事務所通信
2018年1月号『贈与税・相続税なしで事業承継ができる?』
平成29年12月14日に与党の『平成30年度税制改正大綱』が公表され、12月22日に閣議決定されましたが、目玉の1つは、『事業承継税制』の改正です。
いわゆる団塊世代の方が昨年から70歳を迎え始めていますので、国は早く事業承継をさせようとしており、要件を満たせば、贈与税・相続税なしで事業承継ができるようになります。
そこで今回は、『贈与税・相続税なしで事業承継ができる?』について書きたいと思います。
1.事業承継税制とは?
事業承継税制とは、中小企業の後継者の方が、現経営者から会社の株式を承継する際の、相続税・贈与税の軽減制度です。
これが、平成30年4月1日から5年以内に承継計画を作成・提出し、平成39年までに贈与などが行われば、大幅に改正予定の事業承継税制を用いることができます。
2.事業承継税制の適用要件
事業承継税制を使うためには、対象会社・先代経営者・後継者の要件を満たし、都道府県知事の認定を受け、担保を提供する必要があります。
<対象会社の主な要件>
以下のいずれにも該当しないこと。
上場企業 |
中小企業者に該当しない会社 |
風俗営業会社 |
資産管理会社(一定の会社を除く。) |
総収入金額が零の会社、従業員数が零(一定の会社は5人未満)の会社 |
<先代経営者の主な要件>
以下を満たすことが必要です。
会社の代表権を有していた |
(贈与税のみ)贈与時に代表権を有しない |
相続開始時もしくは贈与直前に、同族関係者と合わせて議決権数の50%超を保有しており、後継者を除いたこれらの者の中で筆頭株主だった |
代表者以外からの贈与等によって取得する株式についても対象となる予定です。
<後継者の主な要件>
以下を満たすことが必要です。
(相続税のみ)相続開始日の翌日から5か月を経過する日において代表権を有している |
(贈与税のみ)贈与時に代表権を有している |
(贈与税のみ)贈与時に20歳以上である |
(贈与税のみ)贈与時に役員等の就任から3年以上経過している |
相続開始直前もしくは贈与時に、同族関係者と合わせて議決権数の50%超を保有しており、これらの者の中で筆頭株主である |
代表権のある後継者で、保有する株式が総議決権数の10%以上であれば、3名まで対象となる予定です。
3.雇用80%維持要件
現行では、承継後5年間の平均従業員数が承継前の80%を下回ると、納税猶予が打ち切りになってしまいます。
これを満たさなかったときでも、その理由を記載した書類を都道府県に提出し、経営悪化などが理由であれば、経営革新等支援機関の指導助言を受けると、納税猶予は打ち切りにならなくなる予定です。
4.最後に
今回の税制改正により簡単に事業承継ができるという風潮にあるようなことを耳にしますが、そうではありませんので、使う際は専門家を交え、慎重に進めて下さいね。
2018年1月30日 國村 年