事務所通信2017年3月

事務所通信

2017年3月号『自社株の評価方法が変わる!』

 相続や贈与の局面において、自社株の評価を行う際、財産評価基本通達に基づくことになります。
 この財産評価基本通達が、平成29年度税制改正により改正される予定です。
 そこで、今回は、『自社株の評価方法が変わる!』について書きたいと思います。

1.主な改正点
 以下につき、改正が予定されています。

 (1)類似業種比準方式   配当金額、利益金額及び簿価純資産の比重につき、 
 現行の1:3:1から1:1:1に見直し 
 (2)評価会社の規模区分の金額等の基準   現在の上場審査基準に基づき、評価会社の規模区分 
 の金額等の基準の見直し 

 なお、平成29年1月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した非上場株式の評価が改正となる予定です。

2.配当金額、利益金額及び簿価純資産の比重の見直し
 具体的には、以下のとおりです。

 <改正前>   A×[(Ⓑ/B+Ⓒ/C×3+Ⓓ/D)/5]×0.7 
 <改正案>   A×[(Ⓑ/B+Ⓒ/C+Ⓓ/D)/3]×0.7 

3.現在の上場審査基準に基づき、評価会社の規模区分の金額等の基準の見直し
 具体的には、以下のとおりです。
 <改正前>

 規模 
 区分 
 区分の内容   総資産価額(帳簿価額によって 
 計算した金額)及び従業員数 
 直前期末以前1年間 
 における取引金額 
 大 
 会 
 社 
 従業員数が 
 100人以上の会社 
 又は右のいずれか 
 に該当する会社 
 卸売業   20億円以上 
 (従業員数が50人以下の会社を除く) 
 80億円以上 
 小売・サービス業   10億円以上 
 (従業員数が50人以下の会社を除く) 
 20億円以上 
 卸売業、小売・ 
 サービス業以外 
 10億円以上 
 (従業員数が50人以下の会社を除く) 
 20億円以上 
 中 
 会 
 社 
 従業員数が 
 100人未満の会社 
 で右のいずれか 
 に該当する会社 
 (大会社に該当 
 する場合を除く) 
 卸売業   7,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の会社を除く) 
 2億円以上 
 80億円未満 
 小売・サービス業   4,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の会社を除く) 
 6,000万円以上 
 20億円未満 
 卸売業、小売・ 
 サービス業以外 
 5,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の会社を除く) 
 8,000万円以上 
 20億円未満 
 小 
 会 
 社 
 従業員数が 
 100人未満の会社 
 で右のいずれにも 
 該当する会社 
 卸売業   7,000万円未満又は従業員数が 
 5人以下 
 2億円未満 
 小売・サービス業   4,000万円未満又は従業員数が 
 5人以下 
 6,000万円未満 
 卸売業、小売・ 
 サービス業以外 
 5,000万円未満又は従業員数が 
 5人以下 
 8,000万円未満 

 <改正案>

 規模 
 区分 
 区分の内容   総資産価額(帳簿価額によって 
 計算した金額)及び従業員数 
 直前期末以前1年間 
 における取引金額 
 大 
 会 
 社 
 従業員数が 
 70人以上の会社 
 又は右のいずれか 
 に該当する会社 
 卸売業   20億円以上 
 (従業員数が35人以下の会社を除く) 
 30億円以上 
 小売・サービス業   15億円以上 
 (従業員数が35人以下の会社を除く) 
 20億円以上 
 卸売業、小売・ 
 サービス業以外 
 15億円以上 
 (従業員数が35人以下の会社を除く) 
 15億円以上 
 中 
 会 
 社 
 従業員数が 
 70人未満の会社 
 で右のいずれか 
 に該当する会社 
 (大会社に該当 
 する場合を除く) 
 卸売業   7,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の会社を除く) 
 2億円以上 
 30億円未満 
 小売・サービス業   4,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の会社を除く) 
 6,000万円以上 
 20億円未満 
 卸売業、小売・ 
 サービス業以外 
 5,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の会社を除く) 
 8,000万円以上 
 15億円未満 
 小 
 会 
 社 
 従業員数が 
 70人未満の会社 
 で右のいずれにも 
 該当する会社 
 卸売業   7,000万円未満又は従業員数が 
 5人以下 
 2億円未満 
 小売・サービス業   4,000万円未満又は従業員数が 
 5人以下 
 6,000万円未満 
 卸売業、小売・ 
 サービス業以外 
 5,000万円未満又は従業員数が 
 5人以下 
 8,000万円未満 

 イ 総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)及び従業員数に応ずる割合
 <改正前>

 卸売業   小売・サービス業   卸売業、小売・ 
 サービス業以外 
 割合 
 14億円以上 
 (従業員数が50人以下の 
 会社を除く) 
 7億円以上 
 (従業員数が50人以下の 
 会社を除く) 
 7億円以上 
 (従業員数が50人以下の 
 会社を除く) 
 0.9 
 7億円以上 
 (従業員数が30人以下の 
 会社を除く) 
 4億円以上 
 (従業員数が30人以下の 
 会社を除く) 
 4億円以上 
 (従業員数が30人以下の 
 会社を除く) 
 0.75 
 7,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の 
 会社を除く。) 
 4,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の 
 会社を除く) 
 5,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の 
 会社を除く) 
 0.6 

 <改正案>

 卸売業   小売・サービス業   卸売業、小売・ 
 サービス業以外 
 割合 
 4億円以上 
 (従業員数が35人以下の 
 会社を除く) 
 5億円以上 
 (従業員数が35人以下の 
 会社を除く) 
 5億円以上 
 (従業員数が35人以下の 
 会社を除く) 
 0.9 
 2億円以上 
 (従業員数が20人以下の 
 会社を除く) 
 2億5,000万円以上 
 (従業員数が20人以下の 
 会社を除く) 
 2億5,000万円以上 
 (従業員数が20人以下の 
 会社を除く) 
 0.75 
 7,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の 
 会社を除く。) 
 4,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の 
 会社を除く) 
 5,000万円以上 
 (従業員数が5人以下の 
 会社を除く) 
 0.6 

 ロ 直前期末以前1年間における取引金額に応ずる割合
 <改正前>

 卸売業   小売・サービス業   卸売業、小売・ 
 サービス業以外 
 割合 
 50億円以上80億円未満   12億円以上20億円未満   14億円以上20億円未満   0.9 
 25億円以上50億円未満   6億円以上12億円未満   7億円以上14億円未満   0.75 
 2億円以上25億円未満   6,000万円以上6億円未満   8,000万円以上7億円未満   0.6 

 <改正案>

 卸売業   小売・サービス業   卸売業、小売・ 
 サービス業以外 
 割合 
 7億円以上30億円未満   5億円以上20億円未満   4億円以上15億円未満   0.9 
 3億5,000万円以上7億円未満   2億5,000万円以上5億円未満   2億円以上4億円未満   0.75 
 2億円以上3億5,000万円未満   6,000万円以上2億5,000万円未満   8,000万円以上2億円未満   0.6 

4.最後に
 今回の改正より、株価が上がるところと下がるところが出てくると思われます。
 また、損失を計上して株価を引き下げるという対策の効果が薄まります。
 今後は対策の方法が変化してくると思いますので、我々税理士も新たに株価引き下げ対策を考えないといけないですね。

2017年3月28日 國村 年

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