載されていたとの事実関係の下、請求人がこのような請求書を作成したことをもって太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したとはいえないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が太陽光発電設備の取得費を課税仕入れの対価の額に含めたことについて、請求人は、課税期間内に太陽光発電設備の設置工事(本件工事)が完了しないことを十分認識していたにもかかわらず、本件工事が課税期間の末日である平成26年3月31日までに完了する旨記載した内容虚偽の請求書(本件請求書)を作成したのであるから、太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したものというべきである旨主張する。
しかしながら、本件請求書は、飽くまで本件工事の代金を請求する書面であって、太陽光発電設備の引渡しに係る書面ではない上、本件請求書が平成26年1月31日付で作成されていることからすれば、「工事完了は3月31日までとする」との記載は、工事完了の予定日が記載されたものとみるほかなく、請求人が本件請求書を作成したことをもって太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したと認めることはできない。
★リンクはこちら ⇒ 太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したと認めることはできないとした事例
2017年2月10日
死亡保険金の一部を故意に相続税の申告の対象から除外したものとまでは認め難いとした事例
平成24年9月相続開始に係る
- 相続税の重加算税の賦課決定処分 一部取消し
- 更正処分及び重加算税の賦課決定処分 全部取消し
- 平成28年5月20日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が死亡保険金の一部を申告しなかったことについて、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人は、11口の死亡保険金を自ら受領しそのうち4口は当初申告しており、これらの死亡保険金全てを相続税額の計算の基礎とすべきことを認識していたと認められるから、その余の7口の死亡保険金(本件各無申告保険金)を受領した事実を隠ぺいする意図があったと推認されることや、調査担当職員に対し、本件各無申告保険金についても申告したと認識していた旨の虚偽の申述をしたことなどを総合考慮すると、本件各無申告保険金を当初申告から除外したことは、課税要件事実を隠ぺいしたところに基づくものである旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件各無申告保険金をいずれも請求人名義の預金口座への振込送金により受領した上、調査の際には、調査担当職員からの求めに応じて、当該預金口座に係る預金通帳等を逡巡なく提示しているのであって、本件各無申告保険金の発見を困難ならしめるような意図や行動はうかがわれない。
また、請求人が、調査担当職員から本件各無申告保険金の申告漏れを指摘されると、特段の抗弁をすることなく当該事実を認めており、修正申告の勧奨に応じて遅滞なく修正申告をしていることにも照らせば、本件各無申告保険金を故意に当初申告の対象から除外したものとまでは認め難い。
これらによれば、請求人が、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものと認めることはできないから、本件各無申告保険金を当初申告の対象に含めなかったことが、課税要件事実の隠ぺい、仮装に基づく過少申告であるとは認められない。
★リンクはこちら ⇒ 死亡保険金の一部を故意に相続税の申告の対象から除外したものとまでは認め難いとした事例
2017年2月9日
生命保険金及び生命保険契約に関する権利の一部を故意に相続税の申告の対象から除外したものとは認め難いとした事例
平成24年12月相続開始に係る相続税の
- 重加算税の賦課決定処分 一部取消し
- 更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分 全部取消し
- 平成28年5月13日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が生命保険金等の一部を申告しなかったことについて、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものとは認めることができないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、生命保険金及び生命保険契約上の権利が相続税の計算の基礎となる財産であることを十分に認識しながら、生命保険契約の一部のみを申告した一方、関与税理士に対して5口の保険契約(本件各保険)に関する書類を提出せず、これらを申告しなかったことは、当初から課税標準等を過少に申告することを意図して、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をし、その意図に基づく過少申告をしたものと認められる旨主張する。
しかしながら、請求人は、本件各保険の契約締結に関与していないこと、相続開始の約4か月後に保険会社から教示を受けるまでは、本件各保険の2口について、相続に起因する保険金の支払請求手続ないし契約者等の変更手続の必要性を認識しておらず、保険会社から促されて受動的にこれらの手続を行ったものとみられること、当初申告後に保険会社から連絡を受けるまでは、本件各保険の3口の存在を認識していなかったことがうかがわれることに加え、当初申告書の作成過程で関与税理士に対し相続財産の計上漏れを指摘して訂正を求めるなど、正確な申告を行う姿勢を示していたこと、原処分庁の調査担当職員から本件各保険の申告漏れを指摘された後、遅滞なく修正申告に応じていることに照らせば、請求人が、本件各保険を故意に当初申告の対象から除外したものとは認め難い。
したがって、請求人が、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものとは認めることができない。
★リンクはこちら ⇒ 生命保険金及び生命保険契約に関する権利の一部を故意に相続税の申告の対象から除外したものとは認め難いとした事例
2017年2月8日
相続財産である現金の申告漏れについては、過少申告の意図を外部からもうかがい得る請求人の行為の結果としてなされたものと認定した事例
- 平成24年10月相続開始に係る相続税の過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分
- 一部取消し
- 平成28年4月19日裁決
<ポイント>
本事例は、相続財産である現金の申告漏れについて、請求人は、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたものと認められるとして、重加算税の賦課要件である「隠ぺい」によると判断したものである。
<要旨>
請求人は、関与税理士に対し、現金の存在及びその大まかな額の分かる資料を提出しており、申告すべき現金の額について関与税理士の税務的な判断に任せていたことから、重加算税の賦課要件である「隠ぺい」といわれるような行為はなかった旨主張する。
しかしながら、請求人は、被相続人の財産を管理しており、相続開始日における多額の現金が相続財産に当たることを知っていたことなどから、当初から現金を過少に申告することを意図し、その意図に基づき多額の現金の存在につき関与税理士に敢えて秘匿し、手元に残っていた現金は存在しない旨を示す書面を関与税理士に提出するなどして、その結果、関与税理士に現金を過少に記載した申告書を作成させて原処分庁に提出したものである。
したがって、請求人は、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたものと認められるから、現金に関する申告漏れについては、重加算税の賦課要件である「隠ぺい」によるものと認められる。
★リンクはこちら ⇒ 相続財産である現金の申告漏れについては、過少申告の意図を外部からもうかがい得る請求人の行為の結果としてなされたものと認定した事例
2017年2月6日
請求人に対する決定処分は、違法な調査に基づいて行われたものではないとされた事例
- 平成21年分所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分並びに平成25年分所得税及び復興特別所得税に係る無申告加算税の賦課決定処分
- 棄却
- 平成28年5月20日裁決
<ポイント>
本事例は、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越しのみを求めるための申告書を提出できる期限は、その申告書を提出することができる日から5年を経過する日までとした申告指導等に誤りはないとしたものである。
<要旨>
請求人は、原処分庁の行った平成21年分の所得税の決定処分(本件決定処分)は、①国税通則法(通則法)第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定する調査結果の説明を口頭で行っていないなど、調査終了の際の手続が不十分であること、②平成20年分の所得税につき、少なくとも法定申告期限から7年間は期限後申告が可能であったにもかかわらず、原処分庁が請求人に対して、法定申告期限から5年間が期限後申告書を提出できる期限であるとの指導(本件申告指導)をし、請求人は、不当な本件申告指導により、平成20年分の所得税の期限後申告書の提出を制限され、結果、平成21年分の所得税において、前年分の先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除が不可能な状態を強いられ、その後に本件決定処分がなされたという事情があることから、通則法第25条《決定》に基づく適法な調査によるものとはいえず、取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、上記①の主張について、本件における調査手続には、課税処分を取り消すべき違法な点はなく、また、上記②の主張について、請求人の平成20年分の所得税の期限後申告書は、その申告書を提出できる日から5年を経過する日が提出できる期限であると解されるところ、本件申告指導を行った時点において、既に当該期限を経過していたのであるから、本件申告指導により平成20年分の期限後申告を行う権利を制限されたとする請求人の主張はその前提を欠く。
したがって、本件決定処分は、通則法第25条に規定する「調査」に基づいて適法に行われたものであり、取り消すべき違法はない。
★リンクはこちら ⇒ 請求人に対する決定処分は、違法な調査に基づいて行われたものではないとされた事例
2017年2月2日
重加算税の額の基礎となる税額は、過少申告加算税の基礎となるべき税額から、その税額の基礎となるべき税額で隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額を控除した税額となるところ、控除後の税額は零となることから、過少申告加算税の額を超える部分の金額は違法であるとした事例
平22.7.1から平23.6.30までの事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分
一部取消し
平成28年2月4日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が当初申告において組合損益に架空経費を計上し、これを基に組合損益の分配額を計上していたが、更正処分においては、組合損益の分配割合は零と認定され、この分配割合の変更については隠ぺい又は仮装の事実はないことから、重加算税の基礎となる税額は零と計算されるとしたものである。
<要旨>
請求人は、組合事業に係る組合損益の分配割合につき、更正処分においては当該組合事業に係る不動産の登記名義の割合を用いて算定しているところ、重加算税賦課決定処分においては、架空雑費(本件雑費)の金額を各組合員の出資金額の割合を用いて算定しており、計算方法の一貫性を欠くと主張する。
しかしながら、請求人は本件雑費を含む組合損益を本件雑費の割合(本件雑費割合)に応じて各組合員に分配した損益分配表に基づいて申告したのであるから、原処分庁が本件雑費を各組合員に割り付けるに当たり、本件雑費割合をよりどころとしたこと自体は何ら不合理ではない。
もっとも、国税通則法第68条《重加算税》第1項括弧書及び同法施行令第28条《重加算税を課さない部分の税額の計算》第1項の規定により、重加算税の計算の基礎となる税額は、増差税額全体から隠ぺい又は仮装されていない事実のみに基づいて更正があったものとした場合の納付すべき税額を控除して算出するとされているところ、損益の分配割合に誤りがあったことについては、隠ぺい又は仮装は認められないため、①「更正処分に基づく増差税額全体」から②「損益の分配割合に誤りがあったことのみに基づいて更正があったものとして算出した税額」を控除して計算することとなるが、①と②は同額であることから、重加算税の計算の基礎となる税額は零円となる。したがって、増差税額の全部が過少申告加算税の賦課対象となり、これを前提に請求人の加算税額を計算すると原処分額が過大となるから、当該過大部分は違法である。
2016年11月30日
無申告加算税に代えてなされた重加算税の賦課決定処分につき、事実を隠ぺいし、その隠ぺいされたところに基づき法定申告期限までに申告書を提出しなかったものとは認められないとして、同処分を全部あるいは一部取り消した事例
平成24年3月相続開始に係る相続税の
①更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分
②重加算税の賦課決定処分
①全部取消し・②一部取消し
平成28年3月30日裁決
<要旨>
原処分庁は、原処分に係る調査時の被相続人の子ら(本件子ら)の申述等を根拠に、本件子らの間では、遅くとも法定申告期限までに、相続税の申告をしない旨の合意が成立しており、かかる合意に基づき、法定申告期限までに申告書を提出しなかったものであるから、請求人らが、事実を隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づき法定申告期限までに申告書を提出しなかったことは明らかである旨主張する。
しかしながら、本件子らの申述等を含む本件の全証拠を総合しても、本件子らの間で、法定申告期限までに相続税の申告をしない旨の意思の合致があったとはにわかに認め難い。
また、本件子らには、事前通知後、原処分庁の調査に積極的には協力しない旨の漠然とした合意が形成されていたことが認められ、調査の際、被相続人が証券会社との取引があった事実を秘匿するため、虚偽の答弁や香典メモの破棄行為という明らかな証拠隠滅行為に及んだことなど、相続財産を隠ぺいし、相続税を無申告で済ませようとする意図をうかがわせる一定の事情が認められるが、これらの事情は、いずれも、法定申告期限から約1年8月が経過した後の調査時点における言動等であって、事前準備を要するような計画的なものではなく、とっさにとった行動とも評価し得るものであり、その後直ちに証券会社との取引の事実を認め、遅滞なく期限後申告に応じていることから、相続財産を隠ぺいする態度、行動をできる限り貫こうとしたとまではいえない。
したがって、請求人らが、相続税を申告しない意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに申告書を提出しなかったとまでは認められないから、事実を隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づき、法定申告期限までに申告書を提出しなかったものとは認められない。
2016年11月28日
納税の猶予不許可処分をした原処分庁の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったと認めることはできないとした事例
納税の猶予不許可処分
棄却
平成28年1月13日裁決
<要旨>
請求人は、納税の猶予の申請を許可するか否かは納税者の事業実態として納税を困難にしている事実の存否により判断されるべきところ、請求人には当該事実が存在し、国税通則法第46条《納税の猶予の要件等》第2項第5号の要件を充足していたとして、原処分庁が納税の猶予を不許可とした処分(本件不許可処分)には裁量権の範囲の逸脱又は濫用があり、違法である旨主張する。
しかしながら、納税の猶予の許否は税務署長の裁量的判断に委ねられていると解するのが相当であるところ、当該裁量基準を示した「納税の猶予等の取扱要領」(猶予取扱要領)の定めが合理性を有するものである場合には、税務署長の判断が当該取扱要領の定めに従っている限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとの評価を受けることはない。
これを本件についてみると、本件に関する猶予取扱要領の定めは合理的であり、当該定めに従えば、請求人には国税通則法第46条第2項第5号(第4号類似)に該当する事実があったということはできないから、本件不許可処分をした原処分庁の判断に、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったと認めることはできない。
★リンクはこちら ⇒ 納税の猶予不許可処分をした原処分庁の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったと認めることはできないとした事例
2016年11月25日
異議申立て時には存在していなかった処分が、異議決定までになされた場合には、その時点で異議申立ての対象とされた「処分」が存在するに至ったのであるから、それ以降、当該異議申立ては適法なものとなり、異議申立て固有の瑕疵は治癒されたものと解するのが相当であるとした事例
売却決定処分、公売公告
棄却、却下
平成27年12月1日裁決
<要旨>
原処分庁は、不動産等の売却決定処分(本件売却決定処分)に対する異議申立ては、異議申立ての時点で存在しない「処分」を対象とするものであって、明らかに不適法である旨主張するが、異議申立ての対象とされた本件売却決定処分が、異議申立てについての決定がされるまでになされた場合には、その時点で異議申立ての対象とされた「処分」が存在するに至ったのであるから、それ以降、当該異議申立ては適法なものとなり、異議申立て固有の瑕疵は治癒されたものと解するのが相当である。
