事務所通信2012年12月

事務所通信

2012年12月号 『103万円にこだわる必要はあるのか?』

 皆さんは、『103万円を超えると扶養を外れる。』ということを聞いたことが一度や二度あることでしょう。
 これを超えないように、パートの収入を調整している方も多いことでしょう。
 しかしながら、必ずしも、103万円にこだわる必要はないのです。
 そこで、今回は、『103万円にこだわる必要はあるのか?』について書きたいと思います。

1.103万円ってなぜ半端な金額なのか?
 まず、給与等の収入がある場合、給与所得の計算上、給与等の収入金額に応じて一定の金額を引いてもらえる給与所得控除額というものがあります。この最低額が65万円です。
 また、所得税の計算上、必ず引いてもらえる基礎控除額というものもあります。これが一律38万円です。
 つまり、この2つ(65万円と38万円)を足すと103万円となり、他の所得がなければ、給与等の収入が103万円以下であれば、所得が発生しないことになるのです。

2.130万円の壁
 103万円の壁のほかに、130万円の壁があります。
 給与等の収入が103万円を超えると、配偶者が配偶者控除(一律38万円)を使えなくなりますが、141万円未満であれば、配偶者特別控除というものを使えます。
 配偶者特別控除は、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられるものです。
 配偶者特別控除を受けるための要件としては、以下の2つがあります。

  1. 控除を受ける人のその年における合計所得金額が1千万円以下であること
  2. 配偶者が、以下の5つすべてに当てはまること
  • 民法の規定による配偶者であること(内縁関係は該当しない)
  • 納税者と生計を一にしていること
  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じ一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
  • ほかの人の扶養親族となっていないこと
  • 年間の合計所得金額が38万円超76万円未満であること

 一方、サラリーマンの配偶者の場合、給与等の収入が130万円を超えると、扶養を外れて、社会保険料がかかることになってしまいます。
 しかしながら、社会保険に加入するメリットもあるのです。
 まず、老後の厚生年金が増えます。
 さらに、傷病手当金、出産手当金などももらえます。
 それゆえ、扶養を外れて保険料の負担が増加するのを避けるため労働時間を意図的に抑える方も多いのですが、実際には、保険加入のメリットも考えて判断する必要があるのです。

3.最後に
 世の中にはイメージが先行して、何となくそうしているものの、実際には損をしていることもあります。
 優秀な方が意図的に労働時間を抑えていることが、企業にとってマイナスかもしれませんし、一度、どうするのが有利なのかを検討してみるのも良いかもしれませんね。

2012年12月21日 國村 年

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