事務所通信
2011年12月号 『平成24 年度税制改正大綱』
2011年12 月10 日に『平成24 年度税制改正大綱』が閣議決定されました。
昨年の『平成23年度税制改正大綱』の目玉と言われていて、継続的に審議されていた、相続税の税率の引上げ、基礎控除の引下げなどは今回入っておらず、予想どおり、小さな改正案にとどまっています。
今回は、『平成24 年度税制改正大綱』のうち、主なものについて書きたいと思います。
1.所得税関連
- 給与所得控除の上限設定(H25 年分以後の所得税及びH26 年度分以後の個人住民税について適用)
給与等の収入金額が1,500 万円を超える場合の給与所得控除額については、245 万円の上限を設定する。 - 役員退職手当等に係る退職所得の課税方法の見直し(H25 年分以後の所得税、個人住民税は、H25 年1 月1 日以後に支払われるべき退職手当等について適用)
その年中の退職手当等のうち、退職手当等の支払者の役員等(役員等としての勤続年数が5年以下の者に限る)が当該退職手当等の支払者から役員等の勤続年数に対応するものとして支払を受けるものに係る退職所得の課税方法について、退職所得控除額を控除した残額の1/2とする措置を廃止する。
2.法人税関連
- 試験研究費の増加額に係る税額控除又は平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除を選択適用できる制度の適用期限(所得税、地方税も同様)
適用期限を2年延長する。 - 交際費等の損金不算入制度
適用期限を2年延長するとともに、中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を2年延長する。 - 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(所得税についても同様)
適用期限を2年延長する。
3.資産税関連
- 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、次の措置(平成24 年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用)
イ 非課税限度額(現行1,000 万円)は次のとおり。
(A)省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅用家屋の場合
(a)H24年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 1,500万円
(b)H25年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 1,200万円
(c)H26年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 1,000万円
なお、東日本大震災により住宅用家屋が滅失等をした者(当該住宅用家屋が原発警戒区域内に所在する者を含む。以下ロまでにおいて「東日本大震災の被災者」という)については、非課税限度額を1,500万円とする。
(B)上記(A)以外の住宅用家屋の場合
(a)H24年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 1,000万円
(b)H25年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 700万円
(c)H26年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 500万円
なお、東日本大震災の被災者については、非課税限度額を1,000万円とする。
ロ 適用対象となる住宅用家屋の床面積については、東日本大震災の被災者を除き、240 ㎡以下とする。
ハ 適用期限を平成26 年12 月31 日までとする。 - 相続税の連帯納付義務について、次の場合には連帯納付義務を解除(H24 年4月1日以後に申告期限等が到来する相続税について適用。ただし、同日において滞納となっている相続税についても、上記の改正と同様の扱いとする。)
イ 申告期限等から5年を経過した場合(ただし、申告期限等から5年を経過した時点で連帯納付義務の履行を求めているものについては、その後も継続して履行を求めることができることとする。)
ロ 納税義務者が延納又は納税猶予の適用を受けた場合
4.国際税務関連
- 国外財産調書の提出(平成26 年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用)
イ その年の12 月31 日において価額の合計額が5千万円を超える国外に所在する財産(以下「国外財産」といいう)を有する居住者は、当該財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した調書(以下「国外財産調書」という)を、翌年3月15 日までに、税務署長に提出しなければならない。
(注)財産の評価については、原則として「時価」。ただし、「見積価額」とすることもできる。
ロ 国外財産調書に記載した国外財産については、所得税法の規定にかかわらず、財産債務明細書への内容の記載は要しない。
(注)この場合、運用上、財産債務明細書の備考に「国外財産調書に記載のとおり」と記載する。
5.最後に
『平成24 年度税制改正大綱』は小粒な改正にとどまっており、改正案が成立するかどうかも不透明です。
今後の動向に注目しましょう。
2011年12月28日 國村 年