2016年10月6日
相続財産である家族名義預金を申告せず、税務調査においても根拠のない答弁を行った納税者について、国税通則法第68条に規定する重加算税の賦課要件を満たすとした事例
平成23年8月相続開始に係る相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分
一部取消し・棄却
平成27年10月2日裁決
<要旨>
請求人らは、被相続人の子名義の定期預金11口(本件各定期預金)は被相続人が生前に被相続人の子供ら(本件子供ら)に贈与したものであり、これを申告しなかったことにつき、隠ぺい又は仮装行為は存しない旨主張する。
しかしながら、被相続人の妻(本件妻)は、本件各定期預金を相続財産と認識しながら、これを関与税理士に告げず、本件各定期預金の記載がない遺産分割協議書を添付して相続税の過少申告を行い、その後の税務調査においても、本件各定期預金が、被相続人の生前既に贈与されたものであるなどとする根拠のない申述をして、真実の相続財産を隠ぺいする態度を貫こうとしたものである。
このような行為は、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上で、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告を行ったものと認められる。
また、本件子供らは、相続財産の調査、申告を本件妻に委任していたが、本件各定期預金のうちそれぞれの名義の定期預金が相続財産であることを認識しながら、これを関与税理士に告げず、本件妻とともに相続税の過少申告を行っており、かつ、本件子供らに受任者である本件妻の選任及び監督に過失がないと認められる特段の事情はないから、本件子供らは、本件各定期預金の全部の隠ぺいがあったと認められる。
★リンクはこちら ⇒ 相続財産である家族名義預金を申告せず、税務調査においても根拠のない答弁を行った納税者について、国税通則法第68条に規定する重加算税の賦課要件を満たすとした事例
2016年10月5日
請求人の法定申告期限経過前の行為及び調査に対する虚偽答弁、虚偽証拠の提出を総合判断すると、本件では、隠ぺい仮装があったと認めることができ、無申告加算税に代わる重加算税の賦課要件を充足すると認定した事例
①平成18年分~平成24年分の所得税の各更正処分
②平成18年分、平成20年分及び平成22年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分
③平成19年分、平成21年分、平成23年分及び平成24年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分
④平20.1.1~平22.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分
⑤平23.1.1~平24.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに重加算税の各賦課決定処分
①③④⑤棄却 ②一部取消し
平成27年10月30日裁決
<要旨>
請求人は、法定申告期限までに所得税の確定申告書を提出しなかったのは請求人の税知識の不足により失念していたからであり、請求人は外国人研修・技能実習制度の送出し機関であるK社の従業員であるから、原処分庁の前回の調査結果に従って、K社から証明書の交付を受けた上で給与所得等に係る所得税の期限後申告書を提出しているなどとして、当該期限後申告書の提出並びに原処分庁の今回の調査に基づく更正について、重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
しかしながら、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない場合であっても、納税者が当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかった場合には、重加算税の賦課要件が満たされると解するのが相当であるところ、請求人は、自身が事業主体であったにもかかわらず、①当該事業から生ずる収入を、K社の肩書が付された口座に振込入金させた上で毎月ほぼ全額を現金で出金し、金員の流れを容易に把握できないようにすることによって、K社に帰属するものであると装い、②多額の事業収入を得ていながら5年間にわたり無申告を続け、③原処分庁の前回調査を受けても、K社に内容虚偽の証明書を作成・提出させるなどの工作を行って、事業主体は飽くまでK社にあり自身は給与を得ていたと装うなどしていることからすると、請求人は、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたといえるから、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったことについては、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすというべきである。
★リンクはこちら ⇒ 請求人の法定申告期限経過前の行為及び調査に対する虚偽答弁、虚偽証拠の提出を総合判断すると、本件では、隠ぺい仮装があったと認めることができ、無申告加算税に代わる重加算税の賦課要件を充足すると認定した事例
2016年8月2日
原処分庁は、被相続人が各同族会社に対する債権を放棄していないのに、各同族会社の(実質的)経営者である請求人が債権放棄があったとする経理処理をした上で相続財産からこれら債権を除外して相続税の申告をしたとして重加算税を賦課したが、上記債権の一部は被相続人が実際に債権放棄をした可能性が認められるとして、原処分庁の事実認定を否定した事例
平成23年12月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
一部取消し
平成27年10月1日裁決
<要旨>
原処分庁は、請求人は各同族会社(本件各会社)の経理処理を自由にできる自身の立場を利用して、被相続人からの債務免除等の事実がないにもかかわらず、本件各会社の帳簿において事実に基づかない各仕訳を行い、被相続人からの借入金の帳簿上の残高を減少させたものと認められるから、請求人のこのような行為は、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」たことに該当する旨主張する。
しかしながら、請求人と被相続人との間で請求人が答述するような協議があった可能性を十分に認めることができることを前提にすると、当該各仕訳の一部は、当該借入金の額を減少させるという被相続人の意思に基づき行われた可能性が十分に認められることから、当該各仕訳に係る請求人の行為は、相続税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、故意に脱漏し、あるいは故意にわい曲したものであるとまでは認められない。
2016年7月27日
収支内訳書に虚偽記載をしただけでは、隠ぺい仮装があったとは認められないと判断した事例
①平成20年分~平成23年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分
②平21.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分
③平成22年分の所得税の過少申告加算税の賦課決定処分
④平21.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の無申告加算税の各賦課決定処分
①②一部取消し ③④棄却 平成27年7月1日裁決
<要旨>
原処分庁は、請求人が、過少申告の意図に基づき、①得意先に対する売上金額を記載したメモの一部を破棄したこと、②平成18年分の所得税額を試算した際のメモと同様の原処分に係る各年分のメモを破棄したこと、③正確な収入金額等を容易に確認できたにもかかわらず、収支内訳書に根拠のない額を記載したことという一連の行為は、当初から所得等を過少に申告する意図であったことを外部からもうかがい得る特段の行動に当たり、重加算税の賦課要件を充足する旨主張する。
しかしながら、請求人に過少申告の意図があったことは認められるものの、上記①のメモについては、売上金は全て振り込まれ、しかもその入金のあった預金口座の通帳は保存されていたこと等からすると、請求人は当該メモ書を保存する必要がなくなったから廃棄した可能性が十分に考えられること、上記②のメモについては、そのようなメモを作成していた事実が認められないこと、上記③については、収支内訳書に根拠のない額を記載する行為は過少申告行為そのものであることから、原処分庁が主張する請求人の行為は、当初から所得等を過少に申告する意図であったことを外部からもうかがい得る特段の行動には当たらず、重加算税の賦課要件を充足しない。
★リンクはこちら ⇒ 収支内訳書に虚偽記載をしただけでは、隠ぺい仮装があったとは認められないと判断した事例
2016年5月23日
事前通知なし調査について争われた事例
①平成22年分~平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分
②平成24年分の所得税の更正処分
③平成24年分の所得税の過少申告加算税の賦課決定処分
④平20.1.1~平24.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分
①②一部取消し、③④棄却 平成27年7月21日裁決
<ポイント>
本事例は、質問検査権の行使を行っていなければ、事前通知なく納税者方に赴いても違法にはならないとしたものである。
<要旨>
請求人は、原処分に係る調査の担当職員(本件調査担当者)が請求人の自宅兼事業所に臨場(本件臨場)する前に請求人に対し、国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項に規定する通知(事前通知)をしなかったことが、原処分を取り消すべき事由に該当する旨主張する。
しかしながら、本件調査担当者は、本件臨場において、事前連絡をしないで請求人の自宅兼事業所を訪れ、請求人であることを確認した上で、身分証明書と質問検査章を提示し、所属と氏名を述べ、税務調査のために来訪した旨を伝えているが、請求人の課税標準等を認定する目的で、請求人に質問し、又はその事業に関する帳簿、書類その他その調査事項に関連性を有する物件の検査をした事実は認められず、質問検査権の行使を行ってはいないから、本件臨場の前に請求人に対し事前通知をしなかったことは、原処分を取り消すべき事由には該当しない。
★リンクはこちら ⇒ 事前通知なし調査について争われた事例
2016年5月20日
処分理由の提示が争われた事例
平成22年11月相続開始に係る相続税の更正処分
棄却 平成27年9月28日裁決
<ポイント>
本事例は、処分通知書に記載すべき理由は、行政庁の不服申立ての抑制及び不服申立ての便宜という理由提示の制度趣旨を充足する程度に記載すれば不備はないとしたものである。
<要旨>
請求人は、相続税の更正処分に係る通知書(本件通知書)に記載された処分理由には、課税価格に加算される本件他の相続人らの相続時精算課税適用財産及び歴年課税分の贈与財産(本件贈与財産)の価額のそれぞれの合計額が記載されているものの、その明細が記載されておらず、かかる記載内容では、処分の基礎となる具体的な事実を知りえず、不服申立ての便宜を図った行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》の理由提示の趣旨に反することから、原処分を取り消すべき違法がある旨主張する。
しかしながら、本件贈与財産の課税価格の合計額への加算に係る提示理由には、本件贈与財産について、それぞれ合計額が記載されているところ、本件贈与財産の合計額が分かれば、課税価格の合計額を算出することができるのであるから、当該記載により、原処分庁が相続税額を算出した過程を示したものといえる上に、そもそも、課税庁は、相続時精算課税適用財産の価額及び暦年課税分の贈与財産の価額を課税価格の合計額に加算するに当たっては、他の共同相続人等から提出された申告書の記載又は同人等に対する更正処分の内容等を基に相続税額の計算をするのであるから、この点に課税庁の恣意が入り込む余地は乏しく、合計額のみの記載であっても、行政庁の恣意抑制という見地から欠けるところはない。
さらに、相続時精算課税適用財産の価額及び暦年課税分の贈与財産の価額については、それぞれの合計額が記載されていれば、納税者は課税価格の合計額を算出することが可能であり、記載された合計額と納税者が認識しているこれらの合計額とを比較して、不服申立ての要否を判断することが可能といえるから、処分の名宛人の不服申立ての便宜という見地からも欠けるところはない。
したがって、本件通知書に記載された処分理由は、理由提示の趣旨目的を充足する程度に処分の理由を具体的に明示したものと認めることができ、行政手続法第14条第1項本文の要求する理由提示として不備はないから、原処分を取り消すべき違法はない。
★リンクはこちら ⇒ 処分理由の提示が争われた事例
2016年5月18日
帳簿を作成していない青色申告事業者に対する更正処分の理由付記の程度について、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当することから、理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に記載すればよいとした事例
①平成17年分、平成19年分、平成22年分及び平成23年分の所得税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分
②平成18年分、平成20年分及び平成21年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
③平20.1.1~平20.12.31、平22.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
棄却 平成27年3月30日裁決
<要旨>
請求人は、青色申告者である請求人に対する所得税の更正処分(本件所得税更正処分)に係る通知書(本件更正通知書)には、調査による計数上の記載や処分の結果のみが記載されているだけで、原処分庁の判断根拠が全く記載されておらず、本件更正通知書の理由付記には、本件所得税更正処分を取り消すべき不備がある旨主張する。
しかしながら、請求人は、請求人の事業所得を生ずべき業務について、集計表等を作成するだけで日々の取引を記録する帳簿を作成していないことから、本件所得税更正処分は、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当するところ、原処分庁は、本件更正通知書において、事業所得に係る総収入金額については取引先ごとに取引期間及び年間の売上金額を一覧表で明らかにしており、必要経費については計上漏れとして認定した仕入金額等の支払先及び年間の支払合計金額などを記載していることからすれば、本件更正通知書に記載された理由は、原処分庁の恣意抑制及び納税者の不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的な記載がされていると認められることから、本件所得税更正処分を取り消すべき不備はない。
2015年10月19日
調査手続の違法は修正申告の効果に影響を及ぼさないと判断した事例
①平成20年分、平成21年分及び平成24年分の所得税に係る重加算税並びに平成19年分の所得税に係る過少申告加算税並びに平21.1.1~平21.12.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分
②平成18年分~平成21年分、平成23年分及び平成24年分の所得税の各修正申告並びに平18.1.1~平18.12.31及び平21.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各期限後申告
①棄却 ②却下 平成27年3月26日裁決
請求人は、原処分に係る調査担当職員(本件調査担当職員)が行った調査につき、①国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項に規定する調査対象期間の説明並びに同法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項及び第3項に規定する調査結果の内容の説明や法的効果の教示がなかったことから調査手続に違法があったこと及び②調査対象期間の説明及び調査結果の内容の説明がなかったため、どのような内容か分からない修正申告書及び期限後申告書(本件各修正申告書等)に署名押印して修正申告及び期限後申告(本件各修正申告等)をしたものであり錯誤があったことから、本件各修正申告等は調査手続の違法または錯誤により無効である旨主張する。
しかしながら、そもそも調査手続の違法は、それのみを理由として修正申告及び期限後申告の有効性に影響を及ぼすものではないと解されるから、たとえ調査手続に違法があったとしてもそのことのみで修正申告及び期限後申告が無効となることはない。
また、本件各修正申告書等には、請求人の署名押印がされていることから、本件各修正申告等が請求人の意思に基づいて行われたとの推定ができるところ、①修正申告書及び期限後申告書は具体的な納税義務を発生させるものであるから、内容を確認しないで署名押印をすることは通常あり得ないこと、②本件調査担当職員は調査期間中に調査対象となる税目と年分を請求人に伝えていると認められるから、請求人は調査対象期間を認識していたこと並びに③本件調査担当職員は請求人に調査結果の内容の説明を行ったと認められるから、請求人は調査結果の内容を知っていたと認められ、これらを総合すると、請求人は、税目、年分を認識した上で本件各修正申告書等に署名押印し提出したと認められるのであって、錯誤があったとは認められず、本件各修正申告等は無効とならない。
★リンクはこちら ⇒ 調査手続の違法は修正申告の効果に影響を及ぼさないと判断した事例
2015年10月15日
事前通知に関し調査の単位を明らかにした事例
平成22年分~平成24年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分
一部取消し 平成26年11月13日裁決
