事務所通信
2020年9月号『不正のトライアングルとは?』
毎営業日、財務・会計・税務などに関するBLOGを書いていますが、最近、一番多いジャンルが、内部統制に関するものです。
具体的には、横領に関するものであり、不幸にも自殺に至っているケースもあり、悲しい気持ちになることがあります。
そこで今回は、『不正のトライアングルとは?』について、書きたいと思います。
1.不正のトライアングルとは?
『不正のトライアングル』とは、アメリカの組織犯罪研究者であるドナルド・R・クレッシー氏が犯罪者への調査を通じて提唱した理論を、W・スティーブ・アルブレヒト博士が体系化した理論です。
この『不正のトライアングル』においては、不正行為は、①動機、②機会、③正当化という不正リスクの3要素が揃ったときに発生すると考えられています。
2.動機とは?
『動機』とは、不正行為の実行を欲する主観的な事情のことです。
例えば、以下のようなケースがあります。
利益が計上されているまたは利益が増加しているにもかかわらず営業活動によるキャッシュ・フローが経常的にマイナスとなっている、または営業活動からキャッシュ・フローを生み出せない。 |
取引所の上場基準、債務の返済またはその他借入に係る財務制限条項(いわゆるコベナンツ)に抵触しうる状況にある。 |
企業の業績が、経営者などの個人財産に悪影響を及ぼす可能性がある。 |
経営者(子会社の経営者を含む。)、営業担当者、その他の従業員等が、売上や収益性等の財務目標(上長から示されたもの等含む。)を達成するために、過大なプレッシャーを受けている。 |
3.機会とは?
『機会』とは、不正行為の実行を可能または容易にする客観的な環境のことです。
例えば、以下のようなケースがあります。
業界の慣行として、契約書に押印がなされない段階で取引を開始する、正式な書面による受発注が行われる前に担当者間の口頭による交渉で取引を開始・変更するなど、相手先との間で正当な取引等の開始・変更であることを示す文書が取り交わされることなく取引が行われうる。 |
経営が一人または少数の者により支配され統制がない。 |
会計システムや情報システムが有効に機能していない。 |
4.正当化とは?
『正当化』とは、不正行為の実行を積極的に是認する主観的な事情のことです。
例えば、経営者が、経営理念や企業倫理の伝達・実践を効果的に行っていない、または不適切な経営理念や企業倫理が伝達されているようなケースが挙げられます。
5.最後に
不正が起こらない仕組み、つまり、上記を排除する仕組み作りが内部統制上重要です。
内部統制の構築は、企業のみならず、従業員を守ることにもなり、経営者にとって非常に重要なことだと思いますので、この点を改めて認識していただきたいですね。
2020年9月28日 國村 年