事務所通信
2017年6月号『収入保険制度』
農業は、様々なものの影響を受けます。
しかしながら、現行の農業共済制度は、自然災害による収量減少を対象とし価格低下等は対象外、対象品目は収量を確認できるものに限定されており、加入単位も品目ごとになっており、農業経営全体をカバーしていないなどの問題があります。
これらを解消するため、平成31年度から『収入保険制度』が導入されます。
そこで、今回は、『収入保険制度』について書きたいと思います。
1.対象者
収入保険制度は、農業者ごとの収入減少を補塡するものであり、制度を適正に運営するためには個々の農業者の収入を正確に把握する必要があるため、青色申告を行い、経営管理を適切に行っている農業者(個人・法人)を対象としています。
基準収入との関係では、平均的な収入を適切に把握する観点から、青色申告を5年間継続している農業者を基本とします。
ただし、青色申告(簡易な方式を含む。)の実績が加入申請時に1年分あれば加入できるようにし、その際5年間の青色申告実績がある者との違いも考慮し、補償限度額は申告実績が5年になるまで徐々に引き上げていく等の措置を設けてスタートします。
2.収入の把握方法
収入の把握方法については、
① | 農業者が、自己申告により、農産物の販売金額等を記載した加入申請書や補助フォーム(青色申告書の販売金額を農産物の種類ごと等に区分するための書類)とともに、青色申告書等の税務関係書類を提出し、 |
② | 実施主体が、提出書類の内容をチェックすることとします。 |
3.対象収入
収入保険制度は、農業者が自ら生産している農産物の販売収入全体を対象とします。
なお、コストは、個人が左右できるものであり、高額の機械を購入した場合など、合理性の確認が難しいことから、「所得」ではなく、「収入」を対象とします。
4.対象要因
農業者が、農業経営を進めていく際には、自然災害や市場環境の変化など、様々なリスクが想定されます。
このため、収入保険制度では、自然災害による収量減少に加え、価格低下など農業者の経営努力では避けられない収入減少を補償の対象とします。
したがって、捨て作りや意図的な安売りなどによって生じた収入減少は補償の対象外とします。
5.保険金の不正受給防止策
収入保険制度の適正な運営を確保するためには、保険金の不正受給を防止することが必要です。
このため、①農業者は、災害等の事故発生時に実施主体に通知するとともに、証拠(農作業日誌など)を保存する、②また、実施主体は、必要に応じ、現地調査等で確認を行うこととしています。
また、①不正があった場合は免責として保険金を支払わず、②重大な不正があった場合は翌年以降の加入を禁止します。
6.最後に
任意加入ですが、国が保険料の半分を負担するなどメリットがありますので、青色申告を行い、加入を検討してくださいね。
2017年6月26日 國村 年