<ポイント>
本事例は、国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》の調査は税目と課税期間によって特定される納税義務に係る調査を一の調査とみるべきであることを明らかにしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人に対し、平成24年中に平成21~23年分の所得税の調査(当初調査)を開始しているところ、平成24年分の調査は、当初調査の対象年分に追加したものであるから、平成25年1月1日前から引き続き行われている調査に該当し、経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律の附則第39条《当該職員の質問検査等に関する経過措置》第3項の規定により、国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項の適用はない旨主張し、一方、請求人は、平成24年分の調査は、改正国税通則法施行後に開始されたものであり、同法第74条の9第1項の事前通知が必要であったにもかかわらず、調査担当職員は、電話で「平成24年分の調査を行います。」とのみ通知しただけで、その後においても、改正後の国税通則法に則って通知が行われていないことから、平成24年分の調査は必要な手続要件を満たしておらず、違法である旨主張する。
しかしながら、調査は、納税義務者について税目と課税期間によって特定される納税義務に関してなされるものであるから、当該納税義務に係る調査を一の調査とみるべきであり、請求人に対する平成24年分の調査は、独立した一の調査となり、平成25年1月1日前から引き続き行われている調査には該当せず、国税通則法第74条の9第1項の適用があると認められる。
一方、調査担当職員は、調査の対象税目及び調査の対象期間に加えて、調査の開始時期、調査の場所、調査の目的及び調査の対象となる帳簿書類を請求人に対し通知していると認められ、請求人に対して平成24年分の所得税の調査を行う旨の通知しか行われていないとはいえない。
そうすると、平成24年分の調査の事前通知については、国税通則法第74条の9第1項の適用があるところ、調査担当職員は、同条同項の規定に沿った事前通知を行っており、調査手続に違法とすべき点はない。
★リンクはこちら⇒ 事前通知に関し調査の単位を明らかにした事例
2015年7月28日
滞納法人の破産管財人から債権譲渡の否認を求める訴訟が提起されたことは、国税通則法第77条第3項の「やむを得ない理由」には当たらないとした事例
譲渡担保権者の物的納税責任に関する各告知処分及び債権の各差押処分
却下 平成26年10月22日裁決
<要旨>
国税通則法第77条《不服申立期間》第1項は、不服申立ては、処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には、その受けた日)の翌日から起算して2月以内にしなければならない旨規定するところ、請求人の審査請求は、同項所定の不服申立期間が経過した後に行われたものであり、また、請求人の主張する、訴訟中であることは同条第3項の「やむを得ない理由があるとき」に、徴収担当職員の「全て終了した時点で連絡してもらえば結構です。」との発言は同条第6項の「誤って法定の期間より長い期間を不服申立期間として教示した場合」にそれぞれ当たらないことから、請求人の審査請求は、法定の不服申立期間を経過した後に行われた不適法なものである。
★リンクはこちら⇒ 滞納法人の破産管財人から債権譲渡の否認を求める訴訟が提起されたことは、国税通則法第77条第3項の「やむを得ない理由」には当たらないとした事例
2015年7月23日
輸入貨物に係る消費税及び地方消費税の申告につき、意図的に過少申告することを認識した上で、正規の価格を示す書類を隠匿したものとは認められないと認定した事例
輸入申告に係る消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分
全部取消し 平成26年10月9日裁決
<ポイント>
本事例は、貨物の輸出者から送付されたインボイスに記載された貨物の価格が本来の価格に比し著しく低い金額であったため、輸入貨物に係る消費税等の申告が過少申告になったのであるが、かかる過少申告に事実の隠ぺいは認められないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、機械部品(本件貨物)の輸入に際し、本件貨物の課税価格が輸出者から受領した各書類(本件各書類)に記載された金額であることを認識し、また、本件貨物に係るインボイス(本件インボイス)に記載された金額が現実に支払う金額より著しく過少であり、本件インボイスが課税価格の決定のための資料として不十分であることを認識していたにもかかわらず、本件貨物の輸入申告手続を依頼した通関業者(本件通関業者)に対して本件インボイスのみを送付し、あえて本件各書類を送付しなかったことは書類の隠匿に該当し、さらに、請求人にはこのことが事実を隠ぺいする行為であるとの認識があったのであるから、事実の隠ぺいがあったと認められる旨主張する。
しかしながら、請求人が本件インボイスを本件貨物の輸入申告手続に必要な書類と判断し、本件インボイスのみを本件通関業者に送付したとしても不自然な行動であったとは認められず、また、請求人が本件通関業者が作成する本件貨物の輸入に係る申告書の記載内容を意識した上で本件インボイスのみを送付したとまでは認められない。
さらに、請求人が、本件の調査担当者に対し、本件インボイスのみならず、本件貨物の課税価格が記載された本件各書類も提示していたことを併せ考慮すると、請求人が本件通関業者に対し本件各書類を送付せず、本件インボイスのみを送付したことをもって、事実の隠ぺいがあったとは認められない。
★リンクはこちら⇒ 輸入貨物に係る消費税及び地方消費税の申告につき、意図的に過少申告することを認識した上で、正規の価格を示す書類を隠匿したものとは認められないと認定した事例
2015年7月21日
役務の提供等の完了前に請求書の発行を受ける等、通常と異なる処理を行った行為は、事実を仮装したものと認めた事例
①平23.2.1~平24.1.31の事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分
②4平23.2.1~平24.1.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分
①棄却 ②一部取消し 平成26年10月28日裁決
<要旨>
請求人は、翌期の経費として計上すべき修繕工事等の費用及び備品等の購入費用を当期の経費として計上したことについて、単なる経理処理の誤りで、修繕工事等の一部は事業年度末までに役務の提供が完了しており、また、修繕工事等の費用及び備品等の購入費用が翌事業年度に支払われていることなどからすると、帳簿書類の虚偽記載等には該当しないから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する事実を仮装したものではない旨主張する。
しかしながら、事業年度末までに役務の提供が完了していないにもかかわらず、修繕工事等の役務の提供や備品等の引渡しの完了より前に請求書の発行を受ける等、通常と異なる処理を行うことにより故意に事実をわい曲した請求人の行為は、事実を仮装したものと認められる。
なお、修繕工事等の一部は事業年度末までに役務が完了していることから、当該完了部分については、事実を仮装したものとは認められない。
★リンクはこちら⇒ 役務の提供等の完了前に請求書の発行を受ける等、通常と異なる処理を行った行為は、事実を仮装したものと認めた事例
2015年7月15日
被相続人の妻が被相続人の財産内容を開示しなかった等の事情は、相続人間の主観的事情にすぎないから、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書の「正当な理由」があるとは認められないと認定した事例
平成20年3月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分
一部取消し 平成26年11月7日裁決
<要旨>
請求人は、亡弟(本件被相続人)の相続(本件相続)に係る亡父の相続税の納付義務を承継しているところ、1亡父は、本件被相続人の相続財産の全てを管理していた本件被相続人の妻に対して、相続税法第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》第1項各号に規定する財産(みなし相続財産)を含む相続財産の全容を把握するための明細の提示を依頼したが応じてもらえず、また、2本件被相続人の妻が申し立てた遺産分割調停に係る遺産目録等にはみなし相続財産が記載されていなかったが、記載された財産等に基づいて本件相続に係る相続税の課税価格を計算すると課税価格は基礎控除額を下回ることとなったことから、亡父が相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人が主張する上記1の事情は、相続人相互の人間関係に基因する事情であり、また、上記2の事情は、相続人相互の人間関係によりみなし相続財産の確認ができなかったが、亡父がみなし相続財産を課税価格に加えないことを自己判断して課税価格を計算した結果、課税価格が基礎控除額以下になったというものであるから、相続人相互の人間関係を前提とした亡父の自己判断に係る事情といえる。
そうすると、請求人が主張する事情は、亡父を含む相続人間の主観的事情にすぎず、亡父が相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったということはできないから、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当しない。
2015年7月13日
請求人が主張していない行政手続法第14条に基づく理由の提示につき、審判所の調査の結果、理由の提示に不備があったと認定した事例
①平18.9.1~平19.8.31までの事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分
②平19.9.1~平20.8.31、平21.9.1~平22.8.31、平23.9.1~平24.8.31の各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分
③平19.9.1~平20.8.31、平21.9.1~平22.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分
④平18.9.1~平19.8.31、平20.9.1~平21.8.31の各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平22.9.1~平23.8.31の事業年度の法人税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
⑤平18.9.1~平19.8.31、平20.9.1~平21.8.31、平23.9.1~平24.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平19.9.1~平20.8.31、平21.9.1~平22.8.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分、平22.9.1~平23.8.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
①④⑤棄却 ②③一部取消し 平成26年12月10日裁決
<要旨>
原処分庁は、所得の金額の計算上、法人税の確定申告書において損金の額に算入していた青色欠損金額(当期控除額)を加算されることが更正通知書(本件通知書)に示されていないことについて、当期控除額を加算する理由(本件理由)は、青色申告の承認の取消処分に伴うものであり、法文の規定上明らかであることから、請求人においても容易に認識でき、理由の提示不備の違法はない旨主張する。
しかしながら、行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されることから、更正処分をする際は、当該更正通知書自体に法の要求する程度にその理由を示す必要がある。
よって、本件通知書は、本件理由の提示がなく、本件通知書自体から当期控除額を所得金額に加算する旨を特定し得る程度の理由を示していないことは明らかであるから、本件理由の提示不備の違法があると判断するのが相当である。
なお、本件通知書は、本件理由の提示のないことが更正処分全体の理由の提示を不備なものとする程度に至るとは認められず、また、他に更正処分に係る理由の提示に不備があるとも認められない。
★リンクはこちら⇒ 請求人が主張していない行政手続法第14条に基づく理由の提示につき、審判所の調査の結果、理由の提示に不備があったと認定した事例
2015年7月10日
国税通則法改正に伴うe-Taxを利用した税務代理権限証書の提出
平成27年3月31日に公布された国税通則法の改正を含む「所得税法等の一部を改正する法律」により、税務代理権限証書の様式が改訂される。e-Taxソフトでは、6月15日から順次、新様式の税務代理権限証書(平成27年7月1日以後適用分)の提供が開始されるので、下記のとおり対応のこと。
なお、e-Taxソフト以外の電子申告ソフト等を使用している場合は、各ソフトウェア会社に確認のこと。
1.平成27年6月15日~30日
6月30日までは現行様式の税務代理権限証書を提出する必要がある。
e-Taxソフトでは、税務代理権限証書の提出は、申告書の添付書類として提出する方法と、申請・届出の手続として個別に提出する方法がある。
6月15日以降、下記手続では、申告書に添付書類として選択できる税務代理権限証書が新様式のみとなる。
したがって、6月15日~30日の間は、申告書の添付書類として新様式の税務代理権限証書は選択せずに、「申請・届出」手続の中にある現行様式の税務代理権限証書を選択し、個別に提出すること。
なお、「申請・届出」手続の中の個別提出による税務代理権限証書は、6月15日以降、現行様式と新様式が選択可能になる。
2.平成27年7月1日以降
7月1日以降は、新様式の税務代理権限証書を提出する必要があるが、各手続において添付書類として新様式の税務代理権限証書を選択できるようになる時期が異なる。
下記サービス開始予定日までは、「申請・届出」手続の中にある新様式の税務代理権限証書を選択して個別に提出すること。
サービス 開始予定日 |
区分 | 手続 |
---|---|---|
平成27年9月 | 申請 | 税理士法関係申請 |
個人申告 | 消費税(一般・個人)(簡易・個人) | |
法人申告 | 法人税(連結申告)、法人税(個別帰属額届出書)、復興特別法人税(連結申告) | |
平成28年1月 | 申請 | 納税証明書の交付請求、納税の猶予の申請(H26はH27.3サービス開始)、審査請求事務手続き(H26はH26.9サービス開始) |
個人申告 | 所得税及び復興特別所得税申告、贈与税申告(暦年課税)(相続時精算課税)、消費税(中間・個人) | |
個人申請 | 申告所得税事務手続、法定資料事務手続、資産税事務手続、異議申立事務手続 | |
法人申告 | 酒税納税申告(H26はH26.9サービス開始)、印紙税納税申告(H26はH26.9サービス開始) | |
法人申請 | 法人税事務手続(H26はH27.3サービス開始)、源泉所得税事務手続(H26はH27.3サービス開始)、酒税事務手続(H26はH27.3サービス開始)、諸税事務手続(H26はH27.3サービス開始) |
★リンクはこちら⇒ 国税通則法改正に伴うe-Taxを利用した税務代理権限証書の提出
2015年6月25日
原処分庁が請求人の所得区分及び必要経費を否認して更正処分をした事案について、必要経費性を否認する支出を特定していない理由の提示に不備があると判断した事例
平成21年分~平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分
一部取消し 平成26年9月1日裁決
<ポイント>
本事例は、支出の必要経費性を否認して更正処分をする場合、更正通知書に記載する理由には、否認する支出を特定して記載しなければならないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、更正通知書に記載された処分の理由は行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項本文の法の趣旨が求める程度に記載されていると認められるからその記載に不備はない旨主張する。
しかしながら、更正通知書に記載された必要経費該当性の判断に係る理由のうち旅費交通費及び新聞図書費の一部の費用が必要経費に該当しない旨の理由の記載については、当該必要経費として認められない費用がどの費用(あるいは費用の一部)であるかが特定されておらず、当該費用の内容すら理解できないものであって、要件該当性をおよそ判断できないものであり、摘示された事実からは更正の理由を検証し、その適否について検討することはできない。
そうすると、上記記載が行政手続法第14条第1項の法の趣旨目的を充足する程度に具体的に根拠を明示したとは評価できないから、これらの理由の記載には不備がある。
★リンクはこちら⇒ 原処分庁が請求人の所得区分及び必要経費を否認して更正処分をした事案について、必要経費性を否認する支出を特定していない理由の提示に不備があると判断した事例
2015年5月25日
異議審理手続において異議審理庁が原処分の理由を追加した事案で、原処分庁の手続に違法、不当がないとした事例
平成21年分及び平成22年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分
棄却 平成26年8月1日裁決
<要旨>
請求人は、異議申立てに係る審理は、争点主義を採用し、納税者が違法であると主張している争点についてだけ審理・判断を行うべきであるのに、異議審理庁が異議決定において、新たに、原処分では争いがなかった請求人の不動産所得の金額を算定し、総所得金額が原処分を上回るから原処分は適法であるとして棄却したことは、原処分を取り消すべき不当な事由に当たると主張する。
