事務所通信
2011年11月号 『任意後見制度』
近年、認知症になられる方も沢山いらっしゃいます。
そのようなことを考えると、資産家の方などの場合、万が一認知症になってしまうと、ご本人の正確な判断に基づかないまま財産を勝手に処分されてしまったり、遺言書を無理やり書かされてしまうのではないかと心配されることもあるでしょう。
そのようなリスクを回避するためには、『任意後見制度』の利用も選択肢の一つだと思われ、これが今回のテーマです。
1.成年後見制度とは
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の)が不十分な方は、現預金や不動産などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があったりしても、自らこれらをするのが困難なケースがあります。
また,自分に不利益な契約であっても、正確な判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあう可能性もあります。
このような判断能力の不十分な方を保護し、支援するのが成年後見制度であり、以下の2つがあります。
- 法定後見制度
- 任意後見制度
2.任意後見制度とは
任意後見制度は、将来、判断能力が不十分となった場合に備えて、「誰に」、「どのような支援をしてもらうか」をあらかじめ契約によって決めておくという事前的なものです。
ちなみに、法定後見制度は事後的なものです。
例えば、認知症となった場合に、誰かにその人の都合の良いような遺言書を書かされたり、勝手に財産を売却するような契約を結ばされたりすることを防ぐことができます。
相続・事業承継の関係の仕事をしていますと、京都の一澤帆布のお家騒動の話しはよく目にします。
この件は、正確な判断ができない状況で遺言書を書かされたことが原因と言われており、任意後見制度がこの当時あり、用いていれば、お家騒動にならなかったのではないかと思われます。
手続的には、まず、任意後見人に自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について、代理権を与える契約(任意後見契約)を、公証人の作成する公正証書により結んでおきます。
なお、任意後見人は身内の方でも、税理士・弁護士などの専門家でも構いません。
本人の判断能力が低下した場合、本人や配偶者任意後見受任者、四親等以内の親族などが、家庭裁判所に対して任意後見監督人選任の申立てを行います。
この後、任意後見監督人を家庭裁判所が選任することにより、任意後見の効力が生じます。
ここから、任意後見人は支援を開始し、任意後見監督人は任意後見人の監督を行うことになります。
3.最後に
相続・事業承継の失敗により、争族となったり、会社がなくなってしまうことは、皆さまにとっても、皆さまの周りの方々に取っても非常に残念なことです。
早めの対策を行いましょう。
2011年11月30日 國村 年