事務所通信
2012年2月号 『相続時精算課税』
2012年3月15日が平成23年度の贈与税の確定申告の期限です。
贈与に関する課税には、暦年課税と相続時精算課税というものがあり、よく知られた110万円までは贈与税が課されないという暦年課税のほかに、相続時精算課税というものがあり、場合によっては相続税対策として有効なものとなっています。
そこで、今回は、『相続時精算課税』について書きたいと思います。
1.相続時精算課税とは?
相続時精算課税とは、特定の贈与者から贈与を受けた財産について、その贈与者から1 年間に贈与を受けた財産(「相続時精算課税適用財産」といいます。)の価額の合計額を基に贈与税額を計算(2,500万円までは税金はかからず、2,500万円を超える額については20%の税率)し、将来その贈与者が亡くなった時にその相続時精算課税適用財産の価額(贈与時の時価)と相続または遺贈を受けた財産の価額(相続時の時価)の合計額を基に計算した相続税額から、既に支払った相続時精算課税適用財産に係る贈与税相当額を控除した金額をもって納付すべき相続税額とする制度です。
適用対象者は、贈与者は、贈与をした年の1月1日において65歳以上で、かつ、贈与をした時において受贈者の親であること、受贈者は、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上で、かつ、贈与を受けた時において贈与者の子である推定相続人であることが必要です。
なお、推定相続人が亡くなっている場合には20歳以上である孫を含みます。
2.相続時精算課税のメリット
相続時精算課税制度のメリットには、主なものとして以下のものがあります。
- 2,500万円までは贈与税がかからない
贈与時には2,500万円までは税金はかかりませんが、相続時には税金がかかることもありますので、ご留意下さい。
- 贈与財産からの利益を享受できる
贈与された財産から得られる利益は贈与された方のものになりますので、例えば、収益物件を贈与することにより、相続時の納税資金を貯めることが可能になります。
- 財産価値の上昇分を享受できる
相続税の計算上、相続時精算課税適用財産については、相続時の時価ではなく贈与時の時価で計算されますので、将来的に財産価値が上昇すれば上昇分は相続税がかからないことになります。
3.相続時精算課税のデメリット
相続時精算課税制度のデメリットには、主なものとして以下のものがあります。
- 財産価値の下落は考慮されない
メリットの逆ですが、財産価値が下落したとしても相続時には、贈与時の時価で計算されます。
- 一旦選択すると取り消せない
相続時精算課税は、ご両親それぞれ適用するかどうか選択できますが、一旦選択すると取り消すことはできません。
4.最後に
争族を避けるためには早めの相続対策が必要です。
メリットとデメリットを考慮のうえ、一度検討されてみてはいかがですか?
2012年2月28日 國村 年