事務所通信
2014年9月号 『航空機のリース取引を用いた節税』
最近、航空機のリース取引の国内市場が活況のようです。
これは、アベノミクスや東日本大震災の復興特需で潤った法人の資金が流れ込み、法人税の節税に使われたり、法人のオーナーにとっては相続税対策にもなるためです。
そこで、今回は、『航空機のリース取引を用いた節税』について書きたいと思います。
1.航空機のリースを用いた節税スキーム
一般的には、複数の法人が匿名組合へ出資を行い、一方で、匿名組合が金融機関からの借り入れを行い、匿名組合が航空機を購入し、航空会社に貸す(リースする)というものです。
リース料は基本的にフラットな一方、最初の数年間は、定率法を用いることによって減価償却費が大きくなり、また、借入金の元本も多いため支払利息も多くなり、リース料などの収益を大きく上回り、最後の方の数年間は、減価償却費や支払利息が減り、航空機を航空会社に売却することによって利益があがるスキームになっています。
このため、最初の数年間は、法人の本業の利益と匿名組合への出資から生じる損失を相殺して法人税を減らし、利益を後の年度に先送りができるというものです。
また、非上場の法人は、損失が増えると非上場株式の評価額が下がることになり、オーナーはその間に相続が発生したり、贈与したり非上場株式を低い評価で移すことができるのです。
2. 現在航空機のリース取引が活況な理由
上記のとおりであれば、現在の利益を将来に繰延べているだけであり、単なる課税の繰り延べに過ぎません。
しかしながら、最近の動向として、消費税・所得税・相続税・贈与税は増税傾向にありますが、法人税については減税傾向にあることが影響しています。
例えば、法人税率のみならず、住民税や事業税を考慮した実効税率が現在40%で、将来35%になるとします。
1億円の所得があれば、現在の税額は4千万円(1億円×40%)になりますが、将来の税額は3千5百万円になるのです。
よって、税率の引き下げ局面においては、課税の繰り延べだけにとどまらず、税額の減少になります。
また、平成27年から相続税法が大きく改正され、相続税や贈与税は基本的に増税になりますので、それを考慮すると、今年中に意図的に損失を計上し、航空機のリースに限りませんが、非上場株式の評価を下げるということを行う方が出てくるのも当然だと言えるでしょう。
3. 航空機のリースのリスク
リットだけではなく、デメリットもあることを知っておかなくてなりません。
原則的に中途解約はできず、リース借主等が債務不履行状態に至ったり、航空機が当初想定してした金額で売却できなかったり、外貨建てである場合には為替変動により、出資元本が毀損したり、元本を超過する損失が生じたりする可能性があります。
4.最後に
このようなスキームを用いた節税方法があることをご存知なかった方も多いかもしれませんが、以前から、一部の方にはよく知られた節税方法です。
知らないと損することも多いので、常にアンテナを張り巡らす必要がありますね。
2014年9月24日 國村 年