事務所通信
2016年5月号『信託とは?』
最近、信託に関する書籍などを結構目にするようになりました。
あまりタックスメリットがないため、興味を持たない税理士もたくさんいますが、平成18年12月に約80年ぶりに信託法が改正(施行は平成19年9月から)されてから約10年経ち、信託に積極的に取り組んでいる税理士も増えてきました。
そこで、今回は、『信託とは?』について書きたいと思います。
1.信託とは?
信託とは、委託者が、信託契約や遺言や自己信託による信託行為によって受託者に対して、金銭や土地などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のために信託財産の管理・処分などをする制度のことです。
2.信託の税制
- 信託に対する収益については、①受益者に発生時課税される信託(受益者等課税信託)を原則とし、②受益者に分配時に課税される信託、③受託者に発生時に法人税が課税される信託があります。
- 受益者等課税信託では、法的には信託財産が受託者に移転しますが、税制上、受益者が信託財産に属する資産・負債・収益・費用を直接有するものとみなして、収益の発生時に受益者に課税されます。
- 信託財産の資産・負債・収益・費用が帰属するものとみなされる受益者には、受益者のほか、信託の変更権限を有し、かつ、信託財産収益の給付を受けることができる者が含まれます(みなし受益者といいます)。
- 遺言で設定した目的信託でみなし受益者がいない信託のように、現に権利を有する受益者がなく、受益者とみなされる者もいない場合には、受益者が存しない信託となり、受託者に法人税が課税される法人課税信託となります。
- 信託の効力が生じた時に、委託者以外の者が受益者である場合には、その受益者が委託者から信託の利益を享受する権利を贈与(死亡に基因して権利を得た場合には遺贈)により取得したものとみなされます。
- 受益者が存する信託において、受益者が追加・交代した場合には、新たに受益者となった者は、すでに受益者であった者から贈与(遺贈)を受けたものとみなされます。
この受益者には、信託法上の受益者のほか、特定委託者(受益者以外の者で、所得税法等におけるみなし受益者と同様の者であり、信託の変更権限を有し、かつ信託財産の給付を受けることができる者)が含まれます。 - 後継ぎ遺贈型および受益者連続型信託の場合には、先行する受益者が一旦、信託財産全体について贈与(遺贈)を受けたものとして取扱われ、先行する受益者の死亡や受益者変更権の行使によって、後続する受益者が受益者となった場合には、後続する受益者は先行する受益者から贈与を受けたものとみなされます。
- 信託終了時に、受益者以外の者が信託財産の給付を受けた場合には、その者(帰属権利者)は、受益者から贈与または遺贈によって信託財産の給付を受けたものとみなされます。
3.最後に
信託は、節税目的ではなく、財産管理の手段だと考えれば使える局面は色々とあると思いますので、知識を身に着けて、うまく使いたいものですね。
2016年5月26日 國村 年