しかしながら、審査請求の対象は原処分であり、裁決は、原処分が違法又は不当であるときにこれを取り消すものであるところ、異議申立ての審理・判断に仮に瑕疵があったとしても、それは原処分に対する不服申立手続において生じた原処分後の事情であって、そのことによって原処分それ自体が違法又は不当となることはないから、原処分を取り消す理由とはなり得ない。
なお、原処分は、行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》に規定する理由の提示に欠けるところはなく、また、原処分庁が原処分の理由と異なる理由を審査請求で主張することにつき、これを制限する法令はなく、審判所がこれを審理することは、当事者の主張(争点)を審理の対象とするものであるから、争点主義的運営にも反するものではない。
★リンクはこちら⇒ 異議審理手続において異議審理庁が原処分の理由を追加した事案で、原処分庁の手続に違法、不当がないとした事例
2015年5月21日
原処分庁が、請求人自身の面接を経ずに無申告加算税の賦課決定処分をした事案について、国税通則法第66条第5項の「調査」は、机上調査も含む広い概念であることを明らかにした事例
平成24年分の贈与税に係る無申告加算税の賦課決定処分
棄却 平成26年7月28日裁決
<ポイント>
本事例は、国税通則法第66条《無申告加算税》第5項に規定する「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について…決定があるべきことを予知してされたものでないとき」の「調査」の意義について明らかにしたものである。
<要旨>
請求人は、国税通則法(通則法)第66条《無申告加算税》第5項に規定する「調査」とは、外部から認識することができる面接調査、すなわち質問検査権の行使をすることであり、部内資料の収集のような手続は「調査」には当たらない旨、また、この点をおくとしても、原処分庁の担当職員(本件担当者)は、請求人の代わりに税務署を訪れた税理士(本件税理士)に税務代理権限証書を提出させていないので、面接時には、本件税理士が請求人に代理して本件担当者の質問調査権の行使を受けたことにならないから、請求人に対する「調査」があったとは認められない旨主張する。
しかしながら、通則法第66条第5項に規定する「調査」とは、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て決定に至るまでの思考、判断を含む包括的な概念であり、税務調査全般を指すものと解されるところ、①原処分庁の職員は、署内資料の検討等により、請求人の贈与税の申告が必要であると見込まれると判断していること、②本件担当者は、請求人の贈与税の申告について、本件税理士に面談し、資料の交付や説明をしていることなどが認められるから、これら一連の行為は、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程であると認められる。
また、面接時には、本件税理士が請求人に代理して本件担当者の質問調査権の行使を受けたことにならないという点については、請求人の本件税理士への連絡、本件税理士と本件担当者の面接の状況等からすると、少なくとも、本件税理士が、請求人に係る贈与税の申告の要否についての税務署での面接において、請求人に代理又は代行して応答し、面接の内容を請求人に報告するという内容の委任契約が成立していたものと認められる。
以上のことから、本件においては、通則法第66条第5項に規定する「調査」があったと認められる。
★リンクはこちら⇒ 原処分庁が、請求人自身の面接を経ずに無申告加算税の賦課決定処分をした事案について、国税通則法第66条第5項の「調査」は、机上調査も含む広い概念であることを明らかにした事例
2015年5月19日
新賃借人が旧賃借人の敷金を承継することを賃貸人が承諾した等の特段の事情がある場合、敷金返還請求権は新賃借人に承継され、新賃借人が目的物を明け渡した時に、新賃借人に対する被担保債権を控除した残額について発生するところ、原処分庁は敷金返還請求権の取立てを完了していることから、差押処分は消滅しているとした事例
各敷金返還請求権の各差押処分
却下 平成26年4月23日採決
<要旨>
原処分庁が行った各敷金返還請求権(本件各敷金返還請求権)の各差押処分(本件各差押処分)について、本件各敷金返還請求権は、旧賃借人である滞納法人から新賃借人である請求人に承継することを賃貸人が承諾した等の特段の事情があることから、滞納法人から請求人に承継され、請求人が目的物を明け渡した時に、請求人の被担保債権を控除した残額につき発生するものである。
そして、本件各敷金返還請求権は、既に原処分庁が取立てを完了していることが認められ、本件各差押処分はその目的を完了して消滅している。
ところで、行政処分の取消しを求めるについて、その取消しを求める処分の効力が現に存在していることが必要であるところ、本件各差押処分は上述のとおりその目的を完了して消滅している。
したがって、請求人には、本件各差押処分の取消しを求める法律上の利益はなく、本件各差押処分に対する審査請求は、請求の利益を欠く不適法なものである。
2015年3月27日
請求人が、法定申告期限までに相続税の申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例
平成23年4月相続開始に係る相続税の重加算税の賦課決定処分
一部取消し 平成26年4月17日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人は相続財産を過少に記載したお尋ね書の回答を提出しているものの、そのことのみをもって、「相続財産について申告をしない意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と評価することはできないとして、重加算税の賦課要件を満たさないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、基礎控除額を超える相続財産の存在を認識しながら、「相続についてのお尋ね」(お尋ね書)に一部の財産のみを記載し、遺産総額が基礎控除額以下であるから、申告は不要と思っているとして、お尋ね書を原処分庁に対して提出したことは、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」又は「相続財産を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と認められる旨主張する。
しかしながら、お尋ね書の提出は、相続税の申告をすべきことを知りながらこれをしなかったこと(認識ある無申告)と同等の行為と評価することができ、無申告行為そのものとは別に、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」をしたものと認めることはできない。
また、お尋ね書は、課税庁が、申告の要否を確認する趣旨で、納税者に対して提出を求める書面であるところ、お尋ね書には金額の記載のないものを含めれば、基礎控除額を超える相続財産の記載があり、原処分庁として、請求人が申告義務を有することを十分に予想することができたものといえるから、お尋ね書を提出したことをもって、「相続財産を申告しないとの意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と評価することはできない。
★リンクはこちら⇒ 請求人が、法定申告期限までに相続税の申告書を提出しなかったことについて、国税通則法第68条第2項の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえないとした事例
2015年3月26日
被相続人の遺産を構成しないことを確認する和解は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決等に当たるとした事例
平成21年11月相続開始に係る相続税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分
全部取消し 平成26年5月13日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が当事者となっている訴訟に関して成立した裁判上の和解が、いわゆる「馴れ合い訴訟」の結果であるとはいえないとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、受遺者である請求人が被相続人から遺贈により取得したとして相続税の修正申告に計上した各土地(本件各土地)について、請求人、R社及び相続人の間で成立した、平成13年頃に被相続人からR社に譲渡されたもので被相続人の遺産を構成しない旨を確認した裁判上の和解(本件和解)は、当事者が租税回避目的等から馴れ合いと評価されるような和解をしたにすぎず、国税通則法第23条《更正の請求》第2項第1号かっこ書に規定する和解に該当しない旨主張する。
しかしながら、①本件各土地の一部には請求人の兄名義の居宅が存在すること、②平成13年にR社を権利者とする所有権移転請求権仮登記がされていること、③売買代金に相当する金員が貸付金名目でR社等から被相続人に交付されていることからすれば、本件各土地が、被相続人の遺産を構成しないことを確認した本件和解の内容について、証拠等からうかがわれる客観的事実関係に明らかに反していると認めるに足らない。
そうすると、本件和解は、相続開始時に所有権の帰属に関して当事者間に争いのあった本件各土地について、平成13年頃に被相続人からR社に対して譲渡されていたことが相応の根拠をもって認められ、実質的にみても客観的、合理的根拠を欠くということはできない。
したがって、本件和解は、国税通則法第23条第2項第1号かっこ書に規定する和解に該当するというべきである。
★リンクはこちら⇒ 被相続人の遺産を構成しないことを確認する和解は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決等に当たるとした事例
2015年3月25日
振替納税の留意点
振替納税については、以下の点に留意すること。
- 贈与税については、振替納税の制度がないので、インターネット等を利用して電子納税するか、現金で納付すること。
- 転居等により所轄税務署が変わった場合や既に振替納税で指定している金融機関や口座を変更する場合には、新たに振替納税(変更)の手続が必要となる。
- インターネット専用銀行等の一部金融機関及びインターネット支店等の一部店舗では振替納税が利用できないので、利用の可否については取引先の金融機関に確認のこと。
★リンクはこちら⇒ 税金の納付
2015年3月5日
振替納税の手続き
<概要>
申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税を利用する場合の手続である。
申告所得税及び復興特別所得税の場合は、期限内に申告された確定申告(3期)分及び延納分並びに予定納税(1期、2期)分が振替納税の対象となる。
消費税及び地方消費税の場合は、期限内に申告された確定申告分及び中間申告分が振替納税の対象となる。
<手続対象者>
個人の方で申告所得税及び復興特別所得税または(並びに)消費税及び地方消費税を預貯金口座から自動振替により納付したい方
振替納税を利用している方のうち転居等により申告書の提出先税務署が変わった方
<提出時期>
振替納税したい申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税の納付の期限まで
<提出方法>
預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を作成のうえ、提出先に持参または送付のこと。
(注)
インターネット専用銀行等の一部金融機関、及びインターネット支店等の一部店舗では振替納税が利用 できないので、利用の可否については取引先の金融機関に確認すること。
<部数>
預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を1部提出
★リンクはこちら⇒ 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続
2015年3月4日
偽りその他不正の行為が認められないとして処分を取り消した事例
平成17年分~平成23年分の所得税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、平18.1.1~平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・全部取消し
平成26年1月17日裁決
<要旨>
原処分庁は、平成17年分の売上金額の一部を隠ぺい又は仮装行為に基づく申告漏れと認定しているが、当該隠ぺい又は仮装行為に基づく申告漏れに対応する所得金額は異議決定により算出されないとしたから、それに対応する所得税額は存在しない。
そうすると、平成17年分の所得税の修正申告により納付すべき税額は、平成17年分の売上金額の残部(上記売上金額の一部以外の部分)の申告漏れに係るものであると認められる。
ところで、国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項は、納税者が「偽りその他不正の行為」により国税を免れた場合の加算税の賦課決定の除斥期間を7年と規定しているところ、当審判所が上記申告漏れの態様を調査した結果によれば、平成17年分の売上金額の残部が申告漏れとなったことについて、請求人が自らに帰属しないような外形を作出したとか、本件調査において、請求人が真実の所得を秘匿するため、虚偽の資料を作成し又は領収証の控えつづりを秘匿するなどして、これらの申告漏れが発覚し難い状況を作出したとかの事実を認めることはできず、請求人が平成17年分の所得税の賦課徴収を不能又は困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行ったとはいえないから、平成17年分の売上金額の残部の申告漏れに係る行為は、国税通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為」には該当しないというべきである。
★リンクはこちら⇒ 偽りその他不正の行為が認められないとして処分を取り消した事例
2014年12月16日
従業員からの預り金及び当該預り金を返還しないこととした事実が帳簿書類に記載されていないことにつき仮装隠ぺいの事実は認められないとした事例
平16.11.1~平23.10.31の各事業年度の法人税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・全部取消し
平成26年2月21日裁決
<ポイント>
本事例は、請求人が従業員からの預り金を返還しないこととしたことについて、そもそも請求人は収益に計上すべきとの認識を有していなかったと認められるとし、これを故意に帳簿書類に計上しなかったとか、預り金を返還しないこととなった事実を隠ぺいしたなどの証拠は認められず、当該収益(雑収入)の計上漏れは単なる過少申告に該当するとしたものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が、従業員からの預り金(その1)及び預り金(その2)を当該従業員に対し返金しないこととしたという雑収入発生の事実を帳簿書類に記載せず、また、雑収入発生の事実を裏付ける資料(本件資料)を関与税理士に提示せずに請求人代表者の机の引出し内に管理していた行為は、国税通則法第68条《重加算税》が規定する「隠ぺい又は仮装」の行為に該当する旨主張する。
しかしながら、当審判所の調査の結果によれば、預り金(その1)に関しては、請求人に雑収入発生の事実を認めることができない以上、請求人に「隠ぺい又は仮装」の行為を認めることはできず、また、預り金(その2)に関しては、請求人に雑収入発生の事実を認めることができるところ、当該事実を帳簿書類に記載していないものの、本件資料が請求人代表者の机の引出し内に管理されていた事実のみをもって、請求人が雑収入発生の事実を「隠ぺい」したとは認めることはできないし、その他請求人が雑収入計上漏れの事実を故意に帳簿書類に記録せずに「隠ぺい」したと見受けられる証拠はなく、そもそも、請求人は収益が実現したとの認識を有していなかったと認められるから、請求人に「隠ぺい又は仮装」の行為を認めることはできない。
★リンクはこちら⇒ 従業員からの預り金及び当該預り金を返還しないこととした事実が帳簿書類に記載されていないことにつき仮装隠ぺいの事実は認められないとした事例
2014年12月10日
税務代理をお願いしている税理士はいないが、日頃、記帳事務を手伝ってもらっている方(記帳補助者)がいる。
その方に調査の現場に立ち会ってもらうことはできるか?
調査に立ち会って、税務当局に対して納税者の方の代わりに調査につき主張・陳述を行うことは税務代理行為に当たるため、原則として、税務代理人しか行うことはできない。
また、単に調査に立ち会うだけであっても、第三者が同席している状態で調査を行うことで調査担当者に課せられている守秘義務に抵触する可能性がある場合には、税務代理人以外の第三者の立会いはお断りしている。
ただし、その方が、日頃、納税者の方の記帳事務等を担当しているような場合には、調査を円滑に進めるために、調査担当者が必要と認めた範囲で調査に同席いただくことはある。
2014年12月2日
調査の過程で、事前通知を受けた税目・課税期間以外にも調査が及ぶこととなった場合には、調査の対象を拡大する旨や理由は説明してもらえるのか?
また、調査の対象が拡大することに対して納得できない場合には、不服を申し立てられるか?
実地の調査を行う過程で、把握された非違と同様の誤りが事前通知をした調査対象期間より以前にも発生していることが疑われる場合のように、事前通知した事項以外の事項について非違が疑われた場合には、事前通知した事項以外の事項について調査を行うことがある。
この場合には、納税者に対し、調査対象に追加する税目、課税期間等について説明し理解と協力を得た上で行うが、当初の調査の場合と同様、追加する理由については説明することはない。
また、調査を行うこと自体は不服申立てを行うことのできる処分には当たらないので、仮に事前通知事項以外の事項を調査することの必要性について納得できない場合でも、不服申立てを行うことはできない。
2014年11月26日
「記帳・帳簿等の保存が十分でない白色申告者に対しては、その記帳・帳簿等の保存状況に応じて理由を記載する」(平成23年度税制改正大綱)とあるが、どのように記載されるのか?
