事務所通信2022年4月

事務所通信

2022年4月号『借入をして不動産を買うと節税になるのか?』

2022年4月19日、相続税に関わる実務家に注目されていた訴訟の最高裁の判決が出ました。

通常、高裁の判決内容が変わらないなら最高裁に上告してもあっさり棄却されて終わりなのですが、今回は、3月15日に口頭弁論が開かれたので、過去の最高裁の判決を見ても口頭弁論が開かれると最高裁で判決が覆っているため、納税者が勝訴するのではとも言われていたのですが、結局、納税者敗訴となってしまいました。

そこで今回は、『借入をして不動産を買うと節税になるのか?』について、書きたいと思います。

 

1.借入をして不動産を買うと節税になるのか?

必ずしも正しくないのですが、昔から、『借入をして不動産を買うと節税になる』とセールストークなどで使われています。

手元資金があれば、手元資金で買おうと借入を買おうとどちらも同じ結果となりますが、そうでなければ、一般的に不動産は財産評価基本通達に基づき路線価や固定資産税評価額を用いて算定するため時価よりもかなり低い評価額になるのですが、一方で借入残は資産から引くことができ、マイナスの金額を作り出せるため、結果として、他の資産から引くことができることとなり、節税ができると言われてきました。

2.今回の訴訟案件

今回の訴訟案件は、以下のような概要となっています。

2009年

13億9千万円でマンション2棟を購入

2012年

相続発生

 

不動産の評価額を3億3千万円とし、相続税0で申告

2013年

2棟のうち1棟を購入価格に近い価格で売却

2016年

国税局が不動産の評価額を12億7千万円とし、3億円を追徴課税

3.最高裁の判決

国税局は、伝家の宝刀と言われる財産評価基本通達6項『この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。』を用いて、不動産の鑑定を行い、それに基づき、評価しています。

最高裁は、『他の納税者との間に看過しがたい不均衡が生じ、租税負担の公平に反する』とし、納税者敗訴の判決を下しました。

結局、節税にならなかったわけですが、以下のようなことが影響しています。

①  

不動産購入時に90歳だった

②  

借入をした銀行の稟議書に説税目的であることが記載されていた

③  

路線価に基づく評価額と不動産鑑定評価額に約4倍の開きがあった

④  

申告期限内に売却している

4.最後に

今回の事件は過度な節税をし過ぎたケースであり、どういうケースだと総則6項を使うかを明確にして欲しかったのですが、結局、何も明確にされませんでした。

今後は、節税ありきではなく、慎重に相続税対策を検討しましょうね。

 

2022年4月26日 國村 年

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