事務所通信
2021年11月号『資金別貸借対照表とは?』
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などはご存知かと思いますが、『資金別貸借対照表』についてはご存じない方がほとんどなのではないかと思います。
そこで今回は、『資金別貸借対照表とは?』について、書きたいと思います。
1.経営の結果は貸借対照表に現れる!
経営の結果はすべてB/Sに現れます。
すなわち、経営の目的は、つぶれないB/Sを作ることなのです。
企業の財務の成長の基準は、無借金企業に近づいているかどうかです。
長期借入金の返済原資は理論的には『減価償却費』と『税引後利益』なのですが、現実には『お金』なのです。
よって、キャッシュベースのB/Sが必要になります。
2.資金別貸借対処表の見方!
『資金移動表』や『キャッシュフロー計算書』は1期間に生み出したキャッシュを表す一方、『資金別B/S』は、現在のキャッシュの状態を表しており、分かりやすいです。
例えば、経営者に対し、『なぜ過去の繰越利益や当期利益があるのに現預金がないのか?』が納得できるように説明できます。
『資金移動表』や『キャッシュフロー計算書』では、そこまで説明できません。
つまり、『資金別B/S』は、企業の財政状態や財務体質を表しているわけなのです。
3.粉飾と資金別貸借対照表
『資金別B/S』は、利益を見ているのではなく、現預金を見ているので、粉飾に非常に強いのです。
利益はチェックできませんが、現預金は金種表や残高証明書でチェックできます。
例えば。粉飾して利益があると偽っても、たな卸資産や売掛金や仮払金などに消えて、キャッシュがないことになります。
また、減価償却をしないという粉飾は、固定資産が減価償却費に振り替わるかどうかの違いに過ぎません。
ともに資金運用ゆえ、現預金は同じです。
むしろ粉飾すると、利益が増えた分、法人税が増え、現預金は減り、財務体質は悪化してしまいます。
よって、従来の決算書のように、粉飾されているかどうかを見破る必要はありません。
そのまま見れば良いのです。
4.最後に
『資金別B/S』を作ると、B/SとP/Lはいらなくなります。
なぜなら、完全に含んでいるからです。
また、『資金別B/S』を数期間並べて各資金の増減を出せば、『資金運用表』や『資金移動表』や『キャッシュフロー計算書』も見なくて良くなります。
『資金別B/S』で、①過去の蓄積も分かりますし、②P/Lの規模も分かりますし、③設備投資の規模も分かりますし、④その調達状況も分かりますし、⑤運転資金も分かりますし、⑥どこにキャッシュがあり、どこに消えているかもすべて手に取るように分かります。
しかも、粉飾しているかどうかどうかはまったく関係ありません。
皆さんも、『資金別B/S』を使ってみてはいかがですか?
2021年11月29日 國村 年