理由の記載に当たっては、記帳や帳簿等の保存が十分な事業所得者等の場合には、帳簿等と対比して、具体的な取引内容を明らかにして、根拠を示すことになる一方で、記帳・帳簿等の保存が十分でない白色申告者に対しては、例えば、勘定科目ごとに申告漏れ総額を根拠とともに示すなど、平成23年度税制改正大綱の趣旨等を踏まえ、記帳や帳簿等の保存の程度に応じて、納税者がその記載内容から了知し得る程度に理由附記することとしている。
2014年11月26日
国税通則法の改正により処分の理由附記の対象が拡大されたとのことだが、具体的にはこれまでとどのような違いがあるのか?
これまで処分の理由附記は、所得税及び法人税の青色申告者に対する更正処分など一定の処分が対象とされていたが、今般の国税通則法の改正により、理由附記の対象が、国税に関する法律に基づく申請に対する拒否処分または不利益処分全体に拡大された。
したがって、今後は、例えば、白色申告者等に対する更正処分を行う場合(推計による更正の場合を含む。)にも、理由が附記されることになる。
また、加算税の賦課決定については、従来は青色申告者に対する場合でも理由附記の対象とはなっていなかったが、今後は白色申告者等に対する場合を含め理由が附記されることとなる。
なお、この理由附記の対象が拡大される時期は、原則として、平成25年1月1日以後に行われる更正処分や加算税の賦課決定処分から対象となるが、個人の白色申告者等に対しては経過措置があり、個人の白色申告者等のうち、①平成20年から25年までのいずれかの年において記帳義務・記録保存義務があった方等は平成25年1月から、②それ以外の方は平成26年1月から、理由附記を実施することとされている。
(参考)
平成23年度税制改正大綱においては、個人の白色申告者等に対する更正等に係る理由附記について、「平成25年1月以後、現行の白色申告者に係る記帳義務・記録保存義務の水準と同程度の記帳・記録保存を行っている者については、運用上、平成25年1月以後、理由附記を実施するよう努めることとします。」とされているところである。
この「運用上の対応」として、平成20年から25年までのいずれかの年において記帳義務・記録保存義務があった方に加えて、平成25年1月1日以後の現況により、現行の記帳義務・記録保存義務の内容を充足していると認められる方に対する更正等に係る理由附記については、平成25年1月から実施することとしている。
2014年11月21日
過去に調査対象となった税目・課税期間について再調査が行われる場合、なぜ再調査が行われるのかについて説明してもらえるのか?
過去に調査を行った税目・課税期間であっても、例えば、取引先の税務調査により非違につながる情報を把握した場合には、再度、同じ税目・課税期間について調査を行うことがある。
このような場合には、再調査することにつき原則として事前通知を行うが、当初の調査の場合と同様、再調査を行う理由については説明することはない。
2014年11月19日
実地の調査が終了し、「更正決定等をすべきと認められない」旨を通知する書面を受け取ったが、今後は調査を受けることはないのか?
ある税目・課税期間について調査を行った場合には、調査の結果、更正決定等をすべきと認められなかったか否かにかかわらず、原則として、その税目・課税期間について再度の調査を実施することはない。
ただし、例えば、調査終了後に行われた取引先の税務調査で、当初の調査の際には把握されていなかった非違があることが明らかになった場合のように、法令上定められている「新たに得られた情報に照らして非違があると認めるとき」との要件に該当する場合は、既に調査の対象となった税目・課税期間であっても再調査を実施することがある。
2014年11月17日
税務代理をお願いしている税理士がいるので、調査結果の内容の説明等はその税理士に対して行ってほしいのだが、何か手続は必要か?
調査結果の内容の説明等は、納税者に税務代理人がいる場合でも、原則として、納税者の方に対して行うが、納税者の同意があれば、税務代理人に対してのみ説明等を行うこともある。
したがって、税務代理人のみへの説明等を希望する場合には、調査担当者に対し、電話または対面によりその旨を伝えるか、税務代理人を通じて税務代理人への説明を同意する書面を提出することが必要になる。
なお、納税者に調査結果の内容の説明を行う場合でも、税務代理人の同席のもとに調査結果の内容の説明を行うことや、別途、税務代理人にも調査結果の内容の説明を行うことも可能である。
2014年11月13日
調査が終了し、修正申告の勧奨を受けた際に、修正申告をすると不服の申立てはできないが、更正の請求をすることはできる旨の説明を受けた。これはどういう意味か?
不服申立ては、税務当局が行った更正等の処分の課税標準等または税額等が過大であると納税者が考える場合に、税務当局に対し処分の取消しなどを求めるための手段である。
一方、更正の請求は、納税者が行った申告の課税標準等または税額等が過大であったと納税者が考える場合に、当局に対し、申告した課税標準等または税額等を減額する更正を行うことを求めるための手段である。
例えば、いったんは調査結果の内容説明に納得して修正申告を行ったものの、その後にその修正申告に誤りがあると考えられる場合、その修正申告は税務当局の処分によるものではないので、不服申立てという手段はとれないが、一定期間内であれば、更正の請求という手段をとることはできる。
なお、更正の請求に際しては、例えば、正しいと考える税額や更正の請求をする理由など法令で定められた事項を「更正の請求書」に記載するとともに、請求の理由の基礎となる「事実を証明する書類」を併せて提出する必要があるので、留意すること。
2014年11月11日
調査結果の内容説明を受けた後、調査担当者から修正申告を行うよう勧奨されたが、勧奨には応じなければいけないか?
また、勧奨に応じないために不利な取扱いを受けることはないか?
調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、その内容を説明する際に、原則として、修正申告(または期限後申告)を勧奨することとしている。
これは、申告に問題がある場合には、納税者の方が自ら是正することが今後の適正申告に資することとなり、申告納税制度の趣旨に適うものと考えられるためである。
この修正申告の勧奨に応じるかどうかは、あくまでも納税者の方の任意の判断であり、修正申告の勧奨に応じない場合には、調査結果に基づき更正等の処分を行うこととなるが、修正申告の勧奨に応じなかったからといって、修正申告に応じた場合と比較して不利な取扱いを受けることは基本的にはない。
なお、修正申告を行った場合には、更正の請求をすることはできるが、不服申立てをすることはできないので、こうした点を理解した上で修正申告を行うこと。
2014年11月6日
更正決定等をすべきと認める場合は調査結果の内容が説明されることとなっているが、その内容を記載した書面をもらうことはできるのか?
調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、納税者に対し、更正決定等をすべきと認める額やその理由など非違の内容を説明しする。
法令上は説明の方法は明示されておらず、説明は原則として口頭で行うが、必要に応じて、非違の項目や金額を整理した資料など参考となるものを示すなどして、納税者に正しく理解してもらえるよう十分な説明を行うとともに、納税者から質問等があった場合には分かりやすい説明に努める。
なお、調査が電話等によるもので、非違の内容が書面での説明でも十分に理解できるような簡易なものである場合には、納税者にその内容を記載した書面を送付することにより調査結果の内容説明を行うこともあるが、納税者からの要望に応じて調査結果の内容を記載した書面を交付することはない。
2014年11月4日
取引先等に対する調査を実地の調査として行う場合には、事前通知は行われないのか?
税務当局では、取引先など納税者以外に対する調査を実施しなければ納税者の申告内容に関する正確な事実の把握が困難と認められる場合には、その取引先等に対しいわゆる反面調査を実施することがある。
いわゆる反面調査の場合には、事前通知に関する法令上の規定はないが、運用上、原則として、あらかじめその対象者へ連絡を行うこととしている。
(注)
一部の間接諸税については、納税者以外に対する調査の場合でも、原則として事前通知を行うことが法令上規定されている。
2014年10月31日
実地の調査以外の調査が行われる場合には、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的等についての説明は受けられないのか?
税務当局では、実地の調査以外にも、税務署に来てもらい申告内容を確認するなどの方法で調査を行う場合がある。
このような実地の調査以外の調査を行う場合は、法令上は事前通知は求められていないが、運用上の対応として、来署等を依頼するための連絡の際などに、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的等を説明することとしている。
2014年10月29日
事前通知なしに実地の調査が行われた場合、事前通知が行われなかった理由の説明はあるか?
また、事前通知をしないことに納得できない場合には不服を申し立てられるか?
法令上、事前通知を行わないこととした理由を説明することとはされていない。
ただし、事前通知が行われない場合でも、運用上、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的などについては、臨場後速やかに説明することとしている。
また、事前通知をしないこと自体は不服申立てを行うことのできる処分には当たらないので、事前通知が行われなかったことについて納得できない場合でも、不服申立てを行うことはできない。
2014年10月27日
実地の調査が行われる場合には必ず事前通知がなされるのか?
実地の調査を行う場合には、原則として、調査の対象となる納税者に対して、調査開始前に相当の時間的余裕を置いて電話等により実地の調査を行う旨、調査を開始する日時・場所や調査の対象となる税目・課税期間、調査の目的などを通知する。
ただし、法令の規定に従い、申告内容、過去の調査結果、事業内容などから、事前通知をすると、①違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準等または税額等の把握を困難にするおそれ、または、②その他、調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断した場合には、事前通知をしないこともある。
なお、事前通知が行われない場合でも、運用上、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的などについては、臨場後速やかに説明することとしている。
2014年10月24日
事前通知の際には調査に要する時間や日数、臨場する調査担当者の人数は教えてもらえるのか?
調査に要する時間や日数は調査開始後の状況により異なるので、事前通知の時点であらかじめ知らせることは困難であることを理解願いたい。
なお、調査の臨場が複数回に及ぶこととなる場合には、調査開始後に納税者の都合を尋ねたところで、次回以降の臨場日などを調整する。
また、調査開始日時に複数の調査担当者が臨場する場合は、事前通知に際し、調査担当者を代表する者の氏名・所属官署に加え、臨場予定人数も併せて連絡することとしている。
2014年10月14日
事前通知の際にはなぜ実地の調査が必要なのかについても説明してもらえるのか?
法令上、調査の目的(例えば、提出された申告書の記載内容を確認するため)については事前通知すべきこととされているが、実地の調査を行う理由については、法令上事前通知すべき事項とはされていないので、これを説明することはない。
2014年10月10日
事前通知を受けた調査開始日時についてはどのような場合に変更してもらえるのか?
税務調査の事前通知に際しては、あらかじめ納税者や税務代理人の都合を尋ねることとしているので、その時点で都合が悪い日時が分かっている場合には、申し出れば良い。
申し出のあった都合や申告業務、決算業務等の納税者や税務代理人の事務の繁閑にも配慮して、調査開始日時を調整することとしている。
また、事前通知後においても、通知した日時について、例えば、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合等には、申し出れば変更を協議する。
なお、例示した場合以外でも、理由が合理的と考えられれば変更を協議するので、調査担当者まで申し出ること。
2014年10月8日
税務代理をお願いしている税理士がいるので、事前通知についてはその税理士に行うようお願いしたいのだが、何か手続が必要なのか?
平成26年7月1日以後に行う事前通知については、納税者の事前の同意がある場合には、税務代理権限証書を提出している税理士等(以下「税務代理人」という。)に行えば足りることとされた。
この場合には、税務代理人が税務署に提出する税務代理権限証書に、納税者の同意を記載しておく必要がある。
詳細については、ご自身の税務代理人に尋ねること。
なお、この同意が記載されていない場合には、納税者と税務代理人の双方に事前通知を行うこととなる。
2014年10月6日
事前通知は、調査の何日くらい前に行われるのか?
実地の調査を行う場合の事前通知の時期については、法令に特段の規定はなく、また、個々のケースによって事情も異なるので、何日程度前に通知するかを一律に示すことは困難だが、調査開始日までに納税者が調査を受ける準備等をできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行うこととしている。
2014年10月3日
希望すれば、事前通知を書面で行ってもらうことはできるか?
実地の調査の事前通知の方法は法令上は規定されておらず、原則として電話により口頭で行うこととしている。
また、通知の際には、通知事項が正確に納税者に伝わるように丁寧に行うこととしている。
なお、電話による事前通知が困難と認められる場合は、税務当局の判断で書面によって事前通知を行う場合もあるが、納税者からの要望に応じて事前通知内容を記載した書面を交付することはない。
税理士としては、なぜ書面を交付しないのか違和感を感じるところである。
2014年10月1日
留置き(預かり)に応じた場合でも、申し出れば直ちに返還してもらえるか?
また、返還を求めたにもかかわらず返還されない場合、不服を申し立てられるか?
法令上、留め置いた帳簿書類等については、留め置く必要がなくなったときは遅滞なく返還すべきこととされている。
また、帳簿書類等の提出をされた方から、お預かりしている帳簿書類等を業務で使用する必要がある等の理由で返還を求められた場合には、特段の支障がない限り速やかに返還するが、例えば、留め置いた書類が大量にあり、そのコピーに時間がかかる場合のように、直ちに返還すると調査の適正な遂行に支障がある場合には、しばらく返還をお待ちいただくこともある。
なお、返還をお待ちいただく場合には、引き続き留置きをさせていただく旨とその理由を説明するが、これに納得できないときは、留置き(預かり)を行っている職員が税務署に所属する職員である場合には、税務署長に異議を申し立てることができる。
2014年9月29日
税務調査の担当者から、提出した帳簿書類等の留置き(預かり)を求められたが、その必要性について納得ができなくても、強制的に留め置かれることはあるのか?
税務調査において、例えば、納税者の事務所等に十分なスペースがない場合や検査の必要がある帳簿書類等が多量なため検査に時間を要する場合のように、調査担当者が帳簿書類等を預かって税務署内で調査を継続した方が、調査を円滑に実施する観点や納税者の方の負担軽減の観点から望ましいと考えられる場合には、帳簿書類等の留置き(預かり)をお願いすることがある。
帳簿書類等の留置き(預かり)は、帳簿書類等を留め置く必要性を説明した上、留め置く必要性がなくなるまでの間、帳簿書類等を預かることについて納税者の理解と協力の下、その承諾を得て行うものなので、承諾なく強制的に留め置くことはない。
2014年9月26日
X年度の税務調査を行うという事前通知を受け、調査の過程でX年度よりずっと以前の帳簿書類等を提示するよう求めらたが、これはX年度以外の税務調査を行っていることにならないか?
