事務所通信
2019年3月号『相続税を譲渡所得から引けるかも?』
確定申告業務をしていると、ここ数年、不動産を譲渡されている方が多いように思いますが、いくらで取得したか分からないため、概算取得費(売却価額の5%)を用いることも多く、譲渡所得が多額になるケースが多いように感じます。
このような場合でも、取得費を増やす(譲渡所得を減らす)ことが可能な場合があります。
相続により取得した不動産などを譲渡した場合、相続税額を取得費に加算することができることがあるのです。
そこで今回は、『相続税を譲渡所得から引けるかも?』について、書きたいと思います。
1.特例の概要
この特例は、相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというもので、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算の特例)と言われます。
なお、この特例は、譲渡所得のみに適用がある特例ゆえ、株式等の譲渡による事業所得及び雑所得については、適用できません。
2.特例を受けるための要件
この特例を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
相続や遺贈により財産を取得した者であること。 |
その財産を取得した人に相続税が課税されていること。 |
その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。 |
3.取得費に加算する相続税額
平成26年12月31日以前の相続又は遺贈により取得した土地及び土地の上に存する権利を譲渡した場合は、非常に優遇されていたのですが、改正され、平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得した財産を譲渡した場合は、以下のように計算します(譲渡した財産ごと。)。
4.この特例を受けるための手続
この特例を受けるためには確定申告をすることが必要になります。
確定申告書には、以下のようなものの添付が必要です。
① |
相続税の申告書の写し(第1表、第11表、第11の2表、第14表、第15表) |
② |
相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書 |
③ |
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書【土地・建物用】)や株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書 |
5.最後に
相続後、間もない時期に財産を譲渡した場合は、この特例を使えるかどうか確認しましょう。
また、相続した財産を、この特例を使える時期に譲渡することを検討するのも、節税になりますので、有効かもしれませんね。
2019年3月29日 國村 年