事務所通信
2014年4月号 『消せるボールペン』
数年前から、ゴムの摩擦熱で筆跡を消し書き直せるパイロットコーポレーションのフリクションボールなどの『消せるボールペン』が流行っています。
本来、消せないものが消せるという便利なものである半面で、『消せるボールペン』を悪用した不正が相次いでいるようです。
そこで、今回は、『消せるボールペン』について書きたいと思います。
1.消せるボールペンとは?
消せるボールペンは、パイロットコーポレーションが2007年に発売しました。
フリクションボールのインキは、1975年に基本原理が発見されたメタモカラーというインキを改良研究し、進化させたもので、開発に30年以上かかっています。
このフリクションインキを使用したものが現在発売されているフリクションボールシリーズなのです。
- こするとインキが透明になる
- 何度でも書き・消しが可能である
- こすっても消しカスがでない
などの特長があります。
2.『消せるボールペン』を悪用した不正
このようにとても便利な『消せるボールペン』ですが、この『消せるボールペン』を悪用した不正が相次いでいるようです。
また、不正に至らなくても、自治体職員が消せるペンを使って行政文書を作成し、監査で指摘を受けた例もあるようです。
メーカー側は、証書類や宛名書きに使わないようペンに明記するなどしており、「便利なものなので、適正な使用をしてほしい」と用途の徹底を呼びかけています。
茨城県土浦市消防本部で、2013年9月、時間外勤務手当約70万円を不正受給していたとして、男性主任が懲戒免職となっています。
給与担当だった男性は『消せるボールペン』で勤務管理表を書いて上司の決裁を受け、市の人事課に運ぶ途中に書き換えて時間を水増ししていたようです。
3.不正の可能性
僕自身、昨年2月に中央経済社から『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A』という本を出版しましたが、著者3人の打ち合わせ時に、『消せるボールペン』のことが話題に登りました。
実地棚卸の際に、在庫の数をカウントして『棚卸原票』という用紙に、在庫の名称や数量などを記入するのですが、鉛筆で書くのではなく、書き換えられたりすることを防ぐためにもボールペンで記入することが必要になってきます。
このような場合に、『消せるボールペン』を用いると、後ほど書き換えられたりする可能性が生じます。
このようなことは、『棚卸原票』に限らず、ボールペンで書いているものについては、起こりうる可能性があります。
実務的には、『消せるボールペン』を使用することを禁止することになるのでしょうが、実際に消えるかどうか確かめることは非常に手間で、難しいことかもしれません。
4.最後に
『消せるボールペン』は便利な半面、デメリットもありますね。
かと言って、メーカーに責任があるわけではなく、個人のモラルの問題でしょう。
内部統制上、企業も対応を早めに考えたほうが良さそうですね。
2014年4月28日 國村 年