例えば、X年度の減価償却費の計上額が正しいかどうかを確認するため、その資産の取得価額を確認するために取得年度の帳簿書類等を検査する必要があるといった場合のように、調査担当者がX年度の申告内容を確認するために必要があると判断したときには、X年度以外の帳簿書類等の提示等をお願いすることがある。
これはあくまでもX年度の調査であって、X年度以外の調査を行っているわけではない。
2014年9月24日
調査対象となる納税者について、医師、弁護士のように職業上の守秘義務が課されている場合や宗教法人のように個人の信教に関する情報を保有している場合、業務上の秘密に関する帳簿書類等の提示・提出を拒むことはできるか?
調査担当者は、調査について必要があると判断した場合には、業務上の秘密に関する帳簿書類等であっても、納税者の理解と協力の下、その承諾を得て、そのような帳簿書類等を提示・提出してもらう場合がある。
いずれの場合においても、調査のために必要な範囲でお願いしているものであり、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものである。
なお、調査担当者には、調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない義務が課されている。
2014年9月22日
法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を求められることがあるが、対象となる帳簿書類等が私物である場合には求めを断ることができるか?
法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することができるものとされている。
この場合に、例えば、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられる。
なお、調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、理解を得られるよう努めている。
2014年9月18日
税務調査時の帳簿書類等の提示・提出の求めに対して、正当な理由なく応じない場合には罰則が科されるとのことだが、どのような場合に正当な理由があるとされるのか?
どのような場合が正当な理由に該当するかについては、個々の事案に即して具体的に判断する必要があり、最終的には裁判所が判断することとなるから、確定的なことは答えられないが、例えば、提示・提出を求めた帳簿書類等が、災害等により滅失・毀損するなどして、直ちに提示・提出することが物理的に困難であるような場合などがこれに該当するものと考えられる。
2014年9月16日
税務調査で提示・提出を求められた帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、どのような方法で提示・提出すればよいのか?
帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、提示については、その内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にして示すことになる。
一方、提出については、通常は、電磁的記録を調査担当者が確認し得る状態でプリントアウトしたものを渡すことになる。
また、電磁的記録そのものを提出する必要がある場合には、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)をお願いする場合もある。
(注)提出した電磁的記録については、調査終了後、確実に廃棄(消去)することとしている。
2014年9月12日
税務調査時に提出される物件が、調査の過程で調査担当者に提出するために新たに作成された写しである場合には、留置きには当たらないとのことだが、自己の事業の用に供するために調査前から所有している物件が写しである場合(取引書類の写しなど)であっても、留置きには当たらないのか?
調査の過程で調査担当者に提出するために新たに作成した帳簿書類等の写し(コピー)の提出を受けても留置きには当たらないこととしているのは、通常、そのような写し(コピー)は返還を予定しないものであるためである。
他方、納税者の方が事業の用に供するために保有している帳簿書類等の写し(コピー)を預かる場合は、返還を予定しないものとは言えないから、留置きの手続により預かることとなる。
2014年9月11日
税務調査時に、正当な理由がないのに帳簿書類等の提示・提出の求めに応じなければ罰則が科されるということだが、そうなると事実上は強制的に提示・提出が求められることにならないか?
税務調査時に、帳簿書類等の提示・提出をお願いしたことに対し、正当な理由がないのに提示・提出を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示・提出した場合には、罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科されることがあるが、税務当局は、罰則があることをもって強権的に権限を行使することは考えておらず、帳簿書類等の提示・提出をお願いする際には、提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、納税者の理解と協力のもと、その承諾を得て行うこととしている。
2014年9月10日
税務署の担当者から電話で申告書の内容に問題がないか確認して、必要ならば修正申告書を提出するよう連絡を受けたが、これは調査なのか?
調査は、特定の納税者の方の課税標準等または税額等を認定する目的で、質問検査等を行い申告内容を確認するものだが、税務当局は、税務調査の他に、行政指導の一環として、例えば、提出された申告書に計算誤り、転記誤り、記載漏れ及び法令の適用誤り等の誤りがあるのではないかと思われる場合に、納税者に対して自発的な見直しを要請した上で、必要に応じて修正申告書の自発的な提出を要請する場合がある。
このような行政指導に基づき、納税者が自主的に修正申告書を提出された場合には、延滞税の納付が必要な場合はあるが、過少申告加算税は賦課されない(当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%賦課される。)。
なお、税務署の担当者は、納税者に調査または行政指導を行う際には、具体的な手続に入る前に、いずれに当たるのかを納税者に明示することとしている。
2014年9月9日
平成25年1月から税務調査の手続を定めた国税通則法の規定が施行されたことにより、税務調査は変わったのか?
今般の改正は、税務調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高め、調査に当たって納税者の方の協力を促すことで、より円滑かつ効果的な調査の実施と、申告納税制度の一層の充実・発展に資する等の観点から、調査手続に関する従来の運用上の取扱いを法令上明確化するものであり、基本的には、税務調査が従来と比べて大きく変化することはない。
国税庁は、法改正の趣旨を踏まえた上で、調査の実施に当たっては法令に定められた税務調査手続を遵守するとともに、調査はその公益的必要性と納税者の方の私的利益とのバランスを踏まえ、社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の方の理解と協力を得て行うものであることを十分認識し、その適正な遂行に努めることとしている。
【参考】国税通則法改正の概要
(1)税務調査手続の明確化
税務調査手続について、以下のとおり、現行の運用上の取扱いが法令上明確化された。
- 税務調査に先立ち、課税庁が原則として事前通知を行うこととされた。
ただし、課税の公平確保の観点から、一定の場合には事前通知を行わないこととされた。 - 課税庁の説明責任を強化する観点から、調査終了時の手続が整備された。
- 納税者から提出された物件の預かりの手続のほか、課税庁が帳簿書類その他の物件の「提示」「提出」を求めることができることが法令上明確化された。
〔平成25年1月1日以後に新たに納税者に対して開始する調査について適用(ただし、納税者から提出された物件の預かりの手続については、平成25年1月1日以後に提出された帳簿書類その他の物件から適用)。〕
(2)更正の請求期間の延長等
納税者が申告税額の減額を求めることができる「更正の請求」の期間(改正前:原則1年)が5年に延長された。
併せて、課税庁による増額更正の期間(改正前:原則3年)が5年に延長された。
〔平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する年(度)分について適用。〕
(3)処分の理由附記等
全ての処分(申請に対する拒否処分及び不利益処分)について理由附記を実施することとされた。
〔平成25年1月1日以後に行う処分から実施。〕
ただし、現在記帳・帳簿等保存義務が課されていない個人の白色申告者に対する理由附記については、記帳・帳簿等保存義務の拡大と併せて実施することとされた。
〔平成26年1月1日以後に行う処分から実施。〕
2014年9月8日
課税仕入れに係る支払対価の額に翌課税期間に納品されたパンフレット等の制作費を含めたことについて、隠ぺい仮装の行為はないとした事例
<要旨>
原処分庁は、請求人の会計処理が、請求書をもって納品があったものとみなして行われていたところ、請求人が、パンフレットの納品前に、取引先に対して請求書の発行を依頼したことは、通謀による虚偽の証ひょう書類の作成に当たり、また、当該課税期間内に納品されないこととなったにもかかわらず、あえて課税仕入れに係る支払対価の額から除かなかったことは、帳簿書類の意図的な集計違算に当たるから、請求人がパンフレットの製作費を当該課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含めたことについて、隠ぺいまたは仮装の行為がある旨主張する。
しかしながら、請求人は、パンフレットの納品時に納品書を受領しており、当該請求書は前払いを求める書類として作成を依頼したもので納品の事実を示す書類として受領したものとはいえず、また、当該請求書に虚偽の記載もないのであって、通謀による虚偽の証ひょう書類の作成があったとはいえない。また、納品されないこととなったにもかかわらず課税仕入れに係る支払対価の額から除かなかったのは、単に請求人の会計処理を行う部署において納品の事実の確認を怠っていたことによるものであって、これをもって隠ぺいまたは仮装と評価すべき行為をしたともいえない。したがって、請求人が当該パンフレットの製作費を当該課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含めたことについて、隠ぺいまたは仮装の行為があったとは認められない。
★リンクはこちら⇒ 課税仕入れに係る支払対価の額に翌課税期間に納品されたパンフレット等の制作費を含めたことについて、隠ぺい仮装の行為はないとした事例
2014年5月20日
事前通知関係の国税通則法等の改正
国税通則法の改正を含む「所得税法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第10号)が、平成26年3月20日に成立し、同年3月31日に公布された。
平成23年12月の国税通則法の改正では、調査の事前通知については、納税者の方と税務代理人の双方に対して通知することとされていたが、この改正により、平成26年7月1日以後に行う事前通知については、税務代理権限証書に、納税者の方の同意が記載されている場合には、税務代理人に対してすれば足りることとされた。
国税庁では、この改正を踏まえ、平成24年9月に策定した法令解釈通達、事務運営指針及び質疑応答集(FAQ)を改正した。
※国税通則法等の改正に併せて、税務代理権限証書の様式も改訂された。
平成26年7月1日以後に税務代理権限証書を提出する場合は、改訂後の様式を使用すること。
★リンクはこちら⇒ 事前通知関係の国税通則法等の改正
2014年5月15日
出張日の記載のない請求書に基づいて計上した旅行費用について、事実の仮装は認められないとした事例
<ポイント>
本事例は、請求人が、出張日の記載がなく、旅行業者が通常使用する書式と相違する請求書(本件各旅費請求書)に基づき、翌事業年度に行われる旅行費用を繰上計上していたところ、当該費用は支払われ、当該出張は実施されており、また、旅行業者の側に別の書式を使用せざるを得ない合理的な理由があり、本件各旅費請求書に単に出張日の記載がないのみであって、事実と異なる出張日を記載した、あるいは、出張日を隠ぺいした事実はないから、本件各旅費請求書は、虚偽の証ひょう書類とはいえないとして、重加算税の一部を取り消したものである。
<要旨>
原処分庁は、請求人が旅行費用(本件各旅行費用)を前倒し計上したことについて、旅行業者が通常使用する書式と相違する請求書(本件各旅費請求書)を使用したこと及び本件各旅費請求書に出張日を表記させなかったことなどから、本件各旅費請求書が、請求人代表者と相手先との通謀によって作成された虚偽の証ひょう書類に該当する旨主張する。
しかしながら、本件各旅費請求書の発行経緯に不自然な点は認められず、本件旅行費用は旅行業者に支払われ、旅行も実施されており、本件各旅行費用の計上に際し請求人が旅行業者と通謀の上本件各旅行請求書を発行させた等の事実を推認する証拠は見受けられず、請求人がそれらの計上に際し、事実を隠ぺいした、または事実を仮装したと評価すべき行為を行ったことは認められない。
★リンクはこちら⇒ 出張日の記載のない請求書に基づいて計上した旅行費用について、事実の仮装は認められないとした事例
2014年5月12日
源泉所得税の期限後納付について、期限内納付の意思があったと認められる場合に該当しないとした事例
<要旨>
請求人は、形式的審査義務のみを負う源泉徴収義務者において、年末調整における従業員の住宅借入金等特別税額控除額(本件控除額)が過大となったことに気づくことは極めて困難であり、源泉徴収義務者の責めに帰すべき事由がないから、平成23年12月分の源泉所得税の不足額を法定納期限後に自主納付(本件自主納付)したことは国税通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当し、平成24年7月分の源泉所得税の期限後納付について国税通則法第67条第3項が適用される旨主張する。
しかしながら、源泉徴収義務者として従業員から提出された事項に関して通常程度の注意ないし確認等を行いさえすれば適切に本件控除額の計算を行うことができたと認められるから、本件控除額が過大になったことについて、請求人の責めに帰すべき事由があるというべきであり、「正当な理由があると認められる場合」には該当しない。そうすると、本件自主納付は、国税通則法施行令第27条の2《期限内申告書を提出する意思等があったと認められる場合》第2項に規定する場合に該当せず、平成24年7月分の源泉所得税の期限後納付について、国税通則法第67条第3項の規定は適用されない。
★リンクはこちら⇒ 源泉所得税の期限後納付について、期限内納付の意思があったと認められる場合に該当しないとした事例
2014年4月21日
ゆうメールによる納税申告書の提出に国税通則法第22条の適用はないとした事例
<要旨>
請求人は、ゆうメールにより提出した所得税の確定申告書(本件確定申告書)について、国税通則法第22条《郵送等に係る納税申告書等の提出時期》の規定が適用される旨主張する。
しかしながら、租税法が私法上の概念を特段の定義なく用いている場合には、私法上の概念と同じ意義に解することが、租税法律主義や法的安定性の確保に資するところ、国税通則法第22条は、「郵便」及び「郵便物」と規定し、同法上にその定義規定を置いておらず、郵便法上の「郵便」及び「郵便物」と別意に解すべきことが国税通則法の明文またはその趣旨から明らかであるなどの事情も認められない。
かえって、国税通則法第22条は、郵便及び信書便が郵便法または信書便法の規定に従って配達されるため紛失する可能性が低いことなどの事情を考慮し、また、納税者と関係税務官庁との地理的間隔の差異に基づく不公平を是正する必要性も勘案して、特に郵便または信書便により提出された納税申告書等については、民法上の到達主義の原則を緩和するものであることなどに照らせば、国税通則法第22条の「郵便」及び「郵便物」は、郵便法上の「郵便」及び「郵便物」と同じ意義に解するのが相当である。
そして、郵便法第68条《郵便約款》に基づき定められた内国郵便約款及びゆうメールについて定めるポスパケット約款によれば、ゆうメールによる役務の提供は、荷物の運送であって、郵便法上の「郵便」には該当しない。
したがって、ゆうメールによる本件確定申告書の提出について、国税通則法第22条《郵送等に係る納税申告書等の提出時期》の規定は適用されない。
★リンクはこちら⇒ ゆうメールによる納税申告書の提出に国税通則法第22条の適用はないとした事例
2014年4月11日
平成26年の延滞税の割合
<平成26年1月1日以降>
- 納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「特例基準割合(※)+1%」のいずれか低い割合を適用することとなり、下表1の割合が適用される。
- 納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「特例基準割合(※)+7.3%」のいずれか低い割合を適用することとなり、下表2の割合が適用される。
※特例基準割合とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいう。
期間 | 割合1 | 割合2 |
---|---|---|
平成26年1月1日~平成26年12月31日 | 2.9% | 9.2% |
(参考)
利子税(所得税法第131条、136条、法人税法第75条、75条の2及び相続税法第51条の2、52条4項、53条に係る利子税)及び還付加算金の割合
期間 | 割合 |
---|---|
平成26年1月1日~平成26年12月31日 | 1.9% |
<平成25年12月31日以前>
- 納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間の延滞税の割合は、原則として年7.3%の割合が適用される。
ただし、平成12年1月1日以後の延滞税の割合(年7.3%部分)については、年「7.3%」と「特例基準割合(前年の11月30日の日本銀行が定める基準割引率+4%)」のいずれか低い割合を適用することとなり、下表のとおりとなる。 - 納期限の翌日から2月を経過した日以後の延滞税の割合は、年14.6%が適用される。
期間 割合 平成11年12月31日以前 7.3% 平成12年1月1日~平成12年12月31日 4.5% 平成13年1月1日~平成13年12月31日 4.5% 平成14年1月1日~平成14年12月31日 4.1% 平成15年1月1日~平成15年12月31日 4.1% 平成16年1月1日~平成16年12月31日 4.1% 平成17年1月1日~平成17年12月31日 4.1% 平成18年1月1日~平成18年12月31日 4.1% 平成19年1月1日~平成19年12月31日 4.4% 平成20年1月1日~平成20年12月31日 4.7% 平成21年1月1日~平成21年12月31日 4.5% 平成22年1月1日~平成22年12月31日 4.3% 平成23年1月1日~平成23年12月31日 4.3% 平成24年1月1日~平成24年12月31日 4.3% 平成25年1月1日~平成25年12月31日 4.3% (参考)
利子税(所得税法第131条、136条、法人税法第75条、75条の2及び相続税法第51条の2、52条4項、53条に係る利子税)及び還付加算金の割合は、延滞税の割合(年7.3%部分)と同様の割合が適用される。
2014年1月22日
ダイレクト納付
<ダイレクト納付とは>
ダイレクト納付とは、事前に税務署に届出をしておけば、e-Taxを利用して電子申告等をした後に、届出をした預貯金口座からの振替により、即時または指定した期日に納付することができる電子納税の納付手段である。
<ダイレクト納付のメリット>
ダイレクト納付は、税務署や金融機関に出向くことなく、自宅やオフィスなどから納付が可能なほか、その他の電子納税にはない以下のようなメリットがある。
- インターネットバンキングの契約が不要。
- 期日を指定して納付することが可能。
- 税理士が納税者に代わって納付手続を行うことが可能。
<対象となる税目>
電子申告等が可能な税目(源泉所得税、法人税、消費税及び地方消費税、申告所得税、贈与税、酒税、印紙税など)が対象となる。
- 特に利用回数の多い手続に便利である(源泉所得税の毎月納付手続等。)。
- e-Taxに納付情報登録をすれば、上記にかかわらず全ての税目にダイレクト納付が利用できる。
<ダイレクト納付の利用のために>
- e-Taxの利用開始手続が必要となるほか、ダイレクト納付利用届出書を所轄の税務署に書面で提出する必要がある。
- ダイレクト納付が利用可能な金融機関については、国税庁ホームページ(www.nta.go.jp)の「利用可能金融機関一覧」で確認のこと。
- ダイレクト納付利用届出書を提出してから利用可能となるまで、1か月程度かかる。
- ダイレクト納付を行う際には、預貯金口座の残高に注意すること。
★リンクはこちら⇒ 簡単・便利なダイレクト納付
2013年9月19日
国税審判官(特定任期付職員)の採用(平成25 年7月)
国税不服審判所では、国税審判官への外部登用の工程表(平成22年12月17日公表)に基づき、平成25年7月10日付で13名(弁護士5名・税理士6名・公認会計士2名)の民間専門家を国税審判官(特定任期付職員)として採用した。
平成25年度の採用者数は、本年4月1日付で採用した4名との合計で17名となった。
なお、民間専門家から登用した国税審判官の在籍者数(平成25年7月10日現在)は、50名となった。
リンクはこちら⇒ 国税審判官(特定任期付職員)の採用(平成25 年7月)
2013年8月15日
審査請求よくある質問-Q&A-(審査請求をより知りたい方へ)(平成25年7月)
国税不服審判所は、パンフレット『審査請求よくある質問-Q&A-(審査請求をより知りたい方へ)(平成25年7月)』を発行した。
★リンクはこちら⇒ 審査請求よくある質問-Q&A-(審査請求をより知りたい方へ)(既に削除済み)
<追加 平成29年8月に改訂>
★リンクはこちら⇒ 審査請求よくある質問-Q&A-(審査請求をより知りたい方へ)(平成29年8月)
2013年8月13日
相続税の申告時の外国人の押印は…
申告書には、その氏名及び住所または居所を記載し、押印しなければならない。
ただし、外国人の場合、署名だけで足りる。
2012年11月19日
利子税の納付が遅くなったら…
利子税は本税の延納の期間の日数に応じてかかるため、利子税の納付が遅くなっても延滞税はかからない。
2012年11月14日
修正申告を行った場合の延滞税のかかる期間は…
原則として、延滞税がかかるのは1年間だけである。
本来、修正申告を行った場合、法定納期限の翌日以降の期間について延滞税がかかるが、偽りや不正行為等によらない場合、法定申告期限の1年後の翌日から修正申告書を提出したまでの期間は、延滞税の計算の期間に含めない。
ただし、修正申告書を提出した日以後の期間については、延滞税がかかる。
2012年11月9日
税の役割と税務署の仕事
国税庁が、取組紹介ページ「税の役割と税務署の仕事」を開設した。
動画やPDFのものとがある。
リンク先は以下のとおり。
税の役割と税務署の仕事
2012年11月8日
いつまで還付は受けることができるのか…
更正の請求により還付を受けることができる。
ただし、いつまでも更正の請求をできるわけではなく、過年度の納付税額が計算ミスなどにより過大であった場合には、法定納期限から5年以内であれば可能である。言い換えれば、5年で時効により消滅する。
なお、納付税額がない場合、翌年の1月1日から還付申告書が提出できるため、翌年の1月1日が時効の起算日となる。
2012年10月10日
還付加算金はどうやって計算するのか…
還付加算金の額を計算する場合において、その計算の基礎となる還付金等の額に10,000円未満の端数があるとき、またはその還付金等の額の全額が10,000円未満であるときは、その端数金額またはその全額を切り捨てる。
その計算の結果、還付加算金の確定金額に100円未満の端数があるとき、またはその全額が1,000円未満であるときは、その端数金額またはその全額を切り捨てる。
2012年10月9日
コンビニ納付
平成20年1月21日から、国税をコンビニエンスストアで納付することができるようになっている(以下「コンビニ納付」という。)。
- コンビニ納付利用の条件
国税のコンビニ納付には、バーコード付納付書が必要である。
バーコード付納付書は、納付金額が30万円以下で、次のような場合に所轄の税務署で発行する。
- 確定した税額を期限前に通知する場合(所得税の予定納税等)
- 督促・催告を行う場合(全税目)
- 賦課課税方式による場合(各種加算税)
- 確定した税額について納税者から納付書の発行依頼があった場合(全税目)
- 利用可能なコンビニエンスストア
エブリワン、くらしハウス、ココストア、コミュニティ・ストア、サークルK、サンクス、スリーエイト、スリーエフ、セーブオン、生活彩家、セイコーマート、セブン-イレブン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ヤマザキデイリーストア、ローソン
2012年10月2日
納税環境整備に関する国税通則法等の改正
納税環境整備に関する国税通則法の改正を含む「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)が、平成23年11月30日に成立し、同年12月2日に公布された。
この改正により、調査手続の透明性と納税者の方の予見可能性を高めるなどの観点から、税務調査手続について現行の運用上の取扱いが法令上明確化されるとともに、全ての処分(申請に対する拒否処分及び不利益処分)に対する理由附記の実施及び記帳義務の拡大等が定められ、税務調査手続の法定化及び理由附記の実施に係る規定については、平成25年1月1日から施行することとされている。
- 法令解釈通達の制定等について
今般の改正により、国税通則法において法定化された税務調査手続に係る規定については、国税通則法第7章の2(第74条の2から第74条の13)に「国税の調査」として設けられており、国税庁では、これらの規定の取扱い等を定めるため、法令解釈通達を制定した。
併せて、今般の法改正の趣旨を踏まえ、法令を遵守した適正な調査が行われるよう「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について」を定め、職員に対して指示している。
また、税務調査手続について、一般の納税者や税理士を対象とした質疑応答集(FAQ)を作成した。 - 税務調査手続等の先行的取組の実施について
法定化された税務調査手続等は、原則として、平成25年1月1日以後に開始する調査から適用されることとなるが、国税庁では、法施行後における税務調査手続等を円滑かつ適切に実施する観点から、平成24年10月1日以後に開始する調査から、法施行後に実施することとなる一部の手続について、先行的に取り組むことを予定している。 - 更正の請求期間の延長等について
今般の改正により、平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について、更正の請求ができる期間が原則として法定申告期限から5年に延長された。 - 処分の理由附記について
今般の改正により、処分の適正化と納税者の予見可能性を高める観点から、原則として、平成25年1月1日以後、国税に関する法律に基づく申請に対する拒否処分や不利益処分を行う場合には、理由附記を実施することとなる。
【申請に対する拒否処分】
更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知、青色申告承認申請の却下などの処分が該当する。
【不利益処分】
更正、決定、加算税賦課決定、督促、差押えなどの処分が該当する。 - 個人で事業を行っている方の帳簿の記載・記録の保存について
今般の改正により、事業所得、不動産所得又は山林所得を有する白色申告の方に対する現行の記帳・帳簿等の保存制度について、平成26年1月から対象となる方が拡大される。
※現行の記帳・帳簿等の保存制度の対象者は、白色申告の方のうち前々年分あるいは前年分の事業所得等の金額の合計額が300万円を超える方である。
2012年9月14日
所得税の確定申告の還付加算金はいつからいつまで発生するのか…
当該還付金に係る国税の納付があった日(その日が当該国税の法定納期限前である場合には、当該法定納期限)の翌日からその還付のための支払決定の日またはその充当の日(同日前に充当をするのに適することとなった日がある場合には、その適することとなったた日)までの期間(他の国税に関する法律に別段の定めがある場合には、その定める期間)の日数に応じ、その還付し、または充当すべき金額に加算する。
2012年9月11日
期限後申告の場合、無申告加算税は…
無申告の場合、納付すべき税額に15/100の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税が課せられる。ただし、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。
なお、期限後申告書または修正申告書の提出があった場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正または決定があるべきことを予知してされたものでないときは、当該納付すべき税額に5/100の割合を乗じて計算した金額とする。
期限後申告書の提出があった場合において、その提出が期限内申告書を提出する意思があったと認められる場合として政令で定める場合(期限後申告書の提出があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、当該期限後申告書に係る国税の属する税目について、無申告加算税または重加算税を課されたことがない場合
)に該当してされたものであり、かつ、当該期限後申告書の提出が法定申告期限から2週間を経過する日までに行われたものであるときは、適用しない。
2012年8月30日
延滞税の割合
以下の場合には、延滞税を納付しなければならない。
- 期限内申告書を提出した場合において、当該申告書の提出により納付すべき国税をその法定納期限までに完納しないとき。
- 期限後申告書若しくは修正申告書を提出し、または更正もしくは決定を受けた場合において、期限後申告等による納付の規定により納付すべき国税があるとき。
- 納税の告知を受けた場合において、当該告知により納付すべき国税をその法定納期限後に納付するとき。
- 予定納税に係る所得税をその法定納期限までに完納しないとき。
- 源泉徴収による国税をその法定納期限までに完納しないとき。
延滞税の額は、国税の法定納期限の翌日からその国税を完納する日までの期間の日数に応じ、その未納の税額に年14.6%の割合を乗じて計算した額とする。
ただし、納期限までの期間または納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間については、その未納の税額に年7.3%の割合を乗じて計算した額とするが、現在は、特例基準割合(ちなみに、平成22年1月1日から平成24年12月31日までの期間の特例基準割合は4.3%)による。
2012年8月17日
譲渡所得を申告したあとに契約が解除されたら…
更正の請求が可能である。
納税申告書を提出した者または決定を受けた者は、以下のいずれかに該当する場合(納税申告書を提出した者については、それぞれ定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)には、それぞれに定める期間において、その該当することを理由として更正の請求をすることができる。
- その申告、更正または決定に係る課税標準等または税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき。
…その確定した日の翌日から起算して2か月以内 - その申告、更正または決定に係る課税標準等または税額等の計算に当たってその申告をし、または決定を受けた者に帰属するものとされていた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正または決定があつたとき。
…当該更正または決定があった日の翌日から起算して2か月以内 - その他当該国税の法定申告期限後に生じた前二号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき。
…当該理由が生じた日の翌日から起算して2か月以内
政令は、以下のとおり。
- その申告、更正または決定に係る課税標準等(修正申告に規定する課税標準等をいう。以下同じ。)または税額等の計算の基礎となった事実のうちに含まれていた行為の効力に係る官公署の許可その他の処分が取り消されたこと。
- その申告、更正または決定に係る課税標準等または税額等の計算の基礎となった事実に係る契約が、解除権の行使によって解除され、もしくは当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され、または取り消されたこと。
- 帳簿書類の押収その他やむを得ない事情により、課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき帳簿書類その他の記録に基づいて国税の課税標準等または税額等を計算することができなかった場合において、その後、当該事情が消滅したこと。
- わが国が締結した所得に対する租税に関する二重課税の回避または脱税の防止のための条約に規定する権限のある当局間の協議により、その申告、更正または決定に係る課税標準等または税額等に関し、その内容と異なる内容の合意が行われたこと。
- その申告、更正または決定に係る課税標準等または税額等の計算の基礎となった事実に係る国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈その他の国税庁長官の法令の解釈が、更正または決定に係る審査請求もしくは訴えについての裁決もしくは判決に伴って変更され、変更後の解釈が国税庁長官により公表されたことにより、当該課税標準等または税額等が異なることとなる取扱いを受けることとなったことを知ったこと。
2012年8月7日
減価償却不足を理由とする更正の請求はできるか…
減価償却不足を理由とする更正の請求はできない。
減価償却は任意であり、未計上や償却不足なのは、法人の判断によるものだからである。
更正の請求ができるのは、以下の場合である。
①申告書に記載した課税標準等もしくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったたことまたは計算に誤りがあったことにより、申告書の提出により納付すべき税額が過大であるとき。
②前号に規定する理由により、申告書に記載した純損失等の金額が過少であるとき、または申告書に純損失等の金額の記載がなかつたとき。
③①に規定する理由により、当該申告書に記載した還付金の額に相当する税額(当該税額に関し更正があった場合には、当該更正後の税額)が過少であるとき、または当該申告書(当該申告書に関し更正があった場合には、更正通知書)に還付金の額に相当する税額の記載がなかつたとき。
2012年8月1日
修正申告の納付期限は…
修正申告の納付期限は、修正申告書提出日までである。
また、修正申告に伴う過少申告加算税、無申告加算税、重加算税については、賦課決定通知書が発せられた日の翌日から1か月以内に納付しなければならない。
2012年7月31日
申告期限までに申告書を提出しないと…
申告書は法定申告期限までに税務署長に提出しなければならないが、提出期限後においても、決定(税務署長が、申告書を提出する義務があると認められる者が申告書を提出しなかった場合に、その調査により、申告書に係る課税標準等及び税額等を決定すること)があるまでは、納税申告書を税務署長に提出することができる。
ただし、無申告加算税(原則として、納付すべき税額に対し、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額。なお、税務調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には、5%の割合を乗じて計算した金額に軽減される。)が課され、各種特典の認められている青色申告の承認が取り消される可能性がある。
2012年7月17日
申告書を納税地以外の税務署に提出してしまったら…
例えば、事務所を移転した場合など、納税地が変更になったにもかかわらず、以前の納税地の税務署に申告書を提出してしまった場合、現在の納税地の税務署に申告書を提出する必要はない。
ちなみに、申告書を受けとった税務署は、本来の税務署に申告書を送付するとともに、その旨を納税者に通知する必要がある。
2012年7月13日
やむを得ない理由
国税通則法第11条によると、
『国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二月以内に限り、当該期限を延長することができる。』
とある。
この条の「災害その他やむを得ない理由」とは、国税に関する法令に基づく申告、申請、請求、届出、その他書類の提出、納付または徴収に関する行為(以下、この条関係において「申告等」という。)の不能に直接因果関係を有するおおむね以下に掲げる事実をいい、これらの事実に基因して資金不足を生じたため、納付ができない場合は含まない。
- 地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりその他の自然現象の異変による災害
- 火災、火薬類の爆発、ガス爆発、交通と絶その他の人為による異常な災害
- 申告等をする者の重傷病その他の自己の責めに帰さないやむを得ない事実
2012年6月21日
期間の計算
税務の世界では、2ヶ月以内など期間が重要になってくるが、国税通則法第10条によると、以下のようになっている。
国税に関する法律において日、月又は年をもつて定める期間の計算は、次に定めるところによる。
一 期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるとき、又は国税に関する法律に別段の定めがあるときは、この限りでない。
二 期間を定めるのに月又は年をもつてしたときは、暦に従う。
三 前号の場合において、月又は年の始めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、最後の月にその応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
2 国税に関する法律に定める申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収に関する期限(時をもつて定める期限その他の政令で定める期限を除く。)が日曜日、国民の祝日に関する法律 (昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他一般の休日又は政令で定める日に当たるときは、これらの日の翌日をもつてその期限とみなす。
ちなみに、この条第2項の「一般の休日」とは、日曜日、国民の祝日以外の全国的な休日をいうものとする。
なお、官庁における年末の休暇(明治6年太政官布告第2号「休暇日ノ件」に定める12月29日から同月31日までをいう。)は、この条の「一般の休日」には該当しないが、年始の休暇(同布告に定める1月2日および3日をいう。)は、この条の「一般の休日」に該当する(昭和43.1.30最高判、昭和33.6.2最高判)。
2012年6月19日
申告書等への自署押印
国税に関する法律に基づき税務署長その他の行政機関の長またはその職員に申告書、申請書、届出書その他の書類を提出する者は、当該書類にその氏名(法人については、名称。)及び住所または居所を記載しなければならない。
この場合において、その者が法人であるとき、納税管理人もしくは代理人(代理の権限を有することを書面で証明した者に限る。)によって当該書類を提出するとき、または不服申立人が総代を通じて当該書類を提出するときは、その代表者(人格のない社団等の管理人を含む。次項において同じ。)、納税管理人若しくは代理人または総代の氏名及び住所または居所をあわせて記載しなければならない。
- 当該書類を提出する者が法人である場合 当該法人の代表者
- 納税管理人または代理人によつて当該書類を提出する場合 当該納税管理人または代理人
- 不服申立人が総代を通じて当該書類を提出する場合 当該総代
- 上記に掲げる場合以外の場合 当該書類を提出する者
ただし、記載ではなく自署となっているのは法人税法第151条(以下、参照)だけであり、法人の場合は自署押印が必要となる。
法人の提出する法人税申告書等(第二条第三十号から第三十四号まで(定義)に掲げる申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書(第三項及び第五項において「法人税申告書」という。)並びに第八十一条の二十五第一項(連結子法人の個別帰属額等の届出)に規定する個別帰属額等を記載した同項に規定する書類(当該個別帰属額等に異動があつた場合に提出する同条第二項に規定する書類を含む。)をいう。以下この条において同じ。)には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者(当該者が法人である場合には、当該者の職務を行うべき者)が自署し、自己の印を押さなければならない。
一 法人の代表者(人格のない社団等で代表者の定めがなく、管理人の定めがあるものにあつては、管理人。以下この項において同じ。)が一人である場合 当該代表者
二 法人の代表者が二人以上ある場合(次号に掲げる場合を除く。) これらの者のうち社長、理事長、専務取締役、常務取締役その他の者でその法人税申告書等の作成の時においてその法人の業務を主宰しているもの
三 二人以上の者が共同して法人を代表する場合 その全員
2 法人税申告書等には、前項の代表者のほか、法人の役員及び職員のうちその法人税申告書等の作成の時においてその法人の経理に関する事務の上席の責任者である者が自署し、自己の印を押さなければならない。
3 外国法人の提出する法人税申告書については、第一項の規定によりその法人税申告書に自署し、自己の印を押すべき者は、国内において行う事業又は国内にある資産の経営又は管理の責任者とし、前項の規定によりその法人税申告書に自署し、自己の印を押すべき者は、当該事業又は資産に係る経理に関する事務の上席の責任者とする。
4 第四条の七(受託法人等に関するこの法律の適用)に規定する受託法人が法人税申告書等を提出する場合において、当該受託法人が同条第三号の規定により会社とみなされる個人であるときは、第一項の規定によりその法人税申告書等に自署し、自己の印を押すべき者は、当該個人とする。
5 前各項の規定による自署及び押印の有無は、法人税申告書の提出による申告の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。
2012年6月15日
申告書などの郵送による提出
納税申告書(当該申告書に添付すべき書類その他当該申告書の提出に関連して提出するものとされている書類を含む。)その他国税庁長官が定める書類が郵便または信書便により提出された場合には、その郵便物または信書便物の通信日付印により表示された日(その表示がないとき、またはその表示が明瞭でないときは、その郵便物または信書便物について通常要する送付日数を基準とした場合にその日に相当するものと認められる日)にその提出がされたものとみなされる(いわゆる発信主義)。
ただし、郵便の業務は、郵便法の定めるところにより、郵便事業株式会社(以下、「会社」という。)が行うことになっており、以下のように定められているため、宅配便やメール便は使えないことには留意すべきである。
- 会社以外の者は、何人も、郵便の業務を業とし、また、会社の行う郵便の業務に従事する場合を除いて、郵便の業務に従事してはならない。ただし、会社が、契約により会社のため郵便の業務の一部を委託することを妨げない。
- 会社(契約により会社から郵便の業務の一部の委託を受けた者を含む。)以外の者は、何人も、他人の信書(特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。以下同じ。)の送達を業としてはならない。二以上の人又は法人に雇用され、これらの人又は法人の信書の送達を継続して行う者は、他人の信書の送達を業とする者とみなす。
- 運送営業者、その代表者又はその代理人その他の従業者は、その運送方法により他人のために信書の送達をしてはならない。ただし、貨物に添付する無封の添え状又は送り状は、この限りでない。
- 何人も、第二項の規定に違反して信書の送達を業とする者に信書の送達を委託し、又は前項に掲げる者に信書(同項ただし書に掲げるものを除く。)の送達を委託してはならない。
2012年6月7日
不納付加算税とは?
不納付加算税とは、源泉徴収等による国税が法定納付期限内に完納されなかった場合に課される附帯税のことである。
納付税額の10%の割合で課税される。ただし、調査などが予想される前に納付を行った場合には、5%の割合でよい。5,000円未満の場合は、徴収されない。
2011年9月30日
無申告加算税とは?
無申告加算税とは、期限内に確定申告書の提出をしていないが、納付すべき税額があった場合に課される附帯税のことである。
納付税額の15%の割合で課税される。ただし、更正または決定があると予想される前に申告を行った場合には、5%の割合でよい。5,000円未満の場合は、徴収されない。
2011年9月28日
利子税とは?
利子税とは、会計監査人(公認会計士または監査法人)の監査を受けなければならない等の理由により申告期限を延長した場合に課される附帯税である。
附帯税はいくつかあるが、このうち利子税は利息の性格を持っているため、利子税のみは損金に算入できる。
納税を延長した本税に対し、その延長された日数に応じ、原則、7.3%の割合で課税される。ただし、1,000円未満の場合は課税されない。
なお、会計監査人の監査のためなどの理由により申告期限を延長している場合であっても、利子税を支払うのを避けるため、仮の金額で通常の申告期限内に納付しておくのが一般的である。
2011年9月26日
重加算税とは?
重加算税とは、過少申告加算税などが課される場合において、仮装・隠ぺいにより申告している場合にその過少申告加算税などに代えて課される附帯税のことである。
過少申告加算税に代えて課される場合は、追加本税の35%、
無申告加算税に代えて課される場合は、納付税額の40%、
不納付加算税に代えて課される場合は、納付税額の35%
の割合で課される。ただし、5,000円未満の場合は課税されない。
国税庁が公表している、『法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)』によると、仮装・隠ぺいとは、例えば、以下のような場合をいうとされている。
(1)いわゆる二重帳簿を作成している。
(2)次に掲げる事実(以下「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」という。)がある。
帳簿、原始記録、証ひょう書類、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書、棚卸表その他決算に関係
のある書類(以下「帳簿書類」という。)を、破棄又は隠匿している
帳簿書類の改ざん(偽造及び変造を含む。以下同じ。)、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽
の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っている
帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の脱ろう又は
棚卸資産の除外をしている
(3)特定の損金算入又は税額控除の要件とされる証明書その他の書類を改ざんし、又は虚偽の申請に基づき当該
書類の交付を受けている。
(4)簿外資産(確定した決算の基礎となった帳簿の資産勘定に計上されていない資産をいう。)に係る利息収入、
賃貸料収入等の果実を計上していない。
(5)簿外資金(確定した決算の基礎となった帳簿に計上していない収入金又は当該帳簿に費用を過大若しくは架空
に計上することにより当該帳簿から除外した資金をいう。)をもって役員賞与その他の費用を支出している。
(6)同族会社であるにもかかわらず、その判定の基礎となる株主等の所有株式等を架空の者又は単なる名義人に
分割する等により非同族会社としている。
なお、『連結法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)』も公表されている。
2011年9月22日
過少申告加算税とは?
過少申告加算税とは、期限内に確定申告書を提出した後、修正申告書の提出または更正によって追加税額が生じた場合に課税される附帯税のことである。
なお、修正申告書の提出による場合には、調査があったことにより更正のあることを予想して修正申告書を提出した場合以外だと過少申告加算税は課されない。
原則として、追加分の本税の10%の割合で課税される。5,000円未満の場合は、徴収されない。
ただし、追加納付税額のうち、期限内納付税額または50万円のいずれか多い金額を超える部分については、15%の割合で課税される。
2011年9月20日
延滞税とは?
延滞税とは、法定納期限までに税金を納付しなかった場合に課される附帯税のことである。
納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間の延滞税の割合は、原則として年7.3%の割合が適用される。ただし、平成12年1月1日以後の延滞税の割合(7.3%部分)については、年「7.3%」と「前年の11月30日において日本銀行が定める基準割引率+4%」のいずれか低い割合を適用することとなる。
ちなみに、平成23年(2011年)の場合、4.3%である。
なお、期限内申告書の提出後1年以上経過して修正申告又は更正があった場合(重加算税が課された場合を除く。)には法定納期限から1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日又は更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除される。
また、期限後申告書の提出後1年以上経過して修正申告又は更正があった場合(重加算税が課された場合を除く。)には、その申告書提出後1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日又は更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除される。
2011年9月15日
附帯税
附帯税には、以下のものがある。
- 延滞税(国税通則法60条)
- 利子税(国税通則法64条)
- 過少申告加算税(国税通則法65条)
- 無申告加算税(国税通則法66条)
- 不納付加算税(国税通則法67条)
- 重加算税(国税通則法68条)
2011年9月13日
国税通則法の名称変更
国税通則法(こくぜいつうそくほう)は、昭和37年に創設され、国税の納付義務の確定、納付、徴収、還付、附帯税、更正、決定、不服審査、訴訟など共通事項をまとめた法律である。
今回、東日本大震災の影響でまだ改正はされていないが、平成23年税制改正で、「国税に係る共通的な手続並びに納税者の権利及び義務に関する法律」(略称は、「国税手続法」が現在のところ使われている。)となる予定であった。
略称を使わなくてもよいような、もっとシンプルな名称ではダメなのだろうか。
2011年9月1日
本税と延滞税のどちらが優先されるか?
申告・納税が遅れ、本税と延滞税を支払わないといけないような場合などに、本税に満たない額しか支払わなかったとしたら、どうなるのか?
本税の一部が支払われたとされる。本税には延滞税がかかるので、本税が優先されるということは納税者有利となっている。
還付の場合も同様に、本税が優先される。
2011年8月9日